(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】排気弁
(51)【国際特許分類】
F16K 24/04 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
F16K24/04 M
(21)【出願番号】P 2020526633
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2019046161
(87)【国際公開番号】W WO2020111057
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2018225245
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】浅田 哲夫
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-307279(JP,A)
【文献】実開平01-102575(JP,U)
【文献】実開平07-002683(JP,U)
【文献】実開昭60-191774(JP,U)
【文献】実開平06-008793(JP,U)
【文献】特開昭59-201983(JP,A)
【文献】特開2003-269633(JP,A)
【文献】特開2003-307276(JP,A)
【文献】特開2003-307277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 24/04
F16K 24/00
F16K 31/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入口及び流出口が形成されたケーシングと、
前記ケーシング内において前記流入口と前記流出口との間に設けられ、弁口を有する弁座と、
前記ケーシング内において、前記弁座よりも前記流入口側であって且つ前記弁座よりも下方に配置されたフロート受けと、
前記ケーシング内において前記弁座と前記フロート受けとの間を移動可能に配置され、前記弁口を開閉するフロートと、
前記ケーシング内に配置され、前記流入口から流入する流体のうち前記フロートに接触する流体を低減するためのフロートカバーとを備え、
前記フロートカバーは、内部に前記フロートを収容し、
前記フロートは、
前記ケーシング内に流体が流入していないときには、前記フロート受け上の位置である初期位置に位置して、前記弁口を開いており、
前記流入口から前記ケーシング内に気体が流入するときには、前記弁口を開いた状態で前記流出口からの気体の流出を許容する一方、
前記流入口から前記ケーシング内に液体が流入するときには、
液体に浮かんだ状態で液体の浮力によって浮上して前記弁口を閉じ、前記流出口からの液体の流出を阻止し、
前記フロート受けは、前記フロートカバーの内部に配置され、前記フロートカバーから独立して移動し、前記初期位置の前記フロートと接触する接触部を有し、前記接触部の前記弁座までの距離を変更して前記初期位置を調節可能に構成され、
前記接触部は、下方に凹んだ球冠状に形成されている排気弁。
【請求項2】
請求項1に記載の排気弁において、
前記ケーシング内において前記弁座と前記流出口との間に配置され、前記流出口から流入する流体が前記流入口の方へ流れるのを阻止する逆止弁をさらに備える排気弁。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の排気弁において、
前記流出口は、真空ポンプに接続される排気弁。
【請求項4】
請求項3に記載の排気弁であって、
給水ポンプの吸水側から排気して前記給水ポンプへ呼び水を導くための排気管に設置される排気弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、排気弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、気体が流入する場合には気体を通過させ、液体が流入する場合には液体の通過を阻止する排気弁が知られている。例えば、特許文献1には、弁座とフロートとがケーシング内に収容された排気弁が開示されている。排気弁に気体が流入する場合には、フロートが弁座から離座しており、気体の流通が許容される。一方、排気弁に液体が流入する場合には、フロートが液位に応じて浮上して弁口を閉じ、液体の流出を阻止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のような排気弁においては、フロートは、ケーシング内に流入する流体が気体か液体かに応じて弁口を開閉するように、ケーシング内で比較的自由に移動できる。つまり、フロートは、ケーシングに流入する流体の成り行きで弁口を開閉する。そのため、フロートが弁口を閉じるべきタイミングより早く、偶発的に弁口を閉じてしまう虞がある。その場合、想定通りの排気を実現できない。逆に、フロートが弁口を閉じるべきタイミングよりも遅く、偶発的に弁口を閉じてしまう虞もある。その場合、排気弁から液体を流出させてしまう。
