(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】空気質の調整システム
(51)【国際特許分類】
B01D 53/26 20060101AFI20240403BHJP
B01D 53/06 20060101ALI20240403BHJP
F24F 3/147 20060101ALI20240403BHJP
F24F 7/08 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
B01D53/26 220
B01D53/06 100
F24F3/147
F24F7/08 101C
(21)【出願番号】P 2022109471
(22)【出願日】2022-07-07
(62)【分割の表示】P 2020062369の分割
【原出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】池上 周司
(72)【発明者】
【氏名】春名 俊治
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特許第7104339(JP,B2)
【文献】特開2020-018995(JP,A)
【文献】特開2006-000617(JP,A)
【文献】中国実用新案第209484741(CN,U)
【文献】特開2008-043899(JP,A)
【文献】特開2015-202467(JP,A)
【文献】特開2016-098212(JP,A)
【文献】特開2010-201292(JP,A)
【文献】特表2019-504271(JP,A)
【文献】特開2016-148438(JP,A)
【文献】特開2017-170359(JP,A)
【文献】特開2008-132425(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0258019(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104107619(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第3498368(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/297010(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/26
B01D 53/06
F24F 3/147
F24F 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中の対象物質を吸着すると共に吸着している前記対象物質が脱離する吸脱着部(122)を備え、
前記吸脱着部(122)は、前記対象物質の吸着時にエネルギーを蓄積し且つ蓄積した当該エネルギーの少なくとも一部を前記対象物質の脱離時に放出し、
前記吸脱着部(122)は、前記対象物質の吸脱着に応じて発生する吸脱着熱エネルギーを構造変化エネルギーに変換する材料で構成される
ことを特徴とする空気質の調整システム。
【請求項2】
空気中の対象物質を吸着する吸着領域(122a)及び吸着している前記対象物質が脱離する脱離領域(122b)を有する吸脱着部(122)と、
前記吸着領域(122a)の上流側に設けられ且つ前記吸着領域(122a)に流入する空気を冷却する冷却部(128)とを備え、
前記吸脱着部(122)は、前記吸着領域(122a)から流出する空気の空気状態から、前記吸着領域(122a)に吸着される前記対象物質に残留するエネルギー、前記吸脱着部(122)における空気の摩擦熱、及び、前記吸脱着部(122)の熱容量による熱の出入を除いた空気状態における等エンタルピー線上よりも高い温度において前記対象物質を吸着し、
前記吸脱着部(122)は、前記対象物質の吸脱着に応じて発生する吸脱着熱エネルギーを構造変化エネルギーに変換する材料で構成される
ことを特徴とする空気質の調整システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記脱離領域(122b)の上流側に設けられ且つ前記脱離領域(122b)に流入する空気を加熱する加熱部(126)をさらに備え、
前記吸脱着部(122)は、前記脱離領域(122b)から流出する空気の空気状態から、前記脱離領域(122b)から脱離する前記対象物質に残留するエネルギー、前記吸脱着部(122)における空気の摩擦熱、及び、前記吸脱着部(122)の熱容量による熱の出入を除いた空気状態における等エンタルピー線上よりも低い温度において前記対象物質を脱離する
ことを特徴とする空気質の調整システム。
【請求項4】
空気中の対象物質を吸着する吸着領域(122a)及び吸着している前記対象物質が脱離する脱離領域(122b)を有する吸脱着部(122)と、
前記脱離領域(122b)の上流側に設けられ且つ前記脱離領域(122b)に流入する空気を加熱する加熱部(126)とを備え、
前記吸脱着部(122)は、前記脱離領域(122b)から流出する空気の空気状態から、前記脱離領域(122b)から脱離する前記対象物質に残留するエネルギー、前記吸脱着部(122)における空気の摩擦熱、及び、前記吸脱着部(122)の熱容量による熱の出入を除いた空気状態における等エンタルピー線上よりも低い温度において前記対象物質を脱離し、
前記吸脱着部(122)は、前記対象物質の吸脱着に応じて発生する吸脱着熱エネルギーを構造変化エネルギーに変換する材料で構成される
ことを特徴とする空気質の調整システム。
【請求項5】
空気中の対象物質を吸着すると共に吸着している前記対象物質が脱離する吸脱着部(122)と、
前記吸脱着部(122)の温度を調整する調整部(126,128)と
を備え、
前記調整部(126,128)は、前記吸脱着部(122)で吸脱着される前記対象物質に残留するエネルギー、前記吸脱着部(122)における空気の摩擦熱、及び、前記吸脱着部(122)の熱容量による熱の出入を除いたエネルギーバランスで見たときに、前記吸脱着部(122)への流入前後での空気のエネルギー差よりも小さいエネルギー量を、前記対象物質の吸着時には前記吸脱着部(122)から奪い、前記対象物質の脱離時には前記吸脱着部(122)に与え、
前記吸脱着部(122)は、前記対象物質の吸脱着に応じて発生する吸脱着熱エネルギーを構造変化エネルギーに変換する材料で構成される
ことを特徴とする空気質の調整システム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項において、
前記対象物質は、水、二酸化炭素、又は臭気物質である
ことを特徴とする空気質の調整システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気質の調整システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、吸着材に対する水分の吸着と脱離を利用して空気の加湿や除湿を行う湿度調節装置が知られている。
【0003】
従来の湿度調節装置では、除湿を行う場合、空気に含まれる水分を吸着材に吸着させて空気を除湿する。水分を吸着した吸着材は、加熱により再生されて再び除湿に利用される。言い換えると、吸着材を加熱すると、吸着材から水分が脱離して吸着材が再生される。一方、加湿を行う場合、水分を含む空気から吸着材に水分を吸着させた後、吸着材から脱離させた水分を加湿対象の空気に供給する。この場合も、吸着材を加熱することによって、吸着材から水分を脱離させる。吸着材として、例えば、水分子との結合力が強く水分の吸着性能に優れたゼオライトなどが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の吸着材を用いた空気質の調整システムでは、水分等の空気中の対象物質を吸脱着する際に吸脱着熱が発生し、この吸脱着熱が周囲の温度を上下させる結果、対象物質の吸脱着量が減少してエネルギー効率が悪くなり、低消費電力化が困難になってしまう。
【0006】
