(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】ピン制御装置、ピン挿入装置、残留ピン除去装置、ピン挿入方法及び残留ピン除去方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/50 20060101AFI20240403BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20240403BHJP
H01F 7/02 20060101ALN20240403BHJP
H01F 7/20 20060101ALN20240403BHJP
【FI】
H01L23/50 P
H01L23/12 N
H01L23/12 501T
H01F7/02 F
H01F7/20 Z
(21)【出願番号】P 2022144193
(22)【出願日】2022-09-09
【審査請求日】2023-08-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515157758
【氏名又は名称】公立大学法人 富山県立大学
(73)【特許権者】
【識別番号】392008851
【氏名又は名称】ファインネクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下山 勲
(72)【発明者】
【氏名】野田 堅太郎
(72)【発明者】
【氏名】塚越 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】松井 剛
(72)【発明者】
【氏名】野嶋 諭
(72)【発明者】
【氏名】高浪 奨
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-252819(JP,A)
【文献】特開2000-034011(JP,A)
【文献】特開2022-061439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G47/00-47/20
H01L23/12-23/15
H01L23/50
H01F 7/02
H01F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の一又は複数のピン受入部材を支持し、前記ピン受入部材が複数の挿入部を有する支持部と、
磁界を発生させる磁石部と、
を備え、
前記支持部、前記磁石部の少なくとも何れか一方を他方に対して相対的にスライドさせることにより、前記ピン受入部材上に載置された複数のピンの少なくとも一部の姿勢及び位置を変化させる、ピン制御装置
であって、
プレート部が、前記ピン受入部材と略同一の面を形成するように近接して設けられ、
前記磁石部が前記ピン受入部材の下方から前記プレート部の下方に又は前記ピン受入部材の上方から前記プレート部の上方にスライドすることにより、前記挿入部に挿入されずに前記ピン受入部材上にある残留ピンを前記ピン受入部材から除去する、ピン制御装置。
【請求項2】
前記磁石部が、前記ピン受入部材に交差する方向で第1の向きの磁界、及び、前記ピン受入部材に交差する方向で前記第1の向きと逆向きの第2の向きの磁界を少なくとも同時に発生するように構成されており、
前記第1の向きの磁界を発生する領域と前記第2の向きの磁界を発生する領域との境界を前記ピン受入部材に沿って相対的に移動させることにより、前記ピン受入部材上に載置した前記複数のピンの少なくとも一部の姿勢及び位置が変化して前記複数のピンの一部がそれぞれ対応する前記挿入部に挿入される、請求項1に記載のピン制御装置。
【請求項3】
平板状の一又は複数のピン受入部材を支持し、前記ピン受入部材が複数の挿入部を有する支持部と、
前記ピン受入部材に交差する方向で第1の向きの磁界、及び、前記ピン受入部材に交差する方向で前記第1の向きと逆向きの第2の向きの磁界を少なくとも同時に発生する磁石部と、
を備え、
前記第1の向きの磁界を発生する領域と前記第2の向きの磁界を発生する領域との境界を前記ピン受入部材に沿って相対的に移動させることにより、前記ピン受入部材上に載置し
た複数のピンの少なくとも一部の姿勢及び位置が変化して前記複数のピンの一部がそれぞれ対応する前記挿入部に挿入される、ピン挿入装置
であって、
前記磁石部が、前記第1の向きの磁界を発生する第1の磁石と、前記第2の向きの磁界を発生する第2の磁石とを、含み、前記第1の磁石及び前記第2の磁石が前記ピン受入部材に対向するように並んで構成されており、
前記磁石部、前記ピン受入部材の少なくとも何れかを前記第1の磁石及び前記第2の磁石の並ぶ方向に沿って移動させることにより、前記境界を前記ピン受入部材に沿って相対的に移動させる、ピン挿入装置。
【請求項4】
平板状の一又は複数のピン受入部材を支持し、前記ピン受入部材が複数の挿入部を有する支持部と、
前記ピン受入部材に交差する方向で第1の向きの磁界、及び、前記ピン受入部材に交差する方向で前記第1の向きと逆向きの第2の向きの磁界を少なくとも同時に発生する磁石部と、
を備え、
前記第1の向きの磁界を発生する領域と前記第2の向きの磁界を発生する領域との境界を前記ピン受入部材に沿って相対的に移動させることにより、前記ピン受入部材上に載置した複数のピンの少なくとも一部の姿勢及び位置が変化して前記複数のピンの一部がそれぞれ対応する前記挿入部に挿入される、ピン挿入装置であって、
前記磁石部が、アレイ状に配置された複数の電磁石を含んで構成されており、
前記複数の電磁石に流す電流の向きを制御する回路ユニットをさらに備え、
前記回路ユニットが、前記磁石部における前記第1の向きの磁界を発生する領域と前記第2の向きの磁界を発生する領域との境界を移動させるように、前記複数の電磁石に流す電流を制御する
、ピン挿入装置。
【請求項5】
平板状の一又は複数のピン受入部材を支持する支持部であって、前記ピン受入部材が複数の挿入部を有する前記支持部を備えたピン挿入装置に近接して配置される残留ピン除去装置であって、
前記ピン受入部材と略同一の面を形成するように近接してプレート部を備え、
磁界を発生させる磁石部を、前記ピン受入部材の下方から前記プレート部の下方に又は前記ピン受入部材の上方から前記プレート部の上方にスライドさせることにより、前記挿入部に挿入されずに前記ピン受入部材上の残留ピンを前記ピン受入部材上から前記プレート部上に移動させ、前記残留ピンを前記ピン受入部材上から除去する、残留ピン除去装置。
【請求項6】
平板状の一又は複数のピン受入部材であって複数の挿入部を有する前記ピン受入部材に対して、前記ピン受入部材に交差する方向で第1の向きの磁界、及び、前記ピン受入部材に交差する方向で前記第1の向きと逆向きの第2の向きの磁界を発生する磁石部を配置し、
前記第1の向きの磁界を発生する領域と前記第2の向きの磁界を発生する領域との境界を前記ピン受入部材に沿って相対的に移動させることにより、前記ピン受入部材上に載置した複数のピンの少なくとも一部の姿勢が変化して前記複数のピンの一部がそれぞれ対応する前記挿入部に挿入される、ピン挿入方法
であって、
前記磁石部が、前記第1の向きの磁界を発生する第1の磁石と、前記第2の向きの磁界を発生する第2の磁石とを、含み、前記第1の磁石及び前記第2の磁石が前記ピン受入部材に対向するように並んで構成されており、
前記磁石部、前記ピン受入部材の少なくとも何れかを前記第1の磁石及び前記第2の磁石の並ぶ方向に沿って移動させることにより、前記境界を前記ピン受入部材に沿って相対的に移動させる、ピン挿入方法。
【請求項7】
平板状の一又は複数のピン受入部材であって複数の挿入部を有する前記ピン受入部材に対して、前記ピン受入部材に交差する方向で第1の向きの磁界、及び、前記ピン受入部材に交差する方向で前記第1の向きと逆向きの第2の向きの磁界を発生する磁石部を配置し、
前記第1の向きの磁界を発生する領域と前記第2の向きの磁界を発生する領域との境界を前記ピン受入部材に沿って相対的に移動させることにより、前記ピン受入部材上に載置した複数のピンの少なくとも一部の姿勢が変化して前記複数のピンの一部がそれぞれ対応する前記挿入部に挿入される、ピン挿入方法であって、
前記磁石部が、アレイ状に配置された複数の電磁石を含んで構成されており、
前記磁石部における前記第1の向きの磁界を発生する領域と前記第2の向きの磁界を発生する領域との境界を移動させるように、前記複数の電磁石に流す電流を制御する
、ピン挿入方法。
【請求項8】
前記複数の挿入部のうち前記ピンが挿入されていない前記ピン受入部材の部位に対して、前記磁石部における、前記第1の向きの磁界を発生する領域と前記第2の向きの磁界を発生する領域との境界を移動させる、請求項
6又は7に記載のピン挿入方法。
【請求項9】
