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特許7464816旋盤、及び、そのガイド部材取り付け方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】旋盤、及び、そのガイド部材取り付け方法
(51)【国際特許分類】
   B23B 13/12 20060101AFI20240403BHJP
   B23B 7/06 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
B23B13/12 B
B23B7/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019229891
(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公開番号】P2021098237
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000107642
【氏名又は名称】スター精密株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 俊之
(74)【代理人】
【識別番号】100124958
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 建志
(72)【発明者】
【氏名】浅羽 洋平
(72)【発明者】
【氏名】石川 高之
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0179918(US,A1)
【文献】特開平05-131306(JP,A)
【文献】国際公開第2005/065870(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/146898(WO,A1)
【文献】米国特許第05649460(US,A)
【文献】特開2015-066648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 13/00 - 13/12
B23B 19/02
B23B 7/06
B23Q 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持する主軸と、
主軸中心線を中心として前記主軸の外側に配置されたクイルを有し、前記主軸を回転可能に支持する主軸台と、
該主軸台を主軸中心線方向へ移動させる駆動部と、
前記主軸の前方において前記ワークを摺動可能に支持するガイドブッシュが着脱可能に設けられる支持台と、
前記ガイドブッシュが取り外された前記支持台に取り付けられ、前記クイルを前記主軸中心線方向へ摺動可能に支持するガイド部材と、
前記支持台に取り付けられ、前記ガイド部材の中心線を前記主軸中心線に合わせる位置決め部材と、を備え
前記主軸中心線と直交する断面において、前記支持台に取り付けられた前記位置決め部材と、前記支持台に取り付けられた前記ガイド部材と、が前記ガイド部材の中心とで三角形を成す2箇所の接触点で接触している、旋盤。
【請求項2】
前記位置決め部材において前記接触点が存在する面は、平面、又は、前記断面において前記ガイド部材の外周面の曲率半径よりも大きい曲率半径の凹んだ曲面である、請求項1に記載の旋盤。
【請求項3】
前記ガイド部材は、前記支持台に対して裏返された状態であるか否かを判別可能な表裏判別部を有する、請求項1又は請求項2に記載の旋盤。
【請求項4】
ワークを把持する主軸と、
主軸中心線を中心として前記主軸の外側に配置されたクイルを有し、前記主軸を回転可能に支持する主軸台と、
該主軸台を主軸中心線方向へ移動させる駆動部と、
前記主軸の前方において前記ワークを摺動可能に支持するガイドブッシュが着脱可能に設けられる支持台と、
前記ガイドブッシュが取り外された前記支持台に取り付けられ、前記クイルを前記主軸中心線方向へ摺動可能に支持するガイド部材と、を備える旋盤のガイド部材取り付け方法であって、
前記支持台に取り付けられた位置決め部材であって前記ガイド部材の中心線を前記主軸中心線に合わせる位置決め部材に前記ガイド部材を当てる位置決め工程と、
前記位置決め部材に当てた前記ガイド部材を、前記ガイドブッシュが取り外された前記支持台に取り付ける取り付け工程と、を含み、
前記主軸中心線と直交する断面において、前記支持台に取り付けられた前記位置決め部材と、前記支持台に取り付けられた前記ガイド部材と、が前記ガイド部材の中心とで三角形を成す2箇所の接触点で接触している、旋盤のガイド部材取り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドブッシュを使用する加工方式とガイドブッシュを使用しない加工方式とを切り替え可能な旋盤、及び、そのガイド部材取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
旋盤として、特許文献1に示されるように、ワークを摺動可能に支持するガイドブッシュを主軸の前方において支持台に取り付けた主軸移動型旋盤が知られている。ガイドブッシュを使用するガイドブッシュ方式の場合、主軸に把持されたワークは、ガイドブッシュにより摺動可能に支持され、ガイドブッシュの前方において刃物により加工される。一方、短いワークを加工するため、支持台からガイドブッシュを取り外し、ガイドブッシュ使用時と比べて主軸台を前進させてワークを加工することがある。ガイドブッシュを使用しないノンガイドブッシュ方式の場合、主軸台の前部を主軸中心線方向へ摺動可能に支持するため、支持台に取り付けられる環状のクイル用ガイドが使用されている。クイル用ガイドは、主軸台の前部において主軸中心線を中心として主軸の外側に配置されたクイルが挿入され、支持台に取り付けられる。
