IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田中央研究所の特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ 独立行政法人産業技術総合研究所の特許一覧

<>
  • 特許-アンモニアを燃料とする内燃機関 図1
  • 特許-アンモニアを燃料とする内燃機関 図2
  • 特許-アンモニアを燃料とする内燃機関 図3
  • 特許-アンモニアを燃料とする内燃機関 図4
  • 特許-アンモニアを燃料とする内燃機関 図5
  • 特許-アンモニアを燃料とする内燃機関 図6
  • 特許-アンモニアを燃料とする内燃機関 図7
  • 特許-アンモニアを燃料とする内燃機関 図8
  • 特許-アンモニアを燃料とする内燃機関 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】アンモニアを燃料とする内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F02M 31/20 20060101AFI20240403BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
F02M31/20 C
F02M37/00 P
F02M37/00 341Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020074535
(22)【出願日】2020-04-20
(65)【公開番号】P2021173166
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大友 光彰
(72)【発明者】
【氏名】春日 俊相
(72)【発明者】
【氏名】范 勇
【審査官】藤田 和英
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-163908(JP,A)
【文献】特開2005-146964(JP,A)
【文献】特開2010-174692(JP,A)
【文献】実開昭62-148767(JP,U)
【文献】特開2012-122369(JP,A)
【文献】国際公開第2010/082359(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/136130(WO,A1)
【文献】特開2012-233655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 31/20
F02M 37/00
F02M 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体のアンモニアを貯留するタンクと、前記タンクから流入したアンモニアを昇圧する昇圧装置と、前記昇圧装置によって昇圧したアンモニアを内燃機関の燃焼室又は前記燃焼室に接続する吸気通路へ噴射するノズルと、前記タンクから前記昇圧装置を経由して前記ノズルまでアンモニアを供給する燃料配管と、を備え、
前記燃料配管の外側に前記タンク又は前記燃料配管から分流したアンモニアを流すことによって、アンモニアの蒸発による気化潜熱を利用して前記燃料配管を外側から冷却し、
前記燃料配管の外側に前記タンク又は前記燃料配管から分流したアンモニアを流す冷却用外管を備え、
前記燃料配管及び前記冷却用外管が二重管構造となっており、又は、前記冷却用外管が前記燃料配管の周囲に巻き付けられており、
前記燃料配管にバルブが設けられ、前記燃料配管にはアンモニアを漏出させる連通孔が前記バルブより下流側に形成され、前記連通孔から漏出したアンモニアは多孔体を経由して前記冷却用外管に流入することを特徴とするアンモニアを燃料とする内燃機関。
【請求項2】
請求項に記載のアンモニアを燃料とする内燃機関であって、
前記燃料配管の冷却に用いたアンモニアを前記燃焼室に流し込んで燃焼させることを特徴とするアンモニアを燃料とする内燃機関。
【請求項3】
請求項に記載のアンモニアを燃料とする内燃機関であって、