【0005】
ここに開示された技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、気体の適切な排出と液体の排出の阻止とのバランスをとることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示された排気弁は、流入口及び流出口が形成されたケーシングと、前記ケーシング内において前記流入口と前記流出口との間に設けられ、弁口を有する弁座と、前記ケーシング内において、前記弁座よりも前記流入口側であって且つ前記弁座よりも下方に配置されたフロート受けと、前記ケーシング内において前記弁座と前記フロート受けとの間を移動可能に配置され、前記弁口を開閉するフロートとを備え、前記フロートは、前記ケーシング内に流体が流入していないときには、前記フロート受け上の位置である初期位置に位置して、前記弁口を開いており、前記流入口から前記ケーシング内に気体が流入するときには、前記弁口を開いた状態で前記流出口からの気体の流出を許容する一方、前記流入口から前記ケーシング内に液体が流入するときには、液体の浮力によって浮上して前記弁口を閉じ、前記流出口からの液体の流出を阻止し、前記フロート受けは、前記弁座までの距離を変更して前記初期位置を調節可能に構成されている。
【発明の効果】
【0007】
前記排気弁によれば、気体の適切な排出と液体の排出の阻止とのバランスをとることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、開弁状態であって、フロートが初期位置に位置する状態の排気弁の断面図である。
【
図3】
図3は、
図1のIII-III線における排気弁の横断面図である。
【
図4】
図4は、フロートの初期位置が
図1の位置から変更された状態の排気弁の断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態2に係る排気弁の断面図である。
【
図7】
図7は、実施形態3に係る排気弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
《実施形態1》
図1は、実施形態1に係る、開弁状態の排気弁100の断面図である。
図2は、閉弁状態の排気弁100の断面図である。尚、
図1,2において、フロート5は断面図ではなく正面図として描かれている(以下、排気弁の断面図においては同様である)。
【0011】
排気弁100は、例えば空気等の気体が流入してきた場合にはその気体を流出させる一方、例えば水等の流体が流入してきた場合にはその流体の流出を阻止する。例えば、排気弁100は、送水始めの初期空気を配管などから多量に排出するときに用いられる。
【0012】
排気弁100は、ケーシング1と、弁座4と、フロート5と、フロート受け6とを備えている。
【0013】
ケーシング1には、流体が流入する流入口31、流体が流出する流出口32及び弁室27が形成されている。ケーシング1には、流入口31から流入した流体が流出口32へ向かって流れる流路33が形成されている。流入口31は、流出口32よりも下方に配置されている。
【0014】
詳しくは、ケーシング1は、弁室27の一部を区画する筒状の周壁11aを有している。ケーシング1は、弁室27の一部を区画し、周壁11aの軸心方向の一端を塞ぐ天井17をさらに有していてもよい。より詳しくは、ケーシング1は、第1ケーシング11と、第2ケーシング12とを有している。第1ケーシング11は、軸心Xの方向に延びる筒状の周壁11aを有している。第1ケーシング11は、軸心Xの方向の両端にそれぞれ第1開口14及び第2開口15が形成されている。第1開口14が、流入口31である。第1ケーシング11の外周面のうち、第2開口15側の端部には雄ネジが形成されている。
【0015】
第2ケーシング12は、軸心Xの方向に延びる有底の筒状に形成されている。第2ケーシング12は、軸心Xの方向に開口する開口16を有している。開口16が、流出口32である。第2ケーシング12の底が天井17を形成している。天井17には、連通孔18が貫通形成されている。連通孔18は、開口16と連続している(即ち、連通している)。
【0016】
第2ケーシング12は、天井17が第2開口15を塞ぐように、第1ケーシング11の第2開口15側の端部に配置される。第1ケーシング11の第2開口15側の端部にユニオンナット19が取り付けられることによって、第2ケーシング12が第1ケーシング11に取り付けられる。第1ケーシング11及び第2ケーシング12の内部に、流入口31、弁室27及び流出口32によって流路33が形成されている。
