(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】移動阻止装置
(51)【国際特許分類】
A62B 1/22 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
A62B1/22
(21)【出願番号】P 2020127392
(22)【出願日】2020-07-28
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390005393
【氏名又は名称】藤倉航装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100100860
【氏名又は名称】長谷川 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(72)【発明者】
【氏名】奥村 浩光
(72)【発明者】
【氏名】影山 将大
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 照幸
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-149290(JP,U)
【文献】中国実用新案第209809332(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0102829(US,A1)
【文献】実開昭57-154460(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
救助マットに着地した要救助者が前記救助マットの外に移動されることを阻止する移動阻止装置であって、
前記救助マットの着地予定領域を囲んで前記救助マットに取り付けられ、上面視で環状形状に形成された保護部材を備え、
前記着地予定領域の外縁又は外縁より外に着地した前記要救助者を、前記救助マットの上面と前記保護部材との間で保護して、着地した前記要救助者を前記救助マットの外に移動させることを阻止する、
移動阻止装置。
【請求項2】
前記保護部材は、前記救助マットの着地予定領域を囲んで、前記救助マットの上部に取付けられる環状のシート部材であり、
前記シート部材は、その外周部が前記救助マットの上部に取り付けられ、
前記着地予定領域の外縁又は外縁より外に前記要救助者が着地した場合、着地により前記救助マットが変形されることにより、前記シート部材は、前記救助マットに取り付けられた外周部を支点としてその内周部が前記救助マットの上面から遠ざかる方向に移動して、着地した前記要救助者を前記救助マットとの間に確保する、
請求項1に記載の移動阻止装置。
【請求項3】
前記シート部材の外周部を前記救助マットの上部に着脱可能に取り付ける取付部材を、更に、備える、
請求項2に記載の移動阻止装置。
【請求項4】
前記保護部材は、シート状のネットにより筒形状に形成されたネット部材であり、
前記ネット部材の筒形状の一端部は、前記着地予定領域の外縁を囲んで前記救助マットに取り付けられ、
初期状態では、前記ネット部材の筒形状の他端部は、前記ネット部材が前記救助マットの外側に向けて折り返されることにより、前記救助マットの側面を囲んで配置され、
前記着地予定領域の外縁又は外縁より外に前記要救助者が着地した場合、着地により前記救助マットが変形されることにより、前記ネット部材の他端部が、前記救助マットの側面から前記救助マットの上面に移動し、前記ネット部材が着地した前記要救助者を覆う、
請求項1に記載の移動阻止装置。
【請求項5】
前記ネット部材は、前記他端部に取り付けられる伸縮部材を更に備え、
前記伸縮部材は、
初期状態では、収縮することで、前記ネット部材の他端部を前記救助マットの側面に沿って固定し、
前記着地予定領域の外縁又は外縁より外に前記要救助者が着地した場合、伸長して、前記ネット部材の他端部を前記救助マットの側面から外す、
請求項4に記載の移動阻止装置。
【請求項6】
前記ネット部材の他端部が、前記救助マットの側面から前記救助マット上に移動したとき、前記ネット部材を初期状態に戻す復帰部を、更に、備える、
請求項4又は5に記載の移動阻止装置。
【請求項7】
前記復帰部は、連結索を備え、
前記連結索の一端部は前記救助マットに連結され、他端部は前記ネット部材の他端部に連結された、
請求項6に記載の移動阻止装置。
【請求項8】
