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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】心毒性を低減するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/683 20060101AFI20240403BHJP
   A61K 31/404 20060101ALI20240403BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240403BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20240403BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240403BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
A61K31/683
A61K31/404
A61P9/00
A61P9/04
A61P9/10
A61P43/00 105
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019571643
(86)(22)【出願日】2018-07-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 US2018040988
(87)【国際公開番号】W WO2019010352
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2020-03-09
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】62/529,980
(32)【優先日】2017-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/028,112
(32)【優先日】2018-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514306065
【氏名又は名称】サインパス ファルマ,インク.
【氏名又は名称原語表記】SIGNPATH PHARMA,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】ブシャール アニー
【合議体】
【審判長】前田 佳与子
【審判官】田中 耕一郎
【審判官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-516813(JP,A)
【文献】Drug Development and Industrial Pharmacy, 2010, Vol.36, No.10, pp.1186-1194
【文献】Anticancer Research, 2014, Vol.34, pp.4733-4740
【文献】Biochimica et Biophysica Acta, 2011, Vol.1811, pp.419-430
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/683
CAPLUS/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
JSTPLUS/JMEDPLUS/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は2以上のホスファチジルグリセロール含有化合物を含む、駆出率障害を引き起こす心毒性のある化学療法剤を受けている対象における、心毒性のある治療処置に伴う収縮期駆出率障害の抑制剤又は低下剤であって、
前記対象が、前記心毒性のある治療剤又は治療処置からの心臓保護の必要がある者として特定され、
前記心毒性のある治療剤が、
ダサチニブ、イマチニブメシル酸塩、ラパチニブ、ニロチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、トラスツズマブ、カネルチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、レフルノミド、セマキシニブ、バタラニブ、バンデタニブ、アレムツズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、ゲムツズマブ、パニツムマブ、リツキシマブ、トシツモマブ、及びそれらの組合せからなる群から選択され、
前記1又は2以上のホスファチジルグリセロール含有化合物が、
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロール(DMPG)、又は以下の構造式:
【化1】
、その塩若しくは溶媒和物、
【化2】
、その塩若しくは溶媒和物、
【化3】
、その塩若しくは溶媒和物、
【化4】
、その塩若しくは溶媒和物、
【化5】
、その塩若しくは溶媒和物、又は
【化6】
、その塩若しくは溶媒和物
を有するホスファチジルグリセロール含有化合物から選択され、
前記対象の心臓に対して心臓保護的である有効量の前記ホスファチジルグリセロール含有化合物が送達され、それにより前記対象への前記心毒性のある治療措置の適用に伴う収縮期駆出率障害を抑制する又は低下させる、
前記抑制剤又は低下剤。
【請求項2】
若しくは2以上のホスファチジルグリセロール含有化合物が、心血管疾患も治療する活性薬剤と組み合わせて送達されるホスファチジルグリセロール含有化合物である、
請求項1に記載の抑制剤又は低下剤。
【請求項3】
1又は2以上のホスファチジルグリセロール含有化合物が、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロール(DMPG)である、請求項1又は2に記載の抑制剤又は低下剤。
【請求項4】
治療的有効量の、疾患又は状態を治療するための、心毒性のある薬剤、及び治療的有効量の、1又は2以上のホスファチジルグリセロール含有化合物を含む、対象への心毒性のある治療処置の適用に伴う収縮期駆出率障害を抑制する又は低下させるための組成物であって、
心毒性のある薬剤が、
ダサチニブ、イマチニブメシル酸塩、ラパチニブ、ニロチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、トラスツズマブ、カネルチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、レフルノミド、セマキシニブ、バタラニブ、バンデタニブ、アレムツズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、ゲムツズマブ、パニツムマブ、リツキシマブ、トシツモマブ、及びそれらの組合せからなる群から選択され、
ホスファチジルグリセロール含有化合物が以下の構造式、
【化7】
、その塩若しくは溶媒和物、
【化8】
、その塩若しくは溶媒和物、
【化9】
、その塩若しくは溶媒和物、
【化10】
、その塩若しくは溶媒和物、
【化11】
、その塩若しくは溶媒和物、又は
【化12】
、その塩若しくは溶媒和物
を有する、前記組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、心毒性分野に関し、より具体的には、リン脂質及びリン脂質誘導体を包含する組成物及び方法であって、心毒性を低減する又は除くためのホスファチジルグリセロール及びホスファチジルグリセロールを含有する化合物を含み、心毒性のある医薬剤を用いた処置からの生存を改善することを包含する、組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の範囲を限定することなく、本発明の背景技術は、心毒性のある医薬剤と関係して記述される。
【0003】
