(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】フッ素化有機化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 41/22 20060101AFI20240403BHJP
C07C 43/12 20060101ALI20240403BHJP
C07C 43/225 20060101ALI20240403BHJP
C07C 69/716 20060101ALI20240403BHJP
C07C 67/307 20060101ALI20240403BHJP
C07C 323/12 20060101ALI20240403BHJP
C07C 319/20 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C07C41/22
C07C43/12
C07C43/225
C07C69/716 Z
C07C67/307
C07C323/12
C07C319/20
(21)【出願番号】P 2022108556
(22)【出願日】2022-07-05
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白井 淳
(72)【発明者】
【氏名】足達 健二
(72)【発明者】
【氏名】黒木 克親
(72)【発明者】
【氏名】岸川 洋介
(72)【発明者】
【氏名】並川 敬
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-363110(JP,A)
【文献】特開2002-363111(JP,A)
【文献】特開2017-203041(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第00930758(GB,A)
【文献】特開2022-058182(JP,A)
【文献】国際公開第01/096263(WO,A1)
【文献】Bull.Chem.Soc.Jpn,2002年,75,1597-1603
【文献】Chemistry Letters,2001年,30(3),222-223
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素化有機化合物の製造方法であって、
有機化合物を、フッ素化組成物の存在下にフッ素化する工程
を備え、
前記フッ素化組成物は、IF
5、ヨウ素
、アミン
及びHFを含有し、且つ、前記IF
51モルに対して前記ヨウ素を0.12モル以下含有する、製造方法。
【請求項2】
前記ヨウ素の含有量が、IF
51モルに対して0.11モル以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記アミンが、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、複素環式アミン及びポリマー担持アミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のアミンを含有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記アミンが脂肪族アミンを含有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記脂肪族アミンが脂肪族第三級アミンを含有する、請求項3又は4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記脂肪族第三級アミンがトリエチルアミンを含有する、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
IF
5、ヨウ素及びアミンを含有し、且つ、
前記IF
51モルに対して前記ヨウ素を0.12モル以下含有する、組成物。
【請求項8】
前記ヨウ素の含有量が、前記IF
51モルに対して0.11モル以下である、請求項
7に記載の組成物。
【請求項9】
前記アミンが、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、複素環式アミン及びポリマー担持アミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のアミンを含有する、請求項
7に記載の組成物。
【請求項10】
前記アミンが脂肪族アミンを含有する、請求項
7に記載の組成物。
【請求項11】
前記脂肪族アミンが脂肪族第三級アミンを含有する、請求項
9又は
10に記載の組成物。
【請求項12】
前記脂肪族第三級アミンがトリエチルアミンを含有する、請求項
11に記載の組成物。
【請求項13】
さらに、酸を含む、請求項
7~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記酸が、ブレンステッド酸及び/又はルイス酸を含有する、請求項
13に記載の組成物。
【請求項15】
前記酸がHFを含有する、請求項
13に記載の組成物。
【請求項16】
IF
5、ヨウ素
、アミン
及びHFを含有する、有機化合物のフッ素化試薬であって、前記IF
5が1モルに対して前記ヨウ素を0.12モル以下含有する、フッ素化試薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フッ素化有機化合物の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素化合物は、機能性材料、医農薬化合物、電子材料等の各種化学製品の他、これらの中間体等としても極めて重要な化合物である。
【0003】
近年、フッ化物イオンによる求核置換反応を利用して、有機化合物にフッ素原子を導入する反応、及びそのためのフッ素化剤が種々開発されている。
【0004】
五フッ化ヨウ素(IF5)は、高い酸化力を持つ強力なフッ素化剤として知られているが、空気中では水分と反応して、HFを発生しながら分解する液体状のフッ素化剤である。
【0005】
この様な性質を有するIF5については、例えば、特許文献1では、実施例27において、トリエチルアミン及びHFを混ぜてIF5-Et3N-HF複合体としつつ、過剰量のヨウ素(基質に対して2当量)の存在下に反応を進行させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、フッ素化有機化合物を効率よく合成することができる製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、以下の構成を包含する。
項1.フッ素化有機化合物の製造方法であって、
有機化合物を、フッ素化組成物の存在下にフッ素化する工程
を備え、
前記フッ素化組成物は、IF5、ヨウ素及びアミンを含有し、且つ、前記IF51モルに対して前記ヨウ素を0.12モル以下含有する、製造方法。
項2.前記ヨウ素の含有量が、IF51モルに対して0.11モル以下である、項1に記載の製造方法。
項3.前記アミンが、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、複素環式アミン及びポリマー担持アミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のアミンを含有する、項1又は2に記載の製造方法。
項4.前記アミンが脂肪族アミンを含有する、項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
項5.前記脂肪族アミンが脂肪族第三級アミンを含有する、項3又は4に記載の製造方法。
項6.前記脂肪族第三級アミンがトリエチルアミンを含有する、項5に記載の製造方法。
項7.前記フッ素化組成物が、さらに、酸を含む、項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
項8.前記酸が、ブレンステッド酸及び/又はルイス酸を含有する、項7に記載の製造方法。
項9.前記酸がHFを含有する、項7又は8に記載の製造方法。
項10.IF5、ヨウ素及びアミンを含有し、且つ、
前記IF51モルに対して前記ヨウ素を0.12モル以下含有する、組成物。
項11.前記ヨウ素の含有量が、前記IF51モルに対して0.11モル以下である、項10に記載の組成物。
項12.前記アミンが、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、複素環式アミン及びポリマー担持アミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種のアミンを含有する、項10又は11に記載の組成物。
項13.前記アミンが脂肪族アミンを含有する、項10~12のいずれか1項に記載の組成物。
項14.前記脂肪族アミンが脂肪族第三級アミンを含有する、項12又は13に記載の組成物。
項15.前記脂肪族第三級アミンがトリエチルアミンを含有する、項14に記載の組成物。
項16.さらに、酸を含む、項10~15のいずれか1項に記載の組成物。
項17.前記酸が、ブレンステッド酸及び/又はルイス酸を含有する、項16に記載の組成物。
項18.前記酸がHFを含有する、項16又は17に記載の組成物。
項19.IF5、ヨウ素及びアミンを含有する、有機化合物のフッ素化試薬であって、
前記IF5が1モルに対して前記ヨウ素を0.12モル以下含有する、フッ素化試薬。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、フッ素化有機化合物を効率よく合成することができる製造方法等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の製造方法、組成物等の詳細、及び形態を説明するが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、その詳細、及び形態の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【0011】
1.用語
本明細書中の記号及び略号は、特に記載のない限り、本明細書の文脈に沿い、本開示が属する技術分野において通常用いられる意味に解される。
【0012】
本明細書において、「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する概念である。
【0013】
本明細書において、数値範囲を「A~B」で示す場合、特に注釈がない限り、A以上B以下を意味する。
【0014】
本明細書において、基を「CX~CYZ基」で示す場合、特に注釈がない限り、炭素数X~YのZ基を意味する。
【0015】
特に限定されない限り、本明細書中に記載されている工程、処理、又は操作は、室温で実施され得る。
【0016】
本明細書中、室温は、10~40℃、好ましくは15~30℃の範囲内の温度を意味する。
【0017】
本開示において、「収率」とは、反応器に供給される原料化合物のモル量に対する、反応器出口からの流出ガスに含まれる目的化合物の合計モル量の割合(モル%)を意味する。
【0018】
2.製造方法
本開示の製造方法は、フッ素化有機化合物の製造方法であって、
有機化合物を、フッ素化組成物の存在下にフッ素化する工程
を備え、
前記フッ素化組成物は、IF5、ヨウ素及びアミンを含有し、且つ、前記IF51モルに対して前記ヨウ素を0.12モル以下含有する。
【0019】
このような製造方法を採用することにより、本開示においては、フッ素化有機化合物を効率よく合成することができる。特に、IF5を用いたフッ素化反応では、反応初期(例えば反応開始から0~30分、特に0~10分)に反応が進行しない期間(誘導期間)がしばしばあり、安定生産の観点で、量産時にはそれを制御することが好ましいが、本開示によれば、反応初期(例えば反応開始から0~30分、特に0~10分)においても、効率よく反応を進行させることができる。
【0020】
(2-1)有機化合物(反応基質)
本開示において、反応基質である有機化合物は、フッ化物イオンによる求核置換反応を利用して、有機化合物にフッ素原子を導入する反応によりフッ素化される化合物が好ましく、水素原子を少なくとも1つ有する水素原子含有有機化合物が好ましい。
【0021】
このような有機化合物としては、フッ素化反応をしやすく、反応初期の効率も向上させやすい観点から、例えば、水酸基、(チオ)カルボニル基、(チオ)エーテル基、イミノ基、(チオ)エステル基、(チオ)アミド基、エポキシ基、アミノ基、芳香族基、アルケニル基、アルキニル基等の1種又は2種以上の基を有する有機化合物が挙げられる。