【0003】
旋盤のオペレーターは、ガイドブッシュ方式からノンガイドブッシュ方式に切り替える時、支持台からガイドブッシュを取り外し、先にクイル用ガイドをクイルの外側に配置させ、主軸台を前進させてから、クイル用ガイドをねじで支持台に取り付けている。ここで、クイル用ガイドの取り付け位置が変わるとワークの加工精度に影響するので、オペレーターは、クイル用ガイドの中心線を主軸中心線に合わせる芯合わせを行っている。従って、オペレーターは、ガイドブッシュ方式からノンガイドブッシュ方式に切り替える時に毎回、芯合わせを伴う作業を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-144843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クイル用ガイドは、クイルを摺動可能に支持するため、クイルより大きな環状形状になり、重さがある。従って、クイルの外側に配置されたクイル用ガイドを押し上げながら支持台に取り付けるといった、芯合わせを伴うクイル用ガイドの取り付け作業は、オペレーターへの負担が大きい。
【0006】
本発明は、ガイドブッシュ方式からノンガイドブッシュ方式に切り替える作業を軽減させることが可能な旋盤、及び、そのガイド部材取り付け方法を開示するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の旋盤は、ワークを把持する主軸と、
主軸中心線を中心として前記主軸の外側に配置されたクイルを有し、前記主軸を回転可能に支持する主軸台と、
該主軸台を主軸中心線方向へ移動させる駆動部と、
前記主軸の前方において前記ワークを摺動可能に支持するガイドブッシュが着脱可能に設けられる支持台と、
前記ガイドブッシュが取り外された前記支持台に取り付けられ、前記クイルを前記主軸中心線方向へ摺動可能に支持するガイド部材と、
前記支持台に取り付けられ、前記ガイド部材の中心線を前記主軸中心線に合わせる位置決め部材と、を備え
前記主軸中心線と直交する断面において、前記支持台に取り付けられた前記位置決め部材と、前記支持台に取り付けられた前記ガイド部材と、が前記ガイド部材の中心とで三角形を成す2箇所の接触点で接触している、態様を有する。
【0008】
また、本発明の旋盤のガイド部材取り付け方法は、
ワークを把持する主軸と、
主軸中心線を中心として前記主軸の外側に配置されたクイルを有し、前記主軸を回転可能に支持する主軸台と、
該主軸台を主軸中心線方向へ移動させる駆動部と、
前記主軸の前方において前記ワークを摺動可能に支持するガイドブッシュが着脱可能に設けられる支持台と、
前記ガイドブッシュが取り外された前記支持台に取り付けられ、前記クイルを前記主軸中心線方向へ摺動可能に支持するガイド部材と、を備える旋盤のガイド部材取り付け方法であって、
前記支持台に取り付けられた位置決め部材であって前記ガイド部材の中心線を前記主軸中心線に合わせる位置決め部材に前記ガイド部材を当てる位置決め工程と、
前記位置決め部材に当てた前記ガイド部材を、前記ガイドブッシュが取り外された前記支持台に取り付ける取り付け工程と、を含み、
前記主軸中心線と直交する断面において、前記支持台に取り付けられた前記位置決め部材と、前記支持台に取り付けられた前記ガイド部材と、が前記ガイド部材の中心とで三角形を成す2箇所の接触点で接触している、態様を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ガイドブッシュ方式からノンガイドブッシュ方式に切り替える作業を軽減させる旋盤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】旋盤の要部を一部断面視して模式的に例示する図である。
図2図2A,2Bはガイドブッシュ方式にした旋盤の要部を一部断面視して模式的に例示する図である。
図3図3A,3Bは旋盤の要部を模式的に簡略化して例示する斜視図である。
図4図4A,4Bはノンガイドブッシュ方式にした旋盤の要部を一部断面視して模式的に例示する図である。
図5】ノンガイドブッシュ方式にした旋盤の要部を模式的に簡略化して例示する斜視図である。
図6】主軸中心線と直交する断面において位置決め部材とガイド部材との位置関係の例を模式的に示す図である。
図7図7Aはガイドブッシュの支持台に位置決め部材が取り付けられていない状態でガイド部材を取り付ける様子を模式的に例示する断面図、図7Bは位置決め部材をガイド部材に当てて支持台に取り付ける様子を模式的に例示する断面図、図7Cは支持台に位置決め部材が固定された様子を模式的に例示する断面図である。
図8図8Aは支持台からガイドブッシュが取り外された様子を模式的に例示する断面図、図8Bはガイド部材を位置決め部材に当てて支持台に取り付ける様子を模式的に例示する断面図である。
図9図9A~9Cは主軸中心線と直交する断面においてガイド部材とともに位置決め部材の変形例を模式的に示す図である。
図10】主軸中心線と直交する断面において位置決め部材及びガイド部材の変形例を模式的に示す図である。
図11図11Aは比較例においてガイドブッシュの支持台にガイド部材を取り付ける様子を模式的に示す断面図、図11Bは比較例においてガイド部材の中心線が主軸中心線からずれた様子を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
【0012】
(1)本発明に含まれる技術の概要:
まず、図に示される例を参照して本発明に含まれる技術の概要を説明する。尚、本願の図は模式的に例を示す図であり、これらの図に示される各方向の拡大率は異なることがあり、各図は整合していないことがある。むろん、本技術の各要素は、符号で示される具体例に限定されない。
