IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士機械製造株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-生産システム 図1
  • 特許-生産システム 図2
  • 特許-生産システム 図3
  • 特許-生産システム 図4
  • 特許-生産システム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】生産システム
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/02 20060101AFI20240402BHJP
   H05K 13/00 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
H05K13/02 Z
H05K13/00 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022566530
(86)(22)【出願日】2020-12-01
(86)【国際出願番号】 JP2020044744
(87)【国際公開番号】W WO2022118380
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 真一
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/176038(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/033268(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/179257(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/30,13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板製品の生産ラインを構成する複数の生産装置に対して基板の搬送方向に沿って移動可能に設けられ、所定の前記生産装置に対して第一作業を実行するローダと、
所定の前記生産装置を対象とした自走式の作業ロボットによる第二作業の実行に際して前記ローダの移動を予め設定された第一範囲に制限し、前記作業ロボットによる前記第二作業の実行中において前記ローダが前記第一範囲での移動により実行可能な前記第一作業を終了した場合に前記ローダの移動を前記第一範囲より広く設定される第二範囲に制限する制御部と、
を備える生産システム。
【請求項2】
前記生産システムは、前記ローダの周辺の検出範囲に侵入した侵入物を検出する検出部をさらに備える、請求項1に記載の生産システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記検出部により前記侵入物が検出されていない場合に前記ローダの移動を前記第一範囲より広い前記ローダの可動範囲で許容し、前記侵入物が検出された場合に前記ローダの移動を制限する、請求項2に記載の生産システム。
【請求項4】
前記第一範囲は、前記第二作業の実行中における前記作業ロボットが常に前記検出範囲の外側となるように、前記第二作業の作業位置または作業内容ごとに予め設定される、請求項2または3に記載の生産システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記検出部により前記侵入物が検出された場合に前記ローダを停止させ、前記検出部により前記侵入物が検出されている期間において前記ローダの停止状態を維持させ、または前記侵入物とは反対側への前記ローダの移動に限り許容する、請求項2-4の何れか一項に記載の生産システム。
【請求項6】
前記第二範囲は、前記第二作業の実行中における前記作業ロボットに向かって前記ローダが移動したときに互いの最接近する部位同士の距離が所定以上となるように設定される、請求項1-5の何れか一項に記載の生産システム。
【請求項7】
前記第二範囲は、前記作業ロボットにより実行中の前記第二作業の現在の作業位置、作業内容の進行度、および前記作業ロボットの種別の少なくとも一つを含む第二作業情報に基づいて設定される、請求項1-6の何れか一項に記載の生産システム。
【請求項8】
前記第二範囲は、前記作業ロボットによる前記第二作業の実行中において、前記第二作業の進行に応じて更新される前記第二作業情報に基づいて動的に更新される、請求項7に記載の生産システム。
【請求項9】
複数の前記生産装置には、前記基板に部品を装着する複数の部品装着機と、前記部品装着機が前記部品の供給に用いるフィーダを前記生産ラインにおいて保持するバッファ装置とが含まれ、
前記ローダは、前記第一作業として、複数の前記部品装着機と前記バッファ装置との間で前記フィーダを交換する、請求項1-8の何れか一項に記載の生産システム。
【請求項10】