患者の心臓に対する有害作用を有することが既知である又は疑われるにも関わらず、一般的に処方される、多様な疾患の治療のために設計された多数の医薬剤が存在する。QT延長、上室性頻拍症(SVT)及び心房細動(AF)を包含する不整脈に加えて、心筋症、うっ血性心不全及び左室肥大(LVH)を包含する、いくつかの他の心臓毒性が発生することがある。
【0004】
これらの医薬剤の心毒性は、様々な悪性腫瘍のために治療されている患者に影響を及ぼすことのある、重大な合併症をもたらすことがある。そのような毒性の重症度は、即時及び蓄積用量、投与の方法、根底にある何らかの心臓状態の存在並びに個々の患者に独自の多様な先天的又は後天的な心臓リスク因子のような、多数の因子に依存する。さらに、毒性は、他の医薬剤を用いた、現在の又は過去の治療により、影響を受けることがある。心毒性作用は、薬物の投与中に即時に発生することがあり、又は患者が治療された数カ月後又は数年後まで心毒性作用を呈さないこともある。
【0005】
大量化学療法は、依然として、侵襲性の悪性腫瘍のための最適治療である。無数の臨床試験により、大量化学療法が患者の生存を有意に延長させることができることが実証されているが、その使用及び有効性は、重大な副作用、特に心毒性により制限されている。中期から後期の心臓毒性において、心不全は、化学療法が終了してから何年も後に現れることがある。化学療法剤を用いた処置は、心膜及び心内膜心筋の線維化、心不全、心筋炎又は心膜炎をもたらすことが既知である。化学療法は、出血性心筋壊死及び心筋症とも関連している。
【0006】
加えて、抗腫瘍モノクローナル抗体も、心毒性と関連がある。左室機能不全、うっ血性心不全及び他の心機能不全のような、注入関連の心毒性作用も発生することがある。患者が、既存の心臓疾患を有する、高齢である、以前に心毒性のある治療を受けている又は胸部への放射線を受けている場合、そのような合併症のリスクは増加する。
【0007】
チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)は、公知の心毒性作用を有する。アントラサイクリン、トラスツズマブ、イマチニブメシル酸塩、ダサチニブ、ニロチニブ、スニチニブ、ソラフェニブ及びラパチニブは、すべて、一定範囲の機械的及び電気的機能不全と関連している。TKIと関連する毒性作用の中には、QT延長、心臓突然死(両方とも律動的機能不全と考えられる)、並びに左室駆出率(LVEF)低減、うっ血性心不全(CHF)、急性冠疾患、高血圧及び心筋梗塞(MI)のような収縮性の問題がある。チロシンキナーゼ阻害剤のような薬物の治療的可能性を考慮して、がんの治療の心毒性を緩和するよう試みるために多様な方策が使用されている。心臓毒性を予防するための主な方法は、心毒性のある薬物の用量を制限することである。薬物投与の方法が、心臓毒性のリスクに影響を及ぼすことがあるという、いくつかのエビデンスも存在する。心毒性のある薬剤の急速投与は、高い血中レベルをもたらし、より長い期間かけて投与された同量の薬物よりも、より心臓傷害を引き起こすことがある。より低用量の薬物をより高頻度に投与することによっても、より長い間隔での高用量の薬物と比較して、毒性を低下させることができる。
【0008】
ある特定の化学療法剤由来の心臓毒性のリスクは、これらの薬物をリポソーム中に封入することにより低減した。例えば、試験により、従来のドキソルビシンよりもリポソームドキソルビシン製剤で、心毒性が相当に低いことが示されている。
【0009】
デクスラゾキサンは、ドキソルビシンにより引き起こされる心臓傷害の重症度を予防する又は低減することが示されている、アミノポリカルボン酸である。デクスラゾキサンは、酸素フリーラジカルの形成を遮断することにより、心筋を保護すると考えられている。放射線及び化学療法薬が細胞を傷害する方法の1つは、フリーラジカルを形成することによるものである。フリーラジカルは、エネルギーのために燃料を燃焼させるような、酸素を伴う多数の正常な細胞過程中に形成される不安定な分子である。これらは、タバコの煙、放射線及び化学療法薬等の環境中の要素への曝露からも形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、化学療法及び/又は化学療法後の心毒性のような、薬物又は処置の心毒性作用を低減するための組成物及び方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態において、本発明は、収縮期駆出率障害を引き起こす心毒性のある化学療法剤を受けている対象における、心毒性のある治療処置に伴う収縮期駆出率障害を抑制する又は低下させるための方法であって、心毒性のある治療剤又は治療処置からの心臓保護の必要がある対象を特定するステップ、及び対象の心臓に対して心臓保護的である有効量の1又は2以上のリン脂質を送達し、それにより対象への心毒性のある治療処置の適用に伴う収縮期駆出率障害を抑制する又は低下させるステップを含む、前記方法を包含する。一態様において、心毒性のある治療処置は、化学療法である。別の態様において、1又は2以上のリン脂質は、治療後の心毒性を予防する。別の態様において、1又は2以上のリン脂質は、心毒性のある治療処置の前、間又は後のうち少なくとも1つに提供される。別の態様において、1又は2以上のリン脂質は、心血管疾患のための既存の患者ケアパラダイムと組み合わせて送達される、ホスファチジルグリセロールである。別の態様において、既存の患者ケアパラダイムは、アントラサイクリン、ドキソルビシン、ダサチニブ、イマチニブメシル酸塩、ラパチニブ、ニロチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ又はトラスツズマブのうち少なくとも1つを用いた処置から選択される。別の態様において、1又は2以上のリン脂質は、心毒性のある治療処置の適用と同時に送達される、ホスファチジルグリセロールである。別の態様において、1又は2以上のリン脂質は、心膜線維化、心内膜心筋線維化、心不全、出血性心筋壊死、心筋症、心筋炎、左室駆出率(LVEF)低減、うっ血性心不全(CHF)、急性冠疾患、高血圧、心筋梗塞又は心膜炎のうち少なくとも1つを抑制する、ホスファチジルグリセロールである。別の態様において、心毒性のある治療処置は、スニチニブ及びドキソルビシンを用いた化学療法である。別の態様において、1又は2以上のリン脂質は、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロール(DMPG)を含む、ホスファチジルグリセロール含有化合物である。別の態様において、心毒性のある治療処置は、チロシンキナーゼ阻害剤を用いる。別の態様において、チロシンキナーゼ阻害剤は、カネルチニブ(CI 1033)、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブメシル酸塩、レフルノミド(SU101)、ラパチニブ、セマキシニブ(SU5416)、ソラフェニブ(BAY 43-9006)、スニチニブ、バタラニブ(PTK787/ZK222584)、バンデタニブ(ZD6474)及びそれらの組合せからなる群から選択される。別の態様において、心毒性のある治療処置は、47Sc、64Cu、67Cu、89Sr、86Y、87Y、90Y、105Rh、111Ag、111In、117Sn、149Pm、153Sm、166Ho、177Lu、186Re、188Re、211At、212Bi及びそれらの組合せからなる群から選択される放射線治療剤である。別の態様において、心毒性のある治療処置は、アレムツズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、ゲムツズマブ、パニツムマブ、リツキシマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ及びそれらの組合せからなる群から選択される、モノクローナル抗体である。別の態様において、低減される又は緩和される心毒性は、左室駆出率の低下、駆出速度の低下、慢性心不全又はうっ血性心不全のうち少なくとも1つである。別の態様において、リン脂質は、心毒性のある治療剤を封入しない。別の態様において、化合物は、以下の構造式