前記燃料配管の冷却に用いたアンモニアを前記タンクに戻すことを特徴とするアンモニアを燃料とする内燃機関。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載のアンモニアを燃料とする内燃機関であって、
前記内燃機関がレシプロエンジンであることを特徴とするアンモニアを燃料とする内燃機関。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載のアンモニアを燃料とする内燃機関であって、
前記内燃機関がガスタービンエンジンであることを特徴とするアンモニアを燃料とする内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアを燃料とする内燃機関、特に燃料配管の冷却に関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニアを燃料とするガスタービンエンジンが特許文献1に開示され、アンモニアを燃料とするレシプロエンジンが特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-191507号公報
【文献】特開2019-178623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アンモニアは蒸気圧が高く、加圧された条件では液体として存在するが、圧力が低下すると容易に気化する特徴がある。そのため、ノズルから液体のアンモニアを噴射して燃焼室へ供給しようとしても、燃料配管の途中でアンモニアが加熱されると気化してしまうことがある。特に燃焼室の近くでは温度が高くなり、気化が促進され易い。このように燃料の一部が気化してしまうと、ノズルから噴射する燃料流量が安定しなかったり、ノズルから噴射される燃料の噴霧形態が変化して空気との混合が悪化するという問題が生じることがある。そのため、燃料のアンモニアを常に液体に保つことが重要である。
【0005】
燃料のアンモニアを液体に保つ一つの方法として、常に燃料の圧力を高くしておく方法がある。しかし、圧力を高くする方法のみによって燃料を液体に保とうとすると、燃料の温度が上昇した際にノズルから燃料を噴射するために求められる値よりも燃料配管の内部の圧力を過度に高くしなければならない場合がある。その場合、昇圧能力の高い昇圧装置を備える必要があり、コストがかかる。また、燃料配管の内部の圧力を高くすると、単位時間あたりにノズルを流れる燃料量が増加するため、燃料の噴射量の調整が難しくなるといった問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、燃料の冷却のために複雑な装置を用いることなく、また、ノズルから燃料を噴射するために求められる値よりも燃料配管の内部の圧力を過度に高くすることなく、ノズルから噴射するアンモニアを液体に保つことができる内燃機関を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るアンモニアを燃料とする内燃機関は、液体のアンモニアを貯留するタンクと、前記タンクから流入したアンモニアを昇圧する昇圧装置と、前記昇圧装置によって昇圧したアンモニアを内燃機関の燃焼室又は前記燃焼室に接続する吸気通路へ噴射するノズルと、前記タンクから前記昇圧装置を経由して前記ノズルまでアンモニアを供給する燃料配管と、を備え、前記燃料配管の外側に前記タンク又は前記燃料配管から分流したアンモニアを流すことによって、アンモニアの蒸発による気化潜熱を利用して前記燃料配管を外側から冷却することを特徴とする。
【0008】
アンモニアは気化潜熱が非常に大きいため、このように燃料配管の外側にタンク又は燃料配管から分流したアンモニアを流して、アンモニアの蒸発による気化潜熱を利用して前記燃料配管を外側から冷却することによって、燃料の冷却のために複雑な装置を用いることなく、また、ノズルから燃料を噴射するために求められる値よりも燃料配管の内部の圧力を過度に高くすることなく、ノズルから噴射するアンモニアを液体に保つことができる。
【0009】
