(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】スライドファスナーチェーンおよびスライドファスナー
(51)【国際特許分類】
A44B 19/32 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
A44B19/32
(21)【出願番号】P 2023512215
(86)(22)【出願日】2021-08-25
(86)【国際出願番号】 GB2021052205
(87)【国際公開番号】W WO2022043684
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-02-17
(32)【優先日】2020-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】安中 成樹
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼澤 成吉
(72)【発明者】
【氏名】トーマス スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ローストロン マシュー
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-167220(JP,A)
【文献】特開2014-121636(JP,A)
【文献】特開2007-296190(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/266856(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第1388302(EP,A1)
【文献】国際公開第2018/212304(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B 19/00-19/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドファスナーチェーン(13)であって、
第1ファスナーテープ(16a)の第1長手縁(15a)に取り付けられた第1列結合エレメント(14a)を有する前記第1ファスナーテープを含む第1ファスナーストリンガー(12a)と、
第2ファスナーテープ(16b)の第2長手縁(15b)に取り付けられた第2列結合エレメント(14b)を有する前記第2ファスナーテープを含む第2ファスナーストリンガー(12b)と、を含み、
前記第1列結合エレメントは、前記第1ストリンガーと第2ストリンガーを一緒に固定するためにファスナー軸線(L‐L)に沿って前記第2列結合エレメントと交互嵌合するように構成されており、
前記第1列結合エレメントおよび第2列結合エレメントの結合エレメントのそれぞれが、ショルダー部分(52)を有する本体(50)と、横軸線(T‐T)に平行に、前記ファスナー軸線に垂直に、且つネック部分(56)を介して前記ショルダー部分から離れる方向に延在するヘッド部分(54)と、を含むように形成され、前記ヘッド部分は、前記ファスナー軸線に平行に延在する溝(58)を含み、
前記第1列結合エレメントの結合エレメントのそれぞれの前記本体は前記第1ファスナーテープに取り付けられ、前記第2列結合エレメントの結合エレメントのそれぞれの前記本体は前記第2ファスナーテープに取り付けられ、
前記第1列結合エレメントが前記第2列結合エレメントと交互嵌合しているとき、前記第1長手縁と前記第2長手縁とは離隔したままであり、前記第1列結合エレメントの第1結合エレメントは、下記i)~iv)のように前記第2列結合エレメントの2つの隣接する結合エレメントの間に受容され、
i)前記第1結合エレメントの前記溝が、第1の接触領域において、前記第2列の前記隣接する結合エレメントの中間の前記第2ファスナーテープの前記第2長手縁の一部分を受容してそれに接触し、
ii)前記第1結合エレメントの前記ヘッド部分が、それぞれ第2と第3の接触領域において、前記第2列の前記隣接する結合エレメントの前記ネック部分の間に受容されてそれらと接触し、
iii)前記第2列の前記隣接する結合エレメントの前記溝の一方が、第4の接触領域において、前記第1結合エレメントに隣接する前記第1ファスナーテープの前記第1長手縁の第1の部分を受容してそれに接触し、
iv)前記第2列の前記隣接する結合エレメントの前記溝の他方が、第5の接触領域において、前記第1結合エレメントに隣接する前記第1ファスナーテープの前記第1長手縁の第2の部分を受容してそれと接触するように、
前記第1結合エレメントは、前記第1ファスナーテープの前記第1長手縁の前記第1の部分と前記第2の部分の中間にあり、
前記第1、第2、第3、第4および第5の接触領域のそれぞれにおける接触は、前記第1結合エレメントと前記隣接する結合エレメントのそれぞれとの間にシールを形成し、前記シールは前記第1長手縁と第2長手縁とを結んでいる、スライドファスナーチェーン(13)。
【請求項2】
前記シールが、前記第1結合エレメント(14a)と前記隣接する結合エレメント(14b)それぞれとの間、および前記第1長手縁と第2長手縁(15a、15b)との間に水が透過するのを実質的に防止するような水密シールである、請求項1に記載のスライドファスナーチェーン(13)。
【請求項3】
前記第1列結合エレメント(14a)の複数の結合エレメントがそれぞれ、第2列結合エレメント(14b)の2つのそれぞれの隣接する結合エレメントの間に、下記i)~iv)のように受容され、
i)前記第1列の各第1結合エレメントの前記溝(58)は、第1の接触領域において、前記第2列の前記それぞれの隣接する結合エレメントの中間の前記第2ファスナーテープ(16b)の前記第2長手縁(15b)のそれぞれの部分を受容してそれと接触し、
ii)前記第1列のそれぞれの第1結合エレメントの前記ヘッド部分(54)は、それぞれ第2および第3の接触領域において、前記第2列の前記それぞれの隣接する結合エレメントの前記ネック部分(52)の間に受容されてそれらと接触し、
iii)前記第2列の前記それぞれの隣接する結合エレメントの前記溝のうちの一方は、第4の接触領域において、前記それぞれの第1結合エレメントに隣接する前記第1ファスナーテープ(16a)の前記第1長手縁(15a)のそれぞれの第1の部分を受容してそれと接触し、
iv)前記第2列の前記それぞれの隣接する結合エレメントの溝のうちの他方は、第5の接触領域において、それぞれの第1結合エレメントに隣接する前記第1ファスナーテープの前記第1長手縁のそれぞれの第2の部分を受容してそれと接触するように、
各第1結合エレメントは、前記第1ファスナーテープの前記第1長手縁の前記それぞれの第1の部分と第2の部分の中間であり、
前記第1、第2、第3、第4および第5の接触領域のそれぞれにおける前記接触は、各第1結合エレメントと前記それぞれの隣接する結合エレメントとの間にシールを形成し、前記シールは、前記シールが前記ファスナーチェーンの全長に沿って形成されるように前記第1長手縁と第2長手縁を結んでいる、請求項1または2に記載のスライドファスナーチェーン(13)。
【請求項4】
前記第1ファスナーテープ(16a)の前記第1長手縁(15a)および前記第2ファスナーテープ(16b)の前記第2長手縁(15b)はそれぞれコードの形態をとる、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のスライドファスナーチェーン(13)。
【請求項5】
各コード(15a、15b)は、前記ファスナー軸線(L‐L)と前記横軸線(T‐T)との両方に垂直な方向の厚さが、前記コードが前記ファスナーテープの一部を構成する前記ファスナーテープ(16a、16b)の残りの部分の厚さより大きい、請求項4に記載のスライドファスナーチェーン(13)。
【請求項6】
前記第1ファスナーテープ(16a)および前記第2ファスナーテープ(16a)のそれぞれの前記コード(15a、15b)が、防水性のプラスチック材料でコーティングおよび/または含浸されている、請求項4または5に記載のスライドファスナーチェーン(13)。
【請求項7】
前記第1ファスナーテープ(16a)および第2ファスナーテープ(16b)が、防水性のプラスチック材料でコーティングおよび/または含浸されている、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のスライドファスナーチェーン(13)。
【請求項8】
前記第1列結合エレメント(14a)は、前記第1長手縁(15a)が前記第1列結合エレメントの各結合エレメントの前記ネック部分(56)に会合するように、前記第1ファスナーテープ(16a)の前記第1長手縁に取り付けられ、前記第2列結合エレメント(14b)は、前記第2長手縁(15b)が前記第2列結合エレメントの各結合エレメントの前記ネック部分(56)に会合するように、前記第2ファスナーテープ(16b)の前記第2長手縁に取り付けられる、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のスライドファスナーチェーン(13)。
【請求項9】
前記第1列結合エレメントおよび第2列結合エレメント(14a、14b)の各結合エレメントが、
第1の部分(14c)であって、前記第1の部分が前記ファスナーストリンガーの一部を構成する、前記ファスナーストリンガー(12a、12b)の前記ファスナーテープ(16a、16b)の第1の面(16f)に取り付けられた、第1の部分(14c)と、
第2の部分(14d)であって、前記第2の部分が前記ファスナーストリンガーの一部を構成する、前記第1の面と反対側の第2の面(16g)に取り付けられた、第2の部分(14d)と、
前記第1および第2の部分(14c、14d)の両方を結合する中間部分(14e)であって、前記結合エレメントの少なくとも前記ヘッド部分(54)を含む、中間部分(14e)と、
を含んでいる、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のスライドファスナーチェーン(13)。
【請求項10】
前記第1列結合エレメント(14a)が前記第2列結合エレメント(14b)と交互嵌合しているとき、前記第1ファスナーストリンガー(12a)の前記横軸線(T‐T)に平行な方向における前記コード(15a)の厚さが、前記第1ファスナーストリンガーの前記コードと前記第2ファスナーストリンガー(12b)の前記コード(15b)との間の前記横軸線に平行な方向における分離距離より大きくなる、請求項4に記載のスライドファスナーチェーン(13)。
【請求項11】
前記横軸線(T‐T)に平行な方向における前記第1ファスナーストリンガー(12a)の前記コード(15a)の厚さが、前記横軸線に平行な方向における前記第1結合エレメントの前記溝(58)の深さより大きい、請求項4に記載のスライドファスナーチェーン(13)。
【請求項12】
前記第1結合エレメント(14a)が第1加圧部(60)を含み、前記隣接する結合エレメント(14b)の一方が、対応する第2加圧部(60a)を含み、
