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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】防災情報受信システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/16 20060101AFI20240403BHJP
   H04B 1/38 20150101ALI20240403BHJP
   H04H 20/59 20080101ALI20240403BHJP
   H04H 40/18 20080101ALI20240403BHJP
   G08B 23/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
H04B1/16 M
H04B1/38
H04H20/59
H04H40/18
G08B23/00 530E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020045120
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021150667
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 掲載年月日 令和元年10月30日 掲載アドレス https://www.soumu.go.jp/soutsu/hokuriku/press/2019/pre191030.html 集会名 令和元年度福井県総合防災訓練 開催日 令和元年11月2日 発行者名 株式会社電波新聞社 刊行物名 電波新聞 令和元年11月4日付日刊第2面 発行年月日 令和元年11月4日 発行者名 株式会社電波新聞社 刊行物名 電波新聞 令和元年11月13日付日刊第11面 発行年月日 令和元年11月13日 発行者名 株式会社電波タイムス社 刊行物名 電波タイムズ 令和元年11月18日付隔日刊 第1頁 発行年月日 令和元年11月18日 集会名 北陸防災情報通信セミナー 開催日 令和元年12月5日 発行者名 NPO法人たんなん夢レディオ 刊行物名 夢レディオ編集室 vol.56 第43頁 発行年月日 令和2年1月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】506087163
【氏名又は名称】タイヨー電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003203
【氏名又は名称】弁理士法人大手門国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100111855
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 好昭
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏一
(72)【発明者】
【氏名】田村 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】芝 祐介
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-033276(JP,A)
【文献】特開2017-041874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/16
H04B 1/38
H04H 20/59
H04H 40/18
G08B 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送信号を受信して防災情報に対応する制御情報を送信する受信機及び当該制御情報を受信して動作する防災設備を備えた防災情報受信システムであって、
前記受信機は、放送信号を受信する信号受信部と、前記信号受信部に受信された放送信号に含まれるDTMF信号を抽出する信号処理部と、前記信号処理部で抽出されたDTMF信号を処理して防災情報に対応するコード情報を読み出すコード処理部と、前記コード処理部において読み出された前記コード情報を毎回異なる変換処理により制御情報を作成する送信処理部とを備えており、
前記防災設備は、受信した前記制御情報を元の前記コード情報に戻すように変換処理するとともに得られた前記コード情報に基づいて動作信号を出力する受信処理部と、前記動作信号に基づいて駆動信号を出力する動作処理部と、前記駆動信号により前記防災情報に対応する動作を行う動作部とを備えている防災情報受信システム。
