(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】制動装置、片方向制動装置、双方向制動装置、片方向制動ユニット、双方向制動ユニット、片方向制動ユニット付き引戸、双方向制動ユニット付き引戸
(51)【国際特許分類】
E05F 5/02 20060101AFI20240403BHJP
E06B 3/46 20060101ALI20240403BHJP
E05D 13/00 20060101ALI20240403BHJP
E05D 15/06 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
E05F5/02 D
E05F5/02 E
E06B3/46
E05D13/00 K
E05D15/06 103
(21)【出願番号】P 2019127230
(22)【出願日】2019-07-08
【審査請求日】2022-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2018130256
(32)【優先日】2018-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592114703
【氏名又は名称】株式会社ベスト
(74)【代理人】
【識別番号】100144749
【氏名又は名称】小林 正英
(74)【代理人】
【識別番号】100076369
【氏名又は名称】小林 正治
(72)【発明者】
【氏名】中山 孝
(72)【発明者】
【氏名】小貝澤 和幸
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-83769(JP,A)
【文献】特開2012-36625(JP,A)
【文献】特開2008-190275(JP,A)
【文献】特開2009-191469(JP,A)
【文献】特開2019-52474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00 - 13/04
E05F 17/00
E06B 3/42 - 3/46
E05D 13/00
E05D 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉スライド可能な引戸
(1)に取り付けて、引戸
(1)の閉スライドと開スライドのいずれか一方のスライド時に、引戸
(1)が全閉する手前と全開する手前のいずれかで、引戸
(1)のスライド速度が減速するように制動させる制動装置であり、
制動装置は、引戸
(1)のスライドと共に移動する始動係止具
(11)と、引戸
(1)のスライドを制動させるダンパ
(16)と、スライド方向に長く、スライド方向後端側が始動係止具(11)と連結されている連結具(14)と、シリンダ(16a)とそれに出入りするロッド(16b)を備えたダンパ(16)と、ダンパ
(16)のロッド
(16b)をシリンダ
(16a)側に引くスプリング
(15)を備えており、
始動係止具
(11)は引戸
(1)のスライドに伴って引戸
(1)と共に移動し、床側に固定してある床ストッパ
(S)に係止すると移動を停止し、引戸
(1)が戻りスライドすると床ストッパ
(S)から離脱するように引戸に装備されており、
連結具
(14)はスライド方向先端側がダンパ(16)のロッド(16b)と係止離脱可能であり、引戸
(1)のスライドにより始動係止具
(11)が床ストッパ
(S)に係止しても引戸
(1)のスライドが継続される
と後退移動して、スライド方向先端側がダンパ(16)のロッド(16b)と係止して、ダンパ
(16)の制動を開始させて、引戸
(1)を全閉又は全開する手前でスロースライドさせ、
引戸
(1)が逆方向に戻りスライドして、床ストッパ
(S)への始動係止具
(11)の係止が解除されても引戸
(1)の戻りスライドが継続されると、ダンパ
(16)の前記制動が解除されて制動前の元の状態に戻るようにした、
ことを特徴とする制動装置。
【請求項2】
開閉スライド可能な引戸
(1)に取り付けて、引戸
(1)の閉スライドと開スライドのいずれか一方のスライド時に、引戸
(1)が全閉する手前と全開する手前のいずれかで、引戸
(1)のスライド速度が減速するように制動させる制動装置であり、