また、本願において、数値範囲「Min~Max」は、最小値Min以上、且つ、最大値Max以下を意味する。
【0013】
[態様1]
本技術の一態様に係る旋盤1は、図1,5等に例示するように、ワークW1を把持する主軸12、主軸台10、駆動部20、支持台30、ガイド部材40、及び、位置決め部材50を備える。前記主軸台10は、主軸中心線AX1を中心として前記主軸12の外側に配置されたクイル11を有し、前記主軸12を回転可能に支持する。前記駆動部20は、前記主軸台10を主軸中心線方向D1へ移動させる。前記支持台30には、前記主軸12の前方において前記ワークW1を摺動可能に支持するガイドブッシュ32が着脱可能に設けられる。前記ガイド部材40は、前記ガイドブッシュ32が取り外された前記支持台30に取り付けられ、前記クイル11を前記主軸中心線方向D1へ摺動可能に支持する。前記位置決め部材50は、前記支持台30に取り付けられ、前記ガイド部材40の中心線AX2を前記主軸中心線AX1に合わせる。
【0014】
図11A,11Bは、位置決め部材の無い比較例の旋盤においてガイドブッシュ方式からノンガイドブッシュ方式に切り替える作業を模式的に示す断面図である。図11Aは、ガイドブッシュが取り外された支持台930に環状のガイド部材940を取り付ける様子を示している。
主軸台910に設けられたクイル911は、ガイド部材940に支持される略円筒状部材であり、主軸中心線AX91を中心として主軸912の外側に配置され、主軸台910の本体部910aから前側S91へ延出している。クイル911を有する主軸台910は、ワーク加工時に主軸中心線AX91に沿ったZ軸方向へ移動する。そこで、ガイド部材940はクイル911をZ軸方向へ摺動可能に支持する必要があり、ガイド部材940の内周面941とクイル911の外周面911aとの間に若干の隙間が設けられている。
【0015】
旋盤のオペレーターは、支持台930にガイド部材940を取り付ける時に以下の芯合わせを伴う作業を行っている。
まず、オペレーターは、ガイド部材940の中心線AX92を主軸中心線AX91に合わせるため、まず、クイル911の外側にガイド部材940を配置させ、ガイド部材940の貫通穴940aにクイル911が入っている状態にする。次に、オペレーターは、主軸台910を前進させ、支持台930の貫通穴931にクイル911の一部が挿入された状態にする。さらに、オペレーターは、ガイド部材940を手で支えながらガイド部材940の中心線AX92が主軸中心線AX91に合うようにガイド部材940を保持する。この状態を保ちながら、オペレーターがガイド部材940のねじ挿通穴943にねじSC91を挿入して支持台930のねじ穴933に螺合させると、支持台930にガイド部材940が固定される。オペレーターは、ガイドブッシュ方式からノンガイドブッシュ方式に切り替える時に、前述の作業を毎回行う必要がある。
【0016】
ここで、図11Aに示すようにガイド部材940の中心線AX92が主軸中心線AX91からずれた状態でガイド部材940がねじ止めされると、図11Bに示すように、固定されているガイド部材940の内周面941とクイル911の外周面911aとの間の隙間に偏りが生じる。図11A,11Bでは、ガイド部材940の中心線AX92が主軸中心線AX91から下側へずれた結果、クイル911の下側においてガイド部材940の内周面941とクイル911の外周面911aとの間に比較的広い隙間CL9が生じたことが示されている。ガイド部材940の中心線AX92が主軸中心線AX91からずれると、ワークの加工精度に影響する。しかし、ガイド部材940は、クイル911を摺動可能に支持するため、クイルより大きな環状形状になり、重さがある。従って、ガイド部材940の芯合わせを行いながら支持台930にガイド部材940を取り付ける作業は、オペレーターへの負担が大きい。また、ガイドブッシュ方式からノンガイドブッシュ方式に切り替える時に毎回同じ作業を行う必要があるため、ガイド部材940の取り付け位置が若干ではあるが毎回変わり、取り付け位置の違いがワークの加工精度に影響することがある。
【0017】
一方、本技術の上記態様1において、旋盤1のオペレーターは、ガイドブッシュ32が取り外された支持台30にガイド部材40を取り付ける時、位置決め部材50によりガイド部材40の中心線AX2を主軸中心線AX1に合わせることができる。これにより、重さのあるガイド部材40を押し上げるといった負担の大きい芯合わせを伴う作業を毎回行う必要が無くなり、先にガイド部材40をクイル11の外側に配置する作業を毎回行う必要も無くなる。従って、上記態様1は、ガイドブッシュ方式からノンガイドブッシュ方式に切り替える作業を軽減させる旋盤を提供することができる。
【0018】
ここで、位置決め部材の数は、1個でもよいし、2個以上でもよい。この付言は、以下の態様においても適用される。
【0019】
[態様2]
図6に例示するように、前記主軸中心線AX1と直交する断面CSにおいて、前記支持台30に取り付けられた前記位置決め部材50と、前記支持台30に取り付けられた前記ガイド部材40と、が前記ガイド部材40の中心P3とで三角形TRを成す2箇所の接触点P1,P2で接触していてもよい。これにより、オペレーターがガイド部材40を位置決め部材50に押し当てると、ガイド部材40と位置決め部材50とが2箇所の接触点P1,P2で接触し、ガイド部材40の中心線AX2が主軸中心線AX1に合う。従って、本態様は、ガイド部材の中心線を精度良く主軸中心線に位置決めすることができる。