【0012】
【化1】
【0013】
、その塩若しくは溶媒和物、
【0014】
【化2】
【0015】
、その塩若しくは溶媒和物、
【0016】
【化3】
【0017】
、その塩若しくは溶媒和物、
【0018】
【化4】
【0019】
、その塩若しくは溶媒和物、
【0020】
【化5】
【0021】
、その塩若しくは溶媒和物、又は
【0022】
【化6】
【0023】
、その塩若しくは溶媒和物を有する。一態様において、コンジュゲートの塩は、酢酸塩、L-アスパラギン酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩、炭酸塩、D-カンシル酸塩、L-カンシル酸塩、クエン酸塩、エジシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、臭化水素酸塩/臭化物塩、塩酸塩/塩化物塩、D-乳酸塩、L-乳酸塩、D,L-乳酸塩、D,L-リンゴ酸塩、L-リンゴ酸塩、メシル酸塩、パモ酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、D-酒石酸塩、L-酒石酸塩、D,L-酒石酸塩、メソ-酒石酸塩、安息香酸塩、グルセプト酸塩、D-グルクロン酸塩、ヒベンズ酸塩、イセチオン酸塩、マロン酸塩、メチル硫酸塩、2-ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロト酸塩、ステアリン酸塩、トシル酸塩、チオシアン酸塩、アセフィリネート(acefyllinate)、アセチュレート(aceturate)、アミノサリチル酸塩、アスコルビン酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンホカーボネート(camphocarbonate)、デカン酸塩、ヘキサン酸塩、コール酸塩、シピオン酸塩、ジクロロ酢酸塩、エデンテート(edentate)、エチル硫酸塩、フレート(furate)、フシジン酸塩、ガラクタル酸塩、ガラクツロン酸塩、没食子酸塩、ゲンチシン酸塩、グルタミン酸塩、グルタル酸塩、グリセロリン酸塩、ヘプタン酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、馬尿酸塩、フェニルプロピオン酸塩、ヨウ化物塩、キシナホ酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、ミリスチン酸塩、ナパジシル酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ピロリン酸塩、サリチル酸塩、サリチル硫酸塩、スルホサリチル酸塩、タンニン酸塩、テレフタル酸塩、チオサリチル酸塩、トリブロフェネート(tribrophenate)、吉草酸塩、バルプロ酸塩、アジピン酸塩、4-アセトアミド安息香酸塩、カンシル酸塩、オクタン酸塩、エストール酸塩、エシル酸塩、グリコール酸塩、チオシアン酸塩及びウンデシレン酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩、リチウム塩、コリン塩、リシニウム(lysinium)塩、アンモニウム塩、トロメタミン塩及びそれらの混合物からなる群から選択される。別の態様において、化合物は、単位用量あたり約1mg~単位用量あたり約200mgの間の量で存在する。別の態様において、化合物は、経口、舌下、経皮、坐薬、脊髄内、経腸、非経口、静脈内、腹腔内、皮膚、皮下、局所、肺、直腸、膣又は筋肉内投与のために調合される。別の態様において、経口投与のために調合された組成物は、錠剤、カプセル、カプレット、丸剤、粉末、トローチ、薬用キャンディー剤、スラリー、溶液、懸濁液、乳液、エリキシル又は経口フィルム(OTF)である。別の態様において、組成物は、固形状態、溶液、懸濁液又は軟質ゲル状態である。別の態様において、固形状態は、1又は2以上の賦形剤、結合剤、抗粘着剤、コーティング、崩壊剤、増量剤、香料、染料、着色料、流動促進剤、潤滑剤、保存料、吸着剤、甘味料、それらの誘導体又はそれらの組合せをさらに含む。別の態様において、結合剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポビドン、アクリル及びメタクリル酸コポリマー、薬学的グレーズ、ガム並びに乳誘導体からなる群から選択される。別の態様において、組成物は、副作用として心疾患を誘発する1又は2以上の薬剤をさらに含み、化合物は、心疾患を低減する又は除去する。別の態様において、副作用として心疾患を誘発する1又は2以上の薬剤は、アルブテロール、アルフゾシン、アマンタジン、アミオダロン、アミスルピリド、アミトリプチリン、アモキサピン、アンフェタミン、アナグレリド、アポモルヒネ、アルフォルモテロール、アリピプラゾール、三酸化ヒ素、アステミゾール、アタザナビル、アトモキセチン、アジスロマイシン、ベダキリン、ベプリジル、ボルテゾミブ、ボスチニブ、抱水クロラール、クロロキン、クロルプロマジン、シプロフロキサシン、シサプリド、シタロプラム、クラリスロマイシン、クロミプラミン、クロザピン、コカイン、クルクミン、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、ダサチニブ、デシプラミン、デクスメデトミジン、デクスメチルフェニデート、デキストロアンフェタミン、アンフェタミン、ジヒドロアルテミシニン及びピペラキン、ジフェンヒドラミン、ジソピラミド、ドブタミン、ドフェチリド、ドラセトロン、ドンペリドン、ドーパミン、ドキセピン、ドロネダロン、ドロペリドール、エフェドリン、エピネフリン、アドレナリン、エリブリン、エリスロマイシン、エスシタロプラム、ファモチジン、フェルバメート、フェンフルラミン、フィンゴリモド、フレカイニド、フルコナゾール、フルオキセチン、ホルモテロール、ホスカルネット、ホスフェニトイン、フロセミド、フルセミド、ガランタミン、ガチフロキサシン、ゲミフロキサシン、グラニセトロン、ハロファントリン、ハロペリドール、ヒドロクロロチアジド、イブチリド、イロペリドン、イミプラミン、メリプラミン、インダパミド、イソプロテレノール、イスラジピン、イトラコナゾール、イバブラジン、ケトコナゾール、ラパチニブ、レバルブテロール、レボフロキサシン、レボメタジル、リスデキサンフェタミン、リチウム、メソリダジン、メタプロテレノール、メサドン、メタンフェタミン、メチルフェニデート、ミドドリン、ミフェプリストン、ミラベグロン、ミルタザピン、モエキシプリル/HCTZ、モキシフロキサシン、ネルフィナビル、ニカルジピン、ニロチニブ、ノルエピネフリン、ノルフロキサシン、ノルトリプチリン、オフロキサシン、オランザピン、オンダンセトロン、オキシトシン、パリペリドン、パロキセチン、パシレオチド、パゾパニブ、ペンタミジン、ペルフルトレン脂肪ミクロスフェア、フェンテルミン、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、ピモジド、ポサコナゾール、プロブコール、プロカインアミド、プロメタジン、プロトリプチリン、プソイドエフェドリン、クエチアピン、キニジン、キニーネ硫酸塩、ラノラジン、リルピビリン、リスペリドン、リトドリン、リトナビル、ロキシスロマイシン、サルブタモール、サルメテロール、サキナビル、セルチンドール、セルトラリン、セボフルラン、シブトラミン、ソリフェナシン、ソラフェニブ、ソタロール、スパルフロキサシン、スルピリド、スニチニブ、タクロリムス、タモキシフェン、テラプレビル、テラバンシン、テリスロマイシン、テルブタリン、テルフェナジン、テトラベナジン、チオリダジン、チザニジン、トルテロジン、トレミフェン、トラゾドン、トリメトプリム-スルファ、トリミプラミン、バンデタニブ、バルデナフィル、ベムラフェニブ、ベンラファキシン、ボリコナゾール、ボリノスタット又はジプラシドンの少なくとも1つから選択される。
