(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】アキシャルギャップモータ用ステータ及びその製造方法並びにアキシャルギャップモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 15/02 20060101AFI20240403BHJP
H02K 1/16 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
H02K15/02 G
H02K1/16 Z
(21)【出願番号】P 2020093394
(22)【出願日】2020-05-28
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】518316114
【氏名又は名称】株式会社アーミス
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】野口 敏彦
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-222384(JP,A)
【文献】特開平08-163835(JP,A)
【文献】特開2018-093704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/00- 1/16
H02K 1/18- 1/26
H02K 1/28- 1/34
H02K 15/00-15/02
H02K 15/04-15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アキシャルギャップモータのための複数のステータコア
と前記ステータコアと一体化されるとともに前記ステータコアの内周側まで延在するステータヨーク部とを有するステータの製造方法であって、
前記ステータヨーク部の前記ステータコアの内周側の形状により定まる長さの第1のノッチ部を有する磁性材料からなる帯体を巻回する工程と、
前記ステータコアの形状により定まる長さで
前記帯体を移動する移送工程
と前記ステータコアの間隔により定まる幅の
第2のノッチ部を前記帯体の少なくとも一方の側部に形成するノッチ部形成工程とを複数回繰り返し、前記帯体に互いに離隔した複数の前記
第2のノッチ部を形成する帯体成形工程と、
前記
第2のノッチ部が形成された前記帯体を巻回してステータを形成する工程とを含み、
前記帯体成形工程は、
複数の前記
第2のノッチ部の少なくとも一部の前記
第2のノッチ部の幅を他の前記
第2のノッチ部の幅と異ならしめるノッチ幅変更工程を含むことを特徴とするステータの製造方法。
【請求項2】
前記移送工程において、前記帯体に張力が加えられることを特徴とする請求項1記載のステータの製造方法。
【請求項3】
前記ノッチ幅変更工程は、前記帯体の移動と打抜き加工を繰り返す工程を含むことを特徴とする請求項1又は2記載のステータの製造方法。
【請求項4】
前記帯体成形工程は、
複数の前記第2のノッチ部の間隔を、半径方向の内側から外側に向かうとともに増大させ、前記ステータコアの周方向に対向する2つ側面の形状を非対称とするノッチ間隔変更工程を含むことを特徴とする請求項1又は2記載のステータの製造方法。
【請求項5】
アキシャルギャップモータのステータであって、
ステータヨーク部と、前記ステータヨーク部と一体で形成された複数のステータコアを有し、
前記ステータヨーク部は前記ステータコアの内周側まで延在し、
前記ステータヨーク部及び前記ステータコアは、ラジアル方向の磁性材料の積層体からなり、
隣合う前記ステータコアの間隔が、ラジアル方向の少なくとも一部において異なることを特徴とするステータ。
【請求項6】
請求項5記載の前記ステータを有するアキシャルギャップモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アキシャルギャップモータ用ステータ及びその製造方法並びにアキシャルギャップモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ステータとロータとが回転軸方向に所定の空隙(ギャップ)を介して対向するアキシャルギャップモータが知られている。ステータのコア部には、磁性粉体を圧縮成形した圧粉磁心が用いられている。しかし、圧粉磁心は強度的に脆く、磁性材料としての特性が劣る。そのため、圧粉磁心の代わりに積層した金属を用いてステータコアを製造する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-25868号公報