前記保護部材は、
前記救助マットの着地予定領域を囲んで、前記救助マットの上部に取り付けられる環状のシート部材であって、その外周部が前記救助マットの上部に取り付けられたシート部材と、
シート状のネットにより筒形状に形成され、当該筒形状の一端部が、前記シート部材の内周部に連結されたネット部材と、を備え、
初期状態では、前記ネット部材の筒形状の他端部は、前記ネット部材が前記救助マットの外側に向けて折り返されることにより、前記救助マットの側面を囲んで配置され、
前記着地予定領域の外縁又は外縁より外に前記要救助者が着地した場合、着地により前記救助マットが変形されることにより、前記ネット部材の他端部が、前記救助マットの側面から前記救助マットの上面に移動し、前記ネット部材が着地した前記要救助者を覆うとともに、前記シート部材は、前記救助マットに取付けられた外周部を支点としてその内周部が前記救助マットの上面から遠ざかる方向に移動して、着地した前記要救助者を前記救助マットとの間に確保する、
請求項1に記載の移動阻止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、救助マットに着地した要救助者が、救助マットの外に移動されることを阻止する移動阻止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビル火災等により要救助者がビルの中高層階から飛び降りて脱出しなければならない場合、又は要救助者がパニックになってビルの中高層階から飛び降りてしまう場合、要救助者を安全に着地させるために、救助マットが用いられる。救助マットとして、例えば、引用文献1に開示された空気マット(エアーマット又はエアクッションともいう。)が使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された空気マットを用いる場合、飛び降りた要救助者が空気マットの適切な着地領域(以下、「着地予定領域」という。)に着地したときには、要救助者は安全に着地できる。しかし、着地予定領域を外れて空気マット上に着地した場合には、要救助者は空気マットの反発力により空気マットの外に投げ出される、又は空気マットから滑り落ち、地面や他の構造物に衝突し、怪我をする可能性が高い。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、救助マットに着地した要救助者が、救助マットの外に移動されることを阻止する移動阻止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る移動阻止装置は、
救助マットに着地した要救助者が前記救助マットの外に移動されることを阻止する移動阻止装置であって、
前記救助マットの着地予定領域を囲んで前記救助マットに取り付けられ、上面視で環状形状に形成された保護部材を備え、
前記着地予定領域の外縁又は外縁より外に着地した前記要救助者を、前記救助マットの上面と前記保護部材との間で保護して、着地した前記要救助者を前記救助マットの外に移動させることを阻止する。
【0007】
前記保護部材は、前記救助マットの着地予定領域を囲んで、前記救助マットの上部に取付けられる環状のシート部材であり、
前記シート部材は、その外周部が前記救助マットの上部に取り付けられ、
前記着地予定領域の外縁又は外縁より外に前記要救助者が着地した場合、着地により前記救助マットが変形されることにより、前記シート部材は、前記救助マットに取り付けられた外周部を支点としてその内周部が前記救助マットの上面から遠ざかる方向に移動して、着地した前記要救助者を前記救助マットとの間に確保してもよい。
【0008】
前記シート部材の外周部を前記救助マットの上部に着脱可能に取り付ける取付部材を、更に、備えてもよい。
【0009】
前記保護部材は、シート状のネットにより筒形状に形成されたネット部材であり、
前記ネット部材の筒形状の一端部は、前記着地予定領域の外縁を囲んで前記救助マットに取り付けられ、
初期状態では、前記ネット部材の筒形状の他端部は、前記ネット部材が前記救助マットの外側に向けて折り返されることにより、前記救助マットの側面を囲んで配置され、
前記着地予定領域の外縁又は外縁より外に前記要救助者が着地した場合、着地により前記救助マットが変形されることにより、前記ネット部材の他端部が、前記救助マットの側面から前記救助マットの上面に移動し、前記ネット部材が着地した前記要救助者を覆ってもよい。