【0024】
別の実施形態において、本発明は、収縮期駆出率障害を引き起こす心毒性のある化学療法剤を受ける対象における心毒性のある化学治療処置に伴う収縮期駆出率障害を抑制する又は低下させるための方法であって、心毒性のある化学治療処置からの心臓保護の必要がある対象を特定するステップ、及び対象の心臓に対して心臓保護的である有効量のホスファチジルグリセロールの有効量を送達し、それにより対象への心毒性のある化学治療処置の適用に伴う収縮期駆出率障害を抑制する又は低下させるステップを含む、方法を包含する。一態様において、ホスファチジルグリセロールは、心血管疾患のための既存の患者ケアパラダイムと組み合わせて送達される。別の態様において、既存の患者ケアパラダイムは、アントラサイクリン、ドキソルビシン、ダサチニブ、イマチニブメシル酸塩、ラパチニブ、ニロチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ又はトラスツズマブのうち少なくとも1つを用いた処置から選択される。別の態様において、1又は2以上のリン脂質は、心毒性のある治療処置の終了後に、心毒性を予防する。別の態様において、1又は2以上のリン脂質は、心毒性のある治療処置の前、間又は後のうち少なくとも1つに提供される。別の態様において、ホスファチジルグリセロールは、心毒性のある化学療法剤の投与と同時に送達される。別の態様において、ホスファチジルグリセロールは、心膜線維化、心内膜心筋線維化、心不全、出血性心筋壊死、心筋症、心筋炎、左室駆出率(LVEF)低減、うっ血性心不全(CHF)、急性冠疾患、高血圧、心筋梗塞又は心膜炎のうち少なくとも1つを抑制する。別の態様において、心毒性のある化学治療処置は、スニチニブ及びドキソルビシンを用いた化学療法である。別の態様において、ホスファチジルグリセロール含有化合物は、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロール(DMPG)を含む。別の態様において、心毒性のある治療剤は、チロシンキナーゼ阻害剤である。別の態様において、チロシンキナーゼ阻害剤は、カネルチニブ(CI 1033)、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブメシル酸塩、レフルノミド(SU101)、ラパチニブ、セマキシニブ(SU5416)、ソラフェニブ(BAY 43-9006)、スニチニブ、バタラニブ(PTK787/ZK222584)、バンデタニブ(ZD6474)及びそれらの組合せからなる群から選択される。別の態様において、心毒性のある化学治療処置は、47Sc、64Cu、67Cu、89Sr、86Y、87Y、90Y、105Rh、111Ag、111In、117Sn、149Pm、153Sm、166Ho、177Lu、186Re、188Re、211At、212Bi及びそれらの組合せからなる群から選択される、放射線治療剤である。別の態様において、心毒性のある化学療法剤は、アレムツズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、ゲムツズマブ、パニツムマブ、リツキシマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ及びそれらの組合せからなる群から選択される、モノクローナル抗体である。別の態様において、低減される又は緩和される心毒性は、左室駆出率の低下、駆出速度の低下、慢性心不全又はうっ血性心不全のうち少なくとも1つである。別の態様において、ホスファチジルグリセロールは、心毒性のある化学療法剤を封入しない。
【0025】
別の実施形態において、本発明は、治療的有効量の、心毒性でもある、疾患又は状態を治療するための薬剤、及び治療的有効量の、対象への心毒性のある治療処置の適用に伴う収縮期駆出率障害を抑制する又は低下させるリン脂質を含む、組成物を包含する。別の態様において、心毒性のある治療処置は、化学療法である。別の態様において、リン脂質は、心血管疾患のための既存の患者ケアパラダイムと組み合わせて送達される、ホスファチジルグリセロールである。別の態様において、1又は2以上のリン脂質は、心毒性のある治療処置の終了後に、心毒性を予防する。別の態様において、1又は2以上のリン脂質は、心毒性のある治療処置の前、間又は後のうち少なくとも1つに提供される。別の態様において、薬剤は、アントラサイクリン、ドキソルビシン、ダサチニブ、イマチニブメシル酸塩、ラパチニブ、ニロチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ又はトラスツズマブのうち少なくとも1つである。別の態様において、心毒性のある治療処置は、47Sc、64Cu、67Cu、89Sr、86Y、87Y、90Y、105Rh、111Ag、111In、117Sn、149Pm、153Sm、166Ho、177Lu、186Re、188Re、211At、212Bi及びそれらの組合せからなる群から選択される放射線治療剤である。別の態様において、リン脂質は、心毒性のある治療処置の適用と同時に送達される、ホスファチジルグリセロールである。別の態様において、リン脂質は、心膜線維化、心内膜心筋線維化、心不全、出血性心筋壊死、心筋症、心筋炎、左室駆出率(LVEF)低減、うっ血性心不全(CHF)、急性冠疾患、高血圧、心筋梗塞又は心膜炎のうち少なくとも1つを抑制する、ホスファチジルグリセロールである。別の態様において、心毒性のある治療処置は、スニチニブ及びドキソルビシンを用いた化学療法である。別の態様において、リン脂質は、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロール(DMPG)を含む、ホスファチジルグリセロール含有化合物である。別の態様において、心毒性のある治療処置は、チロシンキナーゼ阻害剤を用いる。別の態様において、心毒性のある治療処置は、カネルチニブ(CI 1033)、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブメシル酸塩、レフルノミド(SU101)、ラパチニブ、セマキシニブ(SU5416)、ソラフェニブ(BAY 43-9006)、スニチニブ、バタラニブ(PTK787/ZK222584)、バンデタニブ(ZD6474)及びそれらの組合せからなる群から選択される、チロシンキナーゼ阻害剤である。別の態様において、治療処置は、47Sc、64Cu、67Cu、89Sr、86Y、87Y、90Y、105Rh、111Ag、111In、117Sn、149Pm、153Sm、166Ho、177Lu、186Re、188Re、211At、212Bi及びそれらの組合せからなる群から選択される、放射線治療剤である。別の態様において、心毒性のある治療処置は、アレムツズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、ゲムツズマブ、パニツムマブ、リツキシマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ及びそれらの組合せからなる群から選択される、モノクローナル抗体である。別の態様において、低減される又は緩和される心毒性は、左室駆出率の低下、駆出速度の低下、慢性心不全又はうっ血性心不全のうち少なくとも1つである。別の態様において、リン脂質は、心毒性のある化学療法剤を封入しないホスファチジルグリセロールである。
【0026】
別の実施形態において、本発明は、対象における化学療法後の心毒性を予防する又は低下させるための方法であって、化学療法剤又は処置の心毒性作用からの心臓保護の必要がある対象を特定するステップ、及び対象の心臓に対して心臓保護的である有効量の1又は2以上のリン脂質を送達し、それにより化学療法の心毒性に伴う収縮期駆出率障害を抑制する又は低下させるステップを含む、方法を包含する。