ここで、ガイド部材と位置決め部材とは、主軸中心線と直交する断面において2箇所の接触点で接触すればよく、全体として線状に接触していてもよい。断面において接触点で接触することは、設計上、点状に接触することを意味し、ガイド部材や位置決め部材の形状の誤差等により線状に接触することを含む。これらの付言は、以下の態様においても適用される。
【0020】
[態様3]
図6,9A,9B等に例示するように、前記位置決め部材50において前記接触点P1,P2が存在する面(例えば接触面51)は、平面、又は、前記断面CSにおいて前記ガイド部材40の外周面42の曲率半径よりも大きい曲率半径の凹んだ曲面でもよい。この態様は、位置決め部材50とガイド部材40との2箇所の接触点P1,P2を容易に実現させることができるので、容易にガイド部材の中心線を主軸中心線に位置決めすることができる。
【0021】
[態様4]
図7A,8Bに例示するように、前記ガイド部材40は、前記支持台30に対して裏返された状態であるか否かを判別可能な表裏判別部(例えば座繰り43a)を有していてもよい。ガイド部材40が支持台30に対して裏返された状態で取り付けられる場合、裏返された状態におけるガイド部材40の中心軸AX2の位置と、裏返されていない状態におけるガイド部材40の中心軸AX2の位置と、が僅かにずれる可能性がある。裏返された状態と裏返されていない状態とで中心軸AX2の位置を一致させるためには、ガイド部材40を極めて高精度に加工する必要がある。本態様は、表裏判別部(43a)によりガイド部材40が支持台30に対して裏返された状態であるか否かが判るので、オペレーターは、支持台30に対してガイド部材40を裏返されていない状態で取り付けることができる。この場合、裏返された状態と裏返されていない状態とで中心軸AX2の位置を一致させる程の高精度は、ガイド部材40の加工に求められない。従って、本態様は、ガイド部材のコストを低減させることができる。
ここで、表裏判別部は、座繰りに限定されず、ガイド部材の表裏を把握するためのマーク等でもよい。
【0022】
[態様5]
ところで、本技術の一態様に係る旋盤1のガイド部材取り付け方法は、以下の工程(a),(b)を含む。
(a)前記支持台30に取り付けられた位置決め部材50であって前記ガイド部材40の中心線AX2を前記主軸中心線AX1に合わせる位置決め部材50に前記ガイド部材40を当てる位置決め工程ST1。
(b)前記位置決め部材50に当てた前記ガイド部材40を、前記ガイドブッシュ32が取り外された前記支持台30に取り付ける取り付け工程ST2。
【0023】
上記態様5において、旋盤1のオペレーターは、ガイドブッシュ32が取り外された支持台30に取り付けられた位置決め部材50にガイド部材40を当てることにより、ガイド部材40の中心線AX2を主軸中心線AX1に合わせることができる。この状態で、オペレーターは、ガイド部材40を支持台30に取り付けることができる。これにより、重さのあるガイド部材40を押し上げるといった負担の大きい芯合わせを伴う作業を毎回行う必要が無くなり、先にガイド部材40をクイル11の外側に配置する作業を毎回行う必要も無くなる。従って、上記態様5は、ガイドブッシュ方式からノンガイドブッシュ方式に切り替える作業を軽減させる旋盤のガイド部材取り付け方法を提供することができる。
【0024】
(2)旋盤の具体例:
図1は、ガイドブッシュ方式にした旋盤1の要部を一部断面視して模式的に例示している。図2Aは、ガイドブッシュ方式にした旋盤1の要部を上から一部断面視して模式的に例示している。図2Bは、ガイドブッシュ方式にした旋盤1の要部をY軸方向から一部断面視して模式的に例示している。図3Aは、ガイドブッシュ方式にした旋盤1の要部を模式的に簡略化して例示している。図3Bは、ノンガイドブッシュ方式にした旋盤1の要部を模式的に簡略化して例示している。図4Aは、ノンガイドブッシュ方式にした旋盤1の要部を上から一部断面視して模式的に例示している。図4Bは、ノンガイドブッシュ方式にした旋盤1の要部をY軸方向から一部断面視して模式的に例示している。図2A,2B及び図4A,4Bでは、主軸台10の前端位置を実線で示し、主軸台10の後端位置を二点鎖線で示している。
尚、主軸中心線AX1は主軸12の回転の中心線を示し、主軸中心線方向D1は主軸中心線AX1に沿った方向を示している。主軸中心線方向D1は、前側S1へ向かう方向と後側S2へ向かう方向の両方を含む。Z軸方向は主軸中心線方向D1に沿った制御軸の向きを示し、X軸方向はZ軸方向と直交する鉛直方向に沿った制御軸の向きを示し、Y軸方向はZ軸方向と直交する水平方向に沿った制御軸の向きを示している。X軸方向とY軸方向とZ軸方向は、互いに異なる方向であればよく、移動制御のし易さの点から実質的に直交しているのが好ましいものの、直交する方向から例えば45°以下の角度でずれた方向でもよい。
【0025】
図1等に示す旋盤1は、ベース2、制御部8、主軸台10、駆動部20、支持台30、刃物台60、等を備える主軸移動型旋盤である。ベース2は、ベッド又はテーブル等とも呼ばれ、駆動部20、支持台30、等を支持する土台部分を構成する。
【0026】
制御部8は、主軸台10、駆動部20、刃物台60、等の動作を制御する。制御部8には、公知の数値制御装置を用いることができる。数値制御装置は、プロセッサーであるCPU(Central Processing Unit)、半導体メモリーであるROM(Read Only Memory)、半導体メモリーであるRAM(Random Access Memory)、タイマー回路、インターフェイス、等を備える。ROMには、加工プログラムを解釈して実行するための制御プログラムが書き込まれている。RAMには、オペレーターにより作成された加工プログラムが書き換え可能に記憶される。CPUは、RAMをワークエリアとして使用し、ROMに記録されている制御プログラムを実行することにより、数値制御装置の機能を実現させる。むろん、前述の機能の一部又は全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)といった他の手段により実現させてもよい。