【0010】
前記ネット部材は、前記他端部に取り付けられる伸縮部材を更に備え、
前記伸縮部材は、
初期状態では、収縮することで、前記ネット部材の他端部を前記救助マットの側面に沿って固定し、
前記着地予定領域の外縁又は外縁より外に前記要救助者が着地した場合、伸長して、前記ネット部材の他端部を前記救助マットの側面から外してもよい。
【0011】
前記ネット部材の他端部が、前記救助マットの側面から前記救助マット上に移動したとき、前記ネット部材を初期状態に戻す復帰部を、更に、備えてもよい。
【0012】
前記復帰部は、連結索を備え、
前記連結索の一端部は前記救助マットに連結され、他端部は前記ネット部材の他端部に連結されてもよい。
【0013】
前記保護部材は、
前記救助マットの着地予定領域を囲んで、前記救助マットの上部に取り付けられる環状のシート部材であって、その外周部が前記救助マットの上部に取り付けられたシート部材と、
シート状のネットにより筒形状に形成され、当該筒形状の一端部が、前記シート部材の内周部に連結されたネット部材と、を備え、
初期状態では、前記ネット部材の筒形状の他端部は、前記ネット部材が前記救助マットの外側に向けて折り返されることにより、前記救助マットの側面を囲んで配置され、
前記着地予定領域の外縁又は外縁より外に前記要救助者が着地した場合、着地により前記救助マットが変形されることにより、前記ネット部材の他端部が、前記救助マットの側面から前記救助マットの上面に移動し、前記ネット部材が着地した前記要救助者を覆うとともに、前記シート部材は、前記救助マットに取付けられた外周部を支点としてその内周部が前記救助マットの上面から遠ざかる方向に移動して、着地した前記要救助者を前記救助マットとの間に確保してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、救助マットに着地した要救助者が、救助マットの外に移動されることを阻止する移動阻止装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態に係る移動阻止装置の概念図であり、(a)は移動阻止装置の初期状態を示す斜視図、(b)は移動阻止装置の作動時の状態を示す斜視図である。
【
図2】救助マットの構造を示す図であり、(a)は骨組体を示し、(b)は骨組体に外被を被せた状態を示す図である。
【
図3】救助マットが展開された状態を示す図であり、(a)は救助マットの上面図、(b)は救助マットの側面図である。
【
図7】保護部材を救助マットに取り付ける手順を示す図であり、(a)から(c)の順に取付けられる状態を示す。
【
図8】取付部材を示す図であり、(a)は取付部材の全体構成を示す図であり、(b)は取付部材により取付けが完了した状態を示す図である。
【
図9】ネット部材とシート部材の接続状態を示す図である。
【
図10】移動阻止装置の作動状態を示す図であり、(a)は初期状態を示し、(b)は作動した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る移動阻止装置の実施の形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は説明のためのものであり、本願発明の範囲を制限するものではない。したがって、当業者であればこれらの各要素もしくは全要素をこれと均等なものに置換した実施の形態を採用することが可能であるが、これらの実施の形態も本発明の範囲に含まれる。
【0017】
(実施の形態)
本発明の一実施の形態である移動阻止装置の全体構造について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図に示す直交座標XYZにおいて、移動阻止装置を備える直方体の救助マットの側面の一面を正面に向けて配置し、救助マットの上面を上に向けて配置したときの、左右方向がX軸、上下方向がZ軸、X軸とZ軸に直交する方向がY軸である。以下、この直交座標系を引用して説明する。
【0018】
(移動阻止装置の構造)
図1は、本実施の形態に係る移動阻止装置を救助マットに取り付けた状態を示す斜視図であり、(a)は移動阻止装置の初期状態を示し、(b)は、移動阻止装置が作動した状態を示す。
【0019】
