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特許7464793電界放出陰極装置および電界放出陰極装置の形成方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-01
(45)【発行日】2024-04-09
(54)【発明の名称】電界放出陰極装置および電界放出陰極装置の形成方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 1/312 20060101AFI20240402BHJP
   H01J 9/02 20060101ALI20240402BHJP
   H01J 1/50 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
H01J1/312
H01J9/02 M
H01J1/50
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023520018
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-31
(86)【国際出願番号】 IB2021058933
(87)【国際公開番号】W WO2022070090
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】63/085,309
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】523115368
【氏名又は名称】エヌシーエックス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ジアン
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-164597(JP,A)
【文献】特開2005-166681(JP,A)
【文献】特開2003-346641(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109065428(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 1/00 - 1/12
1/30 - 1/98
5/00 - 9/02
19/00 - 21/36
99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状表面上に堆積された電界放出材料を有する円筒状基材を含む電界放出陰極であって、長手方向軸を画定する、電界放出陰極と、
前記電界放出陰極の前記円筒状表面の周りに同心円状に延在し、それらの間に間隙を画定するソレノイドであって、前記長手方向軸に垂直に延在する第1および第2の対向する開放端を画定する、ソレノイドと、
前記ソレノイドに電気的に接続され、一定極性(DC)電流を前記ソレノイドに方向付けるように配置された電流源であって、前記ソレノイド内の前記DC電流が前記ソレノイドに沿って磁界を形成する、電流源と、
前記ソレノイドまたは前記電界放出陰極に電気的に接続され、前記ソレノイドまたは前記電界放出陰極と相互作用して、前記電界放出材料から前記間隙内に電子を放出するように前記電界放出陰極を誘導する電界を生成するように配置されたゲート電圧源であって、放出された電子は、前記磁界に応答して前記間隙内および前記長手方向軸の周りで螺旋運動し、前記ソレノイド内の電流フローに対応する向きで、前記ソレノイドの前記第1の開放端を通過する、ゲート電圧源と
を備える電界放出陰極装置。
【請求項2】
前記ソレノイドの前記第1の開放端に対して離間して配置された陽極と、
前記陽極に電気的に接続され、前記陽極に少なくとも約10kVの電圧を印加するように構成された高電圧源であって、前記陽極は、電圧の印加に応答して前記ソレノイドの前記第1の開放端から放出された電子を引き付ける、高電圧源と
を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記陽極に引き付けられる電子の速度は、前記陽極に印加される電圧に比例する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ソレノイドの前記第1の開放端を通して放出される電子の量は、電界を生成するために前記ゲート電圧源によって印加される電圧に比例する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記ソレノイドの前記第1の開放端から放出される電子の焦点は、前記第1の開放端の直径に比例する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記ソレノイドの前記第1の開放端から放出される電子の焦点は、前記第1の開