【0017】
弁座4は、弁室27に(即ち、ケーシング1内において流入口31と流出口32との間に)設けられている。弁座4は、天井17に取り付けられている。弁座4は、第2ケーシング12の連通孔18に第1ケーシング11側からネジ締結されている。弁座4は、弁口41が貫通形成されている。弁口41は、弁室27と流出口32とを連通させている。
【0018】
フロート受け6は、ケーシング1内において、弁座4よりも流入口31側であって且つ弁座4よりも下方に配置されている。フロート受け6は、弁座4までの距離を変更可能に構成されている。例えば、フロート受け6は、フロートカバー61と、調節ロッド65とを有している。
【0019】
フロートカバー61は、流入口31から流入する流体のうちフロート5に接触する流体を低減する。フロートカバー61は、上方に開口する有底筒状又は椀状に形成されている。例えば、フロートカバー61は、円筒状の周壁62と、周壁62の一端に設けられた底63とを有している。底63には、複数の連通孔64が貫通形成されている。フロートカバー61は、弁室27に配置されている。フロートカバー61は、内部にフロート5を収容する。
【0020】
図3は、
図1のIII-III線における排気弁100の横断面図である。詳しくは、ケーシング1の第1ケーシング11の内周面には、軸心Xと平行に延びる4本のガイド21が形成されている。4本のガイド21は、軸心Xを中心とする周方向に等間隔で配置されている。フロートカバー61は、軸心Xの方向に移動可能な状態で4本のガイド21に支持されている。つまり、周壁62は、4本のガイド21に対して摺動する。フロートカバー61の周壁62と周壁11aとの間には、流体の流路33の一部となる隙間33aが形成されている。
【0021】
調節ロッド65の先端(
図1では上端)は、フロートカバー61の底63に連結されている。調節ロッド65の外周には、雄ネジが形成されている。ケーシング1の第1ケーシング11には、調節ロッド65を支持する支持部22が設けられている。支持部22は、第1ケーシング11の下部において軸心X上に配置されている。支持部22は、第1ケーシング11の内周面から延びる複数のアーム(図示省略)を介して第1ケーシング11に連結されている。支持部22には、軸心Xと同軸に延びる雌ネジが貫通形成されている。支持部22の雌ネジに調節ロッド65の雄ネジが螺合することによって、調節ロッド65が支持部22に支持されている。この状態において、調節ロッド65は軸心Xと同軸に延び、フロートカバー61は、支持部22よりも上方に位置している。調節ロッド65が軸心Xを中心に回転させられることによって、調節ロッド65は、軸心Xの方向に移動し、それに伴ってフロートカバー61も軸心Xの方向に移動する。こうして、フロート受け6は、弁座4までの距離(詳しくは、底63から弁座4までの距離)を変更する。
【0022】
フロート5は、ケーシング1内(詳しくは、弁室27)において弁座4とフロート受け6との間を移動可能に配置されている。フロート5は、水等の液体に浮くように構成されている。詳しくは、フロート5は、中空状に形成されている。フロート5は、略球体に形成されている。フロート5の直径(外径)は、周壁62の内径よりも小さい。フロート5は、流入口31からの気体の流入時には弁口41を開いた状態で弁口41からの気体の流出を許容する一方、流入口31からの液体の流入時には、液体の浮力によって浮上して弁口41を閉じて弁口41からの液体の流出を阻止する。
【0023】
フロート5は、ケーシング1内に流体が流入する前の状態である初期状態においては、
図1に示すように、ケーシング1内においてフロートカバー61の中、より具体的には底63の上に載置されている。以下、初期状態におけるフロート5の位置を「初期位置」と称する。前述の如く、フロート受け6が弁座4までの距離を変更すると、フロート5の初期位置もそれに伴って変更される。すなわち、フロート受け6の調節ロッド65は、フロート5の初期位置を調節する。
【0024】
続いて、排気弁100の動作について説明する。以下では、排気弁100に流入する気体が空気であり、排気弁100に流入する液体が水である場合を例に説明する。
【0025】
まず、排気弁100に流体が流入する前の状態においては、
図1に示すように、フロート5は、フロートカバー61の底63に載置された初期位置に位置している。このとき、フロート5は、弁座4から離座しており、弁口41は開放されている。
【0026】