本開示の目的は、吸着材を用いた空気質の調整システムの消費電力を低減できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様は、空気中の対象物質を吸着すると共に吸着している前記対象物質が脱離する吸脱着部(122)を備え、前記吸脱着部(122)は、前記対象物質の吸着時にエネルギーを蓄積し且つ蓄積した当該エネルギーの少なくとも一部を前記対象物質の脱離時に放出することを特徴とする空気質の調整システムである。
【0008】
第1の態様では、対象物質の吸着時には吸着熱エネルギーの一部が吸脱着部(122)に蓄積されるため、従来よりも高い温度域でも吸脱着部(122)を駆動できる。また、対象物質の脱離時には、吸脱着部(122)に蓄積されたエネルギーが放出されるため、従来よりも低い温度域でも吸脱着部(122)を駆動できる。従って、空気質の調整システムの消費電力を低減することができる。
【0009】
本開示の第2の態様は、空気中の対象物質を吸着する吸着領域(122a)及び吸着している前記対象物質が脱離する脱離領域(122b)を有する吸脱着部(122)と、前記吸着領域(122a)の上流側に設けられ且つ前記吸着領域(122a)に流入する空気を冷却する冷却部(128)とを備え、前記吸脱着部(122)は、前記吸着領域(122a)から流出する空気の空気状態から、前記吸着領域(122a)に吸着される前記対象物質に残留するエネルギー、前記吸脱着部(122)における空気の摩擦熱、及び、前記吸脱着部(122)の熱容量による熱の出入を除いた空気状態における等エンタルピー線上よりも高い温度において前記対象物質を吸着することを特徴とする空気質の調整システムである。
【0010】
第2の態様では、対象物質の吸着時には、吸脱着部(122)が、吸着領域(122a)から流出する空気の空気状態における等エンタルピー線上よりも高い温度で対象物質を吸着する。このため、従来よりも高い温度域でも吸脱着部(122)を駆動できる。従って、空気質の調整システムの消費電力を低減することができる。
【0011】
本開示の第3の態様は、前記第2の態様において、前記脱離領域(122b)の上流側に設けられ且つ前記脱離領域(122b)に流入する空気を加熱する加熱部(126)をさらに備え、前記吸脱着部(122)は、前記脱離領域(122b)から流出する空気の空気状態から、前記脱離領域(122b)から脱離する前記対象物質に残留するエネルギー、前記吸脱着部(122)における空気の摩擦熱、及び、前記吸脱着部(122)の熱容量による熱の出入を除いた空気状態における等エンタルピー線上よりも低い温度において前記対象物質を脱離することを特徴とする空気質の調整システムである。
【0012】
第3の態様では、対象物質の脱離時には、吸脱着部(122)が、脱離領域(122b)から流出する空気の空気状態における等エンタルピー線上よりも低い温度で対象物質を脱離する。このため、従来よりも低い温度域でも吸脱着部(122)を駆動できる。従って、空気質の調整システムの消費電力を低減することができる。
【0013】
本開示の第4の態様は、空気中の対象物質を吸着する吸着領域(122a)及び吸着している前記対象物質が脱離する脱離領域(122b)を有する吸脱着部(122)と、前記脱離領域(122b)の上流側に設けられ且つ前記脱離領域(122b)に流入する空気を加熱する加熱部(126)とを備え、前記吸脱着部(122)は、前記脱離領域(122b)から流出する空気の空気状態から、前記脱離領域(122b)から脱離する前記対象物質に残留するエネルギー、前記吸脱着部(122)における空気の摩擦熱、及び、前記吸脱着部(122)の熱容量による熱の出入を除いた空気状態における等エンタルピー線上よりも低い温度において前記対象物質を脱離することを特徴とする空気質の調整システムである。
【0014】
第4の態様では、対象物質の脱離時には、吸脱着部(122)が、脱離領域(122b)から流出する空気の空気状態における等エンタルピー線上よりも低い温度で対象物質を脱離する。このため、従来よりも低い温度域でも吸脱着部(122)を駆動できる。従って、空気質の調整システムの消費電力を低減することができる。
【0015】
本開示の第5の態様は、空気中の対象物質を吸着すると共に吸着している前記対象物質が脱離する吸脱着部(122)と、前記吸脱着部(122)の温度を調整する調整部(126,128)とを備え、前記調整部(126,128)は、前記吸脱着部(122)で吸脱着される前記対象物質に残留するエネルギー、前記吸脱着部(122)における空気の摩擦熱、及び、前記吸脱着部(122)の熱容量による熱の出入を除いたエネルギーバランスで見たときに、前記吸脱着部(122)への流入前後での空気のエネルギー差よりも小さいエネルギー量を、前記対象物質の吸着時には前記吸脱着部(122)から奪い、前記対象物質の脱離時には前記吸脱着部(122)に与えることを特徴とする空気質の調整システムである。
【0016】
第5の態様では、対象物質の吸着時には、調整部(126,128)が、吸脱着部(122)への流入前後での空気のエネルギー差よりも小さいエネルギー量を吸脱着部(122)から奪うため、従来よりも高い温度域でも吸脱着部(122)を駆動できる。また、対象物質の脱離時には、調整部(126,128)が、吸脱着部(122)への流入前後での空気のエネルギー差よりも小さいエネルギー量を吸脱着部(122)に与えるため、従来よりも低い温度域でも吸脱着部(122)を駆動できる。従って、空気質の調整システムの消費電力を低減することができる。
【0017】
本開示の第6の態様は、前記第1~第5の態様において、前記吸脱着部(122)は、前記対象物質の吸脱着に応じて発生する吸脱着熱エネルギーを構造変化エネルギーに変換する材料で構成されることを特徴とする空気質の調整システムである。
【0018】
第6の態様では、吸脱着部(122)によって、対象物質の吸着時にエネルギーを蓄積し且つ蓄積した当該エネルギーの少なくとも一部を対象物質の脱離時に放出することができる。
【0019】
本開示の第7の態様は、前記第6の態様において、前記材料は、構造柔軟性を有する金属有機構造体であることを特徴とする空気質の調整システムである。
【0020】
第7の態様では、対象物質の吸脱着に応じて発生する吸脱着熱エネルギーを構造変化エネルギーに変換する材料で吸脱着部(122)を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る空気質の調整システムの全体構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る空気質の調整システムの一部の概略構成図である。
【
図3】
図3は、実施形態1で用いる吸着材の特性を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態1で用いる吸着材により除湿を行う場合における湿り空気線図上の動きの一例である。
【
図5】
図5は、実施形態1で用いる吸着材により加湿を行う場合における湿り空気線図上の動きの一例である。
【
図6】
図6は、対象物質を吸着材に吸着させる場合における対象物質の残留エネルギーを示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態1で用いる吸着材に対象物質を吸着させる場合における空気状態の模式図である。
【
図8】
図8は、実施形態1で用いる吸着材から対象物質を脱離させる場合における空気状態の模式図である。
【
図9】
図9は、実施形態1の変形例に係る空気質の調整システムの一部の概略構成図である。
【
図10】
図10は、実施形態2に係る空気質の調整システムの設置状態を示す建物の概略断面図である。
【
図11】
図11は、実施形態2に係る空気質の調整システムの概略構造を示す平面図、右側面図、及び左側面図である。
【
図12】
図12は、実施形態2に係る空気質の調整システムにおける冷媒回路の構成を示す配管系統図であって、(A)は第1動作中の冷媒の流れを示し、(B)は第2動作中の冷媒の流れを示す。
【
図13】
図13は、実施形態2に係る空気質の調整システムのコントローラの構成を示すブロック図である。
【
図14】
図14は、実施形態2に係る空気質の調整システムにおける除湿運転の第1動作中の空気の流れを示す概略の平面図、右側面図、及び左側面図である。
