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特許7464757隠された原動機付き車両との衝突リスクの低減
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  • 特許-隠された原動機付き車両との衝突リスクの低減 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】隠された原動機付き車両との衝突リスクの低減
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240402BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20240402BHJP
   B60W 30/095 20120101ALI20240402BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20240402BHJP
   B60W 40/08 20120101ALI20240402BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20240402BHJP
【FI】
G08G1/16 D
G08G1/09 H
B60W30/095
B60W40/04
B60W40/08
B60W50/14
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022570156
(86)(22)【出願日】2021-05-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-15
(86)【国際出願番号】 EP2021062815
(87)【国際公開番号】W WO2021233777
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-11-16
(31)【優先権主張番号】102020206246.3
(32)【優先日】2020-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591037096
【氏名又は名称】フオルクスワーゲン・アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】VOLKSWAGEN AKTIENGESELLSCHAFT
(73)【特許権者】
【識別番号】516256272
【氏名又は名称】ケーティーエム アーゲー
【氏名又は名称原語表記】KTM AG
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】ハルトーク・ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン・ダーニエール
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァルツ・マルクス
(72)【発明者】
【氏名】クルムプホルツ・クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ビーレ・トーマス
【審査官】佐藤 吉信
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0096255(US,A1)
【文献】特開2000-357298(JP,A)
【文献】特開平07-225274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1の原動機付き車両(1)と第2の原動機付き車両(2)の間の衝突リスクを低減する方法であって、
-第1の原動機付き車両(1)及び第2の原動機付き車両(2)が、それぞれ異なる道路(4a,4b)において道路(4a,4b)の共通の交差点(5)又はジャンクションの方向へ走行し、
-少なくとも1つの第1の車両-周囲通知が第1の原動機付き車両(1)から送信されて第2の原動機付き車両(2)によって受信される、前記方法において、
第2の原動機付き車両(2)の第2の演算ユニット(9)を用いて、
-第1の原動機付き車両(1)が第2の原動機付き車両(2)の運転者に対して、及び/又は第2の原動機付き車両(2)の周囲センサシステム(13)に対して、第1の原動機付き車両(1)の前方を走行する第3の原動機付き車両(3)によって隠されているリスク状況が生じているかどうかが、少なくとも1つの第1の車両-周囲通知に依存して特定され、
-リスク状況が生じていることが確認されたときに、危機解析が実行され、
-危機解析の結果に依存してリスク低減措置が開始されること
-第1の原動機付き車両(1)の周囲センサシステム(12)を用いて、走行方向における第1の原動機付き車両(1)の前方にある周囲を表す第1のセンサデータが生成され、
-少なくとも1つの第1の車両-周囲通知が、第1のセンサデータに依存して生成及び送信されること、
少なくとも1つの第1の車両-周囲通知が第1のセンサデータについての第1の車両-周囲センサ通知を含み、第1の車両-周囲センサ通知が特に周期的に送信されること、
-別の原動機付き車両が所定の範囲内で第1の原動機付き車両(1)の前方及び/又は近傍にあるかどうかが、第1の原動機付き車両(1)の第1の演算ユニット(8)を用いて、第1のセンサデータに基づいてチェックされ、
-該チェックに基づき別の原動機付き車両が所定の範囲内にあることが特定されるときにのみ第1の車両-周囲センサ通知が送信されること
を特徴とする方法。
【請求項2】
-交差点(5)又はジャンクションが第1の原動機付き車両(1)から所定の距離内にあるかどうかが第1の演算ユニット(8)を用いて更にチェックされ、
-交差点(5)又はジャンクションが所定の距離内にあることが更なるチェックに基づき特定されるときにのみ、第1の車両-周囲センサ通知が送信される
ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項3】
-少なくとも1つの第2の車両-周囲通知が第2の原動機付き車両(2)から送信されて第1の原動機付き車両(1)によって受信され、
-別の原動機付き車両が所定の範囲内にあることが更なるチェックに基づいて特定されるときに、第1の演算ユニット(8)を用いて第1の別の危機解析が実行され、
-該別の危機解析の結果に依存して、第1の演算ユニット(8)を用いて第1の別のリスク低減措置が開始される
ことを特徴とする請求項又はに記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの第1の車両-周囲通知が第1の原動機付き車両(1)の状態についての車両-周囲ステータス通知を含み、第1の車両-周囲ステータス通知が特に周期的に送信されることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
-リスク低減措置が、第2の原動機付き車両(2)の運転者に対する視覚的、聴覚的及び/又は触覚的な警告の発出を含み、及び/又は
-リスク低減措置が第2の原動機付き車両(2)の制御への自動的な介入を含み、及び/又は
-リスク低減措置が、第2の原動機付き車両(2)の周囲への視覚的及び/又は聴覚的な警告の発出を含む
ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
-第2の原動機付き車両の運転者監視システム(10)を用いて、第2の原動機付き車両(2)の運転者についての運転者監視データが生成され、
-第2の演算ユニット(9)を用いて、
・危機解析が運転者監視データに依存して行われ、及び/又は
・第2の別の危機解析が運転者監視データに依存して行われ、該第2の別の機器解析の結果に依存して第2の別のリスク低減措置が開始される
ことを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
1の原動機付き車両(1)と第2の原動機付き車両(2)の間の衝突リスクを低減するシステムであって、第1の原動機付き車両(1)及び第2の原動機付き車両(2)が、それぞれ異なる道路(4a,4b)において道路(4a,4b)の共通の交差点(5)又はジャンクションの方向へ走行し、システム(11)が、
-少なくとも1つの第1の車両-周囲通知を送信するように構成された、第1の原動機付き車両(1)のための第1の通信インターフェース(6)と、
-少なくとも1つの第1の車両-周囲通知を受信するように構成された、第2の原動機付き車両(2)のための第2の通信インターフェース(7)と、
-第2の原動機付き車両(2のための第2の演算ユニット(9)と
を備えた前記システムにおいて、
第2の演算ユニット(9)が、
-第1の原動機付き車両(1)が第2の原動機付き車両(2)の運転者に対して、及び/又は第2の原動機付き車両(2)の周囲センサシステム(13)に対して、第1の原動機付き車両(1)の前方を走行する第3の原動機付き車両(3)によって隠されているリスク状況が生じているかどうかを、少なくとも1つの第1の車両-周囲通知に依存して特定するように、
-リスク状況が生じていることが確認されたときに、危機解析が実行されるように、及び-危機解析の結果に依存して、リスク低減措置が開始されるように
構成されており、
-システム(11)に第1の原動機付き車両(1)の周囲センサシステム(12)が設けられ、第1の原動機付き車両(1)の周囲センサシステム(12)を用いて、走行方向における第1の原動機付き車両(1)の前方にある周囲を表す第1のセンサデータが生成され、
-少なくとも1つの第1の車両-周囲通知が、第1のセンサデータに依存して生成及び送信され、
少なくとも1つの第1の車両-周囲通知が第1のセンサデータについての第1の車両-周囲センサ通知を含み、第1の車両-周囲センサ通知が特に周期的に送信され、
-システム(11)に第1の原動機付き車両(1)の第1の演算ユニット(8)が設けられ、別の原動機付き車両が所定の範囲内で第1の原動機付き車両(1)の前方及び/又は近傍にあるかどうかが、第1の原動機付き車両(1)の第1の演算ユニット(8)を用いて、第1のセンサデータに基づいてチェックされ、
-該チェックに基づき別の原動機付き車両が所定の範囲内にあることが特定されるときにのみ第1の車両-周囲センサ通知が送信されることを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動二輪車である第1の原動機付き車両と第2の原動機付き車両の間の衝突リスクを低減する方法であって、第1の原動機付き車両及び第2の原動機付き車両が、それぞれ異なる道路において道路の共通の交差点又はジャンクションの方向へ走行し、少なくとも1つの第1の車両-周囲通知が第1の原動機付き車両から送信されて第2の原動機付き車両によって受信される、前記方法に関するものである。本発明は、そのほか、衝突リスクを低減する対応するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
原動機付き車両が、例えば前方を走行し場合によってはより大きな別の原動機付き車両によって隠されると、これは、交差点又はジャンクションにおいて重大な事故につながりかねない。このことは、特に自動二輪車の場合に重要である。なぜなら、その比較的小さな大きさにより他の原動機付き車両によって隠されやすいであるためである。事故統計は、例えば、ドイツにおける自動二輪車が関連する全ての事故の主な大多数が交差点で発生し、当該事故は大部分が自動二輪車の運転者によって引き起こされるものではないことを示している。ここで、関与する原動機付き車両の運転者やカメラシステム又はレーダシステムが、隠された自動二輪車を適時に認識することができるようになっていないことがよくある。同様に、当該問題は、自動二輪車の運転者にとっても当てはまる。
【0003】
特許文献1には、右折時に原動機付き車両を補助する装置が記載されている。ここで、前方を走行する車両の死角により後続の車両を検知する困難性に依存して、右折しようとしている車両の処理ユニットを用いて死角についての等級が特定される。これに依存して、右折する原動機付き車両の運転者が相応に通知を受ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2011/0095907号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
当該背景において、本発明の課題は、原動機付き車両のうち1つが他の原動機付き車両にとって隠されている場合にも衝突についてのリスク又は衝突によるリスクを低減することが可能な、原動機付き車両間の衝突リスクを低減する改善されたコンセプトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
当該課題は、本発明により、独立請求項の各対象によって解決される。有利な発展形態及び好ましい実施形態は、従属請求項の対象である。
【0007】
改善されたコンセプトは、車両-周囲通知(車両対周囲通知)を場合によっては隠された原動機付き車両自体によって送信し、覆い隠しを特定し場合によっては状況の重大性を評価するために、別の原動機付き車両が車両-周囲通知に基づいて解析を実行するという着想に基づくものである。
【0008】
改善されたコンセプトによれば、特に自動二輪車、例えばオートバイである第1の原動機付き車両と第2の原動機付き車両の間の衝突リスクを低減する方法が提供される。このとき、第1の原動機付き車両及び第2の原動機付き車両は、それぞれ異なる道路において道路の共通の交差点又はジャンクションの方向へ走行する。少なくとも1つの第1の車両-周囲通知が特に第1の原動機付き車両の第1の通信インターフェースを用いて生成及び送信され、少なくとも1つの第1の車両-周囲通知は、第2の原動機付き車両によって、特に第2の原動機付き車両の第2の通信インターフェースを用いて受信される。第1の原動機付き車両が第2の原動機付き車両の運転者にとって、及び/又は第2の原動機付き車両の周囲センサシステムにとって、第1の原動機付き車両の前方を走行する第3の原動機付き車両によって隠されているリスク状況が生じているかどうかが、第2の原動機付き車両の第2の演算ユニットを用いて、少なくとも1つの第1の車両-周囲通知に依存して特定される。リスク状況が生じていることが特定された場合には第2の演算ユニットを用いて危機解析が実行され、衝突リスクを低減するために、当該危機解析の結果に依存してリスク低減措置が開始される。
【0009】