放端における前記ソレノイドと前記電界放出陰極の前記円筒状表面との間の間隙の寸法に比例する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記円筒状基材は、導電性材料または金属材料から成る、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記円筒状表面上に堆積された前記電界放出材料は、ナノチューブ、ナノワイヤ、グラフェン、非晶質炭素、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記円筒状基材は、約1mm~約5cmの直径を有し、前記間隙は、約100μm~約1mmである、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記ソレノイドの前記第1の開放端および前記第2の開放端は、約1mm~約5cmの直径を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
電界放出陰極装置の形成方法であって、
ソレノイドが電界放出陰極の円筒状基材の円筒状表面の周りに同心円状に延在して、それらの間に間隙を画定するように、前記円筒状基材を前記ソレノイド内に挿入するステップであって、前記電界放出陰極が長手方向軸を画定し、前記ソレノイドが前記長手方向軸に垂直に延在する第1および第2の対向する開放端を画定する、挿入ステップと、
前記ソレノイドに電気的に接続された電流源から一定極性(DC)電流を前記ソレノイドに方向付けるステップであって、前記ソレノイド内の前記DC電流が前記ソレノイドに沿って磁界を形成する、方向付けステップと、
前記ソレノイドまたは前記電界放出陰極に電気的に接続されたゲート電圧源によって電界を生成するステップであって、前記電界は、電界放出材料から前記間隙内に電子を放出するように前記電界放出陰極を誘導し、放出された電子は、前記磁界に応答して前記間隙内および前記長手方向軸の周りで螺旋運動し、前記ソレノイド内の電流フローに対応する向きで、前記ソレノイドの前記第1の開放端を通過する、電界生成ステップと
を含む、方法。
【請求項12】
前記基材の前記円筒状表面上に電界放出材料を堆積させるステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
高電圧源から少なくとも約10kVの電圧を、前記ソレノイドの前記第1の開放端に対して離間して配置された陽極に印加するステップを含み、前記陽極は、電圧の印加に応答して前記ソレノイドの前記第1の開放端から放出された電子を引き付ける、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記ソレノイドの前記第1の開放端の直径を変化させて前記第1の開放端から放出される電子の焦点を比例的に変化させるステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記ソレノイドの前記第1の開放端における前記ソレノイドと前記電界放出陰極の前記円筒状表面との間の前記間隙の寸法を変化させて、前記第1の開放端から放出される電子の焦点を比例的に変化させるステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
導電性材料または金属材料の前記円筒状基材を形成するステップと、ナノチューブ、ナノワイヤ、グラフェン、非晶質炭素、またはそれらの組み合わせから成る前記電界放出材料を前記円筒状基材の前記円筒状表面上に堆積させるステップとを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記円筒状基材を前記ソレノイドに挿入するステップは、前記間隙が約100μm~約1mmとなるように、約1mm~約5cmの直径を有する前記円筒状基材を前記ソレノイドに挿入するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記ソレノイドの前記第1の開放端および前記第2の開放端が約1mm~約5cmの直径を有するように前記ソレノイドを形成するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電界放出陰極装置に関し、より詳細には、電界放出陰極装置および電界放出陰極装置の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な電界放出陰極アセンブリは、電界放出陰極と引き出しゲート構造とを含み、それらの間に特定の間隙距離を有しており、その例を図1に示す。このような従来技術の例では、陰極表面から電界放出電子を引き出すために、ゲート電極に外部電圧(V)が印加され、陰極は電気的に接地される。
【0003】