平板状の一又は複数のピン受入部材の上方、下方の何れかに配置されている磁石部を移動させることにより、前記ピン受入部材における複数の挿入部に挿入されずに前記ピン受入部材上にある残留ピンを、前記ピン受入部材上から移動させて前記残留ピンを除去する、残留ピン除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピンが挿入される挿入部を有するピン受入部材上に載置された複数のピンを制御することにより、ピンを挿入部に挿入可能な及び/又は挿入部に挿入されずに残っている残留ピンを除去可能なピン制御装置、ピン受入部材の挿入部にピンを挿入するピン挿入装置及びピン挿入方法、並びに、挿入部に挿入されずに残っている残留ピンを除去するための残留ピン除去装置及び残留ピン除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1の従来技術として、ピンとしての鋲体の芯部材をベース基板用ウェハの第1面側から挿入して貫通孔の内部に鋲体の芯部材を配置するために、ベース基板用ウェハを揺動させながら、周方向に揺動する方法が開示されている。
【0003】
しかし、この方法では、迅速かつ確実に鋲体を貫通孔に挿入できないため、特許文献1では、次のような方法が開示されている。第1基板の下面側に配置した磁石と第1基板とを相対的に走査することにより、ピンに相当する鋲体は磁石に吸引されながら磁石と共に移動し、そして、鋲体が挿入部としての凹部の開口部を通過するときに、鋲体の芯材部は凹部を介して磁石に吸引され、凹部の内部に芯材部が挿入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に開示されている技術では、ピンが振り込まれるように挿入部が設けられた平板状のピン受入部材の挿入部にピンを効率よく挿入することができない。また、ピン受入部材の挿入部にピンが挿入された後に、挿入部に挿入されずにピン受入部材上に存在する残留ピンを効率よく除去することができない。
【0006】
そこで、本発明の目的の一つは、ピンが挿入される挿入部を有するピン受入部材の挿入部にピンを効率よく挿入可能な及び/又は挿入部に挿入されずに存在する残留ピンを除去可能なピン制御装置を提供することである。本発明の目的の一つは、平板状のピン受入部材に設けられた挿入部にピンを効率よく挿入可能なピン挿入装置及びピン挿入方法を提供することである。本発明の目的の一つは、ピン受入部材上に残留したピンを効率よく除去する残留ピン除去装置及び残留ピン除去方法を提供することである。それ以外の目的は、本発明の実施形態において詳細に説明される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの観点は、平板状の一又は複数のピン受入部材を支持し、前記ピン受入部材が複数の挿入部を有する支持部と、磁界を発生させる磁石部と、を備え、前記支持部、前記磁石部の少なくとも何れか一方を他方に対して相対的にスライドさせることにより、前記ピン受入部材上に載置された複数のピンの少なくとも一部の姿勢及び位置を変化させる、ピン制御装置に関する。
【0008】
本発明の一つの観点は、平板状の一又は複数のピン受入部材を支持し、前記ピン受入部材が複数の挿入部を有する支持部と、前記ピン受入部材に交差する方向で第1の向きの磁界、及び、前記ピン受入部材に交差する方向で前記第1の向きと逆向きの第2の向きの磁界を少なくとも同時に発生する磁石部と、を備え、前記第1の向きの磁界を発生する領域と前記第2の向きの磁界を発生する領域との境界を前記ピン受入部材に沿って相対的に移動させることにより、前記ピン受入部材上に載置した前記複数のピンの少なくとも一部の姿勢及び位置が変化して前記複数のピンの一部がそれぞれ対応する前記挿入部に挿入される、ピン挿入装置に関する。
【0009】
本発明の一つの観点は、平板状の一又は複数のピン受入部材を支持する支持部であって、前記ピン受入部材が複数の挿入部を有する前記支持部を備えたピン挿入装置に近接して配置される残留ピン除去装置であって、前記ピン受入部材と略同一の面を形成するように近接してプレート部を備え、磁界を発生させる磁石部を、前記ピン受入部材の下方から前記プレート部の下方に又は前記ピン受入部材の上方から前記プレート部の上方にスライドさせることにより、前記挿入部に挿入されずに前記ピン受入部材上の残留ピンを前記ピン受入部材上から前記プレート部上に移動させ、前記残留ピンを前記ピン受入部材上から除去する、残留ピン除去装置に関する。
【0010】
本発明の一つの観点は、平板状の一又は複数のピン受入部材であって複数の挿入部を有する前記ピン受入部材に対して、前記ピン受入部材に交差する方向で第1の向きの磁界、及び、前記ピン受入部材に交差する方向で前記第1の向きと逆向きの第2の向きの磁界を発生する磁石部を配置し、前記第1の向きの磁界を発生する領域と前記第2の向きの磁界を発生する領域との境界を前記ピン受入部材に沿って相対的に移動させることにより、前記ピン受入部材上に載置した複数のピンの少なくとも一部の姿勢が変化して前記複数のピンの一部がそれぞれ対応する前記挿入部に挿入される、ピン挿入方法に関する。
【0011】
本発明の一つの観点は、平板状の一又は複数のピン受入部材の上方、下方の何れかに配置されている磁石部を移動させることにより、前記ピン受入部材における複数の挿入部に挿入されずに前記ピン受入部材上にある残留ピンを、前記ピン受入部材上から移動させて前記残留ピンを除去する、残留ピン除去方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ピン受入部材上に設けられた挿入部にピンを効率よく挿入することができ、ピン受入部材上に残留したピンを効率よく除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るピン制御装置の概略を示しており、上段が側面図、下段が平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2の実施形態に係るピン挿入装置の概略を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すピン挿入装置によるピン挿入方法を説明するための図である。
【
図4A】
図4Aは、磁石部が第1の領域及び第2の領域からなる磁石で構成され、かつ第1の領域と第2の領域での磁化の向きが逆である場合の磁力線を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、磁石部が第1の領域及び第2の領域からなる磁石で構成され、かつ第1の領域と第2の領域での磁化が同じ場合の磁力線を示す図である。
【
図4C】
図4Cは、磁石部が一方向及び向きに磁化された一つ磁石で構成された場合の磁力線を示す図である。
【
図5】
図5は、ピン振込確率を検討するための説明図である。
【
図6A】
図6Aは、ピン受入部材の挿入部に関する配置状態と磁石部の平面視の寸法との関係の第1の例を示す平面図である。
【
図6B】
図6Bは、ピン受入部材の挿入部に関する配置状態と磁石部の平面視の寸法との関係の第2の例を示す平面図である。
【
図7A】
図7Aは本発明の第3の実施形態に係るピン挿入装置における磁石部の構成を模式的に示す図である。
【
図7C】
図7Cは、
図7Aに示す磁石部における電磁石を一列又は一行取り出して示す図である。
【
図8A】
図8Aは、本発明の第4の実施形態に係るピン挿入装置の概要を示す平面図である。
【
図8B】
図8Bは、本発明の第4の実施形態に係るピン挿入装置の概要を示す一部断面図である。
【
図9A】
図9Aは、本発明の第5の実施形態に係るピン挿入装置を模式的に示す斜視図である。
【
図10】
図10は、本発明の第6の実施形態に係る残留ピン除去装置による残留ピン除去工程を示す図である。
【
図11】
図11は、使用した磁石部を構成する一枚の磁石について磁束密度を測定した結果を示す図である。
【
図12】
図12は、使用した磁石部の極性の判別方法を説明するための図である。
【
図13】
図13は、使用した磁石部の区分けした部分での磁力の強弱を模式的に示す図である。
【
図14A】
図14Aは、二枚の磁石を連結して磁石部を構成した場合の振込結果に関して、ピンが振り込まれたピン受入部材の像を示す図である。
【
図14B】
図14Bは、一枚の磁石で磁石部を構成した場合の振込結果に関して、ピンが振り込まれたピン受入部材の像を示す図である。
【
図15】
図15は、比較例で使用したピン挿入方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の幾つかの実施形態について詳細に説明する。図面には本発明の好ましい形態の一つを示しており、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施形態での構成について一部を変更したり削除したり追加したりしてもよい。また、以下説明する本発明の或る実施形態での説明は、他の実施形態でも適用し得る。
【0015】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係るピン制御装置の概略について、