この状態において、流入口31からケーシング1内へ空気が流入すると、空気は、ケーシング1の流路33を通って弁口41に流入する。このとき、空気は、ケーシング1の第1ケーシング11の周壁11aとフロートカバー61の周壁62との間の隙間33aを通って弁口41まで流れる。空気の一部は、フロートカバー61の連通孔64を通過し、フロートカバー61の内部に流入する。フロートカバー61の周壁62とフロート5との間には隙間があるので、空気は、その隙間を通って弁口41まで流れる。空気は、弁口41を通過し、流出口32を介してケーシング1から流出する。フロート5は、流通する空気に晒されているので、空気の流通によって揺れ動き得る。しかし、大部分の空気は、周壁11aとフロートカバー61との隙間33aを通って流れるので、フロート5の揺れ動きは低減される。
【0027】
一方、流入口31からケーシング1内へ水が流入すると、水は、空気と同様に、ケーシング1の第1ケーシング11の周壁11aとフロートカバー61の周壁62との隙間33aを通って弁口41へ向かって流れていく。水の一部は、連通孔64を通過し、フロートカバー61の周壁62とフロート5との間を通って弁口41へ向かって流れていく。このとき、フロート5は、水の浮力によって浮上する。フロート5は、ケーシング1内の水位に応じて上昇する。やがて、フロート5は、
図2に示すように、弁座4に着座して弁口41を閉じる。フロート5は、水が弁口41に達するよりも先に弁口41を閉じる。これにより、排気弁100からの水の流出が阻止される。フロート5は、流通する水に晒されているので、水の流通によって揺れ動き得る。しかし、大部分の水は、周壁11aとフロートカバー61との隙間33aを通って流れるので、フロート5の揺れ動きは低減される。
【0028】
このように構成された排気弁100は、図示省略の送水管又はポンプ等に設置される。排気弁100は、送水始めの初期空気を排出する一方、送水が進んで排気弁100内に水が進入すると閉弁し、空気の排出を停止すると共に水の排出も阻止する。
【0029】
フロート5は、ケーシング1内の水面に浮かんだ状態で上昇して弁座4に着座する。そのため、フロート5は、弁座4の位置まで上昇しても、弁口41からずれていて、すぐに弁口41に嵌らない場合もあり得る。フロート5の初期位置が弁座4から離れていると、フロート5が揺れ動く範囲も、揺れ動く可能性も大きくなり、フロート5が弁口41にすぐに嵌らない可能性が高くなる。閉弁が遅すぎると、排気弁100から水が流出してしまう虞がある。その一方で、フロート5の初期位置が弁座4に近いと、空気又は水がフロート5の周囲を流通する際にフロート5が空気又は水の勢いで跳ねて弁口41を閉じてしまう可能性もある。さらには、排気弁100は、振動する場合がある。例えば、排気弁100等が設置されているベースが振動する場合には、排気弁100も振動する。また、排気弁100は、ポンプ等と共に使用されるので、ポンプ又はポンプの駆動源等の振動が排気弁100に伝わる場合もある。そのような場合には、排気弁100の全体的な振動によってフロート5が跳ね上がり、弁口41を閉じる虞もある。閉弁が早すぎると、空気を適切に排出できない。
【0030】
フロート5の初期位置は、フロート受け6によって調節される。
図4は、フロート5の初期位置が
図1の位置から変更された状態の排気弁100の断面図である。調節ロッド65が軸心Xを中心に回転させられることによって、
図4に示すように、フロート受け6の弁座4までの距離が変更される。それに伴って、フロート5の初期位置が変更される。フロート5の初期位置が弁座4から離れると、フロート5の周囲を通過する空気又は水によってフロート5が跳ね上げられたり、排気弁100の振動によりフロート5が跳ねたりしても、フロート5が弁座4に着座する可能性が低くなる。一方、フロート5の初期位置が弁座4に近づくと、フロート5が水位に応じて浮上する際にフロート5の揺れ動く範囲及び揺れ動く可能性が小さくなり、フロート5が弁座4に着座する安定性が増す。そのような観点のもと、フロート5の初期位置は、排気弁100の使用状況(流入口31からの空気又は水の流量等)に応じて調節される。これにより、フロート5による弁口41の閉鎖が早すぎず且つ遅すぎないバランスの取れた位置にフロート5の初期位置が調整される。その結果、空気の適切な排出と水の排出の阻止とのバランスをとる(例えば、両立させる)ことができる。
【0031】
続いて、このように構成された排気弁100の適用例について説明する。
図5は、給水システム9の配管図である。排気弁100は、給水システム9に組み込まれている。詳しくは、給水システム9は、給水ポンプ91と、真空ポンプ92と、排気弁100とを備えている。給水システム9は、貯水槽等の水を給水ポンプ91によって給水する。真空ポンプ92及び排気弁100は、給水ポンプ91のための呼び水機構を形成する。
【0032】