原動機付き車両が道路において走行することは、ここ及び以下では、原動機付き車両が交通により、又は状況により、例えば信号機において、交差点において、又はジャンクションにおいて、又は渋滞により一時的に停止する状況も含まれ得る。
【0010】
衝突リスクは、特に、第1の原動機付き車両と第2の原動機付き車両の間で衝突に至ることについての確率若しくはリスク及び/又は実際の衝突により関与する人及び/又は原動機付き車両の重大な損傷若しくは傷害に至るリスクと理解され得る。
【0011】
したがって、リスク低減措置として、衝突の実際の発生についてのリスクを低減し、及び/又は実際の衝突の予測される重大性ひいては関与する人についての傷害リスク又は傷害の重大性を低減する全ての措置が考慮の対象となる。
【0012】
第1の原動機付き車両は、例えば第1の演算ユニットを備えることが可能である。第1の演算ユニットは、特に、第1の通信インターフェースを少なくとも1つの第1の車両-周囲通知を生成及び送信するのために制御するために、例えば第1の通信インターフェースと接続されることが可能である。
【0013】
車両-周囲通知は、例えば、送信する原動機付き車両と別の原動機付き車両の間又は原動機付き車両と原動機付き車両の周囲におけるインフラ設備の間で情報及び/又はデータを交換するための、原動機付き車両、特に通信インターフェースを用いて無線で送信される通知と理解され得る。対応する通信は、2つの原動機付き車両間の通信の場合には、Car-to-Car通信、C2C通信、車車間通信又はV2V通信と呼ばれる。原動機付き車両と、インフラ設備又は原動機付き車両であり得る、原動機付き車両の周囲における詳細に説明しない受信ユニットとの間の通信の一般的な場合には、C2X又はV2Xと呼ばれる。したがって、以下では、C2Xという表記は、「車両-周囲」(「車両対周囲」)と置換可能に用いられる。
【0014】
C2X通信あるいはC2X通知は、特に標準化されることが可能である。特に、ここで、及び以下で説明されるC2X通知は、ヨーロッパ電気通信標準協会ETSI(European Telecommunication Standards Institute)のうち1つによる通知又は1つ若しくは複数のCAM通知(英語:“Cooperative Awareness Message”)又は1つ若しくは複数のCPM通知(英語:“Collective Perception Message”)を含むことができる。CAM通知は、車両-周囲ステータス通知(車両対周囲ステータス通知)とも呼ばれることができ、CPM通知は、車両-周囲センサ通知(車両対周囲センサ通知)とも呼ばれることができる。
【0015】
第1及び第2の原動機付き車両が異なる道路において道路の共通の交差点又はジャンクションの方向へ走行することは、特に、第1の原動機付き車両のあり得る軌道が第2の原動機付き車両のあり得る軌道と交差すると理解することができる。例えば、第1の原動機付き車両がジャンクション又は交差点をまっすぐに横切ろうとしている可能性がある一方、第2の原動機付き車両は、交差点又はジャンクションにおいて曲がろうとしている可能性がある。例えば、このような状況では、第1の原動機付き車両が第2の原動機付き車両に対して優先通行権を有することがある。これにより、状況が特に危機的となる。なぜなら、第1の原動機付き車両の運転者は場合によっては優先通行権の規則を信頼し、これに対応して、場合によっては突然現れる第2の原動機付き車両は第1の原動機付き車両の運転者にとっては特に驚きであるためである。
【0016】
第2の原動機付き車両の運転者にとって第1の原動機付き車両が第3の原動機付き車両によって隠されていることは、特に、第1の原動機付き車両が、運転者が第3の原動機付き車両による幾何学的な覆い隠しにより原理的に視認することができない空間範囲において完全に又は所定の最小割合において位置していることと理解され得る。同様に、第2の原動機付き車両の周囲センサシステムにとって第1の原動機付き車両が第3の原動機付き車両によって隠されていることとも理解され得る。
【0017】
しかし、改善されたコンセプトの様々な実施形態においては、第2の原動機付き車両の運転者にとって第1の原動機付き車両が原理的には認識され得るものの、すなわち幾何学的な観点から隠されていないものの、第2の原動機付き車両の運転者の不注意又はその他の認知上の行動様式により第1の原動機付き車両の存在が認識されず、対応してこれに対して反応しないという状況も考慮することが可能である。
【0018】
特に自動二輪車は、当該自動二輪車が幾何学的な観点又は一般的な視覚性の観点から良好に認識可能であるにもかかわらず、自動車運転者によって見落とされやすいことが知られている。このことは、いずれにしても、部分的には、通常の道路交通において自動車の運転者が大多数の場合には自動二輪車ではなく別の自動車と直面することに起因する。対応する実施形態は、更に以下に詳細に説明される。
【0019】
少なくとも1つの車両-周囲通知によるリスク状況が生じている場合にのみ実行されるリスク低減措置が危機解析の結果に依存して実行されることにより、リスク状況の存在が、特にリスク低減措置の開始のための必要な条件となっている。方法の様々な実施形態では、リスク状況の存在が十分条件であってもよい。このような実施形態では、危機解析は、例えば別の情報に基づいて、例えば第2の原動機付き車両の周囲センサシステムのセンサデータに基づいて、例えばリスク状況の存在の確認のみに寄与する。しかし、好ましくは、リスク状況の存在は、リスク低減措置の開始についての必要条件ではあるが十分条件ではない。
【0020】
第2の原動機付き車両は、特に自動車、乗用車、トラック、商用車又は自動二輪車若しくはオートバイであってもよい。第3の原動機付き車両は、特に自動車、乗用車、トラック又は商用車であり得る。
【0021】
周囲センサシステムは、ここでは、及び以下では、周囲センサシステムの周囲を描写し、示し、又は反映するセンサデータ又はセンサ信号を生成することができるセンサシステムと理解されることができる。特に、電磁的な信号又はその他の信号を周囲から検出する能力は、センサシステムを周囲センサシステムとみなすには不十分である。例えば、カメラシステム、ライダシステム、レーダシステム又は超音波センサシステムを周囲センサシステムということができる。
【0022】
特に、以下では第2の周囲センサシステムとも呼ばれる第2の原動機付き車両の周囲センサシステムは、カメラシステム、レーダシステム、ライダシステム及び/又は超音波センサシステムを含むことができる。
【0023】
上述のように、第1の原動機付き車両が第3の原動機付き車両によって隠されていることにより、定義上、第1の原動機付き車両は、第2の原動機付き車両の運転者及び/又は第2の周囲センサシステムによって認識されないことがある。しかし、対応して、運転者及び/又は第2の周囲センサシステムは、第1の原動機付き車両が第3の原動機付き車両によって隠されているという事実も特定することができないか、又は信頼性をもって特定することができない。そのため、少なくとも1つの第1の車両-周囲通知が第1の原動機付き車両自体によって送信されて第2の原動機付き車両によって評価されることで、改善されたコンセプトによって、一方では、第1の原動機付き車両の覆い隠しを検知する可能性が与えられる。機器解析により危機的な状況が存在する場合には、隠された第1の原動機付き車両において適当なリスク低減措置を開始することが可能である。これにより、原動機付き車両のうち1つが別の原動機付き車両によって隠されているときの原動機付き車両間の事故を防止することができるか、又はこのような事故の重大度合いを低減することが可能である。