図1の上段に側面図、下段に平面図を示す。ピン制御装置1は、複数のピン受入部材Mを支持する支持部2と、支持部2の下方に配置され、磁界を発生させる磁石部3とを備える。ピン受入部材Mは平板状であって、貫通又は非貫通の複数の挿入部Hを有する。ピン受入部材Mは、平面図において吹き出しで一枚のピン受入部材Mを部分的に拡大して示すように、ピン受入部材Mには複数のユニットUが備えられており、各一つのユニットUには挿入部HがX軸方向及びY軸方向のそれぞれに並べられて矩形状のリングのように形成されている。このような矩形状のリングは振込エリア領域と呼ぶことができる。ピン受入部材Mは一つのユニットUのみを備えていてもよいし、例えば
図8Aに示すように平面状にX軸方向、Y軸方向の何れにも複数のユニットUを備えていてもよいし、X軸方向、Y軸方向の何れかに複数のユニットUを備えてもよい。
図1に示すピン受入部材Mは平面視で円形としているが、平面視で矩形状であってもよい。支持部2は図示する形態では4枚のピン受入部材Mを支持しているが、枚数についても図示したものに限定されず、少なくとも一枚のピン受入部材Mでも適用し得る。
【0016】
磁石部3は、
図1に示すように、支持部2の下方に配置され、平板状の一又は複数のピン受入部材Mに沿ってスライド可能な移動手段4に配置される。磁石部3は、ピン受入部材Mの上面と交差するように、好ましくは、挿入部Hに沿うように略直交するように、磁界を発生するように構成されている。例えば、磁石部3は、一枚の永久磁石で構成してもよいし、後述する実施形態のように複数の永久磁石により構成してもよい。また、後述する実施形態のように複数の電磁石により構成してもよい。
【0017】
移動手段4は、
図1に示す形態では、X軸方向に延びるレール4aとY軸方向に延びるレール4bで構成されたX-Yステージで構成されている。X軸方向にもY軸方向にも磁石部3を移動し得、また、X軸方向、Y軸方向に同時に移動させることにより、磁石部3をXY平面内でX軸方向やY軸方向に対して斜めに移動させたり、円弧や楕円弧を描くように移動させたりすることもできる。移動手段4は、ピン受入部材Mへの磁石部3のZ軸方向の位置を調整し得るように構成してもよいし、それ以外の構成でも構わない。
【0018】
ピン制御装置1は、支持部2に対して、より具体的にはピン受入部材Mに対して、磁石部3を相対的にスライドさせることにより、ピン受入部材M上に載置された複数のピンPの少なくとも一部の姿勢及び位置を変化させることができ、各ピン受入部材Mの挿入部HそれぞれにピンPを挿入することができる。移動手段4は、磁石部3を支持部2の下方全域にわたって、また、磁石部3を後述するプレート部5の下方にわたってスライドできるように、例えば、レール4a、4bは、所定の長さを有する。
【0019】
ピン制御装置1には、プレート部5がピン受入部材Mに近接して設けられていることが好ましい。移動手段4で磁石部3をピン受入部材Mの下方からプレート部5の下方にスライドし得る。これにより、挿入部Hに挿入されずにピン受入部材M上に存在する残留ピンを除去することが可能となる。吸引装置6が吸引管7その他の接続ユニットでプレート部5に接続されて吸引装置6がプレート部5上の残留ピンを吸引することにより、プレート部5上から残留ピンを完全に除去し得る。吸引管7その他の接続ユニットが支持部2ではなくプレート部5に接続されて残留ピンを吸引することで、ピン受入部材Mの挿入部Hに挿入されているピンPへの影響が可及的に少なくなる。
【0020】
ここで、磁石部3に関して、支持部2及びプレート部5の下方でピン受入部材Mに沿ってスライド可能に配置する形態ではなく、支持部2及びプレート部5の上方でピン受入部材Mに沿ってスライド可能に配置される形態であってもよい。何れの形態においても、磁石部3以外の磁石による磁界をピン受入部材M上に作用することを排除するものではない。プレート部5は、ピン受入部材Mの上面と同一の面を形成し得るように設けられていることが好ましい。ここで、「ピン受入部材Mの上面と略同一面を形成し得る」とは、ピン受入部材Mの上面とプレート部5の上面との段差を排除するものではなく、ピンPが少なくともピン受入部材Mの上面からプレート部5の上面に移動し得る構成であればよい。プレート部5及び支持部2の周囲には側壁8が設けられ、ピンPがプレート部5及び支持部2上から外に落下しないように構成されている。
【0021】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態として、第1の実施形態に係るピン制御装置1においてピン挿入に関して適用可能なピン挿入装置について説明する。
図2に示す第2の実施形態に係るピン挿入装置10は、支持部11と磁石部15とを備える。支持部11は平板状の一又は複数のピン受入部材Mを支持し、ピン受入部材Mが複数の挿入部Hを有する。支持部11は、ピン受入部材Mを設置するための設置領域12を周壁13によって前後左右で矩形状やリング状など周状に囲むように構成されており、支持部11の上面側が開口して、ピンP(
図4A参照)を投入可能に構成されている。
【0022】
磁石部15は、ピン受入部材Mの下方に、ピン受入部材Mに沿ってスライド可能に配置される。磁石部15は、少なくとも第1の領域16と第2の領域17とを近接して構成されており、第1の領域16はピン受入部材Mに交差する方向で第1の向きの磁界を発生し、第2の領域17はピン受入部材Mに交差する方向で第1の向きと逆向きの第2の向きの磁界を発生する。第1の領域16と第2の領域17において、磁界は少なくとも同時に発生する。第1の領域16は、第1の向きの磁界を発生する第1の磁石16aで構成され、第2の領域17は、第2の向きの磁界を発生する第2の磁石17aで構成される。第1の領域16及び第2の領域17は、それらの中央及びその近傍において挿入部Hの深さ方向(ピンPの挿入方向)に沿って、好ましくは平行に、磁化されており、第1の領域16での磁化が第2の領域17での磁化と向きが逆である。
図2に示す場合においては、磁石部15の第1の領域16はM1で示す矢印方向に磁化されており、磁石部15の第2の領域17はM2で示す矢印方向に磁化されている。磁石部15における第1の領域16と第2の領域17とは境界18で並置されており、場合によっては近接ないし隣接している。第1の領域16と第2の領域17との間に非磁性材が設けられていることを妨げない。このことは、他の実施形態においても同様である。
【0023】
磁石部15は、移動手段19として例えばXYステージに配置されることにより、少なくとも一方向(X軸方向)へ移動することが可能であり、一方向のみならず、例えばXY平面内で、つまり、ピン受入部材MとのZ軸方向の距離を変化させずに、X軸方向に対して傾斜する方向やY軸方向に対して傾斜する方向に移動することもでき、任意の方向に移動させることができる。また円弧や楕円弧を描くようにローター上に設置されてもよい。これにより、磁石部15が、ピン受入部材Mの面に沿って平行にスライドすることができる。
【0024】
図3は、
図2に示すピン挿入装置10によるピン挿入方法を説明するための図である。ピン挿入方法は、図示しないSTEP0において、一枚のピン受入部材Mを支持部11の設置領域12に配置し、ピンP(
図3では示さず)をピン受入部材M上に又は支持部11の上面側の開口内に投入する。ピンPはピン受入部材Mの挿入部Hの数よりも多量であればよい。
【0025】
次に、STEP1において、支持部11を挟んでピン受入部材Mとは反対の側に磁石部15を配置する。図示の場合には、平面視で磁石部15の境界18及び第2の領域17がピン受入部材Mに重ならないように配置される。その際、磁石部15の第1の領域16がピン受入部材Mに重ならないようにすることを排除するものではない。この状態において、磁石部15を移動手段19(
図3には示さず。
図2参照)により、磁石部15をピン受入部Mの面に沿って、平面視で磁石部15における第1の領域16及び第2の領域17がピン受入部Mと重なるように移動させる。この状態を示したのがSTEP2である。
【0026】
STEP2において、引き続き、磁石部15を移動手段19によりピン受入部材Mの面に沿って移動させ、平面視で磁石部15の第1の領域16及び境界18がピン受入部材Mに重ならないように移動させる。この状態を示したのがSTEP3である。その際、磁石部15の第2の領域17がピン受入部材Mに重ならないようにすることを排除するものではない。
【0027】
STEP3において、磁石部15を移動手段19により、磁石部15をピン受入部材Mの面に沿って逆向きに、平面視で磁石部15における第1の領域16及び第2の領域17がピン受入部材Mと重なるように移動させる。この状態を示したのがSTEP4である。
【0028】
STEP4において、引き続き、磁石部15を移動手段19によりピン受入部材Mの面に沿って逆向きに移動させ、磁石部15の境界18及び第2の領域17がピン受入部材Mに重ならないように移動させる。この状態を示したのがSTEP1である。その際、磁石部15の第1の領域16がピン受入部材Mに重ならないようにすることを排除するものではない。
【0029】
このように、STEP1からSTEP4を経てSTEP1に至る操作を所定回数繰り返す。これにより、ピンPが挿入部Hに挿入される。この理由について次に説明する。