前記制御部は、前記ローダの移動を前記第一範囲または前記第二範囲に制限し、且つ前記第一範囲に前記バッファ装置が含まれない場合に、前記ローダに対して前記部品装着機から前記バッファ装置に回収する予定の前記フィーダを複数の前記部品装着機のうち前記バッファ装置に近いものに保持させる予備回収を前記第一作業として実行させる、請求項9に記載の生産システム。
【請求項11】
前記作業ロボットは、前記第二作業として、複数の前記フィーダを保持可能なマガジンを、前記バッファ装置または前記部品装着機との間で交換する、請求項9または10に記載の生産システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
生産システムは、基板製品を生産する生産ラインに適用される。特許文献1には、生産ラインを構成する生産装置に対して、ローダおよび自走式の作業ロボットがそれぞれの作業を実行する構成が開示されている。上記のローダは、エリアセンサにより自機の周辺の検出範囲において侵入物を検出した場合に、停止または移動を規制されて侵入物との干渉が防止される。そのため、特許文献1では、ローダの可動範囲に障害物が存在する場合に、障害物と干渉しない範囲での作業を優先的に実行する構成を採用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/033268号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなローダや作業ロボットが適用された生産ラインには、基板製品の生産を補助するそれぞれの機器が協働して、生産性を向上させることの要請がある。
【0005】
本明細書は、ローダの移動を制限する範囲を適宜変更することによりローダの作業性を向上させて、生産ラインにおける生産性の向上を図ることができる生産システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、基板製品の生産ラインを構成する複数の生産装置に対して基板の搬送方向に沿って移動可能に設けられ、所定の前記生産装置に対して第一作業を実行するローダと、所定の前記生産装置を対象とした自走式の作業ロボットによる第二作業の実行に際して前記ローダの移動を予め設定された第一範囲に制限し、前記作業ロボットによる前記第二作業の実行中において前記ローダが前記第一範囲での移動により実行可能な前記第一作業を終了した場合に前記ローダの移動を前記第一範囲より広く設定される第二範囲に制限する制御部と、を備える生産システムを開示する。
【発明の効果】
【0007】
このような構成によると、自走式の作業ロボットがローダの可動範囲において作業を実行している場合に、ローダの移動を制限する範囲が段階的に変更される。これにより、ローダの可動範囲においてローダが作業可能な範囲が拡張されるので、ローダの作業性が向上する。結果として、生産ラインにおける生産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態における生産システムを示す斜視図である。
図2図1の生産システムの機能を示すブロック図である。
図3図1のローダと部品装着機の構成の概略を示す斜視図である。
図4】生産システムの構成および各範囲を模式的に示す平面図である。
図5】ローダの移動制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.生産システム1の概要
以下、生産システム1を具体化した実施形態について図面を参照して説明する。生産システム1は、基板製品を生産する生産ラインLnに適用される。本実施形態において、図1に示すように、生産システム1は、生産ラインLn、ローダ30、および管理装置70を備える。管理装置70は、生産ラインLnを構成する複数の生産装置、ローダ30、および後述する自走式の作業ロボット60とネットワークを介して互いに通信可能に構成される。
【0010】
2.生産ラインLnの構成
生産ラインLnは、複数の生産装置が基板91(図3を参照)の搬送方向に並んで設置されて構成される。本実施形態において、複数の生産装置には、図1および図4に示すように、基板91に部品を装着する複数の部品装着機10と、部品装着機10が部品の供給に用いるフィーダ41を生産ラインLnにおいて保持するバッファ装置20とが含まれる。バッファ装置20は、カセット式のフィーダ41の保管に用いられる。
【0011】
バッファ装置20は、基板91の搬送方向(図1および図4の左右方向)において、複数の部品装着機10の上流側(図1および図4の左側)に設置される。また、生産ラインLnには、例えば生産装置としてスクリーン印刷機や検査機、リフロー炉などが含まれ得る。また、生産ラインLnには、複数の部品装着機10およびバッファ装置20のそれぞれに対して所定の作業を行う作業装置としてのローダ30が適用される。ローダ30の詳細構成については後述する。
【0012】
3.部品装着機10の構成
