(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】加圧調理器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20240403BHJP
A47J 27/09 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
A47J27/00 109S
A47J27/09
A47J27/00 103P
(21)【出願番号】P 2020105720
(22)【出願日】2020-06-19
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【氏名又は名称】伊藤 世子
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】森定 慎介
(72)【発明者】
【氏名】村上 晋也
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-246761(JP,A)
【文献】特開2010-273711(JP,A)
【文献】特開2012-249946(JP,A)
【文献】特開2007-007027(JP,A)
【文献】特開2008-086831(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0008310(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00-29/06
A47J 33/00-36/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内鍋を収容自在であって、上部に開口部を備える本体と、
前記本体に回動自在に取り付けられ、前記開口部を開閉するための蓋体と、
前記蓋体の前記本体に対する係合状態である蓋状態を検知
し、前記蓋状態の検知結果を示す信号である蓋状態検知結果信号を出力する蓋状態検知センサーと、
前記内鍋の内部の過剰圧力を制限するための安全弁を駆動制御する安全弁ユニットと、
前記安全弁の状態を制御するための安全弁駆動回路と、
前記蓋状態検知結果信号に基づいて、前記安全弁駆動回路を制御するための安全弁制御信号を出力することができるマイクロプロセッサと、
を備え、
前記安全弁駆動回路は、
前記蓋状態検知結果信号および前記安全弁制御信号を入力し、
前記蓋状態検知センサーにより前記蓋状態が正常状態であると検知された場合、
前記蓋状態検知結果信号および前記安全弁制御信号に基づいて、前記蓋状態が前記蓋状態検知結果信号および前記安全弁制御信号により決定される状態となるように前記安全弁を制御し、
前記蓋状態検知センサーにより前記蓋状態が異常状態であると検知された場合、
前記マイクロプロセッサから出力される前記安全弁制御信号の信号値に関わらず、前記蓋状態検知結果信号に基づいて、前記安全弁が開放状態となるように、前記安全弁を制御する、
加圧調理器。
【請求項2】
ステッピングモーターを用いて、前記内鍋の内部の圧力を調整するための調圧ユニットをさらに備え、
前記蓋状態検知センサーにより前記蓋状態が異常状態であると検知された場合、
前記マイクロプロセッサは、前記安全弁を開放状態とするための制御信号を前記安全弁駆動回路に出力するとともに、前記調圧ユニットの前記ステッピングモーターがリセット状態となるように、前記調圧ユニットを制御し、
前記安全弁駆動回路は、前記マイクロプロセッサからの制御信号と、前記蓋状態検知センサーの検知結果とに基づいて、前記安全弁が開放状態となるように、前記安全弁を制御する、
請求項1に記載の加圧調理器。
【請求項3】
前記加圧調理器の電気部品に電源供給する主電源と補助電源とをさらに備え、
前記補助電源は、前記マイクロプロセッサにより、電力供給状態が制御される電源であり、前記安全弁に電力供給を行い、
前記安全弁は、前記補助電源による電力供給がされていない場合、開放状態となるように構成されている、
請求項1または2に記載の加圧調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧調理器(例えば、圧力炊飯器)の圧力安全システムについての技術に関する。
【背景技術】
【0002】
過去に、「内釜を収納自在であって、上部に開口部を具備する本体と、該本体に回動自在に軸支され、前記開口部を開閉するための蓋体と、前記内釜に入れられた被調理物を加熱するための加熱手段と、該加熱手段を制御するための制御手段と、該制御手段を介して前記加熱手段を起動または停止するために操作される操作手段と、前記蓋体に設けられた係合手段が、前記本体に設けられた被係合手段に係合可能な状態において、当該係合を確実にする係合促進手段と、を有する加熱調理器。(例えば、特開2009-192号公報参照。)」が提案されている。
【0003】
このような技術を用いることで、加熱調理器(加圧調理器)において、クランプが半がかり状態のままで加熱されることを防止防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、加圧調理器(例えば、圧力炊飯器)において、加圧時の安全性は、機構的な設計により担保されており、機構的な設計手法を用いると、製品の構造が複雑になり、デザイン性やコスト面でデメリットが多い。
【0006】
また、加圧調理器(例えば、圧力炊飯器)において、加圧・除圧に用いる素子(ソレノイド)は、ソフトウェアによるパルス信号により駆動させているため、電気的に加圧時の安全性を担保させようとすると、ソフトウェア処理が必要となる。ソフトウェア処理により、加圧調理器の異常状態(例えば、蓋の半ロック状態)を検知する場合、当該ソフトウェア処理を実行する制御部(例えば、マイクロプロセッサ)が正常動作していないと、ソフトウェア処理を正常に実行できず、その結果、加圧調理器の異常状態を適切に検知できない。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、どのような場合であっても(加圧調理器(例えば、圧力炊飯器)の異常状態を検知するソフトウェア処理が正常に実行できない場合であっても)、適切に加圧調理器の異常状態を検知し、安全性を担保する加圧調理器を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、
内鍋を収容自在であって、上部に開口部を備える本体と、
前記本体に回動自在に取り付けられ、前記開口部を開閉するための蓋体と、
前記蓋体の前記本体に対する係合状態である蓋状態を検知し、前記蓋状態の検知結果を示す信号である蓋状態検知結果信号を出力する蓋状態検知センサーと、
前記内鍋の内部の過剰圧力を制限するための安全弁を駆動制御する安全弁ユニットと、
前記安全弁の状態を制御するための安全弁駆動回路と、