本発明に係るアンモニアを燃料とする内燃機関の一態様において、前記燃料配管の外側に前記タンク又は前記燃料配管から分流したアンモニアを流す冷却用外管を備え、前記燃料配管及び前記冷却用外管が二重管構造となっていてもよい。
【0010】
この態様によれば、二重管構造の外側の冷却用外管にタンク又は燃料配管から分流したアンモニアを流すことによって、アンモニアの蒸発による気化潜熱を利用して燃料配管を外側から冷却するため、燃料の冷却のために複雑な装置を用いることなく、また、ノズルから燃料を噴射するために求められる値よりも燃料配管の内部の圧力を過度に高くすることなく、ノズルから噴射するアンモニアを液体に保つことができる。
【0011】
本発明に係るアンモニアを燃料とする内燃機関の一態様において、前記燃料配管の外側に前記タンク又は前記燃料配管から分流したアンモニアを流す冷却用外管を備え、前記冷却用外管は前記燃料配管の周囲に巻き付けられていてもよい。
【0012】
この態様によれば、燃料配管の周囲に巻き付けた冷却用外管にタンク又は燃料配管から分流したアンモニアを流すことによって、アンモニアの蒸発による気化潜熱を利用して燃料配管を外側から冷却するため、燃料の冷却のために複雑な装置を用いることなく、また、ノズルから燃料を噴射するために求められる値よりも燃料配管の内部の圧力を過度に高くすることなく、ノズルから噴射するアンモニアを液体に保つことができる。
【0013】
本発明に係るアンモニアを燃料とする内燃機関は、前記燃料配管にバルブが設けられ、前記燃料配管にはアンモニアを漏出させる連通孔が前記バルブより下流側に形成され、前記連通孔から漏出したアンモニアは多孔体を経由して前記冷却用外管に流入させることを特徴とする。
【0014】
このように燃料配管から冷却用外管へアンモニアを分流する経路にバルブを設けず、バルブの代わりに多孔体を用いて冷却用外管にアンモニアが流入する流量を絞ることによって、バルブを用いる場合よりも簡易な構造となりコストダウンすることができる。
【0015】
本発明に係るアンモニアを燃料とする内燃機関の一態様において、前記燃料配管の冷却に用いたアンモニアを前記燃焼室に流し込んで燃焼させてもよい。
【0016】
この態様によれば、燃料配管の冷却に用いたアンモニアも無駄にすることなく燃料として使用することができる。
【0017】
本発明に係るアンモニアを燃料とする内燃機関の一態様において、前記燃料配管の冷却に用いたアンモニアを前記タンクに戻してもよい。
【0018】
この態様によれば、燃料配管の冷却に用いたアンモニアをタンクに戻すため、燃料のアンモニアを無駄にすることなく燃料配管の冷却に用いることができる。
【0019】
本発明に係るアンモニアを燃料とする内燃機関の一態様において、前記内燃機関がレシプロエンジンであってもよい。
【0020】
この態様によれば、アンモニアを燃料とするレシプロエンジンで、燃料の冷却のために複雑な装置を用いることなく、また、ノズルから燃料を噴射するために求められる値よりも燃料配管の内部の圧力を過度に高くすることなく、ノズルから噴射するアンモニアを液体に保つことができる。
【0021】
本発明に係るアンモニアを燃料とする内燃機関の一態様において、前記内燃機関がガスタービンエンジンであってもよい。
【0022】
この態様によれば、アンモニアを燃料とするガスタービンエンジンで、燃料の冷却のために複雑な装置を用いることなく、また、ノズルから燃料を噴射するために求められる値よりも燃料配管の内部の圧力を過度に高くすることなく、ノズルから噴射するアンモニアを液体に保つことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、燃料の冷却のために複雑な装置を用いることなく、また、ノズルから燃料を噴射するために求められる値よりも燃料配管の内部の圧力を過度に高くすることなく、ノズルから噴射するアンモニアを液体に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1の実施形態の内燃機関の構成の概略を示す図である。
図2】第1の実施形態の内燃機関の燃料配管及び冷却用外管を示す図である。
図3】アンモニアの蒸気圧線を示す図である。