電界放出陰極は、典型的なシナリオにおいて、ある最大電流密度下でのみ安定して動作する。このように、安定した高電流を実現するためには、一般的に大面積の陰極が必要である。電子放出面積(例えば、電子ビーム断面に対応する)は、図1に示すように、対応する陰極面積によって定義される。大きな陰極は、一般に、大きなビーム断面を有する電子ビームを生成する。しかしながら、多くの用途では、より小さくより集束されたビーム断面サイズを達成するために、幅の広い電子ビーム(大きなビーム断面)をさらに集束/集光させなければならない。しかしながら、大きな放出面積を有する陰極では電子ビームの必要な集束を達成するのは難しいことが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、安定した高電流を達成するための大面積陰極であって、電界放出電子から小さく集束された電子ビーム断面を形成することもできる、大面積陰極を有する電界放出陰極アセンブリのための装置およびその形成方法が必要とされている。すなわち、電子ビーム断面を大幅に増大させることなく、陰極をイオン衝撃から保護しながら、所与の面積(例えば、ゲートサイズ)から放出される電界放出電子(例えば、電流)の総量を増大させることが可能な電界放出陰極アセンブリを実現することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記および他の必要性は、以下の例示的な実施形態を含むがこれらに限定されない本開示の態様によって満たされ、1つの特定の態様では、円筒状表面上に堆積された電界放出材料を有する円筒状基材を含む電界放出陰極であって、長手方向軸を画定する、電界放出陰極と、電界放出陰極の円筒状表面の周りに同心円状に延在し、その間に間隙を画定するソレノイドであって、長手方向軸に対して垂直に延在する第1および第2の対向する開放端を画定する、ソレノイドと、ソレノイドに電気的に接続され、一定極性(DC)電流(I)をソレノイドに方向付けるように配置され、ソレノイド内のDC電流(I)がソレノイドに沿って磁界(B)を形成する、電流源(V)と、ソレノイドまたは電界放出陰極に電気的に接続され、ソレノイドまたは電界放出陰極と相互作用して、電界放出材料から間隙内に電子(e)を放出するように電界放出陰極を誘導する電界(E)を生成するように配置されたゲート電圧源(V)であって、放出された電子が、磁界に応答して間隙内および長手方向軸の周りで螺旋運動し、ソレノイド内の電流フローに対応する向きで、ソレノイドの第1の開放端を通過する、ゲート電圧源(V)とを備える電界放出陰極装置を提供する。
【0006】
別の例示的な態様は、電界放出陰極装置の形成方法であり、ソレノイドが基材の円筒状表面の周りに同心円状に延在し、それらの間に間隙を画定するように、電界放出陰極の円筒状基材をソレノイドに挿入するステップであって、電界放出陰極が長手方向軸を画定し、ソレノイドが長手方向軸に対して垂直に延在する第1および第2の対向する開放端を画定する、挿入ステップと、ソレノイドに電気的に接続された電流源(V)からソレノイドに一定極性(DC)電流(I)を方向付けるステップであって、ソレノイド内のDC電流(I)がソレノイドに沿って磁界(B)を形成する、方向付けステップと、ソレノイドまたは電界放出陰極に電気的に接続されたゲート電圧源(V)によって電界(E)を生成するステップであって、電界(E)は、電界放出材料から間隙内に電子(e)を放出するように電界放出陰極を誘導し、放出された電子は、磁界に応答して間隙内および長手方向軸の周りで螺旋運動し、ソレノイド内の電流フローに対応する向きで、ソレノイドの第1の開放端を通過する、電界(E)生成ステップとを含む形成方法を提供する。
【0007】
したがって、本開示は、限定ではないが、以下の例示的な実施形態を含む。
例示的な実施形態1:円筒状表面上に堆積された電界放出材料を有する円筒状基材を備える電界放出陰極であって、長手方向軸を画定する電界放出陰極と、電界放出陰極の円筒状表面の周りに同心円状に延在し、その間に間隙を画定するソレノイドであって、長手方向軸に対して垂直に延在する第1および第2の対向する開放端を画定する、ソレノイドと、ソレノイドに電気的に接続され、一定極性(DC)電流をソレノイドに方向付けるように配置され、ソレノイド内のDC電流がソレノイドに沿って磁界を形成する、電流源と、ソレノイドまたは電界放出陰極に電気的に接続され、ソレノイドまたは電界放出陰極と相互作用して、電界放出材料から間隙内に電子を放出するように電界放出陰極を誘導する電界を生成するように配置されたゲート電圧源であって、放出された電子は、磁界に応答して間隙内および長手方向軸の周りで螺旋運動し、ソレノイド内の電流フローに対応する向きで、ソレノイドの第1の開放端を通過する、ゲート電圧源とを備える電界放出陰極装置。
