(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】内燃機関用ガス配量弁
(51)【国際特許分類】
F02M 21/02 20060101AFI20240402BHJP
F02M 61/04 20060101ALI20240402BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
F02M21/02 301A
F02M61/04 G
F16K31/06 385F
(21)【出願番号】P 2022567063
(86)(22)【出願日】2021-04-19
(86)【国際出願番号】 EP2021060072
(87)【国際公開番号】W WO2021228496
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-11-02
(31)【優先権主張番号】102020214170.3
(32)【優先日】2020-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102020206111.4
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】チュエカー,エズガー
(72)【発明者】
【氏名】ベイヤー,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ジュンダーハウフ,ゲアハルト
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】ブロック,トルシュテン
(72)【発明者】
【氏名】ボッセ,ダニエル
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第1336738(EP,A2)
【文献】特開2014-62477(JP,A)
【文献】特開2010-96073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 21/02
F02M 61/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス状燃料のための吸込口(7)および排出口(8)が形成されているハウジング(1)と、前記ハウジング(1)内に形成されて前記吸込口(7)を前記排出口(8)と結合させ、その結果前記吸込口(7)から前記排出口(8)へのガス流動が可能であるガス室(5)と、電気アクチュエータ(12)によって制御可能な、前記ガス室(5)内での前記ガス流動を中断するための遮断弁(10)とを備えた、前記ガス状燃料のためのガス配量弁において、
前記ガス室(5)内にして前記遮断弁(10)と前記排出口(8)との間に、電気で作動される制御弁(25)が配置され、この制御弁を用いて前記遮断弁(10)と前記排出口(8)との間での前記ガス流動を中断させることができ
、
前記遮断弁(10)および前記制御弁(25)が電磁制御弁として形成されていて、
前記遮断弁(10)が第1の電磁石(12)により、そして前記制御弁(25)が第2の電磁石(29)により操作され、両電磁石が互いに独立に起動可能であり、
前記ガス室は前記第2の電磁石(29)の内側に設けられていることを特徴とするガス配量弁。
【請求項2】
前記遮断弁(10)が、前記ガス室(5)内での前記ガス流動を中断させるために遮断弁座(14)と協働する可動な遮断弁要素(11;11’)を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載のガス配量弁。
【請求項3】
前記遮断弁要素(11;11’)が閉鎖ばね(17;17’)によって前記遮断弁座(14;14’)の方向に閉鎖力で付勢されており、その結果前記遮断弁(10)は、前記電気アクチュエータ(12)の作動時に前記閉鎖ばねの力に抗して移動することを特徴とする、請求項2に記載のガス配量弁。
【請求項4】
前記遮断弁(10)が前記ガス状燃料の流動方向に開くことを特徴とする、請求項2に載のガス配量弁。
【請求項5】
前記遮断弁(10)が前記ガス状燃料の流動方向とは逆方向に開くことを特徴とする、請求項2に記載のガス配量弁。
【請求項6】
前記遮断弁要素(11;11’)が、少なくとも前記遮断弁座(14;14’)と協働する領域において、および/または、前記遮断弁座(14;14’)が、プラスチックでコーティングされていることを特徴とする、請求項2~5のいずれか一項に記載のガス配量弁。
【請求項7】
前記遮断弁要素(11;11’)が、少なくとも前記遮断弁座(14;14’)と協働する領域において、および/または、前記遮断弁座(14;14’)が、エラストマーでコーティングされていることを特徴とする、請求項2~5のいずれか一項に記載のガス配量弁。
