(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】接合方法及び接合装置
(51)【国際特許分類】
B23K 20/10 20060101AFI20240403BHJP
B23K 20/16 20060101ALI20240403BHJP
B23K 20/24 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
B23K20/10
B23K20/16
B23K20/24
(21)【出願番号】P 2019236303
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】519461037
【氏名又は名称】株式会社超音波応用研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100188156
【氏名又は名称】望月 義時
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 大都
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 智
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】特公昭50-031542(JP,B2)
【文献】特開昭52-100174(JP,A)
【文献】国際公開第2015/145554(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/10
B23K 20/12
B23K 20/16
B23K 20/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と、前記第1部材の硬度以上の硬度を有する第2部材とを接合する接合方法であって、
開口部を有する板の前記開口部が前記第1部材の第1部位に接するように、前記板を前記第1部材に載置するステップと、
前記第1部材に前記板を載置した状態で、接合を促進するための促進剤を前記開口部に滴下することにより、前記第1部位に前記促進剤を塗布するステップと、
前記促進剤が塗布された状態の前記第1部位に前記第2部材の第2部位が接するように、前記第2部材を前記第1部材に載置するステップと、
前記第2部材を前記第1部材に載置した状態で、前記第1部材と前記第2部材とを近づける向きに加圧するステップと、
前記第1部材と前記第2部材とに加圧している状態で、前記第1部材と前記第2部材とを振動させるステップと、
を有する接合方法。
【請求項2】
前記開口部に前記促進剤を滴下した後に、前記開口部から溢れた前記促進剤を取り除くステップをさらに有する請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
第1部材と、前記第1部材の硬度以上の硬度を有する第2部材とを接合する接合装置であって、
開口部を有する板の前記開口部が前記第1部材の第1部位に接するように前記板を前記第1部材に載置して、前記第1部材に前記板を載置した状態で、接合を促進するための促進剤を前記開口部に滴下することにより、前記第1部位に前記促進剤を塗布する塗布部と、
前記促進剤が塗布された状態の前記第1部位に前記第2部材の第2部位が接するように前記第2部材が前記第1部材に載置された状態で、前記第1部材と前記第2部材とを近づける向きに加圧する加圧部と、
前記加圧部が前記第1部材と前記第2部材とを加圧している状態で、前記加圧部を振動させる振動部と、
を備える接合装置。
【請求項4】
回転する円盤状の載置台と、
回転する前記円盤状の載置台に前記第1部材を順次載置する第1部材載置処理部と、をさらに備え、
前記塗布部は、前記円盤状の載置台が回転することにより所定の塗布位置に移動した前記第1部材に前記促進剤を塗布する、
請求項
3に記載の接合装置。
【請求項5】
前記塗布部が前記第1部位に前記促進剤を塗布した後、前記円盤状の載置台が回転することにより所定の載置位置に移動した前記第1部材に対し、前記促進剤が塗布された状態の前記第1部位に前記第2部材の前記第2部位が接するように前記第2部材を順次載置する第2部材載置処理部をさらに備える、
請求項
4に記載の接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を用いて複数の物体を接合するための接合方法及び接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波を用いて複数の金属を接合する方法が知られている。特許文献1には、アンビルとホーンとの間に二枚の金属板を挟持した状態でホーンを超音波振動させることにより二枚の金属板同士を接合する技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では接合強度が十分でない場合があった。そのため、接合強度を向上する技術が求められていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、接合強度を向上する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、第1部材と、前記第1部材の硬度以上の硬度を有する第2部材とを接合する接合方法であって、前記第1部材の第1部位に接合を促進するための促進剤を塗布するステップと、前記促進剤が塗布された状態の前記第1部位に前記第2部材の第2部位が接するように、前記第2部材を前記第1部材に載置するステップと、前記第2部材を前記第1部材に載置した状態で、前記第1部材と前記第2部材とを近づける向きに加圧するステップと、前記第1部材と前記第2部材とに加圧している状態で、前記第1部材と前記第2部材とを振動させるステップと、を有する接合方法を提供する。
