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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】処置具挿入補助具
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/01 20060101AFI20240403BHJP
   A61B 17/02 20060101ALI20240403BHJP
   A61B 17/34 20060101ALI20240403BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
A61B1/01 511
A61B17/02
A61B17/34
G02B23/24 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020146139
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022041104
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】598121341
【氏名又は名称】慶應義塾
(73)【特許権者】
【識別番号】390029676
【氏名又は名称】株式会社トップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】和田 則仁
(72)【発明者】
【氏名】矢作 直久
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 卓也
(72)【発明者】
【氏名】日村 義彦
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/070042(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/119108(WO,A1)
【文献】特開2005-287963(JP,A)
【文献】特開平07-111973(JP,A)
【文献】特開2008-048946(JP,A)
【文献】特開2009-207888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
A61B 17/00-17/94
G02B 23/24-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体壁を切開した開創部に挿通されるアウターチューブと、
前記アウターチューブの内部に挿通されて先端部が前記アウターチューブから体内に突出すると共に、内部に処置具が挿通される複数のインナーチューブと、を備え、
前記アウターチューブは、前記インナーチューブと係合して前記インナーチューブを前記アウターチューブの周方向に位置決めする複数の係合部を有し、
前記インナーチューブのうち第1のインナーチューブは、前記先端部に屈曲した部分を有すると共に前記先端部よりも後端側に直線部を有し、前記直線部の軸心回りに回転自在に接続されたリング部材を介して前記係合部と係合することを特徴とする処置具挿入補助具。
【請求項2】
請求項1に記載の処置具挿入補助具において、
前記アウターチューブは、全てのインナーチューブが挿通された状態で、少なくとも1つの前記第1のインナーチューブが前記先端部が屈曲した状態のまま通過して後端側に抜出可能な間隙を有することを特徴とする処置具挿入補助具。
【請求項3】
請求項1に記載の処置具挿入補助具において、
前記インナーチューブのうち第2のインナーチューブは、前記先端部に直線状に延びる直線部を有し、
前記アウターチューブは、全てのインナーチューブが挿通された状態から前記第2のインナーチューブを抜き取った状態で、1つの前記第1のインナーチューブの前記先端部が屈曲した状態のまま通過して後端側に抜出可能な間隙を有することを特徴とする処置具挿入補助具。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の処置具挿入補助具において、
前記インナーチューブは、複数のチューブ体と、前記チューブ体同士を接続するチューブ接続体と、から構成され、
前記リング部材は、前記チューブ接続体に接続されることを特徴とする処置具挿入補助具。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の処置具挿入補助具において、