制動装置は、引戸
(1)のスライドと共に移動する始動係止具
(11)と、引戸
(1)のスライドを制動させるダンパ
(16)と、始動係止具(11)と可動ストッパ(13)を連結する連結具(14)と、シリンダ(16a)とそれに出入りするロッド(16b)を備えたダンパ(16)と、ダンパ
(16)のロッド
(16b)をシリンダ
(16a)側に引くスプリング
(15)を備えており、
始動係止具
(11)は引戸
(1)のスライドに伴って引戸
(1)と共に移動し、床側に固定してある床ストッパ
(S)に係止すると移動を停止し、引戸
(1)が戻り移動すると床ストッパ
(S)から離脱するように引戸
(1)に装備されており、
ダンパ
(16)のロッド(16b)の先端側に先方係止具
(12)があり、
スプリング
(15)は引戸
(1)のスライド方向に長く、その先端側が先方係止具
(12)に連結されて、先方係止具
(12)が取付けられているロッド
(16b)をシリンダ
(16a)側に牽引できるようにしてあり、
連結具
(14)は引戸
(1)のスライド方向に長く、スライド方向後端側が始動係止具
(11)と連結され、スライド方向先端側に可動ストッパ
(13)が取り付けられており、引戸
(1)のスライドにより始動係止具
(11)が床ストッパ
(S)に係止しても引戸
(1)のスライドが継続されると連結具
が後退移動し、この後退移動により、可動ストッパ
(13)が同方向に引かれて先方係止具
(12)と係止し、この係止により先方係止具
(12)がスプリング
(15)でダンパ
(16)のシリンダ
(16a)側に引かれると共に先方係止具
(12)と連結されているロッド
(16b)がシリンダ
(16a)内に引かれて制動が開始し、引戸が
(1)全閉又は全開する手前でスロースライドし、
引戸
(1)が逆方向に戻りスライドして、床ストッパ
(S)への始動係止具
(11)の係止が解除されても引戸
(1)の戻りスライドが継続されると、連結具
(14)、スプリング
(15)、ダンパ
(16)が前記制動時の動作と逆のステップで動作して制動が解除されて、制動前の元の状態に戻るようにした、
ことを特徴とする制動装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の制動装置において、
始動係止具
(11)とスプリング
(15)とダンパ
(16)が、始動係止具
(11)を下、スプリング
(15)とダンパ
(16)を上にして上下二段に配置されている、
ことを特徴とする制動装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載の制動装置がケース
(5)内に一つ収納配置され、閉スライドと開スライドのいずれか一方のスライドを制動可能である、
ことを特徴とする片方向制動装置。
【請求項5】
開閉スライド可能な引戸
(1)に取り付けて、引戸
(1)の閉スライドと開スライドの双方のスライド時に、引戸
(1)が全閉する手前と全開する手前のいずれにおいても、引戸
(1)のスライド速度が減速するように制動させる双方向制動装置であり、
請求項1又は請求項2記載の制動装置がケース
(5)内に二つ収容配置され、
一方の制動装置は引戸
(1)の閉スライドを制動することができ、他方の制動装置は引戸
(1)の開スライドを制動することができるように、制動方向を逆にしてケース
(5)内に収容配置されて、閉スライドと開スライドの双方向のスライドを制動可能である、
ことを特徴とする双方向制動装置。
【請求項6】
開閉スライド可能な引戸
(1)に取り付けて、引戸
(1)の閉スライドと開スライドのいずれか一方のスライドにおいて、引戸
(1)が全閉する手前と全開する手前のいずれかで、引戸
(1)のスライド速度が減速するように制動させる片方向制動ユニットであり、
片方向制動ユニット
(4)が、請求項4記載の片方向制動装置のケース
(5)の先端側と後端側に車輪
(8)を備えたものである、
ことを特徴とする片方向制動ユニット。
【請求項7】
開閉スライド可能な引戸
(1)に取り付けて、引戸
(1)の閉スライド時と開スライド時の双方のスライド時に、引戸
(1)が全閉する手前と全開する手前のいずれにおいても、引戸
(1)のスライド速度が減速するように制動させる双方向制動ユニット