【0024】
したがって、改善されたコンセプトによれば、第1の原動機付き車両が第3の原動機付き車両によって隠されていることを第1の原動機付き車両が認識可能であるか、又は少なくともこのことを第2の原動機付き車両に特定することを許容する情報を提供することが可能であることが活用される。
【0025】
改善されたコンセプトによる方法の少なくとも1つの実施形態によれば、危機解析は、第2の演算ユニットを用いて、少なくとも1つの第1の車両-周囲通知に依存して行われる。
【0026】
例えば、少なくとも1つの第1の車両-周囲通知は、第1の原動機付き車両の状態又は運動状態、特に速度、加速度、予測される走行操縦、第1の原動機付き車両がある車線などについての情報を含むことが可能である。当該情報は、危機解析のために考慮されることが可能である。
【0027】
少なくとも1つの実施形態によれば、危機解析は、例えば第2の原動機付き車両の運動センサシステムを用いて特定される第2の原動機付き車両の運動状態データに基づいて行われる。第2の原動機付き車両の運動状態データは、第2の原動機付き車両の速度、加速度及びこれらに類するものを含むことができる。
【0028】
少なくとも1つの実施形態によれば、第1の原動機付き車両の第1の周囲センサシステムを用いて第1のセンサデータが生成され、及び/又は第2の原動機付き車両の第2の周囲センサシステムを用いて第2のセンサデータが生成される。
【0029】
少なくとも1つの実施形態によれば、危機解析は、第1のセンサデータ及び/又は第2のセンサデータに依存して行われる。
【0030】
例えば、第2の演算ユニットは、利用可能な情報、特に第1及び/若しくは第2のセンサデータ並びに/又は第1及び/若しくは第2の原動機付き車両の運動状態データに基づいて、第1及び第2の原動機付き車両の軌道が実際に、又は予測において実際に交差する交差するかどうかを推定することが可能である。したがって、特に、第1の原動機付き車両と第2の原動機付き車両の互いからの間隔が衝突を伴うことがある所定の危機的な間隔よりも小さい期間があるかどうかを特定することが可能である。この場合、交差する軌道ということができる。
【0031】
上述の利用可能なデータ及び情報に基づき、第2の演算ユニットは、衝突を防止するために第2の原動機付き車両にとって回避又は制動が可能であるかも特定することができる。機器解析は、当該情報又は当該チェックの結果に基づいても行われることが可能である。
【0032】
少なくとも1つの実施形態によれば、第2の演算ユニットは、少なくとも1つの第1の車両-周囲通知に基づいて、及びオプションで第1及び/又は第2のセンサデータに基づいて、第1の原動機付き車両が第3の原動機付き車両によって隠されている確率を特定することができるとともに、覆い隠しの確率に基づいて危機解析を実行する。
【0033】
少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも1つの第1の車両-周囲通知は、1つ又は複数のC2X通知、特に1つ又は複数のC2C通知を含む。
【0034】
少なくとも1つの実施形態によれば、第1の原動機付き車両の第1の周囲センサシステムを用いて、第1の原動機付き車両の走行方向において第1の原動機付き車両の前方にある第1の原動機付き車両の周囲を表す第1のセンサデータが生成される。少なくとも1つの第1の車両-周囲通知は、特に、第1の通信インターフェース及び/又は第1の演算ユニットを用いて、第1のセンサデータに依存して生成及び送信される。
【0035】
第1の周囲センサシステムは、特に、カメラシステム、レーダシステム、ライダシステム及び/又は超音波センサシステムを含むことができる。
【0036】
第1のセンサデータを生成することで、第1の原動機付き車両及び特に第2の原動機付き車両によって、少なくとも1つの第1の車両-周囲通知に基づき、第3の原動機付き車両が第1の原動機付き車両の前方を走行しているかどうかを検知することが可能である。対応して、第3の原動機付き車両による第1の原動機付き車両の覆い隠しの確率は、第1のセンサデータに基づき特定されることができるか、又はリスク状況の存在を対応して特定することが可能である。
【0037】
少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも1つの第1の車両-周囲通知が第1のセンサデータについての第1の車両-周囲センサ通知を含み、第1の車両-周囲センサ通知が特に周期的に送信される。
【0038】
このとき、第1の車両-周囲センサ通知の周期的な送信は、特に、例えば1~10ヘルツの規模にある所定の周波数で行われ、それぞれ新たな送信時には、第1の車両-周囲通知が対応して更新される。車両-周囲センサ通知が実際に周期的に送信されるかどうか、又はどの期間中に車両-周囲センサ通知が送信されるかは、別の条件の対象であり得る。
【0039】
少なくとも1つの実施形態によれば、別の原動機付き車両、特に第3の原動機付き車両又は第4の原動機付き車両が第1の原動機付き車両の前方及び/又は近傍(側方)の所定の範囲内にあるかどうかが、第1の原動機付き車両の第1の演算ユニットを用いて、第1のセンサデータに基づいてチェックされる。第1の車両-周囲センサ通知は、別の原動機付き車両が所定の範囲内にあることがチェックに基づき特定される場合にのみ周期的に送信される。
【0040】
したがって、このようにして、特に、別の原動機付き車両が第1の原動機付き車両に隣り合う車線にあるかどうか、及び/又は別の原動機付き車両が前方を走行しているかどうかが特定される。これにより、第2の演算ユニットは、第1の車両-周囲センサ通知に基づき、別の原動機付き車両による、特に第3の原動機付き車両によるあり得る覆い隠しを検知することが可能である。
【0041】
少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも1つの第2の車両-周囲通知が、第2の原動機付き車両を用いて生成されるとともに送信され、第1の原動機付き車両を用いて受信される。
【0042】
少なくとも1つの第2の車両-周囲通知は、特に第2の原動機付き車両の現在の状態についての第2の車両-周囲ステータス通知を含むことが可能である。
【0043】
少なくとも1つの実施形態によれば、第1の車両-周囲センサ通知は、少なくとも1つの第2の車両-周囲通知が第1の原動機付き車両によって受信されることが第1の演算ユニットを用いて特定される場合にのみ送信される。
【0044】
第1の車両-周囲センサ通知が例えば所定の範囲における別の原動機付き車両の存在又は少なくとも1つの第2の車両-周囲通知の受信のような別の条件に結び付けられることにより、データトラフィック全体を有利に低減することが可能である。
【0045】
少なくとも1つの実施形態によれば、交差点又はジャンクションが第1の原動機付き車両から所定の距離内にあるかどうかが、第1の演算ユニットによって更にチェックされる。第1の車両-周囲センサ通知は、交差点又はジャンクションが所定の距離内にあることが上記更なるチェックに基づき特定される場合にのみ送信される。