【0007】
例えば、前記接合方法は、開口部を有する板の前記開口部が前記第1部位に接するように、前記板を前記第1部材に載置するステップをさらに有し、前記塗布するステップにおいて、前記第1部材に前記板を載置した状態で前記開口部に前記促進剤を滴下することにより前記促進剤を前記第1部位に塗布する。
【0008】
例えば、前記接合方法は、前記開口部に前記促進剤を滴下した後に、前記開口部から溢れた前記促進剤を取り除くステップをさらに有する。
【0009】
前記塗布するステップにおいて、パラフィン又はフェノール類を少なくとも含む潤滑油を前記促進剤として塗布してもよい。
【0010】
本発明の第2の態様においては、第1部材と、前記第1部材の硬度以上の硬度を有する第2部材とを接合する接合装置であって、前記第1部材の第1部位に接合を促進するための促進剤を塗布する塗布部と、前記促進剤が塗布された状態の前記第1部位に前記第2部材の第2部位が接するように前記第2部材を前記第1部材に載置した状態で、前記第1部材と前記第2部材とを近づける向きに加圧する加圧部と、前記加圧部が前記第1部材と前記第2部材とを加圧している状態で、前記加圧部を振動させる振動部と、を備える接合装置を提供する。
【0011】
例えば、前記接合装置は、回転する円盤状の載置台と、回転する前記円盤状の載置台に前記第1部材を順次載置する第1部材載置処理部と、をさらに備え、前記塗布部は、前記円盤状の載置台が回転することにより所定の塗布位置に移動した前記第1部材に前記促進剤を塗布する。
【0012】
例えば、前記接合装置は、前記塗布部が前記第1部位に前記促進剤を塗布した後、前記円盤状の載置台が回転することにより所定の載置位置に移動した前記第1部材に対し、前記促進剤が塗布された状態の前記第1部位に前記第2部材の前記第2部位が接するように前記第2部材を順次載置する第2部材載置処理部をさらに備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、接合強度が向上するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る接合装置の構成を示す模式図である。
【
図3】促進剤を塗布する方法、及び加圧部が第1部材と第2部材を加圧する方法を説明するための図である。
【
図4】促進剤を塗布する方法の一例を説明するための図である。
【
図5】溢れた促進剤を取り除く方法の一例を説明するための図である。
【
図6】接合処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】変形例に係る接合装置を説明するための図である。
【
図8】促進剤を塗布していない場合の第2部材の振幅を示す図である。
【
図9】促進剤を塗布した場合の第2部材の振幅を示す図である。
【
図10】振動周期20kHzで加圧部を2秒間振動させて接合した部材を破断させた破断面を観察した画像である。
【
図11】接合した部材の断面組織を観察した画像である。
【
図12】振動周期20kHzで加圧部を2秒間振動させてめっき加工した部材を接合した部材の断面組織をEPMA分析した画像である。
【
図13】接合した部材の接合強度と破断伸びとの関係を示す図である。
【
図14】異種の金属を接合した部材の接合強度に及ぼす促進剤の影響を模式的に示す図である。
【
図15】異種の金属を接合した部材の断面組織を観察した画像である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[接合方法の概要]
本実施形態に係る接合方法は、載置台に載置された第1部材の第1部位に促進剤を塗布し、促進剤が塗布された状態の第1部位に、第1部材の硬度以上の硬度を有する第2部材の第2部位が接するように第2部材を載置する工程を有する。そして、接合方法は、第1部材に第2部材を載置した状態で、第1部材と第2部材とを加圧部により加圧し、加圧部が第1部材と第2部材とを加圧している状態で加圧部を振動させる工程を有する。
【0016】
このようにすることで、第1部材と第2部材との界面における界面すべりを大きくできるので、より大きなせん断力を生じさせることができる。その結果、第1部材と第2部材との接合を促進させることができるので、第1部材と第2部材との接合強度を向上できる。
【0017】
[接合装置Sの構成]
以下、本実施形態に係る接合方法を実施する一手段としての接合装置Sの構成を説明する。