【
図15】
図15は、実施形態2に係る空気質の調整システムにおける除湿運転の第2動作中の空気の流れを示す概略の平面図、右側面図、及び左側面図である。
【
図16】
図16は、実施形態2に係る空気質の調整システムにおける加湿運転の第1動作中の空気の流れを示す概略の平面図、右側面図、及び左側面図である。
【
図17】
図17は、実施形態2に係る空気質の調整システムにおける加湿運転の第2動作中の空気の流れを示す概略の平面図、右側面図、及び左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施形態1)
実施形態1について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る空気質の調整システムは、空調機と一体に構成されて加湿を行う湿度調節装置である。
【0023】
図1に示す空気質の調整システムは、室内機(1)と室外機(2)とによって構成されている。室内機(1)は、室内熱交換器(3)と室内ファン(4)とを備え、室内の壁面に取り付けられている。室外機(2)は、室外に設置されている。この室外機(2)には、図示は省略しているが、圧縮機、膨張機構、室外熱交換器、室外ファン等の構成機器が収納されている。室内機(1)と室外機(2)とは、一対の連絡配管(5)によって接続されている
室内熱交換器(3)と共に前述の圧縮機、膨張機構及び室外熱交換器が連絡配管(5)等によって接続されて、冷媒回路が構成されている。この冷媒回路は、図外の四路切換弁を備え、冷媒の循環方向を反転可能に構成されている。そして、冷媒回路では、冷媒が循環して冷凍サイクル動作とヒートポンプ動作とが切り換えて行われる。
【0024】
加湿ユニット(120)は、本実施形態の湿度調節装置を構成するものであって、室外機(2)と一体に形成されている。この加湿ユニット(120)には、空気ダクト(121)の一端が接続されている。空気ダクト(121)の他端は、室内機(1)に接続されている。具体的には、空気ダクト(121)の他端は、室内機(1)の内部における室内熱交換器(3)の上流に開口している。
【0025】
図2に示すように、加湿ユニット(120)には、除湿側通路(123)と再生側通路(125)とが区画形成されている。また、加湿ユニット(120)には、除湿側通路(123)と再生側通路(125)の両方を横断する姿勢で回転ロータ(122)が設置されている。この回転ロータ(122)は、本実施形態で「吸脱着部」として機能する。
【0026】
除湿側通路(123)における回転ロータ(122)の下流には、除湿側ファン(124)が設けられている。この除湿側ファン(124)を運転すると、除湿側通路(123)に室外空気が取り込まれる。除湿側通路(123)に取り込まれた室外空気は、回転ロータ(122)を通過した後に室外へ排出される。除湿側通路(123)における回転ロータ(122)の上流に、回転ロータ(122)に流入する空気を冷却する冷却部(128)を配置してもよい。
【0027】
再生側通路(125)には、「加熱部」となるヒータ(126)と再生側ファン(127)とが設けられている。また、再生側通路(125)の終端には、前述の空気ダクト(121)の一端が接続されている。ヒータ(126)は、回転ロータ(122)の上流に配置され、回転ロータ(122)に流入する空気を加熱する。一方、再生側ファン(127)は、回転ロータ(122)の下流に配置されている。この再生側ファン(127)を運転すると、再生側通路(125)に室外空気が取り込まれる。再生側通路(125)に取り込まれた室外空気は、ヒータ(126)と回転ロータ(122)とを順に通過し、その後に空気ダクト(121)に導入される。
【0028】
尚、ヒータ(126)を用いる代わりに、前述の冷媒回路で発生させた熱を用いて、再生側通路(125)に取り込まれた室外空気を加熱してもよい。
【0029】
回転ロータ(122)は、円板状に形成されている。また、回転ロータ(122)は、ハニカム状に形成された基材の表面に吸着材を担持させて構成されている。尚、本明細書の「吸着材」には、対象物質(例えば、水蒸気)の吸着と吸収の両方を行う材料(いわゆる収着材)も含まれる。回転ロータ(122)は、その厚さ方向に空気を通過させることができ、通過する空気と吸着材とを接触させるように構成されている。回転ロータ(122)の基材としては、セラミック紙、ガラス繊維、セルロースを主成分とした有機化合物(例えば、紙)、金属、樹脂等の材料が利用可能である。これらの材料は、比熱が小さいので、このような材料で、「吸脱着部」となる回転ロータ(122)を形成すると、「吸脱着部」の熱容量が小さくなる。
【0030】
回転ロータ(122)は、前述のように、除湿側通路(123)と再生側通路(125)の両方を横断する姿勢で配置されている。具体的には、回転ロータ(122)のうち扇形状の一部分である脱離領域(122b)が、再生側通路(125)を横切る姿勢で設けられている。従って、再生側通路(125)を流れる空気は、回転ロータ(122)の脱離領域(122b)を通過する。また、回転ロータ(122)の残りの部分である吸着領域(122a)は、除湿側通路(123)を横切る姿勢で設けられている。従って、除湿側通路(123)を流れる空気は、回転ロータ(122)の吸着領域(122a)を通過する。
【0031】
尚、回転ロータ(122)は、図外のモータによって駆動されて中心軸周りに回転し、除湿側通路(123)と再生側通路(125)との間を移動する。すなわち、除湿側通路(123)を流れる空気と接触した回転ロータ(122)における吸着領域(122a)であった部分は、回転ロータ(122)の回転に伴って再生側通路(125)つまり脱離領域(122b)に移動する。一方、再生側通路(125)を流れる空気と接触した回転ロータ(122)の脱離領域(122b)であった部分は、回転ロータ(122)の回転に伴って除湿側通路(123)つまり吸着領域(122a)に再び移動する。
【0032】
回転ロータ(122)に用いられる吸着材としては、水分の吸着時にエネルギーを蓄積し且つ蓄積した当該エネルギーの少なくとも一部を水分の脱離時に放出する材料、例えば、水分の吸脱着に応じて発生する吸脱着熱エネルギーを構造変化エネルギーに変換する材料を用いる。このような材料として、構造柔軟性を有する金属有機構造体(フレキシブルMOF)が利用可能である。本実施形態の吸着材の特性等については、後述する。
【0033】
-加湿動作-
図1に示す空気質の調整システムは、暖房運転において、室内機(1)における室内空気の加熱と、加湿ユニット(120)からの空気の供給との両方を行う。この場合、
図1に示す空気質の調整システムの冷媒回路では、冷媒が循環してヒートポンプ動作が行われる。すなわち、室内熱交換器(3)には、圧縮機から吐出された高温高圧のガス冷媒が送り込まれる。また、室内ファン(4)を運転すると、室内機(1)の内部に室内空気が取り込まれる。取り込まれた室内空気は、室内熱交換器(3)を通過する際にガス冷媒と熱交換を行う。この熱交換によって、室内空気が加熱され、ガス冷媒が凝縮する。
【0034】
加湿ユニット(120)では、除湿側ファン(124)及び再生側ファン(127)が運転され、ヒータ(126)及び冷却部(128)に通電される。また、回転ロータ(122)が、図外のモータによって所定の回転数で回転駆動される。
【0035】
除湿側通路(123)には、室外空気が取り込まれる。除湿側通路(123)に取り込まれた室外空気は、冷却部(128)によって冷却された後に、回転ロータ(122)の吸着領域(122a)に送られて吸着材と接触する。この冷却された室外空気との接触によって、吸着領域(122a)の吸着材が冷却され、当該吸着材には、室外空気に含まれる水分が吸着される。回転ロータ(122)の吸着領域(122a)を通過して水分を奪われた室外空気は、室外へ排出される。
【0036】
前述のように、回転ロータ(122)は、所定の回転数で回転している。従って、吸着領域(122a)つまり除湿側通路(123)において室外空気から水分を吸着した吸着材は、回転ロータ(122)の回転に伴って、脱離領域(122b)つまり再生側通路(125)に移動する。
【0037】