詳しくは、給水ポンプ91には、吸入管93及び排出管94が接続されている。給水ポンプ91は、吸入管93を介して水を吸入し、排出管94を介して水を排出する。
【0033】
排気弁100は、給水ポンプ91の吸水側から排気して給水ポンプ91へ呼び水を導くための排気管95に設置される。排気管95は、排気弁100の流入口31と吸入管93とを接続する第1排気管95aと、排気弁100の流出口32と真空ポンプ92の吸入口(図示省略)とを接続する第2排気管95bとを含んでいる。
【0034】
真空ポンプ92は、給水ポンプ91による給水の開始時に作動させられる。真空ポンプ92によって、吸入管93、さらには吸入管93の上流側の配管等の空気が吸引される。真空ポンプ92による吸引により、吸入管93の上流側から給水ポンプ91へ向かって水(所謂、呼び水)が吸引される。この真空ポンプ92による呼び水作用と給水ポンプ91の作動とが相俟って、給水ポンプ91からの給水が早期に開始される。このとき、真空ポンプ92が吸入管93から空気を吸引している間は、排気弁100は空気の通過を許容する。やがて、吸入管93に水が引き込まれると、第1排気管95aを介して排気弁100に水が進入する。排気弁100は、水の進入により閉弁して、水の通過を阻止する。これにより、真空ポンプ92内に水が進入することが防止される。
【0035】
このとき、排気弁100のフロート5の初期位置は、給水ポンプ91及び真空ポンプ92の能力等に応じて適切に調整される。つまり、フロート5による閉弁が早すぎることなく、且つ、フロート5が安定的に閉弁するように、フロート5の初期位置が調節される。特に、給水システム9においては、排気弁100の流出口32は、真空ポンプ92に接続されている。そのため、フロート5の初期位置が弁座4に近すぎると、フロート5がケーシング1内の水の浮力ではなく、流出口32からの吸引によって浮上して弁口41を閉じる虞がある。さらには、排気弁100には、給水ポンプ91、真空ポンプ92又はそれらの駆動源の振動が伝わる場合がある。そのような場合には、フロート5が振動で跳ね上がり、弁口41を閉じる虞がある。つまり、フロート5による早すぎる閉弁は、ケーシング1に流入する空気又は水による跳ね上げだけでなく、流出口32からの吸引や排気弁100の振動によっても起こり得る。それに対し、フロート5が吸引や振動によっても弁口41を閉じない位置にフロート5の初期位置をフロート受け6によって調節することができる。
【0036】
以上のように、排気弁100は、流入口31及び流出口32が形成されたケーシング1と、ケーシング1内において流入口31と流出口32との間に設けられ、弁口41を有する弁座4と、ケーシング1内において、弁座4よりも流入口31側であって且つ弁座4よりも下方に配置されたフロート受け6と、ケーシング1内において弁座4とフロート受け6との間を移動可能に配置され、弁口41を開閉するフロート5とを備え、フロート5は、ケーシング1内に流体が流入していないときには、フロート受け6上の位置である初期位置に位置して、弁口41を開いており、流入口31からケーシング1内に気体が流入するときには、弁口41を開いた状態で流出口32からの気体の流出を許容する一方、流入口31からケーシング1内に液体が流入するときには、液体の浮力によって浮上して弁口41を閉じ、流出口32からの液体の流出を阻止し、フロート受け6は、弁座4までの距離を変更して初期位置を調節可能に構成されている。
【0037】
この構成によれば、ケーシング1内に流体が流入していないときには、フロート5は、フロート受け6上の初期位置に位置し、弁口41は開かれている。この状態からケーシング1内に気体が流入すると、フロート5は、弁口41を開いたまま維持し、流出口32からの気体の流出を許容する。つまり、気体は、排気弁100を通過する。一方、ケーシング1内に液体が流入すると、フロート5は、液体の浮力によって浮上して弁口41を閉じ、流出口32からの液体の流出を阻止する。つまり、液体は、排気弁100を通過しない。このように動作する排気弁100において、フロート受け6は、弁座4までの距離を変更して、フロート5の初期位置を調節する。これにより、フロート5の周囲を流れる流体によってフロート5が跳ね上げられて、意図せず弁口41を閉じてしまったり、フロート5が初期位置から弁座4まで浮上する間に大きく揺れ動いて弁口41を安定的に閉じることができなかったりすることを防止できる。その結果、空気の適切な排出と水の排出の阻止とのバランスをとることができる。
【0038】
また、フロート受け6は、ケーシング1内に配置され、流入口31から流入する流体のうちフロート5に接触する流体を低減するためのフロートカバー61を有し、フロートカバー61は、弁座4までの距離を変更可能に構成されている。
【0039】