【0046】
これによっても、データトラフィック全体を低減することが可能である。交差点あるいはジャンクションが第1の原動機付き車両に対して所定の最小の距離内にある場合にのみ、車両-周囲センサ通知の送信及び場合によっては受信が必要であるか、又は有意義である。
【0047】
少なくとも1つの実施形態によれば、第1の演算ユニットは、交差点又はジャンクションが所定の距離内にあるかどうかを特定あるいはチェックするために、データベースからデジタルマップデータを呼び出す。データベースは、オンラインデータベース又はオフラインデータベースであってよく、したがって、特に、第1の原動機付き車両の外部における中央演算システムのメモリ要素にあるか、又は第1の原動機付き車両、特に第2の演算ユニットのメモリ要素にメモリされたデータベースであってよい。
【0048】
少なくとも1つの実施形態によれば、前方を走行する車両、特に第1の原動機付き車両の前方を走行する車両、例えば第3の原動機付き車両が交差点又はジャンクションにおいて曲がろうとしているかどうかが、第1の演算ユニットを用いて、例えば前方を走行する原動機付き車両のステータス表示又は前方を走行する車両のウインカ表示により、第1のセンサデータに基づき特定される。交差点又はジャンクションが所定の距離内にあるかどうかが、第1の演算ユニットを用いて、当該情報に基づいて特定される。
【0049】
少なくとも1つの実施形態によれば、第1の原動機付き車両は、特に第1の通信インターフェースを用いて、1つ又は複数のC2X通知を第1の原動機付き車両の周囲内のインフラ設備から受信する。第1の演算ユニットは、交差点又はジャンクションが所定の距離内にあるかどうかをインフラ設備のC2X通知に基づいてチェックする。
【0050】
少なくとも1つの実施形態によれば、第1の原動機付き車両は、特に第1の通信インターフェースを用いて、特に前方を走行する原動機付き車両又は別の前方を走行する原動機付き車両の走行履歴を含む、前方を走行する原動機付き車両又は別の前方を走行する原動機付き車両からの1つ又は複数のC2X通知を受信する。走行履歴は、例えば100~500mの規模にある所定の距離にわたるウェイポイントを含むことが可能である。第1の演算ユニットは、交差点又はジャンクションが所定の範囲内にあるかどうかを、前方を走行する原動機付き車両又は前方を走行する別の原動機付き車両のC2X通知に基づいて、特に走行履歴に基づいてチェックする。
【0051】
少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも1つの第2のC2X通知が、第2の原動機付き車両から送信されて第1の原動機付き車両によって受信される。更なるチェックに基づき、別の原動機付き車両が所定の範囲に内にあることが特定されると、第1の演算ユニットを用いて更なる危機解析が実行される。第1の演算ユニットを用いて、更なる危機解析の結果に依存して更なるリスク低減措置が開始される。このような実施形態は、第1の周囲センサシステムを用いた第1のセンサデータの生成は必ずしも必要としない。
【0052】
換言すれば、リスク低減措置の開始は、第1及び第2の原動機付き車両側で行われることが可能である。
【0053】
少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも1つの第2のC2X通知はCAM通知を含む。
【0054】
少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも1つの第1のC2X通知は、第1の原動機付き車両の状態、特に現在の状態についての第1のC2X通知、特にCAM通知を含み、第1のC2X通知は、特に周期的に送信される。
【0055】
第1の原動機付き車両の状態は、第1の原動機付き車両の運動状態、位置、加速状態又は速度を含むことができる。
【0056】
少なくとも1つの実施形態によれば、リスク低減措置は、第2の原動機付き車両の運転者に対する視覚的、聴覚的及び/又は触覚的な警告の発出を含む。
【0057】
このとき、警告の構成は、特に、検出された重大度、特にあり得る衝突についての実際の確率に依存して行われることが可能である。
【0058】
少なくとも1つの実施形態によれば、更なるリスク低減措置は、第1の原動機付き車両の運転者に対する視覚的、聴覚的及び/又は触覚的な警告の発出を含む。
【0059】
少なくとも1つの実施形態によれば、リスク低減措置は、第2の原動機付き車両の制御への自動的な介入を含み、及び/又は更なるリスク低減措置は、第1の原動機付き車両の制御への自動的な介入を含む。
【0060】
このとき、介入及び制御は、特に各原動機付き車両の制動の開始又は発進若しくは更なる走行の阻止を含むことができる。
【0061】
少なくとも1つの実施形態によれば、リスク低減措置は、第2の原動機付き車両の周囲への視覚的及び/若しくは聴覚的な警告の発出を含み、並びに/又は更なるリスク低減措置は、第1の原動機付き車両の周囲への視覚的及び/若しくは聴覚的な警告の発出を含む。
【0062】
少なくとも1つの実施形態によれば、第2の原動機付き車両の運転者監視システムを用いて、第2の原動機付き車両の運転者についての運転者監視データが生成される。危機解析は、特にリスク状況が生じていることが特定される場合に、第2の演算ユニットを用いて、運転者監視データに依存して行われる。
【0063】
少なくとも1つの実施形態によれば、第2の原動機付き車両の運転者監視システムを用いて、第2の原動機付き車両の運転者についての運転者監視データが生成され、第2の演算ユニットを用いて、第2の別の危機解析が運転者監視データに依存して行われ、該第2の別の機器解析の結果に依存して第2の別の(更なる)リスク低減措置が開始される。
【0064】
第2の原動機付き車両の運転者の体の部分、例えば頭部の位置及び/又は第2の原動機付き車両の運転者の眼の視線方向を監視するために、運転者監視システムは、例えば、1つ又は複数のカメラ又は視線追跡装置(英語:”Eyetracker”)を含むことができる。したがって、運転者監視データは、運転者の認知負荷又は認知上の注意散漫についての情報を与えることが可能である。これに対応して、第2の演算ユニットは、運転者監視データに基づき、例えば、運転者が第1の原動機付き車両を認識し、及び/又は第1の原動機付き車両に適切に反応するかどうかを検知することが可能である。
【0065】
このことは、リスク状況が生じているかどうかにかかわらず行われることが可能である。特に、このことは、第1の原動機付き車両が第3の原動機付き車両によって隠されているときに実行することも可能である。これにより、第1の原動機付き車両が幾何学的な覆い隠しとは違う理由により第2の原動機付き車両の運転者によって十分に認識されない状況においても、衝突のリスクを回避することが可能である。
【0066】
少なくとも1つの実施形態によれば、第1の原動機付き車両についての運転者の低下した注意力が存在する更なるリスク状況が生じているかどうかが、第2の演算ユニットを用いて、運転者監視データに依存して、及び少なくとも1つの第1の車両-周囲通知に依存して特定される。危機解析は、更なるリスク状況が生じていることが特定された場合にのみ、第2の演算ユニットを用いて、運転者監視データに依存して行われる。