前記第1列結合エレメント(14a)が前記第2列結合エレメント(14b)と交互嵌合しているとき、前記第1加圧部が前記第2加圧部に接触して、前記第1加圧部および前記第2加圧部が圧縮を受けて、両部間にシールを形成する、請求項1乃至11のいずれか1項に記載のスライドファスナーチェーン(13)。
【請求項13】
前記第1結合エレメント(14a)が第3加圧部(60b)を含み、
前記隣接する結合エレメント(14b)の他方が、対応する第4加圧部(60c)を含み、
前記第1列結合エレメント(14a)が前記第2列結合エレメント(14b)と交互嵌合しているとき、前記第3加圧部が前記第4加圧部に接触して、前記第3加圧部および前記第4加圧部が圧縮を受けて、両部間にシールを形成する、請求項12に記載のスライドファスナーチェーン(13)。
【請求項14】
前記第1加圧部(60)、第2加圧部(60a)、第3加圧部(60b)および第4加圧部(60c)の1つ以上が、前記関連する加圧部が前記結合エレメントの一部を構成する、前記結合エレメント(14a、14b)の前記ヘッド部分(54)および/またはネック部分(56)から前記ファスナー軸線(L‐L)に対して平行な方向に延在する突出部の形をとる、請求項13に記載のスライドファスナーチェーン(13)。
【請求項15】
前記第1加圧部(60)と第2加圧部(60a)との間、および前記第3加圧部(60b)と第4加圧部(60c)との間の前記シールがそれぞれ水密シールである、請求項13または14に記載のスライドファスナーチェーン。
【請求項16】
前記第1結合エレメント(14a)および前記隣接する結合エレメント(14b)のそれぞれの前記本体(50)は、前記ファスナー軸線(L‐L)に平行なテーパ状の幅を有し、それによって、第1の横位置において、前記結合エレメントが取り付けられた前記ファスナーテープ(16a、16b)の第1の面(16f)に隣接する前記関連する結合エレメントの前記本体の第1の幅(FW)が、前記第1の横位置において、前記結合エレメントが取り付けられた前記ファスナーテープの前記第1の面から離隔するとともにその上方の位置で、前記関連する結合エレメントの前記本体の、前記ファスナー軸線に平行な第2の幅(SW)よりも大きい、請求項1乃至15のいずれか1項に記載のスライドファスナーチェーン(13)。
【請求項17】
前記第1の幅(FW)は、前記第1の横位置における、前記ファスナーテープ(16a、16b)の上方の前記本体(50)の最大幅であり、前記第2の幅(SW)は、前記第1の横位置における、前記ファスナーテープの上方の前記本体の最小幅であり、
前記第2の幅が前記第1の幅の約40%~85%である、請求項16に記載のスライドファスナーチェーン(13)。
【請求項18】
前記第1結合エレメント(14a)および前記隣接する結合エレメント(14b)のそれぞれの前記本体(50)は、前記ファスナー軸線(L‐L)に平行なテーパ状の幅を有し、それによって、前記第1の横位置において、前記結合エレメントが取り付けられた前記ファスナーテープ(16a、16b)の第2の面(16g)に隣接する、前記関連する結合エレメントの前記本体の、前記ファスナー軸線に平行な第3の幅(FW)は、前記第1の横位置において、前記結合エレメントが取り付けられた前記ファスナーテープの第2の面から離隔するとともにその下方の位置において、前記関連する結合エレメントの前記本体の、前記ファスナー軸線に平行な第4の幅(SW)より大きい、請求項16または17に記載のスライドファスナーチェーン(13)。
【請求項19】
前記第3の幅(FW)は、前記第1の横位置において、前記ファスナーテープ(16a、16b)の下方の前記本体(50)の最大幅であり、前記第4の幅(SW)は、前記第1の横位置において、前記ファスナーテープ(16a、16b)の下方の前記本体の最小幅であり、前記第4の幅が前記第3の幅の約40%~85%である、請求項18記載のスライドファスナーチェーン(13)。
【請求項20】
前記第1結合エレメント(14a)および前記隣接する結合エレメント(14b)は、前記防水性のプラスチック材料から形成されている、請求項6に記載のスライドファスナーチェーン(13)。
【請求項21】
前記第1結合エレメント(14a)および前記隣接する結合エレメント(14b)のそれぞれが、前記第1結合エレメントおよび前記隣接する結合エレメントのそれぞれのヤング率が約1000~約2000である材料から形成されている、請求項1乃至20のいずれか1項に記載のスライドファスナーチェーン(13)。
【請求項22】
スライドファスナー(10)であって、
請求項1乃至21のいずれか1項に記載のスライドファスナーチェーン(13)と、
前記第1ファスナーストリンガー(12a)および前記第2ファスナーストリンガー(12b)に移動可能に取り付けられたスライダー(11)と、を含み、
前記スライダーが前記ファスナー軸線(L‐L)に沿って前記第1ファスナーストリンガーおよび前記第2ファスナーストリンガーに対して:
前記第1ファスナーストリンガーと前記第2ファスナーストリンガーとを一緒に固定するために、前記第1ファスナーストリンガーの前記第1列結合エレメント(14a)を前記第2ファスナーストリンガーの前記第2列結合エレメント(14b)に交互嵌合させるための第1の方向(E)と、
前記第1ファスナーストリンガーと前記第2ファスナーストリンガーを分離するために、前記第1ファスナーストリンガーの前記第1列結合エレメントを前記第2ファスナーストリンガーの前記第2列結合エレメントから分離させるための第2の方向(D)とに、
移動可能である、スライドファスナー(10)。
【請求項23】
さらに、前記第1の方向(E)における前記ファスナー軸線(L‐L)に沿った前記スライダー(11)の移動の限界を提供するように構成された少なくとも1つの上止(20a、20b)、および/または、
前記第2の方向(D)における前記ファスナー軸線に沿った前記スライダーの移動の限界を提供するように構成された下止(22)を含む、請求項22に記載のスライドファスナー(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シーラブルなスライドファスナーチェーンおよびスライドファスナーに関するものである。本開示はまた、そのようなスライドファスナーを含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスライドファスナー(またはジップまたはファスナー)は、一対のストリンガーと、一般にスライダーと呼ばれる開閉手段から構成されている。各ストリンガーは、テープと複数の結合エレメントを含む。結合エレメントは、各テープの第1の縁に沿って延在し、スライドファスナーのスライダーが閉位置に移動されたとき、ストリンガーの対応する結合エレメントが交互嵌合、結合またはインターロックする。スライドファスナーの各テープが物品の別々の部分に取り付けられているとき、物品のその別々の部分は、スライダーを閉位置に移動させてスライドファスナーを閉じ、それによって結合エレメントを前記交互嵌合関係にすることによって解放可能に結合され得る。
【0003】
従って、スライドファスナーは、有用且つ多用途であり、衣服、家具および荷物を含む様々な用途に採用される。
【0004】
公知のスライドファスナーは、一般に次のように構成されている。通常、複数の結合エレメント(歯とも呼ばれる)の形態の結合部分が、テープの第1の縁に取り付けられてストリンガーを形成する。この第1の縁は、ストリンガーの結合縁と呼ばれることがある。テープは、織物またはニットであってよく、例えば、ポリエステルから形成されてもよい。結合エレメントは、例えば、結合エレメントをテープの強化された縁に圧着または成形することによってテープに取り付けてもよい。場合によっては、強化された縁は、テープの残りの部分と比較して厚みがより大きいコードから構成されてもよい。このコードは、テープに縫い付けられるか、または織り込まれてもよい。
【0005】
あるいは、結合エレメントは、連続コイルとして形成されてもよい。この場合、結合エレメントは、最も一般的には、テープの縁のところでテープの表面に縫い付けられるか、あるいは、テープに織り込まれるか、編み込まれる。
【0006】
2つのストリンガーは、各ストリンガーの結合エレメントが、例えば、交互嵌合することによって合体されてチェーンを形成する。チェーンは略平面状であり、チェーン(およびチェーンの一部を構成する結合エレメント)は、チェーンの長手軸線(ファスナー軸線とも呼ばれる)に沿って延在する。スライダーが、2つのストリンガー間でチェーンに沿って移動できるように、それぞれのストリンガーの結合エレメントの上に、チェーンに取り付けられる。
【0007】
スライダーは、一般に、各ストリンガーの結合エレメントが通過する上部ブレードおよび下部ブレードを有する本体を含む。チェーンに沿ってスライダーを効果的に動かすためにユーザによって把持され得るプルタブまたはプルコードが本体に取り付けられている。本体は、ガイドポスト(ダイヤモンドと呼ばれることもある)を含み、このガイドポストは、部分的に、第1ストリンガーおよび第2ストリンガーの結合エレメントを担持するように構成されたY字型チャネルを画定している。スライダーは、上部ブレードおよび下部ブレードの右側縁および左側縁のそれぞれに配置される上部フランジおよび下部フランジ、すなわち、スライダーの動作方向と実質的に平行な縁を含み得る。上部ブレードに設けられたフランジは下部ブレードに向かって下方に突出し、下部ブレードに設けられたフランジは上部ブレードに向かって上方に突出する。フランジは、結合エレメントとスライド係合するように構成されている。
【0008】
スライダーを、チェーンに沿って、スライダーの動作軸線に沿って第1のスライド方向に移動させると、第1ストリンガーの結合エレメントが第2ストリンガーの結合エレメントに取り付ける。スライダーが第1のスライド方向にそれ以上エレメントを結合することができなくなったとき、すなわち、第1ストリンガーの実質的にすべての結合エレメントが第2ストリンガーの実質的にすべての結合エレメントに取り付けられたとき、スライドファスナーは完全に閉じた構成にあると言うことができる。スライダーを、チェーンに沿って、スライダーの動作軸線に沿って、第1のスライド方向とは反対の第2のスライド方向に移動させると、第1ストリンガーの結合エレメントが第2ストリンガーの結合エレメントから離脱される。スライダーが第2のスライド方向においてもはやそれ以上エレメントを結合解除することができないとき、すなわち第1ストリンガーの、実質的にすべての結合エレメントが第2ストリンガーの結合エレメントから分離されたとき、スライドファスナーは完全に開いた構成にあると言うことができる。
【0009】