【0022】
なお、本開示における、反応基質である有機化合物のフッ素化は、水素原子がフッ素原子に置換されることに加えて、後記に示すように、以下の原子、基等、特に上記した基又はその隣接部位がフッ素原子に置換されること(置き換えられること)をも意味する:
水素原子
(CH→CF)
水酸基
(COH→CF)
カルボニル基
(C=O→CF2)
チオカルボニル基
(C=S→CF2)
スルフィド基
(CS→CF)
イミノ基
(C=NH→CF2)
ヒドラジノ基
(C-NHNH2→C-F;
C=N-NH2→CF(N=NH)→CF2)
エポキシ基
(C2O→CF-COH)。
【0023】
このような有機化合物としては、例えば、
(2A)水酸基を有する化合物
(2B)ケトン化合物(ジケトン、β-ケトカルボン酸、β-ケトエステル、環状ケトン、ケタール等を含む);アルデヒド化合物(アセタールを含む);シッフ塩基、ヒドラゾン等のイミン化合物;又はエステル化合物
(2C)スルフィド化合物、
(2D)エポキシ化合物、
(2E)芳香族化合物(例:フェニルヒドラジン誘導体、フェノール誘導体、2-ナフトール誘導体、アニリン誘導体等)
(2F)チオカルボニル化合物
(2G)-COOR基を有するエチルスルフィド化合物のエチル部分のポリフッ素化
(2H)不飽和炭素化合物(例:オレフィン化合物等)
等が挙げられる。
【0024】
なかでも、反応の転化率、目的物の選択率、収率、反応初期の効率等の観点から、「(2B)ケトン化合物(ジケトン、β-ケトカルボン酸、β-ケトエステル、環状ケトン、ケタール等を含む);アルデヒド化合物(アセタールを含む);シッフ塩基、ヒドラゾン等のイミン化合物;又はエステル化合物」、「(2F)チオカルボニル化合物」等が好ましく、なかでも、ケトン化合物(ジケトン、β-ケトカルボン酸、β-ケトエステル、環状ケトン、ケタール等を含む);エステル化合物;チオカルボニル化合物等がより好ましく、ケトン化合物(ジケトン、β-ケトカルボン酸、β-ケトエステル、環状ケトン、ケタール等を含む);チオカルボニル化合物等がさらに好ましく、β-ケトエステル、チオケトン、ジチオカルバメート等が特に好ましい。
【0025】
以下に、本開示の製造方法におけるフッ素化を例示する。これにより、本開示の製造方法によって得られる目的物であるフッ素化有機化合物及び反応基質である有機化合物もまた例示される。
【0026】
なお、目的物であるフッ素化有機化合物は、反応の転化率、目的物の選択率、収率、反応初期の効率等の観点から、
1個以上の、前記フッ素化により生じた部分構造:-CF-
を有する化合物であることが好ましく、
1個以上の、前記フッ素化により生じた部分構造:-CHF-又は-CF2-
を有する化合物であることがより好ましく、
1個以上の、前記フッ素化により生じた部分構造:-CF3
を有する化合物であることがさらに好ましい。
【0027】
[フッ素化反応1](2A)水酸基を有する有機化合物のフッ素化
当該フッ素化では、例えば、以下の反応が行われる。
【0028】
【化1】
式中、
R
1は1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、アシル基、1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基を示す。
R
1aは1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、アシル基、1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基を示す。
【0029】
フッ素化反応1において、R1及びR1aで示されるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデジル、n-オクタデシル等の直鎖又は分枝を有するC1~C18アルキル基が挙げられ、反応の転化率、目的物の選択率、収率、反応初期の効率等の観点から、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル等の直鎖又は分枝を有するC1~C6アルキル基が好ましい。
【0030】
フッ素化反応1において、R1及びR1aで示されるアラルキル基としては、例えば、2-フェニルエチル、ベンジル、1-フェニルエチル、3-フェニルプロピル、4-フェニルブチル等のC7~C10アラルキル基等が挙げられる。
【0031】
フッ素化反応1において、R1及びR1aで示されるアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、3-ブテニル基等のC2~C6アルケニル基等が挙げられる。
【0032】
フッ素化反応1において、R1及びR1aで示されるアシル基としては、例えば、ホルミル;
アセチル、プロピオニル、n-ブチリル、イゾブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル等の直鎖又は分枝を有するC2~C6アルカノイル基;
ベンゾイル基等のC7~C15アリールカルボニル基
等が挙げられる。
【0033】
アシル基としては、例えば、
クロロアセチル基、ブロモアセチル基、ジクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基等の置換アセチル基;
メトキシアセチル基、エトキシアセチル基等のアルコキシ置換アセチル基;
メチルチオアセチル基等のアルキルチオ置換アセチル基;
フェノキシアセチル基、フェニルチオアセチル基、2-クロロベンゾイル基、3-クロロベンゾイル基、4-クロロベンゾイル基、4-メチルベンゾイル基、4-t-ブチルベンゾイル基、4-メトキシベンゾイル基、4-シアノベンゾイル基、4-ニトロベンゾイル基等の置換ベンゾイル基
等も挙げられる。
【0034】
フッ素化反応1において、R1及びR1aで示されるシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等のC3~C8シクロアルキル基が挙げられ、反応の転化率、目的物の選択率、収率、反応初期の効率等の観点から、C3~C7シクロアルキル基が好ましい。
【0035】
フッ素化反応1において、R1及びR1aで示されるヘテロシクロアルキル基としては、前記のシクロアルキル基の環状構造を形成する1個若しくはそれ以上の炭素原子が、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等で置換された基が挙げられる。
【0036】
フッ素化反応1において、R1aで示されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0037】
なお、本明細書において、「置換基を有していてもよい」とは、置換基を有する場合(すなわち、置換)と置換基を有していない場合(すなわち、無置換)を意味する。例えば、置換基を有していてもよいアルキル基とは、アルキル基(すなわち、無置換のアルキル基)と置換基を有するアルキル基(すなわち、置換アルキル基)とを包含する。
【0038】
1個以上の置換基を有するアルキル基及び1個以上の置換基を有するアルケニル基等の置換基の数は、置換基を有する場合には、1~5個、好ましくは1~3個とし得る。置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、C1~C6アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等)、C1~C6アルキルチオ基(-S-(C1~C6アルキル基)等;C1~C6アルキル基は上記したものを採用できる)、シアノ、ニトロ、アミノ基、水酸基等が挙げられ、ハロゲンを有するアルキル基としては、アルキル基の水素の一部又はすべてがフッ素に置換したものが挙げられる。
【0039】
1個以上の置換基を有するアラルキル基、1個以上の置換基を有するアリール基、1個以上の置換基を有するシクロアルキル基、1個以上の置換基を有するヘテロシクロアルキル基等の置換基の数は、置換基を有する場合には、例えば、1~5個、好ましくは1~3個であることができる。置換基としては、上記したC1~C6アルキル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、C1~C6アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等)、C1~C6アルキルチオ基(-S-(C1~C6アルキル基)等;C1~C6アルキル基は上記したものを採用できる)、シアノ、ニトロ、アミノ基、水酸基等が挙げられる。
【0040】
以上のような条件を満たす水酸基を有する有機化合物としては、具体的には、
メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の脂肪族アルコール;
ベンジルアルコール、少なくとも一つの非保護水酸基を有するモノ-、ジ-若しくはトリ-サッカライド、シクロヘキシルアルコール、アスコルビン酸等の脂環式アルコール;
ステロイド系アルコール(例:コレステロール、コール酸、コルチゾン等)等のステロイド化合物;
酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、及びケイヒ酸等の脂肪族モノカルボン酸;
シュウ酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマール酸、クエン酸等のポリカルボン酸;
安息香酸、サリチル酸、(o-,m-,p-)フタル酸、ナリジクス酸、ニコチン酸等の芳香族カルボン酸;
パントテン酸、ビオチン等の、カルボン酸基を有するビタミン化合物;
グリシン、アラニン、フェニルアラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、トレオニン、ヒスチジン、リシン、メチオニン、プロリン等の、20種の天然アミノ酸;
ヒドロキシカルボン酸(例:乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等)
等のカルボン酸化合物が挙げられる。
【0041】
[フッ素化反応2](2B)ケトン化合物(ジケトン、β-ケトカルボン酸、β-ケトエステル、環状ケトン、ケタール等を含む);アルデヒド化合物(アセタールを含む);シッフ塩基、ヒドラゾン等のイミン化合物;又はエステル化合物のフッ素化
当該フッ素化では、例えば、以下の反応が行われる。
【0042】
【0043】
【化3】
これらの式中、
Xは、同一又は異なって、O又はNR’(R’は、水素原子、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよい複素環基、1個以上の置換基を有していてもよいアルコキシ基、1個以上の置換基を有していてもよいアリールオキシ基、アミノ基、1個以上の置換基を有していてもよいモノアルキルアミノ基、1個以上の置換基を有していてもよいジアルキルアミノ基、アシル基又はアシルアミノ基を示す。)を示す。
R
2、R
2a及びR
2cは、同一又は異なって、水素原子、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよい複素環基、1個以上の置換基を有していてもよいアルコキシ基、1個以上の置換基を有していてもよいアリールオキシ基、1個以上の置換基を有していてもよいモノアルキルアミノ基、1個以上の置換基を有していてもよいジアルキルアミノ基、アシル基又はアシルアミノ基を示すか、或いは、
R
2とR
2aとは互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
R
2bは、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基を示す。
【0044】
フッ素化反応2において、R’、R2、R2a、R2b及びR2cで示されるアルキル基、アラルキル基及びアリール基としては、上記したものを採用できる。好ましい具体例や、置換基の種類及び数も同様である。
【0045】
フッ素化反応2において、R’、R2、R2a及びR2cで示されるアルケニル基、シクロルキル基、ヘテロシクロアルキル基及びアシル基としては、上記したものを採用できる。好ましい具体例や、置換基の種類及び数も同様である。
【0046】