前記蓋状態検知結果信号に基づいて、前記安全弁駆動回路を制御するための安全弁制御信号を出力することができるマイクロプロセッサと、
を備え、
前記安全弁駆動回路は、
前記蓋状態検知結果信号および前記安全弁制御信号を入力し、
前記蓋状態検知センサーにより前記蓋状態が正常状態であると検知された場合、
前記蓋状態検知結果信号および前記安全弁制御信号に基づいて、前記蓋状態が前記蓋状態検知結果信号および前記安全弁制御信号により決定される状態となるように前記安全弁を制御し、
前記蓋状態検知センサーにより前記蓋状態が異常状態であると検知された場合、
前記マイクロプロセッサから出力される前記安全弁制御信号の信号値に関わらず、前記蓋状態検知結果信号に基づいて、前記安全弁が開放状態となるように、前記安全弁を制御する、
加圧調理器である。
【0009】
この加圧調理器では、蓋状態検知センサーにより蓋状態が異常状態であると検知された場合、安全弁駆動回路により、前記安全弁が開放状態となるように制御される。したがって、この加圧調理器では、どのような場合であっても(例えば、加圧調理器の異常状態を検知するソフトウェア処理が正常に実行できない場合であっても)、適切に加圧調理器の異常状態を検知し、安全性を担保することができる。
【0010】
なお、安全弁の「開放状態」とは、内鍋の内部の圧力が一定以上になったときに、内鍋に連通する通気孔を開くことができる状態(安全弁の状態)のことをいう。
【0011】
第2の発明は、第1の発明であって、
ステッピングモーターを用いて、前記内鍋の内部の圧力を調整するための調圧ユニットをさらに備え、
前記蓋状態検知センサーにより前記蓋状態が異常状態であると検知された場合、
前記マイクロプロセッサは、前記安全弁を開放状態とするための制御信号を前記安全弁駆動回路に出力するとともに、前記調圧ユニットの前記ステッピングモーターがリセット状態となるように、前記調圧ユニットを制御し、
前記安全弁駆動回路は、前記マイクロプロセッサからの制御信号と、前記蓋状態検知センサーの検知結果とに基づいて、前記安全弁が開放状態となるように、前記安全弁を制御する。
【0012】
これにより、この加圧調理器では、マイクロプロセッサによるソフトウェア処理(マイコン処理)、および、安全弁駆動回路によるハードウェア処理の組み合わせにより、安全弁の制御を行うことできる。したがって、この加圧調理器では、より高い安全性を確保することができる。
【0013】
第3の発明は、第1または第2の発明であって、
前記加圧調理器の電気部品に電源供給する主電源と補助電源とをさらに備え、
前記補助電源は、前記マイクロプロセッサにより、電力供給状態が制御される電源であり、前記安全弁に電力供給を行い、
前記安全弁は、前記補助電源による電力供給がされていない場合、開放状態となるように構成されている。
【0014】
これにより、この加圧調理器では、補助電源による電力供給がなされていない場合に、安全弁を開放状態とすることができる。その結果、補助電源により動作する機能部(例えば、ステッピングモーター、調圧ユニット、安全弁ユニット)が動作していない場合に、内鍋の圧力が異常昇圧して危険な状態になることを適切に防止できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、どのような場合であっても(加圧調理器(例えば、圧力炊飯器)の異常状態を検知するソフトウェア処理が正常に実行できない場合であっても)、適切に加圧調理器の異常状態を検知し、安全性を担保する加圧調理器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係る炊飯器1000の外観を示す図(斜視図)。
【
図2】第1実施形態に係る炊飯器1000の蓋体L1を開けた状態を示す斜視図。
【
図3】第1実施形態に係る炊飯器1000の平面図。
【
図4】第1実施形態に係る炊飯器1000の内部構成を示す図(側面断面図(
図3のA-A線による断面図))。
【
図5】第1実施形態に係る炊飯器1000の蓋体L1の内部構成を示す図(平面図)。
【
図6】第1実施形態に係る炊飯器1000の蓋体L1の内部に設置された安全弁ユニットL13および調圧ユニットL14の構成を示す図(平面図)。
【
図7】第1実施形態に係る炊飯器1000の枠部材B1_frおよび開閉レバー機構B12の構成を示す斜視図。
【
図8】第1実施形態に係る炊飯器1000の開閉レバー機構B12および蓋状態検知センサーB13の構成を示す斜視図。
【
図9】第1実施形態に係る炊飯器1000の開閉レバー機構B12の動作を説明するための図。
【
図10】第1実施形態に係る炊飯器1000の枠部材B1_fr、係止部材(ストッパー)B122、および、蓋状態検知センサーB13の分解斜視図。
【
図11】第1実施形態に係る炊飯器1000の蓋状態検知センサーB13の動作を説明するための図。
【
図12】第1実施形態の炊飯器1000において使用される圧力安全システム100の概略構成図(機能ブロック図)。
【
図13】第1実施形態の炊飯器1000において使用される圧力安全システム100の回路構成例(一例)の図。
【
図14】第1実施形態の炊飯器1000において使用される圧力安全システム100の動作状態を示す真理値表を示す図。
【
図15】第1実施形態の第1変形例の圧力安全システム100Aの概略構成図(機能ブロック図)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
第1実施形態について、図面を参照しながら、以下、説明する。
【0018】
本実施形態では、炊飯器を加圧調理器の一例として、説明する。
【0019】
図1は、第1実施形態に係る炊飯器1000の外観を示す図(斜視図)である。
【0020】
図2は、第1実施形態に係る炊飯器1000の蓋体L1を開けた状態を示す斜視図である。
【0021】
図3は、第1実施形態に係る炊飯器1000の平面図である。
【0022】
図4は、第1実施形態に係る炊飯器1000の内部構成を示す図(側面断面図(
図3のA-A線による断面図))である。
【0023】
図5は、第1実施形態に係る炊飯器1000の蓋体L1の内部構成を示す図(平面図)である。
【0024】
図6は、第1実施形態に係る炊飯器1000の蓋体L1の内部に設置された安全弁ユニットL13および調圧ユニットL14の構成を示す図(平面図)である。
【0025】
図7は、第1実施形態に係る炊飯器1000の枠部材B1_frおよび開閉レバー機構B12の構成を示す斜視図である。
【0026】
図8は、第1実施形態に係る炊飯器1000の開閉レバー機構B12および蓋状態検知センサーB13の構成を示す斜視図である。
【0027】
図9は、第1実施形態に係る炊飯器1000の開閉レバー機構B12の動作を説明するための図である。
【0028】
図10は、第1実施形態に係る炊飯器1000の枠部材B1_fr、係止部材(ストッパー)B122、および、蓋状態検知センサーB13の分解斜視図である。