【0067】
これに対して、更なるリスク状況が生じていないが、第1の原動機付き車両が第3の原動機付き車両によって隠されているリスク状況が生じている場合には、危機解析が、第2の演算ユニットを用いて、運転者監視データに依存せずに行われる。
【0068】
少なくとも1つの実施形態によれば、更なるリスク状況が生じておいるかどうかが、第2の演算ユニットを用いて、運転者監視データ及び第1の車両-周囲通知に依存して特定され、更なるリスク状況が生じていると特定された場合にのみ、第2の演算ユニットを用いて第2の更なる(別の)危機解析が行われる。
【0069】
特に、更なるリスク状況が生じていない場合には、第2の更なる危機解析は行われない。
【0070】
改善されたコンセプトによれば、本発明は、特に自動二輪車である第1の原動機付き車両と第2の原動機付き車両の間の衝突リスクを低減するシステムであって、第1の原動機付き車両及び第2の原動機付き車両が、それぞれ異なる道路において道路の共通の交差点又はジャンクションの方向へ走行する、前記システムが提供される。システムは第1の原動機付き車両のための第1の通信インターフェースを備えており、当該第1の通信インターフェースは、少なくとも1つの第1の車両-周囲通知を送信するように構成されている。システムは第2の原動機付き車両のための第2の通信インターフェースを備えており、当該第2の通信インターフェースは、少なくとも1つの第1の車両-周囲通知を受信するように構成されている。システムは第2の原動機付き車両のための第2の演算ユニットを備えており、当該第2の演算ユニットは、第1の原動機付き車両が第2の原動機付き車両の運転者にとって、及び/又は第2の原動機付き車両の周囲センサシステムにとって、第1の原動機付き車両の前方を走行する第3の原動機付き車両によって隠されているリスク状況が生じているかどうかを、少なくとも1つの第1の車両-周囲通知に依存して特定するように構成されている。第2の演算ユニットは、リスク状況が生じていることが特定された場合に危機解析を実行し、危機解析の結果に依存してリスク低減措置を開始するように構成されている。
【0071】
改善されたコンセプトによるシステムの更なる実施形態は、改善されたコンセプトによる、衝突リスクを低減する方法の様々な実施形態から直接読み取れ、またその逆も同様である。特に、改善されたコンセプトによるシステムは、改善されたコンセプトによる方法を実行するように構成又はプログラムされることができ、又はシステムはこのような方法を実行する。
【0072】
本発明の別の特徴は、特許請求の範囲、図面及び図面による説明から明らかである。本明細書において上述した特徴及び特徴の組合せ並びに以下において図面による説明及び/又は図面において単に示される特徴及び特徴の組合せには、それぞれ記載された組合せにおいてのみならず、改善されたコンセプトの他の組合せも含まれることが可能である。したがって、図面に明確に示されていない、及び/又は説明されていないが、説明される構成(実施形態)から個別の特徴の組合せによって生じ、及び生成可能な、改善されたコンセプトの構成(実施形態)も含まれるとともに、開示されている。したがって、特に、元々文書化された請求項の全ての特徴を備えた実施形態及び特徴の組合せも含まれているとともに開示されている。さらに、請求項の引用において示される特徴の組合せを超えるか、又はこれとは異なる実施形態及び特徴の組合せが含まれているとともに開示されている。
【0073】
本発明は、説明される実施形態の特徴の組合せも含んでいる。
【0074】
以下において、本発明の一実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1】改善されたコンセプトによる、衝突リスクを低減するシステムの例示的な一実施形態を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
以下において説明する実施例は、本発明の好ましい一実施形態である。本実施例では、実施形態の説明される構成要素は、それぞれ個別の互いに独立して考察されるべき本発明の特徴であり、当該特徴は、本発明をそれぞれ互いに独立して発展形成し、ひいては個別に、又は示される組合せとは異なる組合せにおいて本発明の構成部材とみなされることができる。さらに、説明される実施形態は、本発明の既に説明された別の特徴によって補足されることも可能である。
【0077】
図には、改善されたコンセプトによる、衝突リスクを低減するシステムの例示的な一実施形態が概略的に図示されている。
【0078】
図には、第1の原動機付き車両、特に自動二輪車1が第1の道路4aにおいて第2の道路4bとの交差点5へ向けて走行し、当該交差点を横切ろうとしている状況が図示されている。第2の原動機付き車両2、特に乗用車は、第2の道路4bにおいて交差点5に近づき、第2の原動機付き車両2の運転者は、例えば交差点5を道路4aへ左折しようとしている。これに対応して、自動二輪車1と第2の原動機付き車両2の可能性のある軌道は、交差点5の範囲において交差する。図示の例示的な状況では、例えば自動二輪車1は、第2の原動機付き車両2に対して優先通行権を有している。
【0079】
第3の原動機付き車両3、例えば配送車両又は商用車両が、第1の道路4aの同一の車線において自動二輪車1の前方を走行しており、例えば交差点5を右折しようとしている。対応して、第3の原動機付き車両3は、第2の原動機付き車両2の視界から、あるいは第2の原動機付き車両2の運転者の視界から自動二輪車1を隠すことがある。これにより、第2の原動機付き車両2の運転者が自動二輪車1を認識することなく交差点5において曲がるか、あるいは交差点5へ進入すると、大きな衝突リスクが生じる。
【0080】
図には、改善されたコンセプトによる、衝突リスクを低減するシステム11が、例示的な一実施形態において概略的に図示されている。システム11は、自動二輪車1の第1の演算ユニット8と、当該第1の演算ユニット8に接続された自動二輪車1の第1の通信インターフェース6とを備えている。システム11は、そのほか、第2の原動機付き車両2の第2の演算ユニット9と、当該第2の演算ユニット9に接続された第2の原動機付き車両2の第2の通信インターフェース7とを備えている。通信インターフェース6,7は、特にC2X(車車間通信・路車間通信)インターフェースとして構成されている。
【0081】
システム11はそのほか自動二輪車1の第1の周囲センサシステム12を備えており、当該第1の周囲センサシステムは、例えばレーダシステムを含むことができる。これに代えて、又はこれに加えて、第1の周囲センサシステム12は、1つ又は複数のカメラ、ライダシステム及び/又は超音波センサシステムを含むことも可能である。
【0082】
システム11は、そのほか、第2の原動機付き車両2のための第2の周囲センサシステム13を備えている。第2の周囲センサシステム13は、例えば1つ若しくは複数のカメラ、1つ若しくは複数のレーダシステム、1つ若しくは複数のライダシステム及び/又は1つ若しくは複数の超音波センサシステムを含むことが可能である。
【0083】