(40)であり、
双方向制動ユニット
(40)が、請求項5記載の双方向制動装置のケース
(5)の先端側と後端側に車輪
(8)を備えたものである、
ことを特徴とする双方向制動ユニット。
【請求項8】
引戸
(1)の閉スライド時又は開スライド時に、引戸
(1)が全閉する手前又は全開する手前で、引戸
(1)のスライド速度が減速するように引戸
(1)を制動する制動ユニットを備えた引戸
(1)において、
一枚の引戸
(1)の下部に制動ユニットが設けられ、制動ユニットが請求項6記載の片方向制動ユニット
(4)である、
ことを特徴とする片方向制動ユニット付き引戸。
【請求項9】
引戸
(1)の閉スライド時と開スライド時に、引戸
(1)が全閉する手前と全開する手前の双方で、引戸
(1)のスライド速度が減速するように引戸を制動する制動ユニットを備えた引戸において、
一枚の引戸
(1)の下部に制動ユニットが設けられ、制動ユニットが請求項7記載の双方向制動ユニット
(40)である、
ことを特徴とする双方向制動ユニット付き引戸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は引戸を横方向にスライドさせて、壁やパーティションなどの開口部(出入り口)を閉じたり開いたりするときに、引戸が全閉又は全開する手前で制動され、減速してソフトスライドするようにした引戸用の制動装置と、その制動装置及び車輪をケースに組み込んだ制動ユニットと、当該制動ユニットを取り付けた制動ユニット付き引戸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、引戸の制動装置として特許文献1、2のようなものがある。これら制動装置は引戸で出入り口を閉じるときに、指の挟み込み防止、衝撃音の発生防止等の面から、全閉する手前で引戸にブレーキが掛かって、引戸が緩やかなスピードでスムースに閉じる(ソフトクローズする)ようにしてある。
【0003】
引戸には、出入り口の内周縁に戸枠を設け、その戸枠内に引戸を配置するインセット引戸、戸枠の手前側(外側)に引戸を配置するアウトセット引戸がある。前記制動装置はいずれの引戸にも使用されている。インセット引戸であってもアウトセット引戸であっても、制動装置が有効に働いて、引戸の全閉時又は全開時に、引戸をソフトスライドさせるためには、通常、50mm程度の制動範囲が必要とされている。このため、インセット引戸の場合は、出入り口を全閉する位置よりも50mm程度手前から減速が開始されるようにしてある。しかし、アウトセット引戸の場合は、戸枠も隠れて全閉となる。戸枠の横幅は、通常、30mm程度あるため、戸枠が隠れる位置(全閉位置)よりも50mm程度手前から減速が開始されるようにしたのでは、引戸が戸枠の手前に差し掛かっても全閉位置では制動が有効に働かず、スピードが速いままである。このため、引戸が戸枠に差し掛かったときに、引戸と戸枠の間に指が挟まれるおそれがある。そこで、アウトセット引戸の場合は、戸枠が隠れる全閉位置よりも80mm程度手前から引戸を減速させて、引戸が戸枠の手前に差し掛かかったときには、引戸がソフトスライドするようにしてある。しかし、これでは、戸枠が完全に隠れる前で引戸が停止し、完全に全閉することができない。これを防止するためには、全閉位置よりも80mm程度手前から引戸を減速させても、戸枠が完全に隠れるまで引戸がスライドする制動装置が必要になる。そのためには制動距離の長い制動装置が必要になり、制動装置が大型化するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-083769号公報
【文献】特開2015-067976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の解決課題は、インセット引戸にもアウトセット引戸にも装備することができ、引戸を閉じる方向にスライドする時(閉スライド時)又は/及び引戸を開く方向にスライドする時(開スライド時)に引戸をソフトスライドさせて、指の挟み込みを防止でき、衝撃音の発生を抑制できるようにすることにある。また、引戸のスライド距離は同じでも制動距離(区間)を長くして、アウトセット引戸の全閉時に、引戸で戸枠を確実に隠すことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[制動装置]