図1(a)(b)に示すように、移動阻止装置1は、救助マット2の上部に取り付けられる。移動阻止装置1は、救助マット2に取り付けられた状態で収納袋に収納され、消防隊により搬送される。救助マット2が必要となった場合に、消防隊は、収納袋から移動阻止装置1が取り付けられた救助マット2を取り出し、救助マット2に空気又は酸素を入れて救助マット2を展開させて使用する。
【0020】
救助マット2は、ビルの中高層階から飛び降りる要救助者を、安全に着地させるため救助用具である。救助マット2として、本実施の形態では、エアーマットを用いる。
図1(a)(b)に示すように、救助マット2は、直方体形状に形成され、上面に、要救助者が着地する領域である着地予定領域2aを囲む領域線2bが引かれている。領域線2bの輪郭は、直方体の救助マット2の上面形状に合わせて、長方形である。領域線2bは、救助マット2の形状に合わせて引く必要はなく、例えば、円柱形状の救助マットを使用する場合には、円形の輪郭の領域線を引いてもよい。中高層階から飛び降りる要救助者は、着地予定領域2aをめがけて飛び降りる。
【0021】
救助マット2は、
図2(a)(b)に示すように、複数のチューブ状の柱を組み合わせて形成された骨組体20と、骨組体20を覆う外被21と、を備える。骨組体20は、塩化ビニール等で形成されたチューブ状の柱である気柱20aを組み合わせて形成される。複数の気柱20aを組み合わせて直方体の骨格を形成する。骨組体20は、気柱20aの内部に空気を入れることにより膨らみ、使用状態となり、気柱20aの内部の空気を抜くことにより縮んで、収納状態となる。気柱20aを膨らませるためには、送風機を気柱20aに設けた気体挿入口(図示せず)に、接続して、送風機(図示せず)から気柱20aに空気を送る。また、気柱20aを膨らませるために送風機ではなく、酸素ボンベにより酸素を気柱20a内部に送り、気柱20aを膨らませてもよい。
【0022】
外被21は、骨組体20の外側を覆うカバー部材であり、ナイロンを防水剤等でコーティングした布である。直方体に形成された骨組体20の全体を覆うように、複数の布を貼り合わせて全体の形状を形成している。
【0023】
移動阻止装置1は、
図1(a)(b)に示すように、保護部材10を備える。保護部材10は、救助マット2の上部に着地予定領域2aを囲んで取付られ上面視で環状の部材である。救助マット2の上面と保護部材10との間に、着地予定領域2aの外縁又は外縁から外れて着地した要救助者を保護する。保護部材10は、シート部材30とネット部材40とを備える。
【0024】
シート部材30は、
図1(b)に示すように、救助マット2の着地予定領域2aの外側を囲うように配置される環状のシートである。シート部材30は、ナイロン製のパラシュートクロスを用いて製造する。また、パラシュートクロスに防水等のためのコーティングを施してもよい。
図4に示すように、シート部材30は、4枚の短冊状のパラシュートクロス30aを、それぞれの端部を縫い合わせて接続することで形成される。4枚の短冊状のパラシュートクロス30aを接続せずに、一枚のパラシュートクロスから環状のクロスを、カッター等により切断して抜き出してもよい。
【0025】
シート部材30は、環状の外周部pと内周部qとを備える。外周部pは、救助マット2に取り付けられ、内周部qは、救助マット2には取り付けられていない。要救助者が救助マット2に落下して、救助マット2が変形することにより、
図5に示すように、シート部材30は、救助マット2に取付られた外周部pを支点として、内周部qが救助マット2の上方に移動する。そして、救助マット2の上面と内周部qが持ち上がってできた空間に、要救助者を確保する。
【0026】
シート部材30は、取付部材60により救助マット2に着脱自在に取り付けられる。
図1(b)の破線Aで囲まれた部分を拡大した状態を
図8(a)に示す。
図8(a)に示すように、シート部材30は、一対の取付ユニット3、31に形成された孔62に紐63を通すことで、救助マット2に取り付けられる。
図8(a)では、一対の取付ユニット3と取付ユニット31との間に隙間があるように図示されているが、連結方法を示すために隙間を空けて図示しており、実際には隙間はない。
【0027】