【請求項2】
前記送信処理部は、複数の通信ラインに並行して前記制御情報に対応する信号を送信し、前記受信処理部は、複数の前記通信ラインから受信した前記信号に基づいて前記制御情報を受信する請求項1に記載の防災情報受信システム。
【請求項3】
前記コード情報には、前記防災設備の種別に関する情報が含まれている請求項1又は2に記載の防災情報受信システム。
【請求項4】
前記防災設備は、前記動作部の動作状態を検出する検出部と、前記検出部からの検出信号に基づいて状態信号を出力する検出処理部とを備えており、前記送信処理部は、前記状態信号に基づいて表示処理を行う請求項1から3のいずれかに記載の防災情報受信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害発生の際にテレビやラジオ等の受信機に送信される防災情報に対応して防災装置や防災設備を遠隔制御する防災情報受信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
国内では、地震、津波、台風、集中豪雨といった自然災害が毎年のように発生しているが、こうした災害に備えるために防災又は災害に関する情報を対象地域の住民に正確かつ迅速に提供し、避難活動、救急活動及び復旧活動等の防災活動を迅速に行うことが要請されている。
【0003】
防災又は災害に関する情報の提供については、テレビジョン放送、ラジオ放送、防災行政無線といったシステムを用いて対象地域の住民に伝達されるようになっているが、深夜の時間帯では、受信機の電源が切られていると情報が伝達されずに災害への対応が遅れてしまう、といった課題がある。また、集中豪雨のように局所的に発生する災害の場合には、広域放送で情報提供することは、関係ない地域にも緊急性の高い情報が頻繁に提供されるようになってしまい、災害情報に対する住民の認識が低下していざという時の対応が遅れてしまうデメリットがある。
【0004】
そのため、近年FM放送を利用して災害情報を提供することが提案されている。例えば、特許文献1では、ラジオ放送信号に含まれるDTMF信号(Dual-Tone Multi-Frequency)を検出して、検出されたDTMF信号に対応した災害情報を音声出力する緊急放送用ラジオ受信機が記載されており、雷サージ等のノイズの影響を受けることなく放送を用いて緊急放送を的確に伝達することができるとともに誤作動のない高い信頼性をえることができる。
【0005】
また、こうした災害情報の迅速な提供に対応して防災設備を自動的に制御することが提案されている。例えば、特許文献2では、災害発生信号を受信した場合に、コントローラからの指令に基づいて防災ロッカーの収納スペースの施錠を解除して開閉扉を開閉可能とする点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6449632号公報
【文献】特開2018-193790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、緊急放送を的確に伝えることで災害情報等を確実に周知することが可能となってきているが、緊急放送への対応をいかに確実に行うかが課題となる。特許文献2に記載されているように、災害情報に対応して自動的に防災ロッカーを開閉することで、避難活動に迅速に対応することが可能となるが、例えば、避難訓練の際に緊急放送に基づいて防災ロッカーを自動的に制御する場合、緊急放送に含まれる災害発生信号を読み取られて悪用されるおそれがある。
【0008】
特に、特許文献1に記載されているように、FM放送信号にDTMF信号を含ませて緊急放送信号を送信する場合、緊急放送が一度放送されると、送信された緊急放送信号を記憶して解析することができるようになる。そのため、解析された緊急放送信号に基づいて防災設備を制御して悪用することが可能となる。
【0009】
そのため、緊急放送が的確に伝えられたとしても、防災活動の迅速化にはなかなか結び付かないといった課題がある。
【0010】