前記第1のインナーチューブは、前記先端部の前記直線部に対して屈曲した側と同じ側の周方向外側に突出する回転操作具を後端側に有することを特徴とする処置具挿入補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡、鉗子、メス等の処置具を体内へ挿入する際に、その挿入を補助する処置具挿入補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡、鉗子、メス等の処置具を体内へ挿入して、内視鏡の観察下にて体腔内の手術が行われている。このような手術を行う際に処置具の挿入を補助する処置具挿入補助具(内視鏡外科手術プラットフォーム)が用いられる。処置具挿入補助具は、処置具を内部に進退自在に挿入可能な複数のインナーチューブと、これら複数のインナーチューブを挿入可能なアウターチューブとを備えている。
【0003】
患者の体力的負担を軽減するという低侵襲性確保の観点から、開創部の大きさは最小限であることが好ましく、アウターチューブの挿入部の外径とほぼ同等かそれ以上の外径に対応する大きさの開創部を体表部に形成している。
【0004】
そして、処置具挿入補助具の挿入時にはインナーチューブの先端を直伸状態として、処置具挿入補助具の挿入時の大きさは、アウターチューブの挿入部の外径より小さくなるように構成されている。体腔内の処置部近傍までインナーチューブの先端を挿入してから、体外部に位置する操作部を操作することにより、先端の間隔が広がるようにインナーチューブを展開して、インナーチューブにそれぞれ挿入されている処置具の可動範囲を拡大して、適切な操作範囲を確保している(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】再表2018/070042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の処置具挿入補助具においては、インナーチューブの先端部を直伸状態から展開状態に変換するための展開機構、変換機構を操作するための操作機構、展開状態を維持する維持機構を設ける必要があった。そのため、これらの機構を実現するために要する部品及びその組立作業を必要としていた。
【0007】
本発明は、かかる不都合を解消して、インナーチューブの先端部を展開するための機構などを必要とせず、インナーチューブの先端部をアウターチューブの先端の内周面より外方に展開することが可能な処置具挿入補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、体壁を切開した開創部に挿通されるアウターチューブと、前記アウターチューブの内部に挿通されて先端部が前記アウターチューブから体内に突出すると共に、内部に処置具が挿通される複数のインナーチューブと、を備え、前記アウターチューブは、前記インナーチューブと係合して前記インナーチューブを前記アウターチューブの周方向に位置決めする複数の係合部を有し、前記インナーチューブのうち少なくとも1つの第1のインナーチューブは、前記先端部に屈曲した部分を有すると共に前記先端部よりも後端側に直線部を有し、前記直線部の軸心回りに回転自在に接続されたリング部材を介して前記係合部と係合することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、複数のインナーチューブは、アウターチューブの後端側から挿通され、アウターチューブから体内に先端部が突出するので、処置具挿入補助具を開創部から体腔内に挿入する際には、アウターチューブを挿入することが可能な開創部を体壁に形成すれば十分である。そして、処置具挿入補助具を挿入した後に、第1のインナーチューブを回転させるだけで、インナーチューブを屈曲させる機構などを備えることなく、その先端部の屈曲した部分をアウターチューブの先端の内周面より外方に突出するように展開させることが可能となる。そして、処置具挿入補助具を抜き出す際には、第1のインナーチューブを回転させて屈曲した部分をアウターチューブの先端の内周面より内側に、又は、少なくともアウターチューブの先端の外周面よりも内側に退避させればよい。
【0010】
なお、複数の係合部は、アウターチューブに直接的に形成されているものに限定されず、アウターチューブに固定的に又は取り外し可能に取り付けられる部材に形成、あるいはこのような部材によって構成されるものであってもよい。
【0011】
本発明において、前記アウターチューブは、全てのインナーチューブが挿通された状態で、少なくとも1つの前記第1のインナーチューブが前記先端部が屈曲した状態のまま通過して後端側に抜出可能な間隙を有することが好ましい。
【0012】