【0030】
図4Aは、磁石部15が第1の領域16及び第2の領域17からなる磁石で構成され、かつ第1の領域16と第2の領域17での磁化の向きが逆である場合の磁力線を示す図である。
図2及び
図3で示す符号と同一又は対応する部材については同一の符号を付して説明を省略する。
【0031】
磁石部15は、第1の領域16の磁化M1と第2の領域17の磁化M2が挿入部Hの方向に沿っていることから、第1の領域16、第2の領域17から上方に向けて磁力線が形成される。第1の領域16と第2の領域17において境界18を挟む近傍では磁化の方向が逆向きであるため、これらの近傍では磁力線は一方の近傍から他方の近傍に向けて湾曲している。そのため、境界18の上方では、ピンPはその湾曲した磁力線の方向に平行になるため、境界18の上方のピンPは、挿入部Hの上下方向(深さ方向)とは交差しており、ピン受入部材Mの面に平行になる。このように、ピンPの向きが立つ方向に一様ではなく、境界18の上方では傾いていることにより、ピンPが磁力により挿入部Hに挿入されやすくなる。
【0032】
本発明の第2の実施形態においては、磁石部15をピン受入部材Mの面に沿ってスライドすることにより、境界18がスライドし、磁力線の湾曲した部分がスライドするため、各挿入部HにおいてピンPが磁界の影響により姿勢を変える。よって、例えば、或る位置に在るピンPは、直立状態、水平状態、直立状態というように姿勢を変えることができる。これにより、ピンPはピン受入部材Mの挿入部Hに振り込まれる。磁石部15のスライドにより、或る位置のピンPは、磁石部15がスライドする方向に移動させられる。
【0033】
図4Aでは、ピン受入部材M及び支持部11を固定しかつ磁石部15をスライドしているが、磁石部15を固定しかつピン受入部材Mをスライドさせてもよいし、支持部11、ピン受入部材M及び磁石部15をスライドさせて磁石部15の境界18をピン受入部材Mに対して相対的にスライドさせてもよい。これらのように、第1の向きの磁界を発生する領域(
図4Aでは第1の領域16)と第2の向きの磁界を発生する領域(
図4Aでは第2の領域17)との境界18をピン受入部材Mの面に沿って相対的に移動させる。これにより、ピン受入部材M上に載置した複数のピンPの少なくとも一部の姿勢及び位置が変化して複数のピンPの一部がそれぞれ対応する挿入部Hに挿入される。
【0034】
図4Bは、第1の比較形態に係り、磁石部25が第1の領域26及び第2の領域27からなる磁石で構成され、かつ第1の領域26と第2の領域27での磁化の向きが同じ場合の磁力線を示す図である。磁石部25において第1の領域26と第2の領域27とが近接しており、第1の領域26と第2の領域27は、何れも挿入部Hの方向に沿っており、
図4Aとは異なり、磁石部25における第1の領域26の磁化M1の方向及び向きは、第2の領域27の磁化M2の方向及び向きと同じである。磁石部25における第1の領域26と第2の領域27とは境界28で並置されている。
【0035】
このような形態にあっては、磁石部25による磁力線が模式的に示されるように、境界28を挟んだ第1の領域26及び第2の領域27の何れのピン受入部材M側でも、磁力線はピン受入部材Mに交差、ほぼ直交している。よって、磁石部25の両端の影響を考慮しなければ、磁石部25をピン受入部材Mの面に沿って平行にスライドしても、ピンPが磁界の向きに沿って直立状態を保つ。したがって、磁石部25をスライドしても、ピンPの姿勢を変えることができず、単に直立状態のまま変位し、ピンPの挿入部への振込効率が向上しない。
【0036】
図4Cは、磁石部35が一方向及び向きに磁化された一つ磁石で構成された場合の磁力線を示す図である。磁石部35の端部を出た磁力線は比較的小さなループを描いて戻ってくるので、ピンPを水平にさせる領域が生じる。ただし、磁石部35の端部及びその近傍における磁束密度は、
図4Aに示す境界及びその近傍に比べれば低い。磁石部35をピン受入部材Mに沿って平行にスライドしても、直立状態(縦状態)、水平状態(横状態)で姿勢変化が終了するので挿入効率が悪い。よって、好ましくない。
【0037】
ここで、
図2及び
図3に示す形態において、磁石部15は、第1の領域16を一つの磁石(例えば永久磁石)により構成し、第2の領域17を別の磁石(例えば永久磁石)により構成して、第1の磁石と第2の磁石とをそれぞれ異なる極の引力で一体とすることができる。
【0038】
逆に、
図2及び
図3に示す形態において、磁石部15は、第1の領域16、第2の領域17の何れも一つの磁石により構成することができる。また、二つの領域のみならず、3つ以上の領域で構成されてもよく、その場合には、並置されている両領域、近接する領域、すなわち、隣り合う領域の磁化が逆向きであればよい。
【0039】
[ピンが水平状態となり得ることの有効性]
ここで、ピン姿勢制御の有効性について検討する。
図4Aに示す形態と
図4Bに示す形態とのピン振込効率の違いについて考察する。
図5は、ピン振込確率を検討するための説明図である。
図5に示すように、或るピン受入部材Mの上面視において、縦横等間隔に挿入部Hが配置されているとする。
図5の右に拡大して示すように一つの挿入部Hに注目すると、挿入部Hの周期をp、挿入部Hの直径をd、ピンPの直径をeとする。
図4Bに示すようにピンPが常に直立している場合、一回の移動でピンPが振り込まれるためには、ピンPの中心(軸)が挿入部Hの中心を中心とする直径d-eの円内にあることが必要である。ピンPの一辺pの正方形内にランダムに着地することを考えれば、振込確率Q1は、Q1=π{(d-e)/2}
2/p
2=π(d-e)
2/4p
2となる。一例として、p=0.4mm、d=0.2mm、e=0.18mmとすると、Q1=0.196%となる。
【0040】
一方、
図4Aに示すように水平姿勢のピンPが挿入部Hの一列を通過する場合、ピンPの中心軸の穴の中心からd-eの幅を通れば、穴に引っかかるので、その確率は、Q2=(d-e)/pとなる。前例の数値例を用いると、Q=5.0%となり、Q1の25倍となる。
【0041】
もちろん、正確な振込確率を算出するには、試行回数を考慮する必要があるものの、Q1では振動回数を、Q2では磁石の通過回数をそれぞれ見積もる必要がある。しかしながら、これらの回数が10倍も異なることは考えられず、25倍という確率の差は、ピンが水平状態となり得ることの優位性を示していると推察される。
【0042】
[挿入部Hの配置に対する磁石部15の平面視の寸法との関係]
図6Aは、ピン受入部材Mの挿入部Hに関する配置状態と磁石部15の平面視の寸法との関係の第1の例を示す平面図である。磁石部15は、第1の磁石16aと第2の磁石17aとがピン受入部材Mの面に対向し得るように並設して構成されており、第1の磁石16aは、第2の磁石17aと縦横同一寸法、同一の厚みを有しており、第1の磁石16a及び第2の磁石の平面視での一辺が長さL
MAGを有する。一方、平面視で一辺L
Mの方形状のピン受入部材Mにおける挿入部Hが、X軸方向に沿って複数行並びかつY軸方向に沿って複数列並んで平面視でリングのような矩形状を形成するリング部に設けられているとし、リング部の平面視での縦横が同一寸法であり、リング部としての振込エリア領域の一辺が長さL
Eとする。すると、磁石部15の平面視での寸法がL
MAG×2L
MAGとなり、挿入部Hの配置ないしピン受入部材Mと磁石部15(第1の磁石16aないし第2の磁石17a)の平面視の寸法との関係が、第1の例では、L
E<L
M<L
MAGの関係を満足し、後述する検証例では、L
E≒15mm、L
M=30mm、L
MAG=60mmである。
【0043】
図6Aに示すように、ピン受入部材Mを支持部11の設置領域12に配置し、磁石部15を支持部11の下方、つまり、ピン受入部材Mの下方にピン受入部材Mに沿ってスライド可能に設置されている。磁石部15における第1の磁石16aと第2の磁石17aとの境界18の上方及びその近傍では、ピンPは、ピン受入部材Mに平行な状態(水平状態ないし横状態)となり、かつ、平行な状態のピンPは、左右の周壁13にわたって存在する。それ以外では、ピンPは、ピン受入部材Mに立っている状態(直立状態ないし縦状態)となり、かつ、立っている状態のピンPは、左右の周壁13にわたって存在する。
図6Aに吹き出しで拡大しているように、立っているピンPは黒丸で示しており、横になっているピンは、細長い長方形で示している。
【0044】
磁石部15を第1の磁石16aと第2の磁石17aの並びの方向(X軸方向)に沿って往復することにより、第1の磁石16aと第2の磁石17aとの境界18が磁石の並び方向に往復する。第1の例では、境界18の上方ではピン受入部材Mに略直交しておらず磁界が湾曲しているため、境界18が移動することにより、境界18の上方におけるピンPの姿勢状態が変化し、挿入部HにピンPが挿入される。
【0045】
図6Bは、ピン受入部材Mの挿入部Hに関する配置状態と磁石部15の平面視の寸法との関係の第2の例を示す平面図である。ピン受入部材M、支持部11及び磁石部15の構成や位置関係は
