(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】ラマン増幅器の制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
H04B 10/293 20130101AFI20240403BHJP
G02F 1/35 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
H04B10/293
G02F1/35 501
(21)【出願番号】P 2020132468
(22)【出願日】2020-08-04
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】宿南 宣文
(72)【発明者】
【氏名】竹山 智明
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-345070(JP,A)
【文献】特開2009-031796(JP,A)
【文献】特開2003-139656(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0242379(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/293
G02F 1/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバの一端から他端に伝送される光信号を、前記一端に励起光を入力して増幅する前方励起ラマン増幅器を制御する装置であって、
前記励起光の増幅された自然散乱光の散乱光強度に基づいて、前記前方励起ラマン増幅器のラマン利得を設定する第1利得設定部と、
前記光ファイバから出力される前記光信号の光強度に基づいて、前記ラマン利得を設定する第2利得設定部と、
前記光ファイバにおける前記光信号の疎通に関する疎通関連情報を取得し、取得された前記疎通関連情報が前記光信号の疎通を示していない場合には、前記第1利得設定部に前記ラマン利得を設定させ、取得された前記疎通関連情報が前記光信号の疎通を示している場合には、前記第2利得設定部に前記ラマン利得を設定させる利得設定制御部とを有する
前方励起ラマン増幅器の制御装置。
【請求項2】
前記第1利得設定部は、前記ラマン利得が目標値に一致する場合の前記自然散乱光の強度を算出し、前記散乱光強度が算出された前記強度になるように前記励起光の励起光強度を調節することで、前記ラマン利得を設定し、
前記第2利得設定部は、前記光ファイバから出力される前記光信号の光強度に基づいて算出される前記ラマン利得が前記目標値になるように前記励起光強度を調節することで、前記ラマン利得を設定することを
特徴とする請求項1に記載の前方励起ラマン増幅器の制御装置。
【請求項3】
前記利得設定制御部は、前記光ファイバおよび前記前方励起ラマン増幅器を有する伝送システムが運用中か否かを示す運用情報を取得し、前記運用情報が前記伝送システムの運用中を示している場合には更に、前記光信号が伝送されているか否かを示す伝送情報を更に取得し、
前記運用情報および前記伝送情報はそれぞれ、前記疎通関連情報であり、
前記第1利得設定部は、前記運用情報が前記伝送システムの運用中を示さない場合および前記運用情報が前記伝送システムの運用中を示すと共に前記伝送情報が前記光信号の伝送中を示さない場合には、前記利得設定制御部によって前記ラマン利得を設定させられ、
前記第2利得設定部は、前記運用情報が前記伝送システムの運用中を示し更に前記伝送情報が前記光信号の伝送中を示す場合には、前記利得設定制御部によって前記ラマン利得を設定させられることを
特徴とする請求項1又は2に記載の前方励起ラマン増幅器の制御装置。
【請求項4】
前記伝送システムは更に、別の励起光を前記他端に入力して、前記光信号を増幅する後方励起ラマン増幅器を有し、
前記第1利得設定部は、前記運用情報が前記伝送システムの運用中を示すと共に前記伝送情報が前記光信号の伝送中を示さない場合には、前記光ファイバの前記他端に前記別の励起光が入力されているか否かを示す励起情報を取得し、
前記第1利得設定部は更に、前記励起情報が前記別の励起光の入力中を示す場合には、前記ラマン利得を設定する前に、前記後方励起ラマン増幅器に前記別の励起光の入力を中断させることを
特徴とする請求項3に記載の前方励起ラマン増幅器の制御装置。
【請求項5】
更に、前記散乱光強度に応じた信号を出力する散乱光モニタを有し、
前記第1利得設定部は、出力された前記信号から前記散乱光強度を取得し、取得された前記散乱光強度が算出された前記強度になるように前記励起光強度を調節することを特徴とする
請求項2に記載の前方励起ラマン増幅器の制御装置。
【請求項6】
更に、前記光ファイバから出力される前記光信号の光強度を示す光強度情報を受信する受信機を有し、
前記第2利得設定部は、受信された前記光強度情報に基づいて前記ラマン利得を算出し、算出された前記ラマン利得が前記目標値になるように前記励起光強度を調節することを特徴とする
請求項2に記載の前方励起ラマン増幅器の制御装置。
【請求項7】
光ファイバの一端から他端に伝送される光信号を、前記一端に励起光を入力して増幅する前方励起ラマン増幅器を制御する方法であって、
前記光信号が疎通していない場合には、前記励起光の増幅された自然散乱光の散乱光強度に基づいて前記前方励起ラマン増幅器のラマン利得を算出し、算出された前記ラマン利得が前記ラマン利得の目標値に一致するように前記前方励起ラマン増幅器を制御し、
前記光信号が疎通している場合には、前記光ファイバから出力される前記光信号の光強度に基づいて前記ラマン利得を算出し、算出された前記ラマン利得が前記目標値に一致するように前記前方励起ラマン増幅器を制御する
前方励起ラマン増幅器の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラマン増幅器の制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
WDM(Wavelength Division Multiplexing:波長分割多重)伝送システムでは、広い波長帯域で光信号を増幅できる希土類添加ファイバ増幅器(例えば、エルビウム添加ファイバ増幅器)が用いられる。希土類添加ファイバ増幅器を用いるWDM伝送システムに、更にラマン増幅器を用いる技術が提案されている(例えば、特許文献1~6および非特許文献1参照)。ラマン増幅器は、誘導ラマン散乱により光信号を増幅する増幅器である。ラマン増幅器は、励起効率は悪いが低雑音を特徴とする光増幅器である。
【0003】
ラマン増幅器は、後方励起ラマン増幅器と前方励起ラマン増幅器とに分類される。後方励起ラマン増幅器は、光ファイバにWDM信号の伝搬方向とは逆方向の励起光を入力することでWDM信号を増幅する(例えば、特許文献1~3,5,6参照)。前方励起ラマン増幅器は、光ファイバにWDM信号の伝搬方向と同方向の励起光を入力することでWDM信号を増幅する(例えば、特許文献3,4参照)。
【0004】
WDM伝送システムにおけるOSNR(Optical Signal Noise Ratio:光信号雑音比)の劣化の主な原因は、希土類添加ファイバ増幅器が発生するASE(Amplified Spontaneous Emission:増幅された自然放出光)である。ASEによるOSNRの劣化は、WDM信号を希土類添加ファイバ増幅器で増幅する前に、後方励起ラマン増幅器で増幅することで改善できる。WDM信号は低雑音の後方励起ラマン増幅器により増幅された後に、利得の大きい希土類添加ファイバ増幅器により増幅される。WDM信号はその後、光トランシーバにより光電変換される。
【0005】
ASEによるOSNRの劣化は、双方向ラマン増幅により更に改善できる(例えば、特許文献3参照)。双方向ラマン増幅は、WDM信号を光ファイバの入力側で前方励起ラマン増幅器により増幅しながら、光ファイバの出力側でWDM信号を更に後方励起ラマン増幅器により増幅する技術である。
【0006】
提案されている技術(例えば、特許文献1~6参照)では、ラマン増幅器の利得は種々の方法で制御される。しかし、いずれの提案でもラマン増幅器の利得は、伝送ファイバ(すなわち、WDM信号が伝送される光ファイバ)を介してWDM信号が疎通されている時およびWDM信号が疎通されていない時のいずれか一方のみで設定される(特許文献1~6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-287307号公報
【文献】特開2006-189465号公報
【文献】特開2005-303070号公報
【文献】特開2006-246053号公報
【文献】特開2001-109025号公報
【文献】特開2013-247406号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】M. Morimoto, H. Ogoshi, J. Yoshida, S. Takasaka, A. Sano and Y. Miyamoto, “Co-Propagating Dual-Order Distributed Raman Amplifier Utilizing Incoherent Pumping”, IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS, VOL. 29, NO. 7, APRIL 1, 2017.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
後方励起ラマン増幅器は既に、実用化されている。ラマン増幅器の利得(すなわち、ラマン利得)は励起光のASS(Amplified Spontaneous Raman Scattering:増幅された自然ラマン散乱光)の光強度に略比例する。従って、後方励起ラマン増幅器の利得は、励起光により発生するASSの光強度に基づいて設定される。
【0010】
具体的には先ず、励起光とは逆方向に散乱されるASS(以下、後方ASSと呼ぶ)の光強度とラマン利得との関係式から、ラマン利得の目標値に相当する後方ASSの光強度の目標値(以下、ASS目標値と呼ぶ)が算出される。算出されたASS目標値に実際の後方ASSの光強度が一致するように励起光強度(励起光の光パワー)が調節されることで、後方励起ラマン増幅器の利得が設定される。