この場合、少なくとも第1のインナーチューブをその先端部が屈曲した状態のまま、後端側からアウターチューブに挿入させて、その内部を通過させて先端から突出させることが、他の全てのインナーチューブがアウターチューブに挿通された状態で行うことが可能となる。これにより、処置具挿入補助具を挿入した状態で、第1のインナーチューブの抜き出し及び再挿入を行うことができ、術中に処置具に適するようにインナーチューブを交換することが可能となる。
【0013】
また、本発明において、前記インナーチューブのうち第2のインナーチューブは、前記先端部に直線状に延びる直線部を有し、前記アウターチューブは、全てのインナーチューブが挿通された状態から前記第2のインナーチューブを抜き取った状態で、1つの前記第1のインナーチューブの前記先端部が屈曲した状態のまま通過して後端側に抜出可能な間隙を有することが好ましい。
【0014】
この場合、第2のインナーチューブをアウターチューブから抜き取った状態で、少なくとも1つの第1のインナーチューブをその先端部が屈曲した状態のまま、アウターチューブ内を通過させて後端側から抜き出すことが可能となる。
【0015】
また、本発明において、前記インナーチューブは、複数のチューブ体と、前記チューブ体同士を接続するチューブ接続体と、から構成され、前記リング部材は、前記チューブ接続体に接続されることが好ましい。
【0016】
この場合、軟質材からなるチューブ体ではなくチューブ接続体に前記リング体が接続されているので、リング部材のインナーチューブへの組み付けの容易化を図ることができる。これにより、リング部材がコンパクトに構成され、ひいては、アウターチューブの外径の大径化の抑制を図ることができる。
【0017】
さらに、本発明において、前記第1のインナーチューブは、前記先端部の前記直線部に対して屈曲した側と同じ側の周方向外側に突出する回転操作具を後端側に有することが好ましい。
【0018】
この場合、回転操作具を用いることにより、術者が簡易に第1のインナーチューブを回転させることが可能となる。また、回転操作具の突出する方向により屈曲した部分の屈曲方向を術者が容易に認識することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る処置具挿入補助具を示す正面図。
図2図1のII-II線における断面図。
図3】インナーチューブなどの分解斜視図。
図4】1本目のインナーチューブを挿通した状態を示す断面図。
図5】2本目のインナーチューブを挿通した状態を示す断面図。
図6】2本のインナーチューブを近接させた状態及び展開した状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態に係る処置具挿入補助具100について説明する。処置具挿入補助具100は、内視鏡、鉗子、メス等の処置具(図示せず)の体内への挿入を補助するために用いられる。
【0021】
処置具挿入補助具100は、図1及び図2に示すように、主として、アウターチューブ10、複数のレール部材20、複数のリング部材30、及び複数のインナーチューブ40,50から構成される。アウターチューブ10の内周面に複数のレール部材20が取り付けられ、これらレール部材20によって円周方向に離間して形成される係合部60にリング部材30が取り付けられ、このリング部材30を用いてインナーチューブ40,50がアウターチューブ10に挿入された状態で取り付けられる。なお、インナーチューブ40は本発明の第1のインナーチューブに相当し、インナーチューブ50は本発明の第2のインナーチューブに相当する。
【0022】
アウターチューブ10は、図示しないが、体壁を切開した開創部に挿通される。アウターチューブ10は、可撓性を有する大略円筒状体であり、内壁面に先端側から基端側にかけて軸方向に延設された複数の案内部11を備えている。案内部11は、ここでは、アウターチューブ10の内壁面に形成された蟻溝11であり、内壁面に円周方向に等間隔に形成されている。
【0023】
本実施形態では、蟻溝11は、図2に示すように、中心軸に向って突出した突出部に形成されており、開口部、奥側ともに、矩形の断面形状を備えている。ただし、蟻溝11の形状はこれに限定されず、開口部よりも奥側に広がった略台形であっても、開口部が矩形で奥側が略円形などであってもよい。
【0024】
アウターチューブ10は、ポリプロピレン、塩化ビニル等の軟性プラスチック、ゴム等の軟質材から構成されている。また、アウターチューブ10は、ABS、ポリカ-ボネートなどの硬性プラスチックや硬質ゴムなどから構成されてもよい。なお、アウターチューブ10は部分的に又は全体を透明又は半透明であってもよい。
【0025】
