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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】飛翔体
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/62 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
B64G1/62
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019090565
(22)【出願日】2019-05-13
(65)【公開番号】P2020185846
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】515238769
【氏名又は名称】株式会社ALE
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】五味 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕之
(72)【発明者】
【氏名】川田 尚平
(72)【発明者】
【氏名】蒲池 康
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-536294(JP,A)
【文献】特開2014-076763(JP,A)
【文献】特開2013-147798(JP,A)
【文献】特開2011-207401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維及びマトリックス樹脂を有するパネルを複数組み合わせて形成される筐体と、
前記パネルの面の一部に設けられ、少なくとも前記強化繊維よりも融点が低い低融点部材と、
を備え、
前記低融点部材が融解及び昇華のいずれかの変化をすることで前記筐体が崩壊可能とされており、
前記筐体の少なくとも一部に空隙部が形成され、
前記低融点部材は、前記空隙部の全体を覆い、かつ前記空隙部の周囲の前記パネルの面の一部と接着剤により接着固定され、
前記空隙部は、前記筐体の内外を連通するように形成されることを特徴とする飛翔体。
【請求項2】
前記筐体は多面体形状に形成され、
前記空隙部は、前記筐体における隣り合う面の境界部分である少なくともひとつの辺に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の飛翔体。
【請求項3】
前記筐体は多面体形状に形成され、
前記空隙部は、前記筐体の少なくともひとつの面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の飛翔体。
【請求項4】
前記筐体は多面体形状に形成され、
前記空隙部は、前記筐体の少なくともひとつの角部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の飛翔体。
【請求項5】
前記パネルは、前記筐体の外側に突出する突出部を有することを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の飛翔体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛翔体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、飛翔体の前部から側部に亘ってアブレータが配置され、アブレータは樹脂(マトリックス樹脂)を繊維マトリックス(強化繊維)に含侵させて成る飛翔体の構成が記載されている。アブレータは、大気圏再突入時に昇華することによりアブレーションガスを発生する。また、アブレータは、強化繊維の密度が前部から側部に向かって段階的又は連続的に高くなるアブレータ領域を少なくとも一部に有する。特許文献1に記載の技術によれば、アブレータ領域により、発生したアブレーションガスの側部への移動が制限され、アブレーションガスが前方に噴出される。これにより、飛翔体前部の熱防護性を向上できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5638271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、大気圏再突入後の落下時に周辺領域への影響を少なくするため、落下時における飛翔体の衝突エネルギーを小さくすることが要求される。衝突エネルギーを小さくする方法として、大気圏再突入時の空力加熱により飛翔体を焼却させる方法が知られている。このため、従来、飛翔体の筐体の材料として、融点及び沸点が低いアルミニウム等の金属材料が用いられている。
