(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】感震ブレーカ
(51)【国際特許分類】
H01H 35/14 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
H01H35/14 B
(21)【出願番号】P 2020024225
(22)【出願日】2020-02-17
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000203623
【氏名又は名称】多摩岡産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】316018627
【氏名又は名称】一般社団法人住環境創造研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】岡 哲義
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/135400(WO,A1)
【文献】特開昭58-16426(JP,A)
【文献】特開2004-296421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 35/14
H02B 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料から成る上プレートと下プレートを両者の間に所定の間隔を設けて上下に互いに平行かつ水平に配置し、前記下プレートに、少なくとも一部が導電性材料から成るウェイト部材を揺動可能に吊下支持し、
所定の震度以上の地震によって前記ウェイト部材が揺動し、該ウェイト部材の導電性部分が前記上プレートに接触すると、前記上プレートと前記下プレートとを電気的に導通させて擬似漏電を発生させ、この擬似漏電を検知した漏電ブレーカを落として電源を遮断する感震ブレーカであって、
前記上プレートと前記下プレートを、非導電性材料から成るベース部材に差し込んでこれらを該ベース部材に固定
すると共に、配線パターンが印刷されたプリント配線基板を前記ベース部材に差し込んでこれを固定し、
前記上プレートと前記下プレートからそれぞれ延出する端子片を前記プリント配線基板の一対の金属端子にそれぞれ差し込んで両者を電気的に導通させるとともに、前記上プレートと前記下プレートを前記プリント配線基板にも固定したことを特徴とする感震ブレーカ。
【請求項2】
前記上プレートと前記下プレートからそれぞれ延びる一対の前記端子片は、互いに平行に配置され、これらの端子片の間に、両者の幅を広げるための拡開部材を介装したことを特徴とする請求項1に記載の感震ブレーカ。
【請求項3】
前記ウェイト部材は、前記下プレート上に載置される導電性部材から成る接触部材と、該接触部材から下方に一体かつ垂直に延びて前記下プレートを貫通する連結部材と、該連結部材の下端に螺着されるウェイトによって構成され、
前記連結部材と前記ウェイトとの螺着寸法が一定値に設定されていることを特徴とする請求項
1又は2に記載の感震ブレーカ。
【請求項4】
前記プリント配線基板にインジケータ用のLEDランプを実装したことを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の感震ブレーカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の震度以上の地震によって擬似漏電を発生させて漏電ブレーカを落とすことによって電源を遮断する感震ブレーカに関する。
【背景技術】
【0002】
地震発生時の電気火災の防止策の1つとして、従来、例えば特許文献1に示すように、所定の震度以上の地震が発生すると、主電源ブレーカのレバーを動作させて当該主電源ブレーカを落とすことによって電源を遮断する錘落球方式を採用したブレーカ遮断装置が知られている。
【0003】
しかしながら、上記ブレーカ遮断装置は、主電源ブレーカが格納されている分電盤の構造や設置場所によっては、取り付けができない場合がある他、素人が簡単に取り付けできるものではない。また、この種のブレーカ遮断装置においては、レバーの動作の硬さなどによる動作上のバラツキのために地震発生時に確実に作動して電源を遮断することができるとは限らず、その作動の信頼性に欠けるという問題がある。
【0004】