【0027】
別の実施形態において、本発明は、治療剤により引き起こされた心毒性を治療するのに有用であると考えられる候補薬物を評価する方法であって、(a)患者の集団から心毒性を測定するステップ、(b)患者の第1のサブセットに候補薬物を投与し、患者の第2のサブセットにプラセボを投与するステップ、(c)候補薬物又はプラセボの投与後にステップ(a)を繰り返すステップ及び(d)候補薬物が、患者の第2のサブセットにおいて発生している何らかの低減と比較して、統計学的に有意に、治療剤により引き起こされた心毒性を低減するかどうかを決定するステップを含み、統計学的に有意な低減が、候補薬物が前記疾患状態を治療するのに有用であることを示す、方法を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の特色及び利益をより完全に理解するために、ここで、本発明の詳細な説明を、添付の図面とともに参照する。
図1】本発明が、スニチニブ投与に起因するQT延長を予防することを示すグラフである。図1において、QT間隔は、皮膚表面電極を使用して、指定された間隔で測定された。QT間隔は、バゼット式のとおりに修正され、*は、スニチニブ単独(左)動物とスニチニブ+1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロール(DMPG)(右)動物との間の統計学的に有意な差異を示す。
図2】本発明が、スニチニブ投与に起因する平均動脈圧の増加を予防することを示すグラフである。
図3】本発明が、スニチニブにより治療された動物における左室肥大を制限することを示すグラフである。
図4A-4B】スニチニブ及び本発明の併用治療が、初期の心不全に伴う左室拡張を制限することを示すグラフである。
図5A-5B】本発明が、スニチニブ治療に伴うLV駆出速度の低下を制限することを示すグラフである。
図6】本発明が、スニチニブにより誘発された左室収縮終末期圧の低下を予防することを示すグラフである。
図7】本発明を用いた処置が、スニチニブ投与に伴う左室内径短縮率(left-ventricular fractional shortening)の低下を予防することを示すグラフである。
図8】本発明を用いた処置が、スニチニブを用いた処置期間にわたり、動物において観察される体重低減を予防することを示すグラフである。
図9】有意に低いレベルをもたらす、スニチニブ及び本発明の併用投与の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の多様な実施形態の作製及び使用が以下に詳細に論じられる一方、本発明は、広範な特定の文脈において実現されることが可能な、多数の適用可能な発明概念を提供することを理解すべきである。本明細書において論じられる特定の実施形態は、本発明を作製し使用するための特定の方法を単に例示するものであって、本発明の範囲を定めるものではない。
【0030】
本発明の理解を促進するために、いくつかの用語を以下に定義する。本明細書において定義される用語は、本発明に関する領域における当業者により一般的に理解されるような意味を有する。「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「前記(the)」のような用語は、単一の実体のみを指すことを意図せず、特定の例が例示のために使用され得る一般的な部類を包含する。本明細書の用語学は、本発明の特定の実施形態を記述するのに使用されるが、これらの語法は、特許請求の範囲において概説されるものを除き、本発明を限定しない。
【0031】
本発明は、肥大、拡張、房室ブロック(AVブロック)及び他の心疾患を包含する薬物誘発性の心毒性を抑制する脂質であって、例えば、経口、非経口(静脈内若しくは皮下)投与により、心毒性のある薬物の前に提供することができ、又は、心毒性のリスクを示すことが既知である治療剤の前に、同時に若しくは順次に、空のリポソームとして提供することができる、脂質を提供することを含む。
【0032】
本発明書において使用される「脂質」という用語は、例えば、ステロール、特にコレステロールを追加してもよい、リン脂質等の脂質を指す。脂質は、単独で又は他の脂質と組み合わせて提供することができ、飽和又は不飽和、分枝又は非分枝であることができ、脂質トリグリセロール分子の形態であることができる。本発明とともに使用するためのリン脂質の非限定的例は、これらに限定されないが、例えば、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロール(DMPG)、DMPC/DMPG、1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)(LysoPG)、1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)(LysoPG)、1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(LysoPC)、リゾホスファチジルコリン、ラウロイル-リゾホスファチジルコリン、ミリストイル-リゾホスファチジルコリン、パルミトイル-リゾホスファチジルコリン、ステアロイル-リゾホスファチジルコリン、アラキドイル-リゾホスファチジルコリン、オレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレノイル-リゾホスファチジルコリン又はエルコイル-リゾホスファチジルコリンを包含する。本発明とともに使用するための他の非限定的な例示的な脂質は、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ホスファチジルイノシトール又はそれらの脂質、リポソーム、又はリゾ体の前駆体を包含する。脂質の非限定的例は、リゾホスファチジルコリン、ラウロイル-リゾホスファチジルコリン、ミリストイル-リゾホスファチジルコリン、パルミトイル-リゾホスファチジルコリン、ステアロイル-リゾホスファチジルコリン、アラキドイル-リゾホスファチジルコリン、オレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレオイル-リゾホスファチジルコリン、リノレノイル-リゾホスファチジルコリン又はエルコイル-リゾホスファチジルコリンを包含する、本発明とともに使用するためのリゾホスファチジルグリセロールを包含する。非対称ホスファチジルコリンは、アシル基が互いに異なる、1-アシル,2-アシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンと称される。対称ホスファチジルコリンは、1,2-ジアシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンと称される。本明細書において使用される「PC」という略語は、ホスファチジルコリンを指す。ホスファチジルコリンである1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンは、本明細書において「DMPC」と略される。ホスファチジルコリンである1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンは、本明細書において「DOPC」と略される。ホスファチジルコリンである1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンは、本明細書において「DPPC」と略される。これらの短鎖又は長鎖脂肪酸の1本の脂肪酸鎖バージョンは、1本の脂肪酸鎖のみがグリセリル骨格に結合しているとき、「リゾ」体と称される。本発明の指針に従い、他の脂質は、不適当な実験を伴うことなく、本明細書において教示されるような特許請求される機能を有すると認識することができる。
【0033】