チェーンは、所望の長さに切断されて所望の長さのスライドファスナーを形成する。チェーンの片端または両端に止具(しばしば上止および下止と呼ばれる)が取り付けられてもよい。止具は、スライダーがチェーンに沿って移動できる範囲を制限する。通常、上止はスライダーの第1のスライド方向への動きを制限し、下止はスライダーの第2のスライド方向への移動を制限する。通常、止具は、チェーンに沿ったスライダーの移動を制限するために使用され得る。通常、スライダーは、スライダーが下止または上止などのある種の止具に突き当たると、もはやエレメントを結合も結合解除もできず、移動もできない。上止は、スライダーの上部、例えば、スライダー本体に設けられたフランジの上縁に接して、スライダーの第1のスライド方向への移動を制限するように構成されてもよい。下止は、スライダーの底部、例えばスライダー本体に設けられたフランジの底縁に接して、スライダーの第2のスライド方向への移動を制限するように構成されてもよい。また、止具は、スライダーの上部ブレードまたは下部ブレードに当接するように構成されてもよい。
【0010】
一部のスライドファスナーは、第1ストリンガーおよび第2ストリンガーの両方に取り付けられる単一の下止を有してもよい。他のスライドファスナーは、分離スライドファスナーと呼ばれることがあり、ストリンガーの対応する各1つにそれぞれ取り付けられた2つの別々の下止を有してもよい。2つの下止は、箱体および挿入ピンのそれぞれの形態をとってもよい。挿入ピンは、第1ストリンガーと第2ストリンガーを互いに連結するために、箱体に挿入され得る。逆に、挿入ピンは、スライダーが箱体に隣接して配置されたとき、スライダーを通過して第1ストリンガーと第2ストリンガーとを互いに分離するために、箱体から取り外され得る。
【0011】
スライドファスナーによっては、2つの別個の上止を有する場合があり、それぞれがストリンガーの対応する1つに取り付けられている。他のスライドファスナーは、ストリンガーの一方または両方に取り付けられた単一の上止を有する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特定の用途では、スライドファスナーが耐流体性、例えば液密および/または気密であることが望ましい(すなわち、スライドファスナーが閉じた構成にあるときにスライドファスナーを液体および/または気体が透過することをスライドファスナーが実質的に防止できるようにする)。さらに例を挙げると、一部の用途では、スライドファスナーが水密であること、より具体的には、水密スライドファスナーが一部を形成する物品(例えば、衣服など)が、スライドファスナーが閉じた構成であるときに水密であることが望ましい。
【0013】
スライドファスナーが閉じた構成にあるときに流体密および/または気密でないスライドファスナーは、シーラブルなスライドファスナーとは呼ばれない。逆に、スライドファスナーが閉じた構成にあるときに流体密および/または気密であるスライドファスナーは、シーラブルなスライドファスナーと呼ばれる。
【0014】
所望の程度の水密性を提供すると同時に、製造が比較的容易で費用対効果の高い水密スライドファスナーチェーンおよびスライドファスナーを提供することが望ましい。また、代替の水密スライドファスナーチェーンおよびスライドファスナーを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示の一態様によれば、第1ファスナーテープの第1長手縁に取り付けられた第1列結合エレメントを有する第1ファスナーテープを含む第1ファスナーストリンガーと、第2ファスナーテープの第2長手縁に取り付けられた第2列結合エレメントを有する第2ファスナーテープを含む第2ファスナーストリンガーとを含むスライドファスナーチェーンが提供される。前記第1列結合エレメントは、前記第1ストリンガーと第2ストリンガーとを一緒に固定するためにファスナー軸線に沿って前記第2列結合エレメントと交互嵌合するように構成されている。前記第1列結合エレメントおよび第2列結合エレメントのそれぞれは、ショルダー部分を有する本体と、横軸線に平行に、前記ファスナー軸線に垂直に、且つネック部分を介して前記ショルダー部分から離れる方向に延在するヘッド部分を含むように形成され、前記ヘッド部分は、前記ファスナー軸線に平行に延在する溝を含む。前記第1列結合エレメントの結合エレメントのそれぞれの前記本体は前記第1ファスナーテープに取り付けられ、前記第2列結合エレメントの結合エレメントのそれぞれの前記本体は前記第2ファスナーテープに取り付けられる。前記第1列結合エレメントが前記第2列結合エレメントと交互嵌合しているとき、前記第1長手縁と前記第2長手縁は離隔したままであり、前記第1列結合エレメントの第1結合エレメントは、i)前記第1結合エレメントの前記溝が、第1の接触領域において、前記第2列の前記隣接する結合エレメントの中間の前記第2ファスナーテープの前記第2長手縁の一部分を受容してそれに接触し、ii)前記第1結合エレメントの前記ヘッド部分が、それぞれ第2と第3の接触領域において、前記第2列の前記隣接する結合エレメントの前記ネック部分の間に受容されてそれらと接触し、iii)前記第2列の前記隣接する結合エレメントの前記溝の一方が、第4の接触領域において、前記第1結合エレメントに隣接する前記第1ファスナーテープの前記第1長手縁の第1の部分を受容してそれに接触し、iv)前記第2列の前記隣接する結合エレメントの前記溝の他方が、第5の接触領域において、前記第1結合エレメントに隣接する前記第1ファスナーテープの前記第1長手縁の第2の部分を受容してそれと接触するように、前記第2列結合エレメントの2つの隣接する結合エレメントの間で、受容される。前記第1結合エレメントは、前記第1ファスナーテープの前記第1長手縁の前記第1の部分と第2の部分との中間にある。前記第1、第2、第3、第4および第5の接触領域のそれぞれにおける接触は、前記第1結合エレメントと前記隣接する結合エレメントのそれぞれの間にシールを形成し、前記シールは前記第1長手縁と第2長手縁を結んでいる。
【0016】
一方のファスナーストリンガー上の結合エレメントの溝と他方のファスナーストリンガーの長手縁との間の接触を使用すると、2つのストリンガー間にシールを形成することが容易になるだけでなく、バースト力(ファスナー軸線と横軸線との両方に略垂直な力)による望ましくない分離に抵抗する、結合したファスナーストリンガーの能力も高める。これは、結合エレメントに追加の機能を必要とすることなく達成され、結合エレメントの設計と製造をより簡単にしている。
【0017】
第1、第2、第3、第4および第5の接触領域は連続体を形成してもよい。その連続体において、接触領域は、第4の接触領域、第2の接触領域、第1の接触領域、第3の接触領域、および第5の接触領域の順であってもよい。
【0018】
第1の接触領域、第4の接触領域および第5の接触領域は、それぞれ、第1結合エレメント、隣接する結合エレメントの一方、および隣接する結合エレメントの他方の溝の、ファスナー軸線と平行な方向の全長に沿って延在していてもよい。
【0019】
前記シールは、前記第1結合エレメントと前記隣接する結合エレメントのそれぞれの間、および前記第1長手縁と第2長手縁の間に水または他の液体が透過するのを実質的に防止するような水密シールであってもよい。
【0020】
前記第1列結合エレメントの複数の結合エレメントがそれぞれ、第2列結合エレメントの2つのそれぞれの隣接する結合エレメントの間に、i)前記第1列の各第1結合エレメントの前記溝は、第1の接触領域において、前記第2列の前記それぞれの隣接する結合エレメントの中間の前記第2ファスナーテープの前記第2長手縁のそれぞれの部分を受容してそれと接触し、ii)前記第1列のそれぞれの第1結合エレメントの前記ヘッド部分は、それぞれ第2および第3の接触領域において、前記第2列の前記それぞれの隣接する結合エレメントの前記ネック部分の間に受容されてそれらと接触し、iii)前記第2列の前記それぞれの隣接する結合エレメントの前記溝のうちの一方は、第4の接触領域において、前記それぞれの第1結合エレメントに隣接する前記第1ファスナーテープの前記第1長手縁のそれぞれの第1の部分を受容してそれと接触し、iv)前記第2列の前記それぞれの隣接する結合エレメントの溝のうちの他方は、第5の接触領域において、それぞれの第1結合エレメントに隣接する前記第1ファスナーテープの前記第1長手縁のそれぞれの第2の部分を受容してそれと接触するように、受容されている。各第1結合エレメントは、前記第1ファスナーテープの前記第1長手縁の前記それぞれの第1の部分と第2の部分との中間である。前記第1、第2、第3、第4および第5の接触領域のそれぞれにおける前記接触は、各第1結合エレメントと前記それぞれの隣接する結合エレメントとの間にシールを形成し、前記シールは、前記シールが前記ファスナーチェーンの全長に沿って形成されるように前記第1長手縁と第2長手縁を結んでいる。
【0021】
ファスナーチェーンの全長は、ファスナー軸線に平行な長さであってよい。全長は、ファスナーチェーンの第1の長手端部に位置する第1列結合エレメントの結合エレメント(上記のように第2列結合エレメントの結合エレメントと結合する第1列結合エレメントの結合エレメント)の(アウトボード)縁と、i)ファスナーチェーンの第2長手端部に位置し、第1の長手端部の反対側にある第2列結合エレメントの結合エレメント(上記のように第1列結合エレメントの結合エレメントと結合する第2列結合エレメントの結合エレメント)の(アウトボード)縁との間、または、ii)ファスナーチェーンの第2の長手端部に位置し、第1の長手端部の反対側にある、第1列結合エレメントの結合エレメント(上記のように第2列結合エレメントの結合エレメントと結合する第1列結合エレメントの結合エレメント)の(アウトボード)縁との間で測定され得る。ファスナーチェーンの第1の長手端部に位置する結合エレメントのアウトボード縁は、ファスナーチェーンの第2の長手端部から長手軸線に沿って最も遠くに位置する結合エレメントの縁であってもよい。ファスナーチェーンの第2の長手端部に位置する結合エレメントのアウトボード縁は、ファスナーチェーンの第1の長手端部から長手軸線に沿って最も遠くに位置する結合エレメントの縁であってもよい。
【0022】
シールがファスナーチェーンの全長に沿って形成される場合、ファスナーチェーン全体は、第1長手縁および第2長手縁の間に(第1列結合エレメントの結合エレメントが第2列結合エレメントの結合エレメントと交互嵌合する場所で)流体が透過できる場所が存在しないようにシールされてもよい。
【0023】
前記第1ファスナーテープの前記第1長手縁および前記第2ファスナーテープの前記第2長手縁はそれぞれコードの形態をとる。
【0024】
各コードは、前記ファスナー軸線と前記横軸線の両方に垂直な方向の厚さが、前記コードが前記ファスナーテープの一部を構成する前記ファスナーテープの残りの部分の厚さより大きくてもよい。
【0025】
コードは、結合エレメントをそれぞれのファスナーテープ上に保持するのに役立ち得る。加えて、コードは、他のファスナーストリンガーの結合エレメントの溝が接触するためのより大きな表面積を提供し、それによって接触の強度を向上させることができる。
【0026】
第1ファスナーテープおよび第2ファスナーテープは、織物、不織布または編物から形成されてもよい。
【0027】
前記第1ファスナーテープおよび第2ファスナーテープは、防水性のプラスチックまたは同様の材料でコーティングおよび/または含浸されてもよい。
【0028】