本発明の制動装置は引戸の下部に内蔵して使用されるものである。引戸の閉スライド時も開スライド時も制動可能な双方向制動装置と、閉スライド時と開スライド時のいずれか一方のスライド時にのみ制動可能な片方向制動装置がある。
【0007】
[片方向制動装置]
本発明の片方向制動装置は、引戸の床側内部に収納固定される一本のケース内に、一組の制動装置を備えて、引戸の閉スライド又は開スライドのいずれか一方のスライド時に、引戸が全閉する手前と全開する手前のいずれかで引戸のスライド速度が減速して、引戸がソフトスライド(閉スライド時はソフトクローズ、開スライド時はソフトオープン)するように制動するものである。
【0008】
本発明の片方向制動装置は、ベースと、始動係止具と、可動ストッパと、先方係止具と、連結具と、スプリングと、ダンパを備えている。ベースは引戸のスライド方向に細長である。ベースに始動係止具と先方係止具と可動ストッパがスライド可能に取り付けられている。始動係止具と可動ストッパはベースに取り付けられた連結具で連結されており、ベースに取り付けられた先方係止具に、スプリングの伸縮方向先端側とダンパのロッドの先端側が連結されている。この制動装置はケース内に収容可能であり、そのケースを引戸の下部に取り付けて、引戸を閉スライド又は開スライドすると、ケースと始動係止具が引戸と同方向に移動し、その始動係止具が移動途中で引戸の下の床側に固定されている床ストッパに係止して停止する。その停止後も引戸がスライドを継続すると、連結具により可動ストッパが作動して、その作動に伴って先方係止具がスプリングによりケースの移動方向と逆方向に引かれ、先方係止具に連結されているダンパのロッドがダンパのシリンダ内に引かれてベース及びケースが制動され、この制動により、ケースが取り付けられている引戸を制動して、引戸がスロースライドするようにしたものである。制動装置は、引戸が逆方向に戻りスライドすると前記制動時の動作と逆のステップで動作して元の状態に戻る。
【0009】
引戸の閉スライド時に作動した制動装置は、引戸の開スライド時に制動前の状態に戻り、引戸の開スライド時に作動した制動装置は引戸の閉スライド時に制動前の状態に戻るようにしてある。
【0010】
[双方向制動装置]
本発明の双方向制動装置は、一つのケース内に二組の制動装置を備え、両制動装置の制動方向が逆になるように内蔵されており、二組の制動装置の一方は引戸の閉スライド時に引戸を制動してソフトクローズさせ、他方は引戸の開スライド時に引戸を制動してソフトオープンさせるものである。
【0011】
[二段構成]
本発明の片方向制動装置も双方向制動装置も、始動係止具と、可動ストッパと、先方係止具と、連結具と、スプリングと、ダンパはベースに上下二段に設けることができる。
【0012】
[片方向制動ユニット]
本発明の片方向制動ユニットは、前記片方向制動装置の制動装置と、二つの車輪が一つのケース内に収容され、二つの車輪がケースの先端側と後端側に設けられたものである、
【0013】
[双方向制動ユニット]
本発明の双方向制動ユニットは、前記双方向制動装置の二つの制動装置と、二つの車輪が一つのケース内に収容され、二つの車輪はケースの先端側と後端側に設けられたものである。閉スライド用とする場合は引戸の戸尻側に取り付けて、引戸を閉スライドさせると制動装置が前記した開スライド時と同様に作動して、引戸が全閉する手前で制動が開始されてスロースライドし、開スライド用とする場合は引戸の戸頭側に取り付けて、引戸を開スライドさせると制動装置が前記した閉スライド時と同様に作動して、引戸が全開する手前で制動が開始されてスロースライドするようにしてある。
【0014】
[制動ユニット付き引戸]
本発明の制動ユニット付き引戸は、引戸に前記片方向制動ユニットを備えた片方向制動ユニット付き引戸、又は双方向制動ユニットを備えた双方向制動ユニット付き引戸である。片方向制動ユニット付き引戸の場合は、引戸の閉スライド時又は閉スライド時に制動し、双方向制動ユニット付き引戸の場合は、閉スライド時には引戸が全閉する手前で制動し、開スライド時には引戸が全開する手前で制動するようにすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の片方向制動装置は次のような効果がある。