図6Aと同様であるが、第1の例とは異なり、挿入部Hの配置ないしピン受入部材Mと磁石部15(第1の磁石16aないし第2の磁石17a)の平面視の寸法との関係が、第2の例では、L
E<L
M≒L
MAGの関係を満足し、後述する検証例では、L
E≒15mm、L
M=30mm、L
MAG=30mmである。
【0046】
図6Bに示すように、磁石部15における第1の磁石16aと第2の磁石17aとの境界18の上方及びその近傍では、磁石部15の第1の磁石16a、第2の磁石17aの一辺の長さL
MAGよりも内側のみで、ピンPは、ピン受入部材Mに平行な状態(水平状態ないし横状態)となる。第1の磁石16a、第2の磁石17aのスライド方向と直交する方向(Y軸方向)の縁では、磁界が湾曲しているため(
図4A参照)、その湾曲方向に、ピンPが移動する。後述する実証例でも説明するように、第2の例では、ピンPを支持部11の設置領域12全体に行き渡るように載置しても、ピンPは、磁石部15の内側に移動し、磁石部15のY軸方向には広がらない。
【0047】
磁石部15が第1の磁石16aと第2の磁石17aの並びの方向に沿って往復することにより、第1の磁石16aと第2の磁石17aとの境界18が磁石の並び方向に往復する。第2の例においても、第1の磁石16a、第2の磁石17aのスライド方向と直交する方向の縁で生じる磁界によりピンPの姿勢が変化して挿入部Hに挿入する。磁石部15を構成する第1の磁石16a、第2の磁石17aの磁石の並び方向と直交する方向(Y軸方向)の寸法について、ピン受入部材Mの一辺ないし挿入部Hが存在する領域の一辺との関係で定める。これにより、挿入部Hが存在する領域の内側にだけピンPをあたかも閉じ込めておくことができ、ピン受入部材M上でのピンPが存在する領域を規制することができる。
【0048】
挿入部Hの配置に対する磁石部15の平面視の寸法との関係は、挿入部Hが配置されている振込エリア領域の一辺L
E(mm)と磁石部15の平面視の寸法L
MAG(mm)との関係が、L
MAG-20≦L
E≦L
MAG-2の関係を満たす場合に有効といえる。第2の例は、
図6Bに示すように一枚のピン受入部材Mにおいて挿入部Hが平面視で矩形状に存在する場合のみならず、一枚のピン受入部材Mに個々に区分けされた領域(後述する
図8Aに示すユニットU)が存在し、その領域毎に挿入部HがX軸方向Y軸方向に平面視で矩形状に存在するような場合においても適用される。ここで、L
Eは個々に区分けされた領域での振込エリア領域の一辺の長さとなる。
【0049】
[ピン受入部材M、磁石部15のスライド速度]
ピン受入部材Mと磁石部15との相対的なスライド速度については、ピンPの寸法、磁石部15の寸法にも依存する可能性がある。相対的なスライド速度が大きいと、第1の磁石16aと第2の磁石17aとの境界18近傍の磁界がピンPへ作用することによってもピンPの姿勢変化が追従しない可能性がある。そのため、ピン受入部材Mと磁石部15との相対的なスライド速度は、ピンPの長さ及び重量、磁石部15の第1の磁石16a、第2の磁石17aの一辺の長さLM、磁石部15とピン受入部材Mとの距離により決定され、特に、磁石部15の第1の磁石16a、第2の磁石17aの一辺の長さLMAGにより決定される。
【0050】
具体的には、ピン受入部材Mと磁石部15との相対的なスライド速度が400mm/秒以下、より好ましくは200mm/秒以下が好ましい。これよりも大きいスライド速度であれば、ピンPがすべての挿入部Hに挿入されないからである。第1の磁石16a、第2の磁石17aの一辺の長さLMAGが30mmの場合、スライド速度が400mm/秒以下であればよく、第1の磁石16a、第2の磁石17aの一辺の長さLMが60mmの場合、スライド速度が200mm/秒以下であればよい。
【0051】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態として、ピン制御装置1においてピン挿入に関して適用可能なピン挿入装置について説明する。
図7Aは本発明の第3の実施形態に係るピン挿入装置における磁石部の構成を模式的に示す図であり、
図7Bは
図7Aのうち一つの電磁石について使用態様を示す図であり、
図7Cは
図7Aに示す磁石部における電磁石を一列又は一行取り出して示す図であり、
図7Dは
図7Aに示す磁石部による磁界の変化の様子を模式的に示す図である。
【0052】
本発明の第3の実施形態に係るピン挿入装置は、支持部11(
図2参照)と磁石部45とを備えており、磁石部45が
図7Aに示すように、アレイ状に配置された複数の電磁石46を含んで構成されている。各電磁石46は、空芯又は磁性体の芯46aに対して巻線46bが設けられてソレノイドを構成している。巻線46bは回路ユニット47に接続されており、当該回路ユニット47により電磁石46に流す電流の向き及び大きさを制御することができる。これにより、
図7Bの左右に示すように、電磁石46の極を逆転させることができる。電磁石46がアレイ状に並べられ、
図7Cに示すように複数の電磁石46が直列に接続されて、磁石部45の一列又は一行が構成される。
【0053】
回路ユニット47が電磁石46に流す電流の向き及び大きさを制御することにより、
図7Dに示すように、磁石部45における第1の向きの磁界を発生する領域48aと第2の向きの磁界を発生する領域48bとの境界49を移動させることができる。
【0054】
このように、第3の実施形態では、第2の実施形態のように、磁石部15又はピン受入部材Mを移動することなく、回路ユニット47により電磁石46に流す電流を制御することにより、境界49を境界49に垂直な方向に往復させ、第2の実施形態と同様に、第1の向きの磁界を発生する領域48aと第2の向きの磁界を発生する領域48bとの境界49をピン受入部材Mの面に沿って移動させることができる。よって、ピン受入部材M上に載置した複数のピンPの少なくとも一部の姿勢が変化して複数のピンPの一部がそれぞれ対応する挿入部Hに挿入される。
【0055】
磁石部45における電磁石46の配置領域及び寸法、ピン受入部材Mと境界49との相対的なスライド速度などは、第2の実施形態に対応して必要に応じて変更して実施される。
【0056】
本発明の第3の実施形態は、ピン制御装置1においてピン挿入に関して適用可能なピン挿入装置のみならず、ピン制御装置1においてプレート部5の下方にも電磁石を配置し、残留ピン除去の際に電流を流すことで残留ピン除去に関して適用され得る。その際、磁化されている電磁石46に逆向きの磁化を与える向きの電流を短時間流すことで、脱磁させることが可能である。
【0057】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態として、ピン制御装置1においてピン挿入に関して適用可能なピン挿入装置について説明する。
図8Aは本発明の第4の実施形態に係るピン挿入装置の概要を示す平面図であり、
図8Bは本発明の第4の実施形態に係るピン挿入装置の概要を示す一部断面図であり、
図8Cは
図8Bの一部拡大図であり、
図8Dは
図8Bに示す磁石部の模式図である。
【0058】
第4の実施形態に係るピン挿入装置50は、支持部51と磁石部55とを備える。支持部51は、平板状の一枚のピン受入部材Mを支持し、当該ピン受入部材Mが複数の挿入部Hを有する。
【0059】
支持部51は、平板状の一枚の基板Sと平板状の一枚のピン受入部材Mとしてのガイド部材Gとを設置するための設置領域52を周状の周壁53によって囲むように構成されており、支持部51の上面側が開口しており、支持部51に基板Sを載置し、例えば周壁53に沿う円環状のスペーサー54を配置して、その上にピン受入部材Mが載置され、ピン受入部材Mに多数のピンPが投入されるように構成されている。ここで、
図8Aに示すように、支持部51で支持されるピン受入部材Mとしてのガイド部材Gは、複数の挿入部Hを備える。ガイド部材Gの下方であって、支持部51上には基板Sが載置される。基板Sは12インチなどの大口径の半導体基板であって、一つのチップを構成する基本単位Uが複数縦横に並べられている。その基本単位には表面に半田などの接合材Aが所定のパターンで設けられている。ガイド部材Gは、接合材Aの所定のパターンと同様に挿入部Hとしての貫通穴を備えており、ガイド部材Gの上に投入された多数のピンPが挿入部Hに挿入される。
【0060】
磁石部55は、ピン受入部材Mに沿ってスライド可能に配置される。磁石部55は、図示の形態では、第1の領域56、第2の領域57、第3の領域58及び第4の領域59がこの順番で連続して隣り合って構成されており、第1の領域56、第2の領域57、第3の領域58及び第4の領域59は、ピン受入部材Mに交差(好ましくは直交)するように磁化されており、すなわち挿入部Hの深さ方向(ピンPの挿入方向)に沿って、好ましくは平行に、磁化されており、第1の領域56での磁化と第3の領域58の磁化が、第2の領域57と第4の領域59の磁化と逆向きである。磁石部55の第1の領域56、第3の領域58はM1で示す矢印方向に磁化されており、磁石部55の第2の領域57、第4の領域59はM2で示す矢印方向に磁化されている。磁石部55における第1の領域56と第2の領域57とは境界60で接し、磁石部55における第2の領域57と第3の領域58とは境界61で接し、磁石部55における第3の領域58と第4の領域59とは境界62で接している。各領域同士の間に非磁性材が設けられていることを妨げない。
