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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H01F 7/16 20060101AFI20240403BHJP
   H01F 7/126 20060101ALI20240403BHJP
   H02K 33/02 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
H01F7/16 D
H01F7/16 K
H02K33/02 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020165547
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057343
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】入井 俊紀
(72)【発明者】
【氏名】中川 雄介
(72)【発明者】
【氏名】松井 健志
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特許第6610843(JP,B1)
【文献】特開2018-3999(JP,A)
【文献】特開昭63-199404(JP,A)
【文献】実開昭53-44756(JP,U)
【文献】国際公開第2021/181816(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/121- 7/126
H01F 7/16
H02K 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングの内側に配置された円筒状のコイルと、
前記コイルの内側に配置された可動鉄心と、
前記可動鉄心に挿通されたシャフトと、
前記コイルが励磁されたときに該可動鉄心と前記シャフトとを係合するロック機構とを備え、
前記ロック機構は、
前記シャフトの外周を転動して楔となる複数の転動体と、
前記可動鉄心に固定され、前記転動体が接触する二つの内向する傾斜面を含んだ係合部材とを含み、
前記シャフトは、該シャフトがストローク端近傍にあるときに前記転動体がはまる外周溝を有していることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記シャフトはストローク範囲を規制する衝止部を備え、
前記外周溝は、前記シャフトがストローク端にあるとき、前記転動体よりもストローク範囲の外側の位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記ハウジングの内側に、一対の前記可動鉄心、ロック機構、および外周溝を対向して備えていて、前記シャフトを双方向に移動可能であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクチュエータに関し、特に、非励磁時のシャフトの保持力が高いアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のアクチュエータとして、例えば特許文献1および特許文献2には、シャフトのストローク端の状態を内蔵の磁石によって保持することが可能な小型のラッチングソレノイドが開示されている。一方、ハイパワーかつロングストロークのソレノイドとして、可動鉄心の動きに合わせて可動鉄心とシャフトとの係合と解除を繰り返し、これによってシャフトを少しずつ繰り出すことで大きな移動距離を得る、いわゆるステップ送りの構成も提案されている。
【0003】
上記ステップ送りのアクチュエータとして、例えば本出願人による特許文献3では、ロック機構を採用したアクチュエータが提案されている。当該アクチュエータのロック機構は、主に転動体と係合部材とを利用した簡潔な構成でありつつも、可動鉄心の位置に合わせてシャフトの規制方向を切り替えることができ、これによって電磁部を含めた全体構成の小型化および低廉化を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平02-086106号公報
【文献】特許3542933号公報
【文献】特願2020-044337号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ストローク端状態のシャフトの保持力は、部品精度や経年変化、さらには使用状況などによって影響を受ける。例えば、アクチュエータの内部に採用されるコイルばね等の弾性体にも僅かながら寸法のばらつきは存在し、経年によって付勢力にも変化が現れ得る。
【0006】