(1)引戸の閉スライド時と開スライド時のいずれか一方のスライド時に、引戸を確実に制動でき、指の挟み込みや衝撃音の発生を抑制できる。
(2)上下二段に構成した場合は、引戸のストローク距離を既存のままにしても、制動距離(区間)が長くなり、アウトセット引戸の場合に、戸枠が引戸で確実に隠れるまで引戸をソフトスライドさせることができる。
【0016】
本発明の双方向制動装置は次のような効果がある。
(1)引戸の閉スライド時も開スライド時も、引戸を確実に制動でき、指の挟み込みや衝撃音の発生を抑制できる。
(2)上下二段に構成した場合は、引戸のストローク距離を既存のままにしても、制動距離(区間)が長くなり、アウトセット引戸の場合に、戸枠が引戸で確実に隠れるまで引戸をソフトスライドさせることができる。
【0017】
本発明の片方向制動装置ユニットも双方向制動装置ユニットも次のような効果がある。
(1)ユニット化されているため、コンパクトであり、引戸に収納固定し易い。
(2)車輪を備えているため、引戸のスライドがスムースになる。
【0018】
本発明の片方向制動ユニット付き引戸も、双方向制動ユニット付き引戸も次のような効果がある。
(1)コンパクトな制動ユニットが引戸に内蔵されているため、引戸の体裁が損なわれない。
(2)引戸がソフトスライドできるので、指の挟み込みを防止でき、衝撃音が低減する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】(a)(b)は引戸を全開状態から全閉状態にスライドさせて出入り口を閉じるときの説明図。
【
図3】(a)本発明の片方向制動ユニットの外観図、(b)は(a)の片方向制動ユニットをケースと制動装置に分解した説明図。
【
図4】(a)本発明の片方向制動装置の外観図、(b)は(a)の片方向制動装置の分解図、(c)は始動係止具の説明図。
【
図5】(a)本発明の双方向制動ユニットの外観図、(b)は(a)の双方向制動ユニットをケースと制動装置に分解した説明図。
【
図6】(a)~(d)は本発明の双方向制動ユニットの制動説明図であり、(a)は全開状態の側面説明図、(b)は制動途上の側面説明図、(c)は(a)のA箇所の説明図、(d)は(b)のB箇所の説明図。
【
図7】(a)~(d)は本発明の双方向制動ユニットの制動説明図であり、(a)は制動装置の制動が掛かり始めた状態に側面説明図、(b)は全閉状態の説明図、(c)は(a)のC箇所の説明図、(d)は(b)のD箇所の説明図、
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施形態)
図1(a)はアウトセット下荷重引戸(以下「引戸」という。)1を、
図1の右側に移動させて壁や仕切り等(以下「壁」という。)2の開口部(出入り口)3を全開した状態の説明図、
図1(b)は引戸1を
図1の左側に移動させて壁2の開口部(出入り口)3を全閉した状態の説明図である。
【0021】
本発明の制動ユニットは、引戸1を
図1(a)の全開状態から、
図1(b)の全閉状態に移動(スライド)させて出入り口3を閉じるときに、全閉する手前で引戸1を制動して、引戸1をソフトクローズさせたり、引戸1を
図1(b)の全閉状態から
図1(a)の全開状態に移動させて出入り口3を全開するときに、全開する手前で引戸1を制動して、引戸1をソフトオープンさせたりするものである。
【0022】
[制動ユニット]
本発明の制動ユニットには、一つのケース内に制動装置を一組内蔵した片方向制動ユニットと、二組内蔵した双方向制動ユニットがある。内蔵される制動装置はいずれの場合も同じものである。以下に、制動装置と、制動装置が内蔵された片方向制動ユニットと双方向制動ユニットについて説明する。
【0023】
[片方向制動ユニット]
片方向制動ユニット4の一例を
図3(a)(b)に示す。この片方向制動ユニット4は一つのケース5(
図3(b))に制動装置6(
図3(b))を一つ内蔵したものであり、
図2のように引戸1の底側に取り付けて、引戸1の閉スライド時のスライドを制動(減速)してソフトスライドさせるものである。ケース5の先方と後方に車輪ユニット7(
