(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/00 20060101AFI20240403BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
B60C11/00 F
B60C11/03 C
B60C11/03 300D
(21)【出願番号】P 2020021667
(22)【出願日】2020-02-12
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(72)【発明者】
【氏名】市村 彰宏
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-059711(JP,A)
【文献】特開2004-210189(JP,A)
【文献】国際公開第2015/037336(WO,A1)
【文献】特開平11-001103(JP,A)
【文献】特開2018-030420(JP,A)
【文献】特開2018-176930(JP,A)
【文献】特開平05-294113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00
B60C 11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の周方向主溝によって複数の陸部が区画形成され、かつ回転方向が指定された空気入りタイヤであって、
タイヤ平面視で、
タイヤ幅方向最も外側の外側陸部に、複数の第1の傾斜溝が形成され、
前記第1の傾斜溝は、前記タイヤ幅方向に対して45°以下の傾斜角度でタイヤ幅方向外側に向かって踏み込み側から蹴り出し側に延び、かつ
前記第1の傾斜溝の溝幅は、2.0mm以上10.0mm以下であり、
正規内圧を付与した無負荷状態のタイヤ子午断面視で、
両接地端間の溝がないとした場合におけるタイヤプロファイルが、前記タイヤプロファイルに沿った両接地端間寸法に対して20%以上35%以下のタイヤプロファイルに沿った寸法を有する2つのタイヤ外側プロファイルと、前記2つのタイヤ外側プロファイル以外のタイヤ内側プロファイルと、から構成され、前記タイヤ外側プロファイルが、少なくとも4つの異なる形状の曲線から構成されていることを特徴と
し、かつ
蹴り出し側端部が前記第1の傾斜溝と連通するとともに、前記タイヤ幅方向に対して60°以上90°以下の傾斜角度でタイヤ幅方向外側に向かって踏み込み側から蹴り出し側に延びる第2の傾斜溝が形成され、前記第2の傾斜溝の溝幅は2.0mm以上10.0mm以下であり、前記第2の傾斜溝の溝長さは前記第1の傾斜溝のピッチ長さの30%以上70%以下である、
空気入りタイヤ。
【請求項2】
隣り合う前記周方向主溝のそれぞれに対して端部が連通するとともに、前記タイヤ幅方向に対して30°以上70°以下の傾斜角度でタイヤ幅方向外側に向かって踏み込み側から蹴り出し側に延びる第3の傾斜溝が形成され、前記第3の傾斜溝の溝幅は2.0mm以上10.0mm以下である、請求項
1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第3の傾斜溝と蹴り出し側端部で連通するとともに、前記タイヤ幅方向に対して60°以上90°以下の傾斜角度でタイヤ幅方向外側に向かって踏み込み側から蹴り出し側に延びる第4の傾斜溝が形成され、前記第4の傾斜溝の溝幅は2.0mm以上10.0mm以下であり、前記第4の傾斜溝の溝長さは前記第3の傾斜溝のピッチ長さの30%以上70%以下である、請求項
2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
複数本の周方向主溝によって複数の陸部が区画形成され、かつ回転方向が指定された空気入りタイヤであって、
タイヤ平面視で、
タイヤ幅方向最も外側の外側陸部に、複数の第1の傾斜溝が形成され、
前記第1の傾斜溝は、前記タイヤ幅方向に対して45°以下の傾斜角度でタイヤ幅方向外側に向かって踏み込み側から蹴り出し側に延び、かつ
前記第1の傾斜溝の溝幅は、2.0mm以上10.0mm以下であり、
正規内圧を付与した無負荷状態のタイヤ子午断面視で、
両接地端間の溝がないとした場合におけるタイヤプロファイルが、前記タイヤプロファイルに沿った両接地端間寸法に対して20%以上35%以下のタイヤプロファイルに沿った寸法を有する2つのタイヤ外側プロファイルと、前記2つのタイヤ外側プロファイル以外のタイヤ内側プロファイルと、から構成され、前記タイヤ外側プロファイルが、少なくとも4つの異なる形状の曲線から構成されていることを特徴とし、かつ
隣り合う前記周方向主溝のそれぞれに対して端部が連通するとともに、前記タイヤ幅方向に対して30°以上70°以下の傾斜角度でタイヤ幅方向外側に向かって踏み込み側から蹴り出し側に延びる第3の傾斜溝が形成され、前記第3の傾斜溝の溝幅は2.0mm以上10.0mm以下であり、