一実施形態において、リゾホスファチジルグリセロールは、基本構造
【0034】
【化7】
【0035】
(式中、R又はRは、任意の偶数又は奇数鎖の脂肪酸であることができ、Rは、H、アシル、アルキル、アリール、アミノ酸、アルケン、アルキンであることができ、短鎖脂肪酸は最大5個の炭素であり、中鎖は6-12個の炭素であり、長鎖は13-21個の炭素であり、超長鎖脂肪酸は22炭素超であり、偶数及び奇数鎖の脂肪酸の両方を包含する)を有する。一例において、脂肪酸は、飽和又は不飽和であることができる、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55又は長い脂肪酸を有する。
【0036】
別の実施形態において、ホスファチジルグリセロールは、基本構造
【0037】
【化8】
【0038】
(式中、そのような化合物は、ヒドロキシル基の1又は2以上に結合したアセチル部分を包含してもよい)を有する。
【0039】
「リポソーム」という用語は、これらの壁又は膜が、ステロール、特にコレステロールを追加してもよい、脂質、特にリン脂質から形成されているカプセルを指す。特定の非限定的な一例において、リポソームは、空のリポソームであり、1種類のリン脂質又はリン脂質の組合せから調合することができる。空のリポソームは、タンパク質、炭水化物、糖脂質又は糖タンパク質、及びさらにはアプタマーのような核酸、チオールで修飾された核酸、タンパク質核酸模倣物(protein nucleic acid mimics)、タンパク質模倣物、ステルス剤(stealthing agents)等のような1又は2以上の表面修飾をさらに包含することができる。本発明とともに使用するための空のリポソームの非限定的例は、限定されないが、例えば、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルコリン(DMPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロール(DMPG)、DMPC/DMPG、1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)(LysoPG)、及び1-ミリストイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)(LysoPG)を包含する。一実施形態において、リポソームは、例えば、LysoPG、ミリストイルモノグリセリド及びミリスチン酸を含む、リポソーム又はリポソーム前駆体である。特定の非限定的な一例において、組成物は、リポソーム中又はその近くに活性薬剤も含み、組成物は、リン脂質の活性薬剤に対する、3:1、1:1、0.3:1及び0.1:1の比を有する。
【0040】
一実施形態において、脂質は、以下の構造式
【0041】
【化9】
【0042】
、その塩若しくは溶媒和物、
【0043】
【化10】
【0044】
、その塩若しくは溶媒和物、
【0045】
【化11】
【0046】
、その塩若しくは溶媒和物、
【0047】
【化12】
【0048】
、その塩若しくは溶媒和物、
【0049】
【化13】
【0050】
、その塩若しくは溶媒和物、又は
【0051】
【化14】
【0052】
、その塩若しくは溶媒和物
を有する。
【0053】
本明細書において使用される場合、「インビボ」という用語は、体内であることを指す。本出願において使用される場合、「インビトロ」という用語は、非生体系において実行される操作を示すものとして理解される。
【0054】
本明細書において使用される場合、「処置」という用語は、特に疾患又は障害の症状を示す患者における、本明細書において言及される状態の処置を指す。
【0055】
本明細書において使用される場合、「処置」又は「処置する」という用語は、本発明の化合物の任意の投与を指し、(i)病的な状態若しくは症状を経験している若しくは示している動物における疾患を抑制する(すなわち、病理及び/若しくは症状のさらなる発現を停止させる)こと又は(ii)病的な状態若しくは症状を経験している又は示している動物における疾患を改善する(すなわち、病理及び/若しくは症状を回復させる)ことを包含する。「管理する」という用語は、管理されている状態の重症度を、予防する、治療する、根絶する、改善する又は他には低減することを包含する。
【0056】
本明細書において使用される場合、本明細書において記述される「有効量」又は「治療的有効量」という用語は、研究者、獣医、医師又は他の臨床家により求められる、組織、系、動物又はヒトの生物学的又は医学的反応を誘発する対象化合物の量を意味する。
【0057】
本明細書において使用される場合、化合物「の投与」又は「を投与する」という用語は、限定されないが、錠剤、カプセル、シロップ、懸濁液等のような経口剤形、IV、IM又はIP等のような注射可能剤形、クリーム、ゼリー、粉末又はパッチを包含する経皮的剤形、頬側剤形、吸入粉末、スプレー、懸濁液等及び直腸坐薬を包含する、治療的に有用な形態及び治療的に有用な量で個人の体内に導入することができる形態で、治療の必要がある個人に、本発明の化合物を提供することを意味すると理解されるべきである。
【0058】
本明細書において使用される場合、「静脈内投与」という用語は、注射及び他の型の静脈内投与を包含する。
【0059】
本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、担体、希釈剤又は賦形剤が、製剤の他の成分と適合性を有さなければならず、これらのレシピエントに対して有害でないことを記述するために、本明細書において使用される。
【0060】
チャネル病。ヒトether-a-go-go遺伝子関連心四量体カリウムチャネルは、変異した場合、患者を、イオン伝導を抑制し活動電位を下方制御し得る163種を超える薬物に対して感受性にさせることがある。活動電位の延長は、カリウムチャネルにおける作用に後続する。イオンチャネル活性薬は、QTc間隔を直接的に増加させ、トルサード・ド・ポワント(torsade de pointes)及び心臓突然死のリスクを増加させることがある。心筋細胞カリウムチャネルの薬物に対する感受性の増悪は、糖尿病を包含する代謝性疾患状態に関連することもあり、特発性の原因であることもある。
【0061】
これらの理由から、心カリウムチャネル機能に対する薬物作用の評価は、薬物開発中の重要なステップであり、重篤な場合、規制当局の承認に対する妨げとなることがある。ホールセルパッチクランプ実験において、クルクミンは、用量依存的様式で、5.55μMのIC50値で、hERGチャネルを安定して発現しているHEK293細胞においてhERG K電流を抑制した。hERGチャネルの非活性化、不活化及び不活化からの回復時間は、10μMクルクミンを用いた急性処置により、有意に変化した。24時間の20μMクルクミンのインキュベーションは、HEK293細胞の生存率を低減させた。ウサギにおけるクルクミン20mgの静脈内注射は、QTc値に反映される心再分極に影響を及ぼさなかった。(Hu CW 2012)。これらの分子は、最初に親油性薬物と結合して生理的条件下で静脈内で可溶性とし、有害事象を低減する特定のリポソーム又はリポソームの構成要素である。作用位置は、カリウムイオンの動きを管理している、すなわち、下流に筋細胞の収縮をもたらす活動電位の制御の重要な機能的構成要素である、チャネル内のイオン選択性又はゲート部位であると考えられる。
【0062】
説明として、決して本発明を限定するものではなく、ヒトether-a-go-go関連遺伝子チャネル遮断の機序は、外部から適用された第四級アンモニウム誘導体の作用と同様であり、このことは間接的に、DMPC/DMPGリポソーム又はその代謝体の抗遮断効果の作用機序を示唆し得る。阻害定数及びチャネル阻害のための相対結合エネルギーは、より疎水性の第四級アンモニウムが、より高い親和性遮断を有し、一方、陽イオン-π相互作用又はサイズ作用が、第四級アンモニウムによるチャネル阻害における決定性因子ではないことを示す。また、テトラエチルアンモニウムよりも長い尾部基又はより大きい頭部基のいずれかを有する疎水性の第四級アンモニウムは、細胞膜に浸透し、遺伝子チャネル内の高親和性の内部結合部位に容易に接近し、より強い遮断を発揮する。