【0011】
ASSの波長帯域とWDM信号の波長帯域は、互いに重なっている。従って、WDM信号が疎通(すなわち伝送)されている伝送ファイバに後方励起ラマン増幅器の励起光が入力されると、後方ASSとWDM信号が伝送ファイバから一緒に出力されるので、後方ASSの光強度測定が妨げられる。このため、後方励起ラマン増幅器の利得は、WDM信号が疎通されていない時(例えば、WDM伝送システムの立ち上げ時)に設定される。
【0012】
前方励起ラマン増幅器には、励起光源のRIN(Relative Intensity Noise)がWDM信号に乗り移るという後方励起ラマン増幅器にはない問題がある。このため前方励起ラマン増幅器の実用化は遅れていたが、励起光源の改良によりこの問題は解決されつつある(例えば、非特許文献1参照)。
【0013】
このため、前方励起ラマン増幅器は今後、WDM伝送システムに導入されていくと考えられる。具体的には、高ビットレートで動作する次世代の光トランシーバが端局に増設される際に、前方励起ラマン増幅器も一緒に設置されると考えられる。
【0014】
前方励起ラマン増幅器をWDM伝送システムに導入する際に重要なことは、WDM信号が疎通されているか否かに拘わらず、ラマン利得の設定が可能なことである。換言するならば、運用中のWDM伝送システムを止めずに、前方励起ラマン増幅器の利得設定が可能なことが重要である。
【0015】
しかしWDM信号が疎通していると、光コネクタ等によるWDM信号の反射光がASSの光強度測定を妨げて、ASSの光強度に基づくラマン利得の設定が困難になる。そこで本発明は、この様な問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一つの実施の形態では、制御装置は、光ファイバの一端から他端に伝送される光信号を前記一端に励起光を入力して増幅する前方励起ラマン増幅器を制御する装置であって、前記励起光の増幅された自然散乱光の散乱光強度に基づいて前記前方励起ラマン増幅器のラマン利得を設定する第1利得設定部と、前記光ファイバから出力される前記光信号の光強度に基づいて前記ラマン利得を設定する第2利得設定部と、前記光ファイバにおける前記光信号の疎通に関する疎通関連情報を取得し、取得された前記疎通関連情報が前記光信号の疎通を示していない場合には、前記第1利得設定部に前記ラマン利得を設定させ、取得された前記疎通関連情報が前記光信号の疎通を示している場合には、前記第2利得設定部に前記ラマン利得を設定させる利得設定制御部とを有する。
【発明の効果】
【0017】
一つの側面では、本発明によれば、ラマン利得を与える光ファイバを介して光信号が疎通されているか否かに拘わらず、前方励起ラマン増幅器の利得を設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施の形態1の制御装置2が適用されるWDM伝送システム4の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、WDM伝送システム4におけるWDM信号6等の流れを説明する図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1の制御装置2の機能ブロックの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、
図3における情報および信号の流れを示す図である。
【
図5】
図5は、制御装置2のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、散乱光モニタ18のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、WDM信号モニタ34のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、OSC送信機24のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、OSC受信機32のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、前方励起ラマン増幅器26のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、後方励起ラマン増幅器30のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、WDM信号検出モジュール14のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、WDM信号検出モジュール14の別の例を示す図である。
【
図15】
図15は、前方励起ラマン増幅器26の利得設定のために制御装置2が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、前方励起ラマン増幅器26の利得設定のために制御装置2が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図17】
図17は、前方励起ラマン増幅器26の利得設定のために制御装置2が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図18】
図18は、ASS22の光強度に基づく利得設定のために制御装置2が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図19】
図19は、ASS22の光強度に基づく利得設定のために制御装置2が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図20】
図20は、AAS22の強度(すなわち、光パワー)と前方励起ラマン増幅器26のラマン利得の関係の一例を示す図である。
【
図21】
図21は、WDM信号6の光強度に基づく利得設定のために制御装置2が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図22】
図22は、WDM信号6の光強度に基づく利得設定のために制御装置2が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。図面が異なっても同じ構造を有する部分等には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0020】
(実施の形態1)
(1)WDM伝送システム
図1は、実施の形態1の制御装置2が適用されるWDM伝送システム4の一例を示す図である。
図2は、WDM伝送システム4におけるWDM信号6等の流れを説明する図である。
【0021】
WDM伝送システム4は、伝送ファイバ10、伝送ファイバ10により接続された端局A,Bを有する。端局Aは、互いに波長が異なる光信号λ1~λnを送受信する複数の光トランシーバを有する。端局Aは、複数の送信機Txが出力する光信号を合波して、WDM信号6(すなわち、光信号)を出力する合波器12を有する。複数の送信機Txはそれぞれ、別々の光トランシーバに含まれるモジュールである。後述する受信機Rx,Rx’および送信機Tx’についても同様である。合波器12は例えば、AWG(Arrayed Waveguide Grating)である。合波器12は、WSS(Wavelength Selective. Switch)または光カプラであっても良い。
【0022】
端局Aは更に、WDM信号6(
図2参照)を検出するWDM信号検出モジュール14を有する。WDM信号検出モジュール14は例えば、光スプリッタ、光検出器(例えばフォトダイオード、以下同様)、および光検出器から出力される光電流を処理する検出回路を有する。WDM信号検出モジュール14の詳細は、後述する
図13を参照して説明される。他のモジュール(例えば、散乱光モニタ18)についても、同様である。
【0023】
端局Aは更に、WDM信号6を増幅する光ファイバ増幅器16(所謂、Post Amplifier)を有する。光ファイバ増幅器16は例えば、EDFA(Erbium Doped Fiber Amplifier)である。後述する光ファイバ増幅器236,216,36についても同様である。端局Aは更に、後述する励起光20のASS(すなわち、増幅された自然散乱光)22を検出する散乱光モニタ18を有する。
【0024】
増幅された自然ラマン散乱光は、励起光の進行方向と同方向および逆方向それぞれに発生する。ASS22は、励起光20とは逆方向に進行する散乱光(すなわり、後方ASS)である。後述するASS223、ASS222,ASS23も、後方ASSである。
【0025】
散乱光モニタ18は、ASS22の光強度(すなわち、散乱光強度)に応じた信号(例えば、光電流)を出力する。散乱光モニタ18は例えば、光スプリッタおよび光検出器を有する。
【0026】
端局Aは更に、伝送ファイバ10(すなわち、光ファイバ)を介して端局Bに制御装置2からの要求や情報を送信する光送信機24(以下、OSC送信機24と呼ぶ)を有する。OSC送信機24は、光監視チャネル(Optical Supervisory Channel:OSC)を用いて端局Bの光受信機232(以下、OSC受信機と呼ぶ)に制御装置2の要求や情報を送信する。
【0027】
OSC送信機24は例えば、光フィルタおよびOSC SFP Txを有する。OSC SFP Txは、OSC SFP(Small Form-Factor Pluggable)トランシーバの光送信機である。
【0028】
端局Aは更に、伝送ファイバ10の一端E1から他端E2に伝送されるWDM信号6を、一端E1に励起光20を入力して増幅するラマン増幅器(すなわち、前方励起ラマン増幅器)26を有する。前方励起ラマン増幅器26は例えば、光フィルタおよび励起光源を有する。
【0029】
端局Aは更に、前方励起ラマン増幅器26を制御する制御装置2を有する。
図1に示す例では、制御装置2は更に後述する後方励起ラマン増幅器30を制御する。ただし後方励起ラマン増幅器30は、制御装置2以外の装置によって制御されても良い。
【0030】