再生側通路(125)には、室外空気が取り込まれる。再生側通路(125)に取り込まれた室外空気は、ヒータ(126)によって加熱される。加熱された室外空気は、ヒータ(126)から回転ロータ(122)の脱離領域(122b)に送られて吸着材と接触する。この加熱された室外空気との接触によって、脱離領域(122b)の吸着材が加熱され、当該吸着材から水分が脱離する。吸着材から脱離した水分は、回転ロータ(122)を通過した室外空気と共に空気ダクト(121)へ送られる。すなわち、多量に水分を含む高湿度の空気が、空気ダクト(121)に導入される。この高湿度の空気は、空気ダクト(121)を通じて室内機(1)に導かれ、室内熱交換器(3)を通過した後に室内に送り出される。
【0038】
一方、脱離領域(122b)において水分が脱離して再生された吸着材は、回転ロータ(122)の回転に伴って、再び吸着領域(122a)に移動する。以上のように、吸着材は、回転ロータ(122)の回転に伴って移動し、吸着領域(122a)における水分の吸着と、脱離領域(122b)における水分の脱離とを交互に繰り返す。
【0039】
-吸着材-
以下、本実施形態の吸着材として、前述のフレキシブルMOFを用いる場合の特性等について説明する。
【0040】
図3は、本実施形態の吸着材の特性、具体的には、吸着過程における熱収支を剛直なMOFと比較して示す図である。
【0041】
図3に示すように、フレキシブルMOFでは、対象物質(ガス分子)の吸着に伴い構造変化が生じ、この構造変化に起因する吸熱(q
trans)が、吸着時の外部発熱(Q)を抑制する。従って、吸着熱(q
ads)がそのまま外部発熱(Q)となる剛直なMOFと比べて、外部発熱(Q)が小さくなる。その結果、フレキシブルMOFを用いることで、既存の吸着材料よりも高い温度域で対象物質の吸着動作が可能となる。従って、吸着動作時のフレキシブルMOFの冷却に必要な電力を低減できる。
【0042】
また、脱離過程における熱収支は、
図3に示す熱収支の逆となるので、フレキシブルMOFを用いることで、既存の吸着材料よりも低い温度域で対象物質の脱離動作が可能となる。従って、脱離動作時のフレキシブルMOFの加熱に必要な電力を低減できる。
【0043】
尚、以下の説明では、前述の外部発熱(脱離の場合は外部吸熱)を単に吸着熱(脱離の場合は脱離熱)ということもある。
【0044】
吸着材となるフレキシブルMOFは、例えば、以下のような手順で準備可能である。既に剛直なMOFでは、水や二酸化炭素など様々な物質の吸着材料が開発されている。このような剛直なMOFに基づいて、金属イオンと有機配位子(例えば、配位子に親水基を持つもの)との組み合わせ、対象分子サイズに適するMOF構造や細孔サイズなどを再デザインすることにより、対象物質(例えば、水)の吸着に適したフレキシブルMOFを準備することができる。
【0045】
図4は、本実施形態のフレキシブルMOFにより除湿を行う場合における湿り空気線図上の動きの一例である。
図4では、室外空気(温度33℃、絶対湿度18.5g/kg)を除湿して、室内に供給(温度27℃、絶対湿度11g/kg)する場合の動きを示している。
【0046】
図4に示すように、吸着材を用いない通常の空調機の場合、絶対湿度を11g/kgまで下げるには、空気を15℃まで冷やす必要がある。また、従来の吸着材を搭載した調湿装置(比較例)では、空気を20℃まで冷やせば、あとは吸着材による吸湿で除湿されると同時に、吸着熱によって温度が上昇する。このとき、等エンタルピー線上の温度で吸湿が行われるので、温度及び湿度は、等エンタルピー線上を移動する。
【0047】
一方、フレキシブルMOFを用いた場合(実施例)、空気を20℃まで冷やさなくても23℃まで冷やせば、絶対湿度が11g/kgになるまで除湿可能である。また、前述のように、フレキシブルMOFによる水分の吸着過程で発生する吸着熱の一部が、フレキシブルMOFの構造変化に伴う吸熱によって相殺されるため、吸湿時の温度増加は比較例よりも小さくなる。この相殺分により、空気のエンタルピが下がる結果、
図4に示すように、等エンタルピー線上よりも高い温度で吸湿が行われる。
【0048】
図5は、本実施形態のフレキシブルMOFにより加湿を行う場合における湿り空気線図上の動きの一例である。
図5では、室外空気(温度27℃、絶対湿度11g/kg)を加湿して、室内に供給(温度33℃、絶対湿度18.5g/kg)する場合の動きを示している。
【0049】
図5に示すように、従来の吸着材を搭載した調湿装置(比較例)では、空気を53℃まで加熱すれば、あとは吸着材からの水分の脱離で加湿されると同時に、脱離熱によって温度が低下する。このとき、等エンタルピー線上の温度で加湿が行われるので、温度及び湿度は、等エンタルピー線上を移動する。
【0050】
一方、フレキシブルMOFを用いた場合(実施例)、空気を53℃まで冷やさなくても41℃まで冷やせば、絶対湿度が18.5g/kgになるまで加湿可能である。また、前述のように、フレキシブルMOFによる水分の脱離過程で吸収される脱離熱の一部が、フレキシブルMOFの構造変化に伴う発熱によって相殺されるため、加湿時の温度低下は比較例よりも小さくなる。この相殺分により、空気のエンタルピが上がる結果、
図5に示すように、等エンタルピー線上よりも低い温度で加湿が行われる。
【0051】
尚、
図4及び
図5に示す空気線図は、吸着材を含む吸脱着部(吸着領域又は脱離領域)から流出する空気の空気状態から、「吸脱着部で吸脱着される対象物質(本例では水)に残留するエネルギー」、「吸脱着部における空気の摩擦熱」、及び、「吸脱着部の熱容量による熱の出入」を除いて得られた空気状態を示すものである。ここで、「吸脱着部で吸脱着される対象物質に残留するエネルギー」、「吸脱着部における空気の摩擦熱」、及び、「吸脱着部の熱容量による熱の出入」はそれぞれ、計測又は計算可能である。
【0052】
図6は、「吸脱着部で吸脱着される対象物質に残留するエネルギー」に関し、対象物質(ガス)を吸着材に吸着させる場合における対象物質の残留エネルギーを説明する図である。すなわち、対象物質の残留エネルギーとは、吸着材に吸着された後も対象ガス分子が持つエネルギーである。脱離過程におけるエネルギー関係は、
図6に示すエネルギー関係の逆となる。
【0053】
また、「吸脱着部における空気の摩擦熱」とは、速度を持った空気が吸脱着部に接触する際に吸脱着部の境界層等で生じた摩擦による熱を意味する。
【0054】
また、「吸脱着部の熱容量による熱の出入」は、吸脱着部の構成材料の比熱に依存して決まるものであり、当該比熱が小さくなれば、「吸脱着部」の熱容量も小さくなる。
【0055】
図7は、フレキシブルMOFに対象物質を吸着させる場合における空気状態の模式図である。
図7左側に示すように、「吸脱着部で吸脱着される対象物質に残留するエネルギー(以下、単に「残留エネルギー」という)」、「吸脱着部における空気の摩擦熱(以下、単に「摩擦熱」という)」、及び、「吸脱着部の熱容量による熱の出入(以下、単に「熱容量」という)」を考慮した場合、吸脱着部(吸着領域)通過前後の空気のエンタルピ変化(エネルギー差)は、「空気温度変化熱」+「吸着熱」+「残留エネルギー」である。また、吸着動作に必要な冷却に関する仕事量は、「空気温度変化熱」+「吸着熱」+「熱容量」+「摩擦熱」である。
【0056】
一方、
図7右側に示すように、「熱容量」、「摩擦熱」、「残留エネルギー」を除いた空気状態を考えると、吸着領域通過前後の空気のエンタルピ変化は、「空気温度変化熱」+「吸着熱」であり、従来の吸着材を用いた場合(比較例)、吸着動作に必要な冷却に関する仕事量も、「空気温度変化熱」+「吸着熱」である。従って、比較例では、
図7右側に示すように、等エンタルピー線上で吸着動作が行われる。一方、フレキシブルMOFを用いた場合(実施例)は、
図7右側に示すように、「吸脱着部に蓄積されるエネルギー」によって、「吸着熱(外部発熱)」が減少するので、吸着動作に必要な冷却に関する仕事量は、吸着領域通過前後の空気のエネルギー差よりも小さくなる。
【0057】
図8は、フレキシブルMOFから対象物質を脱離させる場合における空気状態の模式図である。