前記第3の傾斜溝と蹴り出し側端部で連通するとともに、前記タイヤ幅方向に対して60°以上90°以下の傾斜角度でタイヤ幅方向外側に向かって踏み込み側から蹴り出し側に延びる第4の傾斜溝が形成され、前記第4の傾斜溝の溝幅は2.0mm以上10.0mm以下であり、前記第4の傾斜溝の溝長さは前記第3の傾斜溝のピッチ長さの30%以上70%以下である、
空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記タイヤ外側プロファイルを構成する曲線のうちタイヤ幅方向最内側の曲線の曲率半径が、前記タイヤ内側プロファイルを構成する曲線のうちタイヤ幅方向最外側の曲線の曲率半径の0.40倍以上0.60倍以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記タイヤ外側プロファイルを構成する曲線のうちタイヤ幅方向内側から2番目の曲線の曲率半径が、前記タイヤ外側プロファイルを構成する曲線のうちタイヤ幅方向最内側の曲線の曲率半径の0.70倍以上0.90倍以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記タイヤ外側プロファイルを構成する各曲線のタイヤプロファイルに沿った寸法が、トレッド展開幅の2.0%以上5.0%以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライ操縦安定性能(以下、「ドライ操安性」と称する場合がある。)と、ウェット操縦安定性能(以下、「ウェット操安性」と称する場合がある。)と、をバランス良く改善した空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、新車装着用タイヤの開発では、ドライ操安性を維持したままウェット操安性を改良することが要請されてきた。
【0003】
このような要請に対し、タイヤ材料についてはキャプトレッドゴムにシリカを比較的多く含ませることなどにより、またタイヤ構造については主溝面積を増加させることなどにより、排水性を向上させることが行われてきた。
【0004】
例えば、ドライ操安性を維持したままウェット操安性を向上させた技術としては、複数の陸部のうち、外側最外周方向主溝に対してタイヤ赤道面側に隣り合う陸部を外側セカンド陸部とし、タイヤ幅方向外側に隣り合う陸部を外側ショルダー陸部とし、複数の陸部のうち、内側最外周方向主溝に対してタイヤ赤道面側に隣り合う陸部を内側セカンド陸部とし、タイヤ幅方向外側に隣り合う陸部を内側ショルダー陸部としたとき、外側ショルダー陸部からタイヤ赤道面を跨ぎ、内側セカンド陸部まで連続して延在すると共に内側セカンド陸部内で終端する連通ラグ溝を備え、内側セカンド陸部には、連通ラグ溝の終端部を通り、内側最外周方向主溝から離間する副溝が備えられた空気入りタイヤが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された技術では、トレッド部に連通ラグ溝や副溝を形成することで、溝面積比が増大するため、優れたウェット操安性を実現することはできる。しかしながら、トレッド部に連通ラグ溝や副溝を形成すると、陸部の剛性が低下する。したがって、陸部剛性を高めて操安性を高めることと排水性を高めることとは、二律背反の関係にあり、排水性向上を目的とした技術には、ドライ操安性を良好に実現できない場合もあり得る。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ドライ操安性を維持しつつ、ウェット操安性が向上した空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の空気入りタイヤは、複数本の周方向主溝によって複数の陸部が区画形成され、かつ回転方向が指定された空気入りタイヤであって、タイヤ平面視で、タイヤ幅方向最も外側の外側陸部に、複数の第1の傾斜溝が形成され、上記第1の傾斜溝は、上記タイヤ幅方向に対して45°以下の傾斜角度でタイヤ幅方向外側に向かって踏み込み側から蹴り出し側に延び、かつ上記第1の傾斜溝の溝幅は、2.0mm以上10.0mm以下であり、正規内圧を付与した無負荷状態のタイヤ子午断面視で、両接地端間の溝がないとした場合におけるタイヤプロファイルが、上記タイヤプロファイルに沿った両接地端間寸法に対して20%以上35%以下のタイヤプロファイルに沿った寸法を有する2つのタイヤ外側プロファイルと、上記2つのタイヤ外側プロファイル以外のタイヤ内側プロファイルと、から構成され、上記タイヤ外側プロファイルが、少なくとも4つの異なる形状の曲線から構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る空気入りタイヤでは、複数本の周方向主溝によって区画されている複数の陸部、特に外側陸部において、特定の形状を有する複数の傾斜溝を設けたことに加えて、タイヤ子午断面視でのタイヤプロファイルをタイヤ外側プロファイルとタイヤ内側プロファイルとに区分した上で、特にタイヤ外側プロファイルについて改良を加えている。