生産ラインLnを構成する複数の部品装着機10は、図3に示すように、基板搬送装置11と、部品供給装置12と、ヘッド駆動装置15とを備える。以下の説明において、部品装着機10の水平幅方向であり基板91の搬送方向をX方向とし、部品装着機10の水平奥行き方向をY方向とし、X方向およびY方向に垂直な鉛直方向(図3の上下方向)をZ方向とする。
【0013】
基板搬送装置11は、ベルトコンベアおよび位置決め装置などにより構成される。基板搬送装置11は、基板91を搬送方向へと順次搬送するとともに、機内の所定位置に基板91を位置決めする。基板搬送装置11は、部品装着機10による装着処理が終了した後に、基板91を部品装着機10の機外に搬出する。
【0014】
部品供給装置12は、基板91に装着される部品を供給する。部品供給装置12は、フィーダ41を装備可能な上部スロット13および下部スロット14を有する。上部スロット13は、部品装着機10の前部側の上部に配置され、装備されたフィーダ41を動作可能に保持する。つまり、上部スロット13に装備されたフィーダ41は、部品装着機10による装着処理において動作を制御され、当該フィーダ41の上部の規定位置に設けられた取り出し部において部品を供給する。
【0015】
下部スロット14は、上部スロット13の下方に配置され、装備されたフィーダ41をストックする。つまり、下部スロット14は、生産に用いられるフィーダ41を予備的に保持し、または生産に用いられた使用済みのフィーダ41を一時的に保持する。なお、上部スロット13と下部スロット14との間でのフィーダ41の交換は、後述するローダ30による自動交換、または作業者による手動交換によりなされる。
【0016】
また、フィーダ41は、部品供給装置12の上部スロット13または下部スロット14に装備されると、コネクタを介して部品装着機10から電力が供給される。そして、フィーダ41は、部品装着機10との間で通信可能な状態となる。上部スロット13に装備されたフィーダ41は、部品装着機10による制御指令などに基づいて、部品を収容するキャリアテープの送り動作を制御する。これにより、フィーダ41は、フィーダ41の上部に設けられた取り出し部において、後述する装着ヘッド17の保持部材によって部品を採取可能に供給する。
【0017】
ヘッド駆動装置15は、部品供給装置12により供給された部品を、基板搬送装置11により機内に搬入された基板91上の所定の装着位置まで移載する。ヘッド駆動装置15は、直動機構により移動台16を水平方向(X方向およびY方向)に移動させる。移動台16には、図示しないクランプ部材により装着ヘッド17が交換可能に固定される。装着ヘッド17は、部品を採取するとともに、部品の上下方向位置および角度を調整して基板91に装着する。
【0018】
詳細には、装着ヘッド17には、フィーダ41により供給される部品を保持する保持部材が取り付けられる。上記の保持部材には、例えば供給される負圧エアにより部品を保持する吸着ノズルや、部品を把持して保持するチャックなどが適用され得る。装着ヘッド17は、保持部材をZ方向に移動可能に、且つZ軸に平行なθ軸周りに回転可能に保持する。装着ヘッド17は、ヘッド駆動装置15の直動機構によりXY方向に移動される。
【0019】
上記のような構成からなる部品装着機10は、部品を基板91に装着する装着処理を実行する。装着処理において、部品装着機10は、画像処理の結果や各種センサによる検出結果、予め記憶された制御プログラムなどに基づき、ヘッド駆動装置15に制御信号を送出する。これにより、装着ヘッド17に支持された複数の吸着ノズルの位置および角度が制御される。
【0020】
なお、装着ヘッド17に保持される吸着ノズルは、装着処理において基板91に装着される部品の種別に応じて適宜変更される。部品装着機10は、実行する装着処理にて用いる吸着ノズルが装着ヘッド17に保持されていない場合に、図略のノズルステーションに収容されている吸着ノズルを装着ヘッド17に保持させる。上記のノズルステーションは、部品装着機10の機内の所定位置に着脱可能に装備される。
【0021】
4.バッファ装置20の構成
バッファ装置20は、本実施形態において、第一保管部21および第二保管部22を有する。第一保管部21および第二保管部22には、フィーダ41用のマガジン40が着脱可能にセットされる。マガジン40は、複数のスロットを形成され、それぞれのスロットにフィーダ41を保持可能に構成される。このように、バッファ装置20は、セットされたマガジン40によりフィーダ41を保持する。
【0022】
第一保管部21および第二保管部22は、基板91の搬送方向の上流側から順に並んで設けられる。本実施形態において、第一保管部21および第二保管部22は、それぞれ1つのマガジン40をセット可能に構成される。バッファ装置20にセットされたマガジン40に装備されたフィーダ41は、バッファ装置20の制御装置を介して管理装置70との間で通信可能な状態となる。これにより、バッファ装置20のスロットと当該スロットに装備されたフィーダ41の識別符号(ID)が関連付けられて、管理装置70に記録される。