図8左側に示すように、「残留エネルギー」、「摩擦熱」、及び、「熱容量」を考慮した場合、吸脱着部(脱離領域)通過前後の空気のエンタルピ変化(エネルギー差)は、「空気温度変化熱」+「脱離熱」+「残留エネルギー」である。また、脱離動作に必要な加熱に関する仕事量は、「空気温度変化熱」+「脱離熱」+「熱容量」-「摩擦熱」である。
【0058】
一方、
図8右側に示すように、「熱容量」、「摩擦熱」、「残留エネルギー」を除いた空気状態を考えると、脱離領域通過前後の空気のエンタルピ変化は、「空気温度変化熱」+「脱離熱」であり、従来の吸着材を用いた場合(比較例)、脱離動作に必要な加熱に関する仕事量も、「空気温度変化熱」+「脱離熱」である。従って、比較例では、
図8右側に示すように、等エンタルピー線上で脱離動作が行われる。一方、フレキシブルMOFを用いた場合(実施例)は、
図8右側に示すように、「吸脱着部から放出されるエネルギー」によって、「脱離熱(外部吸熱)」が減少するので、脱離動作に必要な加熱に関する仕事量は脱離領域通過前後の空気のエネルギー差よりも小さくなる。
【0059】
このように、フレキシブルMOFを用いた吸脱着部の温度を調整する冷却部や加熱部(合わせて「調整部」という)は、「熱容量」、「摩擦熱」及び「残留エネルギー」を除いたエネルギーバランスで見ると、吸脱着部への流入前後での空気のエネルギー差よりも小さいエネルギー量を、吸着時には吸脱着部から奪い、脱離時には吸脱着部に与えればよい。
【0060】
-実施形態1の効果-
以上に説明した実施形態1によると、対象物質の吸着時には吸着熱エネルギーの一部が吸脱着部(122)に蓄積されるため、従来よりも高い温度域でも吸脱着部(122)を駆動できる。また、対象物質の脱離時には、吸脱着部(122)に蓄積されたエネルギーが放出されるため、従来よりも低い温度域でも吸脱着部(122)を駆動できる。従って、空気質の調整システムの消費電力を低減することができる。
【0061】
また、実施形態1によると、対象物質の吸着時には、吸脱着部(122)が、吸着領域(122a)から流出する空気の空気状態(「熱容量」、「摩擦熱」、「残留エネルギー」を除く)における等エンタルピー線上よりも高い温度で対象物質を吸着する。このため、従来よりも高い温度域でも吸脱着部(122)を駆動できる。従って、空気質の調整システムの消費電力を低減することができる。
【0062】
また、実施形態1によると、対象物質の脱離時には、吸脱着部(122)が、脱離領域(122b)から流出する空気の空気状態(「熱容量」、「摩擦熱」、「残留エネルギー」を除く)における等エンタルピー線上よりも低い温度で対象物質を脱離する。このため、従来よりも低い温度域でも吸脱着部(122)を駆動できる。従って、空気質の調整システムの消費電力を低減することができる。
【0063】
また、実施形態1によると、対象物質の吸着時には、冷却部(128)が、吸脱着部(122)への流入前後での空気のエネルギー差よりも小さいエネルギー量を吸脱着部(122)から奪うため、従来よりも高い温度域でも吸脱着部(122)を駆動できる。また、対象物質の脱離時には、加熱部(126)が、吸脱着部(122)への流入前後での空気のエネルギー差よりも小さいエネルギー量を吸脱着部(122)に与えるため、従来よりも低い温度域でも吸脱着部(122)を駆動できる。従って、空気質の調整システムの消費電力を低減することができる。
【0064】
また、実施形態1によると、吸脱着部(122)は、対象物質の吸脱着に応じて発生する吸脱着熱エネルギーを構造変化エネルギーに変換する材料で構成される。このため、吸脱着部(122)によって、対象物質の吸着時にエネルギーを蓄積し且つ蓄積した当該エネルギーの少なくとも一部を対象物質の脱離時に放出することができる。特に、フレキシブルMOFを用いた場合、対象物質の吸脱着に応じて発生する吸脱着熱エネルギーを構造変化エネルギーに変換する材料で吸脱着部(122)を構成することができる。
【0065】
また、実施形態1によると、室外空気に含まれる水分を利用して室内空気の加湿を行うことが可能となる。従って、加湿のために外部から水道水等を供給する必要がなくなり、いわゆる無給水加湿を実現することができる。
【0066】
(実施形態1の変形例)
図9に示すように、実施形態1の加湿ユニット(120)に代えて、除湿ユニット(130)を構成してもよい。尚、
図9において、
図2に示す加湿ユニット(120)と同じ構成要素には同じ符号を付す。
【0067】
除湿ユニット(130)の構成が、加湿ユニット(120)の構成と異なっている第1の点は、除湿側ファン(124)を運転すると、除湿側通路(123)に室内空気が取り込まれ、当該室内空気は、回転ロータ(122)を通過して除湿された後、空気ダクト(121)を経由して、室内へ戻されることである。また、第2の点は、再生側ファン(127)を運転すると、再生側通路(125)に室内空気が取り込まれ、当該室内空気は回転ロータ(122)を通過して加湿された後、室外へ排出されることである。
【0068】
-実施形態1の変形例の効果-
以上に説明した本変形例においても、回転ロータ(122)に担持させる吸着材として、前記実施形態1と同様の吸着材を用いることにより、前記実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0069】
また、本変形例の除湿ユニット(130)の構成を応用して、いわゆるルームドライヤーや、換気レスの二酸化炭素吸収装置などを実現することもできる。
【0070】
(実施形態2)
実施形態2について図面を参照しながら説明する。
【0071】
本実施形態に係る空気質の調整システムである、
図10に示す調湿装置(10)は、室内空間(200)の湿度調節と共に室内空間(200)の換気を行うものであり、吸い込んだ室外空気(OA)を湿度調節して室内空間(200)へ供給すると同時に、吸い込んだ室内空気(RA)を室外空間(201)へ排出する。
【0072】
調湿装置(10)は、空気調和機(150)と共に建物に設置される。空気調和機(150)は、室外ユニット(152)と室内ユニット(151)とを備え、冷房運転と暖房運転を選択的に行う。調湿装置(10)は、空気調和機(150)の室内ユニット(151)が空気を吹き出す室内空間(200)に、ダクト(102,103)を介して接続される。具体的には、調湿装置(10)は、給気ダクト(102)及び内気吸込ダクト(103)を介して室内空間(200)に接続され、排気ダクト(101)及び外気吸込ダクト(104)を介して室外空間(201)に接続される。
【0073】
〈調湿装置の全体構成〉
調湿装置(10)について、
図11を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明で用いる「上」「下」「左」「右」「前」「後」「手前」「奥」は、特にことわらない限り、調湿装置(10)を前面側から見た場合の方向を意味している。
【0074】
調湿装置(10)は、ケーシング(11)を備えている。また、ケーシング(11)内には、冷媒回路(50)が収容されている。この冷媒回路(50)には、第1吸着熱交換器(51)、第2吸着熱交換器(52)、圧縮機(53)、四方切換弁(54)、及び、電動膨張弁(55)が接続されている。冷媒回路(50)の詳細は後述する。
【0075】
ケーシング(11)は、やや扁平で高さが比較的低い直方体状に形成されている。このケーシング(11)には、外気吸込口(24)と、内気吸込口(23)と、給気口(22)と、排気口(21)とが形成されている。外気吸込口(24)には外気吸込ダクト(104)が、内気吸込口(23)には内気吸込ダクト(103)が、給気口(22)には給気ダクト(102)が、排気口(21)には排気ダクト(101)が、それぞれ接続される。
【0076】
外気吸込口(24)及び内気吸込口(23)は、ケーシング(11)の背面パネル部(13)に設けられている。外気吸込口(24)は、背面パネル部(13)の下側部分に設けられている。内気吸込口(23)は、背面パネル部(13)の上側部分に設けられている。給気口(22)は、ケーシング(11)の第1側面パネル部(14)に設けられている。第1側面パネル部(14)において、給気口(22)は、ケーシング(11)の前面パネル部(12)側の端部付近に配置されている。排気口(21)は、ケーシング(11)の第2側面パネル部(15)に設けられている。第2側面パネル部(15)において、排気口(21)は、前面パネル部(12)側の端部付近に配置されている。