レール部材20は、アウターチューブ10と同様の素材からなり、可撓性を有する長尺体となっている。レール部材20は、外側面に先端側から基端側にかけて軸方向に延設された被案内部21を備えている。被案内部21は、ここでは、レール部材20の外側面に形成された突起21である。なお、被案内部21は、断続的に形成されたものであってもよい。
【0026】
本実施形態では、突起21は、アウターチューブ10の案内部11に係合する形状に形成されており、外側、首部とともに、矩形の断面形状となっている。ただし、突起21の断面形状はこれに限定されず、例えば、奥側に広がった略台形、外側が略円形で首部が矩形であってもよい。
【0027】
アウターチューブ10の内周面と隣接するレール部材20の左右側面とよって蟻溝60が形成される。この蟻溝60が、インナーチューブ40,50に取り付けられたリング部材30が係合する係合部60として機能する。
【0028】
本実施形態では、蟻溝60は、図2に示すように、開口部、奥側ともに、矩形の断面形となっている。ただし、蟻溝60の断面形状は、例えば、開口部よりも奥側に広がった略台形、開口部が矩形で奥側が略円形などであってもよい。
【0029】
レール部材20は、被案内部21が案内部11に係合された状態で、その先端部がアウターチューブ10の最も先端側の部分に接着剤などによって固定されているが、レール部材20の他の部分はアウターチューブ10に固定されていない。これにより、アウターチューブ10が屈曲したとき、各レール部材20が追従して屈曲し、アウターチューブ10の屈曲を妨げない。これにより、断面形状を維持した状態でアウターチューブ10が屈曲可能となる。
【0030】
さらに、アウターチューブ10の基端側には、ガイドパイプ12、空気漏れ防止リング13及びバルブシート(不図示)が取り付けられている。
【0031】
リング部材30は、図3も参照して、円筒形状のリング体本体31と、リング体本体31の外周面に外方に突出するようにして備わり、係合部60に係合して、リング部材30が取り付けられたインナーチューブ40,50を摺動可能に誘導する被係合部32とを備えている。
【0032】
被係合部32は、ここでは、リング本体31の外周面に突出する幅広の矩形状の突起であるが、係合部60に係合可能であれば任意の形状とすることができる。
【0033】
被係合部32は、リング体本体31の先端から基端に亘って連続して設けられている。ただし、被係合部32は、リング体本体31の外周面の先端から基端に亘る部分の一部に断続的に、少なくとも先端だけに設けられたものであってもよい。
【0034】
インナーチューブ40,50は、可撓性を有する筒状体であり、内視鏡、鉗子、メス等の処置具を内部に挿通させることが可能に構成されている。インナーチューブ40,50は、ここでは、処置具を挿入するためのチャネルを1つだけ有しているが、2つ以上のチャンネルを有してもよい。
【0035】
インナーチューブ40,50は、図3に示すように、円筒形状のチューブ体41,51と、チューブ体41,51の間に位置してこれらチューブ体41,51を接続するチューブ接続体42,52とから構成されている。
【0036】
インナーチューブ40,50の先端に位置するチューブ体41,51は、ABS、ポリカ-ボネートなどの硬性プラスチックや硬質ゴムなどの硬質材から構成されている。一方、インナーチューブ40,50の先端に位置しない他のチューブ体41,51は、ポリプロピレン、塩化ビニル等の軟性プラスチック、ゴム等の軟質材から構成されているが、先端のチューブ体41,51と同様に硬質材から構成されていてもよい。そして、チューブ接続体42,52は、ABS、ポリカ-ボネートなどの硬性プラスチックなどの耐摩耗性に優れた硬質材から構成されている。
【0037】
なお、インナーチューブ40は、例えば、軟性の鉗子双腕シャフトなどの処置具(不図示)が挿入される。インナーチューブ50は、例えば、軟性の内視鏡などの処置具(不図示)が挿通される。なお、ここでは、インナーチューブ40が2本であり、インナーチューブ50が1本であるが、これらの本数は限定されず、さらに他種のインナーチューブを有すものであってもよい。インナーチューブ50の外径は、インナーチューブ40の外径と比較して大きいが、これに限定されず、小さくしても、同じであってもよい。
【0038】
ここでは、各インナーチューブ40,50は、それぞれ3本のチューブ体41,51と2本のチューブ接続体42,52とが軸方向に連結されることにより構成されている。そして、チューブ体41,51とリング体30が取り付けられたチューブ接続体42,52とは、一方を軸回りに回転させると他方も一体化して回転するように固定的に連結される。
【0039】