例示的な実施形態2:ソレノイドの第1の開放端に対して離間して配置された陽極と、陽極に電気的に接続され、陽極に少なくとも約10kVの電圧を印加するように構成された高電圧源であって、陽極は電圧の印加に応答してソレノイドの第1の開放端から放出された電子を引き付ける、高電圧源とを備える、前述の例示的な実施形態のいずれかの装置またはそれらの組み合わせ。
例示的な実施形態3:陽極に引き付けられる電子の速度は、陽極に印加される電圧に比例する、前述の例示的な実施形態のいずれかの装置またはそれらの組み合わせ。
例示的な実施形態4:ソレノイドの第1の開放端を通して放出される電子の量は、電界を生成するためにゲート電圧源によって印加される電圧に比例する、前述の例示的な実施形態のいずれかの装置またはそれらの組み合わせ。
例示的な実施形態5:ソレノイドの第1の開放端から放出される電子の焦点は、第1の開放端の直径に比例する、前述の例示的な実施形態のいずれかの装置またはそれらの組み合わせ。
例示的な実施形態6:ソレノイドの第1の開放端から放出される電子の焦点は、ソレノイドと第1の開放端における電界放出陰極の円筒状表面との間の間隙の寸法に比例する、前述の例示的な実施形態のいずれかの装置またはそれらの組み合わせ。
例示的な実施形態7:円筒状基板は、導電性材料または金属材料から成る、前述の例示的な実施形態のいずれかの装置またはそれらの組み合わせ。
例示的な実施形態8:円筒状表面上に堆積された電界放出材料は、ナノチューブ、ナノワイヤ、グラフェン、非晶質炭素、またはそれらの組み合わせを含む、前述の例示的な実施形態のいずれかの装置またはそれらの組み合わせ。
例示的な実施形態9:円筒状基材は、約1mm~約5cmの直径を有し、間隙は、約100μm~約1mmである、前述の例示的な実施形態のいずれかの装置またはそれらの組み合わせ。
例示的な実施形態10:ソレノイドの第1および第2の開放端は、約1mm~約5cmの直径を有する、前述の例示的な実施形態のいずれかの装置またはそれらの組み合わせ。
例示的な実施形態11:電界放出陰極装置の形成方法であり、ソレノイドが基板の円筒状表面の周りに同心円状に延在し、それらの間に間隙を画定するように、電界放出陰極の円筒状基材をソレノイドに挿入するステップであって、電界放出陰極が長手方向軸を画定し、ソレノイドが長手方向軸に対して垂直に延在する第1および第2の対向する開放端を画定する、挿入ステップと、ソレノイドに電気的に接続された電流源からソレノイドに一定極性(DC)電流を方向付けるステップであって、ソレノイド内のDC電流がソレノイドに沿って磁界を形成する、方向付けステップと、ソレノイドまたは電界放出陰極に電気的に接続されたゲート電圧源によって電界を生成するステップであって、電界は、電界放出材料から間隙内に電子を放出するように電界放出陰極を誘導し、放出された電子は、磁界に応答して間隙内および長手方向軸の周りで螺旋運動し、ソレノイド内の電流フローに対応する向きで、ソレノイドの第1の開放端を通過する、電界生成ステップとを含む形成方法。
例示的な実施形態12:基材の円筒状表面上に電界放出材料を堆積させるステップを含む、前述の例示的な実施形態のいずれかの方法またはそれらの組み合わせ。
例示的な実施形態13:高電圧源から少なくとも約10kVの電圧を、ソレノイドの第1の開放端に対して離間して配置された陽極に印加するステップを含み、陽極は、電圧の印加に応答してソレノイドの第1の開放端から放出された電子を引き付ける、前述の例示的な実施形態のいずれかの方法またはそれらの組み合わせ。
例示的な実施形態14:ソレノイドの第1の開放端の直径を変化させて、第1の開放端から放出される電子の焦点を比例的に変化させるステップを含む、前述の例示的な実施形態のいずれかの方法またはそれらの組み合わせ。
例示的な実施形態15:ソレノイドとソレノイドの第1の開放端における電界放出陰極の円筒状表面との間の間隙の寸法を変化させて第1の開放端から放出される電子の焦点を比例的に変化させるステップを含む、前述の例示的な実施形態のいずれかの方法またはそれらの組み合わせ。
例示的な実施形態16:導電性材料または金属材料の円筒状基材を形成するステップと、ナノチューブ、ナノワイヤ、グラフェン、非晶質炭素、またはそれらの組み合わせから成る電界放出材料を円筒状基材の円筒状表面上に堆積させるステップとを含む、前述の例示的な実施形態のいずれかの方法またはそれらの組み合わせ。
例示的な実施形態17:円筒状基材をソレノイドに挿入するステップは、間隙が約100μm~約1mmとなるように、約1mm~約5cmの直径を有する円筒状基材をソレノイドに挿入するステップを含む、前述の例示的な実施形態のいずれかの方法またはそれらの組み合わせ。
例示的な実施形態18:ソレノイドの第1および第2の開放端が約1mm~約5cmの直径を有するようにソレノイドを形成するステップを含む、前述の例示的な実施形態のいずれかの方法またはそれらの組み合わせ。
【0008】