【0061】
磁石部55は、例えば移動手段63としてのXYステージに配置されることにより、X軸方向及びY軸方向にピン受入部材Mの面に沿って平行に複数方向へ動くことが可能であり、X軸方向、Y軸方向に同時に移動させることにより、磁石部3をXY平面内でX軸方向やY軸方向に対して斜めに移動させたり、円弧や楕円弧を描くように移動させたりすることもできる。移動手段63として直動のみならず円を描くようにローター上に設置されてもよい。これにより、磁石部65が、ピン受入部材Mとしてのガイド部材Gの面に沿って平行にスライドすることができる。
【0062】
このように磁石部55が移動手段63によりスライドすることにより、前述の各実施形態で詳細に説明したように、ピンPが挿入部Hに挿入され、ピンPが接合材A上に立設される。その後、ガイド部材Gと基板Sを取り出し、そのまま炉に入れて、必要に応じてガイド部材G上に図示しない錘を載せて一定時間加熱する。これにより、基板SとピンPとが接合材Aにより接合される。
【0063】
磁石部55の第1の領域56、第2の領域57、第3の領域58及び第4の領域59は、第1の領域56ないし第4の領域59の並びの方向に直交する方向の寸法を、複数の基本単位Uに跨るように設定することができる。移動手段63により、領域の並び方向に磁石部55を往復させることにより、複数の基本単位Uの上方にあるガイド部材Gの挿入部HにピンPを挿入することができるからである。
【0064】
[第5の実施形態]
本発明の第5の実施形態として、ピン制御装置1においてピン挿入に関して適用可能なピン挿入装置について説明する。
図9Aは本発明の第5の実施形態に係るピン挿入装置70を模式的に示す斜視図であり、
図9Bはピン挿入装置70の要部を示す図である。第5の実施形態に係るピン挿入装置70は、支持部71と磁石部72と移動手段73を備える。
【0065】
支持部71は、平板状のピン受入部材Mを支持し、当該ピン受入部材Mが複数の挿入部H(
図9Aには示さず。)を有する。移動手段73は、支持部71を一定方向に移動させる機構を備え、例えば
図9Aに示されるように無端形状の支持部71を両側の回転軸で張って回転させることにより、支持部71上のピン受入部材Mを一定方向に移動させることができる。ピン受入部材Mが支持部71の一端側から載せられて一定方向に移動し、他端側において押し出される。
【0066】
磁石部72が、ピン受入部材Mが載せられて移動する上側と戻り下側の支持部71で上下間に設けられている。磁石部72は、ピン受入部材Mの流れる方向に、第1の磁石72a、第2の磁石72b、第3の磁石72c、第4の磁石72d、第5の磁石72e、第6の磁石72f、第7の磁石72g及び第8の磁石72hがこの順で並んで配置されている。第1の磁石72aないし第7の磁石72gは、何れも、ピン受入部材Mと交差、好ましくは直交するように磁界を同時に発生し、第1の磁石72a、第3の磁石72c、第5の磁石72e及び第7の磁石72gは上向きに磁化されており、第2の磁石72b、第4の磁石72d、第6の磁石72f及び第8の磁石72hは下向きに磁化されている。このように、磁石部72は近接する磁石同士は逆向きに磁化されている。ここで、第1の磁石72aと第2の磁石72bとの第1の境界74a、第2の磁石72bと第3の磁石72cとの第2の境界74b、第3の磁石72cと第4の磁石72dとの第3の境界74c、第4の磁石72dと第5の磁石72eとの第4の境界74d、第5の磁石72eと第6の磁石72fとの第5の境界74e、第6の磁石72fと第7の磁石72gとの第6の境界74f、第7の磁石72gと第8の磁石72hとの第7の境界74gは、何れも、ピン受入部材Mに対向し得る。
【0067】
支持部71の上方において、ピン受入部材Mが載せられる領域を挟むように、ピン受入部材Mの移動方向に直交する側には、ガイドプレート75a,75bの対が配置されている。また、支持部71の上方において、少なくともピン受入部材Mが載置される上方には、ピン供給用ボックス76が設けられている。ピン供給用ボックス76からピンPがピン受入部材Mに向けて投入される。ガイドプレート75a,75bは、ピンPがピン受入部材M上から離脱しないように構成されている。なお、移動手段73により
図9Aの矢印方向にピン受入部材Mが移動するので、移動したピン受入部材MにもピンPが投入されるようにピン供給用ボックス76が配置されていてもよい。また、並んだ複数のピン受入部材M上でピンPがあたかも転がるように傾斜されていてもよい。
【0068】
ピン挿入装置70において、一枚のピン受入部材Mが移動手段73により
図9Bに示す矢印の方向に進む。それに伴って、ピン受入部材M上に載置された複数のピンPの一部が、第1の境界74aの前後で、直立状態から水平状態を経て直立状態となり、それにより、ピン受入部材Mの挿入部Hに挿入される。ピン供給用ボックス76から供給されてピン受入部材M上に載置された複数のピンPの残部は、磁石部72の上方で、ピン受入部材M上に載って移動手段73により移動する。以下、同様に、ピン受入部材M上に載置された複数のピンPの一部が、第2の境界74bから第7の境界74gの各境界の前後で、直立状態から水平状態を経て直立状態となり、それにより、ピン受入部材Mの挿入部Hに挿入される。また、複数のピンPの残部は、磁石部72の上方で、ピン受入部材M上に載って移動手段73により移動する。
【0069】
第5の実施形態では、第2の実施形態のように磁石部15を往復させていないため、タクトタイムが短縮される利点がある。第2の実施形態では磁石部15を往復してスライドさせているため、タクトタイムtが例えば5秒であるとすると、第5の実施形態では、ピン挿入部材Mが通過するのに同じく5秒かかるが、その間に7枚のピン挿入部材Mが搬出される。よって、タクトタイムが0.7秒程度に短縮され得る。このように、磁石部72に関し、複数の磁石を一方向に並べて複数の磁石がピン受入部材Mに交差、好ましくは直交する方向に磁界を発生させ、近接する磁石の磁界が互いに逆向きである形態にあっては、タクトタイムが、磁石部72の磁石の個数に対応して(より正確には磁石同士の境界が通過した回数に応じて)、短縮される。
【0070】
磁石部72に対するピン受入部材Mのスライド速度については第2の実施形態と同様に設定される。
【0071】
[第6の実施形態]
本発明の第6の実施形態として、ピン制御装置1において残留ピン除去に関して適用可能な残留ピン除去について説明する。
図10は本発明の第6の実施形態に係る残留ピン除去装置80による残留ピン除去工程を示す図である。
【0072】
前述した各実施形態により、STEP1-1で示すように、ピン受入部材M上に多量のピンPを投入し、磁石部82をピン受入部材Mの面に沿って相対的に移動し、ピンPが受入部材Mの挿入部Hに挿入される。図示では、一枚のピン受入部材Mが支持部81で支持されているが、複数のピン受入部材Mが一列に又は面上に並んでいてもよい。
【0073】
ピン受入部材Mの例えば上方には、挿入部HにピンPが挿入されている状態をカメラ83により撮影し、解析ユニット84でカメラ83からの画像データを解析し、ピン振込率を算出する。既定のパーセント、例えば100%に達していない場合には、画像データを解析し、どの挿入部HにピンPが挿入されていないかを求め、ピンPが挿入されていない挿入部Hの下方及びその近傍に、磁石部82における近接する磁石の境界82aを移動させ、近接する磁石の並び方向に、磁石部82をスライドさせて往復させる。これにより、再度、カメラ83による撮影、画像データの解析、ピン振込率を算出し、既定のパーセントに達しているかどうか判断する。既定のパーセントに達していない場合には、ピンPが挿入されていない挿入部Hの下方及びその近傍に、磁石部82における近接する磁石の境界82aを移動させ、近接する磁石の並び方向に、磁石部82をスライドさせて往復させることを再度行う。
【0074】
ピン振込率が既定のパーセントに達していることを確認すると、ピン受入部材M及び支持部81を移動させてプレート部85を近接するようにするか、予め、STEP1-2に示すように、第1の実施形態で示したようにピン受入部材Mに対してプレート部85が近接して配置されている状態にし、磁石部82をピン受入部材Mの下方からプレート部85の下方に移動させる。これにより、ピン受入部材M上に残っている残留ピンP1をピン受入部材Mからプレート部85に移動させる。
【0075】
カメラ83でピン受入部材Mを撮影し、解析ユニット84でピンP1がピン受入部材M上に残っていないかどうか確認する。
【0076】