【0023】
5.ローダ30の構成
ローダ30は、複数の生産装置(部品装着機10,バッファ装置20)に対して基板91の搬送方向に沿って移動可能に設けられる。ローダ30は、所定の生産装置(部品装着機10,バッファ装置20)に対して第一作業を実行する。上記の「第一作業」には、部品装着機10などの対基板作業機に着脱可能に装備される交換要素を対基板作業機との間で交換する作業が含まれる。本実施形態において、ローダ30は、上記の第一作業として、複数の部品装着機10とバッファ装置20との間でフィーダ41を交換する。
【0024】
ローダ30は、複数の部品装着機10およびバッファ装置20の前部に設けられたレール51(図1および図4を参照)により構成される走行路に沿って移動する。レール51は、生産ラインLnにおいて、基板91の搬送方向の概ね全域に亘って延伸している。ローダ30は、自機の位置に応じて対向する生産装置からレール51を介して電力を非接触で供給される。
【0025】
ローダ30は、本体31を有する。本体31は、レール51により形成される走行路に沿って走行可能に設けられる。詳細には、本体31は、レール51に転動可能に係合する走行ローラおよびガイドローラを有する。これにより、本体31は、姿勢を維持されるとともに、X方向に移動可能に且つY方向およびZ方向の移動を規制される。また、本体31には、複数のフィーダ41を保持可能なフィーダ保持部32が設けられる。フィーダ保持部32は、複数のフィーダ41をX方向に並んだ状態で保持する。
【0026】
ローダ30は、ローダ移動装置33を有する。ローダ移動装置33は、外部から供給された電力により駆動して本体31を走行させる。なお、ローダ移動装置33は、本体31にバッテリが搭載されている場合に、このバッテリから供給される電力により駆動してもよい。また、ローダ移動装置33は、例えばレール51と組み合わせられてリニアモータを構成する。このとき、ローダ移動装置33は、図略のムービングコイルへの給電によりレール51との間にX方向の推進力を生成して、ローダ30をX方向に移動させる。
【0027】
ローダ30は、フィーダ交換装置34を有する。フィーダ交換装置34は、生産ラインLnを構成する複数の部品装着機10との間、およびバッファ装置20との間でフィーダ41を交換する。フィーダ交換装置34によるフィーダ41の交換には、フィーダ41の回収および補給の少なくとも一方が含まれる。本実施形態において、フィーダ交換装置34は、バッファ装置20から部品装着機10の上部スロット13または下部スロット14にフィーダ41を搬送する。
【0028】
また、フィーダ交換装置34は、部品装着機10の上部スロット13と下部スロット14との間でフィーダ41を入れ換える。さらに、フィーダ交換装置34は、使用済みのフィーダ41を部品装着機10からバッファ装置20に搬送する。フィーダ交換装置34は、本体31に対して、フィーダ41の着脱方向(本実施形態においてY方向)および上下方向(Z方向)に、フィーダ41を移動可能に構成される。
【0029】
ローダ30は、第一センサ35および第二センサ36を有する。第一センサ35および第二センサ36は、ローダ30の周辺の検出範囲Rsへの侵入物(作業者を含む)の存在を検出し、ローダ制御装置37に検出に基づく信号を送出する。第一センサ35および第二センサ36は、赤外線や超音波などを用いて、侵入物を検出する。
【0030】
第一センサ35は、図4に示すように、Y方向において本体31の一方側(基板91の搬送方向の上流側)に設けられ、検出範囲Rsの一部である上流側範囲Ruへの侵入物の存在を検出する。第二センサ36は、Y方向において本体31の他方側(基板91の搬送方向の下流側)に設けられ、検出範囲Rsの一部である下流側範囲Rdへの侵入物の存在を検出する。
【0031】
ローダ30は、ローダ制御装置37を有する。ローダ制御装置37は、主として、CPUや各種メモリ、制御回路により構成されるコントローラである。ローダ制御装置37は、複数の部品装着機10、バッファ装置20、および管理装置70と通信可能に接続される。ローダ制御装置37は、ローダ移動装置33やフィーダ交換装置34などの動作を制御する。
【0032】
ローダ制御装置37には、検出部38が組み込まれている。本実施形態において、検出部38は、第一センサ35および第二センサ36が送出した信号に基づいて、ローダ30の周辺の検出範囲Rsに侵入した侵入物を検出する。検出部38は、第一センサ35および第二センサ36のそれぞれの信号を用いることによって、検出された侵入物が基板91の搬送方向の上流側に存在するのか下流側に存在するのかを認識することができる。また、検出部38は、信号の強弱などに基づいて、ローダ30と侵入物との距離を認識してもよい。
【0033】
ローダ制御装置37は、検出部38により侵入物が検出された場合には、ローダ30が走行中であれば速やかに停止させる。また、ローダ制御装置37は、検出部38により侵入物が検出されている期間においてローダ30の停止状態を維持させる。このとき、本実施形態のように、侵入物が基板91の搬送方向の上流側に存在するか下流側に存在するかを認識できている場合には、侵入物とは反対側へローダ30を移動させてもよい。