【0029】
図11は、第1実施形態に係る炊飯器1000の蓋状態検知センサーB13の動作を説明するための図である。
【0030】
なお、
図1~
図11に示すように、x軸、y軸、z軸を設定するものとする。
【0031】
<1.1:炊飯器1000の構成>
本実施形態の炊飯器1000は、誘導加熱式の圧力炊飯器であって、
図1~
図4に示すように、本体B1と、蓋体L1とを備える。蓋体L1は、本体B1の上方の開口部を開閉可能な状態で覆っている。以下では、炊飯器1000において、蓋体L1が設けられている側を炊飯器1000の上方側とし、その反対側を炊飯器1000の下方側とする。
【0032】
(1.1.1:本体B1)
本体B1は、筐体B11、内鍋InP1、開閉レバー機構B12、蓋状態検知センサーB13、ヒンジ部B1_h、誘導加熱コイルB14a~B14d、電源ユニットB15、制御基板CB1、および、電源プラグPL1などを備えている。以下では、炊飯器1000において、開閉レバー機構B12が設けられている側を炊飯器1000の前方側とし、ヒンジ部B1_hが設けられている側を炊飯器1000の後方側とする。
【0033】
≪筐体B11≫
筐体B11は、本体B1の外形を主に構成している。筐体B11の内部には、内鍋InP1、開閉レバー機構B12、蓋状態検知センサーB13、ヒンジ部B1_h、誘導加熱コイルB14a~B14d、電源ユニットB15、制御基板CB1、などが収容されている。
【0034】
内鍋InP1は、上方に開口する椀状の鍋である。内鍋InP1は、種々のアルミニウム合金およびステンレス合金の多層体(クラッド材)で形成される。内鍋InP1は、誘導加熱コイルB14a~B14dによって誘導加熱され得る。
【0035】
≪開閉レバー機構B12≫
開閉レバー機構B12は、揺動型のレバーにより、蓋体L1を開閉するための機構である。開閉レバー機構B12は、
図1~
図4、
図7~
図11に示すように、開閉レバーB121と、係止部材(ストッパー)B122と、バネ部材B123と、枠部材B1_frに設置された開閉レバー回動軸B12_ax0と、枠部材B1_frに設置されたストッパー回動軸B12_ax1と、を備える。
【0036】
≪開閉レバーB121≫
開閉レバーB121は、蓋体L1を開くための揺動型のレバーであって、筐体B11の前側上端において前方に突出するように配設されている。開閉レバーB121は、枠部材B1_frに設置された開閉レバー回動軸B12_ax0を回転中心として回動可能(揺動可能)となるように設置されている。開閉レバーB121は、バネ部材B123を介して係止部材(ストッパー)B122に押圧力を付与する。そして、開閉レバーB121から押圧力を付与された係止部材(ストッパー)B122は、係止部材B122の回動軸であるストッパー回動軸B12_ax1を基点として回動する。使用者が開閉レバーB121を下方へ回動させると、本体B1に対する蓋体L1の係止が解除され、蓋体L1が開く。つまり、使用者が開閉レバーB121を下方へ揺動させると、開閉レバーB121は、開閉レバー回動軸B12_ax0を回転中心として、
図9の矢印Aで示す方向に回転する。
【0037】
≪バネ部材B123≫
バネ部材B123は、開閉レバーB121を回動させたときに発生する押圧力を係止部材B122に伝達(付与)するための部材である。バネ部材B123は、
図7下図に示すように、細バネ部123aと、太バネ部B123bとを備える。
【0038】
バネ部材B123は、
図7の下図に示すように、開閉レバー回動軸B12_ax0に連結されているため、使用者が開閉レバーB121を下方へ揺動させると、バネ部材B123は、開閉レバーB121と連動して、開閉レバー回動軸B12_ax0を回転中心として、
図9の矢印Aで示す方向に回転する。これにより、バネ部材B123の太バネ部B123bの遊端部(
図7において、z軸負方向側の端部)は、
図9の矢印Bで示す方向へ移動する。このとき、バネ部材B123の太バネ部B123bの遊端部の後方側(x軸正方向側)に位置する係止部材(ストッパー)B122の押圧力受部B122aには、バネ部材B123の太バネ部B123bの遊端部から押圧力が付与される。
【0039】
≪係止部材(ストッパー)B122≫
係止部材(ストッパー)B122は、バネ部材B123からの押圧力を受けるための部材であり、当該押圧力を受けたときに、本体B1と蓋体L1との係合を解除するための部材である。係止部材B122は、本体B1(本実施形態では、枠部材B1_fr)に回動(揺動)可能に設けられている。係止部材(ストッパー)B122は、ストッパー回動軸B12_ax1を回転中心として回動可能となるように設置されている。係止部材B122は、押圧力受部B122aと、遮光部B122bと、延設部B122cと、係合部B122dとを備える。
【0040】
押圧力受部B122aは、開閉レバーB121のバネ部材B123からの押圧力を受ける部材である。押圧力受部B122aに
図9の矢印B方向の押圧力が付与されることにより、係止部材(ストッパー)B122は、ストッパー回動軸B12_ax1を回転中心として、
図9の矢印Cで示す方向に回転する。これにより、係止部材(ストッパー)B122の上方に位置する係合部B122dは、
図9の矢印Dで示す方向に移動する。これにより、係合部B122dと蓋体L1側のツメ部L1cとの係合が解除され、ヒンジ部B1_hの付勢力によって蓋体L1は開放される(
図2参照)。
【0041】
遮光部B122bは、光を遮ることができる材質(例えば、金属や光の透過率が所定の値よりも低い物質)で形成されており、蓋状態検知センサーB13が、本体B1に対する蓋体L1の係止状態(蓋状態)を検知できるように構成されている。例えば、
図10に示すように、遮光部B122bは、係止部材B122の端部(y軸正方向の端部)において、ストッパー回動軸B12_ax1と略直交する表面を有する平板状の部材として構成されている。そして、蓋状態検知センサーB13がフォトインタラプタを用いて実現される場合、遮光部B122bは、フォトインタラプタの発光素子から受光素子への光を遮蔽するか否かで、蓋体L1の本体B1に対する係止状態を検知するように構成されている。遮光部B122bは、例えば、
図11に示すように、(1)蓋体L1の本体B1に対する係止状態が正常である場合、蓋状態検知センサーB13(フォトインタラプタ)の発光素子と受光素子との間に位置せず(
図11の左図の状態(フォトインタラプタの発光素子から受光素子への光を遮らない状態))、(2)蓋体L1の本体B1に対する係止状態が異常である場合、蓋状態検知センサーB13(フォトインタラプタ)の発光素子と受光素子との間に位置する(
図11の右図の状態(フォトインタラプタの発光素子から受光素子への光を遮る状態))ように構成される。
【0042】
延設部B122cは、