図1は、実施形態に係る接合装置Sの構成を示す模式図である。接合装置Sは、第1部材C1を載置するための載置台1と、加圧部2と、振動部3とを備える。また、接合装置Sは、
図1においては図示しない塗布部4を備える。塗布部4については後述する。
【0018】
図1に示す第1部材C1と第2部材C2とは、同種の金属である。第1部材C1及び第2部材C2は、例えば銅である。本実施形態における第1部材C1及び第2部材C2は、無酸素銅(合金番号C1020-1/2H)である。第1部材C1及び第2部材C2は、銅に限らず、インジウム、鉛、錫、カドミウム、亜鉛、アルミニウム、銀、金、ケイ素、チタン、ジルコニウム、プラチナ、ニオブ、鉄、ニッケル、コバルト、クロム、モリブデン、タングステンなどでもよい。また、第1部材C1と第2部材C2とは、異種の金属であってもよい。
【0019】
第1部材C1の大きさは、例えば縦30ミリメートル、横30ミリメートル、厚さ1ミリメートルである。第2部材C2の大きさは、例えば縦30ミリメートル、横5ミリメートル、厚さ1ミリメートルである。
【0020】
接合装置Sの塗布部4は、載置台1に載置された第1部材C1の接合面である第1部位に促進剤Aを塗布する。そして、接合装置Sは、第1部材C1の第1部位に促進剤Aが塗布された状態で、第2部材の接合面である第2部位が第1部位に接するように、第1部材C1に第2部材C2を載置する。
【0021】
加圧部2は、第2部材C2を第1部材C1に載置した状態で、第1部材C1と第2部材C2とを載置台1の反対側から所定の圧力で加圧する。具体的には、加圧部2は、第1部位と第2部位との間に促進剤Aが存在する状態で第1部材C1と第2部材C2とを加圧する。より具体的には、加圧部2は、第1部材C1の第1部位と第2部材C2の第2部位とに圧力が加わるように加圧する。加圧部2が第1部材C1と第2部材C2とを加圧する所定の圧力は、例えば500N(ニュートン)である。
【0022】
図2は、加圧部2の先端を模式的に示す図である。加圧部2の先端は、複数の凸部を有する。例えば、加圧部2の先端は、加圧部2の先端の中心に凸部を有し、当該凸部の周辺に4つの凸部を有する。凸部の形状は例えば四角錘である。このように、加圧部2の先端が5つの凸部を有することで、加圧部2は、加圧部2の先端の凸部を第2部材C2に食い込ませることができる。その結果、接合装置Sは、加圧部2を振動させる場合に第2部材C2を振動させやすくなる。
【0023】
振動部3は、加圧部2に連結しており、自身が振動することにより加圧部2を振動させる。振動部3は、例えばボルト締めランジュバン型振動子を含むが、これに限らず他の振動子を含んでいてもよい。振動部3は、加圧部2が第1部材C1と第2部材C2とを加圧している状態で、加圧部2を振動させる。振動部3が加圧部2を振動させる振動周期は、例えば20kHzである。振動部3が加圧部2を振動させる振幅は、例えば48マイクロメートルである。振動部3が加圧部2を振動させることにより第2部材C2が振動し、第1部材C1の第1部位と第2部材C2の第2部位とが接合する。本実施形態における接合装置Sにおいては、振動部3が例えば2.0秒にわたって加圧部2を振動させることで、第1部材C1と第2部材C2とを接合することができる。
【0024】
以下、促進剤を塗布する方法と、加圧部2が第1部材C1と第2部材C2とを加圧する方法について説明する。
図3は、促進剤を塗布する方法、及び加圧部2が第1部材C1と第2部材C2とを加圧する方法について説明するための図である。
【0025】
塗布部4は、
図3(a)に示すように、載置台1に載置された第1部材C1の第1部位D1に接合を促進するための促進剤Aを塗布する。塗布部4は、例えば所定量の液体を供給する液体定量吐出装置(ディスペンサ)であるが、これに限らず所定量の液体を供給できるものであればよい。塗布部4は、例えばパラフィン又はフェノール類を少なくとも含む潤滑油を促進剤Aとして第1部位D1に塗布する。本実施形態における塗布部4が塗布する促進剤Aの具体的な量は、例えば0.5マイクロリットルである。
【0026】
本実施形態の塗布部4が塗布する促進剤Aは、出光興産株式会社が製造する「ダイアナ フレシア(登録商標)」シリーズの潤滑油である。より具体的には、促進剤Aは、「ダイアナ フレシア P-02」である。「ダイアナ フレシア P-02」の動粘度は2平方ミリメートル毎秒である。
【0027】
接合装置Sは、
図3(b)に示すように、促進剤Aが塗布された状態の第1部材C1の第1部位D1に第2部材の第2部位D2が接するように第2部材C2を第1部材C1に載置する。そして、加圧部2は、
図3(c)に示すように、第1部材C1の第1部位D1に第2部材の第2部位D2が接するように載置された第1部材C1と第2部材C2とを加圧する。振動部3は、促進剤Aが塗布され、かつ第1部材C1と第2部材C2とを加圧部2が加圧している状態で加圧部2を振動させることにより、促進剤Aが塗布されていない場合に比べて第1部材C1の第1部位D1と第2部材C2の第2部位D2とを強固に接合できる。詳細については後述するが、このように促進剤Aが塗布された状態で加圧及び振動させることにより接合強度が向上する理由は、促進剤Aが塗布されることにより、加圧部2が振動する際の振幅が大きくなるからである。