本開示のこれらおよび他の特徴、態様および利点は、以下で簡単に説明する添付図面と併せて、以下の詳細な説明を読むことによって明らかになるであろう。本開示は、本開示に記載されている2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の特徴または要素が本明細書内の具体的な実施形態の説明において明示的に組み合わされるか、または別の形で列挙されているかに関係なく、このような特徴または要素の任意の組み合わせを含む。本開示は、総合的に解釈されることが意図され、本開示の任意の分離可能な特徴または要素は、その態様および実施形態のいずれかにおいて、本開示の文脈がそうでないことを明確に示さない限り、意図されたものとして、すなわち組み合わせ可能であると見なさすべきである。
【0009】
本明細書における概要は、本開示の基本的な理解を提供するために、いくつかの例示的な態様を要約する目的で提供されているにすぎないことが理解されよう。それ故に、上記で説明した例示的な態様は例にすぎず、決して本開示の範囲または趣旨を狭めると解釈すべきではないことが理解されよう。本開示の範囲は、多くの潜在的な態様を包含することが理解されよう。それらのうちのいくつかについて、本明細書で要約されている態様に加えて、以下でさらに詳細に説明する。さらに、本明細書で開示されるそのような態様の他の態様および利点は、記載されている態様の原理を例として示す添付図面と併せて考察される以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0010】
このように本開示を大まかに説明してきたが、ここで、添付図面について説明する。図面は、必ずしも正確な縮尺率で描かれているとは限らない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】電界放出陰極装置の従来技術例の概略図である。
図2A】本開示の一態様に係る電界放出陰極装置の概略斜視図である。
図2B図2Aに示す本開示の一態様に係る電界放出陰極装置の概略断面図である。
図3A】陰極およびソレノイドへの電気接続を有する、図2Aに示す本開示の一態様に係る電界放出陰極装置の概略斜視図である。
図3B】陰極およびソレノイドへの電気接続を有する、図2Bに示す本開示の一態様に係る電界放出陰極装置の概略断面図である。
図4A】電界およびそれに関連する磁界を示す、本開示の一態様に係る電界放出陰極装置の概略斜視図である。
図4B】ソレノイド/ゲート電極が正のゲート電圧(V)で浮遊した状態の図4Aに示す開示の一態様に係る電界放出陰極装置の概略電気回路図である。
図4C】陰極が負のゲート電圧(-V)でバイアスされた状態の図4Aに示す開示の一態様に係る電界放出陰極装置の概略電気回路図である。
図5】相互作用する高電圧陽極を有する陰極およびソレノイドを備える、本開示の一態様に係る電界放出陰極装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付図面を参照しながら、本開示についてより詳細に後述する。図面には、本開示の全てではないがいくつかの態様が示されている。実際に、本開示は、多くの異なる形態で具現化されてもよく、本明細書に記載されている態様に限定されるものと解釈すべきではなく、むしろ、これらの態様は、本開示が適用可能な法的要件を満たすように提供されている。全体を通して、同様の番号は同様の要素を指す。
【0013】
図2A図2B図3A図3B図4A図4C、および図5は、電界放出陰極装置100、および電界放出陰極装置100の形成方法の様々な態様を示す。1つの例示的な態様では、図2Aおよび図2Bに示すように、電界放出陰極装置100は、円筒状基材225を含む電界放出陰極200を備え、円筒状基材225は、その円筒状表面上に堆積された電界放出材料250を有する(例えば、図1参照)。電界放出陰極200は、長手方向軸275を画定し、一態様では、電気的に接地される(例えば、図3Aおよび図4B参照)。ソレノイド300は、電界放出陰極200の円筒状表面(例えば、電界放出材料250の層)の周りに同心円状に延在し、円筒状表面とソレノイド300との間に間隙150を画定する。ソレノイド300は、長手方向軸275に垂直に延在する第1および第2の対向する開放端300A、300Bをさらに画定する。一態様では、ゲート電圧源400(V)は、ソレノイド300に電気的に接続され(浮遊しており)(例えば、図3Aおよび図4B参照)、 ソレノイド300(例えば、ゲート電極)と電界放出陰極200との間に電界500(E)を生成するように配置される。電界放出陰極200は、電界500(E)に応答して、電界放出材料250から電子(e)を間隙150へと放出する(例えば、図3B参照)。電流源600(V)は、ソレノイド300に電気的に接続され(例えば、図3Aおよび図4B参照)、一定極性(DC)電流(I)をソレノイド300に方向付けるように配置され、ソレノイド300内のDC電流(I)は、ソレノイド300に沿って磁界(B)を誘導し、このことは、電子がソレノイド300を半径方向に通過することを抑制する。