【0027】
主軸台10に設けられた主軸12は、Z軸方向へ挿入された円柱状(棒状)のワークW1を解放可能に把持し、ワークW1の長手方向に沿った主軸中心線AX1を中心としてワークW1を回転させる。主軸台10は、主軸中心線AX1を中心として回転可能に主軸12を支持し、Z軸方向へ移動可能とされている。主軸台10の前部には、主軸中心線AX1を中心として回転可能に主軸12を支持する筒状のクイル11が設けられている。主軸台10に設けられたクイル11は、ガイドブッシュ32を使用しない時にガイド部材40に支持される略円筒状部材であり、主軸中心線AX1を中心として主軸12の外側に配置され、主軸台10の本体部10aから前側S1へ延出している。図3A,3B等に示すように、クイル11の外周面11aは、断面円形とされている。クイル11を有する主軸台10は、ワーク加工時にZ軸方向へ移動する。
【0028】
駆動部20は、ベース2に支持されているモータ21、及び、主軸中心線AX1に沿った送り機構22を有し、主軸台10をZ軸方向へ移動させる。モータ21は、制御部8により数値制御可能なサーボモータである。図1に示す送り機構22は、ねじ軸23とナット24とがボールを介して作動するボールねじである。ねじ軸23は、主軸中心線AX1に沿って配置され、後端がカップリングを介してモータ21に接続されている。従って、ねじ軸23は、主軸中心線AX1に沿った回転軸を中心としてモータ21により回転駆動される。ナット24は、ボールを介してねじ軸23に螺合し、主軸台10に固定され、ねじ軸23の回転に応じてZ軸方向へ移動する。
【0029】
ベース2に支持されている支持台30は、ガイドブッシュ32を取り付けるための貫通穴31を有している。支持台30に取り付けられたガイドブッシュ32は、主軸12よりも前側S1に配置され、主軸12を貫通した棒状のワークW1をZ軸方向へ摺動可能に支持し、主軸12と同期して主軸中心線AX1を中心として回転駆動される。ガイドブッシュ32は、支持台30に対して着脱可能に設けられている。切削等の加工による負荷を受けるガイドブッシュがあることにより、細長いワークの撓みが抑制されて高精度の加工が行われる。図2A,2B等に示すガイドブッシュ使用時、主軸12がガイドブッシュ32よりも後側S2の範囲内でZ軸方向へ移動するように主軸台10が駆動される。一方、ガイドブッシュを使用すると、主軸からガイドブッシュまでの材料を加工することができないため、残材が長くなることになる。また、ガイドブッシュはワークの外周を支持するため、一旦加工したワークをガイドブッシュ内に後退させ再び前進させて加工することができない。そこで、図4A,4B等に示すように、支持台30からガイドブッシュ32を取り外すことができるようにしている。この場合、主軸12から刃物台60までの距離を短くするため、ガイドブッシュ使用時と比べて主軸12が前側S1となる範囲内でZ軸方向へ移動するように主軸台10が駆動される。
【0030】
ガイドブッシュ32が取り外された支持台30には、クイル11をZ軸方向へ移動可能に支持する環状のガイド部材40が着脱可能に設けられる。図4A,4B等に示すガイド部材40は、主軸台10のクイル11が挿入される貫通穴40aを有し、支持台30に取り付けられる。支持台30に取り付けられたガイド部材40は、クイル11をZ軸方向へ摺動可能に支持する。支持台30には、ガイド部材40の外周面に接触している略直方体の位置決め部材50も取り付けられている。ガイド部材40及び位置決め部材50は、支持台30における後側S2の面に取り付けられている。
尚、切削等の加工による負荷を受けるガイド部材40には、滑り軸受を用いることが好ましいものの、転がり軸受といった種々の軸受を用いることも可能である。
【0031】
刃物台60は、支持台30に支持され、複数の工具T1が取り付けられ、例えばX軸方向及びY軸方向へ移動可能とされている。工具T1には、回転不能に固定されたバイト等の固定工具、及び、回転ドリルのように回転する回転工具の両方が含まれる。
尚、Z軸方向へ挿入された正面加工後のワークW1を解放可能に把持する背面主軸(対向主軸)を設けた背面主軸台(対向主軸台)がベース2に支持されてもよい。
【0032】
図2A,2B等に示すように、ベース2には、2本のレール200が設置されている。2本のレール200は、直動ガイド用のガイドレールであり、Y軸方向における2箇所において、主軸中心線AX1に沿って配置されている。各レール200は、後側軸受110及び前側軸受120をZ軸方向へ案内する。後側軸受110及び前側軸受120は、主軸台10に取り付けられている。図2B等に示すレール200は、ベース2に対してオーバーハングしていることにより若干ではあるが剛性が低くなっている低剛性部分212を有している。低剛性部分212は、図4Bに示すガイド部材使用時の前側軸受120の移動範囲R2を含み、図2Bに示すガイド部材不使用時の前側軸受120の移動範囲R1を含まない。
尚、低剛性部分212をベース2で支持する場合、低剛性部分212を細くしてもよい。
【0033】
ガイドブッシュ使用時、切削等の加工による負荷はガイドブッシュ32が受ける。ここで、図2B等に示すように、レール200の低剛性部分212は前側軸受120の移動範囲R1に入っていない。従って、ガイドブッシュ使用時、後側軸受110と前側軸受120とで主軸台10が精度良く支持される。
【0034】