【0028】
塗布部4は、上記の方法に限らず、他の方法を用いて促進剤Aを塗布してもよい。以下、塗布部4が促進剤Aを塗布する他の方法を
図4及び
図5を用いて説明する。
図4は、促進剤Aを塗布する方法の一例を説明するための図である。塗布部4は、
図4に示す開口部を有する板5と、
図5に示す促進剤Aを取り除く除去板6とを含む。塗布部4は、板5の開口部が第1部材C1の第1部位D1に接するように、板5を第1部材C1に載置する。続いて、塗布部4は、第1部材C1に板5を載置した状態で、板5の開口部に促進剤Aを滴下することにより促進剤Aを第1部位D1に塗布する。なお、開口部の体積は例えば0.5×10
-9立方メートルである。
【0029】
塗布部4は、開口部に促進剤を滴下した後に、開口部から溢れた促進剤Aを取り除く。
図5は、溢れた促進剤Aを取り除く方法の一例を説明するための図である。
図5は、第1部材C1及び板5を水平方向から見た断面図である。
図5(a)に示すように、塗布部4が板5の開口部に向けて滴下した促進剤Aは、板5の開口部から溢れている。塗布部4は、溢れた促進剤Aを除去するための除去板6を板5に接触させた状態で移動させる。具体的には、塗布部4は、溢れた促進剤Aに接触しないように板5に除去板6を接触させた後、板5の開口部を通過するように除去板6を移動させる。なお、除去板6と板5とが接触する面の長さは、開口部の直径よりも大きい。
【0030】
そして、塗布部4は、
図5(b)に示すように、除去板6を移動させて開口部から溢れた促進剤Aを除去した後、板5を第1部材C1から離間させる。このようにすることで、塗布部4は、
図5(c)に示すように、板5の開口部の体積に応じた量の促進剤Aを第1部材C1に塗布することができる。
【0031】
(接合方法の処理の流れ)
図6は、接合方法の処理の流れを示すフローチャートである。
図6に示す接合方法の処理の全ての工程を接合装置Sが実行してもよく、一部の工程を接合装置Sが実行してもよい。まず、第1部材C1を載置台に載置する工程が実行される(S1)。
【0032】
次に、載置台1に載置された第1部材C1の第1部位D1に接合を促進するための促進剤Aを塗布する工程が実行される(S2)。例えば、促進剤Aを塗布する工程においては、まず、開口部を有する板5の開口部が第1部位D1に接するように、板5を第1部材に載置する工程が実行される。次に、第1部材C1に板5を載置した状態で開口部に促進剤Aを滴下する工程が実行される。続いて、開口部に向けて促進剤Aを滴下する工程が実行された後に、除去板6を用いて開口部から溢れた促進剤Aを取り除く工程が実行される。除去板6を用いて開口部から溢れた促進剤Aを取り除く工程が実行された後、板5を第1部材C1から離間させる工程が実行される。なお、塗布部4がS2の各工程を実行してもよい。
【0033】
続いて、促進剤Aが塗布された状態の第1部位D1に第2部材C2の第2部位D2が接するように、第2部材C2を第1部材C1に載置する工程が実行される(S3)。その後、第1部材C1に載置した状態の第2部材C2に接触するように加圧部2を下降させ、第1部材C1と第2部材C2とを載置台1の反対側から所定の圧力で加圧する工程が実行される(S4)。
【0034】
続いて、加圧部2が第1部材C1と第2部材C2とを加圧している状態で、加圧部2を振動部3に振動させる工程が実行される(S5)。第1部材C1と第2部材C2とが接合するために要する所定の時間だけ加圧部2を振動させる工程が実行される。その後、加圧部2を第2部材から離間させる工程が実行されて第2部材の加圧が終了する。そして、加圧部2による第2部材の加圧が終了した後に、接合された第1部材C1と第2部材C2とを載置台1から取り除く工程が実行される(S6)。
【0035】
なお、上記の説明におけるS1からS6までの各処理は、接合装置Sが有するプロセッサが実行してもよく、接合装置Sを制御するコンピュータが実行してもよく、接合装置Sを操作する作業者が実行してもよい。
【0036】
(変形例1)
図7は、変形例に係る接合装置S1を説明するための図である。変形例に係る接合装置S1は、接合装置Sの載置台1に替えて、回転する円盤状の載置台7を備える。また、接合装置S1は、接合装置Sの構成に加えて、第1部材載置処理部8及び第2部材載置処理部9をさらに備える。接合装置S1は、
図7に示すように、円盤状の載置台7の回転方向に沿って、第1部材載置処理部8、塗布部4、第2部材載置処理部9、加圧部2及び振動部3が配置されている。
【0037】
第1部材載置処理部8は、回転する円盤状の載置台7に第1部材C1を順次載置する。具体的には、第1部材載置処理部8は、円盤状の載置台7の中心に対する所定の第1部材載置位置に第1部材C1を順次載置する。第1部材載置処理部8により載置台7に載置された第1部材C1は、載置台7が回転することにより移動する。
【0038】
第1部材載置処理部8に対して載置台7の回転方向の下流側に配置された塗布部4は、円盤状の載置台7が回転することにより所定の塗布位置に移動した第1部材C1の第1部位に促進剤Aを順次塗布する。なお、変形例においても、