【文献】特開2019-165519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、ロール状に金属板を巻回した巻鉄心を切断して、ステータ用コアを製造する方法が開示されている。この方法では、別途準備したバックヨークに、コアを固定する必要があり、製造工程が複雑になる。
特許文献2は、プレス加工でスリット部を打ち抜いた電磁鋼帯を多角形状に巻回することでステータコアとコアバック部(バックヨーク)とを一体で形成する方法が開示されている。しかし、文献1の製造方法と異なり、製造可能なステータコアの形状の自由度が乏しく、例えば異なる顧客の要望、用途等に柔軟に対応したアキシャルギャップモータの製造は困難となる。
【0005】
上記課題を鑑み、本発明は、アキシャルギャップモータのステータを柔軟に製造することができる製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るステータの製造方法は、
アキシャルギャップモータのための複数のステータコアを有するステータの製造方法であって、
前記ステータコアの形状により定まる長さで磁性材料からなる帯体を移動する移送工程と、
前記ステータコアの間隔により定まる幅のノッチ部を前記帯体の少なくとも一方の側部に形成するノッチ部形成工程とを複数回繰り返し、前記帯体に互いに離隔した複数の前記ノッチ部を形成する帯体成形工程と、
前記ノッチ部が形成された前記帯体を巻回してステータを形成する工程とを含み、
前記帯体成形工程は、
複数の前記ノッチ部の少なくとも一部の前記ノッチ部の幅を他の前記ノッチ部の幅と異ならしめるノッチ幅変更工程を含むことを特徴とする。
【0007】
このようなステータの製造方法によれば、任意のステータコアの形状及びステータコアの配置を有するステータを容易に製造することができる。
【0008】
また、本発明に係るステータの製造方法は、
前記磁性体は純鉄であることを特徴とする。
【0009】
このようなステータの製造方法によれば、ステータの加工が容易になるとともに、鉄損の低減を図ることができる。
【0010】
また、本発明に係るステータの製造方法は、
前記ノッチ幅変更工程は、前記帯体の移動と打抜き加工を繰り返す工程を含むことを特徴とする。
【0011】
このような打抜き加工によれば、ステータの製造が容易になり、生産効率が向上する。
【0012】
また、本発明に係るステータの製造方法は、
前記ノッチ幅変更工程は、最小単位幅毎に前記帯体を移動し、打抜き加工を繰り返すことにより前記ノッチ部の幅の長さを増大させることを特徴とする。
【0013】
このようなステータの製造方法によれば、ステータコアの製造の自由度がさらに向上し、多様な形状のステータコアを有するステータを製造することができる。
【0014】
本発明に係るステータは、
アキシャルギャップモータのステータであって、
ステータヨーク部と、前記ステータヨーク部と一体で形成された複数のステータコアを有し、
前記ステータヨーク部及び前記ステータコアは、ラジアル方向の磁性材料の積層体からなり、
隣合う前記ステータコアの間隔が、ラジアル方向の少なくとも一部において異なることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係るアキシャルギャップモータは
前記ステータを有することを特徴とする。
【0016】
このような構成にステータとすることで、鉄損が少なく、アキシャルギャップモータの用途や顧客仕様に合わせてカスタマイズされたステータ及びアキシャルギャップモータが提供される。また、本発明に係るステータは発電機としてのステータに用いることもできる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、アキシャルギャップモータのステータを柔軟に製造することができる製造方法を提供することができる。また、製造されたステータを備えたアキシャルギャップモータを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1(a)は、アキシャルギャップモータ100の主要構成を示す断面図、
図1(b)はステータ2の例を示す平面図である。
【
図2】
図2は、ステータ2を製造するためのステータ製造装置200の主要な装置構成を示す断面図である。
【
図3】
図3(a)は、打抜きユニット9の構成例を示す部分的断面図、
図3(b)は、打抜きユニット9と帯体5との位置関係を示す平面図である。
【
図4】
図4(a)は打抜き加工された帯体5の形状を示す平面図、
図4(b)は巻回された帯体の拡大断面図、
図4(c)はステータ2の斜視図、
図4(d)はステータヨーク部21を構成する帯体5の巻取り開始端部(21s)及び巻取り終端部(21e)を示す平面図。
【
図5】