【0077】
ケーシング(11)の内部空間には、上流側仕切板(71)と、下流側仕切板(72)と、中央仕切板(73)とが設けられている。これらの仕切板(71~73)は、何れもケーシング(11)の底板に起立した状態で設置されており、ケーシング(11)の内部空間をケーシング(11)の底板から天板に亘って区画している。
【0078】
上流側仕切板(71)及び下流側仕切板(72)は、前面パネル部(12)及び背面パネル部(13)と平行な姿勢で、ケーシング(11)の前後方向に所定の間隔をおいて配置されている。上流側仕切板(71)は、背面パネル部(13)寄りに配置されている。下流側仕切板(72)は、前面パネル部(12)寄りに配置されている。中央仕切板(73)の配置については、後述する。
【0079】
ケーシング(11)内において、上流側仕切板(71)と背面パネル部(13)の間の空間は、上下二つの空間に仕切られており、上側の空間が内気側通路(32)を構成し、下側の空間が外気側通路(34)を構成している。内気側通路(32)は、内気吸込口(23)に接続するダクトを介して室内空間(200)と連通している。外気側通路(34)は、外気吸込口(24)に接続するダクトを介して室外空間(201)と連通している。
【0080】
内気側通路(32)には、内気側フィルタ(27)と、内気温度センサ(91)と、内気湿度センサ(92)とが設置されている。内気温度センサ(91)は、内気側通路(32)を流れる室内空気の温度を計測する。内気湿度センサ(92)は、内気側通路(32)を流れる室内空気の相対湿度を計測する。一方、外気側通路(34)には、外気側フィルタ(28)と、外気温度センサ(93)と、外気湿度センサ(94)とが設置されている。外気温度センサ(93)は、外気側通路(34)を流れる室外空気の温度を計測する。外気湿度センサ(94)は、外気側通路(34)を流れる室外空気の相対湿度を計測する。尚、後述の
図14~
図17では、内気温度センサ(91)、内気湿度センサ(92)、外気温度センサ(93)、及び外気湿度センサ(94)の図示を省略している。
【0081】
ケーシング(11)内における上流側仕切板(71)と下流側仕切板(72)の間の空間は、中央仕切板(73)によって左右に区画されており、中央仕切板(73)の右側の空間が第1熱交換器室(37)を構成し、中央仕切板(73)の左側の空間が第2熱交換器室(38)を構成している。第1熱交換器室(37)には、「第1吸脱着部」となる第1吸着熱交換器(51)が収容されている。第2熱交換器室(38)には、「第2吸脱着部」となる第2吸着熱交換器(52)が収容されている。また、図示しないが、第1熱交換器室(37)には、冷媒回路(50)の電動膨張弁(55)(
図12参照)が収容されている。
【0082】
各吸着熱交換器(51,52)は、いわゆるクロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器の表面に吸着材を担持させたものである。この吸着材としては、前記実施形態1と同様の吸着材を用いる。
【0083】
各吸着熱交換器(51,52)は、全体として長方形の厚板状又は扁平な直方体状に形成されている。そして、各吸着熱交換器(51,52)は、その前面及び背面が上流側仕切板(71)及び下流側仕切板(72)と平行になる姿勢で、熱交換器室(37,38)内に起立した状態で設置されている。
【0084】
ケーシング(11)の内部空間において、下流側仕切板(72)の前面に沿った空間は、上下に仕切られており、この上下に仕切られた空間のうち、上側の部分が給気側通路(31)を構成し、下側の部分が排気側通路(33)を構成している。
【0085】
上流側仕切板(71)には、開閉式の4つのダンパ(41)~(44)が設けられている。各ダンパ(41)~(44)は、概ね横長の長方形状に形成されている。具体的には、上流側仕切板(71)のうち内気側通路(32)に面する部分(上側部分)では、中央仕切板(73)よりも右側に第1内気側ダンパ(41)が取り付けられ、中央仕切板(73)よりも左側に第2内気側ダンパ(42)が取り付けられる。また、上流側仕切板(71)のうち外気側通路(34)に面する部分(下側部分)では、中央仕切板(73)よりも右側に第1外気側ダンパ(43)が取り付けられ、中央仕切板(73)よりも左側に第2外気側ダンパ(44)が取り付けられる。上流側仕切板(71)に設けられた4つのダンパ(41)~(44)は、空気の流通経路を切り換える切換機構(40)を構成している。
【0086】
下流側仕切板(72)には、開閉式の4つのダンパ(45)~(48)が設けられている。各ダンパ(45)~(48)は、概ね横長の長方形状に形成されている。具体的には、下流側仕切板(72)のうち給気側通路(31)に面する部分(上側部分)では、中央仕切板(73)よりも右側に第1給気側ダンパ(45)が取り付けられ、中央仕切板(73)よりも左側に第2給気側ダンパ(46)が取り付けられる。また、下流側仕切板(72)のうち排気側通路(33)に面する部分(下側部分)では、中央仕切板(73)よりも右側に第1排気側ダンパ(47)が取り付けられ、中央仕切板(73)よりも左側に第2排気側ダンパ(48)が取り付けられる。下流側仕切板(72)に設けられた4つのダンパ(45)~(48)は、空気の流通経路を切り換える切換機構(40)を構成している。
【0087】
ケーシング(11)内において、給気側通路(31)及び排気側通路(33)と前面パネル部(12)との間の空間は、仕切板(77)によって左右に仕切られており、仕切板(77)の右側の空間が給気ファン室(36)を構成し、仕切板(77)の左側の空間が排気ファン室(35)を構成している。
【0088】
給気ファン室(36)には、給気ファン(26)が収容されている。また、排気ファン室(35)には排気ファン(25)が収容されている。給気ファン(26)及び排気ファン(25)は、何れも遠心型の多翼ファン(いわゆるシロッコファン)である。給気ファン(26)は、下流側仕切板(72)側から吸い込んだ空気を給気口(22)へ吹き出す。排気ファン(25)は、下流側仕切板(72)側から吸い込んだ空気を排気口(21)へ吹き出す。
【0089】
給気ファン室(36)には、冷媒回路(50)の圧縮機(53)と四方切換弁(54)とが収容されている。圧縮機(53)及び四方切換弁(54)は、給気ファン室(36)における給気ファン(26)と仕切板(77)との間に配置されている。
【0090】
〈冷媒回路の構成〉
図12に示すように、冷媒回路(50)は、第1吸着熱交換器(51)、第2吸着熱交換器(52)、圧縮機(53)、四方切換弁(54)、及び、電動膨張弁(55)が設けられた閉回路である。この冷媒回路(50)は、充填された冷媒を循環させることによって、蒸気圧縮冷凍サイクルを行う。また、図示しないが、冷媒回路(50)には、複数の温度センサ及び圧力センサが取り付けられている。
【0091】
冷媒回路(50)において、圧縮機(53)は、その吐出管が四方切換弁(54)の第1のポートに、その吸入管が四方切換弁(54)の第2のポートにそれぞれ接続されている。また、冷媒回路(50)では、四方切換弁(54)の第3のポートから第4のポートへ向かって順に、第1吸着熱交換器(51)と、電動膨張弁(55)と、第2吸着熱交換器(52)とが配置されている。
【0092】
四方切換弁(54)は、第1のポートと第3のポートが連通して第2のポートと第4のポートが連通する第1状態(
図12の(A)に示す状態)と、第1のポートと第4のポートが連通して第2のポートと第3のポートが連通する第2状態(
図12の(B)に示す状態)とに切り換え可能となっている。
【0093】
圧縮機(53)は、圧縮機構とそれを駆動する電動機とが一つのケーシングに収容された全密閉型の圧縮機である。この圧縮機(53)の電動機には、インバータを介して交流が供給される。インバータの出力周波数(つまり、圧縮機(53)の運転周波数)を変更すると、電動機とそれによって駆動される圧縮機構の回転速度が変化し、圧縮機(53)の運転容量が変化する。圧縮機構の回転速度を上昇させると、圧縮機(53)の運転容量が増加し、圧縮機構の回転速度を低下させると、圧縮機(53)の運転容量が減少する。