ピン受入部材M上にピンP1が残留している場合には、STEP1-3に示すように、ピン受入部材Mの下方に、磁石部82による磁界よりも弱い磁界を発生させる別の磁石部86を配置して、ピン受入部材Mに対して送風機87で送風して、残留ピンP1を完全に除去する。別の磁石部86としては、例えばC字型の磁石を用いることにより、Cの隙間にだけ決まった方向の磁界ができるので、制御がしやすい。ここで、送風機87で送風する際に、別の磁石部86を用いず磁石部82を用いてもよい。別の磁石部86ないし磁石部82は、挿入部Hに磁界を作用させ、送風機87による送風により挿入部Hに挿入されたピンPが飛び出さないようにする。
【0077】
[ピン、ピン受入部材]
本明細書において、ピンが挿入される挿入部Hを有する平板状の部材を「ピン受入部材」Mと呼び、ピン受入部材として、或る形態では「基板」、具体的には、一又は複数の電子デバイスを有する「半導体基板」が挙げられる。別の形態では、複数の貫通穴を有する「ガイド部材」が挙げられ、この場合には、一又は複数の電子デバイスを構築した半導体基板から離隔してガイド部材を配置して、ガイド部材に複数のピンを載せてガイド部材の貫通穴にピンを挿入して半導体基板に立設する。ピン受入部材は、複数の挿入部としての貫通穴又は非貫通穴を所定のパターンで有する。ここで、基板は、ダイシングされてモールドなどの後工程により一つのチップとして構成される場合を含む。よって、基板には、一つのチップを構成する基本単位で複数並べられている場合を含む。挿入部に挿入されるピンはマイクロサイズを有しており、マイクロサイズとは1μm以上1000μm以下のサイズを想定する。ピンは、フランジ部を有しないピン(フランジレスピン)、頭部を有しないピン(ヘッドレスピン)が好ましく、例えば円柱形状などの棒状(柱状)であって、直径1μm以上1000μm以下、長さ1μm以上1000μm以下である。そのため、1本のピンは質量が極めて小さく、ピンのみの自重によりピンから外部に力を及ぼすことが難しい。ピンは磁石に作用する材質を含んでいる。
【0078】
[検証例1]
本発明のコンセプトに関する検証例を説明する。
図2に示すように、支持部11内の設置領域12に平板状のピン受入部材Mを配置した。ピン受入部材Mには中央部を囲むように矩形状に挿入部Hとしての穴が縦5列、横5列で設けられている。支持部11内の設置領域12内に、多数のピンPを投入した。支持部11の下側に磁石部15を配置して、ピン受入部材Mに沿って平行に往復でスライドした。往復回数は5回とした。ピンPは、直径0.2mm×長さ0.4mmの円柱状であった。ピン受入部材Mは、29mm×29mm×厚み0.5mmの板状を有しており、0.205mmの直径の挿入部Hとしての穴を有しており、穴の深さが0.35mmであり、穴の数は527個であった。投入したピンPの数は約7000本であった。
【0079】
検証例1で用いた磁石部15は、30mm×30mm×5mmの平板状の二枚の磁石を用意し、双方の端部で磁石による引力で結合して構成した。よって、磁石部は60mm×30mm×5mmの平板状を有する。
【0080】
図11は、使用した一枚の磁石について磁束密度を測定した結果を示す図である。測定には磁気プローブを使用した。2mm毎に磁気プローブの位置を変化させて、磁束密度を測定した。一枚の磁石90を仮想線で示してある。磁石90のX軸方向各端ではX方向の磁束が強く、磁石90のY軸方向各端ではY方向の磁束が強く、磁石90のX軸方向両端、Y軸方向各端を除く部分では、Z軸方向の磁束が強いことが分かった。
【0081】
磁石の極性については、
図12に示すように、棒磁石100の何れかの端を近づけ、引力、斥力の何れが作用するかにより判別した。二枚一組として連結して構成した磁石部の磁極を次のように確認した。磁石部15の上面の第1の領域16と第2の領域17をそれぞれ縦横3×3に区分けし、区分け部分に棒磁石の一方の極を近づけ、区分けした部分での磁力の強弱を確認した。
【0082】
図13は、使用した磁石の区分けした部分での磁力の強弱を模式的に示す図である。磁力は、第1の領域16と第2の領域17との境界を挟む両側の区分けした部分が最も大きく、次に、第1の領域16と第2の領域17の境界とは逆側の区分けした部分が大きい。第1の領域16と第2の領域17の境界と交差する一辺の中間部分が続いて大きく、第1の領域16及び第2の領域17の各領域の中央部分が最も小さかった。なお、第1の領域16、第2の領域17を構成する各磁石は同じであり、その磁石の周縁を形成する区分け部分では、磁力はほぼ等しく、磁石の中央では磁力が低かった。
【0083】
図14Aは、二枚の磁石を連結して磁石部15を構成した場合の振込結果に関して、ピンPが振り込まれたピン受入部材Mの像を示す図である。
図14Bは、一枚の磁石で磁石部15を構成した場合の振込結果に関して、ピンPが振り込まれたピン受入部材Mの像を示す図である。
図14Aに示すように、磁石部15を二枚の磁石を連結して構成した場合には、全ての挿入部HにピンPが振り込まれており、約5秒で完了した。一方、
図14Bに示すように、磁石部15を一枚の磁石で構成した場合、全ての挿入部HにピンPが振り込まれなかった。
図14Bの点線で示す丸の部分が振り込まれなかった箇所を示す。
【0084】
[比較例]
図15は、比較例を説明するための説明図である。
図15に示すように、支持部11を磁石部35と共に、θ軸回りに揺動させかつ振動させた。磁石部35は一枚の磁石とした。この場合、全ての挿入部H(図示せず)にピンPが挿入されるまで約15秒かかった。使用したピンP及びピン受入部材Mは、前述と同様である。
【0085】
検証例1によれば、隣り合う領域の磁石の極性を異ならせて二枚の平板状の磁石を連結して一体の磁石(磁石部)とし、一体の磁石を一方向にスライドすることにより、マイクロサイズのピンを短時間で挿入させることができることが分かった。これにより、比較例のように、揺動及び振動を与える必要がなく、磁石をスライドさせるという単純な機構により、ピンの振り込みが可能となる。よって、磁石部をスライドさせることにより、例えば12インチなどの寸法の大きな基板にも対応することができる。磁石部の大型化の必要がなく、設備面でのコストが削減することができる。
【0086】
[検証例2]
検証例2では、検証例1と同様に、ピンP、ピン受入部材M、支持部11を用い、また、磁石は同じものを用いた。
【0087】
ケース1では、前述の比較例と同様に、支持部11を磁石部35と共に、θ軸回りに揺動させかつ振動させた。一回のテストについて5秒揺動及び振動させた。このテストを15回繰り返した。各テストにおいて、ピンPが挿入されなかった穴の数をカウントした。その結果、全ての穴にピンが挿入されたテストは一回もなかった。2ないし17個の穴に挿入されなかった。挿入されない穴の数のバラつきも大きい。
【0088】
ケース2では、前述の検証例1と同様に、支持部11の下側に磁石部15を配置して、ピン受入部材Mに沿って平行に往復でスライドした。磁石部15として、30mm×30mm×5mmの磁石を一枚で構成した。一回のテストについて5秒で5往復させた。このテストを15回繰り返した。その結果、全ての穴にピンが挿入されたテストは6回であり、穴に挿入されなかったテストにおいて、1ないし6個の穴に挿入されなかった。
【0089】
ケース2の方が、ケース1と比べて、振込率が高いこと、挿入されない穴の数のバラつきが小さいことが分かった。このことから、揺動及び振動によるよりも、磁石をスライドさせる方が有効である。
【0090】
[検証例3]
検証例3では、検証例1と同様に、ピンP、ピン受入部材M、支持部11を用いて幾つかのケースにおいてパラメータを変化させて実験を行った。磁石部を構成する一又は複数の磁石それぞれは同じもしくは同程度の磁界を発生させるものを使用した。
【0091】
ケース3では、ケース2と比較するように、支持部11の下側に磁石部15を配置して、ピン受入部材Mに沿って平行に往復でスライドした。その際、磁石部15として、30mm×30mm×5mmの磁石を二枚連結して構成した。その際、隣り合う磁石は、ピン受入部材Mに交差する方向に磁界を生じるが、逆向きに磁界が生じるように連結した。一回のテストについて5秒で5往復させた。このテストを15回繰り返した。その結果、何れのテストにおいても、全ての穴にピンが挿入された。
【0092】
ケース4では、ケース2及びケース3と比較するように、磁石部15として、30mm×30mm×5mmの磁石を3枚連結して構成した。その際、隣り合う磁石は、ピン受入部材Mに交差する方向に磁界を生じるが、逆向きに磁界が生じるように連結した。一回のテストについて5秒で5往復させた。このテストを15回繰り返した。その結果、ピンPが挿入されないテストが3回あった。ピンPが挿入されない穴の数は1個、2個と僅かであった。
【0093】
ケース2ないしケース4の結果から、磁石部15を一枚の磁石で構成するよりも二枚、三枚の磁石で構成する方が、振込率が高いことが分かった。ケース4でのテストでは、ケース3でのテストと往復する回数、その時間が同じであるため、磁石部15の移動速度は、ケース3では400mm/秒であり、ケース4では600mm/秒であり、ケース4の方が磁石部15の移動速度が速くなる。これは、ピンPが磁石同士の境界での磁界の変化が速く、ピンPの姿勢が追従しないことによると考えられる。