図10に示すように、上方向(z軸正方向)に延びるように形成されており、上端部で係合部B122dに接続されている。
【0043】
係合部B122dは、
図10に示すように、延設部B122cの上端部から後ろ方向(x軸正方向)に延びるように形成されている。
【0044】
係合部B122dは、蓋体L1が正常に閉じている状態(蓋ロック状態)および蓋体L1が開いている状態(蓋オープン状態)において、
図11の左図に示すように、ツメ部L1cと係合する。この状態(正常状態)において、係合部B122dは、
図11の左図に示すように、遮光部B122bが蓋状態検知センサー(フォトインタラプタ)B13の発光素子から受光素子への光を遮らない状態で、ツメ部L1cと係合している。
【0045】
一方、蓋体L1が正常に閉じていない状態(異常状態(例えば、蓋半ロック状態))では、係合部B122dは、
図11の右図に示すように、ツメ部L1cと係合する(半がかり状態で係合する)。この状態(異常状態)において、係合部B122dは、
図11の右図に示すように、遮光部B122bが蓋状態検知センサー(フォトインタラプタ)B13の発光素子から受光素子への光を遮る状態で、ツメ部L1cと係合している。
【0046】
≪蓋状態検知センサーB13≫
蓋状態検知センサーB13は、蓋体L1の本体B1に対する係止状態を検知するためのセンサーである。蓋状態検知センサーB13は、本体B1内に設置されている。蓋状態検知センサーB13は、例えば、フォトインタラプタを用いて実現される。蓋状態検知センサーB13は、
図10、
図11に示すように、(1)蓋体L1の本体B1に対する係止状態が正常である場合、遮光部B122bが、蓋状態検知センサーB13(フォトインタラプタ)の発光素子と受光素子との間に位置し(
図11の左図の状態(フォトインタラプタの発光素子から受光素子への光を遮らない状態))、(2)蓋体L1の本体B1に対する係止状態が異常である場合、遮光部B122bが、蓋状態検知センサーB13(フォトインタラプタ)の発光素子と受光素子との間に位置する(
図11の右図の状態(フォトインタラプタの発光素子から受光素子への光を遮る状態))ように構成される。
【0047】
≪ヒンジ部B1_h≫
ヒンジ部B1_hは、開閉レバーB121の反対側(すなわち、炊飯器1000の後方側)に配置されている。ヒンジ部B1_hは、蓋体L1が本体B1に対して回動自在となるように蓋体L1を本体B1に取り付けている。このヒンジ部B1_hは、蓋体L1を開方向に向かって付勢している。
【0048】
≪誘導加熱コイルB14a~B14d≫
誘導加熱コイルB14a~B14dは、内鍋InP1を誘導加熱する誘導加熱源であって、内鍋InP1の外面の側壁下端部に配設されている。
【0049】
≪電源ユニットB15≫
電源ユニットB15は、電源回路基板、自動巻取式電源コードユニット等を含む。電源回路基板は、炊飯器1000の電子部品等に電力を供給する電源を実現するための電源回路を構成する基板である。自動巻取式電源コードユニットは、電源コードおよび自動巻取機構等から構成されている。電源コードは、電源回路基板の電源回路に接続されている。また、電源コードの先端に電源プラグPL1が接続されており、電源プラグPL1を商用コンセントに差し込むことで、炊飯器1000の電源回路が、電源プラグPL1、電源コードを介して、商用の交流電源に接続される。
【0050】
≪制御基板CB1≫
制御基板CB1は、例えば、長方形の板状(平板状)の外形を有している。制御基板CB1は、筐体B11内の後方側の下方に配置されている。制御基板CB1は、プリント配線基板などで形成される。すなわち、制御基板CB1は、絶縁性基板の表面および裏面の少なくとも何れかに、導電性材料で形成された回路パターンを有している。制御基板CB1には、マイコン(サブマイコン)、AC電源、インバータ、スイッチング電源などの種々の機能を有する回路パターン(回路素子)が実装されている。
【0051】
(1.1.2:蓋体L1)
蓋体L1は、外装体(外カバー)L11と、操作パネルユニットL12と、マイコン基板MB1と、安全弁ユニットL13と、調圧ユニットL14と、内蓋L15と、補強部材L16と、を備える。
【0052】
≪外装体L11≫
外装体(外カバー)L11は、蓋体L1の外形を主に構成している。蓋体L1の内部には、操作パネルユニットL12、内蓋L15等が収容されている。
【0053】
≪操作パネルユニットL12≫
操作パネルユニットL12は、例えば、タッチパネル機能付き液晶パネルにより構成される。操作パネルユニットL12は、表示面に所定の表示を行うとともに、ユーザーのタッチ操作により、炊飯器1000の所定の機能を実行させるためのユーザーインターフェース機能を実現する。操作パネルユニットL12は、例えば、その上面が外装体L11の上側に露出するように配設されている。
【0054】
≪マイコン基板MB1≫
マイコン基板MB1は、例えば、長方形の板状(平板状)の外形を有している。マイコン基板MB1は、例えば、操作パネルユニットL12の下方に配置されている。マイコン基板MB1は、絶縁性基板の表面および裏面の少なくとも何れかに、導電性材料で形成された回路パターンを有している。マイコン基板MB1には、マイコン(メインマイコン)、操作パネルユニットL12の所定の機能を実現するための制御回路、電子部品等が実装されている。
【0055】
≪安全弁ユニットL13≫
安全弁ユニットL13は、内鍋InP1の中の圧力を調整するための機能部であり、例えば、内鍋InP1に連通する通気孔と、当該通気孔を閉塞する位置および解放する位置に移動可能なリリーフ弁(安全弁)と、当該リリーフ弁(安全弁)を開閉させるための機構を駆動するためのソレノイド(電磁弁)とを備える。安全弁ユニットL13は、例えば、内鍋InP1の中の圧力が一定以上の高圧に上昇した場合に、内鍋InP1に連通する通気孔を開放するように、リリーフ弁を移動させ、内鍋InP1の内部の異常昇圧を防止する機能を実現させる。
【0056】
安全弁ユニットL13は、
図6に示すように、ソレノイドL131と、弁組立体132とを備える。
【0057】
ソレノイドL131は、コイルと、プランジャー(可動鉄心)と、フレームと、戻りバネとを備え、コイルに電流を流すことで磁界を発生させ、磁性体のプランジャー(可動鉄心)をフレーム側へ吸引させることができる電気部品(アクチュエータの一種)である。
【0058】
ソレノイドL131では、通電時に(コイルに電流を流している状態において)、プランジャーを第1位置に移動させ、非通電時に(コイルに電流を流していない状態において)、プランジャーを第2位置に移動させる。
【0059】
そして、安全弁ユニットL13は、ソレノイドL131に通電し、プランジャーを第1位置に移動させることで、リリーフ弁を開放状態(内鍋InP1の内部の圧力が一定以上になったときに、内鍋InP1に連通する通気孔を開くことができる状態)とし、ソレノイドL131に通電せず、プランジャーを第2位置に移動させることで、リリーフ弁を閉塞状態(内鍋InP1に連通する通気孔を閉じた状態)とする構成を有している。