端局Bは、励起光221(励起光20とは別の励起光)を伝送ファイバ10の他端E2に入力して、WDM信号6を増幅するラマン増幅器(すなわち、後方励起ラマン増幅器)230を有する。後方励起ラマン増幅器230の基本的な構造は、端局Aの前方励起ラマン増幅器26の構造と略同じである。
【0031】
端局Bは更に、端局Aの制御装置2からの要求や情報を伝送ファイバ10介して受信するOSC受信機232を有する。OSC受信機232は例えば、光フィルタおよびOSC SFP Rxを有する。OSC SFP Rxは、OSC SFPトランシーバの光受信機である。
【0032】
端局Bは更に、WDM信号6の光強度に応じた電気信号(例えば、光電流)を出力するWDM信号モニタ234を有する。WDM信号モニタ234の基本的な構造は、端局Aの散乱光モニタ18の構造と略同じである。WDM信号モニタ234は、後方励起ラマン増幅器230のASS223を検出する散乱光モニタでもある。
【0033】
端局Bは更に、後方励起ラマン増幅器230により増幅されたWDM信号6を更に増幅する光ファイバ増幅器236(所謂、Pre Amplifier)を有する。光ファイバ増幅器236の構造は、端局Aの光ファイバ増幅器16の構造と略同じである。
【0034】
端局Bは更に、光ファイバ増幅器236により増幅されたWDM信号を、互いに波長が異なる複数の光信号λ1~λnに分波する分波器238を有する。分波器238は例えば、AWG、WSSおよび光カプラのいずれかであっても良い。
【0035】
端局Bは更に、分波器238により分波された光信号λ1~λnを受信して電気信号に変換する複数の受信機Rx’を有する。
【0036】
端局Bは更に、複数の送信機Tx’、合波器212、WDM信号検出モジュール214、光ファイバ増幅器216、散乱光モニタ218、OSC送信機224、前方励起ラマン増幅器226、および制御装置202を有する。複数の送信機Tx’等の構造および機能は、端局Aの対応する装置およびモジュールの構造および機能と略同じである。例えば複数の送信機Tx’の構造および機能は、端局Aの複数の送信機Txの構造および機能と略同じである。
【0037】
同様に端局Aは、後方励起ラマン増幅器30、OSC受信機32、WDM信号モニタ34、光ファイバ増幅器36、分波器38、および複数の受信機Rxを有する。複数の後方励起ラマン増幅器30等の構造および機能は、端局Bの対応する装置またはモジュールの構造および機能と略同じである。例えば後方励起ラマン増幅器30の構造および機能は、端局Bの後方励起ラマン増幅器230の構造および機能と略同じである。
【0038】
ラマン増幅器(すなわち、前方励起ラマン増幅器および後方励起ラマン増幅器)は、低雑音を特徴とする光増幅器である。WDM信号6は前方励起ラマン増幅器26と後方励起ラマン増幅器230とによって2度増幅されてから、端局Bの光ファイバ増幅器236に入力される。端局Bの光ファイバ増幅器236に入力されるWDM信号6は、この2度の増幅によりOSNRの劣化が抑制されつつ増幅される。従って、端局Bの光ファイバ増幅器236から出力されるWDM信号6のOSNRは高い。
【0039】
WDM伝送システム4は、端局Bの前方励起ラマン増幅器226と端局Aの後方励起ラマン増幅器30との間に配置された伝送ファイバ210を有する。端局Bの複数の送信機Tx’と合波器212により生成されるWDM信号206は、伝送ファイバ210により端局Aに伝送される。WDM信号206は、端局B側では光ファイバ増幅器216と前方励起ラマン増幅器226により増幅され、端局A側では後方励起ラマン増幅器30および光ファイバ増幅器36とにより増幅される。
【0040】
光ファイバ増幅器36等により増幅されたWDM信号206は、分波器38により互いに波長が異なる複数の光信号に分波される。分波器38により分波された光信号は、複数の受信機Rxにより受信される。WDM信号モニタ34は、光ファイバ増幅器36により増幅される前のWDM信号206の光強度に応じた電気信号(例えば、光電流)を出力する。
【0041】
端局Bの前方励起ラマン増幅器226は、励起光220を出力する。励起光220のASS222の一部は、端局Bの散乱光モニタ218により電気信号(例えば、光電流)に変換される。端局Aの後方励起ラマン増幅器30は、励起光21を出力する。励起光21のASS23の一部は、端局AのWDM信号モニタ34により電気信号(例えば、光電流)に変換される。すなわちWDM信号モニタ34は、ASS23の光強度に応じた電気信号を出力する散乱光モニタでもある。
【0042】
端局BのOSC送信機224は、伝送ファイバ210を介して端局Aに制御装置202の要求や情報を送信する。端局AのOSC受信機32は、制御装置202の要求や情報を受信し制御装置2に伝達する。OSC送信機224は、光監視チャネルを用いてOSC受信機32に制御装置202の要求や情報を送信する。端局Bの制御装置202は、前方励起ラマン増幅器226および後方励起ラマン増幅器230を制御する。
【0043】
WDM伝送システム4は更に、制御装置2,202に接続されたネットワーク管理システム(Network Management System:NMS)40を有する。NMS40は例えば、運用情報90(後述する
図4参照)、伝送情報92および励起情報94等を管理している。
【0044】
運用情報90は、WDM伝送システム4が運用中か否かを示す情報である。伝送情報92は、伝送ファイバ10を介してWDM信号6が伝送されているか否かを示す情報である。励起情報94は、伝送ファイバ10の他端に励起光221が入力されているか否かを示す情報である。
【0045】
端局Aの管理システム(図示せず)は、WDM信号6が合波器12から出力されている否かを、WDM信号検出モジュール14を用いて監視する。端局Aの管理システムは、監視結果に基づいて伝送情報92を定期的にNMS40に報告する。伝送情報92はWDM伝送システム4の管理者によって、NMS40に入力されても良い。端局Bの管理システム(図示せず)は後方励起ラマン増幅器230を監視し、監視結果に基づいて励起情報94を定期的にNMS40に報告する。
【0046】
WDM信号6、206の帯域は例えば、1528nm~1567nmである。WDM信号6、206の帯域は、1530nm~1610nmであっても良い。
【0047】
励起光20,21,220,221の波長帯域は、例えば、1420nm~1470nmである。励起光20,21,220,221の波長は、単一(例えば、1450nm)であっても良い。光監視チャネルの波長帯域は例えば、1505nm~1517nmである。
【0048】
(2)構造
(2-1)機能ブロック
図3は、実施の形態1の制御装置2の機能ブロックの一例を示す図である。
図3には、制御装置2に接続された装置等(例えば、NMS40)も破線により示されている。
図4は、
図3における情報および信号の流れを示す図である。
【0049】
図3に示すように制御装置2は、第1利得設定部42a、第2利得設定部42b、および利得設定制御部44を有する。
【0050】
-第1利得設定部42a-
第1利得設定部42aは、励起光20(
図2参照)のASS22の光強度に基づいて、前方励起ラマン増幅器26(
図3参照)のラマン利得を設定する。第1利得設定部42aは例えば、ASS光強度取得部45、ASS目標値算出部46、および第1励起光調節部48aを有する。ASS光強度取得部45等の機能および動作については、後述する(「(3)動作」参照)。
【0051】
ラマン利得は、ASSの光強度(すなわち、光パワー)に略比例する。第1利得設定部42aは、前方励起ラマン増幅器26のラマン利得を設定するため例えば、前方励起ラマン増幅器26のラマン利得が目標値Gtarget(例えば、10dB)に一致する場合のASS22の光強度Pass,targetを算出する。Pass,targetは、ASS22の目標値(すなわち、ASS目標値)である。Pass,targetは例えば、ASS22の光強度とラマン利得との関係式に基づいて算出される。
【0052】
第1利得設定部42aは更に前方励起ラマン増幅器26を制御して、ASS22の光強度がASS目標値P
ass,targetになるように、励起光20の光強度(すなわち、励起光強度)を調節する。ラマン利得の目標値G
targetは例えば、後述する不揮発性メモリ56(
図5参照)に予め記録される。ASS22の光強度は例えば、散乱光モニタ18(
図4参照)が出力する信号52から算出される。
【0053】
-WDM信号6がラマン利得設定に与える影響-
WDM信号6の伝送経路には、WDM信号6を反射する反射点が散在する。例えば、伝送ファイバ10は光コネクタにより前方励起ラマン増幅器26に接続されるが、WDM信号6は光コネクタにより反射される。
【0054】
光コネクタによるWDM信号6の反射光は、微弱(例えば、-20dBm)である。しかしASS22も微弱(例えば、-22dBm)なので、散乱光モニタ18の出力は、WDM信号6の反射光の影響を強く受ける。従ってWDM信号6が疎通していると、散乱光モニタ18の出力に基づくASS光強度(すなわち、ASSの光強度)の算出は困難になる。
【0055】
また、WDM信号6が前方励起ラマン増幅器26により増幅されると、増幅されたWDM信号6の誘導ブリルアン散乱によって反射光が発生する。このため、光コネクタ等による反射光が小さくても、WDM信号6が伝送ファイバ10を介して疎通していると、散乱光モニタ18の出力に基づくASS光強度の算出は困難である。従ってWDM信号6が疎通している場合、ASS光強度に基づくラマン利得の設定は困難である。
【0056】
以上の説明から明らかように、ASS22の光強度に基づく第1利得設定部42aのラマン利得設定は、WDM信号6が疎通していない場合には容易であるが、WDM信号6が疎通している場合には困難である。すなわち第1利得設定部42aは、WDM信号6の非疎通時のラマン利得設定に適している。
【0057】
-第2利得設定部42b-
第2利得設定部42bは、伝送ファイバ10から出力されるWDM信号6の光強度(すなわち、光パワー)に基づいて、前方励起ラマン増幅器26のラマン利得を設定する。第2利得設定部42bは例えば、ラマン利得算出部50および第2励起光調節部48bを有する。ラマン利得算出部50および第2励起光調節部48bについては、後述する(「(3)動作」参照)。
【0058】
伝送ファイバ10(