また、当該アクチュエータを自動車に採用した場合、走行中における路面からの振動や他の機械部品の可動時の振動を受けることになる。振動のような動的な荷重がアクチュエータに作用した場合、シャフトが微小な回動運動や往復運動を繰り返し、結果としてシャフトを支える部材の保持力に影響が出ることも考えられる。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、非励磁時のシャフトの保持力を高めたアクチュエータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかるアクチュエータの代表的な構成は、ハウジングと、ハウジングの内側に配置された円筒状のコイルと、コイルの内側に配置された可動鉄心と、可動鉄心に挿通されたシャフトと、コイルが励磁されたときに可動鉄心とシャフトとを係合するロック機構とを備え、ロック機構は、シャフトの外周を転動して楔となる複数の転動体と、可動鉄心に固定され、転動体が接触する二つの内向する傾斜面を含んだ係合部材とを含み、シャフトは、シャフトがストローク端近傍にあるときに転動体がはまる外周溝を有していることを特徴とする。
【0009】
上記構成では、ストローク端状態のシャフトが外力によって押し戻されようとしたとき、シャフトの外周溝にロック機構の転動体が嵌合するため、シャフトとロック機構との係合力が高まり、非励磁時のシャフトの保持力を飛躍的に高めることができる。
【0010】
シャフトはストローク範囲を規制する衝止部を備え、外周溝は、シャフトがストローク端にあるとき、転動体よりもストローク範囲の外側の位置に形成されていてもよい。
【0011】
上記構成によれば、確実に転動体を外周溝に係止させることができる。外力によってシャフトがストローク範囲の外方向に移動させられようとしたときは、衝止部によってその移動が規制される。一方、外力によってシャフトがストロークの内方向に移動させられようとしたときは、転動体が外周溝に係止して移動が規制される。すなわち、いずれの方向にも確実にシャフトの移動を規制し、その位置を保持することができる。
【0012】
ハウジングの内側に、一対の可動鉄心、ロック機構、および外周溝を対向して備えていて、シャフトを双方向に移動可能であることが好ましい。これにより、双方向に能動的にシャフトを移動させることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、非励磁時のシャフトの保持力を高めたアクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態にかかるアクチュエータの全体構成図である。
図2】ロック機構について説明する図である。
図3】ロック機構の動作を説明する図である。
図4】ロック機構の動作を説明する図である。
図5】シャフトに大きな外力が働いた場合について説明する図である。
図6】転動体と外周溝との嵌合が解除される過程の図である。
図7】転動体と外周溝との嵌合が解除される過程の図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
図1は、本実施形態にかかるアクチュエータ100の全体構成図である。図1では、2つの電磁部(第1電磁部106a、第2電磁部106b)が両方非励磁の状態を示している。本実施形態にかかるアクチュエータ100には左右の区別はなく、以下に「左右」の言葉を用いて説明するときは単に図面上の左右である。
【0017】
アクチュエータ100は、第1電磁部106aおよび第2電磁部106bを利用して、シャフト10を双方向に能動的に移動させることが可能になっている。詳しくは、アクチュエータ100は、ハウジング102の内部の中央に固定鉄心104が配置されていて、固定鉄心104の左右にそれぞれ第1電磁部106aおよび第2電磁部106bが配置されている。このとき、中央の固定鉄心104は電磁部106a、106bで共有している。電磁部106a、106bは対向して配置されていて、後述する可動鉄心210やロック機構300a、300bの配置や動作方向も逆向きになっている。
【0018】
第1電磁部106aおよび第2電磁部106bは同じ構造をしているため、代表して第1電磁部106aの構造について説明する。なお、以下の説明において各要素を左右で呼び分ける必要がある場合には、第1電磁部106a側の部材については符号にaの枝番を付し、第2電磁部106b側の部材については符号にbの枝番を付す。
【0019】
第1電磁部106aは、主な要素として、ハウジング102の内側にてシャフト10を巻回するように配置された円筒状のコイル200と、コイル200の内側に配置された可動鉄心210とを備えている。可動鉄心210は、円筒状の磁性体であって、内側にシャフト10が挿通されている。可動鉄心210は、コイル200が励磁されると磁束が通り、シャフト10と共に中央の固定鉄心104側に吸引されるように移動する。
【0020】