【0060】
弁組立体L132は、リリーフ弁と、ソレノイドL131と連動してリリーフ弁を移動させる機構(これを「弁移動機構」という)とを有している。弁組立体L132は、内鍋InP1に連通する通気孔を覆う位置に配設される。
【0061】
リリーフ弁は、ソレノイドL131に通電し、ソレノイドL131のプランジャーが第1位置に移動すると、弁移動機構により、内鍋InP1に連通する通気孔を閉塞する位置に移動される。
【0062】
また、リリーフ弁は、ソレノイドL131が非通電状態となり、ソレノイドL131のプランジャーが第2位置に移動すると、弁移動機構により、内鍋InP1に連通する通気孔を開放可能な位置に移動される。
【0063】
なお、安全弁ユニットL13は、ソフトウェア(例えば、サブマイコンからの制御信号)および/またはハードウェア(例えば、蓋状態検知センサーの検出結果に基づいて生成される制御信号)により、制御されうる。
【0064】
≪調圧ユニットL14≫
調圧ユニットL14は、内鍋InP1の中の圧力を調整するための機能部であり、例えば、内鍋InP1に連通する通気孔と、当該通気孔の開閉状態を調整する閉塞弁と、当該閉塞弁の開閉状態を多段階制御することで内鍋InP1の中の圧力を段階的に調整する圧力制御部L141と、圧力制御部L141を駆動するためのステッピングモーターL142とを備える。
【0065】
調圧ユニットL14では、ステッピングモーターL142により、圧力制御部L141を段階的に駆動制御することで、例えば、閉塞弁にかかる押圧力を段階的に調整し、それによって、内鍋InP1の中の圧力を段階的に調整する。
【0066】
≪内蓋L15≫
内蓋L15は、内鍋InP1の上部を覆って密閉するための部材であり、蓋体L1の下側に脱着可能に取り付けられている。
【0067】
≪補強部材L16≫
補強部材L16は、炊飯器1000の使用時の内圧に耐えることがえきるように蓋体L1を補強するための部材であり、蓋体L1内に配設される。また、補強部材L16には、
図7に示すように、ツメ部L1cが接続されている。
【0068】
<1.2:圧力安全システムの構成>
次に、炊飯器1000において使用される圧力安全システム100の構成について説明する。圧力安全システム100は、炊飯器1000において、蓋体L1の状態が異常状態(例えば、半がかり状態(半ロック状態))であっても、内鍋InP1内の圧力が高圧となり危険な状態となることを適切に防止するためのシステムであり、ソフトウェア(例えば、マイコン処理)とハードウェアの組み合わせで炊飯器1000の安全性を担保するためのシステムである。
【0069】
図12は、第1実施形態の炊飯器1000において使用される圧力安全システム100の概略構成図(機能ブロック図)である。
【0070】
図13は、第1実施形態の炊飯器1000において使用される圧力安全システム100の回路構成例(一例)である。
【0071】
図14は、第1実施形態の炊飯器1000において使用される圧力安全システム100の動作状態を示す真理値表である。
【0072】
(1.2.1:圧力安全システムの機能的構成)
まず、圧力安全システム100の機能的構成について、説明する。
【0073】
圧力安全システム100は、
図12に示すように、蓋状態検知センサーB13と、検知回路11と、マイコン12(例えば、サブマイコン)と、ソレノイド駆動回路13と、ソレノイドL131とを備える。
【0074】
蓋状態検知センサーB13は、蓋体L1の本体B1に対する係止状態を検知するためのセンサーであり、例えば、フォトインタラプタを用いて実現される。ここでは、蓋状態検知センサーB13がフォトインタラプタを用いて実現される場合について、説明する。蓋状態検知センサーB13は、
図13に示すように、発光素子(発光ダイオード)(
図11のB13aにそうそう)と、受光素子(フォトトランジスタ)(
図11のB13bに相当)とから構成されており、発光素子から照射された光を受光素子が受けると、受光素子のフォトトランジスタがON状態となる。一方、発光素子から照射された光が途中で遮られ、受光素子が受けることができない場合、受光素子のフォトトランジスタがOFF状態となる。蓋状態検知センサーB13では、上記動作原理により、
図11の左図に示すように、蓋体L1が正常状態(蓋ロック状態または蓋オープン状態)である場合、蓋状態検知センサーB13の受光素子のフォトトランジスタがON状態となり、一方、
図11の右図に示すように、蓋体L1が異常状態(蓋半ロック状態)である場合、蓋状態検知センサーB13の受光素子のフォトトランジスタがOFF状態となる。
【0075】
検知回路11は、蓋状態検知センサーB13の検知状態を示す信号Det_half_lockを生成し、当該信号Det_half_lockをマイコン12およびソレノイド駆動回路13に出力する。
【0076】
マイコン12(例えば、サブマイコン)は、例えば、制御基板CB1上に実装されており、炊飯器1000の各機能部を制御する。マイコン12は、例えば、マイクロプロセッサにより実現される。マイコン12は、検知回路11から出力される信号Det_half_lockを入力し、当該信号Det_half_lockの信号値(蓋状態検知センサーB13の検出結果)に応じたソフトウェア処理(マイコン処理)を実行する。
【0077】
また、マイコン12は、ソレノイドL131を駆動させるための信号Ctl_slndを生成し、ソレノイド駆動回路13に出力する。
【0078】
ソレノイド駆動回路13は、検知回路11から出力される信号Det_half_lockと、マイコン12から出力される信号Ctl_slndとを入力する。ソレノイド駆動回路13は、信号Det_half_lockと、信号Ctl_slndとに基づいて、ソレノイドL131を駆動するための信号Drv_slndを生成し、当該信号Drv_slndをソレノイドL131に出力する。
【0079】
ソレノイドL131は、安全弁ユニットL13の構成要素であり、ソレノイドL131のコイルL131.coilに電流を流すと(通電状態にすると)、リリーフ弁(安全弁)が閉塞状態(内鍋InP1に連通する通気孔を閉じた状態)となり、一方、ソレノイドL131のコイルL131.coilに電流を流さないと(非通電状態にすると)、リリーフ弁(安全弁)が開放状態(内鍋InP1の内部の圧力が一定以上になったときに、内鍋InP1に連通する通気孔を開くことができる状態)となる。
【0080】
(1.2.2:圧力安全システムの回路構成)
次に、圧力安全システム100の回路構成(一例)について、
図13を参照しながら説明する。
【0081】
圧力安全システム100は、炊飯器1000の主電源(例えば、20V電源)の電源系統である電源Vcc1(例えば、5V電源)と、主電源とは別電源系統である補助電源(例えば、12V電源)とを用いて、圧力安全システム100の回路に電源供給する。