また、地震発生時の電気火災の発生防止策の他の手段として、主電源ブレーカに併設された電気安全装置の漏電ブレーカに感震機能を付加し、地震発生時に漏電ブレーカを落として全電源を遮断する分電制御盤や付属装置が知られている。
【0005】
上記のような電気安全装置の漏電ブレーカに感震機能を付加した装置は、特許文献1において提案された錘落球方式によるブレーカ遮断装置に比べて、地震発生時の作動の確実性の点において優れているものと考えられる。
【0006】
ところが、上記装置は、感震センサやスイッチング回路を用いているために高価であるとともに、その設置には専門業者による電気工事を必要とするために設置コストが高くなり、このために普及が進んでいないのが実情である。
【0007】
そこで、本出願人は、構造が簡単で安価であるとともに、専門業者によることなく簡単に設置が可能でありながら、所定の震度以上の地震によって擬似漏電を発生させ、この擬似漏電を検知した漏電ブレーカを落として電源を確実に遮断することができる感震ブレーカを先に提案した(特許文献2参照)。この感震ブレーカは、導電性部材から成る上プレートと下プレートを両者の間に所定の間隔を設けて上下に互いに平行かつ水平に配置し、下プレートに、少なくとも一部が導電性部材から成るウェイト部材を揺動可能に吊下支持して構成されている。この感震ブレーカによれば、所定の震度以上の地震によってウェイト部材が揺動し、その導電性部分が上プレートに接触すると、上プレートと下プレートとを電気的に導通させて擬似漏電を発生させ、この擬似漏電を検知した漏電ブレーカを落として電源を遮断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2004-296421号公報
【文献】国際公開第2019/135400号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2において提案された感震ブレーカにおいては、上プレートや下プレートなどの部品の取り付けをネジによって行っているため、ネジによる取付箇所が多く、組み付けが面倒で多くの工数を要し、結果的に製品コストが高くなるという問題がある。
【0010】
また、当該感震ブレーカの作動の確実性を高めるためには、上プレートと下プレートとの間隔を所定の値に設定する必要があるが、この間隔の設定方法として、上プレートと下プレートの少なくとも一方のビス挿通孔を長孔とし、この長孔が形成された上プレートまたは下プレートの取付位置を上下に調整していたため、その調整作業が面倒で多くの工数を要するという問題もあった。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、各所部品を差し込みによって短時間で簡単かつ正確に組み付けることができ、組付工数を削減してコストダウンを図るとともに、動作に高い信頼性を確保することができる感震ブレーカを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は、導電性材料から成る上プレート(20)と下プレート(30)を両者の間に所定の間隔(H)を設けて上下に互いに平行かつ水平に配置し、前記下プレート(30)に、少なくとも一部が導電性材料から成るウェイト部材(40)を揺動可能に吊下支持し、所定の震度以上の地震によって前記ウェイト部材(40)が揺動し、該ウェイト部材(40)の導電性部分(41)が前記上プレート(20)に接触すると、前記上プレート(20)と前記下プレート(30)とを電気的に導通させて擬似漏電を発生させ、この擬似漏電を検知した漏電ブレーカ(103)を落として電源を遮断する感震ブレーカ(1)であって、前記上プレート(20)と前記下プレート(30)を、非導電性材料から成るベース部材(10)に差し込んでこれらを該ベース部材(10)に固定したことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、上プレートと下プレートをベース部材に差し込んでこれらを該ベース部材に固定するようにしたため、ネジなどの締結具による固定を廃して上プレートと下プレートをベース部材にワンタッチで簡単に固定することができ、組付工数を削減して当該感震ブレーカの製造コストを低く抑えることができる。また、上プレートと下プレートは、差し込みによってベース部材に高精度に固定されるため、これらの上プレートと下プレートとの間の上下方向の間隔が設計値に正確に設定される。このため、所定の震度以上の地震が発生すると、ウェイト部材が揺動してその導電性部分が上プレートに確実に接触して擬似漏電を発生させることとなり、上プレートと下プレートとの間の間隔の調整を要することなく、当該感震ブレーカの動作に高い信頼性を確保することができる。
