(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルス感染疾患の予防または治療用ワクチン組成物
(51)【国際特許分類】
C07K 14/08 20060101AFI20240403BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240403BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240403BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240403BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20240403BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240403BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20240403BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240403BHJP
C12N 15/40 20060101ALN20240403BHJP
【FI】
C07K14/08
C12N15/63 Z ZNA
A61K39/00 H
A61P43/00 121
A61K38/20
A61P37/04
A61P7/04
A61P31/12
C12N15/40
(21)【出願番号】P 2020573534
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(86)【国際出願番号】 KR2019007920
(87)【国際公開番号】W WO2020005028
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-05-02
(31)【優先権主張番号】10-2018-0074418
(32)【優先日】2018-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515238703
【氏名又は名称】コリア アドヴァンスド インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー
(73)【特許権者】
【識別番号】520512960
【氏名又は名称】ジーンワン ライフ サイエンス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】GENEONE LIFE SCIENCE, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク、ス ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】クァク、ジョン ウン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ムン ソプ
(72)【発明者】
【氏名】クォン、ジ ナ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヒョ ジン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ヨン ラン
(72)【発明者】
【氏名】ク、ジ ヘ
(72)【発明者】
【氏名】マズロー、ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ビョン ムン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヨン クン
【審査官】大西 隆史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/080252(WO,A1)
【文献】特表2011-530295(JP,A)
【文献】中国特許第104830874(CN,B)
【文献】国際公開第2011/095760(WO,A1)
【文献】Database GenBank [online], Accession No. AJO16082.1, “membrane glycoprotein polyprotein [Severe fever with thrombocytopenia syndrome virus]”,2015年06月02日
【文献】Database GenBank [online], Accession No. ADZ04487.1, “nonstructural protein [SFTS virus AH15],2011年03月09日
【文献】Database GenBank [online], Accession No. AMK05824.1, “membrane glycoprotein [Severe fever with thrombocytopenia syndrome virus]”,2016年02月22日
【文献】Database GenBank [online], Accession No. AWK57699.1, “RNA polymerase [Severe fever with thrombocytopenia syndrome virus]”,2018年03月22日
【文献】Database GenBank [online], Accession No. BAQ59256.1, “membrane glycoprotein polyprotein [Severe fever with thrombocytopenia syndrome virus]”,2015年09月17日
【文献】Database GenBank [online], Accession No. AGW42761.1, “RNA polymerase [Severe fever with thrombocytopenia syndrome virus]”,2013年09月29日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
C12N 1/00- 7/08
A61K 35/00-51/12
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号287で表されるアミノ酸配列を含む第1の組換えペプチド
;及び、
(b)配列番号289で表されるアミノ酸配列を含む第2の組換えペプチド
;を有効成分として含む、抗原用組成物。
【請求項2】
前記抗原用組成物は、筋肉内、皮内、皮下、表皮下、経皮、または静脈内から選択された経路を通して体内注射される、請求項1に記載の抗原用組成物。
【請求項3】
前記抗原用組成物は、筋肉内注射により対象体に注入される、請求項1に記載の抗原用組成物。
【請求項4】
前記抗原用組成物は、皮内注射により対象体に注入される、請求項1に記載の抗原用組成物。
【請求項5】
前記抗原用組成物は、体内注射時、追加的に電気穿孔法を利用して対象体に注入される、請求項2に記載の抗原用組成物。
【請求項6】
(a)配列番号287で表されるアミノ酸配列を含む第1の組換えペプチド
;及び、
(b)配列番号289で表されるアミノ酸配列を含む第1の組換えペプチド
;を有効成分として含む、ワクチン。
【請求項7】
前記ワクチンは、筋肉内、皮内、皮下、表皮下、経皮、または静脈内から選択された経路を通して体内注射される、請求項6に記載のワクチン。
【請求項8】
前記ワクチンは、筋肉内注射により対象体に注入される、請求項6に記載のワクチン。
【請求項9】
前記ワクチンは、皮内注射により対象体に注入される、請求項6に記載のワクチン。
【請求項10】
前記ワクチンは、体内注射時、追加的に電気穿孔法を利用して対象体に注入される、請求項7に記載のワクチン。
【請求項11】
前記ワクチンは、免疫増強剤を追加的に含む、請求項6に記載のワクチン。
【請求項12】
前記免疫増強剤は、IL-7、およびIL-33の少なくとも1つである、請求項11に記載のワクチン。
【請求項13】
配列番号286で表される塩基配列を含む組換えの第1DNA;及び
配列番号288で表される塩基配列を含む組換えの第2DNAを含む、発現ベクター。
【請求項14】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗原用組成物、または請求項6~12のいずれか一項に記載のワクチン、
または請求項13に記載の発現ベクター
を有効成分として含む、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルス感染に対する予防または治療用薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome;SFTS)ウイルス疾患による感染病を予防または治療するためのワクチン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
重症熱性血小板減少症候群(SFTS;Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome)による激しい熱病は、中国、韓国および日本でよく現れる新興ウイルス疾患である。SFTSに対する効果的なワクチンや特定治療法は現在提供されていないのが現状である。SFTSは、高熱、嘔吐、下痢、血小板減少、白血球減少および多発性臓器不全のような症状を伴い、致死率が6~30%に達する深刻な疾患である(Yu XJ et al.,N.Engl.J.Med.2011;364:1523-32;Ding F et al Clin Infect Dis2013;56:1682-3)。