ガイドブッシュ不使用時、切削等の加工による負荷はガイド部材40が受ける。ここで、図4B等に示すように、支持台30に設けられたガイド部材40にも主軸台10のクイル11が支持される。レール200のうち低剛性部分212は、ごく僅かではあるが前側軸受120からの荷重により変形し易くなっている。このため、ガイド部材使用時の前側軸受120の遊びが大きく、前側軸受120は主軸台10を支持する機能が抑制されている。従って、ガイドブッシュ不使用時には、実質的に、後側軸受110と、前側軸受120よりも前側S1にあるガイド部材40と、で主軸台10が精度良く支持される。
【0035】
尚、ベース2、主軸台10、駆動部20、支持台30、ガイドブッシュ32、ガイド部材40、位置決め部材50、刃物台60、レール200、等の主要部は、例えば金属で形成することができる。
【0036】
図5は、ノンガイドブッシュ方式にした旋盤1において、クイル11、ガイド部材40、及び、位置決め部材50の位置関係を模式的に例示している。図6は、主軸中心線AX1と直交する断面CSにおいて位置決め部材50とガイド部材40との位置関係を模式的に例示している。図7A~7Cは、支持台30に位置決め部材50を取り付ける様子を模式的に例示している。
【0037】
ガイド部材40は、中心線AX2に沿った短い略円筒形状であり、中心線AX2を中心として、断面円形の内周面41、及び、断面円形の外周面42を有している。内周面41の直径は、クイル11の外周面11aの直径よりも若干大きくされている。これにより、ガイド部材40は、クイル11をZ軸方向へ摺動可能に支持する。ガイド部材40を支持台30にねじ止めするため、ガイド部材40は複数のねじ挿通穴43を有している。ガイド部材40に設けられるねじ挿通穴43の数は、図5,6に示す10に限定されず、9以下でもよいし、11以上でもよい。図7Aに示すように、各ねじ挿通穴43には座繰り43aが形成されている。このため、ガイド部材40が裏返された状態で支持台30に取り付けられないようにされている。支持台30には、各ねじ挿通穴43に対応する位置にねじ穴33が形成されている。各ねじ穴33は、ねじ挿通穴43を通ったねじSC1と螺合する。
尚、座繰り43aは、支持台30に対してガイド部材40が裏返された状態であるか否かを判別可能な表裏判別部の例である。ここで、ガイド部材40が裏返されていない状態は、図5,7A等に示すように、座繰り43aが支持台30とは反対側に向いている状態を意味する。ガイド部材40が裏返された状態は、Z軸方向において図7A等に示す向きとは逆に向いている状態であり、座繰り43aが支持台30に向いている状態を意味する。
【0038】
ガイド部材40の外周面42は、位置決め部材50A,50Bに接触している。ここで、位置決め部材50は、位置決め部材50A,50Bを総称している。以下、両位置決め部材50A,50Bに共通の説明をする場合には、単に位置決め部材50と記載することにする。位置決め部材50は、ガイド部材40の外周面42に接触することによりガイド部材40の中心線AX2を主軸中心線AX1に合わせる機能を有する。位置決め部材50を支持台30にねじ止めするため、位置決め部材50は複数のねじ挿通穴53を有している。位置決め部材50に設けられるねじ挿通穴53の数は、図5,6に示す2に限定されず、3以上でもよい。図7Bに示すように、支持台30には、各ねじ挿通穴53に対応する位置にねじ穴34が形成されている。各ねじ穴34は、ねじ挿通穴43を通ったねじSC2と螺合する。
【0039】
図6に示す断面CSにおいて、支持台30に取り付けられた位置決め部材50と、支持台30に取り付けられたガイド部材40と、がガイド部材40の中心P3とで三角形TRを成す2箇所の接触点P1,P2で接触している。中心P3は、ガイド部材40の中心線AX2と断面CSとの交点である。接触点P1は、位置決め部材50Aとガイド部材40との接触箇所である。接触点P2は、位置決め部材50Bとガイド部材40との接触箇所である。
ここで、位置決め部材50の内、接触点P1,P2が存在する面を接触面51と呼ぶことにする。接触面51は、平面である。従って、ガイド部材40の外周面42と位置決め部材50の接触面51とは、ガイド部材40の中心線AX2に沿って線状に接している。主軸中心線AX1と直交する断面CSで見ると、外周面42と接触面51とは点状に接触していることになる。接触面51を平面にすることにより、接触する位置が1点に限定され、ガイド部材40の位置を高精度で決めることができる。
【0040】
中心P3と接触点P1,P2とが三角形TRを成していることにより、固定されていないガイド部材40をオペレーターが位置決め部材50に押し当てると、ガイド部材40と位置決め部材50とが接触点P1,P2で接触し、ガイド部材40の中心線AX2が主軸中心線AX1に合う。ここで、三角形TRにおける中心P3の内角θは、0°よりも大きく且つ180°よりも小さければよく、90°~140°が好ましい。内角θが90°以上であると、ガイド部材40を位置決め部材50A,50Bの両方に安定して押し当て易い。内角θが140°以下であると、ガイド部材40を位置決め部材50A,50Bに押し当てた時にガイド部材40の位置を精度良く決め易い。従って、内角θが90°~140°であると、ガイド部材40の中心線AX2をさらに精度良く主軸中心線AX1に位置決めすることができる。
【0041】
また、位置決め部材50の接触面51が平面であることにより、位置決め部材50とガイド部材40との2箇所の接触点P1,P2を容易に実現させることができ、容易にガイド部材40の中心線AX2を主軸中心線AX1に位置決めすることができる。
【0042】
(3)位置決め部材を支持台に取り付ける具体例:
まず、図7A~7Cを参照して、ガイドブッシュ32の支持台30に位置決め部材50を取り付ける例を説明する。