結合エレメントの構成およびファスナーテープ上のそれらの位置は、結合エレメントが交互嵌合されたときに、ファスナーテープの長手縁間のファスナーチェーンに水が実質的に透過しないことを保証するものである。ファスナーテープを防水性のプラスチック材料でコーティングおよび/または含浸させることにより、ファスナーテープにも水が実質的に透過しないことが保証される。このことは、ファスナーテープが物品に水密に取り付けられたとき、ファスナーストリンガーの長手縁の間またはファスナーテープ自体を通って、ファスナーチェーンの第1の側から第2の側へ水が実質的に透過し得ないことを意味する。これにより、ファスナーチェーンを介して水が物品に侵入することが実質的に防止される。
【0029】
前記第1ファスナーテープおよび第2ファスナーテープのそれぞれの前記コードは、防水性のプラスチック材料でコーティングおよび/または含浸されていてもよい。
【0030】
前記第1列結合エレメントは、前記第1長手縁が前記第1列結合エレメントの各結合エレメントの前記ネック部分に会合するように、前記第1ファスナーテープの前記第1長手縁に取り付けられてもよい。
【0031】
前記第2列結合エレメントは、前記第2長手縁が前記第2列結合エレメントの各結合エレメントの前記ネック部分に会合するように、前記第2ファスナーテープの前記第2長手縁に取り付けられてもよい。
【0032】
前記第1列結合エレメントおよび第2列結合エレメントの各結合エレメントは、第1の部分であって、前記第1の部分が前記ファスナーストリンガーの一部を構成する、前記ファスナーテープの第1の面に取り付けられた、第1の部分と、第2の部分であって、前記第2の部分が前記ファスナーストリンガーの一部を構成する、前記第1の面と反対側の第2の面に取り付けられた、第2の部分と、前記第1の部分と前記第2の部分の両方を結合する中間部分であって、前記結合エレメントの少なくとも前記ヘッド部分を含む、中間部分を含み得る。前記中間部分は、前記結合エレメントの前記ネック部分の少なくとも一部分を含んでもよい。
【0033】
第1の部分は、中間部分によってのみ第2の部分に接合されてもよい。いくつかの公知のスライドファスナーでは、各結合エレメントのためにテープを通る穴が開けられ、各結合エレメントは、結合エレメントの第1の部分と結合エレメントの第2の部分がテープのそれぞれの穴を通って延在するさらなる中間部分を介して接続されることによって、それぞれのテープに取り付けられる。これは、本願で論じる本発明の実施形態では必要ない場合がある。各結合エレメントの第1の部分と第2の部分との間の必要な接合は、中間部分を介してのみである。これにより、スライドファスナーの製造工程がより簡単になり、テープの穴が不要になる可能性がある。
【0034】
これは、結合エレメントをそれぞれのファスナーテープに成形するか、または圧着することを可能にすることによって、ファスナーチェーンの容易な製造を促進する。
【0035】
前記第1列結合エレメントが前記第2列結合エレメントと交互嵌合しているとき、前記第1ファスナーストリンガーの前記横軸線に平行な方向における前記コードの厚さが、前記第1ファスナーストリンガーの前記コードと前記第2ファスナーストリンガーの前記コードの間の前記横軸線に平行な方向における分離距離より大きくなり得る。ファスナーストリンガーが閉じているとき(すなわち、スライドファスナーチェーンが、第1の結合エレメントと第2の結合エレメントとが交互嵌合している閉じた構成であるとき)、コードは圧縮され得る。例えば、一方のストリンガーのコードは、他方のストリンガーの結合エレメント(および、特に、結合エレメントの溝)によって圧縮され得る。
【0036】
これにより、結合エレメントが交互嵌合しているとき、ファスナーテープの長手縁間の分離距離が可能な限り小さくなり得る。これは、ファスナーチェーンを水密とするために水密である必要があるファスナーテープの長手縁間の面積を減少させる。これにより、ファスナーチェーンのシーリング有効性を向上させ得る。さらに、ファスナーテープの長手縁の間の分離距離を小さくすることは、ファスナー軸線および横軸線の両方に対して垂直である曲げ力に曝されたときのファスナーチェーンの強度を増加させ得る。これは、結合されたファスナーストリンガーがそのような曲げ力による望ましくない分離に抵抗する能力を増加させ得る。
【0037】
前記横軸線に平行な方向における第1ファスナーストリンガーのコードの厚さは、前記横軸線に平行な方向における前記第1結合エレメントの前記溝の深さよりも大きくてもよい。これにより、圧縮時の溝とコードとの間のより良い接触が保証され得る。
【0038】
前記第1結合エレメントは第1加圧部を含んでもよく、前記隣接する結合エレメントの一方が、対応する第2加圧部を含んでもよい。そして、前記第1列結合エレメントが前記第2列結合エレメントと交互嵌合しているとき、前記第1加圧部が前記第2加圧部に接触して、第1加圧部および第2加圧部が圧縮を受けて、両部間にシールを形成してもよい。
【0039】
加圧部は、結合エレメント間のシールの有効性を高めるのに役立つ。
【0040】
前記第1結合エレメントは第3加圧部を含んでもよく、前記隣接する結合エレメントの他方は対応する第4加圧部を含んでもよい。そして、前記第1列結合エレメントが前記第2列結合エレメントと交互嵌合しているとき、前記第3加圧部は前記第4加圧部と接触して、前記第3および第4加圧部が圧縮を受けて、両部間にシールを形成してもよい。
【0041】
この場合も、加圧部は、結合エレメント間のシールの有効性をさらに高めるのに役立つ。
【0042】
前記第1加圧部、第2加圧部、第3加圧部および第4加圧部の1つ以上は、前記関連する加圧部が前記結合エレメントの一部を構成する、前記結合エレメントの前記ヘッド部分および/またはネック部分から前記ファスナー軸線に平行な方向に延在する突出部の形をとり得る。
【0043】
前記第1結合エレメントおよび前記隣接する結合エレメントのそれぞれの前記本体は、前記ファスナー軸線に平行なテーパ状の幅を有してもよく、それによって、第1の横位置において、前記結合エレメントが取り付けられた前記ファスナーテープの第1の面に隣接する前記関連する結合エレメントの前記本体の第1の幅が、前記第1の横位置において、前記結合エレメントが取り付けられた前記ファスナーテープの前記第1の面から離隔するとともにその上方の位置で、前記関連する結合エレメントの前記本体の、前記ファスナー軸線に平行な第2の幅よりも大きい。
【0044】
このテーパリングは、ファスナーチェーンが平面から曲げられたときに、結合エレメントの変形を防止するのに役立ち得る。これは、ファスナーチェーンによって提供される水密シールが劣化すること、および/またはファスナーチェーンが平面から曲げられたときに、交互嵌合した結合エレメントの望ましくない分離を防止することができる。
【0045】
前記第1の幅は、前記第1の横位置における、前記第1ファスナーテープの上方の前記本体の最大幅であってもよく、前記第2の幅は、前記第1の横位置における、前記第1ファスナーテープの上方の前記本体の最小幅であってもよい。
【0046】
前記第2の幅は、前記第1の幅の約40%~85%であり得る。
【0047】
前記第1結合エレメントおよび前記隣接する結合エレメントのそれぞれの前記本体は、前記ファスナー軸線に平行なテーパ状の幅を有してもよく、それによって、前記第1の横位置において、前記結合エレメントが取り付けられた前記ファスナーテープの第2の面に隣接する、前記関連する結合エレメントの前記本体の、前記ファスナー軸線に平行な第3の幅は、前記第1の横位置において、前記結合エレメントが取り付けられた前記ファスナーテープの第2の面から離隔するとともにその下方の位置において、前記関連する結合エレメントの前記本体の、前記ファスナー軸線に平行な第4の幅より大きい。
【0048】
このテーパリングは、ファスナーチェーンが平面から曲げられたときの結合エレメントの変形を防止するのにさらに役立ち得る。これは、ファスナーチェーンによって提供される水密シールが劣化すること、および/またはファスナーチェーンが平面から曲げられたときに交互嵌合した結合エレメントの望ましくない分離をさらに防止することができる。
【0049】
前記第3の幅は、前記第1の横位置において、前記第1ファスナーテープの下方の前記本体の最大幅であってもよく、前記第4の幅は、前記第1の横位置において、前記第1ファスナーテープの下方の前記本体の最小幅であってもよい。
【0050】
前記第4の幅は、前記第3の幅の約40%~85%であってもよい。
【0051】
前記第1結合エレメントおよび前記隣接する結合エレメントは、前記防水性のプラスチック材料から形成されてもよい。
【0052】
第1結合エレメントおよび隣接する結合エレメントは、第1ファスナーテープ、第2ファスナーテープおよび/またはコードをコーティング/含浸するために用いられる材料とは異なる材料から形成されてもよい。
【0053】
ファスナーテープがコーティングおよび/または含浸されるのと同じ材料から結合エレメントを形成することは、ファスナーテープとそれぞれの結合エレメントとの間の接着強度を増加させ得る。
【0054】
前記第1結合エレメントおよび前記隣接する結合エレメントのそれぞれは、前記第1結合エレメントおよび前記隣接する結合エレメントのそれぞれのヤング率が約1000~約2000である材料から形成されてもよい。
【0055】
これは、結合エレメント間のシールの有効性を向上させるのに役立ち得る。これは、結合エレメントを圧縮することが可能であればあるほど、関連する結合エレメントおよびファスナーテープが接触を維持しながら、ファスナーチェーンが曲げに対する耐性を高めるからであり得る。
【0056】
第1列結合エレメントの第1結合エレメントと、第2列結合エレメントの2つの隣接する結合エレメントは、実質的に同一の形状であってよい。第1列結合エレメントおよび第2列結合エレメントの結合エレメントそれぞれは、実質的に同一の形状であってもよい。
【0057】
本発明の第2の態様によれば、スライドファスナーが提供され、本発明の第1の態様に係るスライドファスナーチェーンと、前記第1ファスナーストリンガーおよび第2ファスナーストリンガーに移動可能に取り付けられたスライダーとを備え、前記スライダーはファスナー軸線に沿って前記第1ファスナーストリンガーおよび第2ファスナーストリンガーに対して移動可能である。前記スライダーは、前記第1ファスナーストリンガーと前記第2ファスナーストリンガーを一緒に固定するために、前記第1ファスナーストリンガーの前記第1列結合エレメントを前記第2ファスナーストリンガーの前記第2列結合エレメントに交互嵌合させるための第1の方向に移動してもよく、また、前記第1ファスナーストリンガーと前記第2ファスナーストリンガーを分離するために、前記第1ファスナーストリンガーの前記第1列結合エレメントを前記第2ファスナーストリンガーの第2列結合エレメントから分離させるために第2の方向に移動してもよい。
【0058】
このようなスライドファスナーは、本発明の第1の態様によるファスナーチェーンのすべての利点を有する。
【0059】