第1の周囲センサシステム12によって、自動二輪車1は、前方を走行する第3の原動機付き車両3を検知し、ひいては第3の原動機付き車両3による自動二輪車1のあり得る覆い隠しについての示唆を検知するようになっている。特に、第1の周囲センサシステム12は、自動二輪車1の前方及び/又は近傍(側方)の範囲を監視し、これに基づき第1のセンサデータを生成することが可能である。そして、第1の演算ユニット8を用いて、例えば第1の通信インターフェース6が少なくとも1つのC2X通知を生成するために制御(作動)される。
【0084】
様々な実施形態では、自動二輪車1は、例えば1~10Hzの周波数(頻度)で周期的にステータス通知、すなわちCAM通知を送信することが可能である。加えて、自動二輪車1は、センサオブジェクト通知、すなわちCPM通知を継続的かつ周期的に、又は前方を走行する第3の原動機付き車両3が第1の演算ユニット8を用いて第1のセンサデータに基づいて検出されるときに周期的に送信することができる。これに代えて、CPM通知は、前方を走行する第3の原動機付き車両3が検出され、第1の演算ユニット8を用いて第1のセンサデータ又は追加的な情報に基づいて交差点5が所定の範囲内又は所定の距離内に生じることが特定される場合にのみ周期的に送信されることも可能である。
【0085】
このために、第1の演算ユニット8は、例えばオンラインマップデータ又はオフラインマップデータ、例えば作動しているウインカのような前方を走行する第3の原動機付き車両3のステータス表示又はインフラ設備例えば信号機又はこれに類するものからのC2Xインフラ通知を考慮に入れることが可能である。
【0086】
交差点5が所定の距離内にあることを確認するために、他の手法を用いることも可能である。例えば、自動二輪車1は、他の原動機付き車両、例えば第3の原動機付き車両3のC2X通知を受信し、これと共に送信された走行履歴、すなわち例えば最後の100~500m内に進んだ区間のウェイポイントを得ることが可能である。そして、これに基づき、第1の演算ユニット8は適当なチェックを行うことが可能である。
【0087】
第2の原動機付き車両2もC2X通知、例えばCAM通知又はCPM通知を送信することができ、当該CAM通知又はCPM通知は、自動二輪車1、特に第1の通信インターフェース6によって受信されることが可能である。
【0088】
第3の原動機付き車両3は、第1の演算ユニット8によって第1のセンサデータに基づき検出されることができ、及び/又は第2の演算ユニット9によって自動二輪車1からの少なくともC2X通知に基づいて検出されることができる。
【0089】
これに基づき、推定の結果に依存して各運転者に適当に警告し、又は各原動機付き車両の制御への介入を行うために、第2の演算ユニット9と、例えば更に第1の演算ユニット8とがリスク判定及び/又は危機推定を行うことが可能である。
【0090】
したがって、衝突の可能性があり、例えば原動機付き車両1,2の間の視界が第3の原動機付き車両3によって隠されている場合に、改善されたコンセプトにより、交差点5の範囲において、第2の原動機付き車両2の運転者も、また自動二輪車1の自動二輪車運転者も、警告されることが可能である。
【0091】
このために、第2の原動機付き車両2の運転者の警告あるいは自動二輪車1の運転者の警告のために作動条件を設定することが可能である。
【0092】
第2の原動機付き車両2の運転者についての作動条件は、例えば、第2の原動機付き車両2が、交差点5に近づき、交差点の停止線に既にあるか、又は交差点5の交差点範囲へ入ろうとしていることを含むことできる。作動条件は、第2の原動機付き車両が交差点5において優先通行権を有さないことも含むことができる。作動条件は、自動二輪車が例えば交差点5の左方から近づくことも含むことができる。作動条件は、自動二輪車1が周期的にCAM通知を送信し、及び/又はCPM通知を送信することを含むこともでき、CPM通知は、前方を走行する第3の原動機付き車両3についての情報を含んでいる。作動条件は、自動二輪車1のCPM通知が、第3の原動機付き車両3が曲がろうとしており、特に右折しようとしており、場合によってはこのため減速するというような情報を含むことも可能である。作動条件は、交差点5の範囲における、特に軌道のあり得る交差の範囲における自動二輪車1の予測された到達が第2の原動機付き車両2の到達又は予定された発進と時間的に一致するか、又は所定の時間インターバル内にあることも含むことができる。
【0093】
第2の原動機付き車両の運転者の警告についての作動条件は、第2の演算ユニット9による運転者監視データの評価が、第2の原動機付き車両2の運転者が自動二輪車1に気づいていないことを示唆していることを含むことも可能である。このために、システム11は、例えば、第2の原動機付き車両の運転者の視線方向又は頭部位置を監視する運転者監視システム10を含むことができる。これにより、第2の原動機付き車両の運転者の内部空間(車室内)監視又は運転者監視を実行することが可能である。運転者監視データは、運転者の認識上の注意散漫を共に考慮するために、適当に評価されることが可能である。
【0094】
上述の作動条件は、様々な組合せにおいて設定されることが可能である。特に所定の規定に従い1つ又は複数の作動条件が適合する場合には、例えば警告が第2の原動機付き車両の運転者に表示されるか、又は自動二輪車1を示唆する警告音が発出される。このとき、当該指摘は、例えば、危機度合い及び起こり得る衝突の可能性に応じて多段的に行われることが可能である。このために、例えば、軌道の一時的な交差に基づき、第2の原動機付き車両2の運転者の走行態様に基づき、又は第2の原動機付き車両2の運転者の視界から自動二輪車1が隠される可能性に基づき異なり得る。
【0095】
指摘に加えて、又は指摘に代えて、第2の原動機付き車両2のブレーキシステムを作動させるか、又はブレーキ圧を増大させるか、又は自動的なブレーキ動作を開始するか、又は第2の原動機付き車両2が停車していれば、発進を防止することも可能である。
【0096】
対応して、自動二輪車1の運転者に対する警告についても、1つ又は複数の作動条件を設定することが可能である。自動二輪車1の運転者についての作動条件は、例えば、自動二輪車1が交差点5へ近づくこと、及び/又は第3の原動機付き車両3が自動二輪車1の前方にあることを含むことができる。このことは、特に第1の周囲センサシステム12によって検出されることが可能であるか、又は第3の原動機付き車両3が送信するC2X通知に基づいて検出されることが可能である。自動二輪車1の運転者についての作動条件は、第3の原動機付き車両3が曲がろうとしていることを含むことも可能である。このことは、例えば、第3の原動機付き車両3のCAM通知に基づく第3の原動機付き車両3のウインカ状態によって、又は第1のセンサデータに基づき特定されることが可能である。これに代えて、又はこれに加えて、第3の原動機付き車両3の差し迫った曲折(右左折)は、第3の原動機付き車両3の減速によっても検出されることが可能である。
【0097】
自動二輪車1の運転者に対する警告についての作動条件は、第2の原動機付き車両2が交差点5へ近づくか、又は停止線において既に停止していることを含むことも可能である。このことは、例えば、第2の原動機付き車両2から送信されるC2X通知、特にCAM通知によって検出されることができるか、又は内部のマップデータ、交差点5のインフラ設備のマップ通知若しくは第1のセンサデータに基づく交通標識検知に基づく優先通行権の検知によって検出されることが可能である。