図4を用いて説明した塗布方法を実行することができる。また、変形例においても、
図5を用いて説明した、溢れた促進剤Aを除去する方法を実行することができる。
【0039】
第2部材載置処理部9は、塗布部4が第1部位D1に促進剤Aを塗布した後、載置台7が回転することにより所定の載置位置に移動した第1部材C1に対し、第2部材C2を順次載置する。具体的には、第2部材載置処理部9は、促進剤Aが塗布された状態の第1部位に第2部材C2の第2部位が接するように第2部材C2を第1部材C1に載置する。
【0040】
加圧部2は、第2部材載置処理部9が第2部材C2を載置した後、載置台7が回転することにより所定の加圧振動位置に移動した第1部材C1及び第2部材C2に対し、第1部材C1及び第2部材C2を載置台7の反対側から加圧する。続いて、振動部3は、加圧部2が第1部材C1及び第2部材C2を加圧している状態で加圧部2を振動させる。接合装置Sは、振動部3が加圧部2を振動させて第1部材C1及び第2部材C2を接合した後、載置台7が回転することにより所定の取出位置に移動した第1部材C1及び第2部材C2を載置台7から取り除く。なお、接合した第1部材C1及び第2部材C2を載置台7から取り除く処理は、接合装置Sを操作する作業者が行ってもよい。
【0041】
(変形例2)
以上の説明において、接合装置Sは、一の載置台を備えていたが、これに限らず二以上の載置台を備えていてもよい。例えば、接合装置Sは、促進剤を塗布する場合に第1部材C1を載置する第1載置台と、第1部材C1と第2部材C2とを加圧する場合に第1部材C1と第2部材C2とを載置する第2載置台とを備える。この場合、まず、第1載置台に載置された第1部材C1に、塗布部4が促進剤を塗布する工程が実行される。次に、第1部材C1を第2載置台に載置する工程が実行され、第1部材C1が第1載置台から第2載置台に移動される。続いて、第2載置台に載置された第1部材C1に第2部材C2を載置する工程が実行される。そして、加圧部2が第1部材C1と第2部材C2とを第2載置台の反対側から加圧する工程が実行される。
【0042】
(変形例3)
以上の説明において、接合装置Sは、載置台に載置した第1部材C1と第2部材C2とを加圧部2により加圧した。これに限らず、接合装置Sは、上記の説明と異なる方法で第1部材C1と第2部材C2とを加圧してもよい。例えば、接合装置Sは、載置台1と加圧部2とに替えて、第1部材C1と第2部材C2とを加圧して保持する加圧保持部材を備える。加圧保持部材は、第1部材C1と第2部材C2とを保持し、第1部材C1と第2部材C2とを近づける向きに加圧する。そして、加圧保持部材に連結される振動部3は、加圧保持部材を振動させることにより、第1部材C1と第2部材C2とを振動させる。
【0043】
(本発明と従来の技術との比較実験)
以下、促進剤を用いて第1部材と第2部材とを接合した場合と、促進剤を用いずに第1部材と第2部材とを接合した場合との実験データを示し、本発明の効果を説明する。なお、以下の実験においては、第1部材と第2部材とは銅である。また、以下の実験において、第1部材C1の大きさは、縦30ミリメートル、横30ミリメートル、厚さ1ミリメートルである。第2部材C2の大きさは、縦30ミリメートル、横5ミリメートル、厚さ1ミリメートルである。また、加圧部2は、第2部材C2を500N(ニュートン)で加圧した。振動部3は、振動周期20kHzで加圧部2を2秒間振動させた。
【0044】
本発明の発明者は、振動部3が加圧部2を振動している間の第2部材の振動の振幅を、レーザドップラー振動計を用いて測定した。
図8は、促進剤を塗布していない場合の第2部材の振幅を示す図である。
図8の横軸は時間を示し、縦軸は第2部材の振幅を示す。
図8に示すように、促進剤を塗布していない場合の第2部材の振幅は、約20マイクロメートルであり、振動部3が加圧部2を振動している間ほぼ一定である。
【0045】
図9は、促進剤を塗布した場合の第2部材の振幅を示す図である。
図9の横軸は時間を示し、縦軸は第2部材の振幅を示す。
図9に示すように、促進剤を塗布した場合の第2部材の振幅の最大値は、
図8に示した振幅よりも大きく、約60マイクロメートルである。また、促進剤を塗布した場合の第2部材の振幅は、時間経過に応じて振幅が小さくなっている。
【0046】
図8及び
図9に示すように、促進剤を塗布した場合の第2部材の振幅は、促進剤を塗布していない場合の第2部材の振幅よりも約3倍大きい。そのため、促進剤を塗布した場合の相対滑り速度、加速度、せん断力等は、促進剤を塗布していない場合よりも約3倍大きくなっていると考えられる。
【0047】
続いて、引張強度試験機を用いて第1部材に接合した第2部材を引っ張る引張試験を実施し、走査型電子顕微鏡を用いて破断面を観察することにより接合状態を比較した。引張強度試験機により第2部材を引っ張る引張速度は1ミリメートル毎分であった。
【0048】
図10は、振動周期20kHzで加圧部2を2秒間振動させて接合した部材を破断させた破断面を観察した画像である。