【請求項8】
前記制御弁(25)が、前記ガス室(5)内での前記ガス流動を中断させるために制御弁座(30)と協働する可動な制御弁要素(26)を含んでいることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のガス配量弁。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか一項に記載のガス配量弁を作動させる方法において、前記ガス状燃料を配量するために、まず前記遮断弁(10)を開き、時間的にその後に前記制御弁(25)を開くことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記ガス配量弁の作動中は前記遮断弁(10)を開いたままにし、前記ガス状燃料の配量を前記制御弁(25)だけで行うことを特徴とする、請求項
9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは内燃機関の燃焼室内または吸気路内へガス状燃料をダイレクトに配量するために使用されるようなガス配量弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスを計量して配分するためのガス弁は従来技術から公知であり、たとえば特許文献1から知られている。ここに開示されているガス弁は可動な弁要素を含んでおり、可動な弁要素はばね要素の力に抗して電磁石によって移動可能であり、これによってガス配量弁の吸込口と排出口との間の結合部を開閉する。電磁石をオンオフすることにより、配量すべきガスを所望の時点で且つ必要な量で配量することができる。ガス弁の密封座は排出口の近くにあり、このことは一方では比較的コンパクトな構成を可能にし、他方ではガス量の精確な制御を容易にする。
【0003】
ガス状燃料を内燃機関の燃焼室内へダイレクトに配量する場合、ガス配量弁は燃焼室の近くに配置されねばならない。したがって、高燃焼温度によってガス配量弁が強く加熱されることになる。たとえば水素を配量する必要がある場合には、金属製の密封座によって確実な密封を達成することは困難であるが、特にこのような密封は安全上の理由からガス配量弁の寿命全体にわたって不可欠であるので、内燃機関が比較的長時間利用されていない場合も必要である。それ故、プラスチックパッキンまたはエラストマーパッキンを使用する必要があるが、しかしながらプラスチックパッキンまたはエラストマーパッキンを損傷させずに高温に曝すことはできない。密封座での温度を制限するため、ガス配量弁を、エラストマーでコーティングした密封座が排出口から、よって燃焼室から比較的離れて配置されているように構成することができる。しかしながら、このために、燃焼室からガス配量弁内への火炎の跳ね返りに比べてガス配量弁の脆弱性がより高くなってしまう。というのは、密封座が燃焼室から離れているために、ガス配量弁が閉じている場合でも、ガス配量弁の比較的大きな容積が燃焼室とダイレクトに連通したままになるからである。特に、燃焼可能なガスの残滓がガス配量弁内にある場合には、燃焼室の火炎前面がガス配量弁内へ拡散し、それにもかかわらずそこで密封座での強い熱負荷が発生することがある。さらに、密封座がガス配量弁の排出口から離れていると、密封座と排出口との間の比較的大きな容積のためにガス状燃料の正確な配量が困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】独国特許出願公開第102014225922号明細書
【発明の概要】
【0005】
これに対し、本発明によるガス配量弁には、停止時間が比較的長くてもガス配量弁の密封性が損なわれずに、ガス状燃料の確実な配量が可能であるという利点がある。このため、ガス配量弁は、ガス状燃料のための吸込口および排出口が形成されているハウジングを有している。ハウジング内には、吸込口を排出口と結合させているガス室が形成され、その結果吸込口から排出口へのガス流動が可能である。ガス室内には、ガス室内でのガス流動を中断するために電気で作動される遮断弁が配置されている。遮断弁と排出口との間には、電気で作動される制御弁が配置され、この制御弁を用いてさらに遮断弁と排出口との間でのガス流動を中断させることができる。
【0006】
すなわち、ガス配量弁は電気で制御可能な2つの弁を含んでおり、これらの弁を用いてハウジング内部でのガス流を中断させることができる。したがって、ガス配量の終了後、特に制御弁を、すなわち排出口により近い位置にあり、よって燃焼室により近い位置にある、2つの弁のうちの制御弁を閉じて、熱の侵入を阻止することができる。これにより遮断弁の熱負荷が著しく低減され、その結果遮断弁にエラストマーパッキンを問題なく使用することができ、このことは内燃機関の、よってガス配量弁の比較的長い停止時間の場合も所望の密封性を保証する。