図7Aは、支持台30に位置決め部材50が取り付けられていない状態でガイド部材40を取り付ける様子を模式的に例示している。図7Bは、位置決め部材50をガイド部材40に当てて支持台30に取り付ける様子を模式的に例示している。図7Cは、支持台30に位置決め部材50が固定された様子を模式的に例示している。
【0043】
位置決め部材50を支持台30に取り付ける時には、ガイド部材40の中心線AX2が主軸中心線AX1に合う位置に固定する必要がある。従って、位置決め部材50を支持台30に取り付ける作業は、旋盤メーカーの熟練工等が行ってもよい。むろん、旋盤のオペレーターが位置決め部材50を支持台30に取り付けてもよい。以下、位置決め部材50を支持台30に取り付ける人を作業者と呼ぶことにする。
作業者は、まず、クイル11の外側にガイド部材40を配置させ、ガイド部材40の貫通穴40aにクイル11が入っている状態にする。次に、作業者は、主軸台10を前進させ、ガイド部材40を手で支えながらガイド部材40の中心線AX2が主軸中心線AX1に合うようにガイド部材40を保持する。この状態が図7Aに示されている。作業者がガイド部材40の各ねじ挿通穴43にねじSC1を挿入して支持台30のねじ穴33に螺合させると、支持台30にガイド部材40が固定される。
【0044】
ガイド部材40の固定後、作業者は、主軸台10を後退させてもよい。支持台30にガイド部材40が固定されているので、作業者は、位置決め部材50を指で支え、位置決め部材50の接触面51をガイド部材40の外周面42に当てた状態で位置決め部材50を保持する。この状態が図7Bに示されている。この保持状態を維持したまま、作業者が位置決め部材50の各ねじ挿通穴53にねじSC2を挿入して支持台30のねじ穴34に螺合させると、図7Cに示すように位置決め部材50が支持台30に固定される。
【0045】
その後、旋盤1をガイドブッシュ方式にする場合でも、支持台30から位置決め部材50を取り外す必要が無い。以下、ガイドブッシュ方式とノンガイドブッシュ方式とを切り替える具体例を説明する。
【0046】
(4)ガイドブッシュ方式とノンガイドブッシュ方式とを切り替える具体例:
図4B,7C等に示すノンガイドブッシュ方式から図2B等に示すガイドブッシュ方式に切り替える時、オペレーターは、主軸台10を後退させ、ねじSC1を外して支持台30からガイド部材40を取り外し、ガイドブッシュを支持台30に取り付ける。図2A,2Bに示すように、位置決め部材50は主軸台10のZ軸方向への移動に邪魔とならない位置にあるので、ガイドブッシュ方式でも支持台30から位置決め部材50を取り外す必要が無い。
【0047】
次に、図8A,8B,7C等を参照して、ガイドブッシュ方式からノンガイドブッシュ方式に切り替える具体例を説明する。
図8Aは、支持台30からガイドブッシュ32が取り外された様子を模式的に例示している。図8Bは、ガイド部材40を位置決め部材50に当てて支持台30に取り付ける様子を模式的に例示している。
【0048】
図2B等に示すガイドブッシュ方式から図4B,7C等に示すノンガイドブッシュ方式に切り替える時、オペレーターは、以下の作業を行う。
まず、オペレーターは、支持台30からガイドブッシュ32を取り外す。この状態が図8Aに示されている。図8Aに示すように位置決め部材50が支持台30に固定されているので、オペレーターは、ガイド部材40を手で持ち、ガイド部材40の外周面42を位置決め部材50の接触面51に当てた状態でガイド部材40を保持する(位置決め工程ST1)。この状態が図8Bに示されている。図8Bに示す位置決め部材50は図7Cに示す位置で支持台30に取り付けられたままであるので、図8Bに示すガイド部材40の位置は、図7A,7Bに示すように中心線AX2が主軸中心線AX1に合うように支持台30に取り付けられたガイド部材40の位置から変わっていない。従って、ガイド部材40の中心線AX2を主軸中心線AX1に合わせるためにガイド部材40の貫通穴40aにクイル11を挿入する必要が無い。図8Bに示すようにオペレーターがガイド部材40の各ねじ挿通穴43にねじSC1を挿入して支持台30のねじ穴33に螺合させると、図7Cに示すように中心線AX2が主軸中心線AX1に合っている状態で位置決め部材50が支持台30に固定される(取り付け工程ST2)。
【0049】
以上により、重さのあるガイド部材40を押し上げるといった負担の大きい芯合わせを伴う作業が不要となる。また、先にガイド部材40をクイル11の外側に配置する作業も不要となる。すなわち、ガイドブッシュ方式からノンガイドブッシュ方式に切り替える時に負担の大きい作業を毎回行う必要が無くなる。従って、本具体例は、ガイドブッシュ方式からノンガイドブッシュ方式に切り替える作業を軽減させることができる。
また、ガイド部材40が座繰り43aを有していることによりガイド部材40が支持台30に対して裏返された状態であるか否かが判るので、オペレーターは、支持台30に対してガイド部材40を裏返されていない状態で取り付けることができる。上述したように、ガイド部材40が支持台30に対して裏返された状態で取り付けられる場合、裏返された状態と裏返されていない状態とで中心軸AX2の位置を一致させるためガイド部材40を極めて高精度に加工する必要がある。座繰り43aがあることにより、裏返された状態と裏返されていない状態とで中心軸AX2の位置を一致させる程の高精度は、ガイド部材40の加工に求められない。従って、本具体例は、ガイド部材のコストを低減させることができる。
【0050】