【0094】
〈コントローラの構成〉
調湿装置(10)には、
図13に示すコントローラ(95)が設けられている。コントローラ(95)には、内気湿度センサ(92)、内気温度センサ(91)、外気湿度センサ(94)、及び、外気温度センサ(93)の計測値が入力されている。また、コントローラ(95)には、冷媒回路(50)に設けられた温度センサや圧力センサの計測値が入力されている。また、コントローラ(95)には、空気調和機(150)の運転状態を示す信号(例えば、空気調和機(150)が運転中か否かを示す信号や、空気調和機(150)の運転が冷房運転か暖房運転かを示す信号)が入力されている。コントローラ(95)は、入力されたこれらの計測値や信号に基づいて、調湿装置(10)の運転制御を行う。つまり、コントローラ(95)は、各ダンパ(41)~(48)、各ファン(25)、(28)、圧縮機(53)、電動膨張弁(55)、及び、四方切換弁(54)の動作を制御する。
【0095】
また、
図13に示すように、コントローラ(95)は、圧縮機制御部(96)と、運転モード決定部(97)とを備えている。圧縮機制御部(96)は、前述のセンサ(91)~(94)の計測値等に基づいて、圧縮機(53)の運転周波数の目標値を設定する。運転モード決定部(97)は、前述のセンサ(91)~(94)の計測値や、空気調和機(150)の運転状態を示す信号などに基づいて、調湿装置(10)が実行すべき運転を決定する。
【0096】
-運転動作-
本実施形態の調湿装置(10)は、除湿運転と、加湿運転と、冷却運転と、加熱運転と、単純換気運転とを選択的に行う。除湿運転及び加湿運転は、室内空間(200)へ供給される室外空気の絶対湿度の調節を目的とした調湿運転である。つまり、除湿運転及び加湿運転は、主に室内空間(200)の潜熱負荷(除湿負荷又は加湿負荷)を処理するための運転である。冷却運転及び加熱運転は、室内空間(200)へ供給される室外空気の温度の調節を目的とした顕熱処理運転である。つまり、冷却運転及び加熱運転は、主に室内空間(200)の顕熱負荷(冷房負荷又は暖房負荷)を処理するための運転である。単純換気運転は、室内空間(200)の換気だけを行うための運転である。
【0097】
除湿運転、加湿運転、冷却運転、加熱運転、及び単純換気運転のそれぞれでは、給気ファン(26)及び排気ファン(25)が作動する。そして、調湿装置(10)は、吸い込んだ室外空気(OA)を供給空気(SA)として室内空間(200)へ供給し、吸い込んだ室内空気(RA)を排出空気(EA)として室外空間(201)へ排出する。
【0098】
以下、調湿装置(10)が行う除湿運転及び加湿運転について、詳細に説明する。
【0099】
〈除湿運転〉
除湿運転中の調湿装置(10)では、室外空気が外気吸込口(24)からケーシング(11)内へ第1空気として吸い込まれ、室内空気が内気吸込口(23)からケーシング(11)内へ第2空気として吸い込まれる。また、冷媒回路(50)では、圧縮機(53)が作動し、電動膨張弁(55)の開度が調節される。そして、除湿運転中の調湿装置(10)は、後述する第1動作と第2動作とを3分間ずつ交互に繰り返し行う。つまり、除湿運転では、第1動作及び第2動作の継続時間である第1所定時間が3分に設定される。
【0100】
図14に示すように、除湿運転の第1動作では、切換機構(40)が空気の流通経路を第2経路に設定する。具体的には、第1内気側ダンパ(41)、第2外気側ダンパ(44)、第2給気側ダンパ(46)、及び、第1排気側ダンパ(47)が開状態となり、第2内気側ダンパ(42)、第1外気側ダンパ(43)、第1給気側ダンパ(45)、及び、第2排気側ダンパ(48)が閉状態となる。また、この第1動作中には、四方切換弁(54)が第1状態(
図12の(A)に示す状態)に設定される。そして、冷媒回路(50)では冷凍サイクルが行われ、第1吸着熱交換器(51)が凝縮器(つまり、放熱器)として機能し、第2吸着熱交換器(52)が蒸発器として機能する。
【0101】
外気側通路(34)へ流入した第1空気は、第2外気側ダンパ(44)を通って第2熱交換器室(38)へ流入し、その後に第2吸着熱交換器(52)を通過する。第2吸着熱交換器(52)では、第1空気中の水分が吸着材に吸着され、その際に生じた吸着熱が冷媒に吸熱される。また、第2吸着熱交換器(52)では、第1空気の温度が幾分低下する。第2吸着熱交換器(52)において除湿された第1空気は、第2給気側ダンパ(46)を通って給気側通路(31)へ流入し、給気ファン室(36)を通過後に給気口(22)を通って室内空間(200)へ供給される。
【0102】
一方、内気側通路(32)へ流入した第2空気は、第1内気側ダンパ(41)を通って第1熱交換器室(37)へ流入し、その後に第1吸着熱交換器(51)を通過する。第1吸着熱交換器(51)では、冷媒によって加熱された吸着材から水分が脱離し、この脱離した水分が第2空気に付与される。第1吸着熱交換器(51)において水分を付与された第2空気は、第1排気側ダンパ(47)を通って排気側通路(33)へ流入し、排気ファン室(35)を通過後に排気口(21)を通って室外空間(201)へ排出される。
【0103】
図15に示すように、除湿運転の第2動作では、切換機構(40)が空気の流通経路を第1経路に設定する。具体的には、第2内気側ダンパ(42)、第1外気側ダンパ(43)、第1給気側ダンパ(45)、及び第2排気側ダンパ(48)が開状態となり、第1内気側ダンパ(41)、第2外気側ダンパ(44)、第2給気側ダンパ(46)、及び、第1排気側ダンパ(47)が閉状態となる。また、この第2動作中には、四方切換弁(54)が第2状態(
図12の(B)に示す状態)に設定される。そして、冷媒回路(50)では冷凍サイクルが行われ、第2吸着熱交換器(52)が凝縮器(つまり、放熱器)として機能し、第1吸着熱交換器(51)が蒸発器として機能する。
【0104】
外気側通路(34)へ流入した第1空気は、第1外気側ダンパ(43)を通って第1熱交換器室(37)へ流入し、その後に第1吸着熱交換器(51)を通過する。第1吸着熱交換器(51)では、第1空気中の水分が吸着材に吸着され、その際に生じた吸着熱が冷媒に吸熱される。また、第1吸着熱交換器(51)では、第1空気の温度が幾分低下する。第1吸着熱交換器(51)において除湿された第1空気は、第1給気側ダンパ(45)を通って給気側通路(31)へ流入し、給気ファン室(36)を通過後に給気口(22)を通って室内空間(200)へ供給される。
【0105】
一方、内気側通路(32)へ流入した第2空気は、第2内気側ダンパ(42)を通って第2熱交換器室(38)へ流入し、その後に第2吸着熱交換器(52)を通過する。第2吸着熱交換器(52)では、冷媒によって加熱された吸着材から水分が脱離し、この脱離した水分が第2空気に付与される。第2吸着熱交換器(52)において水分を付与された第2空気は、第2排気側ダンパ(48)を通って排気側通路(33)へ流入し、排気ファン室(35)を通過後に排気口(21)を通って室外空間(201)へ排出される。
【0106】
〈加湿運転〉
加湿運転中の調湿装置(10)では、室外空気が外気吸込口(24)からケーシング(11)内へ第2空気として吸い込まれ、室内空気が内気吸込口(23)からケーシング(11)内へ第1空気として吸い込まれる。また、冷媒回路(50)では、圧縮機(53)が作動し、電動膨張弁(55)の開度が調節される。そして、加湿運転中の調湿装置(10)は、後述する第1動作と第2動作とを3分30秒ずつで交互に繰り返し行う。つまり、加湿運転では、第1動作及び第2動作の継続時間である第1所定時間が3分30秒に設定される。
【0107】
図16に示すように、加湿運転の第1動作では、切換機構(40)が空気の流通経路を第1経路に設定する。具体的には、第2内気側ダンパ(42)、第1外気側ダンパ(43)、第1給気側ダンパ(45)、及び、第2排気側ダンパ(48)が開状態となり、第1内気側ダンパ(41)、第2外気側ダンパ(44)、第2給気側ダンパ(46)、及び、第1排気側ダンパ(47)が閉状態となる。また、この第1動作では、四方切換弁(54)が第1状態(