図2参照)は、前方励起ラマン増幅器26の増幅媒体である。前方励起ラマン増幅器26の利得は、励起光20が伝送ファイバ10に入力されている場合のWDM信号6の光強度P
onと、励起光20が入力されていない場合の光強度P
offとの強度比(=P
on/P
off)である。光強度P
onは、励起光20が伝送ファイバ10に入力されている場合に、伝送ファイバ10の端局B側の一端E2から出力されるWDM信号6の光強度である。光強度P
offは、励起光20が伝送ファイバ10に入力されていない場合に、伝送ファイバ10の端局B側の一端E2から出力されるWDM信号6の光強度である。
【0059】
第2利得設定部42bは例えば、前方励起ラマン増幅器26にラマン利得を設定するため、励起光20が入力されている場合と入力されていな場合のWDM信号6の光強度Pon,Poffからラマン利得(=Pon/Poff)を算出する。第2利得設定部42bは更に前方励起ラマン増幅器26を制御して、WDM信号6の光強度Pon,Poffから算出されるラマン利得(=Pon/Poff)がラマン利得の目標値Gtargetになるように、励起光20の光強度を調節する。すなわち、第2利得設定部42bは、伝送ファイバ10から出力されるWDM信号6の光強度(例えばPon,Poff)に基づいて算出されるラマン利得(例えばPon/Poff)が、ラマン利得の目標値Gtargetになるように励起光強度を調節する。
【0060】
従って、WDM信号6が疎通している場合には、前方励起ラマン増幅器26のラマン利得を、伝送ファイバ10から出力されるWDM信号6の光強度に基づいて設定することは容易である。しかしWDM信号6が疎通していない場合には、WDM信号6が無いので、WDM信号6の光強度に基づくラマン利得の設定は困難である。すなわち第2利得設定部42bは、WDM信号6の疎通時のラマン利得設定に適している。
【0061】
-利得設定制御部44-
利得設定制御部44は、伝送ファイバ10におけるWDM信号6の疎通に関する疎通関連情報53を、例えばNMS40から取得する。利得設定制御部44は、取得された疎通関連情報53がWDM信号6の疎通を示していない場合には、第1利得設定部42aに前方励起ラマン増幅器26のラマン利得を設定させる。一方、取得された疎通関連情報53がWDM信号6の疎通を示している場合には、利得設定制御部44は、第2利得設定部42bに前方励起ラマン増幅器26のラマン利得を設定させる。
【0062】
すなわち、疎通関連情報53がWDM信号6の疎通を示さない場合、制御装置2は、WDM信号6の非疎通時のラマン利得設定に適した第1利得設定部42aに、ラマン利得を設定させる。一方、疎通関連情報53がWDM信号6の疎通を示す場合には、制御装置2は、WDM信号6の疎通時のラマン利得設定に適した第2利得設定部42bに、ラマン利得を設定させる。従って制御装置2によれば、伝送ファイバ10を介してWDM信号6が疎通されているか否かに拘わらず、前方励起ラマン増幅器26の利得を設定できる。
【0063】
(2-2)ハードウェア
-制御装置2-
図5は、制御装置2のハードウェア構成の一例を示す図である。
図6は、
図5における信号の流れを示す図である。制御装置2はCPU(Central Processing Unit)54、不揮発性メモリ56、RAM(Random Access Memory)58、およびFPGA(Field-Programmable Gate Array)60aを含む。CPU54は、ハードウェアである。
【0064】
制御装置2は更に、CPU54、RAM58、不揮性メモリ56、およびFPGA60aを相互に接続するバス62を含む。制御装置2は更に、2つのTIA(Trans-Impedance Amplifier)62a,62bおよび2つのADC(Analog To Digital Converter)64a,64bを含む。
【0065】
RAM58は例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)である。RAM58は、SRAM(Static Random Access Memory)であっても良い。不揮発性メモリ56は例えば、フラッシュメモリである。不揮発性メモリ56は、ROM(Read Only Memory)であっても良い。
【0066】
不揮発性メモリ56には、前方励起ラマン増幅器26を制御するプログラム、後方励起ラマン増幅器30を制御するプログラム、前方励起ラマン増幅器26および後方励起ラマン増幅器30それぞれのラマン利得の目標値等が記録されている。
【0067】
CPU54は、不揮発性メモリ56に記録されたプログラムをRAM58にロードし、ロードされたプログラムを実行する。RAM58には、CPU54が実行する処理に用いられる作業変数、データ等も一時的に記録される。
【0068】
FPGA60aは、CPU54、RAM58、不揮発性メモリ56、ADC64a、ADC64b、OSC送信機24、OSC受信機32、前方励起ラマン増幅器26、後方励起ラマン増幅器30、およびNMS40に接続される。FPGA60aは例えば、ADC64a~NMS40とCPU54との間の情報や要求(すなわち、コマンド)の交換を仲介するインターフェースとして機能する。
【0069】
TIA62aは、散乱光モニタ18(
図2参照)が出力する光電流70a(
図4の信号52)を電圧に変換する。ADC64aは、TIA62aの出力をデジタル信号に変換して、FPGA60aに入力する。同様に、TIA62bはWDM信号モニタ34(
図2参照)が出力する光電流70bを電圧に変換する。TIA62bの出力はADC64bによりデジタル信号に変換され、FPGA60aに入力される。
【0070】
利得設定制御部44(
図3参照)は例えば、CPU54、RAM58、および不揮発性メモリ56、およびFPGA60aにより実現される。同様に第1利得設定部42aは、CPU54、RAM58、および不揮発性メモリ56、およびFPGA60aにより実現される。同様に第2利得設定部42bは、CPU54、RAM58、不揮発性メモリ56,およびFPGA60aにより実現される。
【0071】
-散乱光モニタ18-
図7は、散乱光モニタ18のハードウェア構成の一例を示す図である。散乱光モニタ18は、ASS22(
図2参照)の一部を分岐する光スプリッタ66a、および分岐されたASS22を光電変換して光電流70a(
図4の信号52)を出力する光検出器68aを有する。光検出器68aから出力される光電流70aは、TIA62a(
図6参照)により電圧に変換される。
【0072】
-WDM信号モニタ34-
図8は、WDM信号モニタ34のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0073】
WDM信号モニタ34は、WDM信号206(
図2参照)の一部を分岐する光スプリッタ66b、および分岐されたWDM信号206を光電変換して光電流70bを出力する光検出器68bを有する。光検出器68bから出力される光電流70bは、TIA62b(
図6参照)により電圧に変換される。光スプリッタ66bは励起光21(
図2参照)のASS23(後方ASS)も分岐するが、ASS23はWDM信号206に比べ弱いので無視できる。
【0074】
-OSC送信機24-
図9は、OSC送信機24のハードウェア構成の一例を示す図である。OSC送信機24は、DAC(Digital Analog Converter)74a、半導体レーザの駆動回路76a、半導体レーザ78、および光フィルタ80aを有する。DAC74aは、制御装置2が端局Bに送信する要求や情報を示すデジタル信号72aをアナログ信号82aに変換する。駆動回路76aは、アナログ信号82aの大きさに応じた強度で半導体レーザ78を変調する。従って半導体レーザ78は、デジタル信号72aの値に応じて変調された光信号84を出力する。
【0075】
光フィルタ80aは、光信号84を伝送ファイバ10に向かって送出する。光フィルタ80aは更に、WDM信号6とASS22を透過する。光フィルタ80aは例えば、誘電体多層膜、およびこの誘電体多層膜を挟む一対の透明プリズムを有する光学部品である(後述する光フィルタ80b~80dについても同様)。
【0076】
-OSC受信機32-
図10は、OSC受信機32のハードウェア構成の一例を示す図である。OSC受信機32は、光フィルタ80b、光検出器68c、TIA62c、およびADC64cを有する。
【0077】
光フィルタ80bは、WDM信号206およびASS23を透過し、端局BのOSC送信機224によって送信されるOSC信号184を分岐する。光検出器68cは、分岐されたOSC信号184を光電変換して光電流70cを出力する。
【0078】
TIA62cは、光検出器68cから出力される光電流70cを電圧に変換する。ADC64cは、TIA62cの出力をデジタル信号72bに変換して、FPGA60a(
図6参照)に入力する。
【0079】
-前方励起ラマン増幅器26-
図11は、前方励起ラマン増幅器26のハードウェア構成の一例を示す図である。前方励起ラマン増幅器26は、FPGA60b、DAC74b、光源の駆動回路85a、励起光20を出力する光源86a、および光フィルタ80cを有する。光源86aは例えば、半導体レーザまたはインコヒーレント光源(Incoherent Light Source:非特許文献1参照)である。
【0080】
制御装置2のFPGA60a(
図5参照)は、励起光20の光強度を設定値P
setに設定させるための要求88aを、前方励起ラマン増幅器26のFPGA60bに送信する。FPGA60bは要求88aを受信すると、光源86aから出力させる励起光20の光強度を設定値P
setにする駆動電流の値を算出する。DAC74bは、FPGA60bが算出した駆動電流の値をアナログ信号82bに変換する。
【0081】
駆動回路85aは、アナログ信号82bの大きさに応じた駆動電流で光源86aを駆動する。すると光源86aは、光強度が設定値Psetの励起光20を出力する。上記「駆動電流」は、駆動電力や駆動電圧等であっても良い。
【0082】
光フィルタ80cは、励起光20を伝送ファイバ10に向かって送出する。光フィルタ80cは更に、WDM信号6、OSC送信機24から出力される光信号84、およびASS22を透過する。
【0083】