【0014】
上記感震ブレーカ(1)において、配線パターン(50a~50d)が印刷されたプリント配線基板(50)を前記ベース部材(10)に差し込んでこれを固定し、前記上プレート(20)と前記下プレート(30)からそれぞれ延出する端子片(22,32)を前記プリント配線基板(50)の一対の金属端子(51)にそれぞれ差し込んで両者を電気的に導通させるとともに、前記上プレート(20)と前記下プレート(30)を前記プリント配線基板(50)にも固定してもよい。
【0015】
上記構成によれば、上プレートと下プレートをベース部材に差し込んでこれらを固定すると同時に、これらの上プレートと下プレートの各端子片がプリント配線基板の各金属端子にもそれぞれ差し込まれて両者が電気的に導通するため、各端子片と金属端子との電気的な接続を簡単に行うことができ、当該感震ブレーカの組立工数が削減される。また、上プレートと下プレートがこれらの端子片を介してプリント配線基板によっても固定されるため、上プレートと下プレートがより一層確実に固定されることとなる。
【0016】
また、上記感震ブレーカ(1)において、前記上プレート(20)と前記下プレート(30)からそれぞれ延びる一対の前記端子片(22,32)は、互いに平行に配置され、これらの端子片(22,32)の間に、両者の幅を広げるための拡開部材(70)を介装することが望ましい。
【0017】
上記構成によれば、上プレートと下プレートの各端子片間の幅寸法が拡開部材によって左右方向外側へと広げられるため、これらの端子片がプリント配線基板の金属端子に確実に接触して両者の電気的な導通が常に安定してなされる。
【0018】
そして、前記感震ブレーカ(1)において、前記ウェイト部材(40)は、前記下プレート(30)上に載置される導電性部材から成る接触部材(41)と、該接触部材(41)から下方に一体かつ垂直に延びて前記下プレート(30)を貫通する連結部材(42)と、該連結部材(42)の下端に螺着されるウェイト(43)によって構成され、前記連結部材(42)と前記ウェイト(43)との螺着寸法が一定値に設定されていることが望ましい。
【0019】
上記構成によれば、地震が発生すると、ウェイト部材がその接触部材の下プレートとの接触部を中心として揺動するが、該ウェイト部材の連結部材とウェイトとの螺着寸法が一定値に保たれることによって、製造される全ての感震ブレーカにおいてウェイト部材の揺動にバラツキが生じない。このため、各感震ブレーカが所定の震度以上の地震によって確実に動作して電源を遮断することができる。
【0020】
また、前記感震ブレーカ(1)において、前記プリント配線基板(50)にインジケータ用のLEDランプ(60)を実装することが望ましい。
【0021】
上記構成によれば、LEDランプがプリント配線基板に予め実装されているため、プリント配線基板をベース部材に組み込んだ後にLEDランプをプリント配線基板に接続する作業を省略することができ、当該感震ブレーカの組付工数をさらに削減することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、各種部品を差し込みによって短時間で簡単かつ正確に組み付けることができ、組付工数を削減して感震ブレーカのコストダウンを図るとともに、該感震ブレーカの動作に高い信頼性を確保することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図3】本発明に係る感震ブレーカ要部の斜視図である。
【
図4】本発明に係る感震ブレーカ要部の分解斜視図である。
【
図6】ウェイト部材の一部を破断した正面図である。
【
図7】本発明に係る感震ブレーカが設置された建物内の電気配線の構成を示す回路図である。
【
図8】本発明に係る感震ブレーカの差込プラグとこれを差し込むためのアース付コンセントを示す図である。
【
図9】本発明に係る感震ブレーカが地震による縦揺れによって作動する状態を示す正面図である。
【