アルミニウムは比較的軽量な金属として知られているが、近年、打ち上げコスト低減のためさらなる軽量化が要求されている。
【0005】
そこで、本発明は、軽量化及び大気圏再突入時における焼却性の向上を両立した飛翔体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載の発明に係る飛翔体(例えば、第1実施形態における飛翔体1)は、強化繊維(例えば、第1実施形態における強化繊維21)及びマトリックス樹脂(例えば、第1実施形態におけるマトリックス樹脂23)を有するパネル(例えば、第1実施形態におけるパネル11)を複数組み合わせて形成される筐体(例えば、第1実施形態における筐体2)と、前記パネルの面の一部に設けられ、少なくとも前記強化繊維よりも融点が低い低融点部材(例えば、第1実施形態における低融点部材3)と、を備え、前記低融点部材が融解及び昇華のいずれかの変化をすることで前記筐体が崩壊可能とされており、前記筐体の少なくとも一部に空隙部(例えば、第1実施形態における空隙部13)が形成され、前記低融点部材は、前記空隙部の全体を覆い、かつ前記空隙部の周囲の前記パネルの面の一部と接着剤により接着固定され、前記空隙部は、前記筐体の内外を連通するように形成されることを特徴としている。
【0008】
また、請求項に記載の発明に係る飛翔体は、前記筐体は多面体形状に形成され、前記空隙部は、前記筐体における隣り合う面の境界部分である少なくともひとつの辺に設けられていることを特徴としている。
【0009】
また、請求項に記載の発明に係る飛翔体は、前記筐体は多面体形状に形成され、前記空隙部は、前記筐体の少なくともひとつの面に設けられていることを特徴としている。
【0010】
また、請求項に記載の発明に係る飛翔体は、前記筐体は多面体形状に形成され、前記空隙部は、前記筐体の少なくともひとつの角部に設けられていることを特徴としている。
【0011】
また、請求項に記載の発明に係る飛翔体は、前記低融点部材は繊維状であり、前記低融点部材が前記パネルに含有されることにより、前記パネルと一体に設けられていることを特徴としている。
【0012】
また、請求項に記載の発明に係る飛翔体は、前記低融点部材は、前記マトリックス樹脂に含有されることにより、前記パネルと一体に設けられていることを特徴としている。
【0013】
また、請求項に記載の発明に係る飛翔体は、前記パネルは、前記筐体の外側に突出する突出部(例えば、第6実施形態における突出部15)を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に記載の飛翔体によれば、筐体は、強化繊維及びマトリックス樹脂を有するパネルを複数組み合わせて形成されるので、筐体の強度を向上できるとともに、アルミニウム等の金属材料により筐体が形成される場合と比較して筐体の重量を軽量化できる。一方、飛翔体は低融点部材を有するので、例えば大気圏再突入時の空力加熱により先に低融点部材が融解又は昇華することで、低融点部材を起点として筐体を崩壊させることができる。これにより、アルミニウムと比較して融点及び沸点が高い強化繊維等の材料により形成された筐体を確実に崩壊させ、大気圏再突入時の焼却性を向上できる。また、例えば筐体の内部に内部構造が搭載された場合、筐体を崩壊させることにより内部構造と筐体とを効率よく焼却できる。
したがって、軽量化及び大気圏再突入時における焼却性の向上を両立した飛翔体を提供できる。
また、筐体は空隙部を有し、低融点部材は空隙部の少なくとも一部を覆うので、大気圏再突入時に低融点部材が融解又は昇華することにより、筐体の空隙部が外部に露出する。これにより、空隙部の端部が昇華されることにより空隙部が拡大し、空隙部から筐体の内部に高圧の空気が入り込むとともに空力加熱により内部構造が昇華し、内部構造が昇華した際の圧力と流入した空気の圧力とにより筐体の内側から外側に向かって筐体を崩壊させる力が作用する。よって、筐体を容易に崩壊させることができる。
【0016】
本発明の請求項に記載の飛翔体によれば、筐体は多面体形状に形成され、空隙部は筐体の少なくともひとつの辺に設けられているので、筐体の崩壊は、辺部分から開始される。よって、筐体の辺部分を起点として筐体を確実に崩壊させることができる。
【0017】
本発明の請求項に記載の飛翔体によれば、筐体は多面体形状に形成され、空隙部は筐体の少なくともひとつの面に設けられているので、筐体の崩壊は、面部分から開始される。よって、筐体の面部分を起点として筐体を確実に崩壊させることができる。
【0018】