図5(a)は、実施形態1におけるステータコア22の1周目の帯体5のノッチ部14を、最小単位幅のパンチ91を用いて形成する工程を示す斜視図、
図5(b)は、最小端幅の2倍の幅のノッチ部14を形成する工程を示す斜視図。
【
図6】
図6は実施形態2におけるノッチ部14の形成工程を示す斜視図であり、
図6(a)は、ステータコア22の1周目の帯体5のノッチ部14をパンチ91を用いて形成する工程を示す斜視図、
図6(b)は、ノッチ部14の幅を増大させる工程を示す斜視図。
【
図7】
図7は実施形態3におけるステータコア22の形状を示す平面図であり、
図7(a)は、一定の傾きの直線的なスキューを設けたステータコア22の平面図、
図7(b)は、曲線的なスキューを設けたステータコア22の平面図、
図7(c)は、巻回された帯体5と等角度間隔に配置したステータコア22の関係を示す部分拡大図である。
【
図8】
図8(a)はステータ2の両側にロータ3を有するアキシャルギャップモータ100の主要断面図、
図8(b)は帯体5の両側にノッチ部14を形成する工程を示す斜視図、
図8(c)はステータヨーク部21の両側にステータコア22を備えたステータ2の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は、いずれも本発明の要旨の認定において限定的な解釈を与えるものではない。また、同一又は同種の部材については同じ参照符号を付して、説明を省略することがある。
【0020】
(実施形態1)
図1(a)は、アキシャルギャップモータ100の主要構成を示す断面図であり、
図1(b)はステータ2の例を示す平面図である。
図1(a)に示すように、円筒状の筐体1に、互いに対向するステータ2とロータ3とが収容されている。
ロータ3は、シャフト(回転軸芯)4に固定されており、シャフト4は、ベアリング41を介して、筐体1に回転可能に支持されている。シャフト4及びロータ3は、シャフト4の中心軸を回転軸として回転する。
シャフト4の少なくとも一端は、筐体1の開口部11を貫通し、筐体1の外部に突出し、ロータ3の回転運動を出力する。
【0021】
ロータ3は、扁平な円環状のロータヨーク部31を有し、ロータヨーク部31には複数のマグネット(永久磁石)32が回転軸に対する周方向に配置され、固定されている。隣合うマグネット32の磁極は、互いに反対になるように配置されている。
【0022】
ステータ2は、ステータヨーク部21を有し、複数のステータコア(鉄心部)22がステータヨーク部21と一体で形成されている。各ステータコア22には導線が巻回され、通電により励磁するコイル23が設けられている。
図1(b)に示すステータ2の例では、各ステータコア22は、中心角ψの扇形状であり、中心軸側の内径(半径r1)とそれに対向する外径(半径r2)を有している。各ステータコア22は、ステータヨーク部21上において周方向に等角度(θ)間隔に配置されており、隣合うステータコア22の間には間隙を有する。
マグネット32とコイル23とは、シャフト4の回転軸方向に、ギャップ(空隙)Dを介して対向して配置されている。
【0023】
ステータ2は、磁性材料の帯体(箔)を巻回することにより、ラジアル方向に積層された磁性材料の積層体から構成されているため、渦電流による鉄損を低減することができる。
巻回する磁性材料として、屈曲加工に優れた純鉄の板が好適に使用できる。
文献2のように磁性材料として電磁鋼帯を使用すると、曲げ応力が加えられた箇所において磁気特性が劣化する。従って、電磁鋼帯を円筒状に巻回すると磁気特性が劣化するという問題がある。しかし、磁性材料として純鉄を用いることで、曲げ応力による磁気特性の劣化が防止できる。
【0024】
図2は、ステータ2を製造するためのステータ製造装置200の主要な装置構成を示す断面図である。
磁性材料の板(又は箔)からなる帯体5がボビン61に巻回されたリール6から、帯体5が移送装置7、7’により引き出される。
移送装置7、7’により帯体5に負荷される張力は張力センサを備えた張力調整装置8により検出される。張力調整装置8から出力される張力の値を移送装置7、7’を駆動するモータにフィードバックし、一定の張力が帯体5に負荷されるよう構成されている。
【0025】
帯体5は打抜きユニット9により加工され、その後、巻回シャフト10に巻回される。巻回シャフト10に巻き取られた帯体5は、巻回回数とともにその半径(巻回シャフト10の回転中心から巻回された帯体5の最外周表面までの距離)が大きくなる。そのため、巻回シャフト10には、例えば巻回された帯体5の半径の増加量に対応して巻回シャフト10を鉛直方向に移動させる昇降機構を備えさせ、打抜きユニット9から繰り出された帯体5を常時水平に維持しながらシャフト10に巻回してもよい。