【0007】
有利な構成では、遮断弁は、ガス室内でのガス流動を中断させるために対応する遮断弁座と協働する遮断弁要素を含んでいる。制御弁も、有利な態様では、ガス流を中断させるために制御弁座と協働する可動な制御弁要素を含み、この場合両弁は好ましくは電磁弁として形成されている。
【0008】
遮断弁座および/または遮断弁要素は、純粋な金属・金属・パッキンによって実際には完全には密封することができない水素ガスの配量の場合も気密な密封を達成するため、好ましくはプラスチックで、特にエラストマーでコーティングされている。しかしながら、ガス状燃料の各配量の間に完全な密封は必要ない。時間的に短い間隔で更なる配量が続く場合には、ある程度の非密封性は許容することができる。というのは、このようにして流出する少量のガス状燃料は次の配量によって燃焼室内へ押し込まれ、これによって内燃機関の機能は阻害されないからである。それ故、制御弁のエラストマーコーティングは必要なく、むしろここでは、この領域での摩耗を可能な限り少なく抑えるために、制御弁要素と制御弁座との間の強固で硬い材料の結合を保証することができる。
【0009】
両弁は好ましくは固有の電磁石によって互いに独立に切換えることができるので、ガス配量弁を作動させるための任意の方法を実行に移すことができる。その際、好ましくは配量の開始前に遮断弁を開き、他方制御弁は時間的なずれをもって初めて開く。制御弁の金属・金属・パッキンもガス流動の短時間の中断のためには十分密であり、その結果ガス状燃料の正確で時間的に精密な配量を、制御弁のみを介しても行うことができ、他方遮断弁は常に開いたままにしておく。比較的長い停止時間の場合に初めて、すなわち比較的長時間ガス状燃料を配量する必要がない場合に、ガス配量弁を完全に密封するために遮断弁をも閉じる。
図面には、本発明によるガス配量弁の2つの実施例が図示されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明によるガス配量弁を縦断面図で示したもので、この場合主要な領域のみが図示されている。
【
図2】他の実施例を
図1と同じ図示で示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1には、本発明による第1のガス配量弁が縦断面図で図示され、この場合ガス配量弁の主要部分のみが示されている。特に、ガス状燃料を供給するための接続管と、電気接続部とは図示していない。ガス配量弁はハウジング1を含み、ハウジングは弁体2とノズル体3とを含み、弁体とノズル体とは締め付けナット4によって互いに気密に締め付け固定されている。ハウジング1内にはガス室5が形成され、ガス室は吸込口7と排出口8とを有し、したがって吸込口7から排出口8へのガス流動を可能にさせている。ガス室5内には遮断弁10が配置され、遮断弁は電磁弁として形成されて、遮断弁要素11を含んでおり、遮断弁要素は第1の電磁石12により閉鎖ばね17の力に抗して移動可能である。遮断弁10は、遮断弁要素11が遮断弁座14に当接すると、ガス室5内部のガス流を遮断するために形成されている。このため、遮断弁座14は図面ではガス室5の上端に形成されて、ガス状燃料がガス室5内に流入する吸込口7を取り囲んでいる。遮断弁要素11が遮断弁座14に当接すると、吸込口7はガス室5に対して閉鎖され、その結果吸込口7からガス室5内へのガス流動が生じることはあり得ない。電磁石12を通電することにより、遮断弁要素11を遮断弁座14から引き離すことができ、その結果遮断弁要素11とハウジング2との間で流動横断面が開放され、この流動横断面を通じてガスが吸込口からガス室5内へ流動する。その際、2つまたはいくつかの結合孔16によって別の流動経路が与えられており、これら結合孔は遮断弁要素11内に形成されて、遮断弁要素11内で中央部に延在している縦孔18に通じており、この場合閉鎖ばね17もこの縦孔18内に配置されている。
【0012】
電磁石12は弁体2をその外面において取り囲み、この場合弁体2またはその複数の部分は磁心として作用することで、磁界を合目的的に遮断弁要素11の領域に集中させ、よって迅速な切換えを可能にさせる。遮断弁要素11のストロークストッパーは中間円板20によって形成され、中間円板は中央の開口部21を有し、この中央の開口部を通じてガスはさらにガス室5の内部で流動することができる。その際、中間円板20はガス室5内部の段部にあり、そこで閉鎖ばね17の予緊張力によって位置固定して保持される。