中央の固定鉄心104の内部には、可動鉄心210を初期位置へと付勢するリターンスプリング212が配置されている。上記コイル200が励磁されたとき、可動鉄心210はリターンスプリング212の付勢力に抗して固定鉄心104側に移動する。そして、コイル200が非励磁となると、可動鉄心210はリターンスプリング212によって初期位置へと押し戻され、ストッパ214に当接する。ストッパ214の裏側には永久磁石204が配置されていて、磁力によって初期位置の可動鉄心210をストッパ214に密着させた状態に保持することが可能になっている。
【0021】
シャフト10は、長手方向の中央に、固定鉄心104の狭隘部108を通過可能な小径部12が設けられている。小径部12以外の範囲は、狭隘部108を通過不能な太さの大径部14a、14bになっている。そして、これら小径部12と大径部14a、14bの段差の部分が、シャフト10のストローク範囲を規制する衝止部16a、16bとなっている。衝止部16a、16bが固定鉄心104の狭隘部108に干渉したとき、シャフト10は片側に突出してそれ以上移動することのできない状態、いわゆるストローク端の状態となる。
【0022】
図2は、ロック機構300aについて説明する図である。上述した可動鉄心210とシャフト10との間には、ロック機構300aが備えられている。ロック機構300aは、コイル200が励磁されたときに可動鉄心210とシャフト10とを係合する機構であり、シャフト10の上を転動して楔となる2以上の転動体302(ローラ)と、転動体302の姿勢を保持する保持器304と、可動鉄心210に固定された係合部材310とを備えている。
【0023】
係合部材310は、可動鉄心210の内側にはめ込まれたリング状の部材であり、内面に転動体302を収容するくぼみが形成されている。このくぼみは、二つの内向する傾斜面を備えている。二つの内向する傾斜面のうち、可動鉄心210の初期位置側(移動元側)を元側傾斜面314、可動鉄心210が励磁されて移動する側(移動先側)を先側傾斜面312と称する。転動体302は、先側傾斜面312または元側傾斜面314に当接してシャフト10との間に挟まることによって楔として機能し、可動鉄心210とシャフト10を係合させる。
【0024】
可動鉄心210内には、保持器304を介して転動体302を元側傾斜面314に付勢する内部弾性体216が備えられている。また可動鉄心210の外には、コイル200が非励磁であって可動鉄心210が初期位置にあるときに転動体302を先側傾斜面312に付勢する外部弾性体218が備えられている。一例として、内部弾性体216および外部弾性体218は、共にコイルスプリングで構成することができる。外部弾性体218は必要なストロークが短いため、例えば内部弾性体216よりも短い寸法に設定することができる。
【0025】
外部弾性体218の付勢力は、内部弾性体216よりも大きく設定されている。この構成によって、可動鉄心210がストッパ214に接触した初期位置にいるとき、転動体302は外部弾性体218によって係合部材310の先側傾斜面312とシャフト10とに押し付けられる。これにより、シャフト10が第2電磁部106bに向かって移動しようとしたときにロックし、シャフト10の移動を規制することができる。
【0026】
図2中の白矢印は、ロック機構300aに対してシャフト10が相対的に移動可能であることを示していて、白矢印にバツがついている方向は相対的に移動不可能であることを示している。上記の通り、ロック機構300aは、コイル200が非励磁で可動鉄心210が初期位置にいるとき、シャフト10が第2電磁部106bに向かって移動する方向に係合する(規制する)ワンウェイクラッチとして機能する。すなわちロック機構300a、300bは、他方の電磁部の可動鉄心210が初期位置に戻ろうとするときには、シャフト10が戻らないようにロックする。特に、外部弾性体218が転動体302を先側傾斜面312に付勢することから、ロック機構300aは可動鉄心210とシャフト10とをより確実に係合することが可能になっている。
【0027】
図1に示したように、第1電磁部106aと第2電磁部106bは対向して配置されていることから、ロック機構300a、300bは非励磁のときにはいずれも内側方向(相手方の電磁部に向かう方向)へのシャフト10の移動を規制する。したがって、当該アクチュエータ100は、電力や制御を必要とすることなく、何もしていないときはシャフト10の移動をロックすることが可能になっている。
【0028】
図3および図4は、ロック機構300aの動作を説明する図である。図3(a)は、シャフト10が第1電磁部106a側にストローク端(初期位置)になった状態を示している。このとき、ストローク端のシャフト10に外力が作用し、シャフト10が第2電磁部106b側に押し戻されそうになると、上述したロック機構300aが作用し、シャフト10の移動が規制される。