【0034】
また、ローダ制御装置37は、図略の位置検出センサによる検出信号に基づいて、本体31の走行路上の現在位置を検出する。具体的には、上記の位置検出センサは、例えばレール51に設けられたリニアスケールに対向して配置され、リニアスケールの目盛りを検出する。その他に、位置検出センサには、本体31の位置検出に、光学的な検出方式や、電磁誘導を用いた検出方式を適用できる。
【0035】
上記の構成のように、ローダ30は、レール51に沿って所定位置まで移動するとともに、停止位置においてフィーダ41を交換可能に構成される。ここで、ローダ30の可動範囲Nmは、例えばレール51の全長に概ね一致し、移動方向両端のストッパに接触する範囲に設定される。なお、ローダ30の可動範囲Nmは、ローダ30と生産ラインLnに設けられた他部材との干渉を回避するように、または用途に応じた必要最大範囲に適宜設定されてもよい。
【0036】
また、ローダ制御装置37は、上記の侵入物が検出された場合の動作処理、および可動範囲Nmにおける移動制限について、上位の管理装置70による指令に従う。管理装置70の指令は、ローダ30などの動作状況に応じて送出される場合の他に、例えば侵入物の有無に応じた動作処理については運転開始時に予め設定された内容をローダ30が記憶している場合もある。また、ローダ制御装置37は、外部から要求された第一作業を順次実行し、実行中の第一作業の現在の作業位置、および作業内容の進行度を管理装置70に通知する。これにより、管理装置70は、これらの情報を含む第一作業情報M1を更新する。
【0037】
6.管理装置70の構成
管理装置70は、生産ラインLnの動作状況を監視し、部品装着機10やバッファ装置20、ローダ30を含む生産装置の制御を行う。管理装置70は、図2に示すように、記憶部71を有する。記憶部71には、複数の生産装置をそれぞれ制御するための各種データが記憶されている。管理装置70は、部品装着機10による装着処理やバッファ装置20によるフィーダ41の管理、ローダ30による交換処理の実行に際して、各種データや状況に応じた指令を適宜送出する。
【0038】
管理装置70は、制御部72を有する。制御部72は、生産ラインLnにおけるローダ30の可動範囲Nmに自走式の作業ロボット60が侵入して所定の作業(以下、「第二作業」と称する)をする場合に、ローダ30と作業ロボット60の干渉を防止すべくローダ30および作業ロボット60の動作を制御する。上記の作業ロボット60は、生産ラインLnを構成する複数の生産装置(部品装着機10,バッファ装置20)の何れかを対象として第二作業を実行する。
【0039】
上記の第二作業には、フィーダ41を部品装着機10またはバッファ装置20との間で交換する作業が含まれる。さらに、第二作業には、複数のフィーダ41を装備されたマガジン40を、バッファ装置20または部品装着機10との間で交換する作業が含まれる。以下では、説明を簡易にするために、作業ロボット60による第二作業は、バッファ装置20の第一保管部21または第二保管部22にマガジン40を補給し、また第一保管部21または第二保管部22からマガジン40を回収する作業であるものとする。
【0040】
上記のような第二作業を行う作業ロボット60は、例えばバッファ装置20と多数のフィーダ41を保管する保管倉庫(図示しない)や、フィーダ41にキャリアテープを装填する作業台(図示しない)との間でマガジン40やフィーダ41、キャリアテープが巻回されたリールを搬送するものである。なお、作業ロボット60には、上記のように実行する第二作業の内容や搬送対象に応じて複数の種類がある。そして、生産システム1には、複数の作業ロボット60が並行してそれぞれの作業を実行可能に適用されることがある。
【0041】
制御部72は、作業ロボット60による第二作業の実行に際してローダ30の移動を予め設定された第一範囲N1に制限する。本実施形態において、上記の第一範囲N1は、第二作業の実行中における作業ロボット60が常に検出範囲Rsの外側となるように、第二作業の作業位置または作業内容ごとに予め設定される。具体的には、第二作業の作業内容がバッファ装置20を対象としたマガジン40の交換である場合に、図4に示すように、まず作業ロボット60に固定作業領域Wfが割り当てられる。
【0042】
上記の固定作業領域Wfは、作業ロボット60の種類や詳細な作業位置(例えば、第一保管部21を対象とする位置、または第二保管部22を対象とする位置)に関わらず、第二作業の作業内容に対して固定された領域である。その他に、固定作業領域Wfは、例えば作業ロボット60が所定の部品装着機10との間でフィーダ41を交換する場合には、当該部品装着機10の位置に応じて位置および大きさを予め設定される。換言すると、固定作業領域Wfは、第二作業の実行中において作業ロボット60が外部に出ることのない領域である。