【0003】
また、SFTSウイルスの血清転換およびウイルス血症がヤギ、ヒツジ、ウシ、ブタおよびイヌのような飼育動物から発見され、このような動物もSFTSウイルスが広がった地域で中間媒介体として作用すると考えられる(Zhao L et al.Emerg Infect Dis2013;18:963-5;Niu G et al.Emerg Infect Dis2013;19:756-63)。
【0004】
一方、中国公開特許公報第102070704号は、SFTSウイルスを用いたSFTSウイルス増幅および検出キットを開示している。
【0005】
そこで、本発明者らは、SFTSに対する効果的なワクチンを考案するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、個体で免疫反応を効果的に誘導するSFTSウイルス抗原の組換えDNAまたはペプチド;およびこれを含むSFTSウイルスワクチンを提供することである。
【0007】
具体的には、本発明は、重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome;SFTS)ウイルスによる感染病を予防または治療するためのワクチン組成物を提供する。
【0008】
しかし、本発明がなそうとする技術的課題は以上に言及した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は以下の記載から当業界における通常の知識を有する者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本願に記載の多様な実施形態が図面を参照して記載される。下記の説明において、本発明の完全な理解のために、多様な特異的詳細事項、例えば、特異的形態、組成物および工程などが記載されている。しかし、特定の実施形態は、これらの特異的詳細事項の1つ以上、または他の公知の方法および形態とともに実行可能である。他の例において、公知の工程および製造技術は、本発明を不必要にあいまいにさせないために、特定の詳細事項で記載されない。「一つの実施形態」または「実施形態」についての本明細書全体にわたる参照は、実施形態と結び付けて記載された特別な特徴、形態、組成または特性が、本発明の一つ以上の実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる多様な位置で表現された「一つの実施形態」または「実施形態」の状況は、必ずしも本発明の同一の実施形態を示さない。追加的に、特別な特徴、形態、組成、または特性は、一つ以上の実施形態においていかなる適した方法で組み合わされてもよい。
【0010】
本発明における特別な定義がなければ、本明細書に使われたすべての科学的および技術的な用語は、本発明の属する技術分野における当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。
【0011】
本発明において、「予防」は、本発明の組成物の投与によりウイルスの成長、増殖、浸潤性または伝染性を遅延させるすべての行為を意味する。
【0012】
本発明において、「治療」および「改善」は、本発明の組成物の投与によりウイルスの成長、増殖、または伝染性を抑制して、SFTSV関連疾患が好転または有利に変更されるすべての行為を意味する。
【0013】
本発明は、ウイルス抗原の組換えDNAまたはペプチドを含むウイルスワクチンおよびワクチン方法に関し、また、抗原タンパク質またはペプチドである免疫源をコーディングするヌクレオチド配列を哺乳類の体内に導入するステップ(ここで、前記タンパク質またはペプチドは哺乳類の体内で発現して抗原タンパク質またはペプチドに対する免疫反応を引き起こす)を含むワクチン方法の改善に関する。このようなワクチン方法は公知である。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、
配列番号287で表されるアミノ酸配列を含むか、配列番号286で表される塩基配列を含む組換えの第1DNAによってコーディングされる組換えの第1ペプチド;
配列番号289で表されるアミノ酸配列を含むか、配列番号288で表される塩基配列を含む組換えの第2DNAによってコーディングされる組換えの第2ペプチド;
配列番号291で表されるアミノ酸配列を含むか、配列番号290で表される塩基配列を含む組換えの第3DNAによってコーディングされる組換えの第3ペプチド;
配列番号293で表されるアミノ酸配列を含むか、配列番号292で表される塩基配列を含む組換えの第4DNAによってコーディングされる組換えの第4ペプチド;および
配列番号295で表されるアミノ酸配列を含むか、配列番号294で表される塩基配列を含む組換えの第5DNAによってコーディングされる組換えの第5ペプチドからなる群より選択されたいずれか1つ以上の組換えペプチドを有効成分として含む抗原用組成物を提供する。
【0015】
本発明の抗原用組成物は、配列番号287で表されるアミノ酸配列を含むか、配列番号286で表される塩基配列を含む組換えの第1DNAによってコーディングされる組換えの第1ペプチド;および配列番号289で表されるアミノ酸配列を含むか、配列番号288で表される塩基配列を含む組換えの第2DNAによってコーディングされる組換えの第2ペプチド;の少なくとも1つを含むことができる。
【0016】
本発明の抗原用組成物は、配列番号287で表されるアミノ酸配列を含むか、配列番号286で表される塩基配列を含む組換えの第1DNAによってコーディングされる組換えの第1ペプチド;および配列番号289で表されるアミノ酸配列を含むか、配列番号288で表される塩基配列を含む組換えの第2DNAによってコーディングされる組換えの第2ペプチド;を含むことができる。
【0017】
本発明の抗原用組成物は、配列番号1~76の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチドを含むことができる。
【0018】
本発明の抗原用組成物は、配列番号1~38の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチドを含むことができる。
【0019】
本発明の抗原用組成物は、配列番号39~76の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチドを含むことができる。
【0020】
本発明の抗原用組成物は、配列番号1~38の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチド;および配列番号39~76の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチドを含むことができる。
【0021】
本発明の抗原用組成物は、配列番号77~152の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチドを含むことができる。
【0022】
本発明の抗原用組成物は、配列番号77~114の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチドを含むことができる。
【0023】
本発明の抗原用組成物は、配列番号115~152の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチドを含むことができる。
【0024】
本発明の抗原用組成物は、配列番号77~114の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチド;および配列番号115~152の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチドを含むことができる。
【0025】
本発明の抗原用組成物は、配列番号153~186の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチドを含むことができる。
【0026】
本発明の抗原用組成物は、配列番号187~227の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチドを含むことができる。
【0027】
本発明の抗原用組成物は、配列番号187~207の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチドを含むことができる。
【0028】
本発明の抗原用組成物は、配列番号208~227の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチドを含むことができる。
【0029】
本発明の抗原用組成物は、配列番号187~207の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチド;および配列番号208~227の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチドを含むことができる。
【0030】
本発明の抗原用組成物は、配列番号228~285の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチドを含むことができる。
【0031】
本発明の抗原用組成物は、配列番号228~256の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチドを含むことができる。
【0032】
本発明の抗原用組成物は、配列番号257~285の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチドを含むことができる。