電界(E)に応答して陰極200から放出された電子は、磁界(B)にさらに応答して(磁界(B)によって束縛されて)、間隙150内および長手方向軸275の周りを螺旋運動し、ソレノイド300内の電流(I)に対応する向きで、ソレノイド300の第1の開放端300Aを通過する(例えば、図4A参照)。したがって、第1の開放端300Aを通る電子の螺旋流は、電子ビーム700を形成する(例えば、図5参照)。 図4Bに示すように、電気的に接地された陰極200および正のゲート電圧(V)で浮遊したソレノイド300/ゲート電極の代わりに、陰極200は、ソレノイド300が電気的に接地されている間、負のゲート電圧(-V)でバイアスされ得る(例えば、図4C参照)。
【0014】
特定の態様では、陰極200を画定する円筒状基材225は、導電性材料または金属材料から成る。そのような態様では、基材225の円筒状表面上に堆積された電界放出材料250は、ナノチューブ、ナノワイヤ、グラフェン、非晶質炭素、またはそれらの組み合わせの層を含む。ソレノイド300は、例えば、適切な寸法のワイヤのコイルから構成される。さらに、いくつかの態様では、ソレノイド300の第1および第2の開放端300A、300Bは、約数ミリメートル(例えば、1mm)~約数センチメートル(例えば、5cm)の直径(例えば、コイルの内寸)を有する。いくつかの態様では、円筒状基材225は、約数ミリメートル(例えば、1mm)~約数センチメートル(例えば、5cm)の直径を有し、ソレノイド300と基材225の円筒状表面との間に画定される間隙150は、約100μm~1mmである。
【0015】
例えば、図2Aおよび図2Bに示すように、陰極200は、ソレノイド300が基材225の円筒状表面(例えば、電界放出材料250の層)の周りに同心円状に延在するように、ソレノイド300に挿入される。電界放出陰極装置100においては、ソレノイド300は、陰極200に対して電界放出ゲート電極として配置される。間隙150の寸法は、ソレノイド300の寸法(例えば、内径)(第1および第2の開放端300A、300Bの寸法に対応する)に対して、選択された陰極200の寸法(例えば、外径)によって決定される。
【0016】
図3A図3B、および図4Bに示すように、電界放出(電子)を生成するために、ソレノイド300(ゲート電極)は電源400(ゲート電圧源、V)に電気的に接続され、陰極200が電気的に接地される。ゲート電圧源400(V)によるソレノイド300への電圧の印加は、一定極性(DC)連続電圧またはパルスDC電圧のいずれであっても、陰極200とソレノイド300との間に電界500を形成させる。電子放出電流は、電源400(V)によってソレノイド300に印加される電圧によって生成される。代替形態では、陰極200は、ソレノイド300が電気的に接地されている間、負のゲート電圧(-V)でバイアスされて(例えば、図4C参照)、電場(E)を発生させる。いずれの場合も、いくつかの態様では、陰極200の円筒状表面(例えば、電界放出材料250の層)から生成および放出される電子の量は、電源400(Vまたは-V)によってソレノイド300または陰極200に印加される電圧の大きさに比例する。加えて、DC電流(I)が電流源600(V)からソレノイド300に方向付けられることにより、DC電流(I)がソレノイド300のコイルに沿って流れ、例えば、図3A図3Bおよび図4Aに示すように、ソレノイド300に沿って磁界(B)が形成される。ソレノイド300のコイルに沿ったDC電流(I)を制御し、ひいては磁界(B)の大きさを制御することにより、陰極200から放出された電子は、電子がソレノイド300のコイルを通って半径方向外側に向けられることを制限する磁界による影響を受けたときに、間隙150内で螺旋運動して移動するように誘導される。
【0017】
そのような構成では、ソレノイド300の第1の開放端300Aを通して放出される電子の量は、陰極200の円筒状表面(例えば、電界放出材料250の層)から放出される電子であり、したがって、電子の量は、ソレノイド300に印加されるDC電圧(連続またはパルス)に比例する。さらに、間隙150内の放出電子の誘導螺旋運動は、電子がソレノイド300の第1の開放端300Aを通って出ても継続する。結果として得られる電子ビームの断面(放出された電極の螺旋投影、例えば、図5の要素900を参照)は、陰極200の総放出面積(円筒状表面)ではなく、ソレノイド300の第1の開放端300Aの寸法によって決定される。第1の開放端300Aを出ると、放出電子は、間隙150または円筒状基材/陰極200の配置による制約をそれ以上受けない。したがって、螺旋ビームは、電子ビームを収縮させ(断面積を減少させ)、集束させる。したがって、いくつかの態様では、ソレノイド300の第1の開放端300Aから放出される電子(例えば、電子ビーム900)の焦点は、第1の開放端300Aの直径および/またはソレノイド300と第1の開放端300Aにおける電界放出陰極300の円筒状表面との間の間隙150の寸法に比例する。他の態様では、電子ビーム900の特性は、ソレノイド300の第1の開放端300Aの周りの陰極200の構成/形状によっても影響され得る。