図10において、第2部材の振動方向は紙面に対して平行な方向であり、紙面の上下方向である。
図10(A)は、促進剤を塗布していない場合の破断面を観察した画像である。
図10(A)に示すように、促進剤を塗布していない場合の破断面は、中央部に細い筋が生じている。促進剤を塗布していない場合の破断面の観察結果は、第1部材と第2部材との間で局所的な接合が行われたことを示している。
【0049】
図10(B)は、促進剤を塗布した場合の破断面を観察した画像である。
図10(B)に示すように、促進剤を塗布した場合の破断面は、促進剤を塗布していない場合の破断面に生じた筋よりも太い筋が生じている。また、促進剤を塗布した場合の破断面に生じた筋の凹凸の差は、促進剤を塗布していない場合の破断面に生じた筋の凹凸の差よりも大きい。促進剤を塗布した場合の破断面の観察結果は、第1部材と第2部材との間で大規模な接合が行われたことを示している。
【0050】
本発明の発明者は、促進剤を塗布していない場合と促進剤を塗布した場合との断面組織を、走査型電子顕微鏡を用いて観察した。
図11は、接合した部材の断面組織を観察した画像である。
図11において、第2部材の振動方向は紙面に対して垂直な方向である。
【0051】
図11(A)は、促進剤を塗布していない場合の断面組織を観察した画像である。
図11(A)に示すように、促進剤を塗布していない場合の断面組織の界面接合部L1は、おおよそ平坦であると言える。
【0052】
図11(B)は、促進剤を塗布した場合の断面組織を観察した画像である。
図11(B)に示すように、促進剤を塗布した場合の断面組織の界面接合部L2は、平坦とは言えず、促進剤を塗布していない場合の断面組織の界面接合部L1よりもうねりが大きい。
【0053】
促進剤を塗布していない場合の断面組織の観察結果は、破断面の観察結果と同様に、第1部材と第2部材との間で局所的な接合が行われたことを示している。促進剤を塗布した場合の断面組織の観察結果は、破断面の観察結果と同様に、第1部材と第2部材との間で大規模な接合が行われたことを示している。
【0054】
促進剤を塗布しない状態で生じる接合は、接合面における金属原子間の引力に起因する接合である。一方、促進剤を塗布した状態で生じる接合は、凝着摩耗現象によって移着素子(接合の核)の生成、合体、及び成長を伴う接合であると考えられる。そのため、促進剤を塗布した場合の接合では、第1部材と第2部材との間で原子サイズを大きく超える凝着による固相接合が生じ、接合強度が増加したと考えられる。
【0055】
以上の説明において、第1部材及び第2部材の表面はめっきなどの処理が行われていなかったが、実施形態に係る接合装置Sは、第1部材又は第2部材の少なくともいずれかの表面にめっきを施していても接合強度を向上することができる。以下、ニッケルめっきを施していない銅を第1部材C1とし、ニッケルめっきを施した銅を第2部材C2として、促進剤を用いて接合した場合と、促進剤を用いずに接合した場合との実験データを示し、本発明の効果を説明する。なお、第1部材C1の大きさは、縦30ミリメートル、横30ミリメートル、厚さ1ミリメートルである。第2部材C2の大きさは、縦30ミリメートル、横5ミリメートル、厚さ1ミリメートルである。また、加圧部2は、第2部材C2を500N(ニュートン)で加圧した。振動部3は、振動周期20kHzで加圧部2を2秒間振動させた。
【0056】
図12は、振動周期20kHzで加圧部を2秒間振動させてめっき加工した部材を接合した部材の断面組織を観察した二次電子像である。
図12において、第2部材の振動方向は紙面に対して垂直な方向である。
図12(A)は、促進剤を塗布していない場合の断面組織を観察した画像である。
図12(A)に示すように、促進剤を塗布していない場合、第1部材と第2部材との間の界面にめっき膜M1が残存している。
【0057】
図12(B)は、促進剤を塗布した場合の断面組織を観察した画像である。
図12(B)に示すように、促進剤を塗布した場合、第1部材と第2部材との間においてめっき膜M2が粉砕され、明瞭な界面が認められない。
【0058】
接合装置Sは、促進剤を塗布することにより、促進剤を塗布していない場合よりも大きなせん断力を生じさせるので、めっき膜を粉砕することができたと考えられる。そのため、接合装置Sは、接合する部材の表面にめっきが施されていても接合を促進させて接合強度を高めることができる。また、接合装置Sは、めっきを施した部材を接合する場合にめっきを除去する処理を行わなくてもよいので、めっきを除去する処理に係るコストを低減できる。
【0059】
接合した部材の接合強度と破断伸びとの関係を説明する。
図13は、接合した部材の接合強度と破断伸びとの関係を示す図である。
図13の横軸は破断伸びを示し、縦軸は接合強度を示す。白抜きの三角は、促進剤を塗布していない場合における破断伸びと接合強度との関係を示すプロットである。黒く塗りつぶした三角は、促進剤を塗布した場合における破断伸びと接合強度との関係を示すプロットである。
図13に示すように、促進剤を塗布した場合の接合は、促進剤を塗布していない場合の接合よりも、破断伸びと接合強度とが大きい。