そこで、本発明は、緊急放送等により防災情報を受信した場合に、防災活動を迅速・安全に行うことができる防災情報受信システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る防災情報受信システムは、放送信号を受信して防災情報に対応する制御情報を送信する受信機及び当該制御情報を受信して動作する防災設備を備えた防災情報受信システムであって、前記受信機は、放送信号を受信する信号受信部と、前記信号受信部に受信された放送信号に含まれるDTMF信号を抽出する信号処理部と、前記信号処理部で抽出されたDTMF信号を処理して防災情報に対応するコード情報を読み出すコード処理部と、前記コード処理部において読み出された前記コード情報を毎回異なる変換処理により制御情報を作成する送信処理部とを備えており、前記防災設備は、受信した前記制御情報を元の前記コード情報に戻すように変換処理するとともに得られた前記コード情報に基づいて動作信号を出力する受信処理部と、前記動作信号に基づいて駆動信号を出力する動作処理部と、前記駆動信号により前記防災情報に対応する動作を行う動作部とを備えている。さらに、前記送信処理部は、複数の通信ラインに並行して前記制御情報に対応する信号を送信し、前記受信処理部は、複数の前記通信ラインから受信した前記信号に基づいて前記制御情報を受信する。さらに、前記コード情報には、前記防災設備の種別に関する情報が含まれている。さらに、前記防災設備は、前記動作部の動作状態を検出する検出部と、前記検出部からの検出信号に基づいて状態信号を出力する検出処理部とを備えており、前記送信処理部は、前記状態信号に基づいて表示処理を行う。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上記のような構成を備えることで、防災活動を迅速・安全に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る実施形態に関する概略構成図である。
図2】コード情報の配列に関する一例を示す説明図である。
図3】コード情報の変換処理に関する説明図である。
図4】セキュリティ向上のための送信処理に関する一例を示す説明図である。
図5】各通信ラインに送信される信号の連続出力時間の組合せとDTMF信号との対応関係の一例を示すリストである。
図6】防災情報の受信処理に関するフローである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて詳しく説明する。図1は、本発明に係る実施形態に関する概略構成図である。この例では、防災情報受信システム1は、受信機としてラジオ受信機10を備えるとともに防災設備として鍵収納ボックス20を備えている。ラジオ受信機10は、FM放送を受信するとともに放送信号から防災情報に対応するDTMF信号を抽出して緊急放送を行う。鍵収納ボックス20は、例えば、災害発生の際の避難所、防災倉庫、防災ロッカー等の防災設備を施錠する鍵が収納されており、平時は開閉扉がロックされているが、防災情報に対応して自動的に解錠されて内部に保管された鍵を取り出せるようになっている。
【0015】
ラジオ受信機10は、AM放送、FM放送、テレビジョン放送、マルチメディア放送といった受信可能な放送信号を受信する信号受信部11、受信した放送信号に基づいて音声を出力する音声出力部12、信号受信部11からの受信信号を処理してその中に含まれるDTMF信号を抽出する信号処理部13、防災情報に対応して表示パネル等に警告表示を行う表示部14、信号処理部13で抽出されたDTMF信号を処理して防災情報に対応するコード情報を読み出すコード処理部15、コード処理部15において読み出された防災情報に基づいて鍵収納ボックス20に送信する制御情報を作成する送信処理部16、及び、鍵収納ボックス20との間で直接データの送受信を行う送受信部17を備えている。
【0016】
送受信部17は、鍵収納ボックス20等の防災設備に対して通信ネットワーク100を介してデータを送受信することが可能となっている。防災設備には、鍵収納ボックス20以外にも、例えば、避難誘導灯、非常時に点灯する照明設備、非常時に作動する交通信号機といった防災上必要となるインフラ設備も含まれる。こうしたインフラ設備に緊急放送受信システムを取り付ける場合には、上述した機能を備えるFM放送受信機を取り付けることで、緊急放送により自動的にインフラ設備を作動させることができ、迅速な防災活動を進めることが可能となる。なお、インフラ設備等に受信機を設置する場合には、上述したラジオ受信機の音声出力部及び表示部が不要となり、信号処理を行う受信機としてコンパクト化することができる。
【0017】
コード処理部15は、信号処理部13で抽出された複数のDTMF信号の組み合せからなるコード情報が所定回数入力されたか判定するとともに入力されたコード情報のうち規定数のコード情報が一致しているか判定するコード識別部150、規定数が一致すると判定されたコード情報のうちDTMF信号の組み合せを判定するコード判定部151、及び、所定の組合せであると判定されたコード情報に基づいて表示部14等の制御処理を行うコード制御部152を備えている。