フッ素化反応2において、R’、R2、R2a及びR2cで示される複素環基としては、例えば、ピペリジル、フリル、チエニル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピロリル、ピロリジニル、トリアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、インドリル、ピラゾリル、ピリダジニル、シンノリニル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、ピラジニル、ピリジル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、テトラゾリル等の、5~10員の、単環式又は2環式の、窒素、酸素及び硫黄よりなる群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を環構成原子として有する複素環基が挙げられる。
【0047】
本明細書において、複素環基のうち、芳香族複素環基としては、例えば、フリル、チエニル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピロリル、トリアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、インドリル、ピラゾリル、ピリダジニル、シンノリニル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、ピラジニル、ピリジル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、テトラゾリル等の、5~10員の、単環式又は2環式の、窒素、酸素及び硫黄よりなる群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を環構成原子として有するヘテロアリール基が挙げられる。
【0048】
フッ素化反応2において、R’、R2、R2a及びR2cで示されるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等の直鎖又は分枝を有するC1~C6アルコキシ基が挙げられる。
【0049】
フッ素化反応2において、R’、R2、R2a及びR2cで示されるアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ、ナフチルオキシ等が挙げられる。
【0050】
フッ素化反応2において、R’、R2、R2a及びR2cで示されるモノアルキルアミノ基としては、例えば、前記のC1~C6アルキル基でモノ置換されたアミノ基等が挙げられる。
【0051】
フッ素化反応2において、R’、R2、R2a及びR2cで示されるジアルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジ-n-プロピルアミノ、ジイソプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジペンチルアミノ、ジヘキシルアミノ等の前記のC1~C6アルキル基でジ置換されたアミノ基等が挙げられる。
【0052】
フッ素化反応2において、R’、R2、R2a及びR2cで示されるアシルアミノ基としては、例えば、ホルミルアミノ、ベンゾイルアミノ、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、n-ブチリルアミノ等の炭素数1~8のアシルアミノ基(例:ホルミルアミノ基、アルカノイルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基等)が挙げられる。
【0053】
1個以上の置換基を有するアルコキシ基の置換基の数は、置換基を有する場合には、1~5個、好ましくは1~3個とし得る。置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、C1~C6アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等)、C1~C6アルキルチオ基(-S-(C1~C6アルキル基)等;C1~C6アルキル基は上記したものを採用できる)、シアノ、ニトロ、アミノ、水酸基等が挙げられ、ハロゲンを有するアルキル基としては、アルキル基の水素の一部又はすべてがフッ素に置換したものが挙げられる。
【0054】
1個以上の置換基を有する複素環基、1個以上の置換基を有するアリールオキシ基、1個以上の置換基を有するモノアルキルアミノ基、1個以上の置換基を有するジアルキルアミノ基、1個以上の置換基を有するアシルアミノ基等の置換基の数は、置換基を有する場合には、例えば、1~5個、好ましくは1~3個であることができる。置換基としては、上記したC1~C6アルキル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、C1~C6アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等)、C1~C6アルキルチオ基(-S-(C1~C6アルキル基)等;C1~C6アルキル基は上記したものを採用できる)、シアノ、ニトロ、アミノ、水酸基等が挙げられる。
【0055】
R2とR2aとが互いに結合して形成してもよい環状構造としては、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族4~12員環等が挙げられ、脂肪族4~7員環等が好ましい。
【0056】
R2とR2aとが互いに結合して形成してもよい環状構造としての脂肪族4~7員環としては、例えば、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環等のC4~C7シクロアルカン環が挙げられる。
【0057】
1個以上の置換基を有する脂肪族4~7員環等の置換基の数は、置換基を有する場合には、1~5個、好ましくは1~3個とし得る。置換基としては、上記したC1~C6アルキル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、C1~C6アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等)、C1~C6アルキルチオ基(-S-(C1~C6アルキル基)等;C1~C6アルキル基は上記したものを採用できる)、シアノ、ニトロ、アミノ、水酸基、カルボキシルエステル基(アルコキシ-CO-基;アルコキシ基は上記したものを採用できる)等が挙げられる。また、
【0058】
【化4】
も、1個以上の置換基を有する脂肪族4~7員環に包含される。
【0059】
以上のような条件を満たすケトン化合物としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸、アセト酢酸エステル(アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等)、シクロヘキサノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、プロピオフェノン、4-ピペリドン、1-オキソ-1,2-ジヒドロナフタレン、ベンジリデンアセトフェノン(カルコン)、デオキソベンゾイン等の他、これらのケタール等も挙げられる。
【0060】
以上のような条件を満たすアルデヒド化合物としては、例えば、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、アクリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、アニスアルデヒド、ニコチンアルデヒド等の他、これらのアセタール等も挙げられる。
【0061】
シッフ塩基、ヒドラゾン等のイミン化合物としては、例えば、上記したケトン化合物又は上記したアルデヒド化合物と、適当な第一級アミン(メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン等)又はヒドラジンとの縮合物が挙げられる。
【0062】
以上のような条件を満たすエステル化合物としては、例えば、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル等が挙げられる。
【0063】
[フッ素化反応3](2C)スルフィド化合物(ジチオアセタール、ジチオケタール等も包含する)のフッ素化
当該フッ素化では、例えば、S原子の隣のメチレンの水素原子の1個又は2個をフッ素原子に置換するか、又はS原子をフッ素で置換する反応が行われる。
【0064】
【0065】
【化6】
式中、
R
3a、R
3a’及びR
3a”は、同一又は異なって、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよい複素環基を表すか、或いは
R
3aとR
3a’が一緒になって、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族4~7員環を表す。
R
3及びR
3bは、同一又は異なって、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよい複素環基、1個以上の置換基を有していてもよいアルコキシ基、1個以上の置換基を有していてもよいアリールオキシ基、アミノ基、1個以上の置換基を有していてもよいモノアルキルアミノ基、1個以上の置換基を有していてもよいジアルキルアミノ基、アシル基、アシルアミノ基、シアノ基、1個以上の置換基を有していてもよいアルキルスルフィニル基、1個以上の置換基を有していてもよいアラルキルスルフィニル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリールスルフィニル基、1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキルスルフィニル基、1個以上の置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキルスルフィニル基、1個以上の置換基を有していてもよい複素環基の結合したスルフィニル基、1個以上の置換基を有していてもよいアルキルスルホニル基、1個以上の置換基を有していてもよいアラルキルスルホニル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリールスルホニル基、1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキルスルホニル基、1個以上の置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキルスルホニル基、又は1個以上の置換基を有していてもよい複素環基の結合したスルホニル基を表すか、或いは
R
3及びR
3bは、これらが結合する炭素原子と共に、ヘテロ原子を介し、又は介することなく互いに結合して4~8員環(当該環は、ハロゲン原子、オキソ基、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、シアノ基及びアミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基で置換されていてもよい。)を形成していてもよい。
R
3c及びR
3dは、同一又は異なって、水素原子、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよい複素環基、1個以上の置換基を有していてもよいアルコキシ基、1個以上の置換基を有していてもよいアリールオキシ基、1個以上の置換基を有していてもよいモノアルキルアミノ基、1個以上の置換基を有していてもよいジアルキルアミノ基、アシル基又はアシルアミノ基を表すか、或いは
R
3cとR
3dは、これらが隣接する炭素原子と共に、互いに結合して、飽和又は不飽和の1個以上の置換基を有する脂肪族4~7員環を形成していてもよい(該環は、ハロゲン原子、オキソ基、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、シアノ基及びアミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基で置換されていてもよい。
R
3eは、アルキレン基又はアリーレン基を表す。)。
【0066】
フッ素化反応3において、R3、R3a、R3b、R3c、R3d、R3a’及びR3a”で示されるアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基及び複素環基としては、上記したものを採用できる。好ましい具体例や、置換基の種類及び数も同様である。