図10】本発明に係る感震ブレーカが地震による横揺れによって作動する状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0025】
図1は本発明に係る感震ブレーカの正面図、
図2は
図1のA-A線断面図、
図3は同感震ブレーカ要部の斜視図、
図4は同感震ブレーカ要部の分解斜視図、
図5はプリント配線基板の平面図、
図6はウェイト部材の一部を破断した正面図である。
【0026】
本発明に係る感震ブレーカ1は、
図1に示すように、非導電性樹脂によって一体成形されたベース部材10に、導電性金属から成る上プレート20と下プレート30を両者の間に所定の間隔Hを設けて上下に互いに平行かつ水平に配置し、下プレート30に、ウェイト部材40を揺動可能に吊下支持して構成されている。また、この感震ブレーカ1においては、ベース部材10の上端部には、矩形プレート状のプリント配線基板50が水平に取り付けられている。
【0027】
上記ベース部材10は、
図3及び
図4に示すように、矩形プレート状の本体部11を備えており、この本体部11の左右に突設された取付ブラケット12の各先端部には円孔状のビス孔12aがそれぞれ形成されている。また、このベース部材10の本体部11の上端部と高さ方向中間部及び下端部には、左右一対の矩形プレート状の支柱部13,14,15が正面側(
図1の手前側)に向かってそれぞれ一体に突設されている。
【0028】
ベース部材10において、一対の支柱部13は、本体部11の上端部の左右端に互いに平行に突設されており、
図4に示すように、これらの支柱部13の相対向する内側の面には、断面矩形の係合溝(差込溝)13aが長手方向(手前側から奥側に沿う方向)にそれぞれ形成されている。そして、これらの係合溝13aにプリント配線基板50の左右両端縁を嵌め込み、該プリント配線基板50を左右の係合溝13aに沿って正面側から奥側へスライドさせながら押し込むと、
図1及び
図3に示すように、該プリント配線基板50が左右一対の支柱部13に差し込まれてベース部材10に固定される。この結果、プリント配線基板50がベース部材10の上端部に水平を保った状態で配置される。このように、プリント配線基板50が左右一対の支柱部13の各係合溝13aにそれぞれ差し込まれてベース部材10に固定されるため、ビスなどの締結具を用いることなく、プリント配線基板50をベース部材10にワンタッチで簡単に取り付けることができる。なお、
図4に示すように、ベース部材10の本体部11上の左右の支柱部13の内側近傍には、差し込まれたプリント配線基板50を受けるためのブロック状の受け部16がそれぞれ一体に突設されている。
【0029】
ここで、プリント配線基板50には、
図5に示すように、種々の配線パターン50a~50dがプリント印刷されているが、該プリント配線基板50の正面側(
図5の下側)の右端部には、切欠き溝状の一対の金属端子51が平行に形成されている。また、このプリント配線基板50の正面側中央部には、インジケータ用のLEDランプ60が実装されている。なお、プリント配線基板50に形成された一対の金属端子51は、プリント配線基板50に形成された切欠き状の係合溝の周囲を金メッキすることによって構成されている。
【0030】
また、ベース部材10において、左右一対の前記支柱部14は、
図4に示すように、本体部11の上下方向中間部における左寄りの位置に互いに平行に立設されており、これら支柱部14の相対向する内側の面の上下には、断面矩形の係合溝14a,14bが長手方向(手前側から奥側に沿う方向)にそれぞれ形成されている。そして、これらの上下2組の左右一対の係合溝14a,14bには、上プレート20と下プレート30がそれぞれ差し込まれて固定されている。なお、
図4に示すように、ベース部材10の本体部11上の左右の支柱部14の内側部分には、左右の支柱部14に差し込まれた上プレート20と下プレート30を受けるためのブロック状の受け部17がそれぞれ一体に突設されている。
【0031】
ここで、上プレート20と下プレート30は、
図4に示すように、矩形平板状の本体部21,31と、各本体部21,31の正面側の幅方向一端から一体に延出した後に直角に折り曲げられて上方に向かって延びる細長い端子片22,32をそれぞれ備えている。なお、上プレート20の本体部21の片隅には円孔21aが形成されており、下プレート30の本体部31の中心部には円孔31aが形成されている。