【0018】
コード処理部15では、FM放送信号から抽出したDTMF信号にノイズが含まれていないかチェックして送信されたDTMF信号を正確に受信し、受信されたDTMF信号の組み合せに対応するコード情報を判定して防災活動等に必要な出力処理を行う。
【0019】
例えば、雷サージに伴って発生するノイズにDTMF信号に類似する信号が存在することが確認されており、災害情報といった緊急放送が必要となる状況では、周辺に雷が多発している気象条件であることが多い。そのため、こうしたノイズ対策は必要不可欠となるが、コード識別部150では、コード情報であると判定された場合でも規定数が一致するか判定するようにしているため、コード情報を誤りなく識別することができる。例えば、FM放送信号で同じコード情報を3回繰り返して送信し、受信したコード情報が2回一致するか判定することで、一部のコード情報にノイズが入り込んでいても確実にコード情報を識別することが可能となる。
【0020】
コード処理部15は、コード判定部151で判定されたコード情報のDTMF信号の組み合せに基づいて、コード制御部152が表示部14の表示制御を行うとともに、防災情報を受信するように信号処理部11を制御して音声出力部12に対して音声出力するように制御するようになっている。
【0021】
コード処理部15では、処理に必要となる複数のDTMF信号の組み合せからなるコード情報を予め記憶している。
【0022】
DTMF信号は、CCITT(国際電信電話諮問委員会)の勧告により2つの組み合せで定められており、電話機のプッシュボタンに対応して音声帯域内の4周波数で構成される高群及び低群からそれぞれ選択された2つの周波数を組み合せて1つのDTMF信号とされている。そして、DTMF信号は、高群及び低群のそれぞれ4種類の周波数の組み合せに対応して0~9までの数字と*、#、A~Dまでの記号の計16種類の符号が付与されている。こうしたDTMF信号を複数個組み合わせることで、個別に識別可能な多数の信号を作成することができる。
【0023】
図2は、コード情報の配列に関する一例を示している。この例では、コード情報は、ワード開始キー「D」に続いて自治体を識別するコード*1(2桁目及び3桁目;都道府県、4桁目及び5桁目;市町村)、地域属性を識別するコード*2(6桁目;対象者、7桁目及び8桁目;地区)、防災設備の種別を識別するコード*3(防災倉庫、避難所、信号機等)、起動停止コード*4及びワード終了キー「C」で構成されている。そして、各桁について送信されたDTMF信号に基づいて符号を読み取ることで、12桁の一連のコード情報を読み取ることができる。上述した防災関連情報に合わせてコード情報を設定することで、きめ細かく防災情報を伝達して防災活動等を迅速的確に行うことが可能となる。
【0024】
また、制御する防災設備の数が増加した場合にはコード*3のデータコード長を増加して対応することができる。セキュリティを高めるために、起動停止コード*4が含まれるコード長を増加させて起動停止コード*4の挿入位置を変更可能とすることもできる。
【0025】
送信処理部16は、コード処理部15から送信されたコード情報を変換して送受信部17に送信するようになっている。コード情報の変換処理は、放送信号から抽出されたコード情報とは毎回異なるように変換することで、防災設備に送信する制御情報を簡単に読み取られないようにしてセキュリティを高めるようになっている。
【0026】
また、送信処理部16は、鍵収納ボックス20から送信された動作状態を示す状態信号を受信して正しく動作していない場合には、エラーメッセージを音声出力部12及び表示部14から出力するように処理する。
【0027】
図3は、コード情報の変換処理に関する説明図である。この例では、テーブルデータ変換方式でコード情報を変換処理している。1回目は、コード情報をそのまま変換せずに出力されるが、2回目では、データを1つずつシフトさせるように変換処理する。そして、3回目では、データを2つずつシフトさせ、4回目では、データを3つずつシフトさせるように変換処理し、5回目以降についても同様にシフトさせるデータ数を変化させて変換処理することで、毎回異なる制御情報を送信するようにすることができる。
【0028】
鍵収納ボックス20は、ラジオ受信機10の送受信部17との間でデータを送受信する送受信部21、受信された制御情報を元のコード情報に戻すように変換処理するとともに元のコード情報に基づいて動作信号を出力する受信処理部22、受信処理部22から出力された動作信号に基づいて駆動信号を出力して動作部24を動作させる動作処理部23、動作処理部23から出力された駆動信号によりコード情報に対応する動作を行う動作部24、動作部24の動作状態を検出する検出部25、及び、検出部25の検出信号に基づいて状態信号を出力する検出処理部26を備えている。