【0026】
なお、巻回シャフト10は、帯体5の巻き取り開始端部を把持するためのチャック機構を備えている。チャック機構として、例えば機械的に端部を挟み込む溝や、真空チャック、マグネットチャックが使用できる。特にマグネットチャックを採用する場合、帯体5として軟磁性体を使用するため、巻回時には帯体5をチャックし、巻回終了時には取り外しが容易となるように、巻回シャフト10に内蔵した電磁石を用いたマグネットチャックが好適に使用できる。
チャック機構として挟み込み溝を使用する場合、帯体5の巻き取り開始端部を溝に挟み込むために折り曲げ等の加工が必要となるが、マグネットチャックを使用した場合、開始端部の加工は不要であり、かつ帯体5の取り外し作業も容易になる。
【0027】
巻回シャフト10は、回転角度を調整可能な回転駆動装置、例えばサーボモータやモータと角度センサとの組み合わせ等により回転駆動されている。巻回シャフト10は、移送装置7、7’と連動して回転するため、一定の張力を維持しながら帯体5を巻回することができる。巻回シャフト10は、好適には、回転センサ、トルクセンサを備え、これらのセンサの出力を回転駆動装置にフィードバックし、回転運動が制御される。
【0028】
また、打抜きユニット9は裁断機90を備えてもよい。裁断機90は、リール6から繰り出された帯体5を所定の長さに裁断し、巻回する帯体5の最終端部を確定する。
【0029】
なお、巻回された帯体5を互いに固定するため、例えば接着剤により帯体5を接着してもよい。打抜きユニット9から繰り出された帯体5の表面に塗布装置12から供給される接着剤Adを塗布し、その後、巻回シャフト10に巻回することで、帯体5を互いに固定することができる。
【0030】
また、1回転巻回する毎に、カシメにより帯体5を固定してもよい。この場合、カシメ位置が互いに接触しないように分散させ、カシメを経由する電流経路の発生を防止する。
また、ステータ2に必要は帯体5のすべての巻取りが終了した後に、カシメにより帯体5を固定してもよい。
例えば、接着剤の塗布装置の代わりにカシメ用金具を帯体5上に載置する装置を設置し、さらに1周巻回して帯体5が重なった後に、押圧ローラ13でカシメ金具を押し潰すことで、自動的にカシメ固定することも可能である。
なお、1回転巻回する毎ではなく複数回転(2回転等)巻回する毎にカシメ固定してもよい。
【0031】
また、押圧ローラ13により、帯体5を巻回シャフト10に押圧しながら巻回してもよい。押圧ローラ13と巻回シャフト10との間隔は、帯体5が巻回されることにより増大する半径に対応して増大するよう制御される。押圧ローラ13が巻回シャフト10を押圧する応力を一定に維持することが可能である。
さらに、押圧ローラ13により巻回シャフト10に巻回された帯体5を押圧し、打抜きユニット9による加工の際に巻回シャフト10を固定してもよい。
【0032】
以下、ステータ2の製造方法について、さらに詳細に説明する。
図3(a)は、打抜きユニット9の構成例を示す部分的断面図である。
図3(a)に示すように、打抜きユニット9はパンチ91と、ブレード(刃)を有するダイ92を備え、ダイ92はステージ93に固定されている。パンチ91は、図示しない駆動装置により、図中上下方向に移動する。この駆動装置は、公知の装置を使用することができる。
【0033】
移送装置7により誘導され、ステージ93に帯体5が載置されると、押圧パッド95が図示しない昇降移動機構により、帯体5に向かって移動し、帯体5は、ステージ93と押圧パッド95により押圧固定される。
押圧パッド95により帯体5が押圧された状態で、ガイド96により、移動がガイドされたパンチ91が、ダイ92に向かって移動し、パンチ91とダイ92とに挟まれた帯体5が、打ち抜き加工される。
【0034】
図3(b)は、打抜きユニット9と帯体5との位置関係を示す平面図である。
パンチ91及びダイ92は、その一部が帯体5と重なり、残りの部分は帯体5の外に延在している。パンチ91及びダイ9により、帯体5の側部にノッチ部14(切り欠き部)を形成することができる。
【0035】
帯体5の移動と打抜きユニット9による打抜き加工の繰り返し、すなわち間欠的に打抜き加工を施すことによって、
図4(a)に示すように、互いに離隔したノッチ部14を、帯体5の移動量で定まる間隔で形成することができる。
【0036】
図4(a)は、打抜き加工された帯体5の形状を示す。帯体5にはノッチ部14が形成されている。この帯体5を巻回することでノッチ部14に挟まれた領域からステータコア22が形成され、ノッチ部14が形成されない領域(ノッチ部14に挟まれない、又はノッチ部14が横断しない領域)からステータヨーク部21が形成される。従って、ステータコア22とステータヨーク部21とが一体で形成される。