本発明の請求項に記載の飛翔体によれば、筐体は多面体形状に形成され、空隙部は筐体の少なくともひとつの角部に設けられているので、筐体の崩壊は、角部から開始される。よって、筐体の角部を起点として筐体を確実に崩壊させることができる。
【0019】
本発明の請求項に記載の飛翔体によれば、低融点部材は、繊維状の低融点部材がパネルに含有されることによりパネルと一体に設けられているので、別途に低融点部材を筐体に配置する必要がない。よって、例えば低融点部材と筐体とを接合するための接着剤や締結部材等が不要となり、筐体を簡素化できる。また、筐体に空隙部を設ける必要がないので、製造時の作業性を向上できる。
さらに、繊維状の低融点部材をパネルの広い領域に亘って配置することができるので、パネルの一部の領域に低融点部材を配置する場合と比較して、大気圏再突入時にパネルをより細かく崩壊させることができる。よって、大気圏再突入時における焼却性をより一層向上した飛翔体とすることができる。
【0020】
本発明の請求項に記載の飛翔体によれば、低融点部材はマトリックス樹脂に含有されることによりパネルと一体に設けられている。この構成によれば、例えばパネルの全体に低融点部材を分布させて含有させることができる。これにより、大気圏再突入時の空力加熱によりパネル全体を容易に崩壊させることができる。よって、大気圏再突入時における焼却性をより一層向上した飛翔体とすることができる。
【0021】
本発明の請求項に記載の飛翔体によれば、パネルは突出部を有するので、筐体の外側面のうち突出部の近傍には、空気の澱み点が発生しやすい。このような澱み点では空気は高温となるので、パネルが突出部を有しない場合と比較して筐体を高温加熱できる。よって、筐体を構成するパネルをより確実に焼却できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態に係る飛翔体の外観斜視図。
図2図1のII-II線に沿う断面図。
図3図2のIII部拡大図。
図4】第1実施形態に係る飛翔体の崩壊中の様子を示す説明図。
図5】第2実施形態に係る飛翔体の外観斜視図。
図6図5のVI-VI線に沿う断面図。
図7】第3実施形態に係る飛翔体の外観斜視図。
図8図7のVIII-VIII線に沿う断面図。
図9図7のIX-IX線に沿う断面図。
図10】第4実施形態に係る飛翔体の外観斜視図。
図11】第5実施形態に係るパネルの正面図。
図12】第5実施形態に係るパネルの拡大図。
図13】第6実施形態に係る飛翔体の外観斜視図。
図14】第6実施形態に係る突出部の断面図。
図15】第6実施形態の第1変形例に係る突出部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0024】
(第1実施形態)
(飛翔体)
図1は、第1実施形態に係る飛翔体1の外観斜視図である。
飛翔体1は、例えば宇宙空間に打ち上げられて各種の実験等を行った後に大気圏に再突入して昇華する人工衛星等である。
飛翔体1は、筐体2と、低融点部材3と、を備える。
【0025】
(筐体)
筐体2は、複数のパネル11と、空隙部13と、を有する。筐体2は、複数のパネル11を組み合わせて多面体形状に形成されている。具体的に、本実施形態では、筐体2は、6枚のパネル11を不図示のボルト等の締結部材や接着剤等により互いに接合することにより直方体形状に形成されている。筐体2は、内部に空間を有する中空状に形成されている。筐体2の内部には、例えば実験用の装置等である内部構造(不図示)が収容されている。
【0026】
パネル11は、強化繊維21と、マトリックス樹脂23と、を有する。
強化繊維21は、例えば炭素繊維である。マトリックス樹脂23は、例えば熱硬化性の樹脂である。
パネル11は、所定方向に配置された複数の強化繊維21間にマトリックス樹脂23を浸潤させて形成された、いわゆる炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastic)である。
【0027】
空隙部13は、少なくとも筐体2の一部の領域に設けられている。本実施形態において、空隙部13は、直方体形状におけるひとつの面を構成するパネル11の中央部に設けられている。空隙部13は、例えばパネル11を板厚方向に貫通する孔である。空隙部13は、空隙部13が設けられたパネル11の正面から見て矩形状に形成されている。
【0028】
(低融点部材)
低融点部材3は、少なくとも強化繊維21よりも融点の低い材料で形成されている。具体的に、低融点部材3はアルミニウムにより形成されている。なお、低融点部材3は、マグネシウム等、アルミニウム以外の低融点の金属材料により形成されてもよい。低融点部材3は、筐体2における空隙部13の少なくとも一部を覆っている。本実施形態において、低融点部材3は、空隙部13の全体を覆っている。
【0029】