【0033】
本発明の抗原用組成物は、配列番号228~256の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチド;および配列番号257~285の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチドを含むことができる。
【0034】
本発明において、前記抗原用組成物は、筋肉内、皮内、皮下、表皮下、経皮、または静脈内から選択された経路を通して体内注射されるが、これに限定されるものではない。本発明において、前記抗原用組成物は、筋肉内注射により対象体に注入される。本発明において、前記抗原用組成物は、皮内注射により対象体に注入される。本発明において、前記抗原用組成物は、体内注射時、追加的に電気穿孔法を利用して対象体に注入される。
【0035】
本発明の前記抗原用組成物は、免疫増強剤を追加的に含むことができる。本発明において、前記免疫増強剤は、IL-7およびIL-33の少なくとも1つであってもよく、好ましくは、IL-33であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0036】
本発明の他の実施形態によれば、
配列番号287で表されるアミノ酸配列を含むか、配列番号286で表される塩基配列を含む組換えの第1DNAによってコーディングされる組換えの第1ペプチド;
配列番号289で表されるアミノ酸配列を含むか、配列番号288で表される塩基配列を含む組換えの第2DNAによってコーディングされる組換えの第2ペプチド;
配列番号291で表されるアミノ酸配列を含むか、配列番号290で表される塩基配列を含む組換えの第3DNAによってコーディングされる組換えの第3ペプチド;
配列番号293で表されるアミノ酸配列を含むか、配列番号292で表される塩基配列を含む組換えの第4DNAによってコーディングされる組換えの第4ペプチド;および
配列番号295で表されるアミノ酸配列を含むか、配列番号294で表される塩基配列を含む組換えの第5DNAによってコーディングされる組換えの第5ペプチドからなる群より選択されたいずれか1つ以上を含む組換えペプチドを有効成分として含むワクチンを提供する。
【0037】
本発明のワクチンは、配列番号287で表されるアミノ酸配列を含むか、配列番号286で表される塩基配列を含む組換えの第1DNAによってコーディングされる組換えの第1ペプチド;および配列番号289で表されるアミノ酸配列を含むか、配列番号288で表される塩基配列を含む組換えの第2DNAによってコーディングされる組換えの第2ペプチド;の少なくとも1つを含むことができる。
【0038】
本発明のワクチンは、配列番号287で表されるアミノ酸配列を含むか、配列番号286で表される塩基配列を含む組換えの第1DNAによってコーディングされる組換えの第1ペプチド;および配列番号289で表されるアミノ酸配列を含むか、配列番号288で表される塩基配列を含む組換えの第2DNAによってコーディングされる組換えの第2ペプチド;を含むことができる。
【0039】
本発明のワクチンは、配列番号1~76の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチドを含むことができる。
【0040】
本発明のワクチンは、配列番号1~38の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチドを含むことができる。
【0041】
本発明のワクチンは、配列番号39~76の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチドを含むことができる。
【0042】
本発明のワクチンは、配列番号1~38の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチド;および配列番号39~76の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチドを含むことができる。
【0043】
本発明のワクチンは、配列番号77~152の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチドを含むことができる。
【0044】
本発明のワクチンは、配列番号77~114の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチドを含むことができる。
【0045】
本発明のワクチンは、配列番号115~152の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチドを含むことができる。
【0046】
本発明のワクチンは、配列番号77~114の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチド;および配列番号115~152の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチドを含むことができる。
【0047】
本発明のワクチンは、配列番号153~186の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチドを含むことができる。
【0048】
本発明のワクチンは、配列番号187~227の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチドを含むことができる。
【0049】
本発明のワクチンは、配列番号187~207の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチドを含むことができる。
【0050】
本発明のワクチンは、配列番号208~227の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチドを含むことができる。
【0051】
本発明のワクチンは、配列番号187~207の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチド;および配列番号208~227の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチドを含むことができる。
【0052】
本発明のワクチンは、配列番号228~285の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチドを含むことができる。
【0053】
本発明のワクチンは、配列番号228~256の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチドを含むことができる。
【0054】
本発明のワクチンは、配列番号257~285の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチドを含むことができる。
【0055】
本発明のワクチンは、配列番号228~256の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチド;および配列番号257~285の少なくとも1つのアミノ酸配列で表されるペプチドを含むことができる。
【0056】
本発明において、前記ワクチンは、筋肉内、皮内、皮下、表皮下、経皮、または静脈内から選択された経路を通して体内注射されるが、これに限定されるものではない。本発明において、前記ワクチンは、筋肉内注射により対象体に注入される。本発明において、前記ワクチンは、皮内注射により対象体に注入される。本発明において、前記ワクチンは、体内注射時、追加的に電気穿孔法を利用して対象体に注入される。
【0057】
本発明において、前記ワクチンは、免疫増強剤を追加的に含むことができる。本発明において、前記免疫増強剤は、IL-7(配列番号296)およびIL-33(配列番号297)の少なくとも1つであってもよく、好ましくは、IL-33であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0058】
本発明の抗原用組成物またはワクチンは、追加的に、溶媒、賦形剤などをさらに含んでもよい。前記溶媒には、生理食塩水、蒸留水などが含まれ、前記賦形剤には、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウムなどが含まれるが、これに限定されず、本発明の属する分野において通常ワクチンの製造に使用する物質をさらに含んでもよい。
【0059】
本発明の抗原用組成物またはワクチンは、本発明の属する技術分野において通常利用される方法で製造することができる。本発明の抗原用組成物またはワクチンは、経口型または非経口型製剤に製造することができ、好ましくは、非経口型製剤である注射液剤に製造し、真皮内、筋肉内、腹膜内、静脈内、皮下内、鼻腔または硬膜外(epidural)経路で投与することができる。
【0060】
本発明の抗原用組成物またはワクチンは、免疫学的有効量で個体に投与することができる。前記「免疫学的有効量」とは、重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome;SFTS)ウイルスまたはSFTSウイルスの予防または治療効果を奏し得る程度の十分な量と副作用や深刻なまたは過度の免疫反応を起こさない程度の量を意味し、正確な投与濃度は、投与される特定免疫源によって異なり、予防または治療対象者の年齢、体重、健康、性別、個体の薬物に対する敏感度、投与経路、投与方法など医学分野でよく知られた要素に応じて当業者によって容易に決定されてもよいし、1回~数回投与可能である。