シート部材30には、第1の取付ユニット31が、救助マット2には、第2の取付ユニット3が取り付けられている。第1の取付ユニット31は、シート部材30の環状の外周部pに取り付けられている。また、第2の取付ユニット3は、救助マット2の着地予定領域2aの外周、好ましくは、救助マット2の側面の上部に取り付けられている。第1の取付ユニット31と第2の取付ユニット3は、同一の構造を備え、各々には孔62があけられ、各々の孔62に、交互に紐63を通すことにより、シート部材30と救助マット2とを連結する。第1の取付ユニット31、第2の取付ユニット3、及び紐63により取付部材60を構成する。取付部材60は、リーシングと呼ばれる。
【0028】
第1の取付ユニット31と第2の取付ユニット3は、合成繊維等で形成された布を帯状に形成した本体部61と、本体部61に所定の間隔で形成された複数の孔62とを備える。第1の取付ユニット31の本体部61の帯状の一対の長辺のうち、救助マット2から離れて位置する長辺部がシート部材30に縫い糸で縫い付けられている。第1の取付ユニット31の本体部61の救助マット2に近い長辺部は、シート部材30に縫い糸で縫い付けられていない開放部となっている。第2の取付ユニット3の本体部61の帯状の一対の長辺のうち、シート部材30から離れて位置する長辺部が救助マット2に縫い糸で縫い付けられている。本体部61のシート部材30に近い長辺部は、救助マット2に縫い糸で縫い付けられない開放部となっている。このように第1の取付ユニット31と第2の取付ユニット3を配置することにより、第1の取付ユニット31と第2の取付ユニット3の各々の開放部は対向して配置される。
【0029】
シート部材30を救助マット2に取り付けるには、紐63を、シート部材30と救助マット2の開放部から入れ、
図8(a)の左側の第1の取付ユニット31と第2の取付ユニット3の孔62に紐63を交互に通し、その動作を右側の孔62に向けて順番に行う。紐63は、木綿等を編みこんで形成された紐である。図面の左側から右側に向けて全ての孔62に紐63を通すことで、シート部材30は救助マット2に取り付けられる。
【0030】
第1の取付ユニット31と第2の取付ユニット3の孔62に紐63を通す方法として、例えば、
図8(b)に示すように、紐63を、第1の取付ユニット31と第2の取付ユニット3の対向する孔62に通してもよいし、第1の取付ユニット31の孔62を通過した紐63を、第1の取付ユニット31の紐63が通過した孔62に対向する第2の取付ユニット3の孔62に隣り合う孔62に通してもよい。前者の場合には、孔62を通過した紐63は、本体部61の長辺に垂直に並んで配置され、後者の場合には、本体部61の長辺に傾斜して並んで配置される。
【0031】
ネット部材40は、シート状のネットを筒状形状に形成した部材である。ネットはポリエチレン、ナイロン等で形成されている。初期状態では、シート状のネットは折り畳まれて、
図1(a)に示すように、上面視で、着地予定領域2aの外周を囲んで環状形状に配置される。
図6に、ネット部材40を展開した状態を示す。
図6では、ネット部材40の一部のみをネットを示す格子状の線で示し、他の部分は格子状の線は示していない。ネット部材40は、筒状形状に形成され、上方に向かうにつれて、X軸方向の切断面が大きくなるように形成されている。ネット部材40の下端部の開口は、第1の開口部41を形成し、上端部の開口は第2の開口部42を形成する。第1の開口部41と第2の開口部42の開口形状は、直方体形状の救助マット2に取り付けるために、矩形状に形成されている。開口形状は、矩形状に限定されず、円形等の他の形状でもよい。また、ネット部材40を成形する場合は、一枚のシート状のネットの対向する辺を接続して、筒状形状を形成してもよいし、複数枚のシート状のネットを、ネット間で縫合して筒状形状としてもよい。
【0032】
ネット部材40の下端部の第1の開口部41は、
図7(a)(b)に示すように、シート部材30の内周部qに沿って、縫い糸で縫合して取り付けられる。ネット部材40の他端部の第2の開口部42には、伸縮部材43が取り付けられる。伸縮部材43は、ゴム部材であり、ネット部材40の他端部の第2の開口部42の開口形状に沿って取付けられる。伸縮部材43を取り付けることにより、ネット部材40の第2の開口部42の開口を拡大する又は縮小することができる。初期状態では、ネット部材40の下端部の第1の開口部41がシート部材30の内周部qに接続された状態で、上端部を救助マット2の外側に折り返す。そして、
図7(c)に示すように、ネット部材40の第2の開口部42の伸縮部材43を拡張して、救助マット2の側面に沿って、第2の開口部42を取り付ける。