図2は、図1のII-II線に沿う断面図である。図3は、図2のIII部拡大図である。
図2に示すように、低融点部材3は、筐体2の内側から筐体2に取り付けられている。図3に示すように、低融点部材3は、筐体2を構成するパネル11の内側の面に接着剤4により接着固定されている。低融点部材3の一部は、空隙部13を介して筐体2の外部に露出している。
【0030】
(飛翔体の作用、効果)
次に、飛翔体1の作用、効果について説明する。
飛翔体1は、宇宙空間に打ち上げられた後、地上へ向かって大気圏に再突入する。大気圏再突入時、飛翔体1には、空気が高圧で圧縮されることにより空力加熱が生じる。この空力加熱により、先ず、低融点部材3が溶融又は昇華する。
図4は、第1実施形態に係る飛翔体1の崩壊中の様子を示す説明図である。
低融点部材3が溶融又は昇華した後、空隙部13の端部が昇華されることにより空隙部13が拡大し、空隙部13から筐体2の内部へ高圧の空気が流入する。筐体2の内部へ流入した空気は内部構造を昇華させ、内部構造が昇華した際の圧力と流入した空気の圧力とにより筐体2を内側から外側へ向かって押圧し、筐体2を崩壊させる。
さらに、崩壊した筐体2は、空力加熱により焼却されて大気圏で焼失又は細かく分解される。また、筐体2が崩壊することにより、筐体2の内部に収容された内部構造等が空気中に露出する。これにより、筐体及び内部構造等が効率よく焼却される。
【0031】
本実施形態の飛翔体1によれば、筐体2は、強化繊維21及びマトリックス樹脂23を有するパネル11を複数組み合わせて形成されるので、筐体2の強度を向上できるとともに、アルミニウム等の金属材料により筐体2が形成される場合と比較して筐体2の重量を軽量化できる。一方、飛翔体1は低融点部材3を有するので、例えば大気圏再突入時の空力加熱により先に低融点部材3が融解又は昇華することで、低融点部材3を起点として筐体2を崩壊させることができる。これにより、アルミニウムと比較して融点及び沸点が高い強化繊維21等の材料により形成された筐体2を確実に崩壊させ、大気圏再突入時の焼却性を向上できる。また、例えば筐体2の内部に内部構造等が搭載された場合、筐体2を崩壊させることにより内部構造等と筐体2とを効率よく焼却できる。
したがって、軽量化及び大気圏再突入時における焼却性の向上を両立した飛翔体1を提供できる。
【0032】
筐体2は空隙部13を有し、低融点部材3は空隙部13の少なくとも一部を覆うので、大気圏再突入時に低融点部材3が融解又は昇華することにより、筐体2の空隙部13が外部に露出する。これにより、空隙部13の端部が昇華されることにより空隙部13が拡大し、空隙部13から筐体2の内部に高圧の空気が入り込むとともに空力加熱により内部構造が昇華し、内部構造が昇華した際の圧力と流入した空気の圧力とにより筐体2の内側から外側に向かって筐体2を崩壊させる力が作用する。よって、筐体2を容易に崩壊させることができる。
【0033】
筐体2は直方体形状(多面体形状)に形成され、空隙部13は筐体2の少なくともひとつの面に設けられているので、筐体2の崩壊は、面部分から開始される。よって、筐体2の面部分を起点として筐体2を確実に崩壊させることができる。
【0034】
次に、本発明の第2実施形態から第6実施形態について図5から図15を用いて説明する。以下の説明において、上述した第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して適宜説明を省略する。また、図5から図15に記載された以外の構成に係る符号については、適宜図1から図4を参照されたい。
【0035】
(第2実施形態)
本発明に係る第2実施形態について説明する。図5は、第2実施形態に係る飛翔体1の外観斜視図である。図6は、図5のVI-VI線に沿う断面図である。本実施形態では、低融点部材3が筐体2の辺部分に設けられる点において上述した実施形態と相違している。
【0036】
図5に示すように、本実施形態において、空隙部13は、筐体2の直方体形状における隣り合うパネル11の境界部分であるひとつの辺に設けられている。低融点部材3は、辺部分に形成された空隙部13を覆っている。
図6に示すように、低融点部材3は、筐体2の外側から筐体2に取り付けられている。具体的に、低融点部材3は、隣り合う2枚のパネル11にそれぞれ沿う断面V字状に形成されている。低融点部材3は、パネル11の外側を向く面に接着剤4により接着固定されている。低融点部材3は、筐体2の外部に露出している。
【0037】
本実施形態の構成によれば、筐体2は直方体形状(多面体形状)に形成され、空隙部13は筐体2の少なくともひとつの辺に設けられているので、筐体2の崩壊は、辺部分から開始される。よって、筐体2の辺部分を起点として筐体2を確実に崩壊させることができる。