(5)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、上述した主軸台10のクイル11は主軸12の前端近くまで主軸12の外側を覆っていたが、主軸中心線方向におけるクイルと主軸との位置関係は適宜変更可能である。例えば、クイルの前端から主軸の前端までが長い場合、クイルの前端から主軸の前端近くまで主軸の外側を覆う主軸カバーをクイルの前端に取り付けてもよい。
支持台30に位置決め部材50を取り付けるため、位置決め部材50をガイド部材40の方へ押し付ける付勢手段、例えば、ばねが支持台30に設けられてもよい。この場合、図7B,7Cに示すように位置決め部材50をガイド部材40に取り付ける時に付勢手段が位置決め部材50をガイド部材40に押し当てるので、作業者は位置決め部材50を手で保持しなくても支持台30に位置決め部材50を取り付けることができる。
【0051】
上述した位置決め部材50は略直方体であったが、位置決め部材の形状は略直方体に限定されない。図9A~9Cは、主軸中心線AX1と直交する断面CSにおいてガイド部材40とともに位置決め部材50の変形例を模式的に示す図である。以下の変形例において、上述した例と同じ要素には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0052】
図9Aは、一つの位置決め部材50が2箇所の接触点P1,P2を有している例を示している。図9Aに示す位置決め部材50は、接触点P1を有する接触面51A、及び、接触点P2を有する接触面51Bを有している。二つの接触面51A,51Bは、本技術の接触面51に含まれる。接触面51A,51Bが平面である場合、ガイド部材40の外周面42と位置決め部材50の接触面51とがガイド部材40の中心線AX2に沿って線状に接する。図9Aに示す例も、オペレーターがガイド部材40の外周面42を位置決め部材50の接触面51A,51Bに当てることによりガイド部材40の中心線AX2が主軸中心線AX1に合うので、負担の大きい芯合わせを伴う作業が不要となる。
【0053】
図9Bは、主軸中心線AX1と直交する断面CSにおいて位置決め部材50の接触面51をガイド部材40の外周面42の曲率半径よりも大きい曲率半径の凹んだ曲面にしている例を示している。この場合も、ガイド部材40の外周面42と位置決め部材50の接触面51とがガイド部材40の中心線AX2に沿って線状に接する。図9Bに示す例も、オペレーターがガイド部材40の外周面42を位置決め部材50の接触面51に当てることによりガイド部材40の中心線AX2が主軸中心線AX1に合う。
【0054】
図9Cは、主軸中心線AX1と直交する断面CSにおいて位置決め部材50の接触面51を円形にしている例を示している。位置決め部材50が主軸中心線AX1に沿った中心軸を中心とした略円柱状である場合、ガイド部材40の外周面42と位置決め部材50の接触面51とがガイド部材40の中心線AX2に沿って線状に接する。位置決め部材50が略球状である場合、ガイド部材40の外周面42と位置決め部材50の接触面51とが点状に接する。これらの例も、オペレーターがガイド部材40の外周面42を位置決め部材50の接触面51に当てることによりガイド部材40の中心線AX2が主軸中心線AX1に合う。
【0055】
また、上述したガイド部材40は内周面41と外周面42ともに断面円形であったが、ガイド部材の内周面や外周面は断面円形に限定されない。図10は、主軸中心線AX1と直交する断面CSにおいて内周面41と外周面42をともに断面非円形にしているガイド部材40を例示している。
【0056】
図10に示すガイド部材40の内周面41は、中心線AX2から離れる方向へ凹んだ凹部41aを複数有している。この場合も、内周面41が凹部41aを除いてクイル11の外周面11aの直径よりも若干大きい直径を有していることにより、ガイド部材40がクイル11をZ軸方向へ摺動可能に支持することができる。
【0057】
図10に示すガイド部材40の外周面42は、断面四角形とされている。この場合も、支持台30に対して位置決め部材50を適切に取り付けることにより、位置決め部材50が中心線AX2を主軸中心線AX1に合わせる位置にガイド部材40を位置決めすることができる。図10には、ガイド部材40を精度良く位置決めするため、三つの位置決め部材50A,50B,50Cが配置されていることが示されている。むろん、三つの位置決め部材50A,50B,50Cは、本技術の位置決め部材50に含まれる。
【0058】
(6)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、ガイドブッシュ方式からノンガイドブッシュ方式に切り替える作業を軽減させる旋盤等の技術を提供することができる。むろん、独立請求項に係る構成要件のみからなる技術でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術及び上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1…旋盤、
10…主軸台、10a…本体部、11…クイル、11a…外周面、12…主軸、
20…駆動部、
30…支持台、31…貫通穴、32…ガイドブッシュ、33,34…ねじ穴、
40…ガイド部材、40a…貫通穴、41…内周面、42…外周面、
43…ねじ挿通穴、43a…座繰り、
50,50A,50B,50C…位置決め部材、
51,51A,51B…接触面、53…ねじ挿通穴、
60…刃物台、
AX1…主軸中心線、AX2…中心線、
CS…断面、
D1…主軸中心線方向、
P1,P2…接触点、P3…中心、
S1…前側、S2…後側、
SC1,SC2…ねじ、
ST1…位置決め工程、ST2…取り付け工程、
TR…三角形、
W1…ワーク。
図1
図2
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図11