【0043】
そして、第一範囲N1は、上記の固定作業領域Wfにローダ30の検出範囲Rsが重複しないように設定される。例えば、第一範囲N1は、固定作業領域Wfと検出範囲Rsが接する際のローダ30の位置より安全マージンだけ離間させた位置を一端とするように可動範囲Nmを狭めた範囲に設定される。ローダ30は、少なくとも作業ロボット60が第二作業を実行する期間において、上位の管理装置70の制御部72からの指令に基づいて、第一範囲N1の内側での移動に制限される。
【0044】
つまり、ローダ30は、実行要請のあった第一作業のうち第一範囲N1の内側での移動によって実行可能なものを順次実行する。このような制限下では、作業ロボット60による第二作業の所要時間によっては、ローダ30が実行可能な全ての第一作業を終了することがある。このような場合に、実際には、第一範囲N1の外側において作業ロボット60にローダ30が干渉することなく実行可能な第一作業が存在するにも関わらず、上記の移動制限により実行不能な状態がある。
【0045】
これは、固定作業領域Wfが種々の作業ロボット60にも対応可能とするためなどの事情によって、必要十分な広さに対して広めに設定されていることに起因する。そこで、制御部72は、ローダ30の移動を制限する範囲を適宜変更することによりローダ30の作業性を向上させる構成を採用する。具体的には、制御部72は、作業ロボット60による第二作業の実行中においてローダ30が第一範囲N1での移動により実行可能な第一作業を終了した場合に、ローダ30の移動を第一範囲N1より広く設定される第二範囲N2に制限する。
【0046】
上記の第二範囲N2の設定には、種々の態様を採用し得る。範囲設定の第一態様において、第二範囲N2は、第二作業の実行中における作業ロボット60に向かってローダ30が移動したときに互いの最接近する部位同士の距離T1が所定以上となるように設定される。つまり、第一範囲N1が固定作業領域Wfと検出範囲Rsの位置関係によって設定されたのに対して、範囲設定の第一態様では、作業ロボット60に接触するまで接近したローダ30の位置より安全マージンだけ離間させた位置を一端とするように第一範囲N1を拡張した範囲に設定される。
【0047】
範囲設定の第二態様において、第二範囲N2は、作業ロボット60により実行中の第二作業の現在の作業位置、作業内容の進行度、および作業ロボット60の種別の少なくとも一つを含む第二作業情報M2に基づいて設定される。さらに、第二範囲N2は、作業ロボット60による第二作業の実行中において、第二作業の進行に応じて更新される第二作業情報M2に基づいて動的に更新されるようにしてもよい。
【0048】
つまり、第一範囲N1が固定作業領域Wfを用いて設定されたのに対して、範囲設定の第二態様では、現在の作業ロボット60の現在の状態に応じて割り当てられる現状作業領域Wcに基づいて設定される。この現状作業領域Wcは、作業ロボット60の種類や詳細な作業位置(例えば、第一保管部21を対象とする位置、または第二保管部22を対象とする位置)に基づいて割り当てられ、固定作業領域Wfより狭い範囲となる。これにより、第二範囲N2は、少なくとも固定作業領域Wfと現状作業領域Wcの差分だけ、さらに作業ロボット60側に移動することを許容するように設定される。
【0049】
第二範囲N2は、上記の他の態様により設定されてもよい。例えば、第二範囲N2は、第一範囲N1を設定する際に用いられた上記の安全マージンや固定作業領域Wfを単に小さくすることによって設定され得る。何れの態様において、各範囲は、第一範囲N1、第二範囲N2、および可動範囲Nmの順に広く、その内側においてローダ30の移動が許容される。
【0050】
上記の制御部72は、ローダ30の検出部38により侵入物が検出されていない場合にローダ30の移動を第一範囲N1より広いローダ30の可動範囲Nmで許容し、検出部38により侵入物が検出された場合にローダ30の移動を制限する。また、制御部72は、検出部38により侵入物が検出された場合にローダ30を停止させ、検出部38により侵入物が検出されている期間においてローダ30の停止状態を維持させ、または侵入物とは反対側へのローダ30の移動に限り許容する。
【0051】
ここで、制御部72は、上記のようにローダ30の移動を第一範囲N1または第二範囲N2に制限することがある。このとき、第一範囲N1にバッファ装置20が含まれない場合、つまり第一範囲N1の内側での移動ではバッファ装置20に対する第一作業を実行できないことがある。このような場合に、制御部72は、ローダ30に対して部品装着機10からバッファ装置20に回収する予定のフィーダ41を複数の部品装着機10のうちバッファ装置20に近いものに保持させる予備回収を第一作業として実行させる。
【0052】