図4】第2の実施形態の内燃機関の燃料配管及び冷却用外管を示す図である。
図5】第3の実施形態の内燃機関の燃料配管及び冷却用外管を示す図である。
図6】第4の実施形態の内燃機関の燃料配管の周囲に冷却用外管が巻き付けられた構造を示す図である。
図7】第5の実施形態の内燃機関の燃料配管から冷却用外管へ分流する部分を示す断面図である。
図8】第6の実施形態の内燃機関の構成の概略を示す図である。
図9】第7の実施形態の内燃機関の構成の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第1の実施形態>
以下、図面を参照しながら、第1の実施形態の内燃機関10について説明する。図1に示すように、内燃機関10は気筒1内にピストン11が挿入された火花点火式のレシプロエンジンである。内燃機関10には、燃焼室13に向かって開口する吸気ポート21及び排気ポート22が形成されている。吸気ポート21は燃焼室13に接続する吸気通路の一部を構成し、排気ポート22は燃焼室13に接続する排気通路の一部を構成する。そして、吸気ポート21には吸気弁23が設けられ、排気ポート22には排気弁24が設けられている。
【0026】
内燃機関10は、液体のアンモニアを貯留するタンク3と、タンク3から流入したアンモニアを昇圧する昇圧装置としてのポンプ4と、ポンプ4によって昇圧されたアンモニアを吸気ポート21内へ噴射するノズルとしてのインジェクタ25を備える。インジェクタ25から吸気ポート21内に噴射された燃料は吸入空気と混合して燃焼室13内に導入され、燃焼室13内で点火プラグ26により点火されて燃焼する。
【0027】
図2に示すように、内燃機関10は、タンク3からポンプ4を経由してインジェクタ25までアンモニアを供給する燃料配管5を備える。燃料配管5にはバルブ51が設けられ、バルブ51が開くと燃焼室13へ燃料の供給が可能となり、バルブ51が閉じると燃焼室13へ燃料を供給できなくなり内燃機関10は停止する。燃料配管5の外側には、燃料配管5から分岐点52で分流したアンモニアを流す冷却用外管6が設けられ、燃料配管5及び冷却用外管6は2重管構造となっている。
【0028】
燃料のアンモニアを液体の状態にするためには、図3に示す蒸気圧線よりも左側の状態にアンモニアを保つ必要がある。そのため、例えばアンモニアの温度が25℃である場合には、アンモニアの圧力を1MPa以上とする必要がある。そのため、圧力を1.2MPa程度にしておけば、周囲温度が25℃でもアンモニアは液体としてインジェクタ25から噴射される。しかしながら、内燃機関10が動作を開始すると、燃焼室13における燃焼により、インジェクタ25付近の温度も上昇し、例えば40℃程度に上昇する可能性がある。その場合、燃料配管5の途中で燃料の一部が気化してしまう。
【0029】
このように燃料の一部が気化すると、燃料を吸気ポート21内に噴射する際にインジェクタ25を通過する燃料の質量流量は低下し、必要な燃料量を供給できなくなる。また、気化した割合も一定でないため、燃料流量の変動も大きくなり、噴射量の制御が難しくなる。そこで、燃料を常に液体に保つためには、例えば圧力を上げる方法があるが、その場合には昇圧能力の高い昇圧装置を準備しておく必要があり、コストがかかる。また、圧力を高くすると、単位時間あたりにインジェクタ25を通過する燃料量が増加するため、インジェクタ25の開弁時間などを圧力に合わせて変更する必要がある。そこで、本実施形態の内燃機関10では、既に述べたように燃料配管5及び冷却用外管6は2重管構造として、燃料配管5から分流したアンモニアを冷却用外管6に流すことによって燃料配管5を外側から冷却する。
【0030】