前記スライドファスナーはさらに、前記第1の方向における前記ファスナー軸線に沿った前記スライダーの移動の限界を提供するように構成された少なくとも1つの上止、および/または、前記第2の方向における前記ファスナー軸線に沿った前記スライダーの移動の限界を提供するように構成された下止を含んでもよい。
【0060】
本発明の第3の態様によれば、本発明の第2の態様に係るスライドファスナーを含む物品が提供される。
【0061】
本発明の1つの態様に関連して上述した特徴は、本発明の任意の他の態様に関連して適宜適用され得ることが認識されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】公知のスライドファスナーの一部分を示す平面図である。
【
図2】公知のスライドファスナーのスライダーを示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るスライドファスナーの一部分を示す平面図である。
【
図4】
図3のスライドファスナーのストリンガーの一部分を示す斜視図である。
【
図5】
図4に示したストリンガーの一部分の平面図である。
【
図6】
図4および
図5に示したストリンガーの部分の正面図である。
【
図7】
図4~
図6に示したストリンガーの部分の横断面図である。
【
図8】
図3に示したスライドファスナーのファスナーチェーンの一部分の平面図である。(スライドファスナーのいくつかの結合エレメントは、明瞭性を支援するために、図示していない。)
【
図9】
図8に示したファスナーチェーンの部分の横断面図である。
【
図10】
図8および
図9に示したファスナーチェーンの部分の部分正面断面図である。
【
図11】
図3に示したスライドファスナーのファスナーチェーンの一部分を示し、ファスナーチェーンのその部分は平面から逸れて折れ曲がっている正面断面図である。
【
図12】
図3に示したスライドファスナーの一部分の横断面図である。
【
図13】本発明の他の実施形態に係るファスナーチェーンのストリンガーの一部分の平面図である。
【
図14】
図13に示した本発明の同じ実施形態に係るファスナーチェーンの一部分の正面断面図である。
【
図15】本発明によるスライドファスナーを含む物品の一部分を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
図面内に示された同等の特徴には同じ参照番号が付されている。
【0064】
図1は、公知のスライドファスナー10を示す。スライドファスナーは、スライダー11と、一対のストリンガー12a、12bとを含む。各ストリンガー12a、12bは、テープ16a、16bに、特にテープ16a、16bの長手方向の結合縁に取り付けられた複数の結合エレメント14a、14b(歯とも呼ばれる)の形態の結合部分を含む。テープは、織物またはニットであってよく、例えば、ポリエステル、ビニロンまたはポリウレタンなどの合成繊維および/または綿などの天然繊維から形成されてもよい。結合エレメント14a、14bは、例えば、結合エレメントをテープ16a、16bの強化された結合縁に圧着または成形することによって、それぞれのテープ16a、16bに取り付けられてもよい。テープの強化された縁は、当技術分野でよく知られているように、テープの厚さよりも大きい厚さを有するコードの形態をとり得る。
【0065】
2つのストリンガー12a、12bは、(
図1の下部分に示すように)合体されたとき、各ストリンガー12a、12bの結合エレメント14a、14bが交互嵌合することによって互いに取り付けられてチェーン18を形成するような態様である。チェーン18は略平面状であり、チェーン18(およびチェーン18の一部を構成する結合部分)はチェーン18の長手軸線(またはファスナー軸線)Lに沿って延在する。
【0066】
結合エレメント14a、14bのそれぞれはヘッド部分およびネック部分を含む。結合エレメント14a、14bが交互嵌合するように合体されたとき、第1ストリンガー12aの結合エレメント14aのヘッド部分およびネック部分は、第2ストリンガー12bの結合エレメント14bのヘッド部分およびネック部分と協働して、結合エレメント14a、14bの横軸線Tに略平行な方向への横方向の分離を防止する。
【0067】
スライダー11は、2つのストリンガー12a、12bの間でチェーン18に沿って移動できるように、チェーン18に取り付けられている。スライダー11をチェーン18に沿って第1のスライド方向Eに移動させると、第1ストリンガー12aの結合エレメント14aを第2ストリンガー12bの結合エレメント14bに取り付ける。一方、スライダーをチェーンに沿って第1のスライド方向Eとは反対の第2のスライド方向Dに移動させると、第1ストリンガー12aの結合エレメント14aを第2ストリンガー12bの結合エレメント14bから離脱させる。
【0068】
チェーン18は、一般に、スライドファスナー10の所望の長さを形成するために所望の長さに切断される。止具(しばしば上止および下止と呼ばれる)がチェーン18のいずれかの端部に取り付けられる。止具は、スライダー11がチェーン18に沿って移動する範囲を制限する。
【0069】
図1に示すスライドファスナーでは、止具20aおよび20bは、それぞれ第1テープ16aおよび第2テープ16b上のチェーン18の上端に取り付けられた上止である。他のスライドファスナーは、両方のストリンガーテープに取り付けられた単一の上止を有していてもよい。上止は、任意の適切な材料から形成されてもよく、例えば、ポリエステル、ポリアセタール、またはポリエチレンなどのポリマー材料を含んでもよく、アルミニウム、ニッケルなどの金属ベースまたはそのような金属の合金であってもよい。
【0070】
スライドファスナーは、第1ファスナーストリンガー12aおよび第2ストリンガー12bの両方のテープ16a、16bに取り付けられ、テープ16a、16bを一緒に固定する単一の下止22を有する。
【0071】
図2に示すように、スライダー11は、各ストリンガー12a、12bの結合エレメント14a、14bが通過する本体24と、ブリッジ部分28を介して本体24に取り付けられたプルタブ26とを含む。プルタブ26は、スライダー11をチェーン18に沿って(例えば、前述したように第1のスライド方向Eおよび第2のスライド方向Dに)効果的に動かすために、ユーザによって把持されてもよい。
【0072】
より詳細には、スライダー11の本体24は、ファスナー軸線Lおよび横軸線Tの両方に対して垂直な方向に延在する接続ポスト(図示せず)によって下部分32に接続された上部分30を含み、上部分30は上部翼または上部ブレードと呼ばれることがある。同様に、下部分は、下部翼または下部ブレードと呼ばれることがある。接続ポストは、ダイヤモンドと呼ばれることがある。
【0073】
上部分30、下部分32および接続ポストは、協働してスライダー内にY字型チャネルを画定する。Y字型チャネルはまた、上部分30および下部分32からそれぞれ互いに向かって延在するスライダー11の両側の横フランジ42および44によって画定される。
図2では、1組の横フランジ42、44のみが見えており、図では見えていないスライダーの裏側にはもう1組が設けられている。Y字型チャネルは、接続ポストによって第2のアームから分離された第1のアームを有する。
【0074】
スライダー11は、チェーンに取り付けられたとき、スライダーの先端38からスライダー11の尾端40まで方向Dに延在する。Y字型チャネルはまた、接続ポストの尾端近傍で第1のアームおよび第2のアームに隣接する第3のアームを含む。
【0075】
第1のアームおよび第2のアームは、スライダー11の先端38にそれぞれの第1の開口部および第2の開口部(図示せず)を有する。第3のアームは、スライダー11の尾端40に第3の開口部46cを有する。
【0076】
図3は、本発明によるスライドファスナー10の一部分を示す。スライドファスナー10は、第1ファスナーストリンガー12aおよび第2ファスナーストリンガー12bを含む本発明によるスライドファスナーチェーン13を含み、その上にスライダー11が取り付けられている。
【0077】
第1ファスナーストリンガー12aは、第1ファスナーテープ16aの第1長手縁15aに取り付けられた第1列結合エレメント14aを有する第1ファスナーテープ16aを含む。
【0078】
第2ファスナーストリンガー12bは、第2ファスナーテープ16bの第2長手縁15bに取り付けられた第2列結合エレメント14bを有する第2ファスナーテープ16bを含む。
【0079】
先に述べたように、第1ストリンガー12aと第2ストリンガー12bとを一緒に固定するために、第1列結合エレメント14aは、ファスナー軸線Lに沿って第2列結合エレメント14bと交互嵌合されてもよい。
【0080】
スライダー11は、スライダー11がファスナー軸線Lに沿って第1ファスナーストリンガー12aおよび第2ファスナーストリンガー12bに対して移動可能であるように、第1ファスナーストリンガー12aおよび第2ファスナーストリンガー12bに移動可能に取り付けられている。
【0081】
スライダーは、第1ファスナーストリンガー12aと第2ファスナーストリンガー12bとを一緒に固定するために、第1ファスナーストリンガー12aの第1列結合エレメント14aと第2ファスナーストリンガー12bの第2列結合エレメント14bを交互嵌合するために第1の方向Eへ移動可能である。
【0082】
また、スライダー11は、第1ファスナーストリンガー12aと第2ファスナーストリンガー12bとを分離するために、第1ファスナーストリンガー12aの第1列結合エレメント14aを第2ファスナーストリンガー12bの第2列結合エレメント14bから分離するために第2の方向Dへ移動可能である。
【0083】
図3には示されていないが、
図1と同様に、本発明によるスライドファスナー10は、第1の方向Eへのファスナー軸線Lに沿ったスライダー11の移動の限界を提供するように構成された少なくとも1つの上止20a、20bを備えてもよい。代替的にまたは追加的に、スライドファスナー10は、第2の方向Dへのファスナー軸線Lに沿ったスライダー11の移動の限界を提供するように構成された下止22を備えてもよい。
【0084】
本実施形態において、第1ストリンガー12aのすべての結合エレメント14aは、互いに同一であり、また第2ストリンガー12bの結合エレメント14bに対して同一である。常にこうである必要はない。
【0085】
図4、5、6および7は、3つの結合エレメントを含むファスナーストリンガーの一部の斜視図、平面図、正面図および横断面図を示している。これらの図は、これらの図に示されるファスナーストリンガーの部分が、結合エレメント14bを有する第2ストリンガー12bの一部分であるようにラベル付けされている。しかしながら、第1ストリンガー12aの結合エレメント14aが第2ストリンガー12bの結合エレメント14bと同一であることから、これらの図は第1ストリンガーとその結合エレメントに同様に適用可能であることが理解されよう。
【0086】
図6の正面図は、
図5に示すように、ストリンガー12bの部分を方向V6に見たときのものである。
図7の横断面図は、
図5および
図6に示すように、平面および方向V7で取ったものである。