なお、チューブ体41,51とチューブ接続体42,52とは分離可能であっても、分離不可能であってもよい。また、チューブ接続体42,52には、軸方向に延在する細いスリットが形成されていることが好ましい。これにより、チューブ接続体42,52を直径方向に変形させた状態でリング部材30に挿通させることができるので、リング部材30をコンパクトな一部材とすることが可能となる。
【0040】
インナーチューブ40において、先端以外のチューブ体41及びチューブ接続体42は、その軸線(円環状断面の中心を連ねた線)が直線である直線部となっている。ただし、直線部は、軸線が厳密に直線であるものに限定されず、概ね直線であればよく、さらに、内周面や外周面に凸部や凹部が存在していてもよい。
【0041】
先端以外のチューブ体41は、軟質材から構成されているので、その軸線は直線から変更自在である。また、インナーチューブ50において、全てのチューブ体51及びチューブ接続体52は、その軸線が直線である直線部となっている。ただし、チューブ体51は、軟質材から構成されているので、その軸線は直線から変更自在である。
【0042】
そして、インナーチューブ40,50は、それぞれのチューブ接続体42,52がリング部材30に予め挿入された状態で、リング部材30の被係合部32を係合部60に係合した状態で摺動させることにより、アウターチューブ10に挿通される。この挿通状態において、インナーチューブ40,50は、その中間部が、アウターチューブ10の内周面に取り付けられたレール部材20と係合するリング部材30に支持される。これにより、インナーチューブ40,50は、それぞれアウターチューブ10内に挿通された状態で軸線回りに回転自在となる。
【0043】
このように、軟質材からなるチューブ体41,51ではなくチューブ接続体42,52にリング部材30が接続されているので、リング部材30のインナーチューブ40,50への組み付けの容易化を図ることができる。これにより、リング部材30をコンパクトに構成して、アウターチューブ10の外径の大径化の抑制を図ることが可能となる。
【0044】
なお、インナーチューブ50は、回転自在に構成されていなくてもよい。例えば、インナーチューブ50は、全体として1本のチューブ体からなり、このチューブ体に形成された被係合部が係合部60に直接係合するものであってもよい。
【0045】
そして、インナーチューブ40の先端のチューブ体41の先端部に、直線部と比較して軸線が屈曲した部分(以下、屈曲部という)41aを有している。チューブ体41は、その屈曲部41aも含めた全体において内径及び外径が同じとなっている。この屈曲部41aは、インナーチューブ40がアウターチューブ10に挿入されて装着されたとき、アウターチューブ10の先端から体内に突出して位置する。ここでは、屈曲部41aは、その軸線が一方向に、すなわちインナーチューブ40の軸線が同一平面に位置するように屈曲している。
【0046】
屈曲部41aは、ここでは、その軸線がS字状、Z字状などの3次曲線状であり、一方向に屈曲した後、先端部の軸線が再び直線部と平行にオフセットされて直線又は直線に近似した形状したオフセット部を有している。ただし、屈曲部41aは、例えば、図示しないが、その軸線がへの字状(逆Vの字状)、V字状などの2次曲線状であり、先端に向かって一方に屈曲していてもよい。また、屈曲部41aは、その軸線が2次曲線及び3次曲線以外の曲線状であってもよい。
【0047】
ただし、屈曲部41aは、他の全てのインナーチューブ50が既に挿通された状態で、1本のインナーチューブ40がアウターチューブ10に挿入及び抜き出し可能であるような形状でなくてはならない。
【0048】
さらに、インナーチューブ40,50の先端部には、ノーズカバー43,53(図1及び図3参照)が取り付けられている。ノーズカバー43,53は、先端のチューブ体41,51の先端部に固定されている。ノーズカバー43,53は軟質材からなっており、組織と接触しても組織に損傷を与えることがないようになっている。
【0049】
一方、インナーチューブ40,50の基端部には、スライドパイプ44,54及び脱気防止弁45,55が取り付けられている。
【0050】
スライドパイプ44,54は、インナーチューブ40,50の後端部に接続され、空気漏れ防止リング13に挿入される。これにより、アウターチューブ10のインナーチューブ40,50が挿入されていない箇所や挿入されたインナーチューブ40,50の外周部から、体腔内の空気が漏れることを防ぐことができる。
【0051】