その結果、本発明に係る空気入りタイヤによれば、ドライ操安性を維持しつつ、ウェット操安性が向上した空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に従う空気入りタイヤのトレッド部100の一部を示すタイヤ平面展開図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に従う空気入りタイヤが有する第1の傾斜溝130の、タイヤ幅方向に対する傾斜角度を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に従う空気入りタイヤを示すタイヤ子午断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に従う空気入りタイヤが有する第2の傾斜溝135の、タイヤ幅方向に対する傾斜角度を示す模式図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に従う空気入りタイヤが有する第3の傾斜溝140の、タイヤ幅方向に対する傾斜角度を示す模式図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に従う空気入りタイヤが有する第4の傾斜溝145の、タイヤ幅方向に対する傾斜角度を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、これらの実施形態及び図面は、本発明を限定するものではない。また、当該実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。さらに、当該実施形態に含まれる各種形態は、当業者が自明の範囲内で任意に組み合わせることができる。
【0012】
なお、以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤの回転軸と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、上記回転軸を中心軸とする周り方向をいう。なお、本発明の空気入りタイヤは、回転方向が指定されており、したがってタイヤ周方向は、踏み込み側及び蹴り出し側を有している。更に、タイヤ幅方向とは、上記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)に向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面から離れる側をいう。なお、タイヤ赤道面とは、空気入りタイヤの回転軸に直交するとともに、空気入りタイヤのタイヤ幅の中心を通る平面である。
【0013】
また、以下の説明において、正規リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、又はETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、正規内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、又はETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。
【0014】
<基本形態>
まず、本開示の基本形態に従う空気入りタイヤのトレッド部の形状について説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に従う空気入りタイヤのトレッド部100の一部を示すタイヤ平面展開図である。また、
図2は、本発明の実施形態に従う空気入りタイヤが有する第1の傾斜溝130の、タイヤ幅方向Wに対する傾斜角度を示す模式図である。
【0016】
図1に示すように、本発明の基本形態に従う空気入りタイヤのトレッド部100は、複数本の周方向主溝110a、110b、及び110cによって複数の陸部120a及び120bが区画形成され、かつ回転方向が指定された空気入りタイヤであって、タイヤ平面視で、タイヤ幅方向W最も外側の外側陸部120aに、複数の第1の傾斜溝130が形成されている。また、
図2に示すように、上記第1の傾斜溝130は、上記タイヤ幅方向Wに対して45°以下の傾斜角度でタイヤ幅方向W外側に向かって踏み込み側Sから蹴り出し側Kに延び、かつ上記第1の傾斜溝130の溝幅は、2.0mm以上10.0mm以下である。
【0017】
ここで、第1の傾斜溝130の傾斜角度とは、当該溝の溝幅方向中心線(任意の溝幅中心点を連ねた線分)のタイヤ幅方向Wに対する傾斜角度をいう。なお、本明細書では、第1の傾斜溝130に限らず、全ての溝について、その傾斜角度とは、当該溝の溝幅方向中心線の傾斜角度をいうものとする。