【0082】
圧力安全システム100は、
図13に示すように、蓋状態検知センサーB13と、プルアップ抵抗R1と、マイコン12と、デジタルトランジスタDtr1と、電界効果トランジスタpFETと、デジタルトランジスタDtr2と、ソレノイドL131(コイルL131.coil)と、ダイオードD1と、を備える。
【0083】
蓋状態検知センサーB13は、発光素子を構成する発光ダイオードと、受光素子を構成するフォトトランジスタとを備えるフォトインタラプタである。
【0084】
蓋状態検知センサーの発光ダイオードは、カソードが電源Vcc2に接続されており、アノードがGNDに接続されている。
【0085】
蓋状態検知センサーのフォトトランジスタは、コレクタがプルアップ抵抗R1、マイコン12の入力端子In1、および、電界効果トランジスタpFETのゲートに接続されており、エミッタがGNDに接続されている。
【0086】
プルアップ抵抗R1は、一端が電源Vcc1に接続されており、他端が蓋状態検知センサーのフォトトランジスタのコレクタ、および、電界効果トランジスタpFETのゲートに接続されている。
【0087】
マイコン12は、入力端子In1と、出力端子Out1とを有する。入力端子In1は、フォトトランジスタのコレクタ、および、電界効果トランジスタpFETのゲートに接続されている。出力端子Out1は、デジタルトランジスタDtr1のベース(デジタルトランジスタのベース側の抵抗を介してベース)に接続されている。マイコン12は、入力端子In1から、信号Det_half_lockを入力し、出力端子Out1から信号Ctl_slndを出力する。
【0088】
なお、信号Det_half_lockの論理(信号値)は、下記の通りである。
信号Det_half_lockの論理:
蓋状態検知センサーB13が蓋体L1の異常状態を検知した場合、H(5V)
蓋状態検知センサーB13が蓋体L1の正常状態を検知した場合、L(0V)
また、信号Ctl_slndの論理(信号値)は、下記の通りである。
信号Ctl_slndの論理:
ソレノイドL131をON状態とする場合:L(0V)
ソレノイドL131をOFF状態とする場合:H(0V)
デジタルトランジスタDtr1は、pnp型トランジスタと、エミッタ-ベース間に配置された抵抗と、ベースに一端が接続された抵抗とを有する。デジタルトランジスタDtr1のエミッタは、電源Vcc1に接続される。デジタルトランジスタDtr1のベースには、(ベース側のデジタルトランジスタ用抵抗を介して)、マイコン12から出力される信号Ctr_slndが入力される。デジタルトランジスタDtr1のコレクタは、電界効果トランジスタpFETのドレインに接続される。
【0089】
電界効果トランジスタpFETは、pchの電界効果トランジスタであり、ゲートがフォトトランジスタのコレクタ、および、プルアップ抵抗R1の一端(電源Vcc1と反対側の端部)に接続される。電界効果トランジスタpFETのドレインは、デジタルトランジスタDtr1のコレクタに接続される。電界効果トランジスタpFETのソースは、デジタルトランジスタDtr2の(デジタルトランジスタ用のベース側抵抗を介して)ベースに接続される。
【0090】
デジタルトランジスタDtr2は、npn型トランジスタと、エミッタ-ベース間に配置された抵抗と、ベースに一端が接続された抵抗とを有する。デジタルトランジスタDtr2のエミッタは、GNDに接続される。デジタルトランジスタDtr2のベースは、(ベース側のデジタルトランジスタ用抵抗を介して)、電界効果トランジスタpFETのソースに接続される。デジタルトランジスタDtr2のコレクタは、ソレノイドL131のコイルL131.coilの一端に接続される。
【0091】
ソレノイドL131のコイルL131.coilは、一端がデジタルトランジスタDtr2のコレクタに接続され、他端がダイオードD1のアノードに接続される。
【0092】
ダイオードD1は、逆流防止用のダイオードであり、カソードが電源Vcc2に接続され、アノードがソレノイドL131のコイルL131.coilの他端(デジタルトランジスタDtr2と反対側の端部)に接続される。
【0093】
なお、検知回路11は、電源Vcc2、電源Vcc1、プルアップ抵抗R1、GNDにより構成される。ソレノイド駆動回路13は、電源Vcc1、デジタルトランジスタDtr1、電界効果トランジスタpFET、デジタルトランジスタDtr2により構成される。
【0094】
<1.3:圧力安全システムの動作>
次に、圧力安全システム100の動作について、説明する。
【0095】
以下では、圧力安全システム100の動作について、(1)蓋体L1の本体B1に対する係合状態が正常状態(蓋ロック状態、または、蓋オープン状態)である場合と、(2)蓋体L1の本体B1に対する係合状態が異常状態(蓋半ロック状態)である場合とに分けて説明する。
【0096】
(1.3.1:正常状態の動作)
まず、蓋体L1の本体B1に対する係合状態が正常状態(蓋ロック状態、または、蓋オープン状態)である場合の圧力安全システム100の動作について、説明する。
【0097】
蓋体L1の本体B1に対する係合状態が正常状態(蓋ロック状態、または、蓋オープン状態)である場合、
図11の左図に示すように、開閉レバー機構B12の係止部材B122と、蓋体L1のツメ部L1cとが正常に係合している。この状態において、
図11の左図に示すように、係止部材B122の遮光部B122bは、蓋状態検知センサーB13の発光素子B13aから受光素子B13bへの光を遮らない場所に位置している。
【0098】
したがって、蓋状態検知センサーB13の発光素子B13aからの光が受光素子B13bに届く。つまり、蓋状態検知センサーB13の発光ダイオードからの光がフォトトランジスタのベースへ照射され、フォトトランジスタがON状態となる。これにより、
図13に示す回路において、フォトトランジスタのコレクタの電圧(電界効果トランジスタpFETのベースの電圧)がGND電位(0V)となる。すなわち、信号Det_half_lockの信号値がLレベル(=0V)となる。
【0099】
マイコン12は、信号値がLレベルである信号Det_half_lockを、入力ポートIn1を介して入力し、炊飯器1000において、蓋状態が正常であることを把握し、それに応じた処理を実行する。
【0100】
また、マイコン12は、(1)ソレノイドL131を駆動させる場合、信号値をL(=0V)にして、信号Ctl_slndを出力端子Out1から出力し、(2)ソレノイドL131を駆動させない場合、信号値をH(=5V)にして、信号Ctl_slndを出力端子Out1から出力する。
【0101】