【0018】
本明細書に開示される電界放出陰極装置の態様の1つの用途は、例えば、X線管700を含む。このような用途では、例えば図5に示すように、陽極800は、ソレノイド300の第1の開放端300Aに対して離間して配置される。さらに、高電圧源850が、陽極800に電気的に接続され、少なくとも約10kVの電圧を陽極800に印加するように構成される。陽極800は、電圧の印加に応答して、ソレノイド300の第1開放端300Aから放出された電子を引き付ける(すなわち、電子ビーム900を引き付ける)。いくつかの態様では、陽極800に引き付けられる電子(例えば、電子ビーム900)の速度は、陽極800に印加される電圧に比例する。
【0019】
すなわち、高電圧(HV)が印加される陽極800は、電界放出陰極装置100に対して離間して配置される。高電圧が印加された陽極800の影響を受けて、間隙150内で螺旋運動をする電子は、陽極800によって陽極800に引き付けられる。電子は、ソレノイド300によって生成される磁界によって間隙150内に閉じ込められるので、ソレノイド300の第1の開放端300Aを出る電子ビーム900の断面は、ソレノイド300の第1の開放端300Aの寸法に比例し、少なくとも部分的に第1の開放端300Aの寸法によって決定される。しかしながら、電子ビーム900を形成する電子は陰極200の側面(例えば、基材の円筒状表面)から放出されるので、電界放出陰極装置100の総放出面積は、ソレノイド300の第1の開放端300Aの寸法よりも大きく、陰極自体の放出面積の断面(寸法)によって制限されない。したがって、本開示のそのような態様は、安定した高電流を達成することができる一方で、電界放出電子から小さく集束された電子ビーム断面を形成することもできる電界放出陰極装置100を提供し、ソレノイドの第1の開放端を通して方向付けられた電界放出電流は、陰極をイオン衝撃からさらに保護する。
【0020】
説明した本発明の多くの修正形態および他の実施形態は、上記説明および関連図面で提示されている教示の恩恵を享受する、本開示に実施形態に関係する当業者の頭に浮かぶであろう。したがって、本発明の実施形態は、開示されている特定の実施形態に限定されず、修正形態および他の実施形態が本発明の範囲に含まれることが意図されていることを理解されたい。さらに、上記説明および関連図面は、要素および/または機能の特定の例示的な組み合わせにおいて例示的な実施形態を説明しているが、本開示の範囲から逸脱せずに、要素および/または機能の異なる組み合わせが代替の実施形態で提供され得ることを理解されたい。これに関して、例えば、本開示の範囲内で、上記で明示的に記載されたものとは異なる要素および/または機能の組み合わせも企図される。本明細書では特定の用語が使用されているが、これらの用語は、一般的かつ説明的な意味で使用されており、制限することを意図するものではない。
【0021】
用語「第1の」および「第2の」などは、本明細書では、様々なステップまたは予測を説明するのに使用され得、これらのステップまたは予測がこれらの用語によって限定されるべきでないことが理解されよう。これらの用語は、ある動作または予測を別の動作または予測と区別するためにのみ使用される。例えば、本開示の範囲から逸脱せずに、第1の予測は第2の予測と呼ばれることがあり、同様に、第2のステップは第1のステップと呼ばれることがある。本明細書で使用される場合、用語「および/または」および記号「/」は、関連する列挙された項目のうちの1つまたは複数の項目の任意のおよび全ての組み合わせを含む。
【0022】
本明細書内で使用される場合、文脈上明確に別の意味を示している場合を除き、単数形(「a」、「an」、「the」)は、複数の指示対象を含むものとする。用語「備える(comprises)、(comrising)、含む(includes)、および/または(including)」は、本明細書で使用される場合、示された特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を明記するものであるが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではないことがさらに理解されよう。したがって、本明細書内で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定するものではない。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5