図3(b))が装備されており、車輪ユニット7の車輪8が引戸1のスライド時にスライド方向に回転して、引戸1がスムースにスライドできるようにしたものである。
【0024】
[ケース]
ケース5は引戸1の底側内部空間に横向きに収容固定できる横長であり、金属、アルミ、剛性の樹脂といった材質製とするのが望ましい。ケース5は下方開口部5a(
図3(b))を備えた下向きコ字状であり、その内部に制動装置6と車輪ユニット7を収容して取り付けることができるようにしてある。
【0025】
[制動装置]
制動装置6は
図4(a)に示す外観であって、
図4(b)に示すベース10と、始動係止具11と、先方係止具12と、可動ストッパ13と、連結具14と、スプリング15と、ダンパ16と、ダンパ支持具17を備えたものである。
【0026】
[ベース]
ベース10(
図4(b))は横長の下ベース20と横長の上ベース21で構成される。下ベース20は長手方向に細長のガイド溝22が開口されており、ガイド溝22の先端部に上向きL字状の係止溝23がある。上ベース21も横長であり、長手方向先端部に先端ブロック24が、長手方向後端部に後端ブロック25が連結固定されている。この先端ブロック24と下ベース20の先端部20aとをネジ26で連結し、後端ブロック25に取り付けられている縦長ブロック32に下ベース20の後端部20bがネジ27で連結固定されて、下ベース20と上ベース21が
図4(a)のように、上下に対向して連結されている。下ベース20の右端であって、縦長ブロック32の下には肉厚ブロック34が連結固定されている。
【0027】
[始動係止具]
始動係止具11(
図4(b)(c))は固定部28aの先に可動部28bがピン29で連結されて、可動部28bが上下に首振り可能となっている。ピン29は下ベース20のガイド溝22に差し込まれて、始動係止具11がガイド溝22の長手方向に往復スライド可能となっている。
【0028】
[連結具]
連結具14(
図4(b))は薄板帯状であり、下ベース20に配置されている。連結具14の基端部30はネジ31により始動係止具11の固定部28aに連結固定されている。連結具14の先端には可動ストッパ13が連結されている。
【0029】
[可動ストッパ]
可動ストッパ13(
図4(b))は、連結具14よりも肉厚の板状であり、中央部上方に突起13aが突出している。
【0030】
[ダンパ支持具]
ダンパ支持具17(
図4(b))は薄板帯状であり、先端部に止め具17aが固定され、基端部17bがネジ33で上ベース21に固定されている(
図6(c))。
【0031】
[ダンパ]
ダンパ16(
図4(b))には、エアシリンダ、窒素ガスシリンダ、その他のシリンダを使用することができる。図示したダンパ16はエアシリンダであり、シリンダ16aと、シリンダ16aに出入りするロッド16bを備え、シリンダ16a内にエアが充填されている。ダンパ16はダンパ支持具17の上に配置固定されている(
図6(c))。シリンダ16aの後端部16cが後端ブロック25の支持孔36に差し込まれて支持されており、ロッド16bの先端が治具35に連結固定され、治具35が先方係止具12の後部にピン37で連結されている。先方係止具12はピン37を回転軸として上下に首振り可能である。
【0032】
[スプリング]
スプリング15((
図4(b))は縮んだ状態である。このスプリング15は
図6(c)のように上ベース21に係止されている。具体的には、スプリング15の左端(前端)が先方係止具12の上方開口の先方係止12a(
図4(b))に係止され、右端(他端)が後端ブロック25の後方係止25a(
図4(b))に係止されている。
図4(b)の60、70はネジである。
【0033】
[車輪ユニット]
車輪ユニット7(
図3(b))は、ケース5の先端側と後端側の双方にネジ38で取り付けてある。先端側と後端側の車輪ユニット7は同じものであり、車輪ケース内に車輪8(
図6(c))や車輪軸を支持するベアリング等が収容されており、車輪8が回転可能である。車輪ユニット7には既存の車輪ユニットを使用することもできる。
【0034】
前記構成の片方向制動ユニット4(
図3(a))は、
図3(b)のように、ケース5内に収容されて、ネジ38によりケース5に取り付けられている。