-後方励起ラマン増幅器30-
図12は、後方励起ラマン増幅器30のハードウェア構成の一例を示す図である。後方励起ラマン増幅器30は、FPGA60c、DAC74c、光源の駆動回路85b、励起光21を出力する光源86b、および光フィルタ80dを有する。光源86bは例えば、半導体レーザである。
【0084】
後方励起ラマン増幅器30の各部分の機能は、
図11を参照した前方励起ラマン増幅器26の各部分の機能と略同じである。但し、後方励起ラマン増幅器30が受信する要求88bは、後方励起ラマン増幅器30の励起光21(
図2)の光強度を設定するための要求である。光フィルタ80dは、励起光21を伝送ファイバ210に向かって送出する。光フィルタ80dは更に、WDM信号206、端局BのOSC送信機224からのOSC信号184、およびASS23を透過する。
【0085】
-WDM信号検出モジュール14-
図13は、WDM信号検出モジュール14のハードウェア構成の一例を示す図である。WDM信号検出モジュール14は、WDM信号6(
図2参照)の一部を分岐する光スプリッタ66c、および分岐されたWDM信号6の一部を光電変換して光電流70dを出力する光検出器68dを有する。WDM信号検出モジュール14は更に、光検出器68dから出力される光電流70dを処理して、WDM信号6が合波器12から出力されているか否かを示すWDM信号情報73を出力する検出回路71を有する。
【0086】
WDM信号検出モジュール14は、光検出器68dおよび検出回路71の代わりにOCM(Optical channel monitor)を有しても良い。
図14は、WDM信号検出モジュール14の別の例を示す図である。
【0087】
図13に示す例では、WDM信号検出モジュール14は、合波器12と光ファイバ増幅器16の間に配置される。しかし
図14に示すように、光送信機Txλi(iは、1以上n以下の整数)と合波器12の間に、WDM信号検出モジュール14が一つずつ配置されても良い。この場合、光送信機Txλiに接続されたWDM信号検出モジュール14が出力するWDM信号情報73は、光送信機Txλiから光信号が出力されているか否かを示す。
【0088】
(3)動作
ここでは制御装置2等が、「(2-1)機能ブロック」で説明した機能を実現するために実行する好ましい動作の一例を説明する。
【0089】
(3-1)利得設定制御部44の動作
利得設定制御部44(
図4参照)は、伝送ファイバ10(
図2参照)および前方励起ラマン増幅器26を有するWDM伝送システム4が運用中か否かを示す運用情報90を、例えばNMS40から取得する。取得された運用情報90がWDM伝送システム4の運用中を示している場合には、利得設定制御部44は更に、WDM信号が伝送されているか否かを示す伝送情報92を例えばNMSから更に取得する。運用情報90および伝送情報92はそれぞれ、上述した疎通関連情報53(
図4参照)の一つである。
【0090】
WDM伝送システム4の運用中でも、WDM伝送システム4のトラフィックが一時的に無くなりその結果、WDM信号6が非疎通となることがある。伝送情報92によれば、WDM伝送システム4の運用中におけるWDM信号6の非疎通を検知できる。
【0091】
利得設定制御部44は、運用情報90がWDM伝送システム4の運用中を示さない場合には、第1利得設定部42aに前方励起ラマン増幅器26のラマン利得を設定させる。利得設定制御部44は更に、運用情報90はWDM伝送システム4の運用中を示しているが伝送情報92がWDM信号6の伝送中を示さない場合にも、第1利得設定部42aに前方励起ラマン増幅器26のラマン利得を設定させる。
【0092】
一方、運用情報90がWDM伝送システム4の運用中を示し更に伝送情報92がWDM信号6の伝送中を示す場合には、利得設定制御部44は、第2利得設定部42bに前方励起ラマン増幅器26のラマン利得を設定させる。
【0093】
(3-2)第1利得設定部42aの動作
第1利得設定部42aは例えば、ASS光強度取得部45(
図3参照)、ASS目標値算出部46、および第1励起光調節部48aを有する。ASS光強度取得部45、ASS目標値算出部46、第1励起光調節部48aは協働して、前方励起ラマン増幅器26にラマン利得を設定する。
【0094】
ASS光強度取得部45は、散乱光モニタ18が出力する信号52からASS22の光強度Pass,monを取得(例えば算出)する。一方、ASS目標値算出部46は、前方励起ラマン増幅器26のラマン利得が目標値Gtargetに一致する場合のASS22の光強度Pass,target(すなわち、ASS目標値)を算出する。
【0095】
第1励起光調節部48aは、ASS光強度取得部45により取得される散乱光強度Pass,monがASS目標値Pass,targetになるように、前方励起ラマン増幅器26の出力(すなわち、励起光20の光強度)を調節する。この調節により、前方励起ラマン増幅器26のラマン利得が設定される。
【0096】
-運用中非疎通状態における利得設定―
WDM伝送システム4の運用中にトラフィックが一時的に消滅した場合、WDM信号6は伝送されない。或いは、WDM伝送システム4の各装置が起動されWDM伝送システム4の運用が開始されても、送信機Txへの信号入力が開始されるまでは、WDM信号6は伝送されない。この様な場合には運用情報90はWDM伝送システム4の運用中を示し、伝送情報92はWDM信号6の伝送中を示さない。
【0097】
WDM信号6が伝送されなくてもWDM伝送システム4が運用中であれば、端局Bの後方励起ラマン増幅器230は励起光221を伝送ファイバ10に入力する。すると、励起光221のASSの一部は端局Aに向かって伝搬して、端局Aの散乱光モニタ18に入射する。すると、散乱光モニタ18の出力(すなわち、信号52)から算出されるデータは、前方励起ラマン増幅器26から出力される励起光20のASS光強度(すなわち、ASS22の光強度)を正しく示さなくなる。その結果、ASS光強度に基づくラマン利得の設定が困難になる。なおASS(増幅された自然散乱光)は良く知られているように、励起光の後方だけでなく前方にも伝搬する。
【0098】
そこで第1励起光調節部48a(
図4参照)は、運用情報90がWDM伝送システム4の運用中を示すと共に伝送情報92がWDM信号6の伝送中を示さない場合(すなわち、運用中非疎通状態)には先ず、NMS40から励起情報94を取得する。励起情報94は、伝送ファイバ10の他端E2(
図2参照)に励起光221が入力されているか否かを示す情報である。第1利得設定部42aは、励起情報94が励起光221の入力中を示す場合には、前方励起ラマン増幅器26のラマン利得を設定する前に、端局Bの後方励起ラマン増幅器230に励起光221の入力を中断させる。
【0099】
後方励起ラマン増幅器230による励起光入力が中断すると、散乱光モニタ18に入射する散乱光はASS22(
図2参照)だけになるので、ASS光強度に基づくラマン利得の設定が可能になる。励起情報94はNMS40からではなく、端局Bの制御装置2からOSC(すなわち、光監視チャネル)を介して直接取得されても良い。
【0100】
ASS目標値算出部46は、CPU54、RAM58、および不揮発性メモリ56により実現される。ASS光強度取得部45は、CPU54、RAM58、不揮発性メモリ56、およびFPGA60aにより実現される。第1励起光調節部48aは、CPU54、RAM58、不揮発性メモリ56,およびFPGA60aにより実現される。
【0101】
(3-3)第2利得設定部42bの動作
第2利得設定部42b(
図3参照)は例えば、ラマン利得算出部50および第2励起光調節部48bを有する。ラマン利得算出部50と第2励起光調節部48bとは協働して、前方励起ラマン増幅器26にラマン利得を設定する。
【0102】
-ラマン利得算出部50-
ラマン利得算出部50は、伝送ファイバ10(
図2参照)から出力されるWDM信号6の光強度を示す光強度情報98(
図4参照)に基づいて、前方励起ラマン増幅器26のラマン利得を算出する。
【0103】
ラマン利得算出部50は先ず、光強度情報98を送信させるための要求96を、OSC送信機24(
図2参照)を介して端局Bの制御装置202に送信する。端局Bの制御装置202は要求96に応答して、端局BのWDM信号モニタ234の出力(例えば、光電流)から、伝送ファイバ10から出力されるWDM信号6の光強度P
WDMを算出する。端局Bの制御装置202は更に、算出された光強度P
WDMを示す光強度情報98(
図4参照)を、OSC送信機224を介して端局AのOSC受信機32に送信する。ラマン利得算出部50は、OSC受信機32により受信される光強度情報98に基づいて、前方励起ラマン増幅器26のラマン利得を算出する。
【0104】
光強度情報98が示す光強度PWDMは例えば、励起光20が疎通している場合に伝送ファイバ10から出力されるWDM信号6の光強度Pon、および励起光20が疎通していない場合に伝送ファイバ10から出力されるWDM信号6の光強度Poffである。ラマン利得算出部50は例えば、ラマン利得を示すPonとPoffとの強度比(=Pon/Poff)を算出する。
【0105】
-第2励起光調節部48b-
第2励起光調節部48bは、ラマン利得算出部50により算出されるラマン利得がラマン利得の目標値Gtargetになるように、前方励起ラマン増幅器26の出力(すなわち、励起光20の光強度)を調節する。この調節の結果、前方励起ラマン増幅器26にラマン利得Gtargetが設定される。
【0106】
ラマン利得算出部50は、CPU54、RAM58、不揮発性メモリ56、およびFPGA60aにより実現される。第2励起光調節部48bは、CPU54、RAM58、不揮発性メモリ56、およびFPGA60aにより実現される。
【0107】
(3-4)処理手順
(3-4-1)制御装置2による処理
図15~17は、前方励起ラマン増幅器26の利得設定のために制御装置2が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図15~17には、NMS40および端局Bの制御装置202が実行する処理も示されている。
【0108】
-ステップS2-
制御装置2のCPU54(
図5参照)は先ず、FPGA60aを介してWDM伝送システム4の運用情報90(