【0029】
図3(b)は、ロック機構300aの拡大図である。可動鉄心210が初期位置にあるとき、上記したようにロック機構300aはシャフト10が移動する方向には係合する。すなわち、白矢印の大きさで示すように、外部弾性体218による付勢力のほうが内部弾性体216の付勢力よりも大きいため、上記初期位置では転動体302が先側傾斜面312に押し付けられていて、シャフト10を第2電磁部106b側に送ろうとすると可動鉄心210とシャフト10が係合する。反対に、転動体302は、シャフト10が第2電磁部106bから第1電磁部106aに向かって移動してくる方向には係合しない。
【0030】
しかしながら図3(c)に示すように、コイル200が励磁されて可動鉄心210が図中右側に若干移動すると、外部弾性体218のストロークが届かなくなるためその付勢力が弱まり、内部弾性体216から受ける付勢力が相対的に大きくなる。すると内部弾性体216が保持器304を介して転動体302を元側傾斜面314に付勢する。したがってロック機構300aはシャフト10と係合し、可動鉄心210と共にシャフト10が移動する。
【0031】
すなわち、当該アクチュエータ100では、可動鉄心210の位置によって、ロック機構300aの係合方向を切り替えることが可能になっている。このときの切り替わる位置は、内部弾性体216と外部弾性体218の付勢力が拮抗する位置である。これによって、当該アクチュエータ100は、より簡潔な構成でシャフト10の移動規制を達成していて、全体構成の小型化と低廉化を図ることが可能になっている。
【0032】
そして、図4(a)に示すように、コイル200を励磁させて可動鉄心210を移動させると、第1電磁部106aのロック機構300aはシャフト10と係合する一方(実線の白矢印にバツをつけて示している)、第2電磁部106bのロック機構300bはシャフト10と係合しない(破線の白矢印にバツをつけて示している)。これにより、可動鉄心210が第2電磁部106bに向かって移動するにしたがってシャフト10を送ることができる。
【0033】
図4(b)に示すようにコイル200を非励磁とすると、第1電磁部106aの可動鉄心210の初期位置への戻り方向に対して、ロック機構300aはシャフト10と係合しない(破線の白矢印にバツをつけて示している)。一方、第2電磁部106bのロック機構300bは、コイル200が非励磁であって可動鉄心210が初期位置にあるため、第1電磁部106aの可動鉄心210が戻る方向にシャフト10と係合する(実線の白矢印にバツをつけて示している)。これによって、可動鉄心210は、シャフト10を送った位置に残したまま、初期位置まで戻ることができる。したがって第1電磁部106aのコイル200の励磁と非励磁を繰り返すことによって、シャフト10を図示右方向に徐々に送る、ステップ送りをすることが可能となる。
【0034】
当該アクチュエータ100の重要な動作として、対向配置された2つの電磁部106a、106bのうち、励磁/非励磁を繰り返した方はシャフト10を送り出し、非励磁を維持した方はシャフト10の戻りを規制する。これによって、双方向に能動的にシャフト10を移動させることが可能となっている。したがって、当該アクチュエータ10であれば、従来のアクチュエータにあったシャフト10が初期位置まで一度に戻る動作が生じないため、衝撃緩和の構成が必要なく、シャフト10のストロークに応じてサイズアップすることもなく、全体構成の小型化と低廉化を図ることができる。
【0035】
図5は、シャフト10に外力Fが働いた場合について説明する図である。図5(a)は、ストローク端状態のシャフト10に外力が働いたときの概要を示している。上記したように、ロック機構300a、300bは非励磁のときにはいずれも内側方向へのシャフト10の移動を規制する。したがってシャフト10の移動がロックされるのであるが、シャフト10に回動運動や往復運動のような振動が働いたとき、ロック機構300aの転動体302に滑りが生じて、外力Fによって動いてしまう可能性がある。
【0036】
そこで本実施形態では、シャフト10に、ストローク端近傍にあるときに転動体302がはまる外周溝18a、18bを設けている。図3(a)に示したように、外周溝18aは、シャフト10がストローク端にあるとき、転動体302よりもストローク範囲の外側に位置するよう形成されている。
【0037】
図5(b)は、外周溝18aの付近の拡大図である。転動体302と外周溝18aが嵌合したとき、転動体302には、外部弾性体218からの付勢力と、先側傾斜面312からのラジアルおよびアキシャル方向の反力、および外周溝18aからの反力が生じる。このように、当該アクチュエータ100では、ストローク端状態のシャフト10が外力Fによって戻り方向に滑ったとき、シャフト10の外周溝18にロック機構300aの転動体302が嵌合することで、シャフト10とロック機構300aとの係合力、すなわち非励磁時のシャフト10の保持力を飛躍的に高めることが可能になっている。