デジタルトランジスタDtr1は、(1)マイコン12から、ソレノイドL131を駆動させることを示す信号Ctl_slnd(信号値がL(=0V)の信号Ctl_slnd)が出力されている場合、ON状態となり、(2)マイコン12から、ソレノイドL131を駆動させないことを示す信号Ctl_slnd(信号値がH(=5V)の信号Ctl_slnd)が出力されている場合、OFF状態となる。
【0102】
電界効果トランジスタpFETは、ゲート電圧が0Vであるので(Det_half_lock=L(=0V)であるので)、ON状態となる。
【0103】
デジタルトランジスタDtr2は、電界効果トランジスタpFETがON状態であるので、(1)マイコン12からソレノイドL131を駆動させることを示す信号Ctl_slnd(信号値がL(=0V)の信号Ctl_slnd)が出力されている場合、ON状態となり、(2)マイコン12からソレノイドL131を駆動させないことを示す信号Ctl_slnd(信号値がH(=5V)の信号Ctl_slnd)が出力されている場合、OFF状態となる。
【0104】
そして、マイコン12からソレノイドL131を駆動させることを示す信号Ctl_slnd(信号値がL(=0V)の信号Ctl_slnd)が出力されている場合、デジタルトランジスタDtr2がON状態であるので、ソレノイドL131のコイルL131.coilに電流が流れ、ソレノイドL131は通電状態となる。つまり、マイコン12の制御(ソフトウェア処理)により、安全弁ユニットL13のリリーフ弁(安全弁)を閉塞状態とすることができる。
【0105】
一方、マイコン12からソレノイドL131を駆動させないことを示す信号Ctl_slnd(信号値がH(=5V)の信号Ctl_slnd)が出力されている場合、デジタルトランジスタDtr2がOFF状態であるので、ソレノイドL131のコイルL131.coilに電流が流れず、ソレノイドL131は非通電状態となる。つまり、マイコン12の制御(ソフトウェア処理)により、安全弁ユニットL13のリリーフ弁(安全弁)を開放状態とすることができる。
【0106】
(1.3.2:異常状態の動作)
まず、蓋体L1の本体B1に対する係合状態が異常状態(蓋半ロック状態)である場合の圧力安全システム100の動作について、説明する。
【0107】
蓋体L1の本体B1に対する係合状態が異常状態(蓋半ロック状態)である場合、
図11の右図に示すように、開閉レバー機構B12の係止部材B122と、蓋体L1のツメ部L1cとが正常に係合していない(半がかり状態)。この状態において、
図11の右図に示すように、係止部材B122の遮光部B122bは、蓋状態検知センサーB13の発光素子B13aから受光素子B13bへの光を遮る場所に位置している。
【0108】
したがって、蓋状態検知センサーB13の発光素子B13aからの光が受光素子B13bに届かない。つまり、蓋状態検知センサーB13の発光ダイオードからの光がフォトトランジスタのベースへ照射されず、フォトトランジスタがOFF状態となる。これにより、
図13に示す回路において、フォトトランジスタのコレクタの電圧(電界効果トランジスタpFETのベースの電圧)が電源Vcc1と同じ電位(5V)となる。すなわち、信号Det_half_lockの信号値がHレベル(=5V)となる。
【0109】
マイコン12は、信号値がHレベルである信号Det_half_lockを、入力ポートIn1を介して入力し、炊飯器1000において、蓋状態が異常であることを把握し、それに応じた処理を実行する。
【0110】
また、マイコン12は、(1)ソレノイドL131を駆動させる場合、信号値をL(=0V)にして、信号Ctl_slndを出力端子Out1から出力し、(2)ソレノイドL131を駆動させない場合、信号値をH(=5V)にして、信号Ctl_slndを出力端子Out1から出力する。
【0111】
デジタルトランジスタDtr1は、(1)マイコン12から、ソレノイドL131を駆動させることを示す信号Ctl_slnd(信号値がL(=0V)の信号Ctl_slnd)が出力されている場合、ON状態となり、(2)マイコン12から、ソレノイドL131を駆動させないことを示す信号Ctl_slnd(信号値がH(=5V)の信号Ctl_slnd)が出力されている場合、OFF状態となる。
【0112】
電界効果トランジスタpFETは、ゲート電圧が5Vであるので(Det_half_lock=H(=5V)であるので)、OFF状態となる。
【0113】
デジタルトランジスタDtr2は、電界効果トランジスタpFETがOFF状態であり、ベースの電位がGND電位となり、OFF状態となる。したがって、ソレノイドL131のコイルL131.coilには電流が流れず、ソレノイドL131は非通電状態となる。これにより、安全弁ユニットL13のリリーフ弁(安全弁)を開放状態となる。
【0114】
つまり、圧力安全システム100では、蓋状態検知センサーB13により、蓋体L1の本体B1に対する係合状態が異常状態(蓋半ロック状態)であると検知された場合、マイコン12からの制御信号にかかわらず、ソレノイドL131は非通電状態となり、安全弁ユニットL13のリリーフ弁(安全弁)を開放状態となる。したがって、例えば、炊飯器1000のマイコン12が正常に動作していない場合であっても(マイコン12によるソフトウェア処理を正常に実行できない場合であっても)、蓋状態検知センサーB13により、蓋体L1の本体B1に対する係合状態が異常状態(蓋半ロック状態)であると検知された場合、安全弁ユニットL13のリリーフ弁(安全弁)を開放状態とすることができ、その結果、炊飯器1000の安全性が担保される。すなわち、炊飯器1000のマイコン12が正常に動作していない場合であっても、蓋状態検知センサーB13により、蓋半ロック状態等の異常状態を検知した場合、安全弁ユニットL13のリリーフ弁(安全弁)を開放状態とし、内鍋InP1が異常昇圧を適切に防止できる。
【0115】
以上のように、圧力安全システム100では、
図14に示すように、(1)マイコン12から出力される信号Ctl_slnd(ソレノイド駆動信号)がソレノイドL131をON状態とさせる信号であり、かつ、(2)補助電源Vcc2(例えば、12V電源)がON状態(電力を供給している状態)であり、かつ、(3)蓋状態が正常状態である(蓋状態検知センサーB13の検知結果が「正常状態」である)場合のみ(
図14の真理値表の1行目の状態)、ソレノイドL131が通電状態となり、安全弁ユニットL13のリリーフ弁(安全弁)を閉塞状態とすることができる。それ以外の場合、ソレノイドL131は非通電状態となり、安全弁ユニットL13のリリーフ弁(安全弁)は開放状態となる。
【0116】
このように、炊飯器1000の圧力安全システム100では、どのような場合であっても(炊飯器1000の異常状態を検知するソフトウェア処理(マイコン処理)が正常に実行できない場合であっても)、適切に炊飯器1000の異常状態(例えば、蓋半ロック状態)を検知し、安全性を担保することができる。
【0117】