【0032】
そして、上プレート20と下プレート30は、これらの各本体部21,31の左右端縁をベース部材10に立設された左右一対の支柱部14にそれぞれ形成された係合溝14a,14bに嵌め込み、これらの上プレート20と下プレート30を左右の係合溝14a,14bに沿ってそれぞれ正面側から奥側へとスライドさせながら押し込むと、
図1及び
図3に示すように、これらの上プレート20と下プレート30が左右一対の支柱部14に差し込まれて固定される。また、このようにして上プレート20と下プレート30をベース部材10の一対の支柱部14に正面側から挿し込んで固定すると、これと同時に上プレート20と下プレート30の各端子片22,32がプリント配線基板50に形成された左右一対の金属端子51に差し込まれて両者がそれぞれ電気的に導通するとともに、上プレート20と下プレート30がプリント配線基板50にも差し込まれて固定される。
【0033】
ところで、上プレート20と下プレート30の各端子片22,32がプリント配線基板50の左右一対の金属端子51に単に差し込まれるだけでは、両端子片22,32と金属端子51との接触が必ずしも常に確実に行われるとは限らない。このため、本実施の形態では、
図1に示すように、上プレート20と下プレート30からそれぞれ上方に向かって互いに平行に延びる左右一対の端子片22,32の間に、両端子片22,32の左右幅を広げるための拡開部材70を介装するようにしている。このような拡開部材70によって左右一対の端子片22,32の左右幅を広げると、各端子片22,32の上端がプリント配線基板50の左右の金属端子51にそれぞれ確実に接触するため、これらの端子片22,32と金属端子51との電気的な導通が確実になされる。
【0034】
なお、上プレート20と下プレート30を差し込みによってベース部材10に固定する前に、これらの上プレート20と下プレート30の各端子片22,32を左右の外側に撓ませておけば、拡開部材70を設けることなく、両端子片22,32とプリント配線基板50の左右の金属端子51とを確実に接触させることができ、両者の電気的な導通を確実なものとすることができる。
【0035】
以上のように、上プレート20と下プレート30は、ベース部材10に一体に立設された左右一対の支柱部14の上下にそれぞれ形成された左右一対の係合溝14a,14bに差し込まれてベース部材10に固定されるため、これらの上プレート20と下プレート30をベース部材10にビスなどの締結具を用いることなくワンタッチで簡単に固定することができる。
【0036】
また、樹脂成形品であるベース部材10に立設された左右一対の支柱部14には、上プレート20と下プレート30が差し込まれる左右一対の上下の係合溝14a,14bが高精度に形成されているため、これらの係合溝14a,14bに差し込まれて固定される上プレート20と下プレート30との間の上下の間隔H(
図1参照)が予め設定された設計値に高精度に保たれる。
【0037】
また、ベース部材10において、左右一対の前記支柱部15は、
図4に示すように、本体部11の下端部の右側に偏位した位置に一体に突設されており、これらの支柱部15は、プリント配線基板50の金属端子51(
図5参照)から下方に向かって延びる2本の配線コード81,82(
図1参照)を通してこれらをガイドするためのガイド部を構成している。
【0038】
ところで、プリント配線基板50と上プレート20及び下プレート30が差し込みによって固定されたベース部材10は、その正面側から被せられる矩形ボックス状のカバー90(
図1及び
図2に鎖線にて示す)によって覆われるが、
図3及び
図4に示すように、ベース部材10の本体部11の左右側面の上下2箇所には、カバー90に形成された不図示の係合溝に係合するための係合突起11a(
図3及び
図4には一方のみ図示)がそれぞれ突設されている。したがって、カバー90は、ベース部材10の本体部11に合わせてこれをベース部材10に押し付けることによって、当該カバー90に形成された不図示の係合溝にベース部材10の本体部11に形成された係合突起11aが係合するため、ベース部材10にワンタッチで簡単に取り付けられて該ベース部材10を正面側から覆う。なお、
図1に示すように、カバー90の上端の左右方向中央には円孔90aが形成されており、この円孔90aには、プリント配線基板50に実装されたLEDランプ60が臨んでいる。