図2に示すように、燃料配管5は分岐点52で分岐してバルブ61を介して冷却用外管6に接続しているため、タンク3内の蒸気圧により燃料配管5から液体のアンモニアがバルブ61まで到達する。そして、バルブ61で流路を絞ることによりバルブ61より下流側の圧力が低下し、気化したアンモニアが冷却用外管6を流れる。分岐点52からポンプ4まで燃料配管5及び冷却用外管6は2重管構造となっており、ポンプ4より下流側も燃料配管5及び冷却用外管6は2重管構造となっている。そして、ポンプ4より上流側の冷却用外管6は、ポンプ4を迂回した迂回路62を経由してポンプ4より下流側の冷却用外管6に接続している。また、ポンプ4より下流側の冷却用外管6はインジェクタ25の付近まで延びてバルブ63を経由して吸気ポート21に接続している。そのため、ポンプ4より上流側の冷却用外管6を流れた気体のアンモニアは迂回路62を経由してポンプ4より下流側の冷却用外管6を流れて、更にバルブ63を経由して吸気ポート21に流れ込み、空気と共に燃焼室13に入り燃焼される。
【0031】
アンモニアは気化潜熱が大きく、気化により温度が低下するため、上記のように冷却用外管6を気化したアンモニアが流れることによって燃料配管5が外側から冷却される。このように燃料配管5が冷却される結果、燃料配管5の内部の燃料圧力に対してアンモニアが液体である温度以下(図2の蒸気圧線よりも左側の条件)になるように燃料配管5の内部のアンモニアを常に液体に保つことができる。そのため、燃料配管5の内部を流れるアンモニアは液体のまま、インジェクタ25から噴射される。このように本実施形態の内燃機関10は、燃料の冷却のために複雑な装置を用いることなく、また、インジェクタ25から燃料を噴射するために求められる値よりも燃料配管5の内部の圧力を過度に高くすることなく、インジェクタ25から噴射するアンモニアを液体に保つことができる。
【0032】
また、上記のように冷却用外管6を流れた気体のアンモニアはバルブ63を経由して吸気ポート21に流れ込み、空気と共に燃焼室13に入り燃焼されるため、本実施形態の内燃機関10は、燃料配管5の冷却に用いたアンモニアも無駄にすることなく燃料として使用することができる。なお、このように燃料配管5の冷却に用いたアンモニアを吸気ポート21に入れることによって、燃焼室13に入る燃料量が増えてしまう。そこで、本実施形態の内燃機関10では、この増加量に対応する分だけインジェクタ25の開弁時間を短くしてインジェクタ25より噴射する燃料量を減らすことによって、燃焼室13で燃焼するために適切な燃料量を燃焼室13に入れることができる。
【0033】
<第2の実施形態>
次に、図4を参照しながら、第2の実施形態の内燃機関20について説明する。内燃機関20は、ポンプ4の上流側には冷却用外管6を設けず、ポンプ4の下流側のみ冷却用外管6を設けている点と、ポンプ4より下流側の燃料配管5に分岐点52aが設けられる点を除いて、第1の実施形態の内燃機関10と同一の構成を有する。そのため、第1の実施形態の内燃機関10と異なる点について以下に説明し、第1の実施形態の内燃機関10と共通する部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0034】
内燃機関20では、ポンプ4より上流側の燃料配管5では温度上昇がほとんど生じず、ポンプ4の下流側のみ燃料配管5の温度が上昇するため、図4に示すように、ポンプ4の上流側には冷却用外管6を設けず、ポンプ4の下流側のみ冷却用外管6を設けている。ポンプ4より下流側では、燃料配管5の外側に冷却用外管6が設けられ、燃料配管5及び冷却用外管6が二重管構造となっている。ポンプ4より下流側の燃料配管5は分岐点52aで分岐してバルブ61aを介して冷却用外管6に接続しているため、ポンプ4によって昇圧された液体のアンモニアが燃料配管5からバルブ61aまで到達する。そして、バルブ61aで流路を絞ることによりバルブ61aより下流側の圧力が低下し、気化したアンモニアが冷却用外管6を流れる。また、冷却用外管6はインジェクタ25の付近まで延びてバルブ63を経由して吸気ポート21に接続している。そのため、冷却用外管6を流れた気体のアンモニアはバルブ63を経由して吸気ポート21に流れ込み、空気と共に燃焼室13に入り燃焼される。
【0035】
アンモニアは気化潜熱が大きく、気化により温度が低下するため、上記のように気化したアンモニアが冷却用外管6を流れることによって燃料配管5が外側から冷却される。このように燃料配管5が冷却される結果、燃料配管5の内部のアンモニアを常に液体に保つことができる。そのため、本実施形態の内燃機関20は、燃料の冷却のために複雑な装置を用いることなく、また、インジェクタ25から燃料を噴射するために求められる値よりも燃料配管5の内部の圧力を過度に高くすることなく、インジェクタ25から噴射するアンモニアを液体に保つことができる。