また、ノッチ部14の幅は、巻回された状態でのステータ2の中心軸からの距離(半径r)に依存する。
【0037】
図1(b)に示すように各ステータコア22を角度θの等間隔で配置する場合、
図4(b)に示すように、帯体5が巻回されて半径rに達したときのノッチ部14の幅はrθとなり、ノッチ部14の間隔はrψとなる。
さらにもう1層の帯体5を巻回する場合、帯体5の厚さをt(例えば0.5mm)とすると、ノッチ部14の位置は中心軸から半径r+tの距離となるためノッチ部14の幅は(r+t)θとなり、ノッチ部14の間隔は(r+t)ψとなる。
【0038】
ステータコア22及びステータヨーク部21の径で定まる所定の巻回(巻取り)回数だけ帯体5を巻回シャフト10に巻回し、その後巻回シャフト10から巻回された帯体5を取り外すと、ステータ2を製造することができる(
図4(c)参照)。
【0039】
ノッチ部14の間隔は、帯体5の移動距離によって制御でき、帯体5の移動(移送)は移送装置7、7’により制御できる。例えば、ノッチ部14を打抜きユニット9により形成した後、巻回シャフト10及び移送装置7、7’を制御して帯体5をノッチ部14の間隔(rψ)の距離だけ移動すればよい。移動量は、巻回シャフト10の回転角度と巻回シャフト10に巻回された帯体5の厚さから算出できるが、移送装置7、7’の帯体5に接するローラの半径と回転角度から算出することができる。
【0040】
図1(b)に示すステータ2において、ノッチ部14の幅は、帯体5の巻回数に依存して変わる。しかし、ノッチ部14の幅を変更するために、ノッチ部14を形成するパンチ91及びダイ92の幅を、巻回の度に変更することは、ステータ2の生産性を著しく低下させるため、実用的ではない。
そのため、後述するように、パンチ91の幅を最小単位幅に設定し、最小単位幅毎にノッチ部14の幅を増大する。
なお、パンチ91の幅が確定すれば、対応するダイ92の幅が確定することは言うまでもない。以下、ダイ92の幅についての説明は省略する。
【0041】
最小単位幅として例えば、帯体5の厚さ(t)とステータコア22の間隔角度(θ)との積(tθ)を採用することができる。このように最小単位幅を設定することで、ステータコア22の形状が滑らかになる。
または、その整数倍(例えば2倍)の値(例えば2tθ)に設定することができ、ステータ2の生産性を向上させてもよい。
なお、帯体5の膜厚が薄い(例えば数十μm)場合、最小単位幅が小さくなるため打抜き加工回数が大きく増大することになり、生産性が低下する。そのため、帯体5の総巻回数(N)の10分の1程度の巻回数を単位として、単位巻回数(N/10)毎にノッチ部14の幅を変更してもよい。この場合、最小単位幅として、帯体5の厚さ(t)とステータコア22の間隔角度(θ)と単位巻回数(N/10)の積の値(tθN/10)を採用してもよい。すなわち整数倍の値として単位巻回数(N/10)を採用してもよい。
【0042】
上記のように、巻回回数とともにノッチ部14の幅及びノッチ部14の間隔が変わる。従って、ノッチ部14の幅及びノッチ部14の間隔の両方を、帯体5の移動量により独立して制御する必要がある。
ステータ2の加工精度を向上させるためには、帯体5を移動させる移送装置7、7’及び巻回シャフト10を高精度で制御する必要がある。そのため、別途位置検出装置を打抜きユニット9に設け、打ち抜きにより形成されたノッチ部14の位置を検出し、ノッチ部14の移動量を直接検出してもよい。
【0043】
位置検出装置は、帯体5の上方又は下方に設けることができ、例えば帯体5の移動方向に沿って直線状に配置した光学センサアレイや撮像装置と画像解析の組み合わせを用いることができる。また、帯体5は、強磁性材料で構成されるため、直線状に配置した複数の磁気センサや、帯体5の移動方向に延在する検出コイルを備えた差動トランス式変位検出器により、検知領域でのノッチ部14の占有面積を検知することで帯体5の移動量を検知してもよい。
【0044】
なお、
図4(d)に示すように、ステータコア22より内周側(中心軸側)のステータヨーク部21aを構成する帯体5は、巻取り開始端部(21s)から、ステータヨーク部21aの動径方向の長さによって定まる長さのノッチ部14が設けられ、同様にステータコア22より外周側(反中心軸側)のステータヨーク部21bを構成する帯体5は、巻取り終端部(21e)まで、ステータヨーク部21bの動径方向の長さによって定まる長さのノッチ部14が設けられている。
ステータヨーク部21a、21bを構成する帯体5に対しては、打抜きユニット9により連続して打ち抜き加工を繰り返し、所定の長さのノッチ部14を形成する。