【0013】
遮断弁要素11には、遮断弁座14と協働する密封面の領域にエラストマーパッキン15が配置され、エラストマーパッキンは可撓性のプラスチックから成っていて、よって密封面に弾性的に適応する。このエラストマーパッキン15は、ガス配量弁が比較的長時間使用されず、ガスが所定の噴入圧の下で常時吸込口に印加される場合にも、遮断弁座14での気密な密封をもたらすものである。
【0014】
遮断弁10および中間円板20の下流側には、ガス室5内に制御弁25が配置され、制御弁は、遮断弁10と同様に、ガス室5内での排出口8へのガス流動を中断させることができる。制御弁25は制御弁要素26を含み、制御弁要素はマグネットアーマチュア27と閉鎖要素28とを含み、マグネットアーマチュアと閉鎖要素とは互いに結合され、よって常に一緒に移動する。マグネットアーマチュア27は実質的に円筒状に形成され、2つまたはそれ以上の縦孔35を有し、これら縦孔を通じてガス状燃料が排出口8の方向に流れることができ、この場合排出口は、ハウジング1の燃焼室側端部を形成している弁体2の端部にある。閉鎖要素28はピストン状に形成され、その燃焼室側端部に、すなわち図面では下端に閉鎖皿28’を有し、閉鎖皿には密封面が形成され、この密封面でもって閉鎖皿は制御弁座31と協働し、制御弁座はノズル体3の外面に排出口8を取り囲んで形成されている。閉鎖要素28は、ノズル体3内の段部32と支持円板33との間に予圧付勢状態のもとに配置されているばね30によって取り囲まれ、この場合支持円板33は閉鎖要素28と固定結合されている。ばね30の予緊張力により、制御弁要素26は制御弁座31に対して押圧されて、排出口8を閉鎖する。
【0015】
制御弁25を開くために電磁石29を通電し、電磁石は制御弁要素26をばね30の力に抗して制御弁座31から燃焼室の方向へ引っ張り、すなわちガス室5から引き出す。これによって、閉鎖皿28’と制御弁座31との間で流動横断面がコントロールされて開き、この流動横断面を通じてガス状燃料が流出する。電磁石29の通電の終了後、ばね30は制御弁要素26をその閉鎖位置へ押し戻す。
【0016】
他の実施例が
図2に図示されており、この実施例は
図1と同じ図示でガス配量弁を示しているが、ここでは遮断弁要素11’は
図1の第1実施例に比べて180゜回転させて配置されている。対応的に、閉鎖ばね7’はここでは吸込口7と遮断弁要素11’との間に予緊張状態で配置され、遮断弁要素11’を、中間円板20の中央の開口部21に形成されている遮断弁座14’に対して押圧している。この実施例でも、遮断弁要素11’が中央の開口部21を気密に閉鎖するように、エラストマーパッキン15’が設けられている。
【0017】
遮断弁要素11’は、
図2の実施例では、ガス状燃料の流動方向とは逆方向での電磁石12の作用によって開く。吸込口7と排出口8との間でガス状燃料の許容しがたいほどの大きな圧力差が発生するような過圧状態になると、ガスの流れは閉鎖ばね17’の力を支援して、遮断弁要素11’をその閉鎖位置へ押す。これは、ガス状燃料を供給すべきシステム内への、たとえば内燃機関の燃焼室内へのガス状燃料のコントロール不能な放出を阻止する。
【0018】
両電磁石12,29は互いに独立に起動させることができ、その結果遮断弁10と制御弁25とを互いに独立に開閉させることができる。燃焼室内へのガス状燃料の本来の配量のためには制御弁25で十分である。というのは、通常は、時間的に密接して連続する配量の間に完全に密に閉じる必要はないからである。すなわちガス配量弁は、配量の開始時に遮断弁10が開き、その後初めて、その開弁時点とその開弁時間とによってガス状燃料の量を決定する制御弁25が開くように、作動させることができる。ガス状燃料の更なる放出をすぐに行う必要がある場合には、制御弁25のみを閉弁して再び開弁させることも可能で、他方遮断弁10は常時開いたままにしておく。比較的長い配量休止時間の際に初めて遮断弁10をも閉弁させて、必要な絶対密封性を達成する。それ故、遮断弁10は高いダイナミックスを有する必要はなく、すなわちここでは、小型の電磁石のみを含み、それ故少ないエネルギーで間に合う比較的簡潔な電磁弁を使用することができる。制御弁25は高度な密封要件を満たす必要がないので、ここでは、大きな負荷に耐えて高寿命を有する、硬質で低摩耗性の材料を制御弁座の領域に使用することができる。
【符号の説明】
【0019】
1 ハウジング
5 ガス室
7 吸込口
8 排出口
10 遮断弁
11,11’ 遮断弁要素
12 電磁石(電気アクチュエータ)
14,14’ 遮断弁座
17,17’ 閉鎖ばね
25 制御弁
26 制御弁要素
29 電磁石
30 制御弁座