【0038】
(第3実施形態)
本発明に係る第3実施形態について説明する。図7は、第3実施形態に係る飛翔体1の外観斜視図である。図8は、図7のVIII-VIII線に沿う断面図である。図9は、図7のIX-IX線に沿う断面図である。本実施形態では、低融点部材3が筐体2の辺部分及び面部分にそれぞれ設けられる点において上述した実施形態と相違している。
【0039】
図7に示すように、本実施形態において、空隙部13は、筐体2の直方体形状における隣り合うパネル11の境界部分であるひとつの辺と、この辺を挟んで隣り合うパネル11の面と、にそれぞれ設けられている。低融点部材3は、各空隙部13を覆っている。
図8に示すように、辺部分において、低融点部材3は、筐体2の内側から筐体2に取り付けられている。具体的に、低融点部材3は、隣り合う2枚のパネル11にそれぞれ沿う断面V字状に形成されている。低融点部材3は、2枚のパネル11の内側の面に接着剤4によりそれぞれ接着固定されている。
図9に示すように、面部分において、低融点部材3は、筐体2の内側から筐体2に取り付けられている。具体的に、低融点部材3は、空隙部13が形成された2枚のパネル11にそれぞれ設けられている。低融点部材3は、2枚のパネル11の内側の面に接着剤4によりそれぞれ接着固定されている。
【0040】
本実施形態の構成によれば、筐体2の崩壊は、空隙部13が形成された辺部分及び面部分から開始される。よって、筐体2の辺部分及び面部分を起点として筐体2を確実に崩壊させることができる。
【0041】
(第4実施形態)
本発明に係る第4実施形態について説明する。図10は、第4実施形態に係る飛翔体1の外観斜視図である。本実施形態では、低融点部材3が筐体2の角部に設けられる点において上述した実施形態と相違している。
【0042】
本実施形態において、空隙部13は、筐体2の直方体形状における角部に設けられている。低融点部材3は、角部に形成された空隙部13を覆っている。
低融点部材3は、筐体2の外側から筐体2に取り付けられている。具体的に、低融点部材3は、隣り合う3枚のパネル11の外側を向く面に接着剤4によりそれぞれ接着固定されている。低融点部材3は、筐体2の外部に露出している。
【0043】
本実施形態の構成によれば、筐体2は直方体形状(多面体形状)に形成され、空隙部13は筐体2の少なくともひとつの角部に設けられているので、筐体2の崩壊は、角部から開始される。よって、筐体2の角部を起点として筐体2を確実に崩壊させることができる。
【0044】
(第5実施形態)
本発明に係る第5実施形態について説明する。図11は、第5実施形態に係るパネル11の正面図である。図12は、第5実施形態に係るパネル11の拡大図である。本実施形態では、低融点部材3がパネル11と一体に設けられている点において上述した実施形態と相違している。
【0045】
図11に示すように、本実施形態において、低融点部材3は、パネル11に含有されることによりパネル11と一体に設けられている。具体的に、低融点部材3は、繊維状に形成された繊維状低融点部材31と、粒子状に形成された粒子状低融点部材32と、を有する。
図12に示すように、繊維状低融点部材31は、強化繊維21と並んで配置されている。繊維状低融点部材31は、複数の強化繊維21と複数の繊維状低融点部材31との間にマトリックス樹脂23が浸潤されることにより、パネル11に含有されている。
粒子状低融点部材32は、マトリックス樹脂23に含有されている。粒子状低融点部材32は、例えばマトリックス樹脂23に添加される添加剤である。
なお、低融点部材3は、繊維状低融点部材31及び粒子状低融点部材32のいずれか一方のみを有していてもよい。
【0046】
本実施形態の構成によれば、低融点部材3は、繊維状の低融点部材3(繊維状低融点部材31)がパネル11に含有されることによりパネル11と一体に設けられているので、別途に低融点部材3を筐体2に配置する必要がない。よって、例えば低融点部材3と筐体2とを接合するための接着剤や締結部材等が不要となり、筐体2を簡素化できる。また、筐体2に空隙部13を設ける必要がないので、製造時の作業性を向上できる。
さらに、繊維状の低融点部材3をパネル11の広い領域に亘って配置することができるので、パネル11の一部の領域に低融点部材3を配置する場合と比較して、大気圏再突入時にパネル11をより細かく崩壊させることができる。よって、大気圏再突入時における焼却性をより一層向上した飛翔体1とすることができる。
【0047】