図12の(A)に示す状態)に設定される。そして、冷媒回路(50)では冷凍サイクルが行われ、第1吸着熱交換器(51)が凝縮器(つまり、放熱器)として機能し、第2吸着熱交換器(52)が蒸発器として機能する。
【0108】
内気側通路(32)へ流入した第1空気は、第2内気側ダンパ(42)を通って第2熱交換器室(38)へ流入し、その後に第2吸着熱交換器(52)を通過する。第2吸着熱交換器(52)では、第1空気中の水分が吸着材に吸着され、その際に生じた吸着熱が冷媒に吸熱される。第2吸着熱交換器(52)において水分を奪われた第1空気は、第2排気側ダンパ(48)を通って排気側通路(33)へ流入し、排気ファン室(35)を通過後に排気口(21)を通って室外空間(201)へ排出される。
【0109】
一方、外気側通路(34)へ流入した第2空気は、第1外気側ダンパ(43)を通って第1熱交換器室(37)へ流入し、その後に第1吸着熱交換器(51)を通過する。第1吸着熱交換器(51)では、冷媒によって加熱された吸着材から水分が脱離し、この脱離した水分が第2空気に付与される。また、第1吸着熱交換器(51)では、第2空気の温度が幾分上昇する。第1吸着熱交換器(51)において加湿された第2空気は、第1給気側ダンパ(45)を通って給気側通路(31)へ流入し、給気ファン室(36)を通過後に給気口(22)を通って室内空間(200)へ供給される。
【0110】
図17に示すように、加湿運転の第2動作では、切換機構(40)が空気の流通経路を第2経路に設定する。具体的には、第1内気側ダンパ(41)、第2外気側ダンパ(44)、第2給気側ダンパ(46)、及び、第1排気側ダンパ(47)が開状態となり、第2内気側ダンパ(42)、第1外気側ダンパ(43)、第1給気側ダンパ(45)、及び、第2排気側ダンパ(48)が閉状態となる。また、この第2動作では、四方切換弁(54)が第2状態(
図12の(B)に示す状態)に設定される。そして、冷媒回路(50)では冷凍サイクルが行われ、第2吸着熱交換器(52)が凝縮器(つまり、放熱器)として機能し、第1吸着熱交換器(51)が蒸発器として機能する。
【0111】
内気側通路(32)へ流入した第1空気は、第1内気側ダンパ(41)を通って第1熱交換器室(37)へ流入し、その後に第1吸着熱交換器(51)を通過する。第1吸着熱交換器(51)では、第1空気中の水分が吸着材に吸着され、その際に生じた吸着熱が冷媒に吸熱される。第1吸着熱交換器(51)において水分を奪われた第1空気は、第1排気側ダンパ(47)を通って排気側通路(33)へ流入し、排気ファン室(35)を通過後に排気口(21)を通って室外空間(201)へ排出される。
【0112】
一方、外気側通路(34)へ流入した第2空気は、第2外気側ダンパ(44)を通って第2熱交換器室(38)へ流入し、その後に第2吸着熱交換器(52)を通過する。第2吸着熱交換器(52)では、冷媒によって加熱された吸着材から水分が脱離し、この脱離した水分が第2空気に付与される。また、第2吸着熱交換器(52)では、第2空気の温度が幾分上昇する。第2吸着熱交換器(52)において加湿された第2空気は、第2給気側ダンパ(46)を通って給気側通路(31)へ流入し、給気ファン室(36)を通過後に給気口(22)を通って室内空間(200)へ供給される。
【0113】
-実施形態2の効果-
以上に説明した実施形態2においても、「第1吸脱着部」となる第1吸着熱交換器(51)及び「第2吸脱着部」となる第2吸着熱交換器(52)にそれぞれ担持させる吸着材として、前記実施形態1と同様の吸着材を用いることにより、前記実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0114】
《その他の実施形態》
前記各実施形態(変形例を含む。以下同じ。)では、吸脱着の対象物質が水(水分)である場合を例示したが、これに限定されず、対象物質は、例えば、二酸化炭素や臭気物質(硫黄、アンモニア等)であってもよい。
【0115】
また、前記各実施形態では、吸着材として、フレキシブルMOF(構造柔軟性を有する金属有機構造体)を用いたが、これに限定されず、対象物質の吸脱着に応じて発生する吸脱着熱エネルギーを構造変化エネルギーに変換する他の材料を用いてもよい。或いは、対象物質の吸着時にエネルギーを蓄積し且つ蓄積した当該エネルギーの少なくとも一部を対象物質の脱離時に放出する他の材料を用いてもよい。
【0116】
また、前記実施形態1では、吸脱着部(122)の上流に、冷却部(128)や加熱部(126)を設けたが、気候や使用する季節等によっては、冷却部(128)や加熱部(126)を設けなくてもよい。
【0117】
また、前記実施形態1では、回転ロータ(122)の基材をハニカム状に形成したが、これに限定されず、基材をメッシュ状やフィルタ状に形成してもよい。この場合であっても、回転ロータ(122)は、空気が通過できるように構成される。また、回転ロータ(122)を円板状に形成しているが、これに限定されず、例えば、多角形の板状に形成してもよい。
【0118】
さらに、前記実施形態1では、室外から空気を吸入して水分を吸着材に吸着させた後に当該空気を室外に排出すると共に、室外から空気を吸入して水分を吸着材から脱離させた後に当該空気を室内に排出する室内加湿操作を行った。また、前記実施形態1の変形例では、室内から空気を吸入して水分を吸着材に吸着させた後に当該空気を室内に排出すると共に、室内から空気を吸入して水分を吸着材から脱離させた後に当該空気を室外に排出する室内除湿操作を行った。また、前記実施形態2では、室外から空気を吸入して水分を吸着材に吸着させた後に当該空気を室内に排出すると共に、室内から空気を吸入して水分を吸着材から脱離させた後に当該空気を室外に排出する室内除湿操作を行った。さらに、前記実施形態2では、室内から空気を吸入して水分を吸着材に吸着させた後に当該空気を室外に排出すると共に、室外から空気を吸入して水分を吸着材から脱離させた後に当該空気を室内に排出する室内加湿操作を行った。
【0119】
以上のような前記各実施形態の他にも、前記各実施形態と同様の吸脱着部を用いて、例えば、下記(1)~(5)のような空気質の調整システムが構成可能である。
(1)室外から空気を吸入して水分を吸着材に吸着させた後に当該空気を室外に排出すると共に、室内から空気を吸入して水分を吸着材から脱離させた後に当該空気を室内に排出する。この構成により、例えば、無給水加湿器を実現できる。
(2)室外から空気を吸入して水分を吸着材に吸着させた後に当該空気を室内に排出すると共に、室外から空気を吸入して水分を吸着材から脱離させた後に当該空気を室内に排出する。この構成により、例えば、外気空気を「乾いた空気」、「湿った空気」の2つに分けて室内へ供給できる。
(3)室内から空気を吸入して水分を吸着材に吸着させた後に当該空気を室外に排出すると共に、室内から空気を吸入して水分を吸着材から脱離させた後に当該空気を室内に排出する。この構成により、例えば、加湿用途のルームドライヤーを実現できる。
(4)室内から空気を吸入して水分を吸着材に吸着させた後に当該空気を室内に排出すると共に、室外から空気を吸入して水分を吸着材から脱離させた後に当該空気を室外に排出する。この構成により、例えば、水捨て不要の除湿器や換気レスの二酸化炭素吸収装置を実現できる。
(5)室内から空気を吸入して水分を吸着材に吸着させた後に当該空気を室内に排出すると共に、室内から空気を吸入して水分を吸着材から脱離させた後に当該空気を室内に排出する。この構成により、例えば、室内空気を「乾いた空気」、「湿った空気」の2つに分けて室内へ供給できる。
【0120】
以上、実施形態及び変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態及び変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0121】
以上説明したように、本開示は、空気質の調整システムについて有用である。
【符号の説明】
【0122】
122 吸脱着部
122a 吸着領域
122b 脱離領域
126 加熱部(調整部)
128 冷却部(調整部)