【0039】
前記ウェイト部材40は、
図1及び
図6に示すように、下プレート30上に載置される導電性金属から成る接触部材41と、該接触部材41から下方に一体かつ垂直に延びて下プレート30の円孔31a(
図4及び
図6参照)を貫通する連結部材42と、該連結部材42の下端に螺着されるウェイト43によって構成されている。
【0040】
上記接触部材41は、上端の円板状の接触用金属板41Aと、この接触用金属板41Aの下方に一体に形成された円柱状の台座部材41Bとで構成されており、台座部材41Bからは丸棒状の連結部材42が下方に向かって一体かつ垂直に延びている。ここで、この接触部材41においては、接触用金属板41Aの外径φD1が最も大きく設定されており、台座部材41Bの外径φD2は、接触用金属板41Aの外径φD1よりも小さくかつ下プレート30に形成された円孔31aの内径φdよりも大きく設定されている(φd<φD2<φD1)。また、連結部材42の外径φD3は、下プレート30の円孔31aの内径φdよりも小さく設定されている(φD3<φd)。
【0041】
そして、
図6に示すように、連結部材42は、下プレート30の円孔31aを貫通して該下プレート30の下方へと垂直に延びており、その下端には円柱状のウェイト43が螺着されている。したがって、ウェイト部材40は、接触部材41の台座部材41Bが下プレート30上に載置された状態で該下プレート30によって吊下支持されている。この場合、下プレート30の円孔31aの内径φdは、該円孔31aを上下に貫通する連結部材42の外径φD3よりも大きく設定されているため(φd>φD3)、ウェイト部材40は、下プレート30に揺動可能に吊下支持されている。なお、ウェイト43は、その材質が必ずしも導電性金属である必要はない。
【0042】
ところで、本実施の形態では、
図6に示すように、ウェイト43の中心部に形成されたネジ孔43aの深さhは、このネジ孔43aに螺合する連結部材42の螺合長さが所定の設計値になるように所定の値に厳密に管理されている。この結果、ウェイト部材40の全長Lも所定の設計値となるよう厳密に管理されている。
【0043】
而して、以上のように構成された感震ブレーカ1は、
図1及び
図2に示すように、ベース部材10の左右に突設された取付ブラケット12のビス孔12a(
図3及び
図4参照)に挿通するビス18によって建物内の縦壁Wにプリント配線基板50が上になるようにして取り付けられるが、次に、この感震ブレーカ1が取り付けられた建物内の電気配線の構成を
図7及び
図8に基づいて以下に説明する。
【0044】
図7は本発明に係る感震ブレーカが取り付けられた建物内の電気配線の構成を示す回路図、
図8は本発明に係る感震ブレーカの差込プラグとこれを差し込むためのアース付コンセントを示す図である。
【0045】
図7に示すように、建物内に設置された分電盤(配電盤)100には、1つの主幹ブレーカ101と、複数の分岐ブレーカ102と、これらの主幹ブレーカ101と分岐ブレーカ102との間に配置された漏電ブレーカ(漏電遮断器)103が配設されている。
【0046】
上記主幹ブレーカ101は、電路を開閉する接点と接点とを開閉制御する電子回路(共に不図示)とを内蔵した回路遮断器であって、電源線110に接続されている。また、分岐ブレーカ102は、配線104を介して主幹ブレーカ101に接続されるとともに、アース付コンセント150を介して複数の不図示の負荷機器に接続されている。そして、漏電ブレーカ103は、主幹ブレーカ101と分岐ブレーカ102との間の配線104上に設けられており、下流側での漏電を検知した場合に即座に電源を遮断する機能を有している。
【0047】
図8に示すように、感震ブレーカ1のプリント配線基板50から延びる2本の配線コード81,82の先端部には差込プラグ130とアースプラグ140がそれぞれ取り付けられている。ここで、差込プラグ130は、アース付コンセント150に差し込まれ、アースプラグ140は、アース付コンセント150の接地されたアース端子151に取り付けられている。
【0048】
また、
図8に示すように、感震ブレーカ1とアース付コンセント150とを電気的に接続する差込プラグ130に備えられた接地側の差込端子の栓刃131は、非導電性樹脂などの材料で構成されており、非接地側の差込端子の栓刃132は、導電性金属などの材料で構成されている。なお、接地側の差込端子の栓刃131を導電金属で構成し、その表面に電気絶縁性を有する塗料を塗布したり、表面に絶縁性シートが貼付する構成を採用してもよい。