【0087】
図4および
図5で最もよく分かるように、第2列結合エレメントの結合エレメント14b(第1列結合エレメントの結合エレメント14aにも同様に適用可能)のそれぞれは、ショルダー部分52を有する本体50と、横軸線Tに平行に、ファスナー軸線Lに垂直でありネック部分56を介してショルダー部分52から離れる方向に延在するヘッド部分54とを含むように形成されている。
【0088】
ヘッド部分54は、ファスナー軸線Lに平行に延在する溝58を含む。溝58は、結合エレメントの高さの中心に位置し、高さは、ファスナー軸線Lおよび横軸線Tの両方に垂直である軸線Hに沿って測定される。溝58は、結合エレメント14bが取り付けられたファスナーテープ16bの縁15bと同じ高さに位置する。特に、溝58の中心軸線GCは、結合エレメント14bが取り付けられたファスナーテープ16bの縁15bと同じ高さに位置している。別の言い方をすれば、溝58は、結合エレメント14bが取り付けられたファスナーテープ16bの平面内に位置している。溝58は、
図7のようにファスナー軸線に沿って見たときに、略半円形またはC字形のプロファイルを有する。他の実施形態では、溝は、任意の適切な断面形状/プロファイルを有し得ることが理解されよう。
【0089】
第1列結合エレメント14aのそれぞれの本体50は第1ファスナーテープ16aに取り付けられ、第2列結合エレメント14bのそれぞれの本体50は第2ファスナーテープ16bに取り付けられる。
【0090】
第1列結合エレメント14aは、第1長手縁15aが第1列結合エレメントの各結合エレメント14aのネック部分56に会合するように、第1ファスナーテープ16aの第1長手縁15aに取り付けられる。同様に、
図4および
図5で最もよく分るように、第2列結合エレメント14bは、第2列結合エレメントの各結合エレメント14bのネック部分56に第2長手縁15bが会合するように第2ファスナーテープ16bの第2長手縁15bに取り付けられる。言い換えると、第1列結合エレメント14aは、第1長手縁15aが第1列結合エレメントの各結合エレメント14aのネック部分56内に収まるように第1ファスナーテープ16aの第1長手縁15a上に取り付けられる。同様に、第2列結合エレメント14bは、第2長手縁15bが第2列結合エレメントの各結合エレメント14bのネック部分56内に内包されるように、第2ファスナーテープ16bの第2長手縁15bに取り付けられている。ファスナーテープの第1長手縁および第2長手縁がコードを含む実施形態では、第1長手縁のコードの少なくとも一部分は、第1列結合エレメントの各結合エレメントのネック部分内に内包され、第2長手縁のコードの少なくとも一部分は、第2列結合エレメントの各結合エレメントのネック部分内に内包される。いくつかの実施形態では、第1長手縁のコードの(横軸線に平行な)厚さ全体が、第1列結合エレメントの各結合エレメントのネック部分(またはネック部分および本体)内に内包され、第2長手縁のコードの(横軸線に平行な)厚さ全体が、第2列結合エレメントの各結合エレメントのネック部分(またはネック部分と本体)内に内包される。
【0091】
上記の実施例は、第1列結合エレメント14aが、第1列結合エレメントの各結合エレメント14aの本体内に第1長手縁15a(または、存在する場合には、コードの厚さ全体)が内包されるように、第1ファスナーテープ16aの第1長手縁15aに取り付けられ、第2列結合エレメント14bが、第2列結合エレメントの各結合エレメント14bの本体内に第2長手縁15b(または、存在する場合には、コードの厚さ全体)が内包されるように、第2ファスナーテープ16bの第2長手縁15bに取り付けられる、多くの公知のスライドファスナーチェーンとは異なる。
【0092】
図7に最もよく示されているように、第1列結合エレメントおよび第2列結合エレメントの各結合エレメント14a、14bは第1の部分14cを含み、第1の部分14cは、当該第1の部分14cが一部を形成する、ファスナーストリンガー12a、12bのファスナーテープ16a、16bの第1の(上)面16fに取り付けられている。さらに、第1列結合エレメントおよび第2列結合エレメントの各結合エレメント14a、14bは第2の部分14dを含み、第2の部分14dは、当該第2の部分14dが一部を形成する、ファスナーストリンガー12a、12bのファスナーテープ16a、16bの、第1の面16fの反対側の第2の(下)面16gに取り付けられた第2の部分14dを含む。各結合エレメント14a、14bの中間部分14eは、結合エレメント14a、14bの第1の部分14cおよび第2の部分14dの両方を結合する。中間部分14eは、少なくとも結合エレメント14a、14bのヘッド部分54を含む。中間部分14eはまた、結合エレメント14a、14bのネック部分56の少なくとも一部を含んでもよい。
【0093】
図8、9、10、11および12は、第1列結合エレメント14aが第2列結合エレメント14bと交互嵌合しているときのスライドファスナーチェーンまたはスライドファスナーの図を示す。
図8は、図の明瞭性を支援するために(図の意味での)上端部と下端部の一部の結合エレメントを取り除いたスライドファスナーチェーン13の一部の平面図を示す。
図9は、
図8においてV9で示される平面および方向における横断面図を示す。
図10は、
図8においてA-Aで示される平面および方向における正面断面図を示す。
図11は、
図8においてBで示される平面および方向における正面断面図を示す。
図11では、後に詳述するように、チェーンが平面でなくなるように折り曲げられている。
図12は、スライダーを含むスライドファスナーの、
図9と同様の、
図3のCによって示される平面および方向における横面断面図を示す。
【0094】
図8および
図9で最も明確に分るように、第1列結合エレメント14aが第2列結合エレメント14bと交互嵌合しているとき、第1長手縁15aと第2長手縁15bは分離距離Sだけ離間したままになる。これは、その結合エレメントが交互嵌合しているとき、第1ファスナーテープおよび第2ファスナーテープの長手縁が互いに接触してシールを形成するいくつかの公知のシーリングスライドファスナーと相違している。本発明において、ファスナーチェーンが、第1ファスナーテープおよび第2ファスナーテープの長手縁間の接触によって形成されるシールを有し得ないことを考えると、シールは、別の方法で形成されなければならない。これについては、以下でより詳細に説明する。
【0095】
再び、
図8および
図9で最も明確に分るように、第1列結合エレメント14aが第2列結合エレメント14bと交互嵌合しているとき、第1列結合エレメント14aの第1結合エレメント14aは、いくつかのことが起こるように、第2列結合エレメント14bの2つの隣接する結合エレメント14b間に受容されている。
【0096】
第1に、第1結合エレメント14aの溝58は、第1の接触領域において、隣接する結合エレメント14bの中間の第2ファスナーテープ16bの第2長手縁15bの一部分を受容してそれと接触する。
【0097】
第2に、第1結合エレメント14aのヘッド部分54は、それぞれ第2および第3の接触領域において、隣接する結合エレメント14bのそれぞれのネック部分56の間に受容され、それらと接触する。
【0098】
第3に、隣接する結合エレメントの溝58の一方(例えば
図8で14bとラベル付けされた2つの結合エレメントのうちの上側)は、第4の接触領域において、第1結合エレメント14aに隣接する第1ファスナーテープ16aの第1長手縁15aの第1の部分を受容してそれと接触する。
【0099】
第4に、隣接する結合エレメントの溝58の他方(例えば、
図8において14bとラベル付けされた2つの結合エレメントのうちの下側)は、第5の接触領域において、第1結合エレメント14aに隣接する第1ファスナーテープ16aの第1長手縁15aの第2の部分を受容してそれと接触する。第1結合エレメント14aは、第1ファスナーテープ16aの第1長手縁15aの第1の部分と第2の部分との中間である。
【0100】
第1、第2、第3、第4および第5の接触領域のそれぞれにおける接触は、第1結合エレメント14aと隣接する結合エレメント14bのそれぞれとの間に、ひいては、離間した第1長手縁15aおよび第2長手縁15bの間に、水が(例えば軸線Hに沿った方向に)透過するのを実質的に防止するようにシールを形成している。
【0101】
説明を容易にするために、上記の説明は、第1ストリンガーの結合エレメントの1つと、結合エレメントが交互嵌合しているときに第1ストリンガーの結合エレメントを受容する第2ストリンガーのそれぞれの2つの隣接する結合エレメントとの間に形成されるシールに言及していることが理解されるであろう。実際には、結合エレメントが交互嵌合しているとき、第1ストリンガーの各結合エレメントと、第1ストリンガーの前記結合エレメントを受容する第2ストリンガーのそれぞれの2つの隣接する結合エレメントとの間に同じシールが形成されることになる。このようにして、交互嵌合した結合エレメントの(ファスナー軸線に平行な)全長に沿って、第1ストリンガーと第2ストリンガーとの結合エレメントのすべての間にシールが形成される。
【0102】
結合エレメントが交互嵌合しているとき、一方のファスナーストリンガー上の結合エレメントの溝と他方のファスナーストリンガーの長手縁との接触は、2つのストリンガー間のシールの形成を容易にし、また、横力(ファスナー軸線および横軸線の両方に略垂直な方向Hの)による望ましくない分離に抵抗する結合ファスナーストリンガーの能力を増大させる。これはまた、結合エレメント上に存在する追加の特徴(公知の結合エレメントのショルダー部分上の保持フランジの存在など)を必要とせずに達成され、結合エレメント、ひいては本発明によるファスナーチェーンの設計および製造をより簡単なものにする。
【0103】
上述したようなシールにおいて、シールは流体密、例えば水密であり得ることが理解されるであろう。
【0104】
図8で最もよく見えるように、第1ファスナーテープ16aの第1長手縁15aおよび第2ファスナーテープ16bの第2長手縁15bはそれぞれ、ファスナー軸線と横軸線との両方に垂直な方向(すなわち方向H)において、コードが一部を形成するファスナーテープの残りの部分の厚さよりも大きな厚さを有するコードの形状をとる。
図9に最もよく分るように、ファスナー軸線に沿った断面で見ると、コード15a、15bが略円形の断面を有する一方で、テープ16a、16bの残りの部分の断面は略長方形または直線である。コードは、テープの強化された縁と呼ばれてもよい。コードは、当技術分野でよく知られている方法でテープに縫い付けられるか、または織り込まれてもよい。コードがある実施形態では、ファスナーテープの長手縁はコードによって形成される。よって、コードを含む実施形態では、コードという用語と長手縁という用語は互換的に使用され得る。
【0105】
図4、
図7および
図9で最も分りやすいように、各ファスナーテープ16a、16bは、概して積層された構造を有する。各テープ16a、16bは、織物、不織布、またはニット材料の芯16cから形成されている。芯16cは、例えば、ポリエステル、ビニロン、ポリウレタンなどの合成繊維、および/または、綿などの天然繊維から形成されてもよい。芯16cは透水性であってもよい。