【0067】
フッ素化反応3において、R3c及びR3dで示されるアルコキシ基、アリールオキシ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アシル基及びアシルアミノ基としては、上記したものを採用できる。好ましい具体例や、置換基の種類及び数も同様である。
【0068】
フッ素化反応3において、R3aとR3a’ 、R3cとR3dが一緒になって形成し得る脂肪族4~7員環としては、上記したものを採用できる。好ましい具体例や、置換基の種類及び数も同様である。
【0069】
フッ素化反応3において、R’、R2、R2a及びR2cで示される1個以上の置換基を有していてもよいアルキルスルフィニル基、1個以上の置換基を有していてもよいアラルキルスルフィニル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリールスルフィニル基、1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキルスルフィニル基、1個以上の置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキルスルフィニル基、及び1個以上の置換基を有していてもよい複素環基の結合したスルフィニル基の、アルキル基、アラルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基及び複素環基としては、それぞれ、上記したものを採用できる。好ましい具体例や、置換基の種類及び数も同様である。
【0070】
フッ素化反応3において、R’、R2、R2a及びR2cで示される1個以上の置換基を有していてもよいアルキルスルホニル基、1個以上の置換基を有していてもよいアラルキルスルホニル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリールスルホニル基、1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキルスルホニル基、1個以上の置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキルスルホニル基、及び1個以上の置換基を有していてもよい複素環基の結合したスルホニル基の、アルキル基、アラルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基及び複素環基としては、それぞれ、上記したものを採用できる。好ましい具体例や、置換基の種類及び数も同様である。
【0071】
フッ素化反応3において、R’、R2、R2a及びR2cで示されるアルキルスルフィニル基、アラルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、シクロアルキルスルフィニル基、ヘテロシクロアルキルスルフィニル基、複素環基の結合したスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アラルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、ヘテロシクロアルキルスルホニル基、及び複素環基の結合したスルホニル基が有する置換基の数は、置換基を有する場合には、1~5個、好ましくは1~3個とし得る。置換基としては、上記したC1~C6アルキル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、
C1~C6アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等)、C1~C6アルキルチオ基(-S-(C1~C6アルキル基)等;C1~C6アルキル基は上記したものを採用できる)、シアノ、ニトロ、アミノ、水酸基、カルボキシルエステル基(アルコキシ-CO-基;アルコキシ基は上記したものを採用できる)等が挙げられる。
【0072】
フッ素化反応3において、R3及びR3bが、これらが結合する炭素原子と共に、ヘテロ原子を介し、又は介することなく互いに結合して形成し得る4~8員環としては、例えば、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、ピペリジン環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピロール環、ピロリジン環、トリアジン環等が挙げられる。
【0073】
フッ素化反応3において、R3及びR3bが、これらが結合する炭素原子と共に、ヘテロ原子を介し、又は介することなく互いに結合して形成し得る4~8員環が有する置換基の数は、置換基を有する場合には、1~5個、好ましくは1~3個とし得る。置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、オキソ、上記したアルキル基、上記したアルケニル基、シアノ、アミノ等が挙げられる。
【0074】
フッ素化反応3において、R3eで示されるアルキレン基としては、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、プロピレン、テトラメチレン等の直鎖又は分枝を有するC1~C18アルキレン基、好ましくは直鎖又は分枝を有するC1~C6アルキレン基が挙げられる。
【0075】
フッ素化反応3において、R3eで示されるアリーレン基としては、例えば、フェニレン基(1,4-フェニレン基等)、ナフチレン基(2,6-ナフチレン基等)等が挙げられる。
【0076】
以上のような条件を満たすスルフィド化合物としては、例えば、メチルエチルスルフィド、メチルベンジルスルフィド、2-フェニルチオ酢酸エステル、2-フェニルチオアセトフェノン、2-(メチルチオ)アセトフェノン、ビス(メチルチオ)メチルベンゼン、2-オクチル-1,3-ジチアン、2-フェニル-2-トリフルオロメチル-1,3-ジチオラン、トリス(エチルチオ)ヘキサン、4-トリス(メチルチオ)トルエン等が挙げられる。
【0077】
[フッ素化反応4](2D)エポキシ化合物のフッ素化
当該フッ素化では、例えば、以下の反応により、フッ素の付加反応が行われる。
【0078】
【化7】
式中、
R
4、R
4a、R
4b及びR
4cは、同一又は異なって、水素原子、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよい複素環基を表す。
【0079】
フッ素化反応4において、R4、R4a、R4b及びR4cで示されるアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基及び複素環基としては、上記したものを採用できる。好ましい具体例や、置換基の種類及び数も同様である。
【0080】
以上のような条件を満たすエポキシ化合物としては、例えば、オキシラン、1,2-エポキシエチルベンゼン、1-クロロ-2,3-エポキシプロパン、α,α’-エポキシビベンジル等が挙げられる。
【0081】
[フッ素化反応5](2E)芳香族化合物のフッ素化
当該フッ素化では、例えば、以下の反応により、芳香環にフッ素置換基が導入される。フェノール誘導体又はアニリン誘導体の芳香環へのフッ素化は、フッ素化後、亜鉛末等の還元剤で還元することにより行うことができ、目的とするフッ素化物を得ることができる。
【0082】
[フッ素化反応5-1]フェニルヒドラジン誘導体のフッ素化
1個以上の置換基を有していてもよいフェニルヒドラジン残基をフッ素原子に置換することができる。
【0083】
【化8】
式中、R
5a、R
5b、R
5c、R
5d及びR
5eは、同一又は異なって、水素原子、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、1個以上の置換基を有していてもよいアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、アシル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリールカルボニル基、アミノ基、1個以上の置換基を有していてもよいモノアルキルアミノ基、1個以上の置換基を有していてもよいジアルキルアミノ基、1個以上の置換基を有していてもよいアシルアミノ基、1個以上の置換基を有していてもよいアリールカルボニルアミノ基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアルキルチオ基を示す。
【0084】
フッ素化反応5-1において、R5a、R5b、R5c、R5d及びR5eで示されるアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、アシル基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基及びアシルアミノ基としては、上記したものを採用できる。好ましい具体例や、置換基の種類及び数も同様である。
【0085】
フッ素化反応5-1において、R5a、R5b、R5c、R5d及びR5eで示されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0086】
フッ素化反応5-1において、R5a、R5b、R5c、R5d及びR5eで示されるアリールカルボニル基におけるアリール基としては、上記したものを採用できる。好ましい具体例や、置換基の種類及び数も同様である。
【0087】
フッ素化反応5-1において、R5a、R5b、R5c、R5d及びR5eで示されるアリールカルボニルアミノ基におけるアリールカルボニル基としては、上記したものを採用できる。好ましい具体例や、置換基の種類及び数も同様である。
【0088】
フッ素化反応5-1において、R5a、R5b、R5c、R5d及びR5eで示されるアルキルチオ基としては、例えば、-S-(C1~C6アルキル基)等が挙げられる。C1~C6アルキル基は、上記したものを採用できる。好ましい具体例や、置換基の種類及び数も同様である。
【0089】
[フッ素化反応5-2]フェノール誘導体のフッ素化
フェノール誘導体はIF5により、以下に示すジフルオロ化したキノノイド構造となり、次いで還元することにより、オルト位又はパラ位にフッ素が導入されたフェノール誘導体が生成する。
【0090】
【化9】
式中、R
5a、R
5b、R
5c及びR
5dは、同一又は異なって、水素原子、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、1個以上の置換基を有していてもよいアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、アシル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリールカルボニル基、アミノ基、1個以上の置換基を有していてもよいモノアルキルアミノ基、1個以上の置換基を有していてもよいジアルキルアミノ基、1個以上の置換基を有していてもよいアシルアミノ基、1個以上の置換基を有していてもよいアリールカルボニルアミノ基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアルキルチオ基を示す。
【0091】
フッ素化反応5-2において、R5a、R5b、R5c、R5d及びR5eで示されるアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アシル基、アリールカルボニル基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アシルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基及びアルキルチオ基としては、上記したものを採用できる。好ましい具体例や、置換基の種類及び数も同様である。
【0092】
オルト及びパラ位の全てが置換された出発原料では、オルト又はパラ位にフッ素原子が導入され、フルオロ化したキノノイド構造の化合物が生成する。
【0093】
前記の例では、フェノール誘導体として1個以上の置換基を有していてもよいフェノールを用いたが、水酸基又はアルコキシ基等の電子供与性基を有し、及び更に置換されていてもよいベンゼン系芳香族化合物又は縮合多環炭化水素にも同様にフッ素原子を導入することができる。
【0094】
[フッ素化反応5-3]2-ナフトール誘導体のフッ素化
ナフトールの1位をモノ-又はジ-フッ素化することができる。