なお、ステータヨーク部21a及びステータヨーク部21bの一方又は両方の動径方向の長さを0(零)に設定してもよい。
【0045】
図5は、打ち抜きユニット9を用いて異なる幅のノッチ部14を形成する工程を示す斜視図である。
図5(a)に示すように、例えばステータコア22の1周目の帯体5のノッチ部14を、最小単位幅のパンチ91を用いて、1回の打ち抜き操作で作製する。
次に、
図5(b)に示すように、移送装置7により帯体5を最小単位幅だけ移動させ(図中矢印方向)、1回目の打ち抜き操作で作製したノッチ部14に接するようにノッチ部14を追加加工して、最小端幅の2倍の幅のノッチ部14を作製する。
【0046】
以下同様にn回の打ち抜き操作で作製した後、帯体5を最小単位幅だけ移動し、次にn回目の操作で作製したノッチ部14に接するように、n+1回目の打ち抜き操作でノッチ部14を作製することで、順次ノッチ部14の幅を、帯体5の巻回数に従って増大させる。
なお、最小単位幅として、例えば帯体5の厚さとステータコア22の間隔角度と単位巻回数(例えばN/10)の積の値を採用した場合、巻回毎にノッチ部14の幅を増大させるのではなく、単位巻回数(N/10)毎にノッチ部14の幅を増大してもよい。
互いに接するようにノッチ部14を打ち抜く回数を制御することで、任意の最小単位幅の整数倍の長さのノッチ部14を作製することができる。
このようにパンチ91(及びダイ92)を変更することなく、同一のパンチ91(及びダイ92)を用いて、ノッチ部14の幅を変更することができる。
【0047】
本発明によれば、ステータコア及び隣合うステータコアの間隔を自由に設定することができ、用途や顧客仕様や構造(形状)的な制約等(例えば大型化、薄型化、高出力化等)に応じて、ステータ2を設計し、製造することができる。
【0048】
(実施形態2)
ステータコア22の1周目の帯体5のノッチ部14の長さは、ステータコア22の最内周の半径(r1)とステータコア22の間隔角度(θ)との積(r1θ)で決定される。
実施形態1に記載のようにパンチ91の最小単位幅として、例えば帯体5の厚さとステータコア22の間隔角度との積の値を採用した場合、多数回の打ち抜き作業が必要となることがある。
そのため、実施形態2においては、パンチ91の最小単位幅としてステータコア22の1周目の帯体5のノッチ部14の長さとすることができる。
【0049】
図6(a)に示すように、ステータコア22の1周目の帯体5のノッチ部14の長さに対応したパンチ91を有する打抜きユニット9により、1周目の帯体5のノッチ部14を打ち抜き加工により形成する。
次に、
図6(b)に示すように、巻回により増大するノッチ部14の幅に相当する量だけ、移送装置7、7’により帯体5を移動させ、打抜きユニット9により打ち抜き加工する。
巻回により増大するノッチ部14の幅として、例えば、帯体5の厚さ(t)とステータコア22の間隔角度(θ)との積(tθ)、又はこの整数倍を採用することができる。
なお、作製するノッチ部14の幅に依存して、帯体5の移動と打抜きユニット9による打ち抜き加工の組み合わせ回数は適宜設定すればよい。
【0050】
(実施形態3)
本発明によれば、ノッチ部14の幅及びノッチ部14の間隔を移送装置7、7’及び打抜きユニット9との組み合わせにより任意に調整が可能である。すなわち、ノッチ部14の任意の一部の幅を他のノッチ部14の幅と異ならしめることができる。
そのため、ステータコア22の形状として、中心角ψの扇形状に限定されず、種々の形状のステータコア22を形成することができる。ステータコア22として、例えばコギングトルク低減のためスキューを有する形状とすることができる。スキューを設けることにより、磁束の変化が緩和され、コギングトルクの低減を図ることができる。
【0051】
図7は、中心角ψの扇形状に対して、スキューを設けたステータコア22の例を示す。
図7(a)は、一定の傾きの直線的なスキューを設けた例であり、
図7(b)は、曲線的なスキューを設けた例を示す。
図7(c)は、巻回された帯体5と等角度間隔に配置したステータコア22の関係を示す部分拡大図である。
【0052】
図1(b)に示すステータコア22の形状は、周方向に対向する2つの側面の形状が、互いに線対称の関係にある。すなわち、周方向に対向する2つの側面の形状は、ステータコア22の中央を通るラジアル(動径)方向の軸を対称軸として反転関係(反対称関係)にある。一方、
図7(a)、(b)に示すステータコア22の形状は、周方向に対向する2つ側面の形状が線対称とならず、非対称な形状を有する。
【0053】
磁場解析等により求めたスキュー形状を有するステータコア22を実現するよう、各巻回数のノッチ部14及びノッチ部14の間隔を求め、ステータ製造装置200を用いて、移送装置7及び打抜きユニット9を制御して帯体5を加工することができる。