図4参照)の送信を、NMS40に要求する(ステップS2)。NMS40はこの要求に応答して、運用情報90を制御装置2に送信する(ステップS302)。CPU54はFPGA60aを介して、送信された運用情報90を取得する。ステップS2および運用情報90の取得は、利得設定制御部44により実行される。
【0109】
-ステップS4-
CPU54は、取得した運用情報90がWDM伝送システム4の運用中を示しているか否かを判定する(ステップS4)。ステップS4は、利得設定制御部44(
図4参照)により実行される。
【0110】
-ステップS6-
運用情報90がWDM伝送システム4の運用中を示していない場合には、CPU54は、FPGA60a等と協働して、ASS22の光強度に基づいて前方励起ラマン増幅器26のラマン利得を設定する(下記「(3-4-2)ASS22の光強度に基づく利得設定」参照)。ステップS6は、第1利得設定部42a(
図4参照)により実行される。
【0111】
-ステップS8-
運用情報90がWDM伝送システム4の運用中を示している場合には、CPU54はFPGA60aを介して、伝送情報92(
図4参照)の送信をNMS40に要求する(ステップS8)。NMS40はこの要求に応答して、伝送情報92を制御装置2に送信する(ステップS304)。CPU54はFPGA60aを介して、送信された伝送情報92を取得する。ステップS8および伝送情報92の取得は、利得設定制御部44(
図4参照)により実行される。
【0112】
-ステップS10-
CPU54は、取得された伝送情報92がWDM信号6の伝送を示しているか否かを判定する(ステップS10)。ステップS10は、利得設定制御部44(
図4参照)により実行される。
【0113】
-ステップS12-
取得された伝送情報92がWDM信号6の伝送を示している場合には、CPU54は、FPGA60a等と協働して、WDM信号6の光強度に基づいて前方励起ラマン増幅器26のラマン利得を設定する(下記「(3-4-3)WDM信号6の光強度に基づく利得設定」参照)。ステップS12は、第2利得設定部42b(
図4参照)により実行される。
【0114】
-ステップS14-
取得された伝送情報92がWDM信号6の伝送を示していない場合には、CPU54はFPGA60aを介して、端局Bの励起情報94の送信をNMS40に要求する(ステップS14)。NMS40はこの要求に応答して、励起情報94を制御装置2に送信する(ステップS305)。CPU54はFPGA60aを介して、送信された励起情報94を取得する。ステップS14および励起情報94の取得は、利得設定制御部44(
図4参照)により実行される。
【0115】
CPU54は端局Bの制御装置202から直接、OSC(すなわち、光監視チャネル)とFPGA60aを介して、励起情報94を取得しても良い。
【0116】
-ステップS16-
CPU54は取得された励起情報94が、伝送ファイバ10の他端E2(すなわち、端局B側の端面)への励起光221(
図2参照)の入力中を示しているか否かを判定する(ステップS16)。励起光221(以下、後方励起光と呼ぶ)は、端局Bの後方励起ラマン増幅器230の励起光である。ステップS16は、利得設定制御部44(
図4参照)により実行される。
【0117】
-ステップS18-
励起情報94が励起光221の入力中を示さない場合、CPU54は、FPGA60a等と協働して、ASS22の光強度に基づいて前方励起ラマン増幅器26のラマン利得を設定する(下記「(3-4-2)ASS22の光強度に基づく利得設定」参照)。ステップS18は、第1利得設定部42a(
図4参照)により実行される。
【0118】
-ステップS20-
励起情報94が励起光221の入力中を示す場合、CPU54はFPGA60aおよびOSC(換言するならば、OSC送信機24とOSC受信機232)を介して、後方励起光221の消灯を端局Bの制御装置202に要求する(ステップS20)。端局Bの制御装置202はこの要求に応じて、後方励起ラマン増幅器230に励起光221を消灯させる(ステップS402)。この際、端局Bの制御装置202は、後方励起ラマン増幅器230に設定された消灯前のラマン利得をメモリに記録する。
【0119】
ステップS20は、第1利得設定部42a(
図4参照)の第1励起光調節部48aにより実行される。
【0120】
-ステップS22-
ステップS20の後、CPU54はFPGA60a等と協働して、ASS22の光強度に基づいて前方励起ラマン増幅器26のラマン利得を設定する(下記「(3-4-2)ASS22の光強度に基づく利得設定」参照)。ステップS22は、第1利得設定部42a(
図4参照)により実行される。
【0121】
-ステップS24-
ステップS22の後、CPU54はFPGA60aおよびOSC(換言するならば、OSC送信機24とOSC受信機232)を介して、後方励起光221の点灯を端局Bの制御装置202に要求する(ステップS24)。端局Bの制御装置202はこの要求に応じて、後方励起ラマン増幅器230に後方励起光221を点灯させる(ステップS404)。この時、端局Bの制御装置202は、メモリに記録された励起光消灯前のラマン利得(ステップS402参照)を読み出して、後方励起ラマン増幅器230に読み出されたラマン利得を設定する。
【0122】
ステップS24は、第1利得設定部42a(
図4参照)の第1励起光調節部48aにより実行される。
【0123】
(3-4-2)ASS22の光強度に基づく利得設定
図18~19は、ASS22の光強度に基づく利得設定(ステップS6,S18,S22)のために制御装置2が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図18~19には、NMS40および端局Bの制御装置202が実行する処理も示されている。
【0124】
-ステップS102-
CPU54(
図5参照)はFPGA60aおよびOSC送信機24を介して、端局Bの制御装置202に返答を要求する(ステップS102)。返答要求は端局BのOSC受信機232を介して、端局Bの制御装置202によって取得される。
【0125】
端局Bの制御装置202は返答要求に応答して、OSC送信機224を介して端局Aの制御装置2に返答を送信する(ステップS406)。CPU54はOSC受信機32およびをFPGA60a介して、送信された返答を取得する。
【0126】
ステップS102および返答の取得は、第1励起光調節部48a(
図4参照)により実行される。
【0127】
-ステップS104-
CPU54は、返答が一定時間内に取得されたか否かを判定する(ステップS104)。ステップS104は、第1励起光調節部48a(
図4参照)により実行される。
【0128】
-ステップS106-
返答が一定時間内に取得されない場合、CPU54はFPGA60aを介して、NMS40に伝送ファイバ10の未接続を警告するように要求する(ステップS106)。NMS40はこの警告要求に応じて、警告を発する(ステップS306)。
【0129】
励起光20,221は高強度(例えば、数百mW)なので、伝送ファイバ10が端局Aおよび端局Bに接続されていないと、伝送ファイバ10から出射する励起光20,221による人的被害(例えば、火傷)が発生する虞がある。この様な人的被害を少なくするためCPU54は、NMS40に伝送ファイバ10が未接続であることを警告させる。
【0130】
ステップS106は、第1励起光調節部48a(
図4参照)により実行される。
【0131】
-ステップS108-
返答が一定時間内に取得された場合、CPU54は、前方励起ラマン増幅器26のラマン利得が目標値Gtargetに一致する場合のASS22の光強度Pass,targetを算出する(ステップS108)。
【0132】
図20は、AAS22の強度(すなわち、光パワー)と前方励起ラマン増幅器26のラマン利得の関係の一例を示す図である。横軸は、ラマン利得である。縦軸は、ASS22の光強度である。
図20に示すように、ASS22の光強度とラマン利得は略比例する。そこでCPU54は、ASS22の光強度とラマン利得の関係を示す近似式を用いて、ラマン利得が目標値G
targetに一致する場合のASS22の光強度P
ass,target(すなわち、ASS目標値)を算出する。
【0133】
ASS22の光強度とラマン利得の関係は例えば、2次関数により近似にされる。この2次関数の係数は例えば、不揮発性メモリ56に記録される。CPU54は不揮発性メモリ56から、この係数を読み出してASS目標値Pass,targetを算出する。
【0134】
ステップS108は、ASS目標値算出部46(
図4参照)により実行される。
【0135】
-ステップS110-
ステップS108の後、CPU54はFPGA60aを介して、前方励起ラマン増幅器26に励起光20を出力させる(ステップS110)。この時出力される励起光20の光強度(すなわち、初期値)は、例えば不揮発性メモリ56に記録されている。
【0136】
ステップS110は、第1励起光調節部48a(
図4参照)により実行される。
【0137】
-ステップS112-
ステップS110の後、CPU54はFPGA60a、TIA62a、およびADC64aと協働して、散乱光モニタ18が出力する信号52(
図4参照)からASS22の光強度P
ass,mon(すなわち、ASS光強度)を算出する。ステップS112は、ASS光強度取得部45により実行される。
【0138】
-ステップS114-
ステップS112の後CPU54は、ASS光強度P
ass,monとASS目標値P
ass,targetの誤差ΔP(=P
ass,mon-P
ass,target)を算出する。ステップS114は、第1励起光調節部48a(
図4参照)により実行される。
【0139】
-ステップS116-
CPU54は、ステップS114で算出された誤差ΔPの絶対値が許容値以下であるか否か判定する(ステップS116)。誤差ΔPの絶対値が許容値以下の場合、ASS光強度に基づく利得設定は終了する。
【0140】
ステップS116は、第1励起光調節部48a(
図4参照)により実行される。
【0141】
-ステップS118-