また、低融点部材3(粒子状低融点部材32)はマトリックス樹脂23に含有されることによりパネル11と一体に設けられている。この構成によれば、例えばパネル11の全体に低融点部材3を分布させて含有させることができる。これにより、大気圏再突入時の空力加熱によりパネル11全体を容易に崩壊させることができる。よって、大気圏再突入時における焼却性をより一層向上した飛翔体1とすることができる。
【0048】
(第6実施形態)
本発明に係る第6実施形態について説明する。図13は、第6実施形態に係る飛翔体1の外観斜視図である。図14は、第6実施形態に係る突出部15の断面図である。本実施形態では、パネル11に突出部15が設けられる点において上述した実施形態と相違している。
【0049】
図13に示すように、パネル11は、矩形状に分割された複数の分割領域14を有する。本実施形態において、パネル11には、9個の分割領域14が互いに間隔をあけて等間隔に配置されている。分割領域14内には、突出部15が形成されている。
図14に示すように、突出部15は、パネル11の外側を向く面に設けられている。突出部15は、筐体2の外側に向かって突出している。具体的に、突出部15は、パネル11の表面に固定された複数の粒子体27である。粒子体27は、球形状に形成されている。
なお、分割領域14の個数及び配置は上述の実施形態に限定されない。また、突出部15は、パネル11の全面に亘って設けられていてもよい。
【0050】
本実施形態の構成によれば、パネル11は突出部15を有するので、筐体2の外側面のうち突出部15の近傍には、空気の澱み点が発生しやすい。このような澱み点では空気は高温となるので、パネル11が突出部15を有しない場合と比較して筐体2を高温加熱できる。
ここで、例えばロケットフェアリングや大型衛星、高圧ガスタンク等のように大型の筐体に適用する場合、パネル11の板厚を増加させる必要がある。このような厚みの大きいパネル11に低融点部材3を含有した場合、大気圏再突入時にパネル11の温度を十分に上昇させることができず、低融点部材3を十分に加熱できないおそれがある。これにより、筐体2を確実に崩壊できないおそれがある。
本実施形態の構成によれば、パネル11が突出部15を有さない場合と比較して、大気圏再突入時のパネル11をより高温で加熱できる。よって、筐体2を構成するパネル11をより確実に焼却できる。
【0051】
(第6実施形態の第1変形例)
本発明に係る第6実施形態の第1変形例について説明する。図15は、第6実施形態の第1変形例に係る突出部15の断面図である。本実施形態では、粒子体27が多角形状に形成されている点において上述した実施形態と相違している。
【0052】
本実施形態において、突出部15を構成する粒子体27は、断面形状が多角形状となるように形成されている。
【0053】
本実施形態の構成によれば、粒子体27が球形状に形成される場合と比較して、粒子体27のノーズ半径を小さくできる。ここで、大気圏再突入時のパネル11の加熱率は、粒子体27のノーズ半径が小さいほど大きい。よって、粒子体27の断面形状を多角形状とすることにより、粒子体27が球形状に形成される場合と比較して、突出部15のノーズ半径を小さくし、パネル11の加熱率を向上できる。したがって、厚みの大きいパネル11を用いた場合であっても、筐体2を確実に崩壊及び焼却できる。
【0054】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、低融点部材3は、筐体2の内側から筐体2に取り付けられてもよく、筐体2の外側から筐体2に取り付けられてもよい。また、低融点部材3の取付位置や個数は上述した実施形態に限られない。
低融点部材3は、例えば鉄でもよく、オーガニック繊維やガラス繊維、バイオ繊維等を含んだ樹脂部材等でもよい。但し、加工しやすく、かつ鉄と比較して融点が低く融解又は昇華しやすい点で、マグネシウムやアルミニウム等を用いた本実施形態の構成は優位性がある。
【0055】
低融点部材3及びパネル11は、リベットやボルト等(不図示)により機械的に結合されていてもよい。
突出部はパネル11の一部に設けられていてもよい。突出部15は、低融点部材3の表面に形成されていてもよい。
筐体2は、例えば四面体形状や八面体形状、三角柱形状等、直方体形状以外の多面体形状に形成されてもよい。
また、筐体2は、例えば高圧ガスタンク等の筐体としても適用可能である。
【0056】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した実施形態及び変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 飛翔体
2 筐体
3 低融点部材
11 パネル
13 空隙部
15 突出部
21 強化繊維
23 マトリックス樹脂
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