詳細には、制御部72は、第一範囲N1に含まれる複数の部品装着機10の一つである対象機からフィーダ41を回収してバッファ装置20に移動させるように要請があるものの、第一範囲N1にバッファ装置20が含まれないと当該第一作業を実行できない。そこで、第一範囲N1に含まれ且つ対象機よりも上流側の部品装着機10の上部スロット13または下部スロット14に空きスロットがあれば、制御部72は、その空きスロットに対象機から回収したフィーダ41を保持させる。
【0053】
そして、ローダ30は、後に移動制限が解除された後に、上記フィーダ41をバッファ装置20に移動させる。このとき、ローダ30の移動距離は、対象機からバッファ装置20までの移動距離に比べて短くなるので、当該回収作業の所要時間が短縮される。また、対象機よりも上流側の部品装着機10において複数の空きスロットがある場合には、例えば実行予定の第一作業の対象となる部品装着機10と同一または近いものの空きスロットを優先的に選択してもよい。これにより、実行予定の第一作業と一連でフィーダ41の回収などを行うことが可能となり、ローダ30の作業効率を向上できる。
【0054】
7.作業ロボット60の構成
作業ロボット60は、生産ラインLnが設置されている生産施設の床面を走行可能に構成される。作業ロボット60は、バッファ装置20、フィーダ41の保管倉庫、段取り用の作業台、および作業者と連携してマガジン40やフィーダ41などの物品の搬送に用いられる。作業ロボット60は、自機の位置を認識しつつフロアを走行する走行装置61を有する。走行装置61には、所定の目標物との間で物品を受け渡すなど所定作業を実行する作業装置62が設けられる。
【0055】
また、作業ロボット60は、外部の管理装置70と通信可能に接続され、走行装置61および作業装置62の動作を制御するロボット制御装置63を有する。上記のような構成からなる作業ロボット60は、外部から要求された第二作業を順次実行する。このとき、作業ロボット60は、対象の生産ラインLnを管理する管理装置70に対して第二作業を実行する旨の作業予告を通知し、管理装置70による許可を受けてから第二作業を開始する。
【0056】
また、作業ロボット60は、第二作業の実行中において現在の作業位置、および作業内容の進行度を管理装置70に通知する。これにより、管理装置70は、これらの情報を含む第二作業情報M2を更新する。本実施形態において、作業ロボット60は、第二作業として、複数のフィーダ41を保持可能なマガジンを、バッファ装置20または部品装着機10との間で交換する。
【0057】
8.生産システム1によるローダ30の移動制限処理
生産システム1によるローダ30の移動制限処理について図5を参照して説明する。なお、生産システム1は、ローダ30および管理装置70に組み込まれた制御部72を備え、本実施形態においてローダ30に組み込まれた検出部38をさらに備える。制御部72は、作業ロボット60から第二作業を実行する旨の作業予告の通知がないか監視する(S11)。制御部72は、作業予告の通知がない場合には(S11:No)、ローダ30の移動を可動範囲Nmで許容する(S22)。
【0058】
制御部72は、作業ロボット60から作業予告の通知があった場合に(S11:Yes)、作業ロボット60に対して所定の待機位置にて待機するように指令する(S12)。上記の待機位置は、生産ラインLnにおいてローダ30が可動範囲Nmの何れの位置に存在しても作業ロボット60がローダ30の検出範囲Rsの外側となる位置に設定される。制御部72は、ローダ30に対して予め設定された第一範囲N1の内側に移動するように指令する(S13)。これにより、ローダ30の移動は、解除指令があるまで第一範囲N1の内側に制限される。
【0059】
制御部72は、ローダ制御装置37からの通知に基づいて、ローダ30の現在位置を監視する(S14)。制御部72は、ローダ30が第一範囲N1の内側まで移動していない場合に(S14:No)、作業ロボット60の待機状態を維持させる。また、制御部72は、ローダ30が第一範囲N1の内側まで移動した場合に(S14:Yes)、作業ロボット60に対して第二作業の実行を許可する(S15)。
【0060】
続いて、制御部72は、更新される第二作業情報M2に基づいて、作業ロボット60による第二作業が実行中であるか監視する(S16)。第二作業が実行中の場合に(S16:Yes)、制御部72は、ローダ30による第一範囲N1の内側において実行可能な全ての第一作業が終了したかを監視する(S17)。全ての第一作業が終了していない場合には(S17:No)、制御部72は、上記の監視(S16,S17)を継続する。
【0061】
ここで、第二作業が実行中であり(S16:Yes)、且つ全ての第一作業が終了した場合に(S17:Yes)、制御部72は、第二範囲N2を設定する(S18)。第二範囲N2は、既述のように種々の態様から選択された手法により設定される。例えば、制御部72は、作業予告を通知した作業ロボット60の種類に基づいて、この作業ロボット60の外形寸法を取得し、さらに作業位置に基づいて、作業ロボット60が第二作業の実行中に収まる第二範囲N2を設定してもよい。
【0062】