【0018】
次いで、本開示の基本形態に従う空気入りタイヤのタイヤプロファイルについて説明する。
【0019】
図3は、本発明の実施形態に従う空気入りタイヤを示すタイヤ子午断面図である。ここで、説明の便宜上、
図3に示す空気入りタイヤと
図1及び2に示す空気入りタイヤとでは、トレッドパターンが異なっているが、
図3は本発明の実施形態に従う空気入りタイヤのタイヤプロファイル(溝が無いとした場合の)を説明するための図であり、
図1及び
図2に示すトレッドパターンを有する空気入りタイヤに、
図3に示すのと同様のタイヤプロファイル(溝が無いとした場合の)を適用することで、本発明の効果が得られる。
【0020】
図3に示す空気入りタイヤのトレッド部10は、ゴム材(トレッドゴム)からなり、空気入りタイヤのタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面が空気入りタイヤの輪郭となる。トレッド部10の表面は、空気入りタイヤを装着する車両(図示せず)が走行した際に路面と接触する面であるトレッド表面12として形成されている。同図に示す例では、タイヤ赤道面CLの両側において、2本の周方向主溝14(16)、18(20)によって、5つの陸部22、24、26、28、30が区画形成されている。なお、
図1に示すように、トレッド部10のタイヤ幅方向両側にはショルダー部40が連なっている。
【0021】
また、本実施形態の空気入りタイヤでは、
図3に示すように、両接地端E1、E2の間のタイヤプロファイルが、タイヤプロファイルに沿った両接地端間寸法に対して20%以上35%以下のタイヤプロファイルに沿った寸法を有する2つのタイヤ外側プロファイルPo1、Po2と、2つのタイヤ外側プロファイルPo1、Po2以外のタイヤ内側プロファイルPiと、から構成されている。なお、本明細書において、タイヤプロファイル(タイヤ外側プロファイル及びタイヤ内側プロファイルを含む)とは、タイヤ子午断面視での、タイヤ表面における溝を含まない場合のタイヤの外輪郭線をいうものとする。
【0022】
このような前提の下、本発明の実施の形態に係る空気入りタイヤでは、タイヤ外側プロファイルPo1、Po2のそれぞれが、少なくとも4つの異なる形状の曲線(
図1に示すところでは10の異なる形状の曲線)から構成されている。これに対し、タイヤ内側プロファイルPiは、
図1に示すように1つの曲線によって構成してもよいし、複数の曲線によって構成してもよい。
【0023】
(作用等)
従来技術において、ウェット操安性を向上させるためにトレッド部において陸部に連通ラグ溝や副溝等の溝を形成すると、陸部の剛性が低下してドライ操安性が低下する。すなわち、従来技術において、ウェット操安性とドライ操安性とは二律背反の関係にあった。そのため、従来技術では、ドライ操安性を維持しつつウェット操安性を向上させようとした場合に、特許文献1に記載されているように、陸部に形成される連通ラグ溝や副溝の設計によっては、十分にドライ操安性を得ることが困難な場合があった。
【0024】
これに対して、本発明の基本形態に従う空気入りタイヤでは、トレッド部において、陸部に特定の傾斜角度及び溝幅を有する溝を形成することで、ドライ操安性を過度に劣化させることなくウェット操安性を向上させることに加えて、タイヤプロファイルを特定の形状とすることによって、接地圧の均一化、より具体的には、タイヤ幅方向において接地圧の高い部分と接地圧の低い部分とにおける接地圧の差を低減し、タイヤ幅方向において接地圧を平準化することにより、ドライ操安性を向上させている。これにより、本発明の基本形態に従う空気入りタイヤでは、ドライ操安性を維持しつつ、ウェット操安性を向上させることができる。
【0025】
より具体的には、本発明の基本形態に従う空気入りタイヤでは、
図2に示すようにトレッド部100において、第1の傾斜溝130がタイヤ幅方向Wに対して45°以下の傾斜角度でタイヤ幅方向W外側に向かって踏み込み側Sから蹴り出し側Kに延びている、即ちそれぞれの第1の傾斜溝130がタイヤの回転方向に関して同一の向きに傾いていることにより、高いウェット操安性を実現することができる。
【0026】
また、当該第1の傾斜溝130がタイヤ幅方向Wに対して0°以上45°以下の傾斜角度を有することに加えて、第1の傾斜溝130の溝幅が2.0mm以上10.0mm以下であるため、第1の傾斜溝130の表面積が大きくなりすぎず、第1の傾斜溝130が存在することによるドライ操安性の低下が抑制されている。
【0027】
なお、第1の傾斜溝130は、当該第1の傾斜溝130が形成されている外側陸部120aにおいて、周方向主溝110aから接地端までの全タイヤ幅方向位置に存在していても、