脱気防止弁45,55は、処置具が挿入されていないインナーチューブ40,50から体腔、例えば腹腔から空気漏れが生じることを防ぐことができる。脱気防止弁45,55は、スライドパイプ44,54の後端に着脱自在に取り付けられている。
【0052】
また、インナーチューブ40の基端部には、回転操作具46が取り付けられている。回転操作具46は、詳細は図示しないが、インナーチューブ40の後端のチューブ体41の後端部に一体的に固定されている。術者が回転操作具46を回転させることにより、インナーチューブ40が回転し、インナーチューブ40の先端の屈曲部41aの屈曲する向きを変えることができる。なお、回転操作具46は、直線部に対して屈曲部41aが屈曲した側に同じ側の周方向外側に突出していることが好ましい。これにより、回転操作具46の突出方向により屈曲部41aの屈曲方向を術者が容易に認識することが可能となる。
【0053】
なお、インナーチューブ40,50は、アウターチューブ10に挿通させる際、何れの係合部60を用いて行うかが選択可能である。そして、リング部材30の被係合部32が係合されていない係合部60に、例えば、上記特許文献1に開示されているガイド部材の被係合部が係合されてもよい。
【0054】
以下、上述した処置具挿入補助具100を用いて内視鏡外科手術を行う場合について説明する。
【0055】
まず、図4を参照して、リング部材30を装着した状態の1本のインナーチューブ50を、リング部材30の被係合部32に係合部60を係合させながら摺動させてアウターチューブ10内に挿通させる。このインナーチューブ50の先端のチューブ体51は直線状であって屈曲していない。これにより、1本のインナーチューブ50の直線状の先端が、アウターチューブ10の先端から前方に突出した状態となる。インナーチューブ50は、被係合部32と係合部60との係合によって、アウターチューブ10内にて周方向の位置決めがされている。そして、インナーチューブ50に軟性の内視鏡(不図示)を術者が挿入する。
【0056】
次に、リング部材30を装着した状態の1本目のインナーチューブ40を、リング部材30の被係合部32に係合部60を係合させながら摺動させてアウターチューブ10に挿通させる。このとき、このインナーチューブ40の先端の屈曲部41aがインナーチューブ50と干渉しないように(図4に1点鎖線で描いた屈曲部41aを参照)、アウターチューブ10の後端側から挿入する。インナーチューブ40は、被係合部32と係合部60との係合によって、アウターチューブ10内にて周方向の位置決めがされている。
【0057】
そして、このインナーチューブ40の先端の屈曲部41aがアウターチューブ10の先端から突出した状態において、屈曲部41aが外方を向くように、術者が回転操作具46を操作して、インナーチューブ40を回転させる(図4に2点鎖線で描いた屈曲部41aを参照)。これにより、2本目のインナーチューブ40をアウターチューブ10に挿通して先端部を干渉せずに突出させることが可能となる。なお、このとき、ここでは、屈曲部41aの少なくとも一部はアウターチューブ10の先端の内周面を前方に投影した領域より外方に突出しているが、これに限定されない。
【0058】
次に、リング部材30を装着させた状態の2本目のインナーチューブ40を、リング部材30の被係合部32に係合部60を係合させながら摺動させてアウターチューブ10に挿通させる。このとき、このインナーチューブ40の先端の屈曲部41aがインナーチューブ50及び1本目のインナーチューブ40と干渉しないように(図5に1点鎖線で描いた屈曲部41aを参照)、アウターチューブ10の後端側から挿入する。
【0059】
そして、2本目のインナーチューブ40の先端の屈曲部41aがアウターチューブ10の先端から突出した状態において、1本目のインナーチューブ40の屈曲部41aが内方を向くように、術者が回転操作具46を操作して、1本目のインナーチューブ40を回転させる(図5に1点鎖線で描いた上側の屈曲部41aを参照)。
【0060】
さらに、2本目のインナーチューブ40の屈曲部41aが1本目のインナーチューブ40の屈曲部41aと近接するように、術者が回転操作具46を操作して、2本目のインナーチューブ40を回転させる(図5に1点鎖線で描いた下側の屈曲部41aを参照)。これにより、2本のインナーチューブ40の屈曲部41aが近接し、全てのインナーチューブ40,50がアウターチューブ10の先端の内周面を前方に投影した領域内に収まった状態となる。
【0061】
そして、図示しないが、この状態の処理具挿入補助具100を、リデューサーなどを用いて、体壁を切開して形成した開創部を介して体腔内に挿入し、術者の内視鏡によってインナーチューブ40,50の先端が目的位置に到達したことを確認する。
【0062】