【0033】
ネット部材40を救助マット2に取り付けることにより、着地予定領域2aから外れて落下した要救助者は、ネット部材40により保護される。具体的には、救助マット2の着地予定領域2aを外れて着地した要救助者が、着地予定領域2aの救助マット2の外周部を押すことにより救助マット2が変形する。救助マット2が変形することにより、変形した箇所に取付けられていた伸縮部材43が伸長して、第2の開口部42の一部が救助マット2から外れる。第2の開口部42の一部が救助マット2から外れることで、ネット部材40の一部が持ち上がり、救助マット2上に着地した要救助者の上に被さる。
【0034】
移動阻止装置1は、
図1(a)(b)に示す復帰部材50を更に備えてもよい。復帰部材50は、移動阻止装置1が作動した後に、移動阻止装置1を初期状態に戻す部材である。復帰部材50は、係合部51と、連結索52とを備える。係合部51は、連結索52の一端部を救助マット2に取り付ける部材であり、救助マット2の四隅に取付けられる。連結索52は、所定の長さを有する紐であり、ビニール等を用いて形成される。連結索52の一端部は、係合部51に連結され、他端部は、ネット部材40の第2の開口部42に連結される。
【0035】
復帰部材50の連結索52の他端部は、初期状態では、
図1(a)に示すように、ネット部材40の第2の開口部42とともに、救助マット2の側面に配置されている。移動阻止装置1が作動すると、
図1(b)に示すように、ネット部材40の第2の開口部42が救助マット2の上面に移動するのに伴い、連結索52の他端部も救助マット2上に移動する。
【0036】
ネット部材40を初期状態に戻すためには、連結索52を作業者が手で引っ張り、第2の開口部42を救助マット2の側面に戻す。
【0037】
(移動阻止装置の設置方法)
図3(a)(b)に示すように、収納袋4から取り出された救助マット2に、酸素ボンベあるいは送風機により、救助マット2の骨組体20の気柱20aに酸素または空気を送り込む。酸素または空気が気柱20aの内部に送り込まれることにより、救助マット2が膨らむ。
【0038】
そして、
図7(a)に示すように、シート部材30にネット部材40を取り付け、一体となった保護部材10を形成する。シート部材30とネット部材40は、予め連結して、収納袋4に収納しておいてもよい。次に、
図8(a)に示す取付部材60により、シート部材30を救助マット2に取付けることにより、保護部材10を救助マット2に取り付ける。保護部材10も予め救助マット2に取り付けておいてもよい。
図7(b)は、保護部材10を救助マット2に取り付けた状態を示す。ネット部材40は、一部のみを図示した。
【0039】
次に、ネット部材40のネットを外側に折り返し、伸縮部材43であるゴム部材が取り付けられたネット部材40の第2の開口部42を、広げて救助マット2の側面に取り付ける。第2の開口部42が、伸縮部材43によって、救助マット2の側面に取り付けられた状態を、
図7(c)に示す。この状態で、移動阻止装置1は初期状態となる。初期状態であるシート部材30とネット部材40は、
図9に示す状態となっている。
【0040】
(移動阻止装置の作動状態)
図10(a)に示すように、初期状態では、シート部材30は、着地予定領域2aの外周を囲むように配置されている。ネット部材40の一端部は、シート部材30の内周部qに取り付けられて、救助マット2の外側に折り返され、他端部は、救助マット2の側面に伸縮部材43により固定されている。この状態で、要救助者が飛び下りる。
【0041】
要救助者が着地予定領域2aを外れて、救助マット2上に着地した場合、救助マット2の外周部が、着地した要救助者により押されることにより、ネット部材40の第2の開口部42に取り付けられた伸縮部材43が、救助マット2から外れる。そして、ネット部材40の第2の開口部42は、救助マット2から外れて、上方に持ち上がる。
【0042】
ネット部材40の第2の開口部42は持ち上がり、救助マット2の上方に移動し、
図10(b)の状態となる。また、シート部材30もシート部材30の外周部pを支点として、内周部qが持ち上がる。着地した要救助者は、救助マット2とネット部材40との間、あるいは、救助マット2とシート部材30との間に確保される。これにより、要救助者は、救助マット2から滑り落ちることを阻止される。
【0043】