図1に示すように一部のタイヤ幅方向位置に存在していなくてもよい。第1の傾斜溝130が周方向主溝110aから接地端まで存在している場合には、より排水性を向上させることができ、ウェット操安性が更に向上する。他方、第1の傾斜溝130が周方向主溝110aから接地端までのタイヤ幅方向位置Wの少なくとも一部において存在していない場合には、当該第1の傾斜溝130が形成されている外側陸部120aの剛性を高めることができ、ドライ操安性が向上する。
【0028】
更に、
図3に示すように、本発明の基本形態に従う空気入りタイヤは、ショルダー領域に相当するタイヤ外側プロファイルPo1、Po2を、少なくとも4つの異なる形状の曲線(
図3に示すところでは、Po101~Po110、Po201~Po210)から構成している。
【0029】
このように、タイヤ外側プロファイルPo1、Po2を4つ以上の部分に分割し、プロファイルを細分化することで、従来接地圧が局所的に高かった領域について、当該接地圧を低減することができる。これにより、タイヤ全体としてみた場合に、いずれのタイヤ幅方向領域についても接地圧が著しく異なる部分が生ずることを抑制して接地圧が平準化でき、ひいてはドライ操安性を高め、その結果、ドライ操安性を維持しつつ、ウェット操安性を向上させることができる。
【0030】
なお、タイヤ外側プロファイルPo1、Po2が2つ又は3つの部分にしか分割されていない場合には、接地圧の平準化を行うにあたって接地圧低減のために改良したプロファイル部分とそれに隣り合うプロファイル部分との形状が著しく異なることとなる。そのため、このよう場合には、いわゆるバックル(トレッド表面がウェーブ状に湾曲する現象)が生ずるおそれがある。従って、本発明の基本形態では、タイヤ外側プロファイルPo1、Po2の分割後のプロファイル部分の数を4以上としている。
【0031】
また、本発明の基本形態に従う空気入りタイヤでは、タイヤプロファイルに沿った両接地端E1、E2間寸法に対するタイヤ外側プロファイルPo1、Po2のタイヤプロファイルに沿った寸法の割合(以下、「タイヤ外側プロファイル割合」と称する場合がある)を、20%以上35%以下としている。タイヤ外側プロファイル割合を20%以上とすることで、接地圧低減対象であるタイヤ外側プロファイルPo1、Po2を十分に確保することができる。これにより、タイヤ外側プロファイルPo1、Po2の分割数を十分に確保することができ、ひいては接地圧低減効果が十分に得られ、その結果優れたドライ操安性を実現することができる。なお、タイヤ外側プロファイル割合を22%以上とした場合には、上記効果がより高いレベルで奏さるため好ましく、25%以上とした場合には、上記効果がさらに一層高いレベルで奏されるため極めて好ましい。
【0032】
これに対し、タイヤ外側プロファイル割合を35%以下とすることで、主に排水性を担うタイヤ内側プロファイルを十分に確保することができ、その結果優れたウェット操安性を得ることができる。なお、タイヤ外側プロファイル割合を33%以下とした場合には、上記効果がより高いレベルで奏さるため好ましく、30%とした場合には、上記効果がさらに一層高いレベルで奏されるため極めて好ましい。
【0033】
本発明の基本形態に従う空気入りタイヤは、上記のようなトレッド部の形状及びタイヤプロファイルによる効果が相まって、ドライ操安性を維持しつつ、ウェット操安性を向上させることができる。
【0034】
〈付加的形態1~6〉
次に、本発明の基本形態に従う空気入りタイヤのトレッド部に関して、任意選択的に実施可能な、付加的形態1~6を説明する。
【0035】
(付加的形態1)
本発明の基本形態に従う空気入りタイヤのトレッド部においては、
図1に示すように、蹴り出し側K端部が上記第1の傾斜溝130と連通するとともに、
図4に示すように、上記タイヤ幅方向Wに対して60°以上90°以下の傾斜角度でタイヤ幅方向外側に向かって踏み込み側Sから蹴り出し側Kに延びる第2の傾斜溝135が形成され、上記第2の傾斜溝135の溝幅は2.0mm以上10.0mm以下であり、上記第2の傾斜溝135の溝長さは上記第1の傾斜溝130のピッチ長さの30%以上70%以下であることが好ましい(付加的形態1)。
【0036】
この様な構成では、外側陸部120aが、第1の傾斜溝130に連通している第2の傾斜溝135を有するため、外側陸部120aにおける排水性が更に向上し、ウェット操安性をより向上させることができる。ここで、第2の傾斜溝135のタイヤ幅方向Wに対する傾斜角度が60°以上90°以下であるため、第2の傾斜溝135から第1の傾斜溝130に向かう水流と第1の傾斜溝130を流れる水流とが合流する際の圧力損失が小さく、タイヤの回転方向が定まった状況下において第2の傾斜溝135によって排水性を更に向上させることができる。
【0037】
また、この様な構成では、第2の傾斜溝135の溝幅が2.0mm以上10.0mm以下であるため、第2の傾斜溝135の表面積が大きくなりすぎず、排水性を向上させつつ、陸部の剛性の低下を抑制することができる。