【0061】
本発明のワクチンは、薬学的有効量で投与する。用語「薬学的有効量」とは、ワクチン効果を奏し得る程度の十分な量と副作用や深刻なまたは過度の免疫反応を起こさない程度の量を意味し、正確な投与濃度は、投与される抗原によって異なり、対象者の年齢、体重、健康、性別、対象者の薬物に対する敏感度、投与経路、投与方法など医学分野でよく知られた要素に応じて当業者によって容易に決定されてもよいし、1回~数回投与可能である。
【0062】
本発明のDNAワクチンは、薬学的に許容される担体内に本発明の抗原決定基ペプチドをコーディングするヌクレオチドが含まれたDNAワクチンで、好ましくは、DNAプラスミド形態であり、最も好ましくは、mockプラスミド(pVax-1由来)形態であるが、これに限定されるものではない。したがって、前記ヌクレオチドが公知の多様な組換え発現ベクターに挿入されたものが好ましい。
【0063】
本発明のさらに他の実施形態によれば、
配列番号286で表される塩基配列を含む組換えの第1DNA;
配列番号288で表される塩基配列を含む組換えの第2DNA;
配列番号290で表される塩基配列を含む組換えの第3DNA;
配列番号292で表される塩基配列を含む組換えの第4DNA;および
配列番号294で表される塩基配列を含む組換えの第5DNAからなる群より選択されたいずれか1つ以上の組換えDNAを含む発現ベクターを提供する。
【0064】
本発明の発現ベクターは、配列番号286で表される塩基配列を含む組換えの第1DNA;および配列番号288で表される塩基配列を含む組換えの第2DNA;の少なくとも1つの組換えDNAを含むことができる。
【0065】
本発明の発現ベクターは、配列番号286で表される塩基配列を含む組換えの第1DNA;および配列番号288で表される塩基配列を含む組換えの第2DNA;を含むことができる。
【0066】
本発明において、前記「ベクター」は、宿主細胞で目的遺伝子を発現させるための手段を意味する。前記ベクターは、目的遺伝子発現のためのエレメントを含むもので、複製起点、プロモーター、オペレーター、転写終結配列(ターミネーター)などを含むことができ、宿主細胞のゲノム内への導入のための適切な酵素部位(例えば、制限酵素部位)および/または宿主細胞内への導入の成功を確認するための選別マーカーおよび/またはタンパク質への翻訳のためのリボソーム結合部位(RBS)、IRES(Internal Ribosome Entry Site)などを追加的に含むことができる。前記ベクターは、プロモーターとして前記融合ポリヌクレオチド(融合プロモーター)を有するように通常の遺伝工学的方法で操作されたものであってもよい。前記ベクターは、前記プロモーター以外の転写調節配列(例えば、エンハンサーなど)を追加的に含むことができる。
【0067】
本発明において、「発現ベクター」は、目的の宿主細胞で目的のペプチドを発現できる組換えベクターであって、遺伝子挿入物が発現するように作動的に連結された必須の調節エレメントを含む遺伝子作製物を意味する。前記発現ベクターは、開始コドン、終結コドン、プロモーター、オペレーターなどの発現調節エレメントを含むが、前記開始コドンおよび終結コドンは、一般的にポリペプチドを暗号化するヌクレオチド配列の一部と見なされ、遺伝子作製物が投与された時、個体で必ず作用を示さなければならず、コーディング配列とインフレームになければならない。ベクターのプロモーターは、構成的または誘導性であってもよい。自己発現するのに必要なすべての要素を含む遺伝子構造体である発現カセットの形態で宿主細胞に導入可能である。前記発現カセットは、通常発現する遺伝子挿入物に作動可能に連結されているプロモーター、転写終結シグナル、リボソーム結合部位および翻訳終結シグナルを含むことができる。前記発現カセットは、自己複製が可能な発現ベクター形態であってもよい。本発明において、前記発現ベクターは、ウイルス性または非ウイルス性ベクターであってもよいし、前記ウイルス性ベクターは、アデノウイルスベクター、レンチウイルスを含むレトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターまたは単純ヘルペスウイルスベクターなどであってもよいが、これに限定されない。また、前記非ウイルス性ベクターとしては、プラスミドベクター、バクテリオファージベクター、リポソーム、細菌人工染色体、酵母人工染色体などであってもよいが、これに限定されない。
【0068】
本発明において、前記発現ベクターにおいて、前記目的遺伝子は、前記融合ポリヌクレオチドに作動可能に連結される。用語「作動可能に連結された(operatively linked)」は、遺伝子発現調節配列と他のヌクレオチド配列との間の機能的な結合を意味する。前記遺伝子発現調節配列は、「作動可能に連結(operatively linked)」されることで他のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳を調節することができる。前記発現ベクターにおいて、前記融合ポリヌクレオチドが前記目的遺伝子に作動可能に連結されるために、前記融合ポリヌクレオチドは、前記目的遺伝子の5’末端に連結されたものであってもよい。本発明の発現ベクターは、発現させようとする目的タンパク質の暗号化遺伝子が作動可能に連結される場合、適切な宿主細胞で前記目的タンパク質を高い効率で発現させることができる目的タンパク質の発現ベクターとして使用できる。
【0069】
本発明の前記発現ベクターは、免疫増強剤として、IL-7をコーディングする遺伝子(配列番号298)およびIL-33をコーディングする遺伝子(配列番号299)の少なくとも1つ、好ましくは、IL-33をコーディングする遺伝子を追加的に含むことができる。
【0070】
本発明の前記発現ベクターは、転写調節配列を追加的に含むことができる。前記転写調節配列は、ポリアデニル化配列(pA)のような転写終結配列;f1複製起点、SV40複製起点、pMB1複製起点、アデノ複製起点、AAV複製起点、BBV複製起点などの複製起点;翻訳過程の開始点(ATG)においてリボソームの認識率を高めることで遺伝子発現を高める可能性が高いと知られたコザック配列(Kozak sequence、AACAATGGC);またはIgEリーダー配列(leader配列)などからなる群より選択された1種以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0071】
本発明の前記発現ベクターは、制限酵素切断部位を追加的にさらに含むことができる。前記制限酵素切断部位は、制限酵素によって特異的に認識されて切断される特定の塩基配列を指し示す。前記切断部位は、例えば、EcoRI、BamHI、HindIII、kpnI、SalI、NotI、NcoI、PstI、SmaI、およびXhoIのような制限酵素によって特異的に認識される配列であってもよい。
【0072】
また、本発明において、前記発現ベクターは、選別マーカーを追加的に含むことができる。前記選別マーカーは、発現ベクターが宿主細胞内への導入に成功したか否かを確認するか、安定した細胞株構築のための遺伝子として、例えば、抗生剤のような薬剤耐性遺伝子、代謝関連遺伝子、遺伝子増幅遺伝子などからなる群より選択された1種以上であってもよい。
【0073】
本発明の前記発現ベクターは、前記組換えDNAとともに、IL-7をコーディングする遺伝子(配列番号298)を含むことができ、この時、前記発現ベクター(好ましくは、発現プラスミド)は、制限酵素切断部位として、BamHI、NcoI、およびNotIからなる群より選択されたいずれか1つ以上を含むことができ、一例として、前記発現ベクターは、前記組換えDNAとともに、配列番号300で表される塩基配列を含むことができる。
【0074】
本発明の前記発現ベクターは、前記組換えDNAとともに、IL-33をコーディングする遺伝子(配列番号299)を含むことができ、この時、前記発現ベクター(好ましくは、発現プラスミド)は、制限酵素切断部位として、BamHI、NcoI、およびNotIからなる群より選択されたいずれか1つ以上を含むことができ、一例として、前記発現ベクターは、前記組換えDNAとともに、配列番号301で表される塩基配列を含むことができる。
【0075】
本発明において、前記発現ベクターは、宿主細胞で発現可能なものであってもよい。例えば、前記宿主細胞は、動物細胞で転写開始を強く誘導できるものであってもよいし、具体的には、哺乳動物細胞、例えば、ヒトに由来する細胞のような動物細胞で転写開始を誘導するものであってもよい。
【0076】
本発明の前記発現ベクターは、当業界で公知の多様な方法により構築可能である。
【0077】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明で提供する発現ベクターが宿主細胞に導入されて形質転換された形質転換体に関する。
【0078】
本発明において、前記発現ベクターの細胞内への運搬(導入)は、当業界で広く知られた運搬方法を使用することができる。前記運搬方法は、例えば、微細注入法、カルシウムホスフェート沈殿法、電気穿孔法(electroporation)、超音波穿孔法(sonoporation)、磁場を利用した自己注入法(magnetofection)、リポソーム-媒介形質感染法、遺伝子ボンバードメント(gene bombardment)、デンドリマーおよび無機ナノ粒子の使用などを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0079】
上述した発現ベクターを細胞に形質転換させて形質転換体を製造することができる。