ステップS116で算出された誤差ΔPの絶対値が許容値より大きい場合、CPU54は誤差ΔPの絶対値を減少させる励起光20の光強度(すなわち、励起光強度)を算出する(ステップS118)。例えば誤差ΔPが負の場合、CPU54は現在の励起光強度より大きな励起光強度を算出する。誤差ΔPが正の場合、CPU54は現在の励起光強度より小さな励起光強度を算出する。「現在の励起光強度」とは、最後にステップS112を実行した時のことである。
【0142】
ステップS118は、第1励起光調節部48a(
図4参照)により実行される。
【0143】
-ステップS120-
ステップS118の後、CPU54はFPGA60aを介して前方励起ラマン増幅器26の励起光源27(
図1参照)に、ステップS118で算出された励起光強度を設定する。その結果、励起光20の光強度はステップS118で算出された励起光強度に変更される。ステップS118は、第1励起光調節部48a(
図4参照)により実行される。
【0144】
ステップS120の後、CPU54はステップS112に戻る。
【0145】
ステップS102~ステップS120が繰り返されることで、前方励起ラマン増幅器26のラマン利得は最終的に略目標値Gtargetに設定される。
【0146】
(3-4-3)WDM信号6の光強度に基づく利得設定
図21~22は、WDM信号6の光強度に基づく利得設定(ステップS12)のために制御装置2が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図21~22には、端局Bの制御装置202が実行する処理も示されている。
【0147】
-ステップS202―
CPU54はFPGA60aを介して、励起光20を出力する励起光源27(
図1および11参照)の出力を0ワットに設定する(ステップS202)。ステップS202は、第2励起光調節部48b(
図4参照)により実行される。
【0148】
-ステップS204―
CPU54(
図5参照)はFPGA60aおよびOSC送信機24(
図1参照)を介して、WDM信号6の光強度を示す光強度情報98(
図4参照)を送信させるための要求96を、端局Bの制御装置202に送信する(ステップS204)。
【0149】
端局Bの制御装置202は要求96に応答して先ず、伝送ファイバ10から出力されるWDM信号6の光強度Poffを取得する(「(3-3)第2利得設定部42b」参照)。端局Bの制御装置202は更に、取得された光強度Poffを示す光強度情報98を、OSC送信機224を介して端局Aの制御装置2に送信する(ステップS408)。CPU54はOSC受信機32およびFPGA60aを介して、送信された光強度情報98を取得する。
【0150】
ステップS204は、ラマン利得算出部50(
図4参照)により実行される。
【0151】
-ステップS206-
ステップS204の後、CPU54はFPGA60aを介して、前方励起ラマン増幅器26に励起光20を出力させる(ステップS206)。この時出力される励起光20の光強度(すなわち、初期値)は、例えば不揮発性メモリ56に記録されている。
【0152】
ステップS206は、第2励起光調節部48b(
図4参照)により実行される。
【0153】
-ステップS208―
CPU54(
図5参照)はFPGA60aおよびOSC送信機24(
図1参照)を介して、WDM信号6の光強度を示す光強度情報98(
図4参照)を送信させるための要求96(
図4参照)を、端局Bの制御装置202に再度送信する(ステップS208)。
【0154】
端局Bの制御装置202は要求96に応答して先ず、伝送ファイバ10から出力されるWDM信号6の光強度Pnowを再度取得する。端局Bの制御装置202は更に、再取得された光強度(以下、現在の光強度と呼ぶ)Pnowを示す光強度情報98を、OSC送信機224を介して端局Aの制御装置2に送信する(ステップS410)。
【0155】
ステップS208は、ラマン利得算出部50(
図4参照)により実行される。
【0156】
-ステップS210―
ステップS208の後CPU54は、現在の光強度PnowとステップS204により取得された光強度Poffとの強度比Gnow(=Pnow/Poff)を算出する。強度比Gnow(以下、現在の強度比と呼ぶ)は、前方励起ラマン増幅器26の最新のラマン利得を示している。WDM信号6の光強度は多くの場合、時間に対して一定である。強度比Gnowはこの様な場合、前方励起ラマン増幅器26のラマン利得を示す。
【0157】
ステップS210は、ラマン利得算出部50(
図4参照)により実行される。
【0158】
-ステップS212-
ステップS210の後CPU54は、現在の強度比Gnowとラマン利得の目標値Gtargetとの誤差ΔG(=Gnow-Gtarget)を算出する。
【0159】
ステップS212は、ラマン利得算出部50(
図4参照)により実行される。
【0160】
-ステップS214-
CPU54は、ステップS212で算出された誤差ΔGの絶対値が許容値以下であるか否か判定する(ステップS214)。誤差ΔGの絶対値が許容値以下の場合、WDM信号6の光強度に基づく利得設定は終了する。
【0161】
ステップS214は、第2励起光調節部48b(
図4参照)により実行される。
(
図4参照)により実行される。
【0162】
-ステップS216-
ステップS214で算出された誤差ΔGの絶対値が許容値より大きい場合、CPU54は誤差ΔGの絶対値を減少させる励起光20の励起光強度を算出する(ステップS216)。例えば誤差ΔGが負の場合、CPU54は現在の励起光強度(ステップS208の最新の実行時の励起光強度)より大きな励起光強度を算出する。一方、誤差ΔGが正の場合、CPU54は現在の励起光強度より小さい励起光強度を算出する。
【0163】
ステップS216は、第2励起光調節部48b(
図4参照)により実行される。
【0164】
-ステップS218-
ステップS216の後、CPU54はFPGA60aを介して励起光源27(
図1参照)に、ステップS216で算出された励起光強度を設定する。その結果、励起光20の光強度はステップS216で算出された励起光強度に変更される。ステップS218は、第2励起光調節部48b(
図4参照)により実行される。
【0165】
ステップS218の後、CPU54はステップS208に戻る。
【0166】
S202~ステップS218が繰り返される事により、前方励起ラマン増幅器26のラマン利得は略目標値Gtargetに設定される。
【0167】
詳しい説明は省略するが、後方励起ラマン増幅器30のラマン利得は例えば、
図18~19に示された「ASS22の光強度に基づく利得設定」と略同じ手順で、制御装置2により設定される。
【0168】
(4)使用例
実施の形態1の制御装置2は例えば、既設の光伝送システムに、高ビットレートの光トランシーバ(すなわち、光送受信機)を増設する際に使用される。
【0169】
例えば
図1のWDM伝送システム4から、n番目の光送信機Txλn、n番目の光受信機Rxλn、および前方励起ラマン増幅器26を除いたシステムが既に設置されているとする。実施の形態1の制御装置2はこの様なシステムに、既設の光送受信機Txλ1~Txλn-1,Rxλ1~Rxλn-1よりビットレートが高い光送受信機Txλn,Rxλnを増設する場合に用いられる。
【0170】
高ビットレート(例えば、800Gbps~1.6Tbps)の光送信機Txλnは、雑音の影響を受けやすい。そこで光送受信機Txλn,Rxλnと共に、WDM信号6のOSNRを改善するため、前方励起ラマン増幅器26が設置される。前方励起ラマン増幅器26の設置は例えば、既設の光フィルタ80c(
図11参照)に励起光源27を光コネクタで接続することで実現される。設置された前方励起ラマン増幅器26のラマン利得は、実施の形態1の制御装置2により設定される。
【0171】
制御装置2によれば、WDM信号6が疎通されているか否かに拘わらずに、前方励起ラマン増幅器26のラマン利得は設定できる。従って制御装置2によれば、前方励起ラマン増幅器26が設置されるWDM伝送システムの運用を止めずに、前方励起ラマン増幅器26のラマン利得を設定できる。
【0172】
既設の光送信機Txλ1~Txλn-1のビットレートは例えば、200Gbps~400Gbpsである。増設される光送信機Txλnのビットレートは例えば、800Gbps~1.6Tbpsである。
【0173】
以上の例では前方励起ラマン増幅器26は、既設のWDM伝送システム4に設置される。しかし前方励起ラマン増幅器26は、WDM伝送システム4の構築時に設置されても良い。この様な場合には制御装置2は、WDM伝送システム4の運用開始前に、ASS22の光強度に基づいて前方励起ラマン増幅器26のラマン利得を設定できる(
図15のステップS2~S6参照)。
【0174】
(5)変形例
以上の例では、ASS22の光強度に基づくラマン利得の設定は、伝送ファイバ10に後方励起光221が入力されている場合には、後方励起光221が消灯されてから行われる(
図17のステップS20~S22参照)。しかし変形例によれば、後方励起光221が消灯されなくても、ASS22の光強度に基づくラマン利得の設定は可能である。
【0175】
変形例では先ず、前方励起ラマン増幅器26から励起光20が出力されていない時に散乱光モニタ18が出力する信号(例えば、光電流)から、後方励起光221のASSのうち端局Aに到達する散乱光の光強度(以下、背景光強度Pbackと呼ぶ)を算出する。
【0176】
制御装置2は更に、前方励起ラマン増幅器26から励起光20が出力されている時に、散乱光モニタ18の出力からASS22の光強度Pass,monを算出する。制御装置2は更に、散乱光モニタ18の出力から算出される光強度Pass,monが、ASS目標値Pass,targetと背景光強度Pbackの和に一致するように、前方励起ラマン増幅器26を制御する。
【0177】
すなわち、
図19のステップS114では、目標値P
ass,targetの代わりに目標値P
ass,targetと背景光強度P
backの和が用いられる。
図17のステップS20,S24,S402,S404は、実行されない。ステップS20の代わりに、背景光強度P
backが測定される。
【0178】
変形例によれば、端局Bに後方励起光221を消灯されないので、前方励起ラマン増幅器26にラマン利得を設定する手順を簡素化できる。
【0179】
(6)前方励起ラマン増幅器の制御方法