【0038】
更に、この様な構成では、第2の傾斜溝135の溝長さが第1の傾斜溝130のピッチ長さの30%以上70%であるため、外側陸部120aの剛性を維持しつつ、排水性を向上させることができる。なお、第1の傾斜溝130のピッチ長さとは、タイヤ周方向において第1の傾斜溝130が一定の周期で形成されている場合には、当該ピッチそのものをいい、タイヤ周方向において第1の傾斜溝130が一定の周期で形成されていない場合には、各ピッチの平均値をいう。
【0039】
(付加的形態2)
基本形態又は基本形態に付加的形態1を加えた形態においては、
図1に示すように、隣り合う上記周方向主溝110a及び110b、又は110b及び110cのそれぞれに対して端部が連通するとともに、
図5に示すように、上記タイヤ幅方向Wに対して30°以上70°以下の傾斜角度でタイヤ幅方向外側に向かって踏み込み側Sから蹴り出し側Kに延びる第3の傾斜溝140が形成され、上記第3の傾斜溝140の溝幅は2.0mm以上10.0mm以下であることが好ましい(付加的形態2)。また、
図1に示すように、付加的形態2では、第3の傾斜溝140とは別に、一方の周方向主溝a又はcのみに対して端部が連通している傾斜溝147を有していてもよい。
【0040】
この様な構成では、トレッド部100において、第3の傾斜溝140が隣り合う周方向主溝110a及び110b、又は110b及び110cのそれぞれに対して端部が連通するとともに、タイヤ幅方向Wに対して30℃以上70°以下の傾斜角度でタイヤ幅方向W外側に向かって踏み込み側Sから蹴り出し側Kに延びている、即ちそれぞれの第3の傾斜溝140がタイヤの回転方向に関して同一の向きに傾いていることにより、高い排水性を実現することができ、したがって高いウェット操安性を有している。
【0041】
また、この様な構成では、当該第3の傾斜溝140がタイヤ幅方向Wに対して30°以上70°以下の傾斜角度を有することに加えて、第3の傾斜溝140の溝幅が2.0mm以上10.0mm以下であるため、第3の傾斜溝140の表面積が大きくなりすぎず、第3の傾斜溝140が存在することによるドライ操安性の低下が抑制されている。なお、トレッド部100において、第3の傾斜溝140は、幅方向内側にある陸部、即ち内側陸部120bに配置することができる。
【0042】
(付加的形態3)
基本形態又は基本形態に付加的形態1又は2を加えた形態においては、
図1に示すように、上記第3の傾斜溝140と蹴り出し側K端部で連通するとともに、
図6に示すように、上記タイヤ幅方向Wに対して60°以上90°以下の傾斜角度でタイヤ幅方向W外側に向かって踏み込み側Sから蹴り出し側Kに延びる第4の傾斜溝145が形成され、上記第4の傾斜溝145の溝幅は2.0mm以上10.0mm以下であり、上記第4の傾斜溝145の溝長さは上記第3の傾斜溝140のピッチ長さの30%以上70%以下であることが好ましい(付加的形態3)。また、
図1に示すように、付加的形態3では、傾斜溝147にも第4の傾斜溝145と同様の構成を有する傾斜溝148を有していてもよい。
【0043】
この様な構成では、第4の傾斜溝145が第3の傾斜溝140に連通しているため、排水性能がさらに高まり、ひいてはウェット操安性をより向上させることができる。ここで、第4の傾斜溝145のタイヤ幅方向Wに対する傾斜角度が60°以上90°以下であるため、第4の傾斜溝145から第3の傾斜溝140に向かう水流と第3の傾斜溝140を流れる水流とが合流する際の圧力損失が小さく、タイヤの回転方向が定まった状況下において第4の傾斜溝145によって排水性を更に向上させることができる。また、第4の傾斜溝145の溝幅が2.0mm以上10.0mm以下であるため、第4の傾斜溝145の表面積が大きくなりすぎず、排水性を向上させつつ、陸部の剛性の低下を抑制することができる。
【0044】
更に、第4の傾斜溝145の溝長さが第3の傾斜溝140のピッチ長さの30%以上70%であるため、内側陸部120bの剛性を維持しつつ、排水性を向上させることができる。なお、第3の傾斜溝140のピッチ長さとは、タイヤ周方向において第3の傾斜溝140が一定の周期で形成されている場合には、当該ピッチそのものをいい、タイヤ周方向において第3の傾斜溝140が一定の周期で形成されていない場合には、各ピッチの平均値をいう。
【0045】
(付加的形態4)
基本形態又は基本形態に付加的形態1~3の少なくともいずれか一つを加えた形態においては、
図3におけるタイヤ外側プロファイルPo1、Po2の少なくともいずれかを構成する部分(曲線)のうちタイヤ幅方向最内側の曲線(同図では、プロファイル部分Po101及び/又はプロファイル部分Po201)の曲率半径(以下、「曲率半径1」と称する場合がある。)が、タイヤ内側プロファイルPiを構成する部分(曲線)のうちタイヤ幅方向最外側の曲線(