【0054】
実施例1、2においては、ノッチ部14の幅は、巻回シャフト10の巻回中心から遠ざかるに従い(ステータ2の中心又は内周部から外周部に向かうに従い)長くなる。そのため実施形態2においては、パンチ91の幅はステータコア22の1周目の帯体5のノッチ部14の長さに合わせた。
しかし、本実施形態においては、1周目の帯体5のノッチ部14の長さは必ずしも最小ではない。そのため、最小のノッチ部14の幅にパンチ91の幅を合わせ、実施例2に従って、移送装置7及び打抜きユニット9を制御して帯体5を加工することができる。
【0055】
いずれの実施形態においても隣合うステータコア22の間隔は、ラジアル方向に依存して変化させることができ、少なくともその一部において異ならしめることができる。
任意のステータコア22の形状に対しては、隣合うステータコア22の間隔の最小幅に合わせてパンチ幅91を設定し、移送装置7及び打抜きユニット9の制御を組み合わせ、所望の形状のステータコア22を得ることができる。
【0056】
また、パンチ91の幅は、例えば、実施例1に従って設定し、移送装置7及び打抜きユニット9の制御を組み合わせ、所望の形状のステータコア22を得るように帯体5を加工してもよい。特定のステータコア22の形状に依存しないパンチ91を用いることにより、さらに広範囲に様々な形状のステータコア22を製造することができる。
【0057】
以下、ステータ2の主要な製造ステップについて説明する。
なお、以下の製造ステップは、全ての実施形態のステータ2の製造方法に共通する。
(1)ステータ設計工程
磁場解析によって、ステータコア22の形状(例えば対象となるアキシャルギャップモータ100の要求仕様に最適な形状等)を決定する。
決定されたステータコア22を周方向に配置して、ステータ2全体の幾何学的形状を決定する。
(2)ステータコア製造データ生成工程
ステータコア22内周から外周まで到達する、帯体5の膜厚毎に半径が増加する同心円により、ステータコア22及びステータコア22間の領域を周方向に区切る。
各半径の同心円は、ステータコア22の形状を規定する外周縁により分割される。ステータコア22内の領域の同心円の線分(
図7(c)中の実線であり、以下コア分割線分と称することがある。)と、隣合うステータコア22間の領域の同心円の線分(
図7(c)中の点線であり、ノッチ分割線分と称することがある。)の長さを演算処理装置、例えばコンピュータ等により算出する。
各同心円毎に、算出したコア分割線分の長さとノッチ分割線分の長さを記憶装置に記憶する。なお、各同心円は、巻回する帯体5を表すものである。
以上により、各巻回数毎にノッチ部14の長さ及びその間隔が決定され、ステータ2を形成するため、連続した帯体5にノッチ部14を形成する位置データ、すなわち各ノッチ部14の帯体5上の1次元的配置を確定することができる。
なお、同心円の代わりにステータコア22内周から外周まで到達し、周回毎に曲率半径が帯体5の膜厚分だけ増加する螺旋パターンを用いてもよい。
(3)帯体成形工程(ステータ用帯体加工工程)
最小の半径の同心円から順に、コア分割線分の長さとノッチ分割線分の長さを読み出し、
図2に示すステータ製造装置200の移送装置7、7’を制御して帯体5を移動させる。
帯体5は、コア分割線分の長さだけ移送装置7、7’により移動され、それとともに移動した量に相当する角度だけ巻回シャフト10を回転させて、帯体5が巻回シャフト10に巻回される(移送工程)。
その後、ノッチ分割線分の長さのノッチ部14を打抜きユニット9により形成する(ノッチ部形成工程)。この工程において、パンチ91及びダイ92の寸法で定まる、1回の打抜き操作で形成されるノッチ部14の幅と比較してノッチ分割線分の長さが大きい場合、帯体5の移動と打抜きユニット9によるノッチ部14の形成を繰り返すことでノッチ部14の幅を変更する(ノッチ幅変更工程)。これにより異なる幅のノッチ部14を適宜形成することができる。
なお、移送装置7、7’、打抜きユニット9、巻回シャフト10は、コンピュータ等の制御装置により制御することができる。
(4)巻回された帯体5を巻回シャフト10から取り外し、ステータヨーク部21とステータコア22が一体で形成されたステータ2を得る。
【0058】
上記のように、磁場解析に従ってステータコア22を設計すると、その設計データを基に、帯体5上のノッチ部14の配列データを生成し、ステータ製造装置200がノッチ部14の配列データに従ってノッチ部14の加工を施し、自動的にステータ2を製造できる。
従って、本発明によりステータ2の量産が可能となり、そのステータ2を搭載するアキシャルギャップモータ100を製造することが可能となる。また、設計データに従って柔軟にステータ2を製造できるため、種々のステータ2を試作することで、アキシャルギャップモータ100の製品開発に使用することも可能である。