【0029】
受信処理部22は、送信処理部16での変換処理のアルゴリズム対応するアルゴリズムを備えており、処理されて得られた元のコード情報に基づいて動作信号を出力するようになっている。例えば、図3に示す例の場合には、2回目以降に回数に対応してシフトさせたデータを元の位置に戻す処理を行うことで、元のコード情報を得ることができる。
【0030】
そして、得られたコード情報が鍵収納ボックス20の設置場所等の属性に該当する場合には、動作信号を出力する。例えば、動作部24が鍵収納ボックス20の開閉扉のロックを解除するためのソレノイドの場合、動作信号により動作処理部23に対してソレノイドを駆動する駆動信号を出力させることで、鍵収納ボックス20を開放することができる。
【0031】
また、動作信号の出力があったにもかかわらず動作部24が動作していない場合には、検出部25が動作していないことを検出して検出信号を出力するようになる。例えば、鍵収納ボックス20の開閉扉が開放状態かロック状態から開閉検出スイッチ等で検出して、検出信号を出力するようにする。
【0032】
そして、鍵収納ボックス20がロックされた状態のままであることを示す状態信号が検出処理部26から出力されるようになり、出力された状態信号が送受信部21を介してラジオ受信機10の送信処理部16に送信されるようになる。送信処理部16では、ロック状態を示す状態信号を受信した場合には、エラーメッセージを表示部14に出力するとともに、通信ネットワーク100を介して防災関係組織(地方自治体、地区避難所、地区区長等)にエラーメッセージを送信することもできる。
【0033】
また、鍵収納ボックス20等の防災設備では、災害発生時に停電が発生する場合が想定されるため、停電した際のセーフティ機能を備えるようにしておくとよい。例えば、停電等により防災設備の電源が遮断された場合には、検出部25で停電を検出し、検出信号に基づいて動作処理部23がロック解除に関する動作信号を出力して動作部24を動作させてロック解除を行うようにすることができる。また、停電に関する検出信号に基づいて検出処理部26から出力された停電信号が送受信部21を介してラジオ受信機10の送信処理部16に送信するようにしてもよい。送信処理部16では、停電に関するエラーメッセージを表示部14に出力するとともに、ロック解除に関する制御情報を防災設備に送信する。そして、ロック解除に関する制御情報に基づいて動作処理部23から動作信号を出力して動作部24を動作させ、ロック解除を行うようにする。
【0034】
ラジオ受信機10と防災設備20との間で無線通信を行う場合、防災設備は屋外に設置されることが想定され、雷や静電気等の外来ノイズ(発生時間が数マイクロ秒~数ミリ秒)の影響を受けやすくなる。そのため、送信されるコード情報等を予め送信処理して確実に送受信することでセキュリティを向上させることができる。図4は、セキュリティ向上のための送信処理に関する一例を示す説明図である。この例では、複数の通信ラインを用いて制御情報を送信するようにしている。図4に示すように、各通信ライン(この例では3つの通信ラインL1~L3)にそれぞれ並行して信号を送信し、送信された信号の連続した出力時間T1~T3の組み合せにより制御情報を識別するようにしている。各通信ラインに送信される信号の連続出力時間は、外来ノイズよりも長くなるように設定されており、外部ノイズが入り込んだとしてもその影響が抑えられるようになっている。
【0035】
図5は、各通信ラインに送信される信号の連続出力時間T1~T3の組合せとDTMF信号との対応関係の一例を示すリストである。図5に示すように、DTMF信号に対応して各通信ラインの信号の連続出力時間の組合せを設定することで、各通信ラインで受信した信号の連続出力時間を測定してその組合せでDTMF信号を正確に識別することができる。そして、送信する信号の連続出力時間を100ミリ秒以上とすることで、万一外来ノイズが入り込んだとしても測定結果に影響を受けることがほとんどないので、確実に制御情報を送受信することができる。
【0036】
図6は、防災情報の受信処理に関するフローである。ラジオ受信機では、放送信号を受信し(S100)、DTMF信号の検出処理を行う(S101)。検出処理は、割り込み処理で行うことができ、例えば、0.125秒、0.25秒、0.5秒、1秒といった検出間隔で割り込み処理を行うように設定すればよい。そして、割り込み処理の回数をカウントすることで、検出間隔を所定時間に設定することができ、所定時間内にDTMF信号の検出の有無を判定することが可能となる。