【0080】
本発明において、「形質転換体」とは、プロモーターと作動可能に連結され、有用物質をコーディングするDNA配列からなるDNA構造物(DNA construct)によって形質転換された細胞または植物体を意味する。本発明において、形質転換体は、形質転換された微生物、動物細胞、植物細胞、形質転換された動物または植物体、およびこれらに由来する培養細胞などを含む意味である。
【0081】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明は、上記のような抗原用組成物;上記のようなワクチン;上記のような発現ベクター;または上記のような形質転換体の有効量を個体に投与するステップを含む、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルス感染に対する予防または治療方法を提供する。
【0082】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明は、上記のような抗原用組成物;上記のようなワクチン;上記のような発現ベクター;または上記のような形質転換体を有効成分として含む、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルス感染に対する予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0083】
本発明において、前記薬学組成物は、カプセル、錠剤、顆粒、または注射剤、軟膏剤、粉末または飲料形態であることを特徴とし、前記薬学組成物は、ヒトを対象にすることを特徴とすることができる。
【0084】
本発明の薬学組成物はこれらに限定されるものではないが、それぞれ通常の方法により、散剤、顆粒剤、カプセル、錠剤、水性懸濁液などの経口型剤形、外用剤、坐剤および滅菌注射溶液の形態に剤形化して使用できる。本発明の薬学組成物は、薬剤的に許容可能な担体を含むことができる。薬学的に許容される担体は、経口投与時には、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料などを使用することができ、注射剤の場合には、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張剤、安定化剤などを混合して使用することができ、局所投与用の場合には、基剤、賦形剤、潤滑剤、保存剤などを使用することができる。本発明の薬学組成物の剤形は、上述のような薬学的に許容される担体と混合して多様に製造可能である。例えば、経口投与時には、錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル(elixir)、サスペンション、シロップ、ウエハなどの形態に製造することができ、注射剤の場合には、単位投薬アンプルまたは複数回投薬形態に製造することができる。その他、溶液、懸濁液、錠剤、カプセル、徐放型製剤などに剤形可能である。
【0085】
一方、製剤化に適した担体、賦形剤および希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレートまたは鉱物油などが使用できる。また、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、防腐剤などを追加的に含んでもよい。
【0086】
本発明による薬学組成物の投与経路はこれらに限定されるものではないが、口腔、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髓内、硬膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸管、局所、舌下または直腸が含まれる。経口または非経口投下が好ましい。
【0087】
本発明において、「非経口」は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑液包内、胸骨内、硬膜内、病巣内および頭蓋骨内注射または注入技術を含む。本発明の薬学組成物はさらに、直腸投与のための坐剤の形態で投与可能である。
【0088】
本発明の薬学組成物は、使用された特定化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康、性別、定式、投与時間、投与経路、排出率、薬物配合および予防または治療される特定疾患の重症を含んだ様々な要因によって多様に変化可能であり、前記薬学組成物の投与量は、患者の状態、体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路および期間によって異なるが、当業者によって適宜選択可能であり、1日0.0001~50mg/kgまたは0.001~50mg/kg投与することができる。投与は、1日に1回投与してもよく、数回分けて投与してもよい。前記投与量は、いかなる面でも本発明の範囲を限定するものではない。本発明による医薬組成物は、丸剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤の剤形とすることができる。
【発明の効果】
【0089】
本発明で提供するSFTSウイルスの組換えDNAまたはペプチドおよびこれを含むSFTSウイルスワクチンは、個体でSFTSウイルスに対する免疫反応を効果的に誘発するので、SFTSウイルス感染に対する予防および治療効果に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【
図1】
図1は、SFTSウイルスに特異的なT細胞反応を測定するために、ELISpot分析の結果を示すウェルイメージである。
【
図2】
図2A~
図2Eは、SFTSVワクチン候補物質のT細胞免疫反応を示すグラフである。
【
図3】
図3A~
図3Cは、SFTSV DNAワクチン候補物質のT細胞の多機能性を評価した結果を示すグラフである。
【
図4】
図4は、ワクチン候補物質によって誘導されるT細胞の多機能性を示すグラフである。
【
図5】
図5A~
図5Fは、ワクチンによって誘導されたSFTSV特異的抗体の生成を示すグラフである。
【
図6】
図6は、SFTSV DNAワクチンによって誘導された中和抗体効能の定量評価を示すグラフである。
【
図7】
図7は、SFTSVワクチンの感染抑制効能を検証した結果を示すグラフである。
【
図8】
図8A~
図8Dは、SFTSVワクチン候補物質によって中型動物でSFTSV特異T細胞免疫反応を示すグラフである。
【
図9】
図9は、DNAワクチンによって形成されたSFTSV特異反応抗体の形成をELISA方法で測定した結果を示すグラフである。
【
図10】
図10は、DNAワクチンによって誘導された抗体の中和抗体力価をPRNT50方法で測定した結果を示すグラフである。
【0091】
【
図11】
図11は、SFTSV感染中型動物モデルにおける生存率を示すグラフである。
【
図12】
図12A~
図12Cは、リアルタイムPCRによりSFTSVウイルス数値を測定した結果を示すグラフである。
【
図15】
図15Aおよび
図15Bは、SFTSV DNAワクチン投与後、マウスで形成されたSFTSV中和抗体の交差反応を評価するためのPRNT50テストの結果を示すグラフである。
【
図16】
図16は、SFTSV感染中型動物モデルにおいてワクチンによって誘導されたT細胞免疫反応を確認したグラフである。
【
図17】
図17は、SFTSV感染中型動物モデルにおいてワクチンによって誘導された抗体免疫反応および中和抗体誘導能定量評価したグラフである。
【
図18】
図18は、SFTSV感染中型動物モデルにおいてSFTSV予防DNAワクチンの防御効能検証に関するグラフである。
【
図19】
図19は、リアルタイムPCRによりSFTSVウイルス数値を測定したグラフである。
【
図20】
図20は、リアルタイムPCRによりSFTSVウイルス数値を測定したグラフである。
【0092】
【
図21】
図21は、SFTSV感染後の血小板数を測定した結果を示すグラフである。
【
図22】
図22は、SFTSV感染後の血小板数を測定した結果を示すグラフである。
【
図23】
図23は、白血球数を測定した結果を示すグラフである。
【
図24】
図24は、白血球数を測定した結果を示すグラフである。
【
図25】
図25は、SFTSV感染後の対照群の個体の体重を示すグラフである。
【
図26】
図26は、SFTSV感染後の対照群の個体の体重を示すグラフである。
【
図27】
図27は、SFTSV感染後の対照群の個体の体温を示すグラフである。
【
図28】
図28は、SFTSV感染後の対照群の個体の体温を示すグラフである。
【
図29】
図29は、血清内ALTを測定した結果を示すグラフである。
【
図30】
図30は、血清内ALTを測定した結果を示すグラフである。
【0093】
【
図31】
図31は、血清内ASTを測定した結果を示すグラフである。
【
図32】
図32は、血清内ASTを測定した結果を示すグラフである。
【
図33】
図33は、SFTSV Gc発現プラスミド(pGX-SFTSV Gc_hCO、4635bp)を示す図である。
【
図34】
図34は、SFTSV Gn発現プラスミド(pGX-SFTSV Gn_hCO、4626bp)を示す図である。
【
図35】
図35は、SFTSV NP発現プラスミド(pGX-SFTSV NP_hCO、3756bp)を示す図である。
【
図36】
図36は、SFTSV NS発現プラスミド(pGX-SFTSV NS_hCO、3900bp)を示す図である。
【
図37】