【0049】
そして、感震ブレーカ1の下プレート30は、差込プラグ130の非接地側の差込端子の栓刃132を介してアース付コンセント150の非接地側極端子152に接続され、上プレート20は、アースプラグ140を介してアース付コンセント150のアース端子151に接続される。また、アース付コンセント150の接地側極端子(差込孔)153に差し込まれる接地側の栓刃131は、何れにも電気的に接続しておらず、ダミー端子を構成している。
【0050】
ここで、差込プラグ130の接地側差込端子の栓刃131と非接地側差込端子の栓刃132とは、その外形寸法が互いに異なっている。具体的には、接地側接続端子の栓刃131と非接地側差込端子の栓刃132の寸法は、それぞれアース付コンセント150の一方の差込孔153の寸法と他方の差込孔152の寸法とに合わせた寸法(長さ寸法)に設定されている。ここで、アース付コンセント150の差込孔は、接地側の差込孔153と非接地側の差込孔152とで長さ寸法が異なっているため、差込プラグ130をアース付コンセント150に差し込む際、接地側差込端子の栓刃131と非接地側差込端子の栓刃132とを逆に差し込んでしまうという不具合の発生が防がれる。なお、アース付コンセントに限らず、コンセントの2つの差込孔の形状が互いに異なっているのは、製品規格によって決められていることによるものである。
【0051】
また、
図7に示すように、差込プラグ130内の非接地側差込端子の栓刃132から下プレート30に繋がる配線コード81上には、抵抗器160が設けられている。この抵抗器160は、感震ブレーカ1の作動によって漏電ブレーカ103が落ちて電源が遮断された場合、その後に漏電ブレーカ103を復帰させるなどして電源が回復したときに、アース付コンセント150の非接地側極端子152からコード配線81を介して下プレート30側に過大な電流が流れないようにするためのものである。このような抵抗器160の作用によって、電源が復旧したときに感震ブレーカ1の各部からスパーク(火花)が発生することがなく、スパークによる火災の発生が防がれる。なお、抵抗器160は、コード配線81上であればその取付位置には制限がなく、例えば、差込プラグ130内に抵抗器160を取り付けることもできる。なお、感震ブレーカ1の差込プラグ130をアース付コンセント150に差し込んだ状態では、感震ブレーカ1に設けられたLEDランプ60は常に点灯しており、このLEDランプ60の点灯によって当該感震ブレーカ1が動作可能状態であることを知ることができる。
【0052】
次に、感震ブレーカ1の作用を
図9及び
図10に基づいて以下に説明する。
【0053】
図9は感震ブレーカが地震による縦揺れによって作動する状態を示す正面図、
図10は感震ブレーカが地震による横揺れによって作動する状態を示す正面図である。
【0054】
感震ブレーカ1においては、地震が発生すると振動によってウェイト部材40が上下動或いは揺動するが、本実施の形態では、地震の大きさが震度5以上である場合には、ウェイト部材40の接触部材41が上プレート20に接触して上プレート20と下プレート30とを電気的に導通させて擬似漏電を発生させる。ここで、例えば、地震発生時の初期にはP波による縦揺れが発生し、その後にS波による横揺れが発生するが、震度5以上の地震のP波による縦揺れによって
図9に示すようにウェイト部材40が上下動する場合、このウェイト部材40の接触部材41(接触用金属板41A)が上プレート20に接触する。すると、上プレート20と下プレート30とがウェイト部材40を介して電気的に導通するため、感震ブレーカ1に擬似漏電が発生する。
【0055】
また、震度5以上の地震のS波による横揺れによって
図10に示すようにウェイト部材40が下プレート30を中心として揺動すると、このウェイト部材40の接触部材41(接触用金属板41A)が上プレート20に接触するため、上プレート20と下プレート30とがウェイト部材40を介して電気的に導通する。このため、感震ブレーカ1に擬似漏電が発生する。その他、縦揺れと横揺れが複合して発生する場合であっても、ウェイト部材40が揺動し、その接触部材41(接触用金属板41A)が上プレート20に接触するため、感震ブレーカ1に擬似漏電が発生する。