【0098】
適宜の組合せにおいて設定されることが可能な1つ又は複数の作動条件が適合すると、自動二輪車の運転者は、適切な手段で警告される。ここでも、当該指摘は、危機度合い及び起こり得る衝突の可能性に応じて多段的に行われることが可能である。ここで、可能性のある軌道の一時的な交差に基づき、原動機付き車両2及び/又は自動二輪車の運転者の走行態様に基づき、自動二輪車1の運転者の視界から原動機付き車両2が隠される可能性などに基づき異なり得る。ここで、自動二輪車1の運転者への指摘は、視覚的、聴覚的又は触覚的に行われることも可能である。
【0099】
これに代えて、又はこれに加えて、衝突の重大さを低減するために、非常ブレーキ又はブレーキ介入を自動的に開始することも可能である。
【0100】
上述のように、改善されたコンセプトによって、両原動機付き車両のうち1つが別の原動機付き車両によって隠されている原動機付き車両などの間の衝突の確率又は重大さを低減することが可能な方法及びシステムが提供される。これにより、様々な実施形態において、交差点又はジャンクションの範囲での隠された自動二輪車との事故の防止及び回避を具体的に可能とする、特に乗用車保護機能が可能となる。
なお、本発明は、以下の態様も包含し得る:
1.特に自動二輪車である第1の原動機付き車両(1)と第2の原動機付き車両(2)の間の衝突リスクを低減する方法であって、
-第1の原動機付き車両(1)及び第2の原動機付き車両(2)が、それぞれ異なる道路(4a,4b)において道路(4a,4b)の共通の交差点(5)又はジャンクションの方向へ走行し、
-少なくとも1つの第1の車両-周囲通知が第1の原動機付き車両(1)から送信されて第2の原動機付き車両(2)によって受信される、前記方法において、
第2の原動機付き車両(2)の第2の演算ユニット(9)を用いて、
-第1の原動機付き車両(1)が第2の原動機付き車両(2)の運転者に対して、及び/又は第2の原動機付き車両(2)の周囲センサシステム(13)に対して、第1の原動機付き車両(1)の前方を走行する第3の原動機付き車両(3)によって隠されているリスク状況が生じているかどうかが、少なくとも1つの第1の車両-周囲通知に依存して特定され、
-リスク状況が生じていることが確認されたときに、危機解析が実行され、
-危機解析の結果に依存してリスク低減措置が開始される
ことを特徴とする方法。
2.-第1の原動機付き車両(1)の周囲センサシステム(12)を用いて、走行方向における第1の原動機付き車両(1)の前方にある周囲を表す第1のセンサデータが生成され、
-少なくとも1つの第1の車両-周囲通知が、第1のセンサデータに依存して生成及び送信される
ことを特徴とする上記1.に記載の方法。
3.少なくとも1つの第1の車両-周囲通知が第1のセンサデータについての第1の車両-周囲センサ通知を含み、第1の車両-周囲センサ通知が特に周期的に送信されることを特徴とする上記2.に記載の方法。
4.-別の原動機付き車両が所定の範囲内で第1の原動機付き車両(1)の前方及び/又は近傍にあるかどうかが、第1の原動機付き車両(1)の第1の演算ユニット(8)を用いて、第1のセンサデータに基づいてチェックされ、
-該チェックに基づき別の原動機付き車両が所定の範囲内にあることが特定されるときにのみ第1の車両-周囲センサ通知が送信される
ことを特徴とする上記3.に記載の方法。
5.-交差点(5)又はジャンクションが第1の原動機付き車両(1)から所定の距離内にあるかどうかが第1の演算ユニット(8)を用いて更にチェックされ、
-交差点(5)又はジャンクションが所定の距離内にあることが更なるチェックに基づき特定されるときにのみ、第1の車両-周囲センサ通知が送信される
ことを特徴とする上記4.に記載の方法。
6.-少なくとも1つの第2の車両-周囲通知が第2の原動機付き車両(2)から送信されて第1の原動機付き車両(1)によって受信され、
-別の原動機付き車両が所定の範囲内にあることが更なるチェックに基づいて特定されるときに、第1の演算ユニット(8)を用いて第1の別の危機解析が実行され、
-該別の危機解析の結果に依存して、第1の演算ユニット(8)を用いて第1の別のリスク低減措置が開始される
ことを特徴とする上記4.又は5.に記載の方法。
7.少なくとも1つの第1の車両-周囲通知が第1の原動機付き車両(1)の状態についての車両-周囲ステータス通知を含み、第1の車両-周囲ステータス通知が特に周期的に送信されることを特徴とする上記1.~6.のいずれか1つに記載の方法。
8.-リスク低減措置が、第2の原動機付き車両(2)の運転者に対する視覚的、聴覚的及び/又は触覚的な警告の発出を含み、及び/又は
-リスク低減措置が第2の原動機付き車両(2)の制御への自動的な介入を含み、及び/又は
-リスク低減措置が、第2の原動機付き車両(2)の周囲への視覚的及び/又は聴覚的な警告の発出を含む
ことを特徴とする上記1.~7.のいずれか1つに記載の方法。
9.-第2の原動機付き車両の運転者監視システム(10)を用いて、第2の原動機付き車両(2)の運転者についての運転者監視データが生成され、
-第2の演算ユニット(9)を用いて、
・危機解析が運転者監視データに依存して行われ、及び/又は
・第2の別の危機解析が運転者監視データに依存して行われ、該第2の別の機器解析の結果に依存して第2の別のリスク低減措置が開始される
ことを特徴とする上記1.~8.のいずれか1つに記載の方法。
10.特に自動二輪車である第1の原動機付き車両(1)と第2の原動機付き車両(2)の間の衝突リスクを低減するシステムであって、第1の原動機付き車両(1)及び第2の原動機付き車両(2)が、それぞれ異なる道路(4a,4b)において道路(4a,4b)の共通の交差点(5)又はジャンクションの方向へ走行し、システム(11)が、
-少なくとも1つの第1の車両-周囲通知を送信するように構成された、第1の原動機付き車両(1)のための第1の通信インターフェース(6)と、
-少なくとも1つの第1の車両-周囲通知を受信するように構成された、第2の原動機付き車両(2)のための第2の通信インターフェース(7)と、
-第2の原動機付き車両(2のための第2の演算ユニット(9)と
を備えた前記システムにおいて、
第2の演算ユニット(9)が、
-第1の原動機付き車両(1)が第2の原動機付き車両(2)の運転者に対して、及び/又は第2の原動機付き車両(2)の周囲センサシステム(13)に対して、第1の原動機付き車両(1)の前方を走行する第3の原動機付き車両(3)によって隠されているリスク状況が生じているかどうかを、少なくとも1つの第1の車両-周囲通知に依存して特定するように、
-リスク状況が生じていることが確認されたときに、危機解析が実行されるように、及び-危機解析の結果に依存して、リスク低減措置が開始されるように
構成されていることを特徴とするシステム。
【符号の説明】
【0101】
1 自動二輪車
2 原動機付き車両
3 原動機付き車両
4a,4b 道路
5 交差点
6 通信インターフェース
7 通信インターフェース
8 演算ユニット
9 演算ユニット
10 運転者監視システム
11 衝突リスクを低減するシステム
12 周囲センサシステム
13 周囲センサシステム
図1