図37は、SFTSV RdRp発現プラスミド(pGX-SFTSV RdRp_hCO、9273bp)を示す図である。
【
図38】
図38は、マウスIL-7発現プラスミド(pGX-mIL-7_mCO、3483bp)を示す図である。
【
図39】
図39は、マウスIL-33発現プラスミド(pGX-mIL-33_mCO、3819bp)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0094】
本発明の一実施形態によれば、配列番号287で表されるアミノ酸配列を含むか、配列番号286で表される塩基配列を含む組換えの第1DNAによってコーディングされる組換えの第1ペプチド;配列番号289で表されるアミノ酸配列を含むか、配列番号288で表される塩基配列を含む組換えの第2DNAによってコーディングされる組換えの第2ペプチド;配列番号291で表されるアミノ酸配列を含むか、配列番号290で表される塩基配列を含む組換えの第3DNAによってコーディングされる組換えの第3ペプチド;配列番号293で表されるアミノ酸配列を含むか、配列番号292で表される塩基配列を含む組換えの第4DNAによってコーディングされる組換えの第4ペプチド;および配列番号295で表されるアミノ酸配列を含むか、配列番号294で表される塩基配列を含む組換えの第5DNAによってコーディングされる組換えの第5ペプチドからなる群より選択されたいずれか1つ以上を含む組換えペプチドを有効成分として含む抗原用組成物またはワクチンを提供する。
【0095】
本発明の前記抗原用組成物またはワクチンは、免疫増強剤を追加的に含んでもよく、この時、前記免疫増強剤は、IL-7およびIL-33の少なくとも1つであってもよく、好ましくは、IL-33であってもよいが、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0096】
以下、本発明を下記の実施例により詳しく説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例により限定されるものではない。
【0097】
(SFTSウイルス抗原5種および免疫増強剤2種の遺伝子の合成)
目的遺伝子(SFTSV抗原または免疫増強剤遺伝子)5’末端にIgEリーダーおよびコザック(kozak)配列を挿入し、3’末端に終止コドンを挿入した。最終的に、遺伝子の両端に制限酵素配列(5’BamHIと3’NotI)を挿入した後、遺伝子の合成を進行させた。
【0098】
(高効率バックボーンプラスミド(pGX0001)のクローニング)
挿入遺伝子の合成を完了した後、BamHIとNotIに切断し、同じ制限酵素で切断された高効率バックボーンプラスミド(pGX0001)に挿入して、候補物質プラスミドを作製した(
図33~
図39参照)。遺伝子の合成およびクローニング結果は塩基配列分析により確認した。
【0099】
(体内抗原高発現DNAワクチンの配列の最適化)
最適な抗原5種として、Gc(glycoprotein C)、Gn(glycoprotein N)、NP(nucleocapsid protein)、NS(non-structural protein)、RdRp(RNA dependent RNA polymerase)と、最適な免疫増強剤2種として、IL-7およびIL-33を選定した。前記抗原5種について、韓国人、中国人及び日本人から分離されたSFTSウイルス菌株27~32個から導出された共通配列を確保した。共通配列は、多様なSFTSウイルスサブタイプおよび変種ウイルスの共通した抗原のアミノ酸配列を用いて交差免疫能がある汎用抗原配列にデザインした。In silico免疫情報学手法を活用して、多様なサブタイプおよび変種SFTSウイルスに存在するヒトの主要MHCクラスIおよびIIエピトープを発掘し、これを抗原に含むように配列をデザインした。以後、最適化されたSFTSウイルス抗原のアミノ酸配列に基づいてDNAワクチンのための塩基配列を最終的に導出した。
【0100】
以下の実験で使用される本発明の一実施例による発現カセット構造は、高発現プロモーター(プラスミドバックボーン配列)、コザック(kozak)配列、IgEリーダー(leader)配列、poly Aシグナル配列(プラスミドバックボーン配列)を含むようにし、この時、体内での遺伝子発現率を高めるために、kozak、IgEリーダー配列を目的遺伝子(SFTSV抗原または免疫増強剤)の前に挿入した。一方、体内での抗原遺伝子発現率を高めるために、SFTSウイルス抗原5種(Gc、Gn、NP、NS、RdRp)の配列をヒトコドンに最適化した。
【0101】
(SFTSウイルス抗原発現DNAワクチンリード物質の作製)
目的遺伝子(SFTSV抗原または免疫増強剤遺伝子)5’末端にIgEリーダー配列とコザック配列を挿入し、3’末端にストップコドンを挿入した。最終的に、遺伝子の両端に制限酵素配列(5’BamHIと3’NotI)を挿入した後、遺伝子の合成を進行させた。挿入遺伝子の合成を完了した後、BamHIとNotIに切断し、同じ制限酵素で切断された高効率バックボーンプラスミド(pGX0001)に挿入して、候補物質プラスミドを作製した。遺伝子の合成およびクローニング結果は塩基配列分析により確認した。
【0102】
(マウスモデルを用いたSFTSウイルス抗原発現DNAワクチンの免疫原性評価)
免疫原性評価用OLP(overlapping peptide)プールを作製した。具体的には、SFTSウイルスの抗原5種に対する免疫原性を評価すべく、各抗原の配列を8個のアミノ酸が重複するようにして15merのペプチドに断片化した。各ペプチドは、作製過程でいずれも高性能液体クロマトグラフィーとエレクトロスプレー質量分析器を用いて定性、定量して純度を確認した。この過程によりGn抗原から計76個のペプチドを確保し、このペプチドを38個ずつ混合して、Gnに対するOLP1、およびOLP2(各ペプチド25ug/ml)を製造し(表1)、Gc抗原からは計76個のペプチドを作製して、このペプチドを38個ずつ混合して、OLP3、およびOLP4を製造した(表2)。NP抗原からは計34個のペプチドを確保し、これを混合してOLP5を製造し(表3)、NS抗原からは計41個のペプチドを得て、これを混合してOLP6を製造し(表4)、RdRp抗原からは計58個のペプチドを29個ずつ混合して、OLP7、およびOLP8を製造した(表5)。
【0103】
より詳しくは、表1~表5に示すように、配列番号1~配列番号38を混合したものであるOLP1である。また、配列番号39~配列番号76を混合したものであるOLP2である。配列番号77~配列番号114を混合したものであるOLP3である。配列番号115~配列番号152を混合したものであるOLP4である。配列番号153~配列番号186を混合したものであるOLP5である。配列番号187~配列番号227を混合したものであるOLP6である。配列番号228~配列番号256を混合したものであるOLP7である。配列番号257~配列番号285を混合したものであるOLP8である。
【0104】
このように作製されたOLPプールは以下のT細胞の免疫反応評価に使用した。
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
(SFTSウイルス抗原5種および免疫増強剤2種の免疫原性検証)
BALB/cマウスを用いて、ナイーブグループ、DNAワクチンを筋肉内注射したグループ、DNAワクチンの筋肉内注射後に電気穿孔法を実施したグループ、DNAワクチンとIL-7免疫増強剤を筋肉内注射後に電気穿孔法を実施したグループ、DNAワクチンとIL-33免疫増強剤を筋肉内注射後に電気穿孔法を実施したグループ、の計5種のグループに分けて、各グループあたり6匹ずつ接種を進行させた。ナイーブグループの各マウスには、SFTSウイルスの遺伝子が挿入されていないプラスミドを200ug接種し、他の4つのグループのマウスには、SFTSウイルス抗原発現DNA5種(Gn、Gc、NP、NS、およびRdRpのDNA配列、それぞれのDNA配列番号は286、288、290、292、および294であり、アミノ酸配列はそれぞれ287、289、291、293、および295である。)を各40ugずつ計200ugとなるように接種した。また、IL-7とIL-33免疫増強剤を接種するグループのマウスには、追加的にDNA接種とともに各免疫増強剤を50ugずつ接種した。ナイーブグループとDNAワクチンを筋肉内注射したグループを除いた3つのグループのマウスには、筋肉内注射直後、接種部位に電気穿孔機を用いて0.2Aで電気穿孔法を実施した。1回目接種21日後に同量で2回目接種を進行させ、2回目接種21日後にマウスを犠牲にして脾臓と鼠径リンパ節を分離して免疫原性評価に使用した。
【0111】
(SFTSVワクチン候補物質のT細胞免疫反応検証)
SFTSウイルスに特異的なT細胞反応を測定するために、ELISpot分析を進行させた(
図1)。96ウェルフィルタープレートにPBSで希釈した抗ヒトIFN-γ抗体(2μg/ml;endogen)を各ウェルあたり100ulずつ分注し、4℃で一晩インキュベーションした後、マウスの脾臓細胞(5×10