その後、術者が回転操作具46をそれぞれ操作して、2本のインナーチューブ40を回転させて、それぞれのインナーチューブ40の先端の屈曲部41aを、他のインナーチューブ40,50と干渉しない限度において、症例などに応じた適宜な方向に展開させる(図5に2点鎖線で描いた上側と下側の屈曲部41aを参照)。このとき、2本のインナーチューブ40の屈曲部41aは、それぞれの少なくとも一部はアウターチューブ10の先端の内周面を前方に投影した領域より外方に突出する。
【0063】
その後、例えば、2本のインナーチューブ40にそれぞれ鉗子双腕シャフトなどの処置具(不図示)を術者が挿通させる。なお、外科手術の途中でインナーチューブ40の先端の屈曲部41aを当初とは異なる方向に展開させてもよい。
【0064】
以上説明したように、本実施形態の処置具挿入補助具100によれば、インナーチューブ40,50は、アウターチューブ10の後端側から挿入され、アウターチューブ10の先端側から体内に先端部が突出するが、処置具挿入補助具100を挿入する際には、アウターチューブ10が挿入することが可能な開創部を体壁に形成すれば十分である。そして、処置具挿入補助具100を挿入した後に、2本のインナーチューブ40を回転させるだけで、インナーチューブ40を屈曲させる機構などを備えることなく、その先端部の屈曲部41aをアウターチューブ10の外方に展開させることが可能となる。
【0065】
さらに、処置具挿入補助具100を抜き出す際には、インナーチューブ40を回転させて屈曲部41aをアウターチューブの10先端の内周面より内側に退避させることが可能となる。
【0066】
そして、アウターチューブ10が、全てのインナーチューブ40,50が挿通された状態で少なくとも1本目又は2本目に挿入したインナーチューブ40の先端部41aが屈曲した状態のままアウターチューブ10内を通過して後端側に抜き出し可能となっている。これにより、アウターチューブ10の内径の小径化を図ることができる。
【0067】
また、1本目に挿通したインナーチューブ40を回転させ、その先端がアウターチューブ10の内周面より外方に突出するように展開させることにより、2本目に挿通するインナーチューブ40の先端をアウターチューブ10の先端から1本目のインナーチューブ40と干渉させずに突出させることが可能となる。
【0068】
さらに、処置具挿入補助具100を挿入した状態で、インナーチューブ40を1本ずつ抜き出し及び再挿入を行うことができ、術中に処置具にそれぞれ適したインナーチューブ40に交換することが可能となる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、処置具挿入補助具の構成や形態は適宜変更可能である。例えば、インナーチューブ40,50の合計本数及び屈曲部41aを有する本数などは上述したものに限定されない。
【0070】
また、実施形態では、アウターチューブ10の内周面に形成された案内部11に取り付けられたレール部材20に形成される係合部60によって、インナーチューブ40,50がリング部材30を介して取り付けられる場合について説明した。しかし、これに限定されず、例えば、アウターチューブ10の内周面に係合部を形成し、この係合部にインナーチューブ40,50を取り付けてもよい。また、アウターチューブ10の内周面に係合部が形成された部材を取り付けてもよい。
【0071】
また、アウターチューブ10は、全てのインナーチューブ40,50が挿通された状態からインナーチューブ50を抜き取った状態で、少なともいずれか1本のインナーチューブ40の屈曲部41aが屈曲した状態のまま通過してアウターチューブ10の後端側に抜出可能な間隙を有していてもよい。
【0072】
これにより、インナーチューブ50をアウターチューブ10から抜き取った状態で、インナーチューブ40を、屈曲部41aが屈曲した状態のまま、アウターチューブ10内を通過させて後端側から抜き出すことが可能となる。
【符号の説明】
【0073】
10…アウターチューブ、 11…案内部、蟻溝、 12…ガイドパイプ、 13…空気漏れ防止リング、 20…レール部材、 21…被案内部、突起、 30…リング部材、 31…リング体本体、 32…被係合部、 40…インナーチューブ、第1のインナーチューブ、 41,51…チューブ体、直線部、 41a…屈曲部(屈曲した部分)、 42,52…チューブ接続体、直線部、 43,53…ノーズカバー、 44,54…スライドパイプ、 45,55…脱気防止弁、 46…回転操作具、 50…インナーチューブ、第2のインナーチューブ、 60…係合部、蟻溝、 100…処置具挿入補助具。
図1
図2
図3
図4
図5
図6