【0036】
また、上記のように冷却用外管6を流れた気体のアンモニアはバルブ63を経由して吸気ポート21に流れ込み、空気と共に燃焼室13に入り燃焼されるため、本実施形態の内燃機関20は、燃料配管5の冷却に用いたアンモニアも無駄にすることなく燃料として使用することができる。
【0037】
<第3の実施形態>
次に、図5を参照しながら、第3の実施形態の内燃機関30について説明する。内燃機関30は、燃料配管5から冷却用外管6へアンモニアが分流する分岐点の位置が異なる点と、冷却用外管6を流れたアンモニアが吸気ポート21に流れ込むのではなくタンク3に流れ込む点を除いて、第1の実施形態の内燃機関10と同一の構成を有する。そのため、第1の実施形態の内燃機関10と異なる点について以下に説明し、第1の実施形態の内燃機関10と共通する部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0038】
図5に示すように、内燃機関30は、第1の実施形態の内燃機関10と同様に、タンク3からポンプ4を経由してインジェクタ25までアンモニアを供給する燃料配管5を備え、燃料配管5及び冷却用外管6は二重管構造となっている。内燃機関30は、第1の実施形態の内燃機関10と異なり、燃料配管5からインジェクタ25付近の分岐点52bで分岐してバルブ61bを介して冷却用外管6に接続しているため、ポンプ4で昇圧された液体のアンモニアが燃料配管5からバルブ61bまで到達し、バルブ61bで流路を絞ることにより圧力が下がり、気化したアンモニアが冷却用外管6を流れる。そして、気化したアンモニアはバルブ61bから冷却用外管6内をポンプ4に向かって流れて、迂回路62を経由して更に冷却用外管6内をタンク3に向かって流れて、バルブ63bを経由してタンク3に流れ込む。分岐点52bにおいて燃料配管5の内部のアンモニアはポンプ4によって昇圧されており、冷却用外管6を流れるアンモニアの圧力をタンク3内の圧力よりも高くしておくことで、冷却に用いたアンモニアをタンク3に戻すことができる。
【0039】
アンモニアは気化潜熱が大きく、気化により温度が低下するため、上記のように気化したアンモニアが冷却用外管6を流れることによって燃料配管5が外側から冷却される。このように燃料配管5が冷却される結果、燃料配管5の内部のアンモニアを常に液体に保つことができる。そのため、本実施形態の内燃機関30は、燃料の冷却のために複雑な装置を用いることなく、また、インジェクタ25から燃料を噴射するために求められる値よりも燃料配管5の内部の圧力を過度に高くすることなく、インジェクタ25から噴射するアンモニアを液体に保つことができる。
【0040】
また、上記のように冷却用外管6を流れた気体のアンモニアはバルブ63bを経由してタンク3に流れ込み、燃料配管5の冷却に用いたアンモニアをタンク3に戻すため、本実施形態の内燃機関30は、燃料のアンモニアを無駄にすることなく燃料配管5の冷却に用いることができる。
【0041】
<第4の実施形態>
次に、図6を参照しながら、第4の実施形態の内燃機関40について説明する。内燃機関40は、燃料配管5及び冷却用外管6aが二重管構造となっておらず、燃料配管5の周囲に冷却用外管6aが巻き付けられている点を除いて、第1の実施形態の内燃機関10と同一の構成を有する。そのため、第1の実施形態の内燃機関10と異なる点について以下に説明し、第1の実施形態の内燃機関10と共通する部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0042】