【0106】
各テープ16a、16bの芯16cは、防水性のプラスチック材料でコーティングおよび/または含浸されている。コーティングは、例えば、コーティングを芯上に押し出すなど、任意の適切な方法で塗布され得るが、これらに限定されない。任意の適切な防水性材料が使用され得る。一実施例では、コーティング材料はポリウレタンである。
【0107】
図4、
図7および
図9に示すように、コーティングは、芯16cの上に配置された第1コーティング層16dと、芯16cの下に位置する第2コーティング層16eの形態をとる。図示の実施形態では、第1コーティング層と第2コーティング層の両方が同じ材料から形成されている。図示の実施形態では、第1コーティング層16dは、第2コーティング層16eよりも方向Hに厚い。これは、使用時に、チェーン13の上面が水に曝される可能性があることが意図されているためである。このように、第1コーティング層が防水性であるという要件は第2コーティング層に対する要件よりも大きく、層厚が大きいほど防水性が高くなるため、上側の第1コーティング層16dは下側の第2コーティング層16eよりも厚くなることが分かる。第2コーティング層が薄いと、ファスナーテープのより大きな可撓性を確保できる。
【0108】
他の実施形態では、第2コーティング層は、第1コーティング層と比較して異なる材料から形成されてもよく、第2コーティング層は、第1コーティング層と同じ厚さまたはそれより厚くてもよく、または第2コーティング層が全く存在しなくてもよい。
【0109】
第1ファスナーテープ16aおよび第2ファスナーテープ16bのそれぞれのコード15a、15bは、防水性のプラスチック材料でコーティングされおよび/または含浸されていることが分かる。本実施形態では、第1コーティング層16dは、コード15a、15bの周囲に延在して第2コーティング層16eに隣接している。コード15a、15bをプラスチック材料でコーティングおよび/または含浸させることにより、コード15a、15bを防水性にするだけでなく、コード15a、15bの弾力性を高めることができる。
【0110】
コード15a、15bの弾力性を高めると、結合エレメントが交互嵌合する際に接触する結合エレメントの溝に対してコード15a、15bが及ぼすシール力を高めることができる。これは、コード15a、15bと結合エレメント14b、14aとの間に生じるシールの有効性を増加させ得る。
【0111】
図9に最もよく示されているように、横軸線Tに平行な方向における第1ファスナーストリンガー12aのコード15a(存在する場合、コーティングを含む)の厚さFは、第1列結合エレメント14aが第2列結合エレメント14bと交互嵌合しているとき、第1ファスナーストリンガー12aのコード15aと第2ファスナーストリンガー12bのコード15bとの間の横軸線Tと平行な方向における分離距離Sより大きくなっている。
【0112】
これにより、結合エレメント14a、14bが交互嵌合されたときの、ファスナーテープ16a、16bの長手縁15a、15b間の分離距離Sが可能な限り小さくなり得る。これにより、ファスナーチェーン13を水密性とするために水密性である必要があるファスナーテープ16a、16bの長手縁15a、15bの間の面積が小さくなる。これにより、ファスナーチェーン13のシーリング有効性を向上させることができる。さらに、ファスナーテープ16a、16bの長手縁15a、15b間の分離距離Sを小さくすることにより、ファスナー軸線と横軸線の両方に垂直な曲げ力(例えば、方向Hに及ぼされる力)に曝されたときのファスナーチェーンの強度が増加し得る。これにより、結合されたファスナーストリンガー12a、12bが、そのような曲げ力による望ましくない分離に抵抗する能力を増大させることができる。
【0113】
第1ファスナーストリンガー12aのコード15aの周りのコーティングされた材料の、横軸線Tに平行な方向における厚さF(
図9に示す)は、コード15aの周りのコーティングされた材料の、軸線Hに平行な方向における高さHCより大きい。第1ファスナーストリンガー12aのコード15aの、横軸線Tに平行な方向における厚さF(
図9に示す)は、第1結合エレメント14aの溝58の、横軸線Tに平行な方向における深さG(
図7に示す)より大きい。
【0114】
ここで
図4および
図10を参照すると、第1結合エレメント14aは第1加圧部60を含み、隣接する結合エレメントの一方(例えば、
図10において14bとラベル付けされた2つの結合エレメントのうちの上側)は、対応する第2加圧部60aを含んでいる。使用時、第1列結合エレメント14aが第2列結合エレメント14bと交互嵌合されるとき、第1加圧部60は第2加圧部60aに接触して、両部間にシールを形成する。
【0115】
さらに、第1結合エレメント14aは第3加圧部60bを含み、隣接する結合エレメントの他方(例えば、
図10において14bとラベル付けされた2つの結合エレメントのうちの下側)は、対応する第4加圧部60cを含む。使用時、第1列結合エレメント14aが第2列結合エレメント14bと交互嵌合されるとき、第3加圧部60bは第4加圧部60cに接触して、両部間にシールを形成する。
【0116】
図4および
図10に示す実施形態では、第1加圧部60、第2加圧部60a、第3加圧部60bおよび第4加圧部60cはそれぞれ、関連する加圧部が一部を形成する、結合エレメント14a、14bのヘッド部分54および/またはネック部分56からファスナー軸線Lと平行な方向に延在する突起(またはフィン)の形態をとっている。特に、図示の実施形態では、突起は、結合エレメントのヘッド部分の下側(または本体に向いた部分)から、即ち、ネック部分56に隣接するヘッド部分54上の位置から延びていると言ってもよい。言い換えると、突起または加圧部は、溝58の基部および第1長手縁15aと第2長手縁15bとの遠位端から、交互に繰り返し延在するように形成されている。
【0117】
加圧部は、結合エレメント間のシールの有効性を高めるのに役立つ。これは、結合エレメントが交互嵌合するために、加圧部が圧縮されることによって達成される。加圧部の圧縮は、それらが他の対応する結合エレメントに接触する点で、接触した結合エレメントに復元力を及ぼし、その結果、シールの有効性が増加することを意味する。
【0118】
他の実施形態では、加圧部は、異なる形態をとり得る。
図13および
図14は、上述したものと類似する実施形態を示す。
図13および
図14は、
図5および
図10と同等である。
図14は、
図8中のAで示す同等の面および方向における正面断面図である。この実施形態では、結合エレメント14a、14bは、結合エレメントのヘッド部分54の下側を拡大した形態をとる加圧部60、60a、60b、60cを含む。これは、
図13内の破線によって表されている。関連する結合エレメントのヘッド部分の拡大された下面は、ほとんどの公知の結合エレメント(拡大された下面を有していない)とは異なり、結合エレメント14a、14bが交互嵌合されるとき、拡大された下面の形態の加圧部が圧縮されて、上述したようにシーリング有効性が増加することを意味している。
【0119】
上述した事項のさらなる利点として、結合エレメントが交互嵌合しているときに加圧部が圧縮されることを考えると、結合エレメントが交互嵌合しているときにチェーンが曲がるかまたは他様に変形すると、加圧部がわずかに拡張して、接触している結合エレメント間の接触を維持し、それによってシールを維持できるようになる。加圧部が存在しない場合、そうでなければ接触している結合エレメント間の接触が断絶し、それによってシールが破壊される可能性がある。
【0120】
第1結合エレメント14aおよび隣接する結合エレメント14b(実際には、すべての結合エレメント14aおよび結合エレメント14b)は、ファスナーテープをコーティングおよび/または含浸するために用いられる材料と同じ、防水性のプラスチック材料から形成されている。ファスナーテープがコーティングおよび/または含浸されるのと同じ材料から結合エレメントを形成すると、ファスナーテープとそれぞれの結合エレメントとの間の接着強度を高めることができることが判明している。
【0121】
第1結合エレメント14aおよび隣接する結合エレメント14b(実際には、すべての結合エレメント14aおよび結合エレメント14b)は、結合エレメントのそれぞれのヤング率が約1000~約2000である材料(ポリウレタンなど)から形成されている。これは、結合エレメント間のシールの有効性を向上させるのに役立ち得る。これは、結合エレメントを圧縮することが可能であればあるほど、関連する結合エレメントとファスナーテープとの接触を維持しながら、ファスナーチェーンが曲げに対する耐性を高めるからであろう。さらに、加圧部に関連して上述したように、結合エレメントが圧縮されればされるほど、互いに復元力を及ぼすことができ、それによってチェーンのシーリング効果を高めることができる。
【0122】
図6および
図11で最もよく分るように、第1結合エレメント14aおよび隣接する結合エレメント14bのそれぞれの本体50は、ファスナー軸線Lに平行なテーパ状の幅を有し、それによって、第1の横位置(
図8の断面線Bで示される)で、結合エレメント14a、14bが取り付けられたファスナーテープ16a、16bの第1の面16fに隣接する関連する結合エレメントの本体50の第1の幅FWは、第1の横位置において、結合エレメントが取り付けられたファスナーテープの第1の面16fから離隔するとともに上方の位置SLでの、関連する結合エレメントの本体の、ファスナー軸線に平行な第2の幅SWよりも大きい。テーパ状側面は62で示す。
【0123】
本実施例では、第1の幅FWは、第1の横位置における、第1ファスナーテープ16aの上方の本体50の最大幅であり、第2の幅SWは、第1の横位置における、第1ファスナーテープ16aの上方の本体50の最小幅である。ただし、他の実施形態では、第1の幅および第2の幅は、任意の適切な幅であってよい。
【0124】
本実施例では、第2の幅は第1の幅の約65%である。しかしながら、他の実施形態では、第2の幅は、第1の幅の約40%~約85%であってよい。本実施例では、テーパ状側面62は、軸線H(すなわち、ファスナー軸線Lおよび横軸線Tの両方に垂直な軸線)に対して約27度の鋭角Iで傾斜している。他の実施形態では、角度Iは、約15度~約45度の任意の適切な角度であってよい。角度Iが小さすぎると、チェーンが曲げられたときに結合エレメントの変形(以下でより詳細に説明する)が起こり、一方、角度Iが大きすぎると、チェーンが曲げられたときに破裂する可能性があることが判明している。
【0125】
ファスナーテープの上方の結合エレメント本体の側面のテーパについては、既述のとおりである。さらに、ファスナーテープの下方の本体の側面のテーパも発生する。より詳細には、第1結合エレメント14aおよび隣接する結合エレメント14bのそれぞれの本体50は、ファスナー軸線Lに平行なテーパ状の幅を有し、それによって、第1の横位置(