例えば制御装置2は、WDM信号6が伝送ファイバ10介して疎通していない場合には先ず、励起光20の増幅された自然散乱光22の散乱光強度に基づいて前方励起ラマン増幅器26のラマン利得を算出する(
図19のステップS112参照)。例えば制御装置2は更に、算出されたラマン利得がラマン利得の目標値に一致するように前方励起ラマン増幅器26を制御する(
図19のステップS114~S120参照)。
【0180】
一方、WDM信号6が疎通している場合には、例えば制御装置2は、伝送ファイバ10から出力されるWDM信号6の光強度に基づいてラマン利得を算出する(
図21のステップS202~
図22のステップS210参照)。例えば制御装置2は更に、前方励起ラマン増幅器26のラマン利得の目標値に算出されたラマン利得が一致するようにラマン増幅器を26制御する(
図22のステップS212~S218)。前方励起ラマン増幅器26は、制御装置2(
図1参照)以外の装置(例えば、パーソナル・コンピュータ)により制御されても良い。
【0181】
図5等を参照して説明した例では制御装置2は、CPU54、メモリ56,58およびFPGA60aを含む。しかし制御装置2は、CPU54およびメモリ56,58を含まなくても良い。この場合、利得設定制御部44、第1利得設定部42a、および第2利得設定部42bは、FPGA60aにより実現される。
【0182】
制御装置2は、FPGA60aを含まなくても良い。この場合、利得設定制御部44、第1利得設定部42a、および第2利得設定部42bは例えば、CPU54とメモリ56,58とインターフェース回路により実現されても良い。
【0183】
制御装置2は、システムLSI(Large Scale Integration)であっても良い。この場合、利得設定制御部44、第1利得設定部42a、および第2利得設定部42bは、システムLSIにより実現される。
【0184】
図1~4を参照して説明した例では制御装置2は、散乱光モニタ18、WDM信号モニタ34、OSC送信機24、およびOSC受信機32を含まない。しかし制御装置2は、散乱光モニタ18、WDM信号モニタ34、OSC送信機24、およびOSC受信機32のいずれか一つまたは複数を有しても良い。
【0185】
実施の形態1では、WDM信号6が存在しない非疎通時には、WDM信号6ではなくASS22に基づきラマン利得が設定される。更に実施の形態1では、WDM信号の反射光等によりASS22のモニタが困難なWDM信号の疎通時には、ASS22ではなくWDM信号6に基づきラマン利得が設定される。従って実施の形態1によれば、伝送ファイバ10を介してWDM信号6が疎通されているか否かに拘わらず、前方励起ラマン増幅器26の利得設定が可能になる。
【0186】
(実施の形態2)
実施の形態2は、実施の形態1に類似している。従って、実施の形態1と同じ構成等については、説明を省略または簡単にする。
【0187】
実施の形態1の疎通関連情報53(
図4参照)は、運用情報90を含んでいる。一方、実施の形態2の疎通関連情報53は運用情報90を含まない。すなわち、実施の形態2の制御装置は、実施の形態1の制御装置2が実行する処理(
図15~17参照)からステップS2~S6を除いた処理を実行する。以上の点を除き、実施の形態2の制御装置および制御方法は、実施の形態1の制御装置および制御方法と略同じである。
【0188】
疎通関連情報53が運用情報90を含まなくても、伝送情報92に基づけばWDM信号6が疎通しているか否かの判定は可能である。従って実施の形態2によれば、実施の形態1と同様、WDM信号6の疎通の有無に拘わらず、前方励起ラマン増幅器26にラマン利得を設定できる。
【0189】
更に、実施の形態2では運用情報90に基づく処理(例えば、
図15のステップS2~S6)が行われないので、制御装置2の処理を簡素化できる。
【0190】
以上、本発明の実施形態について説明したが、実施の形態1~2は、例示であって制限的なものではない。
【0191】
例えば実施の形態1~2では、前方励起ラマン増幅器26を起動する前に、伝送ファイバ10と端局A,Bの接続が制御装置2により確認される(
図18のステップS102~S106)。しかし制御装置2は、伝送ファイバ10の接続を確認しなくても良い。この場合には好ましくは、人為的に伝送ファイバ10の接続確認が行われる。
【0192】
実施の形態1~2では、光送信機Txから出力される光信号は互いに波長が異なるWDM信号6である。しかし光送信機Txから出力される光信号は、単一波長の光信号であっても良い。
【0193】
以上の実施の形態1~2に関し、更に以下の付記を開示する。
【0194】
(付記1)
光ファイバの一端から他端に伝送される光信号を、前記一端に励起光を入力して増幅する前方励起ラマン増幅器を制御する装置であって、
前記励起光の増幅された自然散乱光の散乱光強度に基づいて、前記前方励起ラマン増幅器のラマン利得を設定する第1利得設定部と、
前記光ファイバから出力される前記光信号の光強度に基づいて、前記ラマン利得を設定する第2利得設定部と、
前記光ファイバにおける前記光信号の疎通に関する疎通関連情報を取得し、取得された前記疎通関連情報が前記光信号の疎通を示していない場合には、前記第1利得設定部に前記ラマン利得を設定させ、取得された前記疎通関連情報が前記光信号の疎通を示している場合には、前記第2利得設定部に前記ラマン利得を設定させる利得設定制御部とを有する
前方励起ラマン増幅器の制御装置。
【0195】
(付記2)
前記第1利得設定部は、前記ラマン利得が目標値に一致する場合の前記自然散乱光の強度を算出し、前記散乱光強度が算出された前記強度になるように前記励起光の励起光強度を調節することで、前記ラマン利得を設定し、
前記第2利得設定部は、前記光ファイバから出力される前記光信号の光強度に基づいて算出される前記ラマン利得が前記目標値になるように前記励起光強度を調節することで、前記ラマン利得を設定することを
特徴とする付記1に記載の前方励起ラマン増幅器の制御装置。
【0196】
(付記3)
前記利得設定制御部は、前記光ファイバおよび前記前方励起ラマン増幅器を有する伝送システムが運用中か否かを示す運用情報を取得し、前記運用情報が前記伝送システムの運用中を示している場合には更に、前記光信号が伝送されているか否かを示す伝送情報を更に取得し、
前記運用情報および前記伝送情報はそれぞれ、前記疎通関連情報であり、
前記第1利得設定部は、前記運用情報が前記伝送システムの運用中を示さない場合および前記運用情報が前記伝送システムの運用中を示すと共に前記伝送情報が前記光信号の伝送中を示さない場合には、前記利得設定制御部によって前記ラマン利得を設定させられ、
前記第2利得設定部は、前記運用情報が前記伝送システムの運用中を示し更に前記伝送情報が前記光信号の伝送中を示す場合には、前記利得設定制御部によって前記ラマン利得を設定させられることを
特徴とする付記1又は2に記載の前方励起ラマン増幅器の制御装置。
【0197】
(付記4)
前記伝送システムは更に、別の励起光を前記他端に入力して、前記光信号を増幅する後方励起ラマン増幅器を有し、
前記第1利得設定部は、前記運用情報が前記伝送システムの運用中を示すと共に前記伝送情報が前記光信号の伝送中を示さない場合には、前記光ファイバの前記他端に前記別の励起光が入力されているか否かを示す励起情報を取得し、
前記第1利得設定部は更に、前記励起情報が前記別の励起光の入力中を示す場合には、前記ラマン利得を設定する前に、前記後方励起ラマン増幅器に前記別の励起光の入力を中断させることを
特徴とする付記3に記載の前方励起ラマン増幅器の制御装置。
【0198】
(付記5)
更に、前記散乱光強度に応じた信号を出力する散乱光モニタを有し、
前記第1利得設定部は、出力された前記信号から前記散乱光強度を取得し、取得された前記散乱光強度が算出された前記強度になるように前記励起光強度を調節することを特徴とする
付記2に記載の前方励起ラマン増幅器の制御装置。
【0199】
(付記6)
更に、前記光ファイバから出力される前記光信号の光強度を示す光強度情報を受信する受信機を有し、
前記第2利得設定部は、受信された前記光強度情報に基づいて前記ラマン利得を算出し、算出された前記ラマン利得が前記目標値になるように前記励起光強度を調節することを特徴とする
付記2に記載の前方励起ラマン増幅器の制御装置。
【0200】
(付記7)
光ファイバの一端から他端に伝送される光信号を、前記一端に励起光を入力して増幅する前方励起ラマン増幅器を制御する装置であって、メモリと前記メモリに結合されたプロセッサを有し、
前記プロセッサは、前記光信号が疎通していない場合には、前記励起光の増幅された自然散乱光の散乱光強度に基づいて前記前方励起ラマン増幅器のラマン利得を算出し、算出された前記ラマン利得が前記ラマン利得の目標値に一致するように前記前方励起ラマン増幅器を制御し、
前記光信号が疎通している場合には、前記光ファイバから出力される前記光信号の光強度に基づいて前記ラマン利得を算出し、算出された前記ラマン利得が前記目標値に一致するように前記前方励起ラマン増幅器を制御するように構成された前方励起ラマン増幅器の制御装置。
【0201】
(付記8)
光ファイバの一端から他端に伝送される光信号を、前記一端に励起光を入力して増幅する前方励起ラマン増幅器を制御する方法であって、
前記光信号が疎通していない場合には、前記励起光の増幅された自然散乱光の散乱光強度に基づいて前記前方励起ラマン増幅器のラマン利得を算出し、算出された前記ラマン利得が前記ラマン利得の目標値に一致するように前記前方励起ラマン増幅器を制御し、
前記光信号が疎通している場合には、前記光ファイバから出力される前記光信号の光強度に基づいて前記ラマン利得を算出し、算出された前記ラマン利得が前記目標値に一致するように前記前方励起ラマン増幅器を制御する
前方励起ラマン増幅器の制御方法。
【符号の説明】
【0202】
2 :制御装置
4 :WDM伝送システム
6 :WDM信号
10 :伝送ファイバ
18 :散乱光モニタ
20,221:励起光
22 :自然散乱光
26 :前方励起ラマン増幅器
32 :OSC受信機
42a :第1利得設定部
42b :第2利得設定部
44 :利得設定制御部
53 :疎通関連情報
90 :運用情報
92 :伝送情報
94 :励起情報
98 :光強度情報
184 :OSC信号
230 :後方励起ラマン増幅器