内燃機関40では、第1の実施形態の内燃機関10の燃料配管5及び冷却用外管6が二重管構造となっている部分が、図6に示すように、燃料配管5の周囲に冷却用外管6aが巻き付けられた構造となっている。そのため、本実施形態の内燃機関40は、燃料配管5の周囲に巻き付けた冷却用外管6aに燃料配管5から分流したアンモニアを流すことによって、アンモニアの蒸発による気化潜熱を利用して燃料配管5を外側から冷却し、燃料配管5の内部のアンモニアを常に液体に保つことができる。そのため、内燃機関40は、燃料の冷却のために複雑な装置を用いることなく、また、インジェクタ25から燃料を噴射するために求められる値よりも燃料配管5の内部の圧力を過度に高くすることなく、インジェクタ25から噴射するアンモニアを液体に保つことができる。
【0043】
<第5の実施形態>
次に、図7を参照しながら、第5の実施形態の内燃機関50について説明する。内燃機関50は、燃料配管5には図2に示されるバルブ51より下流側にアンモニアを漏出させる連通孔53が形成され、バルブ61の代わりに多孔体64が設けられている点を除いて、第1の実施形態の内燃機関10と同一の構成を有する。そのため、第1の実施形態の内燃機関10と異なる点について以下に説明し、第1の実施形態の内燃機関10と共通する部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0044】
内燃機関50は、第1の実施形態の内燃機関10と同様に燃料配管5及び冷却用外管6が二重管構造となっている。内燃機関50は、第1の実施形態の内燃機関10のように燃料配管5が分岐点52で分岐してバルブ61を介して冷却用外管6に接続しているのではなく、図7に示すように、燃料配管5にはアンモニアを漏出させる連通孔53が形成され、冷却用外管6に多孔体64が詰められている。そのため、燃料配管5の内部を図7の矢印Aの方向へ流れる液体のアンモニアの一部が連通孔53から漏出し、多孔体64を経由して冷却用外管6に流入する。この時、多孔体64を通り抜けたアンモニアは圧力が低下するため、気化する。そして、気化したアンモニアが冷却用外管6を図7の矢印Bの方向へ流れることにより、燃料配管5が外側から冷却される。
【0045】
このように本実施形態の内燃機関50は、燃料配管5から冷却用外管6へアンモニアを分流する経路にバルブ61を設けず、バルブ61の代わりに多孔体64を用いて冷却用外管6にアンモニアが流入する流量を絞るため、バルブ61を用いる場合よりも簡易な構造となりコストダウンすることができる。なお、内燃機関50では、第1の実施形態の内燃機関10のバルブ63を設ける代わりに多孔体を設けてもよい。その場合、バルブ63を用いる場合よりも簡易な構造となり更にコストダウンすることができる。
【0046】
また、内燃機関50は、上記のように気化したアンモニアが冷却用外管6を流れることによって燃料配管5が外側から冷却されるため、燃料配管5の内部のアンモニアを常に液体に保つことができる。そのため、本実施形態の内燃機関50は、燃料の冷却のために複雑な装置を用いることなく、また、インジェクタ25から燃料を噴射するために求められる値よりも燃料配管5の内部の圧力を過度に高くすることなく、インジェクタ25から噴射するアンモニアを液体に保つことができる。
【0047】
<第6の実施形態>
次に、図8を参照しながら、第6の実施形態の内燃機関60について説明する。内燃機関60は、インジェクタ25が取り付けられている位置が異なる点と、燃料を直に燃焼室13内に噴射する点を除いて、第1の実施形態の内燃機関10と同一の構成を有する。そのため、第1の実施形態の内燃機関10と異なる点について以下に説明し、第1の実施形態の内燃機関10と共通する部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0048】
図8に示すように、第6の実施形態の内燃機関60は、インジェクタ25から燃焼室13内へ直に燃料のアンモニアを噴射するレシプロエンジンである。そのため、内燃機関60では、インジェクタ25は、第1の実施形態の内燃機関10とは異なり、燃焼室13内へ燃料を直に噴射できる位置に設けられている。内燃機関60は、第1の実施形態の内燃機関10と同様に、タンク3からポンプ4を経由してインジェクタ25までアンモニアを供給する燃料配管5を備える。内燃機関60は、第1の実施形態の内燃機関10と同様に、冷却用外管6、バルブ61、バルブ63及び迂回路62を備える。そして、内燃機関60では、第1の実施形態の内燃機関10と同様に、燃料配管5及び冷却用外管6は二重管構造となっており、燃料配管5から分流して冷却用外管6を流れたアンモニアはバルブ63を経由して吸気ポート21に流れ込む。