図3(b)に示す片方向制動ユニット4では制動装置6がケース5の右側に取り付けられている。
【0035】
[引戸への片方向制動装置の取付け]
片方向制動ユニット4は
図2のように、引戸1の下側の収容空間内に配置固定して、引戸1のスライドに伴って移動するようにしてある。
図1(a)の全開状態の引戸1を
図1(b)の全閉状態までスライドするときに、引戸1のスライドが制動されるようにするためには、
図6(c)(d)のように、片方向制動ユニット4内の始動係止具11及び先方係止具12を閉スライド方向(
図6(c)(d)のX1方向:左方向))に向けて取り付ける。これとは逆に、
図1(b)の全閉状態の引戸1を
図1(a)の全開状態までスライドするときに、引戸1のスライドが制動されるようにするためには、
図6(c)(d)とは逆に、片方向制動ユニット4内の始動係止具11及び先方係止具12を開スライド方向(
図6(c)(d)のX2方向:右方向))に向けて取り付ける。
【0036】
[双方向制動ユニット]
双方向制動ユニット40は
図5(a)(b)のような外観であり、一つのケース5内に制動装置6が二つ収容固定(内蔵)され、ケース5の先方と後方に車輪ユニット7が取り付けられている。この双方向制動ユニット40は
図2のように引戸1の底側に取り付けて、引戸1の閉スライド時も開スライド時も引戸1のスライドを制動してソフトスライドさせるものである。車輪ユニット7の車輪8は引戸1のスライド時に回転して引戸1がスムースにスライドできるようにする。
【0037】
[ケース]
図5(a)(b)の双方向制動ユニット40のケース5は、二つの制動装置6を一列に並べて収容固定でき、車輪ユニット7を収容して取り付けることができる長さであり、片方向制動ユニット4のケース5と同じ長さ或いはそれよりも長いものを使用することができる。
【0038】
[制動装置]
図5(b)の双方向制動ユニット40の制動装置6は
図4(b)の制動装置6と同じものであり、二つの制動装置6を横一列に並べて対向配置してある。二つの制動装置6は制動方向が逆になるように対向配置してある。具体的には、右側の制動装置6が閉スライドする引戸1のスライドを制動でき、左側の制動装置6が開スライドする引戸1のスライドを制動できるように配置してある。
【0039】
[引戸への取付け]
図5(a)(b)に示す双方向制動ユニット40も
図2のように引戸1の下部の収容部内に収容し固定する。双方向制動ユニット40は二つの制動装置6が
図5(b)のように一つのケース5内に逆向きに取り付けてあるため、引戸1に取り付けることにより、一方の制動装置6が閉スライド時に引戸1を制動し、他方の制動装置6が開スライド時に引戸1を制動することができる。
【0040】
[双方向制動ユニットによる引戸閉スライド時の制動]
本発明の制動装置6の動作を、
図6(a)~(d)、
図7(a)~(d)に基づいて説明する。
図6(a)(b)、
図7(a)(b)は双方向制動ユニット40を引戸1の下部に取り付けた場合であり、
図6(c)(d)は
図6(a)(b)の双方向制動ユニット40の二つの制動装置6のうち右側の制動装置6の制動説明図、
図7(c)(d)は
図7(a)(b)の双方向制動ユニット40の二つの制動装置6のうち右側の制動装置6の制動説明図である。
図6(a)の全開状態の引戸1を左方向にスライドさせて、
図7(b)のように全閉状態にする場合の、右側の制動装置6の制動を以下に説明する。
【0041】
図6(a)の全開状態の引戸1を左方向にスライドさせると、双方向制動装置ユニット40のケース5と始動係止具11が引戸1と同方向に移動する。このとき、始動係止具11は先端側が上向きになっている(
図6(c))。始動係止具11が引戸1の下の床Fに固定されている床ストッパ(作動ブロック)Sまでスライドすると床ストッパSに係止して停止する(
図6(d)、
図7(d))。始動係止具11が停止しても引戸1が引き続きスライドされると、ケース5が引戸1と共に移動し、連結具14がケース5内を後退移動(ケース5の移動方向と反対方向:
図6(a)(b)の右方向に移動)する。この後退移動により可動ストッパ13が同方向に引かれ、可動ストッパ13の上に載っていた先方係止具12が可動ストッパ13に係止される(