また、例えば作業ロボット60による第二作業がバッファ装置20の第二保管部22へマガジン40を補給するとともに、第一保管部21からマガジン40を回収することであるとする。このような場合には、第二作業の実行中に作業ロボット60は、第二保管部22に対向する位置から第一保管部21に対向する位置まで上流側へと移動する。そこで、制御部72は、第二作業の進行度などを第二作業情報M2に基づいて認識することにより、第二範囲N2を動的に設定することができる。
【0063】
上記のように第二範囲N2の設定および更新を行った後に、制御部72は、ローダ30に対して第二範囲N2の内側での移動に制限する(S19)。換言すると、制御部72は、第一範囲N1から第二範囲N2に拡張することで制限を緩和し、第二範囲N2の内側でのローダ30の移動を許容する。
【0064】
続いて、制御部72は、作業ロボット60による第二作業の実行が終了した場合に(S16:No)、作業ロボット60が上記の待機位置よりも生産ラインLnから離間したか否か監視する(S21)。作業ロボット60が待機位置よりも生産ラインLnに近い場合には(S21:No)、制御部72は、ローダ30の移動を第二範囲N2に制限した状態を維持する。制御部72は、作業ロボット60が待機位置よりも生産ラインLnから離間した場合に(S21:Yes)、ローダ30の移動制限を解除すべくローダ30の移動を可動範囲Nmで許容する(S22)。
【0065】
上記のような構成のよると、自走式の作業ロボット60がローダ30の可動範囲Nmにおいて第二作業を実行している場合に、ローダ30の移動を制限する範囲が段階的に変更される(S13,S19)。これにより、ローダ30の可動範囲Nmにおいてローダ30が作業可能な範囲が拡張されるので、ローダ30の作業性が向上する。結果として、生産ラインLnにおける生産性を向上できる。
【0066】
9.実施形態の変形態様
実施形態において、作業ロボット60による第二作業は、バッファ装置20との間でマガジン40またはフィーダ41を交換するものを例示した。これに対して、作業ロボット60による第二作業は、所定の部品装着機10との間で物品を補給または回収するものとしてもよい。このような場合に、第一範囲N1および第二範囲N2は、作業ロボット60の作業位置の上流側または下流側に設定されることになる。制御部72は、ローダ30により実行予定の第一作業の内容や、作業ロボット60の作業位置に基づいて、第一範囲N1および第二範囲N2を設定してもよい。
【0067】
また、ローダ30および作業ロボット60が交換の対象とする交換要素は、上記のようにマガジン40またはフィーダ41であるものとした。これに対して、ローダ30および作業ロボット60は、フィーダ41以外のものを交換要素としてもよい。具体的には、例えば部品装着機10に交換可能に装備されるテープリールやノズルステーション、廃棄テープ回収容器などが交換要素となり得る。
【0068】
フィーダには、テープリールを保持するリールホルダが外部に配置された種類がある。そこで、ローダ30がフィーダのテープリールを自動交換することで、テープリールの正確な配送が可能となる。また、ノズルステーションは、基板製品の生産に用いられる部品の種別に対応した吸着ノズルを保持する必要がある。そこで、生産ラインLnにノズルステーション用の保管装置を配置し、当該保管装置と部品装着機10との間でノズルステーションを自動交換可能とすることで、生産ラインLnにおける生産効率を向上できる。
【0069】
また、上記の廃棄テープ回収容器は、例えば部品装着機10の上部スロット13の下方に装備され、それぞれのフィーダ41が部品を供給した際に発生する廃棄テープを回収する容器である。この廃棄テープは、例えばキャリアテープのうち部品を取り出された部位を適宜長さにカットしたものである。廃棄テープ回収容器の容量には限りがある。そのため、ローダ30を用いて、例えば廃棄テープ回収容器が回収した廃棄テープの量を一定以下に維持することは良好な生産状態を維持する観点から有用である。
【0070】
その他に、ローダ30は、フィーダ41がスティックフィーダである場合には、スティックの供給および空のスティックの回収を行う構成としてもよい。また、ローダ30は、フィーダ41がバルクフィーダである場合には、バルク部品の供給、またはバルク部品を収容する部品ケースの供給および空の部品ケースの回収を行う構成としてもよい。このような構成においても、交換要素の自動的な補給および回収が可能となり、生産ラインLnにおける生産効率を向上できる。
【符号の説明】
【0071】
1:生産システム、 Ln:生産ライン、 10:部品装着機(生産装置)、 20:バッファ装置(生産装置)、 30:ローダ、 35:第一センサ、 36:第二センサ、 38:検出部、 40:マガジン、 41:フィーダ、 60:作業ロボット、 70:管理装置、 71:記憶部、 72:制御部、 M1:第一作業情報、 M2:第二作業情報、 91:基板、 Rs:検出範囲、 Nm:可動範囲、 N1:第一範囲、 N2:第二範囲
図1
図2
図3
図4
図5