5cells/well)をSFTSウイルスのペプチドから作製した8種のOLPで刺激を与え、37℃で24時間インキュベーションを実施した。この後、プレートを洗浄してPBS/Tween20/1%BSAで希釈したビオチニル化された抗ヒトIFN-γ抗体(0.5μg/ml;endogen)を各ウェルあたり100ulずつ分注し、4℃で一晩インキュベーションした。4回の洗浄後、PBS/Tween20/1%BSAで5000:1に希釈したストレプトアビジン-アルカリホスファターゼ(BD)を各ウェルあたり100ulずつ分注し、37℃で1時間インキュベーションした。AP接合基質キット(AP conjugate substrate kit、BIO-RAD社)を用いて10分間反応させてから、洗浄して反応を止めた後、ImmunoSpot(Cellular Technology Limited)によりSFTSウイルス抗原によるSFTSウイルスに特異的なT細胞のIFN-γの生成を観察した。これによって、DNAワクチン接種後、マウスモデルにおいてSFTSウイルスに特異的なT細胞の免疫反応が成功裏に誘導されたことを確認した。このような免疫反応は、DNAワクチンの筋肉内注射後に電気穿孔法を実施したグループと、追加的にIL-33免疫増強剤をともに注射したグループで明確に観察することができ、特にIL-33免疫増強剤をSFTSウイルス抗原発現DNAワクチンとともに注射したグループで確実にT細胞の免疫反応が増加することを確認した(
図2A~
図2E)。
【0112】
(SFTSV DNAワクチン候補物質のT細胞機能の多機能性評価)
ワクチン接種済みのネズミから得た脾臓細胞にSFTSウイルスOLP刺激を与えた後、多色FACSを用いた細胞内サイトカイン染色法(intracellular cytokine staining;ICS)で分析した。
【0113】
表1~表5に示すような8種類のSFTSウイルスOLPでそれぞれ刺激を与え、IFN-γ、TNF-α、IL-2を分泌するT細胞サブセットを変換した。その結果、それぞれのサイトカインを合成するT細胞の割合を確認して、
図3A~
図3Cに示した。
【0114】
図3A~
図3Cに示すように、全般的に筋肉内注射のみ実施したグループ(IM)よりも、電気穿孔法を並行したグループ(IMEP)でより高い免疫反応が出ることを確認した。また、電気穿孔法とともに、免疫増強剤としてIL-33を用いたグループ(IL-33)で最も強い免疫反応が出る傾向があることを確認した。このような傾向は、CD8+T細胞でより良く確認された(
図3A~
図3C)。
【0115】
SFTSウイルスのNSタンパク質に相当するOLPであるOLP6で最も強い免疫反応が誘導されることを確認し、特にIFN-γとTNF-αで非常に強い反応が現れることを確認した。これとともに、IMグループよりもIMEPグループがより強い反応を示し、IL-33を免疫増強剤として用いた時、最も強い免疫反応が誘導されることを、OLP6を処理したCD8+T細胞で非常に明確に確認することができた。
【0116】
これは、電気穿孔法とIL-33を用いる場合、ワクチンによって誘導されるSFTSウイルス特異T細胞の割合がさらに増加することを意味する。
【0117】
(ワクチン候補物質によって誘導されるT細胞の多機能性分析)
FACSデータに基づいて各グループでT細胞の多機能性を分析した。FACSでの結果に基づいて、免疫反応が最も強く誘導されるOLP6で刺激されたCD8+T細胞の多機能性をグループごとにまとめて結果を得た。IMグループに比べてIMEPグループが多機能T細胞の割合がより高く、電気穿孔法とともに、免疫増強剤としてIL-33を用いたグループでその割合が最も高くなる結果を示した。これは、ワクチンによって誘導されたT細胞免疫反応が、電気穿孔法とIL-33を用いる場合に質的にもより良くなることを意味する。このような傾向は、全体作動T細胞中の多機能性T細胞の割合においても類似することが明らかになった(
図4)。また、CD4+T細胞の場合、多機能性において大差がなかった。
【0118】
(SFTSVワクチン候補物質の抗体形成能評価)
(ワクチンによって誘導されたSFTSV特異的抗体生成反応検証)
SFTSVワクチンによって誘導されるSFTSウイルスに特異的な抗体生成反応を測定するために、ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)アッセイ手法を実施した。組換えSFTSV NP抗原タンパク質に対するELISA手法を確立するために、ワクチンにより免疫原性を備えたと評価されていたマウスの血清を用いて実験を進行させた。上記のように、ELISAアッセイ手法を利用して、ワクチンによって誘導された抗体免疫反応を定量的に確認した。
図5A~
図5Fに示すように、筋肉注射+電気穿孔法(IMEP)グループのマウスにおいて、他のグループに比べて強い抗体免疫反応が生成されたことを確認した。
図5A~
図5Fにて、CrMNは、クロム前駆体(chromium precursor)を用いてMN(微細針)表面を処理して微細針の表面にナノパターンを形成させた微細針を用いた。
【0119】
(SFTSV DNAワクチンによって誘導された中和抗体効能の定量評価)
DNAワクチン候補物質と多様な免疫増強剤によってマウスで産生された33個の抗体の中和抗体力価をPRNT50方法で測定した。
【0120】
本発明者らが開発したマウス標準抗体を陽性対照群として用い、実験の結果、実験群の個体別に20~160SNの適正濃度(titer)値を示して中和抗体が形成されたことを確認した。特に、筋肉注射+電気穿孔法でDNAワクチンを注入したグループ(IMEP)でより強い中和抗体反応が観察され、微細針グループ(Microneedle)では非常に弱い中和抗体効能が検出された(
図6)。
【0121】
(SFTSV感染動物モデルとしての中型動物モデルの確立)
SFTSVワクチンの感染抑制効能を検証するための新しい動物モデルを開発した。中型動物にSFTS患者から分離したSFTSVを感染させた結果、血液内ウイルスが検出され、感染8日まで血小板数が減少し続けることが観察された(
図7)。また、体温が4日目に2℃以上増加し、このような症状が持続するにつれ、感染後9日前と後で感染した個体がすべて死亡することを確認した。この結果は、患者の臨床経過とも非常に類似していた。SFTSV感染後、回復期に入らなければ、約10日ほど後には死亡する様相を見せた。本発明者らによって確立された中型動物モデルは、SFTSV感染時、高熱、ウイルス数値(viral load)増加、血小板および血液内構成成分の変化などSFTS患者と非常に類似の臨床的所見を見せているため、ワクチン効能検証のためのSFTSV感染動物モデルとして優れた適合性を示すものと判断した。
【0122】
(SFTSV感染動物モデルを用いたSFTSVワクチンの免疫原性究明)
本発明者らは、確立したSFTSV感染中型動物モデルをSFTSVワクチンの感染抑制効能を検証するモデルとして使用した。ワクチン処理群(N=6)には、SFTSウイルス抗原発現DNA5種を各200ugずつ計1mgとなるように混合(表6参照)して、両大腿部位に500ugずつ皮内注射で接種した。対照群には、SFTSウイルスの遺伝子が挿入されていないmockプラスミド(pVax-1由来)1mgを両大腿部位に500ugずつ皮内注射で接種した。2つのグループとも、皮内投与直後に電気穿孔機を用いて0.2Aで電気穿孔法を実施した。ワクチンは2週間隔で計5回投与した(0日目、14日、28日、42日、および56日目に投与)。
【0123】
【0124】
(SFTSV感染中型動物モデルにおいてワクチンによって誘導されたT細胞免疫反応評価)
ワクチン投与前、2回/4回/5回ワクチン投与各2週後に5mlの血液を採取し、PBMCおよび血清を分離してSFTSV-特異T細胞免疫反応(ELISpotアッセイ)および抗体免疫反応(ELISAおよび中和抗体アッセイ)を測定した。ワクチンによって形成されたSFTSV特異T細胞免疫反応をELISpot分析法により評価した。
図8A~
図8Dに示すように、SFTSVワクチン候補物質によって中型動物で非常に強いSFTSV特異T細胞免疫反応が誘導されることを確認し、2回投与後に安定した免疫反応が観察されることを確認した。
【0125】
(SFTSV感染中型動物モデルにおいてワクチンによって誘導された抗体免疫反応および中和抗体誘導能の定量評価)
DNAワクチンによって形成されたSFTSV特異反応抗体の形成をELISA方法で測定評価した。
図9に示すように、空ベクターワクチンを接種した6匹のMOCKグループの場合、陰性対照群の血清と類似する程度のELISA値を示して特異抗体が形成されていないと判断された。しかし、他の6匹のSFTSV DNAワクチン接種グループで産生されたSFTSV特異反応抗体が陽性対照群の血清と類似するかより高く現れることを観察した。この結果は、ワクチン候補物質が中型動物で抗体免疫反応を効果的に誘導できることを示す結果である。
【0126】
DNAワクチンによって誘導された抗体の中和抗体力価をPRNT50方法で測定した。
図10に示すように、SFTSV DNAワクチンを接種した6匹の動物で産生された中和抗体力価は陽性対照群と類似する程度で現れることを確認した。これに対し、空ベクターワクチンを接種した6匹のワクチングループでは中和抗体が全く生成されないことが確認できた。この結果は、DNAワクチン候補物質によってSFTSV-特異中和抗体が効果的に誘導できることを意味する。
【0127】
(SFTSV感染中型動物モデルにおいてSFTSV予防DNAワクチンの防御効能検証)
ワクチンの防御効能を検証するために、SFTSVワクチンを投与した個体に致死量のSFTSVを感染させた後、生存率、SFTSVウイルス数値、血小板数、体温、体重変化などのような臨床症状を評価した。
図11に示すように、生存率を評価した結果、対照群で感染後7日目に2匹、8日目に3匹、9日目に1匹で6匹の対照群の個体がすべてへい死した。これに対し、SFTSVワクチンを投与した個体は6匹とも生存した。
【0128】
リアルタイムPCRによりSFTSVウイルス数値を測定した。
図12A~