図7(a))。係止された先方係止具12はスプリング15によりケース5の移動方向と逆方向(
図7(a)(d)の右方向)に引かれる。これにより、先方係止具12に連結されているダンパ16のロッド16bがダンパ16のシリンダ16a内に引かれて、ベース10に制動が掛かかり(
図7(d))、引戸1が全閉する手前で制動されてスロースライドする。このとき、車輪ユニット7の車輪8が引戸1のスライド方向に回転して、引戸1がスムースにスライドする。このとき、
図6(a)の左側の制動装置6は制動しない。
【0042】
[双方向制動ユニットによる引戸開スライド時の制動]
図7(b)の全閉状態の引戸1を右方向にスライドさせて全開するときは、
図7(b)の左側の制動装置6により引戸1のスライドが制動される。このときの左側の制動装置6の動作は引戸閉スライド時と同様になる。このとき、
図7(b)の右側の制動装置6は制動前の元の状態に戻る。この戻り動作は、前記制動時とは逆になる。
【0043】
[戻り動作]
制動装置6が元の状態に戻るときは、引戸1の戻スライドによりケース5及びベース10が引戸1と共に戻り移動し、床ストッパSに係止固定していた始動係止具11の係止が解除される。この状態で引戸1が戻り移動を継続するとケース5も同方向に戻り移動を継続する。これにより始動係止具11、連結具14、可動ストッパ13が戻り移動し、スプリング15が引き伸ばされて復元し、ダンパ16のロッド16bも戻り移動し、先方係止具12が可動ストッパ13に係止して制動前の状態に戻る。
【0044】
[片方向制動ユニットによる引戸閉スライド時の制動]
図3(a)(b)の片方向制動ユニット4を使用する場合は、片方向制動ユニット4を引戸1の下部に取り付ける。この場合は一つのケースに一つの制動装置6しか収納されていないため、全開状態の引戸1を閉スライドする場合と、全閉状態の引戸1を開スライドする場合とでは、引戸1への片方向制動ユニット4の取付け方向(向き)が逆になる。具体的には、閉スライド時に制動するようにする場合は、
図2に仮想線で示すように制動装置6を右側にして取り付け、開スライド時に制動するようにする場合は、
図2の場合とは逆に、制動装置6を左側にして取り付ける。
【0045】
全開状態の引戸1を閉スライドする場合は、双方向制動ユニット40の右側の制動装置6と同様に動作して制動する。全閉状態の引戸1を開スライドする場合は、双方向制動ユニット40の左側の制動装置6と同様に動作して制動する。いずれの場合も、引戸1が戻りスライドするときは、制動装置6は制動するようには動作せずに、制動前の状態に戻る。
【0046】
[上部ガイド]
図2、
図6(a)(b)、
図7(a)(b)の50は上部ガイドであり、引戸1の上部を吊り下げるものである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
前記説明は本発明の一例である。本発明では、発明が解決する課題を解決可能であれば、使用する部品数、部品の構成、サイズ、組立て構造、連結構造等を設計変更可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 引戸
2 壁
3 開口部(出入り口)
4 片方向制動ユニット
5 ケース
5a (ケースの)下方開口部
6 制動装置
7 車輪ユニット
8 車輪
10 ベース
11 始動係止具
12 先方係止具
12a 先方係止
13 可動ストッパ
13a (可動ストッパの)突起
14 連結具
15 スプリング
16 ダンパ
16a (ダンパの)シリンダ
16b (ダンパの)ロッド
16c (シリンダの)後端部
17 ダンパ支持具
17a (ダンパ支持具の)止め具
17b (ダンパ支持具の)基端部
20 下ベース
20a (下ベースの)先端部
20b (下ベースの)後端部
21 上ベース
22 ガイド溝
23 係止溝
24 先端ブロック
25 後端ブロック
25a 後方係止
26 ネジ
27 ネジ
28a 固定部
28b 可動部
29 ピン
30 (連結具の)基端部
31 ネジ
32 縦長ブロック
33 ネジ
34 肉厚ブロック
35 治具
36 支持孔
37 ピン
38 ネジ
40 双方向制動ユニット
50 上部ガイド
60 ネジ
70 ネジ
F 床
S 床ストッパ(作動ブロック)