図13は、第1部材C1及び第2部材C2の表面粗さが異なることにより、接合強度にばらつきが生じているが、促進剤を塗布することにより、表面粗さのばらつきにかかわらず接合強度が向上することを示している。
【0060】
(アルミニウムへの適用)
接合装置Sは、第1部材と第2部材とを銅に替えてアルミニウムを用いた場合も上記と同様に接合強度を向上できる。加圧部2は、アルミニウム同士を加圧する場合、第2部材C2を350N(ニュートン)で加圧した。振動部3は、振動周期20kHzで加圧部2を0.25秒又は0.5秒間振動させた。加圧部2を0.25秒又は0.5秒間振動させた場合、接合装置Sは、促進剤を塗布しない場合よりも接合強度を向上できた。また、振動部3は、振動周期20kHzで加圧部2を1.0秒間振動させた。加圧部2を1.0秒間振動させた場合、部材が破壊した。なお、促進剤を塗布しない場合、第2部材C2はネッキング割れを生じた。一方、促進剤を塗布した場合、第2部材C2はネッキング割れを生じず、第1部材C1に穴が生じた。
【0061】
このように、接合装置Sは、アルミニウム同士を接合させる場合、銅同士を接合させる場合よりも、加圧部2が第2部材を加圧する圧力を小さくする、又は加圧部2を振動させる時間を短くすることにより、接合強度を向上できる。また、接合装置Sは、アルミニウムを用いた場合において、促進剤を塗布することにより、局部縮小を伴う塑性変形を抑制し、ネッキング破断を抑制できる。なお、第1部材C1の大きさは、縦30ミリメートル、横30ミリメートル、厚さ1ミリメートルである。第2部材C2の大きさは、縦30ミリメートル、横5ミリメートル、厚さ1ミリメートルである。
【0062】
(異種金属の場合)
続いて、第1部材C1と第2部材C2とが異なる金属である場合の実験結果を説明する。本実施形態においては、異なる金属として、ビッカース硬さ(HV)43であるアルミニウムと、ビッカース硬さ90である銅とを用いた。
図14は、異種の金属を接合した部材の接合強度に及ぼす促進剤の影響を模式的に示す図である。
図14の縦軸は接合強度を示し、横軸は振動時間を示す。
【0063】
図14(A)は、第1部材C1に銅を用い、第2部材C2にアルミニウムを用いた場合のプロットである。第1部材C1の大きさは、縦30ミリメートル、横30ミリメートル、厚さ1ミリメートルである。第2部材C2の大きさは、縦30ミリメートル、横5ミリメートル、厚さ1ミリメートルである。
図14(A)の実験において、加圧部2は、アルミニウムである第2部材C2を350N(ニュートン)で加圧した。また、振動部3は、振動周期20kHzで加圧部2を0.5秒間振動させた。
【0064】
図14(A)の白抜きの丸は、第1部材C1が銅であり、第2部材C2がアルミニウムであり、促進剤Aを塗布していない場合のプロット(Dry)である。
図14(A)の黒く塗りつぶした丸は、第1部材C1が銅であり、第2部材C2がアルミニウムであり、促進剤Aを塗布した場合のプロット(Oil)である。第1部材C1が銅であり、第2部材C2がアルミニウムである場合は、促進剤Aを塗布したときの方が促進剤Aを塗布しないときよりも接合強度が低くなる。
【0065】
図14(B)は、第1部材C1にアルミニウムを用い、第2部材C2に銅を用いた場合のプロットである。第1部材C1の大きさは、縦30ミリメートル、横30ミリメートル、厚さ1ミリメートルである。第2部材C2の大きさは、縦30ミリメートル、横5ミリメートル、厚さ1ミリメートルである。
図14(B)の実験において、加圧部2は、銅である第2部材C2を350N(ニュートン)で加圧した。また、振動部3は、振動周期20kHzで加圧部2を1.0秒間又は2.0秒間振動させた。
【0066】
図14(B)の白抜きの四角は、第1部材C1がアルミニウムであり、第2部材C2が銅であり、促進剤Aを塗布していない場合のプロット(Dry)である。
図14(B)の黒く塗りつぶした四角は、第1部材C1がアルミニウムであり、第2部材C2が銅であり、促進剤Aを塗布した場合のプロット(Oil)である。第1部材C1がアルミニウムであり、第2部材C2が銅である場合は、促進剤Aを塗布したときの方が促進剤Aを塗布しないときよりも接合強度が高くなる。また、
図14(B)は、第1部材C1がアルミニウムであり、第2部材C2が銅である場合、振動時間を長くすると接合強度が高くなることを示している。
【0067】
図15は、異種の金属を接合した部材の断面組織を観察した画像である。
図15(A)は、第1部材C1が銅(Cu)であり、第2部材C2がアルミニウム(Al)である場合の断面組織を観察した画像である。
図15(A)の短破線は、第1部材C1と第2部材C2との界面L21を示す。
図15(A)に示すように、界面L21は直線的である。
【0068】
図15(B)は、第1部材C1がアルミニウム(Al)であり、第2部材C2が銅(Cu)である場合の断面組織を観察した画像である。
図15(B)の一点鎖線は、第1部材C1と第2部材C2との界面L22を示す。
図15(B)に示す界面L22は曲線的である。このことは、第2部材C2である銅が、第1部材C1であるアルミニウムを押込んで、第1部材C1が減肉したためだと考えられる。