【0038】
上述したように、外周溝18aは、シャフト10がストローク端にあるとき、転動体302よりもストローク範囲の外側に位置するよう形成されている(図3(a)参照)。この構成によって、外力Fが作用したときに、確実に転動体302を外周溝18aに係止させることが可能になっている。特に、外周溝18aが転動体302と嵌合するまで、シャフト10はわずかに滑る程度の遊びがあるため、ロック機構300aの構成部材等の寸法のばらつきを許容でき、これら構成部材に過度な精度を求めることなく機能できる。
【0039】
当該アクチュエータでは、外力Fによってシャフト10がストロークの内方向に移動させられようとしたときは、転動体302が外周溝18aに係止して移動が規制される。一方、反対方向の外力によってシャフト10がストローク範囲の外方向に移動させられようとしたときは、衝止部16bによってその移動が規制される。すなわち、当該アクチュエータ100の構成であれば、いずれの方向にも確実にシャフト10の移動を規制し、その位置を保持することができる。
【0040】
図6および図7は、転動体302と外周溝18aとの嵌合が解除される過程の図である。図6(a)は、第1電磁部16aのコイル200が励磁した状態を示している。コイル200が励磁すると、ロック機構300aの転動体302とシャフト10の外周溝18aが嵌合したまま、可動鉄心210はシャフト10と共に右の固定鉄心104側へ移動する。
【0041】
図6(b)は、外周溝18aの付近の拡大図である。可動鉄心210が図中右側に移動する場合、転動体302には、内部弾性体216からの付勢力と、元側傾斜面314からのラジアルおよびアキシャル方向の反力、および外周溝18aからの反力が生じる。
【0042】
図6(c)は、コイル200が非励磁になった状態を示している。コイル200が非励磁になると、可動鉄心210はリターンスプリング212の付勢力によって、初期位置に戻ろうとする。
【0043】
図7(a)は図6(c)の外周溝18aの付近の拡大図である。可動鉄心210が図中左側に移動しようとするとき、係合部材310にも左側へ向かう力が作用しているため、転動体302には元側傾斜面314からの反力は作用しない。図7(b)は、第1電磁部16aの可動鉄心210が左に動き始めた状態を示している。可動鉄心210がリターンスプリング212の付勢力によって左に動くことで、転動体302と係合部材310の接触が外れ、転動体302の上方に空間が生じる。このとき、保持器304を介して内部弾性体216からの付勢力が転動体302に対してアキシャル方向に加えられることで、転動体302には外周溝18aからラジアル方向の反力が生まれる。
【0044】
図7(c)は、図7(b)の係合部材310がさらに左に動いた状態を示している。このとき、転動体302と係合部材310との間に空間が生まれたことと、保持器304を介しての内部弾性体216からのアキシャル方向の力によって、破線の矢印に示すように転動体302は外周溝18aの肩を乗り越えることが可能になる。
【0045】
図7(d)は、係合部材310がさらに左に動いた状態を示している。転動体302が外周溝18aから外れた後は、転動体302が内部弾性体216からの付勢力によって係合部材の元側傾斜面314に接触しつつ、ロック機構300aおよび可動鉄心210は初期位置へと戻る。
【0046】
これらのように、当該アクチュエータ100であれば、部品点数の増加を抑えつつ、ロック機構によっていずれの方向にもシャフト10の移動を規制してその位置を保持しつつ、さらに外周溝18a、18bによってストローク端近傍にある非励磁時のシャフト10をより確実に保持することができる。
【0047】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、アクチュエータに関し、特に、非励磁時のシャフトの保持力が高いアクチュエータに利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
10…シャフト、12…小径部、14a、14b…大径部、16a、16b…衝止部、18a、18b…外周溝、100…アクチュエータ、102…ハウジング、104…固定鉄心、106a…第1電磁部、106b…第2電磁部、108…狭隘部、200…コイル、204…永久磁石、210…可動鉄心、212…リターンスプリング、214…ストッパ、216…内部弾性体、218…外部弾性体、300a、300b…ロック機構、302…転動体、304…保持器、310…係合部材、312…先側傾斜面、314…元側傾斜面、F…外力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7