【0095】
【化10】
式中、R
5a、R
5b、R
5c、R
5d、R
5e、R
5f及びR
5gは、同一又は異なって、水素原子、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、1個以上の置換基を有していてもよいアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、アシル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリールカルボニル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アシルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアルキルチオ基を示す。
【0096】
フッ素化反応5-3において、R5a、R5b、R5c、R5d、R5e、R5f及びR5gで示されるアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アシル基、アリールカルボニル基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アシルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基及びアルキルチオ基としては、上記したものを採用できる。好ましい具体例や、置換基の種類及び数も同様である。
【0097】
[フッ素化反応5-4]アニリン誘導体のフッ素化
アニリン誘導体もまたフェノール誘導体と同様に、IF5により、下記に示すジフルオロ化したキノノイド構造となり、次いで還元することにより、オルト位又はパラ位にフッ素が導入されたアニリン誘導体が生成する。
【0098】
【化11】
式中、R
5a、R
5b、R
5c、及びR
5dは、同一又は異なって、水素原子、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、1個以上の置換基を有していてもよいアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、アシル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリールカルボニル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アシルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアルキルチオ基を表す。
【0099】
フッ素化反応5-4において、R5a、R5b、R5c、R5d及びR5eで示されるアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アシル基、アリールカルボニル基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アシルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基及びアルキルチオ基としては、上記したものを採用できる。好ましい具体例や、置換基の種類及び数も同様である。
【0100】
アニリン誘導体として1個以上の置換基を有していてもよいアニリン、及び1個以上の置換基を有していてもよいナフチルアミンでも同様に芳香環にフッ素原子を導入することができる。
【0101】
[フッ素化反応6](2F)チオカルボニル化合物(チオケトン、チオエステル、チオ炭酸エステル、チオアミド、ジチオカルボン酸エステル、ジチオカルバメート等を包含する)のフッ素化
この反応は、部分構造:-C(=S)-Y-
[式中、Yは、O、S、又は単結合を示す。]
を有する化合物のフッ素化を行う反応であり、例えば、以下の反応を行うことができる:
【0102】
【化12】
式中、
R
6及びR
6aは、同一又は異なって、水素原子、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよい複素環基、1個以上の置換基を有していてもよいアルコキシ基、1個以上の置換基を有していてもよいアリールオキシ基、1個以上の置換基を有していてもよいモノアルキルアミノ基、1個以上の置換基を有していてもよいジアルキルアミノ基、アシル基、アシルアミノ基を示すか、或いは、
R
6とR
6aは互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
R
6bは、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよい複素環基を示す。
【0103】
フッ素化反応6において、R6、R6a及びR6bで示されるアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基及び複素環基としては、上記したものを採用できる。好ましい具体例や、置換基の種類及び数も同様である。
【0104】
フッ素化反応6において、R6及びR6aで示されるアルコキシ基、アリールオキシ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アシル基及びアシルアミノ基としては、上記したものを採用できる。好ましい具体例や、置換基の種類及び数も同様である。
【0105】
フッ素化反応6において、R6とR6aが一緒になって形成し得る環状構造としては、上記したものを採用できる。好ましい具体例や、置換基の種類及び数も同様である。
【0106】
フッ素化反応6における式(b)の反応においてフッ素化剤の使用量を抑えた場合(例:0.5当量以下等)、R6-CF2-SR6bの生成量が優位になる。
【0107】
以上のような条件を満たすチオカルボニル化合物としては、例えば、ジチオ炭酸O-(4-イソプロピルフェニル)S-メチル、ジチオ炭酸O-(4-ブロモフェニル)S-メチル、4-(((メチルチオ)カルボノチオイル)オキシ)安息香酸エチル、ジチオ炭酸O-デシルS-メチル、ジチオ炭酸O-(3-フェニルプロピル)S-メチル、シクロヘキサンカルボチオ酸O-メチル、1-ピペリジンカルボチオ酸O-プロピル、ジチオ安息香酸メチル、チオベンゾフェノン、チオ安息香酸O-フェニル、N,N-ジメチルフェニルチオアミド、3-キノリンジチオカルボン酸エチル、トリフルオロメタンカルボチオイルナフタレン、N-メチル-N-フェニルトリフルオロメタンチオアミド、N-ベンジル-N-フェニルヘプタフルオロプロパンチオアミド、ジチオ炭酸O-(4’-ペンチル-[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-4-イル)S-メチル、
【0108】
【0109】
[フッ素化反応7](2G)-COOR基を有するエチルスルフィド化合物のエチル部分のポリフッ素化
当該フッ素化では、S原子の隣接部位のエチル部分がポリフッ素化される。
【0110】
例えば、以下の反応式:
R7-S-CH(COOR7a)-CH3→R7-S-CHF-CF2-COOR7a
にしたがって反応が進行する。
【0111】
式中、
R7は、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、又は1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基を示す。
R7aは、水素原子、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよい複素環基、1個以上の置換基を有していてもよいアルコキシ基、1個以上の置換基を有していてもよいアリールオキシ基、アミノ基、1個以上の置換基を有していてもよいモノアルキルアミノ基、1個以上の置換基を有していてもよいジアルキルアミノ基、アシル基、アシルアミノ基、シアノ基、1個以上の置換基を有していてもよいアルキルスルフィニル基、1個以上の置換基を有していてもよいアラルキルスルフィニル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリールスルフィニル基、1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキルスルフィニル基、1個以上の置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキルスルフィニル基、1個以上の置換基を有していてもよい複素環基の結合したスルフィニル基、1個以上の置換基を有していてもよいアルキルスルホニル基、1個以上の置換基を有していてもよいアラルキルスルホニル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリールスルホニル基、1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキルスルホニル基、1個以上の置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキルスルホニル基、又は1個以上の置換基を有していてもよい複素環基の結合したスルホニル基を示す。
【0112】
フッ素化反応7において、R7及びR7aで示されるアリール基としては、上記したものを採用できる。好ましい具体例や、置換基の種類及び数も同様である。
【0113】
フッ素化反応7において、R7aで示されるアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アシル基、アシルアミノ基、アルキルスルフィニル基、アラルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、シクロアルキルスルフィニル基、ヘテロシクロアルキルスルフィニル基、複素環基の結合したスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アラルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、ヘテロシクロアルキルスルホニル基及び複素環基の結合したスルホニル基としては、上記したものを採用できる。好ましい具体例や、置換基の種類及び数も同様である。
【0114】
以上のような条件を満たす、-COOR基を有するエチルスルフィド化合物としては、例えば、2-((4-クロロフェニル)チオ)プロパン酸エチル等が挙げられる。
【0115】
[フッ素化反応8](2H)不飽和炭素化合物のフッ素化
当該フッ素化では、炭素-炭素二重結合、又は炭素-炭素三重結合に、フッ素及びヨウ素が付加する。
【0116】
例えば、以下の反応式:
(a) R8aR8a’C=CR8bR8b’ → FR8aC-CR8bI
(b) R8aC≡CR8b → FR8aC=CR8bI
にしたがって反応が進行する。
【0117】
式中、
R8a、R8a’、R8b及びR8b’は、同一又は異なって、水素原子、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、アシル基、1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいヘテロシクロアルキル基、エステル基又はハロゲン原子を示すか、或いは、
R8a、R8a’、R8b及びR8b’のうちの2個以上は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
【0118】
フッ素化反応8において、R8a、R8a’、R8b及びR8b’で示されるアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基、アシル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基及びハロゲン原子としては、上記したものを採用できる。好ましい具体例や、置換基の種類及び数も同様である。
【0119】
フッ素化反応8において、R8a、R8a’、R8b及びR8b’のうちの2個以上が一緒になって形成し得る環状構造としては、上記したものを採用できる。好ましい具体例や、置換基の種類及び数も同様である。
【0120】
フッ素化反応8において、R8a、R8a’、R8b及びR8b’で示されるエステル基としては、例えば、アシル-O-基、及びアルコキシ-CO-基が挙げられる。ここで、「アシル」及び「アルコキシ」としては、前記の「アシル基」及び「アルコキシ基」を採用できる。好ましい具体例や、置換基の種類及び数も同様である。
【0121】