【0094】
[検証例4]
ケース5では、磁石部15の移動速度の影響をなくすために、ケース4において、一回のテストについて6.5秒で5往復させた。このときの磁石部15の移動速度は400mm/秒であった。このテストを15回繰り返した。その結果、何れのテストにおいても、全ての穴にピンが挿入された。このことから、検証例3での考察が正しいことが証明された。
【0095】
ケース1ないしケース5までの各テスト結果を表1に示す。なお、Maxは成功率の最大値、Minは成功率の最小値、Aveは成功率の平均値、Sは成功率の標準偏差である。
【0096】
【0097】
[検証例5]
検証例5では、検証例1と同様に、ピンP、ピン受入部材M、支持部11を用いて、磁石部15を一枚の磁石で構成して行った。磁石部15の一枚の磁石の平面視での一辺の寸法を異ならせた。なお、磁石で生じる磁界の大きさは同一となるように磁石を選択した。磁石部15の移動速度は400mm/秒で一定となるようにした。
【0098】
ケース6では、磁石部15を構成する一枚の磁石を、15mm×15mm×5mmとした。移動速度は400mm/秒となるように、磁石部15を3秒で5往復した。
【0099】
ケース7では、磁石部15を構成する一枚の磁石を、30mm×30mm×5mmとした。移動速度は400mm/秒となるように、磁石部15を3.5秒で5往復した。
【0100】
ケース8では、磁石部15を構成する一枚の磁石を、60mm×60mm×5mmとした。移動速度は400mm/秒となるように、磁石部15を5秒で5往復した。
【0101】
ケース6ないしケース8までの各テスト結果を表2に示す。なお、Maxは成功率の最大値、Minは成功率の最小値、Aveは成功率の平均値、Sは成功率の標準偏差である。
【0102】
【0103】
ケース7、ケース8は、ケース6と比較して、ピンが穴に挿入されなかったテスト回数が少なく、また、ピン未挿入の穴の数も極端に少ない。
【0104】
[検証例6]
検証例6では、一枚の磁石のサイズをケース7での磁石、すなわち、30mm×30mm×5mmとし、これらの磁石を連結して実験を行った。検証例3の結果を踏まえ、隣り合う二枚の磁石は、ピン受入部材Mに交差する方向に磁界を生じるが、逆向きに磁界が生じるように連結した。
【0105】
ケース9では、磁石部15の移動速度が600mm/秒となるように、磁石部15を3秒で5往復した。
【0106】
ケース10では、磁石部15の移動速度が400mm/秒となるように、磁石部15を5秒で5往復した。
【0107】
ケース11では、磁石部15の移動速度が200mm/秒となるように、磁石部15を10秒で5往復した。
【0108】
ケース9ないしケース11までの各テスト結果を表3に示す。なお、Maxは成功率の最大値、Minは成功率の最小値、Aveは成功率の平均値、Sは成功率の標準偏差である。
【0109】
【0110】
ケース10、ケース11は、ケース9と比較して、何れのテストにおいても、全ての穴にピンが挿入された。
【0111】
[検証例7]
検証例7では、一枚の磁石のサイズをケース8での磁石、すなわち、60mm×60mm×5mmとし、これらの磁石を連結して実験を行った。検証例3の結果を踏まえ、隣り合う二枚の磁石は、ピン受入部材Mに交差する方向に磁界を生じるが、逆向きに磁界が生じるように連結した。
【0112】
ケース12では、磁石部15の移動速度が600mm/秒となるように、磁石部15を6秒で5往復した。
【0113】
ケース13では、磁石部15の移動速度が400mm/秒となるように、磁石部15を8秒で5往復した。
【0114】
ケース14では、磁石部15の移動速度が200mm/秒となるように、磁石部15を16秒で5往復した。
【0115】
ケース12ないしケース14までの各テスト結果を表4に示す。なお、Maxは成功率の最大値、Minは成功率の最小値、Aveは成功率の平均値、Sは成功率の標準偏差である。
【0116】
【0117】
ケース14は、ケース12、ケース13と比較して、何れのテストにおいても、全ての穴にピンが挿入された。
【0118】
検証例6及び検証例7の結課から、磁石のサイズに応じて磁石部15の移動速度を設定することにより、全ての穴にピンが挿入できることが分かった。
【0119】
[検証例8]
検証例8では、ケース10の条件において、ピン受入部材Mと磁石部15との距離を、1mm、3.5mm、4.5mm、5.5mm、6.5mm、7.5mmと変化させて、同様の実験を行った。その距離が1mm、3.5mmでは、15回のテストの全てにおいて、全ての穴にピンが挿入された。その距離が4.5mm、5.5mm、6.5mmと長くなると、1ないし4個の穴にピンが挿入されず、またそのような穴の数が増加し、そのような穴の標準偏差が0.000786、0.0022528、0.002484と大きくなった。これは、磁石部15による磁界の影響、特に、二枚の磁石の境界における湾曲した磁界の影響を受け難くなり、全ての穴にピンが挿入され難くなったと考えられる。その距離が7.5mmになると、15回のテスト全てにおいて、ピンが挿入されない穴が存在し、そのような穴の数も1ないし14と増加する。よって、ピン受入部材Mと磁石部15との距離を適切に維持することが必要であることが分かった。
【0120】
[検証例9]
検証例9は、前述の検証例とは異なり、磁石部を、X軸方向にもY軸方向にも平面的に並べて構成した。30mm×30mm×5mmの一枚の磁石を、X軸方向に4枚、Y軸方向に4枚並べて、合計16枚の磁石で構成した。何れの磁石も、ピン受入部材Mに直交するように磁界を生じるようにし、X軸方向、Y軸方向で隣り合う磁石は、磁界の向きが逆向きとなるように、磁石部15を構成した。
【0121】
ピン受入部材Mは、平面視29mm方形で厚み0.5mmの平板状の基板をX軸方向に3枚及びY軸方向に3枚並べ、合計9枚で構成した。各基板は、X軸方向に6行、Y軸方向に6列のリング状に穴を備えた。穴の径は0.205mmであり、穴の深さは0.35mmであり、穴の数は505個であった。
【0122】
ピン受入部材Mの面に対して磁石部を平行に配置して、ピン受入部材M上にピンPを約7000本投入し、ピン受入部材Mの面に沿ってスライドさせた。スライド速度は400mm/秒とし、6秒間スライドさせた。
【0123】
その結果、全ての穴にピンが挿入されていることを確認した。これにより、ピン受入部材Mに対して直交する磁界を生じる複数の磁石を用いて、隣り合う磁石での磁界の向きが逆になるように複数の磁石を一方向のみならずそれに直交する方向に面状に並べて、磁石部を構成することが有効であることが証明された。
【0124】
[検証例10]
図1に示すように、プレート部5を準備し、ピン受入部材Mを支持する支持部2に近接し、プレート部5とピン受入部材Mとが略同一面を形成するように配置し、ピン受入部材Mの下方からプレート部5の下方に磁石部3を移動させた。すると、ピン受入部材M上に存在する残留ピンがピン受入部材M上からプレート部5上に移動し、ピン受入部材M上から完全に除去できた。
【0125】
本発明の実施形態において、磁石部15、55などは、逆向きに磁界が生じる領域が一方向に並んでいる場合のみならず、平面視で、第1の領域の周りに第2の領域が設けられ、場合によっては、第2の領域の周りに第3の領域が設けられるような形態であってもよい。このような形態の場合、第2の領域は平面視で円環状や四角の環状などの無短形状となっている。
【符号の説明】
【0126】
1:ピン制御装置
2:支持部
3:磁石部
4:移動手段
5:プレート部
6:吸引装置
7:吸引管
8:側壁
10,50:ピン挿入装置
11,51:支持部
12,52:設置領域
13,53:周壁
15,55:磁石部
16,56:第1の領域
16a:第1の磁石
17,57:第2の領域
17a:第2の磁石
18,60,61,62:境界
19,63:移動手段
45:磁石部
46:電磁石
47:回路ユニット
48a:第1の向きの磁界を発生する領域
48b:第2の向きの磁界を発生する領域
49:境界
54:スペーサー
58:第3の領域
59:第4の領域
70:ピン挿入装置
71:支持部
72:磁石部
72a:第1の磁石
72b:第2の磁石
72c:第3の磁石
72d:第4の磁石
72e:第5の磁石
72f:第6の磁石
72g:第7の磁石
72h:第8の磁石
73:移動手段
74a:第1の境界
74b:第2の境界
74c:第3の境界
74d:第4の境界
74e:第5の境界
74f:第6の境界
74g:第7の境界
75a,75b:ガイドプレート
76:ピン供給用ボックス
80:残留ピン除去装置
81:支持部
82:磁石部
83:カメラ
84:解析ユニット
82a:近接する磁石の境界
85:プレート部
86:別の磁石部
87:送風機
G:ガイド部材
H:挿入部
M:ピン受入部材
P:ピン
S:基板