【0069】
(接合強度に及ぼす促進剤の影響)
硬さが異なる金属部材を接合する場合、ビッカース硬さが相対的に小さい金属が優先的に変形するため、第1部材C1と第2部材C2との硬さの関係によって促進剤の影響が変化する。例えば、銅にアルミニウムを載置する場合は、加圧部2がアルミニウムに接触した状態で加圧部2が振動するとアルミニウムが変形してしまうので、銅とアルミニウムとの界面における界面すべりが小さくなり、接合強度が低下すると考えられる。一方、アルミニウムに銅を載置する場合は、加圧部2を振動しても第2部材C2である銅が変形せず、銅を載置したアルミニウムが変形する。そのため、銅とアルミニウムとの界面における界面すべりが大きくなるので、アルミニウムに銅を載置する場合は、接合強度が向上したと考えられる。
【0070】
以上説明したとおり、接合装置Sは、異種の金属を接合する場合、ビッカース硬さが相対的に大きい金属を、ビッカース硬さが相対的に小さい金属に載置する。このようにすることで、接合装置Sは、第1部材C1と第2部材C2との界面における界面滑りを大きくすることができるので接合強度を向上できる。
【0071】
接合装置Sは、硬さが異なる異種の金属を接合する場合、異種の金属を載置する順序に応じて加圧部2が第2部材C2を加圧する圧力や、振動部3が加圧部2を振動させる時間又は振動周期を変化させてもよい。例えば、接合装置Sは、相対的に硬さが小さい金属を相対的に硬さが大きい金属に載置する場合、相対的に硬さが大きい金属を相対的に硬さが小さい金属に載置する場合よりも加圧部2が第2部材C2を加圧する圧力を小さくする。また、接合装置Sは、相対的に硬さが小さい金属を相対的に硬さが大きい金属に載置する場合、相対的に硬さが大きい金属を相対的に硬さが小さい金属に載置する場合よりも加圧部2を振動させる時間を短くする、又は振動周期を小さくする。
【0072】
(異種の金属への適用について)
図16は、金属間の相互溶解性を示す図である。
図16は、「山本雄二、鎌田禎宏、トライボロジー、理工学社(2010)、193」より引用した図である。
図16において、金属同士の相互溶解度と、金属同士を摺動させた場合の摩耗量とが示されている。
図16において、同種の金属同士を摺動させる場合、摩耗量が極めて多いことが示されている。
図16は、実験データを示して接合強度が向上することを確かめた銅同士又はアルミニウム同士を摺動させる場合、摩耗量が極めて大きいことを示している。
【0073】
また、
図16は、異種の金属同士を摺動させる場合、組み合わせに応じて摩耗量が変化することを示している。例えば、
図16は、実験データを示して接合強度が向上することを確かめた銅とアルミニウムとの場合、摩耗量が多いことを示している。言い換えると、接合装置Sは、摩耗量が多い銅とアルミニウムとの組み合わせにおいて、促進剤を塗布することにより接合強度を向上することができた。よって、接合装置Sは、
図16に基づいて、摺動させた場合の摩耗量が多い異種金属の組み合わせ、すなわち、相互溶解度が相対的に高い異種金属の組み合わせにおいて、促進剤を塗布することにより接合強度を向上できると考えられる。
【0074】
[実施形態に係る接合装置Sの効果]
以上説明したとおり、接合装置Sの塗布部4は、載置台1に載置した第1部材C1の第1部位D1に接合を促進するための促進剤Aを塗布する。次に、接合装置Sの加圧部2は、促進剤Aが塗布された状態の第1部位D1に第2部材C2の第2部位D2が接するように第2部材C2が第1部材C1に載置された状態で、第1部材C1と第2部材C2とを載置台1の反対側から加圧する。そして、振動部3は、加圧部2が第1部材C1と第2部材C2とを加圧している状態で加圧部2を振動させることにより、第2部材C2を振動させる。
【0075】
このようにすることで、接合装置Sは、第1部材C1の第1部位D1に接合を促進するための促進剤Aを塗布することにより、促進剤Aを塗布しない場合よりも、第2部材C2を振動させたときに、より大きなせん断力を生じさせることができる。接合装置Sは、促進剤Aを塗布しない場合よりも大きなせん断力により、第1部材C1と第2部材C2との接合を促進できるので、接合強度を向上できる。
【0076】
なお、上記の実施形態に係る接合装置Sは、載置台に載置された第1部材の第1部位に促進剤を塗布したが、これに限らず、第2部材の第2部位に促進剤を塗布してもよい。この場合、接合装置Sは、第2部位に促進剤が塗布された状態の第2部材を、載置台に載置された第1部材に載置する。また、第1部材の第1部位又は第2部材の第2部位の少なくともいずれかに促進剤を塗布した状態で第1部材と第2部材とを重ね合わせた後に、重ねた状態の第1部材及び第2部材を載置台に載置してもよい。
【0077】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0078】
1 載置台
2 加圧部
3 振動部
4 塗布部
5 板
6 除去板
7 載置台
8 第1部材載置処理部
9 第2部材載置処理部
A 促進剤
C1 第1部材
D1 第1部位
C2 第2部材
D2 第2部位
S 接合装置