以上のような条件を満たす不飽和炭素化合物としては、例えば、デセン、シクロドデセン、ドデシン等のC2~C20不飽和炭素化合物等が挙げられる。
【0122】
本開示の製造方法において、反応基質である有機化合物の使用量は、特に制限されるわけではないが、反応の転化率、目的物の選択率、収率、反応初期の効率等の観点から、反応に使用し得る有機溶媒1Lに対して、0.1~100モルが好ましく、0.1~50モルがより好ましく、0.1~15モルがさらに好ましく、0.1~10モルが特に好ましい。本開示で使用するIF5は強力な酸化剤であるため、技術常識からすると、有機化合物の量を多くすると分解物も多く出ることが予想され、選択率が下がると想定されるので、収率も低下するものと予想されるが、それにも関わらず、本開示では、有機化合物の量を多くしても高収率で目的物を得やすいうえに、反応初期から効率よく反応を進行させやすい。
【0123】
(2-2)フッ素化組成物(本開示の組成物)
本開示の製造方法において使用するフッ素化組成物は、IF5、ヨウ素(I2)及びアミンを含有し、且つ、前記IF51モルに対して前記ヨウ素を0.12モル以下含有する。このフッ素化組成物は、本開示の組成物であるため、以下の説明は、本開示の組成物にも共通する。
【0124】
このようなフッ素化組成物(本開示の組成物)は、固体とすることを排除するわけではないが、反応の転化率、目的物の選択率、収率、反応初期の効率、経済性等の観点から、液体組成物が好ましい。
【0125】
当該フッ素化組成物(本開示の組成物)は、前記本開示の製造方法に使用できるものであり、その詳細は、以下の記載に加えて、前記本開示の製造方法についての説明もまた参照して、技術常識に基づき、理解され得る。
【0126】
IF
5
本開示の製造方法において、IF5は、後述のアミン、後述の酸及び後述のアミン以外の塩基よりなる群から選ばれる少なくとも1種と複合体を形成していてもよい。複合体を形成している場合及び形成していない場合ともに、フッ素化有機化合物を効率よく合成することができる。
【0127】
本開示の製造方法において、IF5の使用量は、特に制限されるわけではないが、反応の転化率、目的物の選択率、収率、反応初期の効率等の観点から、反応に使用し得る有機溶媒1Lに対して、0.1~100モルが好ましく、0.1~50モルがより好ましく、0.1~15モルがさらに好ましい。本開示で使用するIF5は強力な酸化剤であるため、技術常識からすると、IF5の量を多くすると分解物も多く出ることが予想され、選択率が下がると想定されるので、収率も低下し、反応初期の効率も低下するものと予想されるが、それにも関わらず、本開示では、IF5の量を多くしても高収率で目的物を得やすく、反応初期から効率よく反応を進行させやすい。
【0128】
本開示の製造方法において、IF5の使用量は、特に制限されるわけではないが、反応の転化率、目的物の選択率、収率、反応初期の効率等の観点から、反応基質である有機化合物1モルに対して、0.1~10.0モルが好ましく、0.3~5.0モルがより好ましく、0.5~3.0モルがさらに好ましい。
【0129】
ヨウ素
本開示の製造方法では、有機化合物をフッ素化されるに際し、ヨウ素(I2)を、多量ではなく、少量使用することにより、反応の転化率、目的物の選択率、収率等を向上させることができ、また、反応初期から効率よく反応を進行させやすいために短時間で反応を終了させることが可能となり、効率的に反応を進行させることができる。特に、ヨウ素(I2)を多量に使用した場合には、反応基質とヨウ素(I2)とが反応してヨード体の副生成物が相当量生成し、目的物の選択率、収率、反応初期の効率等が低下してしまうが、本開示ではヨウ素(I2)を少量使用するため、ヨード体の副生成物はほとんど生成せず、反応の転化率、目的物の選択率、収率、反応初期の効率等を向上させることができる。
【0130】
本開示の製造方法において、ヨウ素(I2)の使用量は、IF51モルに対して、0.12モル以下、好ましくは0.11モル以下、より好ましくは0.10モル以下、さらに好ましくは0.05モル以下、特に好ましくは0.01モル以下である。ヨウ素(I2)の使用量が、IF51モルに対して0.12モルをこえると、反応基質とヨウ素(I2)とが反応してヨード体の副生成物が相当量生成し、目的物の選択率、収率等が低下してしまううえに、反応初期には反応を進行させることができない。なお、本開示の製造方法において、ヨウ素(I2)の使用量の下限値は特に制限はなく、ごく少量であっても目的物の選択率、収率等が高く、反応速度も速いが、ヨウ素(I2)の使用量の下限値は、通常、IF51モルに対して1.0×10-10モル程度である。
【0131】
本開示の製造方法において、ヨウ素(I2)の使用量は、特に制限されるわけではないが、反応基質とヨウ素(I2)とが反応してヨード体の副生成物が生成することを抑制しやすく、反応の転化率、目的物の選択率、収率、反応初期の効率等を向上させやすい観点から、反応基質である有機化合物1モルに対して、1.0×10-10~0.12モルが好ましく、5.0×10-10~0.11モルがより好ましく、1.0×10-9~0.10モルがさらに好ましく、5.0×10-9~0.05モルが特に好ましく、1.0×10-8~0.01モルがさらに特に好ましい。
【0132】
アミン
アミンとしては、例えば、
脂肪族アミン(脂肪族第一級アミン、脂肪族第二級アミン、脂肪族第三級アミン)、脂環式アミン(脂環式第二級アミン、脂環式第三級アミン)、芳香族アミン(芳香族第一級アミン、芳香族第二級アミン、芳香族第三級アミン)、複素環式アミン等;
ポリアリルアミン、ポリビニルピリジン等の、ポリマー担持アミン
等が挙げられる。
【0133】
脂肪族第一級アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン等が挙げられる。
【0134】
脂肪族第二級アミンとしては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
【0135】
脂肪族第三級アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン等が挙げられる。
【0136】
脂環式第二級アミンとしては、例えば、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルホリン等が挙げられる。
【0137】
脂環式第三級アミンとしては、例えば、N-メチルピペラジン、N-メチルピロリジン、5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン-5-エン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0138】
芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、メチルアニリン、ジメチルアニリン、N,N-ジメチルアニリン、ハロアニリン、ニトロアニリン等が挙げられる。
【0139】
複素環式アミンとしては、例えば、ピリジン、ピリミジン、ピペラジン、キノリン、イミダゾール等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0140】
なかでも、反応の転化率、目的物の選択率、収率、反応初期の効率等の観点から、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、複素環式アミン、ポリマー担持アミン等が好ましく、脂肪族アミンがより好ましく、脂肪族第三級アミンがさらに好ましく、トリエチルアミン、ピリジン等が特に好ましく、トリエチルアミンが最も好ましい。
【0141】
本開示の製造方法において、アミンの使用量は、特に制限されるわけではないが、反応の転化率、目的物の選択率、収率、反応初期の効率等の観点から、フッ素化組成物(本開示の組成物)中のアミンの含有量として、IF51モルに対して、0.5~20モルが好ましく、0.8~10モルがより好ましく、0.9~5モルがさらに好ましい。
【0142】
本開示の製造方法において、アミンの使用量は、特に制限されるわけではないが、反応の転化率、目的物の選択率、収率、反応初期の効率等の観点から、反応基質である有機化合物1モルに対して、0.1~10.0モルが好ましく、0.3~5.0モルがより好ましく、0.5~3.0モルがさらに好ましい。
【0143】
酸
本開示の製造方法は、上記したフッ素化組成物(本開示の組成物)を用いて実施されるものであるが、反応の転化率、目的物の選択率、収率、反応初期の効率等の観点から、当該フッ素化組成物(本開示の組成物)には、さらに、酸を含むことが好ましい。
【0144】
酸は、反応の転化率、目的物の選択率、収率、反応初期の効率等の観点から、ブレンステッド酸、又はルイス酸、或いはこれらの組み合わせが好ましく、ブレンステッド酸がより好ましい。
【0145】
なお、ルイス酸は、ブレンステッドの定義では酸ではないが、ルイスの定義では酸であるものを意味することができる。
【0146】
酸としては、具体的には、例えば、
硫酸、硝酸、リン酸、ポリリン酸、フッ化水素(HF)、フッ酸、塩化水素、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、過臭素酸、過ヨウ素酸等のハロゲン化水素、ハロゲン化水素酸、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、ハロゲン酸、過ハロゲン酸等;
フルオロスルホン酸、クロロスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ジフルオロメタンスルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ニトロベンゼンスルホン酸等のスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸等;
フッ素化スルホン酸樹脂(Nafion-H)等のポリマー担持スルホン酸;
ギ酸、酢酸、プロピオン酸、クロル酢酸、ブロム酢酸、ジクロル酢酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、グリコール酸、乳酸、安息香酸、シュウ酸、コハク酸等の、モノ若しくはポリカルボン酸;
SO3、BF3、BCl3、B(OCH3)3、AlCl3、AlBr3、SbF3、SbCl3、SbF5、PF3、PF5、AsF3、AsCl3、AsF5、TiCl4、NbF5、TaF5等の、ルイス酸又はそのエーテル錯体;
HBF4、HPF6、HAsF6、HSbF6、HSbCl6等の、ルイス酸とハロゲン化水素とからなる酸、又はこれらのエーテル等との錯体;又は
これらの2種以上の混合物
等が挙げられる。
【0147】
酸は、担体に担持されていてもよい。
【0148】
当該担体としては、例えば、SiO2、メチル化SiO2、Al2O3、Al2O3-WB、MoO3、ThO2、ZrO2、TiO2、Cr2O3、SiO2-Al2O3、SiO2-TiO2、SiO2-ZrO2、TiO2-ZrO2、Al2O3-B2O3、SiO2-WO3、SiO2-NH4F、HSO3Cl-Al2O3、HF-NH4-Y、HF-Al2O3、NH4F-SiO2-Al2O3、AlF3-Al2O3、Ru-F-Al2O3、F-Al2O3、KF-Al2O3、AlPO4、AlF3、ボーキサイト、カオリン、活性炭、グラファイト、Pt-グラファイト、イオン交換樹脂、金属硫酸塩、塩化物、金属(例:Al等)、合金(例:Al-Mg、Ni-Mo等)、及びポリマー(例:ポリスチレン等)等が挙げられる。
【0149】
酸は、反応の転化率、目的物の選択率、収率、反応初期の効率等の観点から、HFを含むことが好ましい。本開示の製造方法に使用されるフッ素化組成物(本開示の組成物)は、IF5、ヨウ素及びアミンの他、HFを含むことが好ましい。
【0150】
酸の量は、特に制限されるわけではないが、反応の転化率、目的物の選択率、収率、反応初期の効率等の観点から、IF51モルに対して、0.5~20モルが好ましく、0.8~10モルがより好ましく、0.9~5モルがさらに好ましい。
【0151】
本開示の製造方法において、酸の使用量は、特に制限されるわけではないが、反応の転化率、目的物の選択率、収率、反応初期の効率等の観点から、反応基質である有機化合物1モルに対して、0.5~20モルが好ましく、0.8~10モルがより好ましく、0.9~5.0モルがさらに好ましい。
【0152】
アミン以外の塩基