≪第1変形例≫
次に、第1実施形態の第1変形例について、説明する。なお、上記実施形態と同様の部分については、同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0118】
図15は、第1実施形態の第1変形例の圧力安全システム100Aの概略構成図(機能ブロック図)である。
【0119】
本変形例の圧力安全システム100Aは、
図15に示すように、第1実施形態の圧力安全システム100において、マイコン12をマイコン12Aに置換し、STモーター駆動回路14と、ステッピングモーターL142とを追加した構成を有している。
【0120】
マイコン12Aは、マイコン12と同様の機能を有しており、さらに、検知回路11から出力される信号Ctl_half_lockに基づいて、ステッピングモーターL142を駆動制御するための信号Ctr_s_mtrを生成し、生成した信号Ctr_s_mtrをSTモーター駆動回路14に出力する。
【0121】
STモーター駆動回路14は、マイコン12Aから出力される信号Ctr_s_mtrを入力し、信号Ctr_s_mtrに基づいて、ステッピングモーターL142を駆動する信号Drv_s_mtrをステッピングモーターL142に出力する。
【0122】
ステッピングモーターL142は、調圧ユニットL14の構成要素であり、圧力制御部を駆動するためのモーター(ステッピングモーター)である。ステッピングモーターL142は、STモーター駆動回路14から出力される信号Drv_s_mtrにより、駆動制御される。
【0123】
次に、以上のように構成された圧力安全システム100Aの動作について、説明する。
【0124】
圧力安全システム100Aでは、マイコン12Aが正常に動作している場合(マイコン12Aにより正常にソフトウェア処理が実行できる場合)であって、蓋状態検知センサーB13により、蓋状態の異常状態が検知された場合、マイコン12Aは、検知回路11からの信号Det_half_lockの信号値により、蓋状態が異常状態であることを把握し、ステッピングモーターL142をリセット状態とするための信号Ctr_s_mtrを生成し、生成した信号Ctr_s_mtrをSTモーター駆動回路14に出力する。
【0125】
STモーター駆動回路14は、マイコン12Aから、ステッピングモーターL142をリセット状態とするための信号Ctr_s_mtrを受信し、ステッピングモーターL142をリセット状態とするための信号Drv_s_mtrを生成し、当該信号Drv_s_mtrにより、ステッピングモーターL142を駆動制御する。これにより、ステッピングモーターL142は、リセット状態となる。
【0126】
このように、圧力安全システム100Aでは、マイコン12Aが正常に動作している場合(マイコン12Aにより正常にソフトウェア処理が実行できる場合)であって、蓋状態検知センサーB13により、蓋状態の異常状態が検知された場合、マイコン12Aの制御により、安全弁ユニットL13のリリーフ弁を開放状態とするとともに、ステッピングモーターL142をリセット状態にすることができる。これにより、圧力安全システム100Aでは、次に、炊飯器1000で加圧処理を実行するときに、ステッピングモーターL142による調圧をリセット状態から開始できるので、加圧処理を適切に実行することができる。
【0127】
≪まとめ≫
(1)
以上のように、圧力安全システム100、100Aでは、炊飯器1000の蓋体L1の異常状態(蓋体L1の半ロック状態)の検知から安全弁ユニットL13での圧力開放までの流れを、ソフトウェアを介さずに実施することで、マイコンの不調時にも、炊飯器1000において異常状態(半ロック状態)で加圧が継続されることがなくなる。その結果、圧力安全システム100、100Aを採用した炊飯器1000では、加圧時に蓋体L1が開く等の危険な状態が発生することを防止でき、製品の安全性を向上できる。
【0128】
(2)
圧力安全システム100Aでは、マイコンが正常に動作しているときは、蓋体L1の異常状態(半ロック状態)を検知すると、安全弁ユニットL13のリリーフ弁(安全弁)を開放して圧力を抜くとともに、ステッピングモーターL142の原点出し(リセット)を行い(リセット状態に戻し)、次回の加圧時に、調圧ユニットL14において、ステッピングモーターL142による調圧が適切に行われるようにすることができる。
【0129】
(3)
圧力安全システム100、100Aでは、ハードウェア(蓋状態検知センサーB13、検知回路11、ソレノイド駆動回路13)で、マイコン12の異常時であっても、安全弁ユニットL13のリリーフ弁(安全弁)の圧力開放を行うことができる。
【0130】
(4)
圧力安全システム100、100Aでは、電源回路(例えば、補助電源(12V電源(例えば、ステッピングモーターL142、ソレノイドL131に電力供給する電源)))が停止している間は、ソレノイドL131に通電されず、安全弁ユニットL13のリリーフ弁が開放状態となるため(
図14を参照)、圧力安全システム100、100Aを採用する炊飯器1000の製品の安全性を高めることができる。
【0131】
(5)
圧力安全システム100Aを採用する炊飯器1000では、マイコン12が正常動作する状態となってから、調圧ユニットL14による加圧が再度行えるようになるため、炊飯器1000の製品の安全性が向上する。
[他の実施形態]
上記実施形態(変形例を含む)の圧力安全システム100、100Aは、一例であり、機能的構成、回路構成は、上記に限定されない。例えば、
図14に示す真理値表を満たす他の機能的構成、回路を採用し、圧力安全システムを実現するようにしてもよい。
【0132】
また、上記実施形態において、「同じ」は、概ね同じであることを含む概念である。
【0133】
また、上記実施形態において、構成部材のうち、上記実施形態に必要な主要部材のみを簡略化して示している部分がある。したがって、上記実施形態において明示されなかった任意の構成部材を備えうる。また、上記実施形態および図面において、各部材の寸法は、実際の寸法および寸法比率等を忠実に(厳密に)表したものではない部分がある。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で寸法や寸法比率等の変更は可能である。
【0134】
なお、本発明の具体的な構成は、上記実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更および修正が可能である。
【符号の説明】
【0135】
1000 炊飯器(加圧調理器)
100、100A 圧力安全システム
B13 蓋状態検知センサー
11 検知回路
12、12A マイコン
13 ソレノイド駆動回路
14 STモータ駆動回路
L13 安全弁ユニット
L131 ソレノイド
L14 調圧ユニット
L142 ステッピングモーター
Vcc2 補助電源