図12Cに示すように、対照群では感染後2日目にウイルス数値が増加し、感染4日目に最も高いウイルス数値を示すことが観察された。これと比較して、ワクチングループの4匹の中型動物ではウイルス数値が測定されなかった。1匹のワクチングループの個体で対照群と類似する程度のウイルス数値が測定されたが、感染4日目に減少した後、感染6日目に完全に除去されたことを確認した。この個体は、血小板が増加していた個体と同じ個体で、ウイルス数値が減少するにつれて血小板数値も正常に回復したことを観察した。
【0129】
血小板数を測定した結果、対照群の急激な血小板の減少がSFTSV感染によって観察された(
図13A~
図13C)。これと比較して、ワクチングループの血小板数値は正常に維持されることを確認した。ワクチングループの1つの個体で感染後4日目に血小板数値が約120×10
3/ulまで減少することを観察したが、感染6日後に血小板数値が正常に回復したことを確認した。
【0130】
一方、
図14Aに示すように、SFTSV感染後、対照群の個体は体重が有意に減少したが、ワクチングループの個体は体重が全く減少しないことを確認した。また、
図14Bに示すように、SFTSV感染後、対照群の個体は体温が約2℃程度増加するが、ワクチングループの個体は明確な体温変化が観察されなかった。
【0131】
この結果をまとめると、本発明者らが開発したSFTSV予防DNAワクチン候補物質は、中型動物モデルにおいて多様な臨床指標(生存率、血小板数値、体温、体重)の検証により確認したとおり、SFTSV感染を効果的に予防することができた。
【0132】
(マウスおよび中型動物において誘導された中和抗体の交差反応(cross-reactivity)効能検査)
SFTSV DNAワクチン投与後、マウスで形成されたSFTSV中和抗体の交差反応を評価するために、他のSFTSウイルスとのPRNT50テストを実施した。
図15Aに示すように、SFTSV/2014ウイルスには中和抗体力価が40~80程度形成されたのに対し、他のウイルスであるSFTSV/2015に対する中和抗体の形成が明確に現れなかった。
【0133】
また、SFTSV DNAワクチン投与後、中型動物で形成されたSFTSV中和抗体の交差反応を評価するために、他のSFTSウイルスとのPRNT50テストを実施した。
図15Bに示すように、中和抗体力価がSFTSV/2014ウイルスで160~320程度の値となり、他のウイルスであるSFTSV/2015に比べて2倍程度高く形成したことを確認した。
【0134】
(SFTSV感染中型動物モデルにおいてSFTSV予防DNAワクチンの免疫原性検証)
上記のように確立したSFTSV感染中型動物モデルを用いてSFTSVワクチンの感染抑制効能を検証した。各ワクチンの防御効能を検証するために、それぞれGnおよびGcが組み合わされたGn/Gc、NP、NS、およびRdRpに対するSFTSVワクチン処理群(それぞれN=4、N=3、N=3、N=3)には、SFTSウイルス抗原発現DNA5種を各200ugずつ計1mgとなるように混合して、両大腿部位に皮内注射で接種した。対照群には、SFTSウイルスの遺伝子が挿入されていないmockプラスミド(pVax-1由来)1mgを両大腿部位に500ugずつ皮内注射で接種した。両グループとも、皮内投与直後に電気穿孔機を用いて0.2Aで電気穿孔法を実施した。ワクチンは2週間隔で計3回投与した(0日目、14日、28日目に投与)。
【0135】
(SFTSV感染中型動物モデルにおいてワクチンによって誘導されたT細胞免疫反応評価)
ワクチン投与前、および3回ワクチン投与各2週後に5mlの血液を採取し、PBMCおよび血清を分離してSFTSV特異T細胞免疫反応(ELISpotアッセイ)および抗体免疫反応(ELISAおよび中和抗体アッセイ)を測定した。ワクチンによって形成されたSFTSV特異T細胞免疫反応をELISpot分析法により評価した。SFTSVワクチン候補物質によって中型動物で接種したワクチンによって各SFTSV抗原に対して非常に強いSFTSV特異T細胞免疫反応が誘導されることを確認した。
図16に示すように、Gn/Gc SFTSVワクチン処理群で最も優れたSFTSV特異免疫反応を確認することができた。
【0136】
(SFTSV感染中型動物モデルにおいてワクチンによって誘導された抗体免疫反応および中和抗体誘導能の定量評価)
DNAワクチンによって誘導された抗体の中和抗体力価をPRNT50方法で測定した。
図17に示すように、SFTSV Gn/Gcに対するDNAワクチンを接種した4匹の動物で効果的に中和抗体力価が生成されることを確認した。これに対し、空ベクターワクチンを接種した6匹のワクチングループをはじめとして、それぞれNP、NS、およびRdRpに対するワクチンを接種したグループの個体では中和抗体が全く生成されないことが確認された。この結果は、Gn/Gcに対するDNAワクチン候補物質によってSFTSV-特異中和抗体が効果的に誘導できることを意味する。
【0137】
(SFTSV感染中型動物モデルにおいてSFTSV予防DNAワクチンの防御効能検証)
各ワクチンの防御効能を検証するために、それぞれGn/Gc、NP、NS、およびRdRpに対するSFTSVワクチンを投与した個体に致死量のSFTSVを感染させた後、生存率、SFTSVウイルス数値、血小板数、体温、体重変化、ALT、およびAST変化などの臨床症状を評価した。
図18に示すように、生存率を評価した結果、対照群で感染後6匹の個体とも死亡し、NP、NS、およびRdRpに対するSFTSVワクチンを投与した3つのグループでいずれも、3匹の個体のうち1匹のみが生存した。これに対し、Gn/Gcに対するSFTSVワクチンを投与した個体は4匹とも生存した。
【0138】
また、リアルタイムPCRによりSFTSVウイルス数値を測定した。その結果を
図19および
図20に示した。対照群では、感染後2日目にウイルス数値が増加し、感染6日目に最も高いウイルス数値を示すことを観察した。これと比較して、Gn/Gcワクチングループの4匹の中型動物ではウイルス数値が測定されなかった。1匹のGn/Gcワクチングループの個体で感染後2日目に微量のウイルス数値が測定されたが、感染4日目に完全に除去されたことを確認した。これに対し、NP、NS、およびRdRpに対するSFTSVワクチンを投与した3つのグループでは対照群のウイルス数値と類似する程度にこれが増加することを確認した。
【0139】
また、
図21および
図22に示すように、血小板数を測定した結果、対照群でSFTSV感染によって急激な血小板の減少を観察した。これと比較して、Gn/Gcワクチングループの血小板数値は正常に維持されることを確認した。これに対し、NP、NS、およびRdRpに対するSFTSVワクチンを投与した3つのグループでは感染6日目まで血小板数値が約300×10
3/ulまで減少することを観察した。
【0140】
図23および
図24に示すように、白血球数を測定した結果、対照群でSFTSV感染によって急激な白血球の減少を観察した。これと比較して、Gn/Gcワクチングループの白血球数値は正常に維持されることを確認した。これに対し、NP、NS、およびRdRpに対するSFTSVワクチンを投与した3つのグループでは感染6日目あるいは4日目まで白血球数値が減少することを観察した。
【0141】
一方、SFTSV感染後、対照群の個体は約80%以下まで体重が有意に減少したが、ワクチングループの個体は90%以下の体重減少を見せていないことを確認した(
図25および
図26参照)。
【0142】
また、
図27および
図28に示すように、SFTSV感染後、対照群の個体は体温が約2℃程度増加したが、Gn/Gcワクチングループの個体は明確な体温変化が観察されなかった。これに対し、NP、NS、およびRdRpに対するSFTSVワクチンを投与した3つのグループでは0.5~1℃程度体温が増加することを観察した。
【0143】
図29および
図30に示すように、血清内ALTを測定した結果、対照群でSFTSV感染によって急激なALT数値の増加を観察した。これと比較して、Gn/GcワクチングループのALT数値は正常に維持されることを確認した。これに対し、NP、NS、およびRdRpに対するSFTSVワクチンを投与した3つのグループでは感染6日目までALT数値が急激に増加することを観察した。
【0144】
また、
図31および
図32に示すように、血清内ASTを測定した結果、対照群でSFTSV感染によって急激なAST数値の増加を観察した。これと比較して、Gn/GcワクチングループのAST数値は正常に維持されることを確認した。これに対し、NP、NS、およびRdRpに対するSFTSVワクチンを投与した3つのグループでは感染6日目までAST数値が急激に増加することを観察した。
【0145】
これよりGn/Gc、NP、NS、およびRdRpそれぞれ抗原の防御効能を中型動物(フェレット)感染モデルにおいて検証した結果、Gn/Gc DNAワクチンが、他の抗原-発現DNAワクチンに比べてはるかに高い防御効能を示すことを確認することができた。
【0146】
以上、本発明の特定の部分を詳しく記述したが、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述は単に好ましい実施形態に過ぎず、よって、本発明の範囲が制限されないことは明らかである。したがって、本発明の実質的な範囲は添付した請求項とその等価物によって定義されるというべきである。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明は、重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome;SFTS)ウイルス疾患による感染病を予防または治療するためのワクチン組成物に関する。
【配列表】