【0049】
吸気ポート21に燃料を噴射する第1の実施形態の内燃機関10と比較して、燃焼室13内に直に燃料を噴射する内燃機関60では、インジェクタ25の温度が高くなり易いため、燃料配管5を冷却する必要性が高い。内燃機関60でも、燃料配管5及び冷却用外管6を二重管構造として、冷却用外管6に気化したアンモニアを流すことによって、燃料配管5を外側から冷却するため、燃料配管5の内部のアンモニアを常に液体に保つことができる。そのため、本実施形態の内燃機関60は、燃料の冷却のために複雑な装置を用いることなく、また、インジェクタ25から燃料を噴射するために求められる値よりも燃料配管5の内部の圧力を過度に高くすることなく、インジェクタ25から噴射するアンモニアを液体に保つことができる。
【0050】
<第7の実施形態>
次に、図9を参照しながら、第7の実施形態の内燃機関70について説明する。内燃機関70は、レシプロエンジンではなくガスタービンエンジンである点を除いて、第1の実施形態の内燃機関10と同一の構成を有する。そのため、第1の実施形態の内燃機関10と異なる点について以下に説明し、第1の実施形態の内燃機関10と共通する部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0051】
内燃機関70はアンモニアを燃料とするガスタービンエンジンである。図9には、内燃機関70の燃焼器の燃焼室13aと、液体のアンモニアを貯留するタンク3と、タンク3から流入したアンモニアを昇圧するポンプ4と、ポンプ4によって昇圧されたアンモニアを燃焼室13a内に噴射するインジェクタ25と、タンク3からポンプ4を経由してインジェクタ25までアンモニアを供給する燃料配管5が示されている。内燃機関70は、第1の実施形態の内燃機関10と同様に、冷却用外管6、バルブ61、バルブ63及び迂回路62を備える。そして、内燃機関70では、第1の実施形態の内燃機関10と同様に、燃料配管5及び冷却用外管6は二重管構造となっており、燃料配管5から分流して冷却用外管6を流れたアンモニアはバルブ63を経由して燃焼室13aに接続する吸気通路21aに流れ込む。
【0052】
内燃機関70でも、燃料配管5及び冷却用外管6を二重管構造として、冷却用外管6に気化したアンモニアを流すことによって、燃料配管5を外側から冷却するため、燃料配管5の内部のアンモニアを常に液体に保つことができる。そのため、本実施形態の内燃機関70は、燃料の冷却のために複雑な装置を用いることなく、また、ノズルから燃料を噴射するために求められる値よりも燃料配管5の内部の圧力を過度に高くすることなく、ノズルから噴射するアンモニアを液体に保つことができる。
【0053】
<実施形態の補足>
本開示のアンモニアを燃料とする内燃機関は、上述した形態に限定されず、本開示の要旨の範囲内において種々の形態にて実施できる。例えば、冷却用外管は燃料配管の全体に設けられる必要はなく、燃料配管の特に温度が上昇する部分のみに設けられていてもよい。また、燃料配管から分流したアンモニアを冷却用外管に流すのではなく、タンクから分流したアンモニアを冷却用外管に流す形態であってもよい。また、アンモニアを燃料として燃焼させていれば、アンモニア以外の他の燃料も一緒に燃焼させる形態であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 気筒、3 タンク、4 ポンプ、5 燃料配管、6,6a 冷却用外管、10,20,30,40,50,60,70 内燃機関、11 ピストン、13,13a 燃焼室、21 吸気ポート、21a 吸気通路、22 排気ポート、23 吸気弁、24 排気弁、25 インジェクタ、26 点火プラグ、51,61,61a,61b,63,63b バルブ、52,52a,52b 分岐点、53 連通孔、62 迂回路、64 多孔体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9