【0063】
これらのデータは、改善作用リポソーム又はその構成要素の基礎が、DMPC及びDMPGにより、QTc延長薬と比較して、結合部位により高く競合親和性であること、イオン輸送調節についてその構成的欠如を有する、すなわちリポソーム又はその断片がK+イオン輸送を妨害しないことを示す。
【0064】
再び、説明として、決してこれらの特許請求の範囲を限定するものではなく、これらのデータは、改善作用リポソーム又はその構成要素の基礎が、DMPC及びDMPGにより、QTc延長薬と比較して、結合部位により高く競合親和性であること、イオン輸送調節についてその構成的欠如を有する、すなわちリポソーム又はその断片がK+イオン輸送を妨害しないことを示し、DMPC又はDMPG保護の機序の部位は、チャネルの選択性セグメント又はイオンの周囲の水和にあり得ることを示す。加えて、これらのhERGチャネルデータに基づき、これらのリポソーム構成要素の構造は、薬物誘発性の不整脈を予防するための他の分子を設計又は選択するのに有益であり得る。
【0065】
重量が0.40kg~0.50kgである未治療の成体雄のHartleyモルモットを、28日間のスニチニブ(10mg/kg/日)、続けて15日の休息、別の28日サイクル、続けて最後の15日の休薬期間のいずれかで治療した。治療は、10mg/kg/日の用量で、本発明を伴った又は伴わなかった。これは、ヒトにおける化学療法の一般的なサイクルを模倣して設計された。体重を1週1回、並びに摂食量を測定した。採血及び心エコーを、0日目(治療前)、43日目(休息期間終了時、サイクル間)及び86日目に得た。全身動脈血圧を、86日目のみ、侵襲的に測定した。トロポニンI及びT、並びにCKMB(ホスホクレアチンキナーゼ-心アイソフォーム)を、血液から定量し、一方、心エコーデータを右及び左室容積並びに駆出動態について分析した。各動物の心臓をランゲンドルフ逆行性灌流システムに載せ、左室収縮性及び動態を測定した。
【0066】
結果。スニチニブに曝露した動物(群あたりn=6)は、本発明と併用投与されたスニチニブと比較して、以下の症状を示した。
1. 28日目の時点での15~25msのQTc延長は、86日目(屠殺)まで着実に増加する(図1)。
2. 有意により高い平均動脈血圧(図2
3. 慢性高血圧が、
a. 肥大の発生を伴う左室の拡張(図3、4)
b. より低い駆出速度(図5
c. より低い左室収縮終末期圧(図6
d. より低い左室内径短縮率(図7
により特徴づけられる、うっ血性心不全をもたらす。
4. 治療期間にわたる有意な体重低減(図8
5. 心筋傷害を示す、有意により高いトロポニンIレベル(図9
【0067】
比較すると、スニチニブ及び本発明を併用投与された動物は、
1. 0日目のデータに対するQTc間隔における変化なし
2. うっ血性心機能不全をもたらす可能性が低い、より低い平均動脈圧
3. 肥大、左室動態の変化及び体重低減を包含するうっ血性心不全の、有意により低い症状
を示した。
【0068】
図1は、本発明が、スニチニブ投与に起因するQT延長を予防することを示すグラフである。図1において、QT間隔は、皮膚表面電極を使用して、指定された間隔で測定された。QT間隔は、バゼット式のとおりに修正された。*は、スニチニブ単独(左)動物とスニチニブ+1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロール(DMPG)(右)動物との間の統計学的に有意な差異を示す。
【0069】
図2は、本発明が、スニチニブ投与に起因する平均動脈圧の増加を予防することを示すグラフである。図2において、86日目に、カテーテルを取り付けられた圧トランスデューサーを麻酔した動物の大腿動脈内に挿入することにより、平均動脈圧を侵襲的に測定した。スニチニブ+1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロール(DMPG)動物は、スニチニブ単独を受けている動物よりも、有意により低い平均動脈圧を示した。
【0070】
図3は、本発明が、スニチニブにより治療された動物における左室肥大を制限することを示すグラフである。図3において、スニチニブは、86日間(2サイクル)の治療の後に、心肥大を引き起こした。左室サイズの増加(拡張)は、全心重量を増加させた。対照的に、スニチニブ及び1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロール(DMPG)を用いて治療された動物は、有意に低い心重量の増加を示した。
【0071】
図4A及び4Bは、スニチニブ及び本発明の併用治療が、初期の心不全に伴う左室拡張を制限することを示すグラフである。図4A及び4Bにおいて、初期の心不全は、LV拡張により特徴づけられる。拡張期の終了時(A、すなわち左室の完全な充満後)及び収縮期の終了時(B:心室がその内容物を大動脈中に出し尽くしたとき)に測定したとき、スニチニブ単独は、スニチニブ+1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロール(DMPG)よりも大きなLV拡張を引き起こした。治療が進行するにつれて、不全を起こしているLVは、より拡張する。本発明は、スニチニブにより引き起こされたLVの拡張を制限する。
【0072】
図5A及び5Bは、本発明が、スニチニブ治療に伴うLV駆出速度の低下を制限することを示すグラフである。図5Aにおいて、大動脈弁でのLV駆出速度(AoV最大値)の緩やかな低下*を、スニチニブにより治療された動物において、心エコーにより測定することができた。駆出速度の低下は、初期のLV不全に特徴的である。本発明及びスニチニブの組合せを受けた動物は、駆出速度においていかなる低下も示さなかった。図5Bにおいて、86日目に、動物を安楽死させ、心臓をランゲンドルフ逆行性灌流システムに載せた。左室圧トランスデューサーを左室内に挿入し、LV収縮幅及び動態を記録した。LVの収縮率は、本発明とスニチニブの組合せを用いて治療された動物と比較して、スニチニブ単独動物において、より低かった。
【0073】
図6は、本発明が、スニチニブにより誘発された左室収縮終末期圧の低下を予防することを示すグラフである。図6において、治療の86日目に心臓から発生した圧を、ランゲンドルフ逆行性灌流システムにおいて、生体外で測定した。スニチニブ単独で治療された動物由来の心臓は、スニチニブ及び本発明の組合せを用いて治療された動物由来の心臓よりも、有意により低く発生したLV圧(より低い収縮力)を示した。
【0074】
図7は、本発明を用いた処置が、スニチニブ投与に伴う左室内径短縮率(left-ventricular fractional shortening)の低下を予防することを示すグラフである。図7において、LV内径短縮率(LV fractional shortening)の低下は、初期の心筋リモデリングに起因する。スニチニブ単独で治療された動物は、LV駆出率の低下をもたらす、LV内径短縮率の時間依存性低下を示し、これはスニチニブ及び本発明を用いて治療された動物において観察されなかった。2群の動物間の差異は、86日間の治療後に統計学的に有意であった。
【0075】
図8は、本発明を用いた処置が、スニチニブを用いた処置期間にわたり、動物において観察される体重低減を予防することを示すグラフである。図8において、実験動物における健康状態又は逆に不快の一般的な指標は、体重低減である。スニチニブを用いて治療された動物は、86日間の治療にわたり限られた体重増加を示し、一方、スニチニブ及び本発明で併用治療された動物は、統計学的により大きな体重増加を示し、治療に伴う不快のレベルが低いことを示唆している。