図8の断面線Bで示される)において、結合エレメント14a、14bが取り付けられたファスナーテープ16a、16bの第2の面16gに隣接する、関連する結合エレメント14a、14bの本体50の、ファスナー軸線に平行な第3の幅(この場合、第1の幅FWと同じであるが、他の実施形態ではそうである必要はない)が、第1の横位置において、結合エレメント14a、14bが取り付けられたファスナーテープ16a、16bの第2の面16gから離隔するとともに下方に位置する関連する結合エレメント14a、14bの本体50の、ファスナー軸線Lに平行な第4の幅(この場合、第2の幅SWと同じであるが、他の実施形態ではそうである必要はない)よりも大きい。ファスナーテープの下方のテーパ状側面は64で示す。
【0126】
ファスナーテープの上方のテーパ状側面と同様に、本実施形態では、第3の幅FWは、第1の横位置における第1ファスナーテープ16aの下方の本体50の最大幅であり、第4の幅SWは、第1の横位置における第1ファスナーテープ16aの下方の本体50の最小幅である。ただし、他の実施形態では、第3の幅および第4の幅は、任意の適切な幅であってよい。
【0127】
本実施例では、第4の幅は第3の幅の約65%である。しかしながら、他の実施形態では、第4の幅は第3の幅の約40%~約85%であってよい。本実施例では、テーパ状側面64は、軸線H(すなわち、ファスナー軸線Lおよび横軸線Tの両方に垂直な軸線)に対して約27度の鋭角I2だけ傾いている。他の実施形態では、角度I2は、約15度~約45度の任意の適切な角度であってよい。以前のように、角度I2が小さすぎると、チェーンを曲げたときに結合エレメントの変形(以下でより詳細に説明する)が起こり、一方、角度I2が大きすぎると、チェーンを曲げたときにチェーンが破裂する可能性があることが判明している。
【0128】
本実施例では、ファスナーテープの上方のテーパ状側面のそれぞれのテーパは同じである。同様に、ファスナーテープの下方にあるテーパ状側面のそれぞれのテーパは同じである。さらに、ファスナーテープの上方のテーパ状側面のテーパと、ファスナーテープの下方のテーパ状側面のテーパは同じである。他の実施形態では、これらのうちの1つ以上が上記に当てはまらない場合がある。
【0129】
結合エレメント14a、14bがテーパ状側面を有する理由は以下の通りである。先に説明したように、結合エレメントは、比較的圧縮可能な材料から形成されてもよい。これは、結合エレメントが交互嵌合しているとき、i)隣接する結合エレメントと、ii)結合エレメントと、結合エレメントが交互嵌合しているときに各結合エレメントが接触するファスナーテープの長手縁(またはコード)と、の間の密閉性を向上させるのに役立つ。しかし、結合エレメントを比較的圧縮可能な材料から形成することは、望ましくない状況において結合エレメントが圧縮される可能性があることを意味する。
【0130】
そのような状況の1つが、
図11に示されるものである。ファスナーチェーンは、スライドファスナーの横軸線Tを中心に、スライドファスナーチェーンがもはや平面でないように曲げられている。この状況では、結合エレメント14aは、第1ストリンガーのその結合エレメント列において、その両側の結合エレメントに接触する。特に、結合エレメントの本体50は、それぞれP1およびP2で示されるファスナーテープ16aの下の2つの位置でその両側の結合エレメントのそれぞれの本体に接触する。
図11は、ファスナーチェーンが、結合エレメント14aがその両側の結合エレメントに接触する程度に曲げられた状態を示している。ファスナーチェーンが
図11に示されるよりもさらに曲げられると、これによって、結合エレメント14aおよびその両側の結合エレメントが圧縮されることになる。これらの結合エレメントの圧縮により、その形状が変形される。結合エレメントの変形は、結合エレメントが水密性シールを維持できなくなることを意味し得る。さらに、結合エレメントの変形は、それらがもはや他のストリンガーの結合エレメントと効果的に交互嵌合することができず、それによってスライダーチェーンの分離または破裂を引き起こすことを意味し得る。
【0131】
結合エレメント14aの本体50の側面64がテーパ状であるため、結合エレメントの本体がその両側の結合エレメントの本体に接触するまでファスナーチェーンが曲げられ得る程度は、テーパ状側面がない場合よりも大きいことが理解されよう。このように、結合エレメントのテーパ状側面は、同じストリンガーの隣接する結合エレメントの本体同士が接触して結合エレメントの変形に至る前に、スライドファスナーチェーンを大きく曲げることを可能にする。したがって、テーパリングは、ファスナーチェーンの曲げによるファスナーチェーンの破損リスクを低減する。
【0132】
上記の論述は、ファスナーテープの下面の一部分がファスナーテープの下面の別の部分に対向するように移動される結果となるファスナーチェーンの曲げと連動するファスナーテープの下方のテーパ状側面64にフォーカスしている一方で、この論述は、ファスナーテープの上面の一部分がファスナーテープの上面の別の部分に対向するように移動される結果となるファスナーチェーンの曲げ(すなわち、
図11に示した方向とは反対方向へのファスナーチェーンの曲げ)と連動するファスナーテープの上方のテーパ状側面62にも同様に関連することが理解されよう。
【0133】
図11に関連する上記の論述は、曲げの間の隣接する結合エレメントの圧縮がシールの劣化をもたらさないように、エレメントの成形にフォーカスしたものである。しかしながら、いくつかの実施形態において、ファスナーチェーンが図に示される程度に曲げられると、隣接する結合エレメントの前述の圧縮以外の要因によってシールが劣化する可能性があることが理解されよう。
【0134】
図12は、本発明の実施形態によるスライドファスナーの断面図である。断面は、
図3においてCで示される平面および方向でとられたものである。スライダー11は、ファスナーチェーンの交互嵌合した結合エレメント14a、14bに取り付けられている。
【0135】
各結合エレメント14a、14bの本体は、後部がテーパ状になっている。各結合エレメント14a、14bの後部は、結合エレメントのヘッド部分から最も離れて位置する本体の部分である。テーパ状の後部は、ファスナーテープ16a、16bの上方に位置する第1のテーパ状側面66と、ファスナーテープ16a、16bの下方に位置する第2のテーパ状側面68とで構成されている。テーパ状側面66、68のそれぞれは、結合エレメントのヘッド部分からの横方向の距離(軸線Tに平行に測定)が増加するにつれて結合エレメントの高さ(軸線Hに平行に測定)が減少するように、横軸線Tに沿ってテーパ状であると言うことができる。
【0136】
本実施形態では、各結合エレメント上のテーパ状側面66、68のそれぞれは同じである。他の実施形態ではそうでなくてもよく、各結合エレメント上方のテーパ状側面は異なっていてもよく、および/または、ファスナーテープの上方のテーパ状側面66は、ファスナーテープの下方のテーパ状側面68と異なっていてもよい。
【0137】
本実施形態では、テーパ状側面66、68は略平面であり、テーパ状側面66、68と軸線Hとの間の鋭角69が約50度であるように傾斜している。他の実施形態では、鋭角は、約10度~約75度であってもよい。
【0138】
テーパ状側面66は、関連する結合エレメントの本体の上面と関連する結合エレメントの本体の後部との間に設けられる。テーパ状側面68は、関連する結合エレメントの本体の下面と、関連する結合エレメントの本体の後部との間に設けられる。結合エレメントの本体の後部は、軸線Hに略平行に亘る。
【0139】
テーパ状側面66、68は、スライダーの上部及び下部フランジ42、44それぞれと、結合エレメントの上側および後側との間に隙間があることを意味する。この隙間は、結合エレメント14a、14bとスライダー11の内面との間の接触を、したがって摩擦を低減するのに役立ち得る。これは、結合エレメントが、柔性であり、したがって摩擦による摩耗の影響を受けやすい圧縮可能な材料から形成されている場合に、特に重要であると考えられる。このように、テーパ状側面66、68によって画定される隙間は、スライドファスナー上でのスライダーの使用による結合エレメントの摩耗、したがってあり得る劣化を回避するのに役立つ。
【0140】
さらに、隙間は、スライダーと結合エレメントとの間の摩擦を低減するので、スライダーをファスナーチェーンに沿って移動させることも容易になり、したがって、スライドファスナーを開閉することも容易にするであろう。
【0141】
テーパ状側面66、68は、それぞれ結合エレメント本体の上面および下面から、前記結合エレメントが取り付けられたファスナーテープ16a、16bまでずっと続いてはいない。実際には、テーパ状側面66、68は、それぞれ、本体の上面および下面から、結合エレメントが取り付けられた関連するファスナーテープの上面および下面からそれぞれ軸線Hに沿って離隔した位置まで続いている。
【0142】
また、テーパ状側面66が、スライダー11の上部フランジ42ほどファスナーテープ16a、16bの上面近くまで延在しないこともある。同様に、テーパ状側面68は、スライダー11の下部フランジ44ほどファスナーテープ16a、16bの下面に近接して延在しない。このようにして、スライダーの上下のフランジ42、44の間の分離距離H2(軸線Hと平行に測定)は、結合エレメントが取り付けられたファスナーテープの上面に最も近いテーパ面66の部分と、結合エレメントが取り付けられたファスナーテープの下面に最も近いテーパ面68の部分の間の分離距離H1(軸線Hと平行に測定)より小さくなる。本実施形態では、H1は1.5mmであり、H2は1mmである。当然ながら、他の実施形態では、これらの距離は異なっていてもよい。
【0143】
テーパ面が、スライダーの関連する上部または下部フランジの先端ほどファスナーテープに近接して延在しないことによって、テーパ面は依然として結合エレメントとスライダーの内部表面との間に隙間を提供することができ、それによって摩耗を低減するが、結合エレメントの後部が依然としてスライダーの上部および下部フランジに接触できるので、スライダーをファスナーチェーンに沿って案内するのを補助しているとも考えられる。
【0144】
図15は、本発明によるスライドファスナー10を含む物品70の概略図である。当技術分野で公知のように、スライドファスナー10は、第1ストリンガー12aのファスナーテープ16aが物品の第1の部分70aに水密的に取り付けられ、第2ストリンガー12bのファスナーテープ16bが物品の第2の部分70bに水密的に取り付けられることによって物品70に組み込まれる。このように、スライドファスナー10が、その結合エレメントのすべてが交互嵌合されるように閉じられると、スライドファスナーは、物品の第1の部分70aと第2の部分70bを水密的に結合させる。
【0145】
本明細書で提供される実施例は、本開示の単なる例示であり、特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することなく様々な変更が本開示になされ得ることを理解されたい。