【0059】
本発明にかかるステータ2の製造方法により製造されたステータ2を、アキシャルギャップモータ100に搭載することで、様々な顧客に対してカスタマイズされたアキシャルギャップモータ100の製造が可能となる。
【0060】
なお、上記の実施形態においては、ステータ2の一方の側にロータ3が対向するアキシャルギャップモータ100について説明したが、
図8(a)に示すように、ステータ2の両側にそれぞれロータ3が対向するアキシャルギャップモータ100についても同様に適用可能である。
図8(b)に示すように、帯体5の両側にノッチ部14を形成できるように、2つのパンチ91及びそれに対応した2つのダイ92をそれぞれ一直線上に配置し、一度に2つのパンチ部14を形成する。
図8(c)に示すように、両側にノッチ部14が形成された帯体5を巻回することにより、ステータヨーク部21の両側にステータコア22を備えたステータ2を製造することができる。
ノッチ部14の幅及びノッチ部14の間隔の設定は、上記の各実施例に記載の通りである。
【0061】
なお、上記実施形態においては、個々のステータ2を製造する毎に、帯体5にノッチ部14を形成しながら、巻回シャフト10に帯体5を巻回しステータ2を形成する方法について説明した。
しかし、予め帯体5にノッチ部14を形成しておき、その後ノッチ部14が形成された帯体5を巻回シャフト10により巻回してステータ2を形成してもよい。
【0062】
例えば、ステータ製造装置200を用いて、巻取り開始端部(21s)で始まり、各巻回毎のノッチ部14を有し、巻取り終端部(21e)で終わる帯体5を1つの単位として、裁断装置90で裁断することなく、複数の帯体5の単位を連続して作製し、接着剤等により固定することなく巻回シャフト10に帯体5を巻回する。その結果、巻回シャフト10には、複数のステータ2を製造可能なように、複数の単位のノッチ加工済みの帯体5が巻回される。すなわち、リール6に巻回されている帯体5に対して、必要単位数の帯体5のノッチ加工を予め施しておく。
【0063】
その後、巻回シャフト10に巻回された帯体5を、
図2のリール6として使用し、打ち抜きユニット9においてノッチ部14の加工を施さず、帯体5の上記単位毎に巻回シャフト10に巻回し、固定することで1つのステータ2を製造する。このとき、打ち抜きユニット9の裁断装置90により、1つのステータ2が製造される毎に帯体5を切断する。
このようにノッチ部14の形成と、ステータ2の巻回作業とを分担することで、量産の作業効率を向上させることができる。
予め帯体5にノッチ部14の加工が施されているため、連続的に巻回シャフト10を回転させて帯体5を巻回することが可能となり、張力の制御や接着剤の均一性制御等が容易になる。
なお、巻回シャフト10に複数の単位のノッチ加工済みの帯体5が巻回された後、帯体5をボビン61に巻戻してもよい。その後、上記のように加工された帯体5からなるリール6を用いて、帯体5の上記単位毎に巻回シャフト10に巻回し、固定することで、1つのステータ2を製造してもよい。
【0064】
なお、上記各実施形態においては、アキシャルギャップモータについて説明したが、本発明に係るステータ及びその製造方法は、アキシャルギャップモータだけでなくアキシャルギャップ型の発電機のステータにも使用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によれば、ステータの幾何学的形状に基づいてステータ製造装置を制御することで、磁性材料の板を積層した様々な形状のステータコアを有するステータの設計及び製造が容易となる。
その結果、ステータコアでの鉄損を効果的に低減できるとともに、使用用途や顧客仕様や構造的な制約等に合わせて柔軟にステータ及びそれを備えたアキシャルギャップモータを設計し、製造することが可能となり、産業上の利用可能性は大きい。
【符号の説明】
【0066】
100 アキシャルギャップモータ
200 ステータ製造装置
1 筐体
2 ステータ
21、21a、21b ステータヨーク部
21s 巻取り開始端部
21e 巻取り終端部
22 ステータコア
23 コイル
3 ロータ
31 ロータヨーク部
32 マグネット(永久磁石)
4 シャフト(回転軸芯)4
41 ベアリング41
5 帯体
6 リール
61 ボビン
7、7' 移送装置
8 張力調整装置
9 打抜きユニット
10 巻回シャフト
11 開口部11
12 塗布装置
Ad 接着剤
13 押圧ローラ
14 ノッチ部
90 裁断機
91 パンチ
92 ダイ
93 ステージ
95 押圧パッド
96 ガイド