本開示の製造方法は、上記したフッ素化組成物(本開示の組成物)を用いて実施されるものであるが、さらに、アミン以外の塩基を含むこともできる。
【0153】
アミン以外の塩基としては、例えば、
水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等の、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属水酸化物;
ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムブトキシド、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド等の、アルカリ金属アルコキシド;
水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化リチウム、水素化カルシウム等の、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属水素化物;
ナトリウム、カリウム、リチウム等の、アルカリ金属;
マグネシウムオキシド、カルシウムオキシド等の、アルカリ土類金属酸化物;
アンモニア、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化オクチルトリエチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム等の、水酸化アンモニウム塩又はポリマー担持水酸化アンモニウム塩(例:アンバーライト樹脂等);
等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0154】
本開示の製造方法において、アミン以外の塩基を使用する場合、アミン以外の塩基の使用量は、特に制限されるわけではないが、反応の転化率、目的物の選択率、収率、反応初期の効率等の観点から、フッ素化組成物(本開示の組成物)中のアミン以外の塩基の含有量として、IF51モルに対して、0.5~20モルが好ましく、0.8~10モルがより好ましく、0.9~5モルがさらに好ましい。
【0155】
本開示の製造方法において、アミン以外の塩基の使用量は、特に制限されるわけではないが、反応の転化率、目的物の選択率、収率、反応初期の効率等の観点から、反応基質である有機化合物1モルに対して、0.1~10.0モルが好ましく、0.3~5.0モルがより好ましく、0.5~3.0モルがさらに好ましい。
【0156】
塩
前記酸は、前記アミン及び/又はアミン以外の塩基と、塩を形成していてもよい。
【0157】
当該「塩」としては、例えば、
硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、硫酸リチウム、硫酸セシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、硫酸トリエチルアンモニウム、硫酸ピリジニウム、硫酸トリメチルピリジニウム、硫酸ポリアリルアンモニウム、硫酸ポリビニルピリジニウム、メタンスルホン酸ナトリウム、メタンスルホン酸アンモニウム、メタンスルホン酸テトラメチルアンモニウム、エタンスルホン酸カリウム、ブタンスルホン酸リチウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム等の硫酸若しくはスルホン酸の金属塩若しくはアンモニウム塩;
ギ酸ナトリウム、ギ酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸アンモニウム、酢酸メチルアンモニウム、酢酸ジエチルアンモニウム、酢酸トリエチルアンモニウム、酢酸テトラエチルアンモニウム、酢酸ピリジニウム、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、酪酸ナトリウム、酢酸ポリアリルアンモニウム、酢酸ポリビニルピリジニウム、イソ酪酸ナトリウム、バレリアン酸ナトリウム、ノナン酸ナトリウム、クロル酢酸ナトリウム、ブロム酢酸ナトリウム、トリクロル酢酸ナトリウム、トリフルオロ酢酸ナトリウム、グリコール酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム等のカルボン酸の金属塩若しくはアンモニウム塩;
LiBr、LiI、NaBr、NaI、KBr、KI、RbBr、RbI、CsBr、CsI、BeBr2、BeI2、MgBr2、MgI2、CaBr2、CaI2、SrBr2、SrI2、BaBr2、BaI2、ZnBr2、ZnI2、CuBr2、CuI2、CuBr、CuI、AgBr、AgI、AuBr、AuI、NiBr2、NiI2、PdBr2、PdI2、PtBr2、PtI2、CoBr2、Col2、FeBr2、FeBr3、FeI2、FeI3、MnBr2、MnI2、CrBr2、CrI2、PbBr2、PbI2、SnBr2、SnI2、SnBr4、SnI4等の金属ハロゲン化物;
NH4Br、NH4I、MeNH3Br、MeNH3I、Me4NBr、Me4NI、Et4NBr、Et4NI、Bu4NBr、Bu4NI、PhMe3NBr、PhMe3NI、PhCH2NMe3I、臭化ピリジニウム、ヨウ化ピリジニウム、ヨウ化クロルピリジニウム、ヨウ化メチルピリジニウム、ヨウ化シアノピリジニウム、ヨウ化ビピリジニウム、ヨウ化キノリウム、ヨウ化イソキノリウム、臭化N-メチルピリジニウム、ヨウ化N-メチルピリジニウム、ヨウ化N-メチルキノリウム等のハロゲン化ピリジニウム塩若しくはハロゲン化アンモニウム塩(Meはメチル基、Etはエチル基、Buはn-ブチル基、Phはフェニル基を示す);
Me4PF、Me4PBr、Me4PI、Et4PI、Pr4I、Bu4PBr、Bu4PI、Ph4PF、Ph4PBr、Ph4PI、テトラメチルホスホニウムアセテート等のホスホニウム塩(Meはメチル基、Etはエチル基、Prはn-プロピル基、Buはn-ブチル基、Phはフェニル基を示す);
フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、フッ化アンモニウム、フッ化テトラエチルアンモニウム、フッ化テトラブチルアンモニウム、フッ化ポリアリルアンモニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、過臭素酸ナトリウム、過ヨウ素酸ナトリウム等の、ハロゲン化水素、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、ハロゲン酸若しくは過ハロゲン酸の金属塩若しくはアミン塩;
炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩;
リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸アンモニウム、リン酸ピリジニウム等のリン酸金属塩若しくはリン酸アミン塩;
硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硝酸ピリジニウム等の硝酸金属塩又は硝酸アミン塩;
NaBF4、KBF4、LiBF4、NaSbF6、NaAsF6、NaPF6、NH4BF4、NH4SbF6、NH4PF6等のルイス酸とハロゲン化水素とからなる金属塩若しくはアミン塩;
(C2H5)4NF、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムフルオライド、(C2H5)3N-(HF)n、(C2H5)4NF-(HF)n、(n-C4H9)3N-(HF)n、(n-C4H9)4NF-(HF)n、BF3・Et2O-(HF)n等(n=1~20)のフッ素アニオン若しくはHFを有する常温溶融塩
等が挙げられる(Etはエチル基を示す)。
【0158】
当該「塩」は、1種単独であってもよく、2種以上の混合物若しくは組合せであってもよい。
【0159】
なお、塩の使用量は、上記したアミン、酸及びアミン以外の塩基の使用量に基づいて決定することができ、適宜調整することができる。
【0160】
その他の添加物
また、所望により、フッ素化組成物(本開示の組成物)中には、ヨウ素以外のハロゲン、ハロゲン間化合物、ポリハロゲン化物等の添加物を含ませることもできる。
【0161】
前記「ヨウ素以外のハロゲン」としては、例えば、臭素、塩素等が挙げられ、なかでも、反応の転化率、目的物の選択率、収率、反応初期の効率等の観点から、臭素が好ましい。
【0162】
前記「ハロゲン間化合物」としては、IF5以外のハロゲン間化合物を意味しており、例えば、ClF、BrF、ICl、IBr、I2Cl6、ICl3等が挙げられる。
【0163】
前記「ポリハロゲン化物」としては、例えば、LiCl4I、NaCl4I、KCl4I、CsCl4I、RbCl4I、Me4NCl4I、Et4NCl4I、Pr4NCl4I、Bu4NCl4I、PhNMe3Cl4I、PhCH2NMe3Cl4I、Me3SCl4I、Cl8IP、KCl3I2、Me4NCl3I2、2,2’-ビピリジニウムμ-クロロジクロロジアイオダート(2,2’-bipyridiniumμ-chlorodichlorodiiodate)、2,2’-ビキノリニウムμ-クロロジクロロジアイオダート(2,2’-biquinoliniumμ-chlorodichlorodiiodate)、KCl2I、Me4NCl2I、Me4NClI2、Et4NCl3、Ph4AsCl3、KClF2、Me4NClF4、CsClF4、CsCl3FI、KBrClI、NH4BrClI、Me4NBrClI、Me4NBrCl2、Bu4NBrCl2、Me4NBrCl2I2、CsBrFI、NaBrF2、KBrF2、CsBrF4、Me4NBrF4、CsBrF6、Me4NBrF6、Et4NBr6Cl、CsBr3、Me4NBr3、Et4Br3、Bu4NBr3、PhCH2NMe3Br3、ピリジニウムトリブロミド(pyridinium tribromide)、Br7P、CsBrI2、Me4NBrI2、Me4NBrI4、Me4NBrI6、KBr2Cl、Me4NBr2Cl、Bu4NBr2Cl、KBr2I、Me4NBr2I、Bu4NBr2I、2,2’-ビピリジニウムμ-ブロモジブロモジアイオダート(2,2’-bipyridinium μ-bromodibromodiiodate)、NaF2I、KF2I、CsF4I、CsF6I、CsF8I、KI3、CsI3、Me4NI3、Et4NI3、Pr4NI3、Bu4NI3、ピリジニウムトリアイオジド(pyridinium triiodide)、Me4NI5、Et4NI7、Me4NI9、Me4PBr3、Me4PI3、Me4PIBr2、Me4PICl2、Et4PI3、Bu4PI3、Ph4PI3、Ph4PBr3、Ph4PIBr2等が挙げられる(Meはメチル基、Etはエチル基、Prはn-プロピル基、Buはn-ブチル基、Phはフェニル基を示す)。
【0164】
当該「添加物」は、1種単独であってもよく、2種以上の混合物若しくは組合せであってもよい。
【0165】
上記の添加物を使用する場合、その使用量は、本開示の効果を損なわない範囲で使用することができ、適宜調整することができる。ただし、添加物としてヨウ素以外のハロゲンを使用する場合は、副生成物の生成を極力抑制しやすい観点から、その使用量は、上記したヨウ素の使用量と同程度又はそれ以下とすることが好ましい。
【0166】
有機溶媒
本開示の製造方法は、溶媒非存在下で反応を進行することを排除するわけではないが、反応の転化率、目的物の選択率、収率、反応初期の効率等の観点から、有機溶媒の存在下で反応を進行することが好ましい。つまり、フッ素化組成物(本開示の組成物)は、有機溶媒を用いた液体組成物であることが好ましい。
【0167】
有機溶媒は、目的物の選択率、収率、反応初期の効率等の観点から、非プロトン性有機溶媒が好ましい。
【0168】
本開示の製造方法に好ましく使用される有機溶媒としては、目的物の選択率、収率、反応初期の効率等の観点から、例えば、
ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、石油エーテル等の脂肪族溶媒(脂肪族炭化水素);
ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、フルオロトリクロロメタン、1,1,2-トリクロロトリフルオロエタン、2-クロロ-1,2-ジブロモ-1,1,2-トリフルオロエタン、1,2-ジブロモヘキサフルオロプロパン、1,2-ジブロモテトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロテトラクロロエタン、1,2-ジフルオロテトラクロロエタン、ヘプタフルオロ-2,3,3-トリクロロブタン、1,1,1,3-テトラクロロテトラフルオロプロパン、1,1,1-トリクロロペンタフルオロプロパン、1,1,1-トリクロロトリフルオロエタン、ポリクロロトリフルオロエチレン等のハロゲン化脂肪族溶媒(ハロゲン化炭化水素);
ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、γ-ブチロラクトン、プロピレンカーボナート等のエステル溶媒;
アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒;
ベンゼン、クロロベンゼン、トルエン、ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ニトロベンゼン等の芳香族溶媒(芳香族炭化水素);
ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、及びメチルターシャリーブチルエーテル(MTBE)等のエーテル溶媒;
アセトン等のケトン溶媒;
N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、テトラメチルウレア、1,3-ジメチルプロピレンウレア、ヘキサメチルフォスフォルアミド(HMPA)等のアミド溶媒;
ジメチルスルホキシド(DMSO);
ニトロメタン
等が挙げられる。
【0169】
これらは、単独で、又は任意の2種以上の組み合わせで(例:混合溶媒として)、用いられる。
【0170】
なかでも、反応の転化率、目的物の選択率、収率、反応初期の効率等の観点から、脂肪族溶媒、ハロゲン化脂肪族溶媒、エステル溶媒、ニトリル溶媒、芳香族溶媒、エーテル溶媒、ケトン溶媒、アミド溶媒等が好ましく、脂肪族溶媒、ハロゲン化脂肪族溶媒、ニトリル溶媒、芳香族溶媒等がより好ましく、ハロゲン化脂肪族溶媒、ニトリル溶媒、芳香族溶媒等がさらに好ましい。
【0171】
反応条件等
本開示の製造方法におけるフッ素化の反応温度は、特に制限されるわけではないが、反応の転化率、目的物の選択率、収率、反応初期の効率等の観点から、例えば、-20~120℃が好ましく、-10~100℃がより好ましく、0~90℃がさらに好ましく、5~80℃が特に好ましい。
【0172】
本開示の製造方法におけるフッ素化の反応時間は、反応基質(有機化合物)、目的物等に応じて異なり得るが、反応の転化率、目的物の選択率、収率、反応初期の効率、経済性等の観点から、例えば、3分~80時間が好ましく、5分~60時間がより好ましく、30分~40時間がさらに好ましく、1~30時間が特に好ましく、2~24時間が最も好ましい。
【0173】
本開示におけるフッ素化を行う際の雰囲気については、特に制限されるわけではないが、不活性ガス雰囲気下が好ましい。当該不活性ガスは、窒素、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。
【0174】
本開示におけるフッ素化の反応圧力は、特に制限されるわけではないが、反応の転化率、目的物の選択率、収率、反応初期の効率、経済性等の観点から、0kPa以上が好ましく、10kPa以上がより好ましく、20kPa以上がさらに好ましく、30kPa以上が特に好ましい。反応圧力の上限は特に制限はなく、通常、2MPa程度である。なお、本開示において、圧力については特に表記が無い場合はゲージ圧とする。
【0175】
本開示におけるフッ素化において使用できる反応器としては、上記温度及び圧力に耐え得るものであれば、形状及び構造は特に限定されない。反応器としては、例えば、縦型反応器、横型反応器、多管型反応器等が挙げられる。反応器の材質としては、例えば、ステンレス、鉄、ニッケル、鉄ニッケル合金、ハステロイ、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0176】
フッ素化反応終了後は、必要に応じて常法にしたがって精製処理を行い、フッ素化有機化合物を得ることができる。
【0177】
本開示の反応により、反応基質1モルあたりに導入されるフッ素原子の数(モル数)は、特に制限されるわけではないが、例えば、0.65~20モル、0.70~10モル、0.75~7モル、0.80~5モル等とすることができる。
【実施例】
【0178】
以下に実施例を示し、本開示の特徴を明確にする。本開示はこれら実施例に限定されるものではない。
【0179】
なお、以下の実施例では、反応は、窒素雰囲気下に行った。
【0180】
実施例中の記号及び略号の意味を以下に示す。
Et3N:トリエチルアミン。
【0181】
また、以下の実施例では、フッ素化組成物中のヨウ素の含有量は、以下の方法により定量した。
1.フッ素化組成物(約7g)を氷水(30g)へ滴下する。
2.クロロホルムを用いてヨウ素を抽出する。
3.クロロホルム層を重曹水及び水で洗浄する。
4.クロロホルム層に、0.1mol/LのNa2S2O3水溶液(15g)を添加し、室温で10分間激しく攪拌する。
5.水層を分取する。
6.水層を適切に水で希釈後、イオンクロマトグラフィーをもちいて、ヨウ素イオンとしてヨウ素の含有量を定量する。
【0182】
IF5-Et3N-3HF(1.0g,2.62mmol)へヨウ素(66.0mg、0.26mmol)を添加したフッ素化組成物を上記の手順でヨウ素を定量したところ、65.8mgであったことから分析方法の信頼性を確認した。
【0183】
実施例1
反応器へ、ジクロロメタン(4.0mL)を加えた後、撹拌しながらIF5-Et3N-3HF(460mg,1.2mmol)及びヨウ素のジクロロメタン希釈液(1mL,ヨウ素として0.0001mg,0.0000004mmol含有)を添加した。その後、エチル3-オキソブタノエート(Ethyl 3-oxobutanoate;130mg,1.0mmol)を添加し、室温で反応させた。3時間後、F-NMRで、エチル2-フルオロ-3-オキソブタノエート(Ethyl 2-fluoro-3-oxobutanoate)26%,エチル2-ジフルオロ-3-オキソブタノエート(Ethyl 2-difluoro-3-oxobutanoate)1%が生成したことを確認した。
【0184】
実施例2
反応器へ、ジクロロメタン(4.0mL)を加えた後、撹拌しながらIF5-Et3N-3HF(460mg,1.2mmol)及びヨウ素(1.5mg,0.0059mmol)を添加した。その後、エチル3-オキソブタノエート(Ethyl 3-oxobutanoate;130mg,1.0mmol)を添加し、室温で反応させた。3時間後、F-NMRで、エチル2-フルオロ-3-オキソブタノエート(Ethyl 2-fluoro-3-oxobutanoate)20%,エチル2-ジフルオロ-3-オキソブタノエート(Ethyl 2-difluoro-3-oxobutanoate)1%が生成したことを確認した。
【0185】
実施例3
反応器へ、ジクロロメタン(4.0mL)を加えた後、撹拌しながらIF5-Et3N-3HF(460mg,1.2mmol)及びヨウ素(15.2mg,0.06mmol)を添加した。その後、エチル3-オキソブタノエート(Ethyl 3-oxobutanoate;130mg,1.0mmol)を添加し、室温で反応させた。3時間後、F-NMRで、エチル2-フルオロ-3-オキソブタノエート(Ethyl 2-fluoro-3-oxobutanoate)18%,エチル2-ジフルオロ-3-オキソブタノエート(Ethyl 2-difluoro-3-oxobutanoate)2%が生成したことを確認した。
【0186】
実施例4
反応器へ、トルエン(3.0mL)を加えた後、撹拌しながらIF5-Et3N-3HF(460mg,1.2mmol)及びヨウ素のジクロロメタン希釈液(1mL,ヨウ素として0.0001mg,0.0000004mmol含有)を添加した。その後、O-n-デシルS-メチルジチオカーボネート(O-n-decyl S-methyl dithiocarbonate;297.6mg,1.2mmol)を添加し、室温で反応させた。10時間後、F-NMRで、n-デシルトリフルオロメチルエーテル(n-decyl trifluoromethyl ether;CF3体)20%,メチルn-デシルオキシジフルオロメチルスルフィド(methyl n-decyloxydifluoromethyl sulfide;CF2体)49%が生成したことを確認した。
【0187】
実施例5
反応器へ、トルエン(3.0mL)を加えた後、撹拌しながらIF5-Et3N-3HF(460mg,1.2mmol)及びヨウ素(14.3mg,0.057mmol)を添加した。その後、O-n-デシルS-メチルジチオカーボネート(O-n-decyl S-methyl dithiocarbonate;297.6mg,1.2mmol)を添加し、室温で反応させた。10時間後、F-NMRで、n-デシルトリフルオロメチルエーテル(n-decyl trifluoromethyl ether;CF3体)22%,メチルn-デシルオキシジフルオロメチルスルフィド(methyl n-decyloxydifluoromethyl sulfide;CF2体)51%が生成したことを確認した。
【0188】
比較例1
反応器へ、ジクロロメタン(4.0mL)を加えた後、撹拌しながらIF5-Et3N-3HF(460mg,1.2mmol)及びヨウ素(151.8mg,0.6mmol)を添加した。その後、エチル3-オキソブタノエート(Ethyl 3-oxobutanoate;130mg,1.0mmol)を添加し、室温で反応させた。3時間後、F-NMRで、エチル2-フルオロ-3-オキソブタノエート(Ethyl 2-fluoro-3-oxobutanoate)0.1%が生成したことを確認した。エチル2-ジフルオロ-3-オキソブタノエート(Ethyl 2-difluoro-3-oxobutanoate)は生成しなかった。
【0189】
比較例2
反応器へ、ジクロロメタン(4.0mL)を加えた後、撹拌しながらIF5-Et3N-3HF(460mg,1.2mmol)を添加した。その後、エチル3-オキソブタノエート(Ethyl 3-oxobutanoate;130mg,1.0mmol)を添加し、室温で反応させた。3時間後、F-NMRで、エチル2-フルオロ-3-オキソブタノエート(Ethyl 2-fluoro-3-oxobutanoate)11%、エチル2-ジフルオロ-3-オキソブタノエート(Ethyl 2-difluoro-3-oxobutanoate)6%が生成したことを確認した。
【0190】
実施例6及び比較例3
反応器へ、モノグライム(1.0mL)とアセトニトリル(2.0mL)を加えた後、撹拌しながらIF5-Et3N-3HF(1264mg,3.3mmol)及びヨウ素(実施例6:126mg,0.33mmol、比較例3:添加無し)を添加した。その後、O-(3,4,5-trifluorophenyl) 4''-butyl-2',3,5-trifluoro-[1,1':4',1''-terphenyl]-4-carbothioate(1.59g,3.0mmol)を添加し、50℃で反応させた。各時間における4''-butyl-4-(difluoro(3,4,5-trifluorophenoxy)methyl)-2',3,5-trifluoro-1,1':4',1''-terphenylの収率を下記の表に示す。ヨウ素を添加することで、反応が開始されるまでの時間を短縮することが可能であることを確認した。
【0191】
【0192】
比較例4
反応器へ、トルエン(10.0mL)を加えた後、撹拌しながらIF5-Et3N-3HF(1.54g,4.03mmol)を添加した。その後、O-n-デシルS-メチルジチオカーボネート(O-n-decyl S-methyl dithiocarbonate;1.0g,4.03mmol)を添加し、室温で反応させた。10時間後、F-NMRで、n-デシルトリフルオロメチルエーテル(n-decyl trifluoromethyl ether;CF3体)5%、メチルn-デシルオキシジフルオロメチルスルフィド(methyl n-decyloxydifluoromethyl sulfide;CF2体)50%が生成したことを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0193】
本発明によれば、フッ素化有機化合物を効率よく合成することができる製造方法等、及び効率よく有機化合物をフッ素化出来る組成物等を提供できる。