【0037】
DTMF信号が検出された場合には(S101:YES)、DTMF信号の抽出処理を行う(S102)。抽出処理では、所定個数(例えば12個)のDTMF信号が所定時間内に抽出された場合には抽出されたDTMF信号の組み合せを保存し、同じDTMF信号の組み合せが規定数(例えば、3回のうち2回以上)抽出された場合には、コード情報として保存する処理を行う。DTMF信号が検出されない場合には(S101:NO)、放送信号の受信処理を継続する。
【0038】
保存されたコード情報に含まれるDTMF信号の配列に基づいて防災情報を判定し(S103)、判定結果に基づいてコード情報に応じた表示処理等の制御処理を行う(S104)。判定処理では、得られたコード情報のうちDTMF信号の組み合せが予め記憶された所定の組み合せと一致するか判定する。例えば、コード情報のうち開始キー、自治体情報及び地域情報等の特定情報が記憶された組み合せと一致するか判定することで、ラジオ受信機の設置場所に該当する防災情報であるか判定することができる。設置場所に該当する防災情報と判定された場合には、音声出力や表示パネル等に防災情報を表示するように制御することで、防災活動を促すことができる。
【0039】
次に、得られたコード情報の変換処理を行い(S105)、防災設備に送信する制御情報を作成する。コード情報に含まれる機種別コードに基づいて該当する防災設備に制御情報を送信する(S106)。送信処理では、複数の通信ラインに並行して信号を送信して信号の連続出力時間の組合せによりコード情報を送信するようにしてセキュリティを向上させることができる。
【0040】
防災設備では、送信された制御情報を受信し(S107)、受信された制御情報を変換してコード情報を得る(S108)。そして、コード情報に基づいて防災設備の設置場所や機種が該当するか判定し(S109)、防災設備の動作が必要か判定する(S110)。動作が必要な場合(S110:YES)には、動作部24に動作信号を出力し(S111)、防災設備は防災活動に必要な動作を行う。動作が必要でない場合(S110:NO)には、終了する。
【0041】
次に、防災設備では、動作部の動作状態を検出し(S112)、検出信号に基づいて状態信号を作成する(S113)。そして、作成された状態信号を送信する処理を行う(S114)。ラジオ受信機10では、状態信号を受信した後(S115)、状態信号が動作しているこを示しているか判定し(S116)、動作していないと判定された場合(S116:NO)には、エラー処理を行い(S117)、終了する。動作していると判定された場合(S116:YES)には、そのまま終了する。
【0042】
以上説明したように、放送信号を受信するラジオ受信機等の受信機で防災情報を受信して防災情報を表示するとともに受信した防災情報に基づいて防災設備を動作させるようにしているので、住民への避難活動の周知とともにそれに並行して防災設備を動作させて防災活動を迅速的確に実施することが可能となる。
【0043】
また、放送信号で防災情報を送信することで、ネット環境での防災情報の送信と比べてタイムラグがなく、ハッキング等への対策も不要となり、防災情報を確実に伝達することができる。特に、FM放送にDTMF信号を使用して防災情報を送信することで、信号の受信を正確に行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、上述した受信機を様々な防災設備と連携させることで、無線通信等の電気信号により制御して防災対応を迅速・安全に行うことができる。例えば、避難場所へ避難する際の避難経路に誘導するための防災設備への対応、救援場所に向かう経路での信号機等の防災設備への対応、ダムの決壊防止のための放水を行う際の流域での避難活動や水門開閉等の増水対策といった、広範な防災対策や減災の対応に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1・・・防災情報受信システム、10・・・ラジオ受信機、11・・・信号受信部、12・・・音声出力部、13・・・信号処理部、14・・・表示部、15・・・コード処理部、16・・・送信処理部、17・・・送受信部、20・・・防災設備、21・・・送受信部、22・・・受信処理部、23・・・動作処理部、24・・・動作部、25・・・検出部、26・・・検出処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6