図3に示す例ではプロファイルPiそのもの)の曲率半径(以下、「曲率半径2」と称する場合がある)の0.40倍以上0.60倍以下であることが好ましい(付加的形態4)。
【0046】
(曲率半径1/曲率半径2)を0.40以上とすることで、プロファイル部分Po101及び/又はプロファイル部分Po201と、それに隣り合うプロファイルPiとの形状を過度に異ならせることなく、これら隣り合う曲線同士の接続点においてバックルの発生をさらに抑制することができる。
【0047】
これに対し、(曲率半径1/曲率半径2)を0.60以下とすることで、接地圧の比較的低いセンター領域に相当するタイヤ内側プロファイルPiの曲率半径に対して、接地圧の比較的高いショルダー領域に相当するタイヤ外側プロファイルPo1(Po2)の曲率半径を、さらに異ならせることができる。これにより、タイヤ全体としてみた場合に、いずれのタイヤ幅方向領域についても接地圧が著しく異なる部分が生ずることをさらに抑制することができ、ひいてはドライ操安性をさらに高め、その結果ドライ操安性とウェット操安性とをさらにバランス良く改善することができる。
【0048】
なお、(曲率半径1/曲率半径2)を0.42以上0.58以下とした場合には、上記各効果がより高いレベルで奏されるためさらに好ましく、0.45以上0.55以下とした場合には、上記各効果がさらに一層高いレベルで奏されるため極めて好ましい。
【0049】
(付加的形態5)
基本形態又は基本形態に付加的形態1~4の少なくともいずれかを加えた形態においては、
図3に示すタイヤ外側プロファイルPo1(タイヤ外側プロファイルPo2)を構成する曲線のうちタイヤ幅方向内側から2番目のプロファイル部分Po102(Po202)の曲率半径(以下、「曲率半径3」と称する場合がある。)が、タイヤ外側プロファイルPo1(タイヤ外側プロファイルPo2)を構成する曲線のうちタイヤ幅方向最内側のプロファイル部分Po101(Po201)の曲率半径1の0.70倍以上0.90倍以下であることが好ましい(付加的形態5)。
【0050】
(曲率半径3/曲率半径1)を0.70以上とすることで、プロファイル部分Po102(プロファイルPo202)と、それに隣り合うプロファイル部分Po101(プロファイルPo201)との形状を過度に異ならせることなく、これら曲線同士の接点においてバックルの発生を抑制することができる。
【0051】
これに対し、(曲率半径3/曲率半径1)を0.90以下とすることで、ショルダー領域の中でも接地圧の比較的低いタイヤ幅方向最内側のプロファイル部分Po101(プロファイルPo201)の曲率半径1に対して、接地圧の比較的高いタイヤ幅方向外側のプロファイルPo102(プロファイルPo202)の曲率半径3を、さらに異ならせることとなる。これにより、ショルダー領域全体としてみた場合に、いずれのタイヤ幅方向領域についても接地圧が著しく異なる部分の発生がさらに抑制され、ひいてはドライ操安性をさらに高め、その結果ドライ操安性とウェット操安性とをさらにバランス良く改善することができる。
【0052】
なお、(曲率半径3/曲率半径1)を0.72以上0.88以下とした場合には、上記各効果がより高いレベルで奏されるためさらに好ましく、0.75以上0.85以下とした場合には、上記各効果がより一層高いレベルで奏されるため極めて好ましい。
【0053】
(付加的形態6)
基本形態又は基本形態に付加的形態1~5の少なくともいずれかを加えた形態においては、
図3に示すタイヤ外側プロファイルPo1(Po2)を構成する各プロファイル部分Po101~Po110(各プロファイル部分Po201~Po210)のタイヤプロファイルに沿った寸法(以下、「各曲線の寸法」と称する場合がある。)が、トレッド展開幅の2.0%以上5.0%以下であること(付加的形態6)が好ましい。ここで、トレッド展開幅とは、
図3における接地端E1、E2間を結ぶ弧長の長さTDWをいう。
【0054】
各プロファイル部分の寸法をトレッド展開幅の2.0%以上とすることで、タイヤ外側プロファイルPo1、Po2の各プロファイル部分への分割数を過度に多くすることを抑制できる。これにより、使用する金型の構成要素数の増大を抑制するとともに、タイヤ製造時の工数の増大を抑制し、その結果タイヤ製造コストを低減することができる。
【0055】
また、各プロファイル部分の寸法をトレッド展開幅の5.0%以下とすることで、タイヤ外側プロファイルPo1、Po2の各プロファイル部分への分割数を十分に確保することができる。タイヤ外側プロファイルPo1、Po2のそれぞれの、タイヤ幅方向内端と外端とでは接地圧の均一化を図るべく、タイヤ径方向位置を相当に異ならせることが必要であるところ、上記のような分割数の十分な確保により、隣り合うプロファイル間において曲率半径を極端に異ならせる必要がなく、ひいては隣り合う曲線同士の接続点においてバックルを効率的に抑制することができる。