【0056】
上述のように、感震ブレーカ1に擬似漏電が発生すると、分電盤100に設置された漏電部ブレーカ103(
図7参照)が擬似漏電を検出して落ちるため、建物内の全ての電源が即座に遮断され、電気火災の発生が未然に防がれる。
【0057】
以上において、本実施の形態に係る感震ブレーカ1においては、上プレート20と下プレート30をベース部材10に差し込んで該ベース部材10に固定するようにしたため、ネジなどの締結具による固定を廃して上プレート20と下プレート30をベース部材10にワンタッチで簡単に固定することができ、組付工数を削減して当該感震ブレーカ1の製造コストを低く抑えることができる。
【0058】
また、上プレート20と下プレート30は、差し込みによってベース部材10に高精度に固定されるため、これらの上プレート20と下プレート30との間の上下方向の間隔H(
図1参照)が設計値に正確に設定される。このため、所定の震度(本実施の形態では震度5)以上の地震が発生すると、ウェイト部材40が揺動してその導電性部分である接触部材41が上プレート20に確実に接触して擬似漏電を発生させることとなり、上プレート20と下プレート30との間の間隔Hの調整を要することなく、当該感震ブレーカ1の動作に高い信頼性が確保される。
【0059】
そして、本実施の形態においては、プリント配線基板50をベース部材10に差し込んでこれを固定し、上プレート20と下プレート30からそれぞれ延出する端子片22,32をプリント配線基板50の一対の金属端子51にそれぞれ差し込んで両者を電気的に導通させるとともに、上プレート20と下プレート30をプリント配線基板50にも固定するようにしたため、以下のような効果が得られる。
【0060】
すなわち、上プレート20と下プレート30をベース部材20に差し込んでこれらを固定すると同時に、これらの上プレート20と下プレート30の各端子片22,32がプリント配線基板50の各金属端子51にもそれぞれ差し込まれて両者が電気的に導通するため、各端子片22,32と金属端子51との電気的な接続を簡単に行うことができ、当該感震ブレーカ1の組立工数が削減される。また、上プレート20と下プレート30がこれらの端子片22,32を介してプリント配線基板50によっても固定されるため、上プレート20と下プレート30がより一層確実に固定されることとなる。
【0061】
また、本実施の形態では、上プレート20と下プレート30からそれぞれ平行に延びる一対の端子片22,32の間に、両者の幅を広げるための拡開部材70を介装したため、これらの端子片22,32間の幅寸法が拡開部材70によって左右方向外側へと広げられ、これらの端子片22,32がプリント配線基板50の金属端子51に確実に接触して両者の電気的な導通が常に安定してなされる。
【0062】
さらに、本実施の形態では、ウェイト部材40の連結部材42とウェイト43との螺着寸法を一定値に設定するようにしたため、製造される全ての感震ブレーカ1においてウェイト部材40の揺動にバラツキが生じない。このため、各感震ブレーカ1が所定の震度(本実施の形態では震度5)以上の地震によって確実に動作して電源を遮断することができる。
【0063】
そして、本実施の形態では、プリント配線基板50にインジケータ用のLEDランプ60を予め実装したため、プリント配線基板50をベース部材10に組み込んだ後にLEDランプ60をプリント配線基板50に接続する作業を省略することができ、当該感震ブレーカ1の組付工数をさらに削減することができるという効果が得られる。
【0064】
なお、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 感震ブレーカ
10 ベース部材
13~15 ベース部材の支柱部
13a ベース部材の係合溝
14a,14b ベース部材の係合溝
20 上プレート
22 上プレートの端子片
30 下プレート
32 下プレートの端子片
40 ウェイト部材
41 接触部材
41A 接触用金属板
41B 台座部材
42 連結部材
43 ウェイト
50 プリント配線基板
50a~50d プリント配線基板の配線パターン
51 プリント配線基板の金属端子
60 LEDランプ
70 拡開部材
81,82 配線コード
90 カバー
100 分電盤
103 漏電ブレーカ
H 上プレートと下プレートとの間隔