図10(b)では、ネット部材40の第2の開口部42の全周が救助マット2から外れて、救助マット2の上面に移動する状態が示されている。実際には、ネット部材40の第2の開口部42の、要救助者が救助マット2に着地した位置に近い部分が、救助マット2から外れる。要救助者の着地した位置、姿勢に応じて、ネット部材40の第2の開口部42が救助マット2から外れる範囲は異なる。
【0044】
移動阻止装置1が作動した後は、初期状態に戻すために、復帰部材50の連結索52を手で引っ張り、元の位置に戻す。そして、次の要救助者の着地に備える。
【0045】
本実施の形態によれば、シート部材30を使用することにより、シート部材30と、救助マット2との間で、確実に、要救助者を確保することができる。
【0046】
本実施の形態によれば、ネット部材40を使用することにより、ネット部材40と、救助マット2との間で、確実に、要救助者を確保することができる。
【0047】
本実施の形態によれば、シート部材30とネット部材40を組み合わせた保護部材10を使用したので、要救助者を確実に保護することができる。
【0048】
本実施の形態によれば、シート部材30の材料として、軽量のパラシュートクロスを用いた。したがって、要救助者が、着地予定領域2aを外れて着地した場合に、シート部材30は、容易に持ち上がり、救助マット2とシート部材30との間に空間が形成され、着地予定領域2aから外れた要救助者を、確保することができる。
【0049】
本実施の形態によれば、保護部材10は、取付部材60により着脱可能な構造とした。したがって、保護部材10は、救助マット2に予め取り付けておくこともできるし、既存の救助マット2に後から取り付けることもできる。
【0050】
本実施の形態によれば、復帰部材50を設けたので、移動阻止装置1が作動した後も、速やかに初期状態に戻すことができ、次の要救助者の救助をすることができる。
【0051】
本実施の形態では、直方体の救助マット2を使用したが、救助マット2の形状は直方体に限定されない。救助マットは、立方体、円筒形、六角柱であってもよい。
【0052】
本実施の形態では、救助マット2としてエアーマットを用いたが、救助マット2は、エアーマットに限定されず、内部にスプリングをいれたマットなど他のマットを使用することもできる。
【0053】
本実施の形態では、移動阻止装置1として、シート部材30とネット部材40の双方を備える装置として説明したが、シート部材30とネット部材40の何れか一方を備える移動阻止装置1としてもよい。
【0054】
本実施の形態では、伸縮部材43を用いてネット部材40の第2の開口部42を、救助マット2の側面に固定したが、伸縮部材43ではなく、スナップボタン等を使用してもよい。
【0055】
本実施の形態では、復帰部材50は、救助マット2の四隅に取付けられると説明したが、四隅でなくてもよい。また、救助マット2として円柱状又は六角錐状のマットを使用した場合には、その外周の数カ所に復帰部材50を取り付けてもよい。
【0056】
本実施の形態では、復帰部材50は、連結索52を備え、連結索52を手で持って、初期位置に戻すと説明したが、ゼンマイバネを用いて、自動的に元の位置に巻き戻すようにしてもよい。
【0057】
本実施の形態では、シート部材30は、パラシュートクロスであると説明したが、他の材料を使用してもよい。例えば、合成樹脂を環状に形成した板であってもよい。
【0058】
本実施の形態では、シート部材30と救助マット2とは、リーシングで接続されると説明したが、シート部材30の外周部pと、救助マット2の上部外周に、それぞれファスナーを取り付けて、接続してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、救助マットに着地した要救助者が救助マットの外に移動されることを阻止する移動阻止装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 移動阻止装置
2 救助マット
2a 着地予定領域
2b 領域線
3 第2の取付ユニット
4 収納袋
10 保護部材
20 骨組体
20a 気柱
21 外被
30 シート部材
30a パラシュートクロス
31 第1の取付ユニット
40 ネット部材
41 第1の開口部
42 第2の開口部
43 伸縮部材
50 復帰部材
51 係合部
52 連結索
60 取付部材
61 本体部
62 孔
63 紐