【0056】
なお、各プロファイル部分の寸法をトレッド展開幅の2.2%以上4.8%以下とした場合には、上記各効果がより高いレベルで奏されるためさらに好ましく、2.5%以上4.5%以下とした場合には、上記各効果がより一層高いレベルで奏されるため極めて好ましい。
【実施例】
【0057】
タイヤサイズを225/50R18 95V(JATMAにて規定)とし、
図1及び2、並びに
図4~6に示すトレッド部の形状及び
図3に示す形状のタイヤプロファイルを有する発明例1から7の空気入りタイヤ、従来例の空気入りタイヤ、及び参考例の空気入りタイヤを作製した。なお、これらの空気入りタイヤの細部の諸条件については、以下の表1に示すとおりである。
【0058】
なお、表1における「回転方向の指定の有無」に関して、タイヤの回転方向が指定されているタイヤとしては、タイヤに回転方向を示す文字と矢印が表示されているものを用い、正しい回転方向になるように試験車両に装着して試験を行った。また、「傾斜角度」とは、傾斜溝のタイヤ幅方向に対する傾斜角度を意味している。
【0059】
また、表1における「プロファイルの構成」に関して、タイヤ外側プロファイル割合とは、タイヤプロファイルに沿った両接地端間寸法に対する、2つのタイヤ外側プロファイルのタイヤプロファイルに沿った各寸法の割合を意味する。タイヤ外側プロファイル(両方)の分割数とは、
図1に示すタイヤ外側プロファイルPo1、Po2を構成する要素(プロファイル部分)の数を意味する。曲率半径1とは、
図1に示すタイヤ外側プロファイルPo1、Po2を構成する曲線のうちタイヤ幅方向最内側の曲線(プロファイル部分Po101、プロファイル部分Po201)の曲率半径を意味する。曲率半径2とは、
図1に示すタイヤ内側プロファイルPiの曲率半径を意味する。曲率半径3とは、
図1に示すタイヤ外側プロファイルPo1(Po2)を構成する曲線のうちタイヤ幅方向内側から2番目の曲線(プロファイル部分Po102、プロファイル部分Po202)の曲率半径を意味する。各曲線の寸法とは、
図1に示すタイヤ外側プロファイルPo1(Po2)を構成する各曲線(プロファイル部分Po101~Po110、プロファイル部分Po201~Po210)のタイヤプロファイルに沿った寸法を意味する。なお、上記の各用語に含まれる符号等は、上述した本明細書の記載に準拠するものである。
【0060】
このように作製した、発明例1から7の空気入りタイヤ及び従来例の空気入りタイヤについて、以下の要領に従い、ドライ操安性及びウェット操安性についての評価を行った。
【0061】
(ドライ操安性・ウェット操安性についての評価)
上記供試タイヤをリムサイズ7JのJATMA標準リムのリムホイールにリム組みして、空気圧を230kPaに調整し、排気量が2000ccの前輪駆動車を試験車両として、試験タイヤを試験車両の総輪に装着してテスト走行することにより行った。
【0062】
ドライ操安性については、平坦な周回路を有するドライ路面のテストコースを、試験車両によって10km/hから180km/hで走行し、テストドライバーがレーンチェンジ時及びコーナリング時における操舵性、及び直進時における安定性についての官能評価を行った。ドライ操安性は、従来例を100とする評点で表示され、その数値が大きいほど優れていることを示す。その結果を表1に併記する。
【0063】
ウェット操安性については、水膜1mmのアスファルト路を、試験車両によって速度40km/hで走行し、テストドライバーがレーンチェンジ時及びコーナリング時における操舵性、及び直進時における安定性についての官能評価を行った。ウェット操安性は、従来例を100とする評点で表示され、その数値が大きいほど優れていることを示す。その結果を表1に併記する。
【0064】
【0065】
表1によれば、本発明の技術的範囲に属する(即ち、トレッド部の傾斜溝を特定の形状とし、かつタイヤ子午断面視でのタイヤプロファイルをタイヤ外側プロファイルとタイヤ内側プロファイルとに区分した上で、特にタイヤ外側プロファイルについて改良を加えた)発明例1から発明例7の空気入りタイヤについては、いずれも、本発明の技術的範囲に属さない、従来例及び参考例の空気入りタイヤに比べて、ドライ操安性とウェット操安性とがバランス良く改善されていることが判る。
【符号の説明】
【0066】
10 トレッド部
12 トレッド表面
14、16、18、20 周方向主溝
22、24、26、28、30 陸部
40 ショルダー部
CL タイヤ赤道面
E1、E2 接地端
Pi タイヤ内側プロファイル
Po1、Po2 タイヤ外側プロファイル
TDW トレッド展開幅
100 トレッド部
110a~c 周方向主溝
120a 外側陸部
120b 内側陸部
130 第1の傾斜溝
135 第2の傾斜溝
140 第3の傾斜溝
145 第4の傾斜溝