【0076】
図9は、有意に低いレベルをもたらす、スニチニブ及び本発明の併用投与の結果を示すグラフである。図9は、心不全において、心筋過剰負荷による伸展が、筋細胞の壊死及びアポトーシスを誘発し、トロポニンT及びIを放出させることがあることを示す。トロポニンIは、概してより高感度であると考えられ、急性及び慢性の心筋窮迫のバイオマーカーとして使用された。スニチニブ単独で治療された動物は、本発明及びスニチニブを用いて治療された動物よりも有意に高い、トロポニンIのレベルを生じた。さらに、スニチニブ単独で治療された動物は、インタクトな動物において測定されたレベル(0.05ng/mL、データは示されていない)よりも有意に大きいトロポニンレベルを呈した。
【0077】
同様の結果が、未治療、成体、雄のSprague-Dawleyラットで得られた。モルモットは、ラットのECG信号よりも読みやすいECG信号、特に、正確なQT間隔測定のために不可欠なT波を示すため、この開発プログラムにおいて、モルモットを試験種として使用した。
【0078】
動物(モルモット)を、1.5dmg/kg/日のドキソルビシンに、単独又は本発明との併用投与で、同一の治療期間曝露したとき、同様の結果が得られた。
【0079】
これらの結果は、スニチニブ及びドキソルビシンと心臓保護的なホスファチジルグリセロールとの併用投与が、心毒性のある化学療法剤に伴う心有害作用を効果的に緩和し、さらには抑制することを示す。
【0080】
したがって、非限定的な一例において、より侵襲的な治療量は患者により経験される心有害作用により現在制限されているため、そのような治療量の結果として、これらの化学療法剤と本発明との併用投与は、より早い患者の回復をもたらす。
【0081】
本明細書において論じられる任意の実施形態は、本発明の任意の方法、キット、試薬又は組成物に関して実行することができ、その逆も同様であることが意図されている。さらに、本発明の組成物は、本発明の方法を達成するために使用することができる。
【0082】
本明細書において記述されている特定の実施形態は、例示として示され、本発明を限定するものではないことが理解される。本発明の主要な特色は、本発明の範囲から逸脱することなく、多様な実施形態において利用することができる。当業者は、単に日常的な実験を使用して、本発明において記述される特定の手順に対する多数の等価物を、認識する、又は確認することができる。そのような等価物は、本発明の範囲内であり、特許請求の範囲に含まれると考えられる。
【0083】
本明細書において言及されるすべての刊行物及び特許出願は、本発明が属する当業者の技術水準を示すものである。すべての刊行物及び特許出願は、各個別の刊行物又は特許出願が具体的且つ個別に参照により組み込まれると示されているものとして、同程度に本明細書に参照により組み込まれる。
【0084】
「1つの(a)」又は「1つの(an)」という語の使用は、特許請求の範囲及び/又は本明細書において「を含む」という用語と合わせて使用される場合、「1つ」を意味し得るが、「1又は2以上」「少なくとも1つ」及び「1又は1を超える」の意味とも一致する。特許請求の範囲における「又は」という用語の使用は、選択肢のみを指す又は選択肢が互いに排他的であることを明白に示さない限り、「及び/又は」を意味するために使用されるが、本開示は、選択肢のみ及び「及び/又は」を指すという定義を支持する。本出願中、「約」という用語は、値が、デバイス、値を決定するのに利用される方法の固有の誤差変動、又は試験対象中に存在する変動を包含することを示すのに使用される。
【0085】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、「を含む(comprising)」(並びに「を含む(comprise)」及び「を含む(comprises)」のような、を含む(comprising)の任意の型)、「を有する(having)」(並びに「を有する(have)」及び「を有する(has)」のような、を有する(having)の任意の型)、「を包含する(including)」(並びに「を包含する(includes)」及び「を包含する(include)」のような、を包含する(including)の任意の型)、又は「を含有する(containing)」(並びに「を含有する(contains)」及び「を含有する(contain)」のような、を含有する(containing)の任意の型)という語は、包括的又は制限のないものであり、さらなる、列挙されていない要素又は方法ステップを除外しない。本明細書において提供されている、組成物及び方法のいずれかの実施形態において、「を含む」は、「本質的に~からなる」又は「からなる」と代替することができる。本明細書において使用される場合、「本質的に~からなる」という語法は、特定の完全体又はステップ、並びに特許請求される本発明の特徴又は機能に物質的な影響を及ぼさないものを必要とする。本明細書において使用される場合、「からなる」という用語は、列挙された完全体(例えば、特色、要素、特徴、特質、方法(method/process)ステップ若しくは制限)又は完全体の群(例えば、特色、要素、特徴、特質、方法(method/process)ステップ若しくは制限)の存在のみを示すために使用される。
【0086】
本明細書において使用される場合、「又はそれらの組合せ」という用語は、用語に先行して列挙された項目の、すべての順列及び組合せを指す。例えば、「A、B、C又はそれらの組合せ」は、A、B、C、AB、AC、BC又はABC、及び特定の文脈において順序が重要である場合、また、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC又はCABの少なくとも1つを包含することを意図する。この例に続き、BB、AAA、AB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABB等のような、1又は2以上の項目又は用語の繰り返しを含有する組合せも明示的に包含される。当業者は、他に文脈から明白でない限りにおいて、典型的に、いかなる組合せにおいても項目又は用語の数に制限が存在しないことを理解する。
【0087】
本明細書において使用される場合、限定するものではないが、「約」「実質的」又は「実質的に」のような近似の語は、そのように修飾されたとき、必ずしも絶対又は完全ではないが、存在するような状態を表すことを保証するために当業者に十分近いと考えられるであろうことが理解される状態を指す。本明細書が変動し得る範囲は、どの程度大きな変化が起こることがあるかに依存し、なお、当業者に、修飾された特色を、求められている修飾されていない特色の特徴及び能力をなお有するものとして認識させる。概して、しかし先行する議論を条件として、「約」のような近似の語で修飾された本明細書の数値は、記載された値から少なくとも±1、2、3、4、5、6、7、10、12又は15%、変動することがある。
【0088】
本明細書において開示され、特許請求されるすべての組成物及び/又は方法は、本開示に照らして不適当な実験を伴わずに作製及び実行することができる。本発明の組成物及び方法が好ましい実施形態の点から記述されているが、本発明の概念、精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書で記述される組成物及び/又は方法、並びにステップ又は方法の一連のステップに、変更が適用され得ることが、当業者に明白である。当業者に明白な、すべてのそのような同様の置き換え及び修飾は、添付の特許請求の範囲により定義される、本発明の精神、範囲及び概念内にあると考えられる。
【0089】
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図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9