具体的には、フロートカバー61には、調節ロッド65が連結されている。調節ロッド65が操作されることによって、フロートカバー61が移動し、フロートカバー61と弁座4との距離が変更される。
【0040】
この構成によれば、フロートカバー61が移動しても、初期位置のフロート5は、フロートカバー61上に位置した状態が維持される。つまり、フロート受け6と弁座4との距離、即ち、フロートカバー61と弁座4との距離が変更されても、流入口31から流入する流体のうちフロート5に接触する流体をフロートカバー61が低減する状態が維持される。
【0041】
さらに、流出口32は、真空ポンプ92に接続される。
【0042】
この構成によれば、真空ポンプ92の吸引によって流出口32には負圧が作用し、ケーシング1内の流体は、流出口32を介して吸引される。そのため、フロート5の初期位置が弁座4に近いと、ケーシング1内にフロート5を閉弁させる程度の液体が流入していない場合であっても、即ち、流出口32からまだ気体を流出させるべきタイミングであっても、フロート5が吸引されて弁口41を閉ざしてしまう虞がある。フロート受け6と弁座4との距離が調節されることによって、流出口32の方への吸引によりフロート5が偶発的に弁口41を閉じてしまうことを防止することができる。
【0043】
また、排気弁100は、給水ポンプ91の吸水側から排気して給水ポンプ91へ呼び水を導くための排気管95に設置される。
【0044】
この構成によれば、排気弁100は、給水ポンプ91の呼び水機構の一部として用いられる。排気弁100は、不意な閉弁が抑制されるので、給水ポンプ91の吸水側から比較的多くの空気を排気することができる。つまり、排気弁100は、高い呼び水性能に寄与することができる。それに加えて、排気弁100は、ケーシング1に水が所定量流入したときに安定的に閉弁するので、排気弁100の下流側への水の流出(例えば、真空ポンプ92への水の流入)を防止することができる。
【0045】
《実施形態2》
続いて、実施形態2に係る排気弁200について、
図6を参照しながら説明する。
図6は、排気弁200の断面図である。
【0046】
排気弁200は、フロート受け206の構成が、排気弁100のフロート受け6と異なる。以下では、排気弁200のうち、排気弁100と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略し、排気弁100と異なる構成を中心に説明する。
【0047】
排気弁200は、ケーシング1と、弁座4と、フロート5と、フロート受け206とを備えている。フロート受け206は、調節ロッド65と略同じような構成をしている。排気弁200は、フロートカバー261をさらに備えていてもよい。フロートカバー261は、フロートカバー61と略同じような構成をしている。フロートカバー61は、調節ロッド65と一体的に移動したのに対し、フロートカバー261は、フロート受け206と一体的には移動せず、ケーシング1に固定されている。
【0048】
詳しくは、フロートカバー261は、円筒状の周壁262と、周壁262の一端に設けられた底263とを有し、上方に開口する有底筒状に形成されている。底263には、複数の連通孔264が貫通形成されている。フロートカバー261は、4本のガイド21に固定的に支持されている。
【0049】
フロート受け206は、棒状に形成されている。フロート受け206の外周には、雄ネジが形成されている。支持部22の雌ネジにフロート受け206の雄ネジが螺合することによって、フロート受け206が支持部22に支持されている。この状態において、フロート受け206は、軸心Xと同軸に延びている。このとき、フロート受け206の先端部(
図6では上端部)は、フロートカバー261の底263を貫通している。フロート受け206の先端には、初期位置のフロート5と接触する接触部265が設けられている。接触部265は、下方に凹んだ球冠状に形成されている。初期位置におけるフロート5は、接触部265に載置されている。
【0050】
フロート受け206が軸心Xを中心に回転させられることによって、フロート受け206は、軸心Xの方向に移動し、それに伴って接触部265から弁座4までの距離が変更される(
図6の二点鎖線参照)。このとき、フロートカバー261は、移動しない。このように、フロート受け206がフロートカバー261から独立して移動し、弁座4までの距離を変更する。
【0051】
排気弁200の動作は、排気弁100の動作と同様である。流入口31からケーシング1内へ空気が流入する場合には、空気は、第1ケーシング11の周壁11aとフロートカバー261の周壁262との間の隙間33aを通って弁口41まで流れる。空気の一部は、フロートカバー261の連通孔264を通過し、フロートカバー261の内部に流入し、フロートカバー261の周壁262とフロート5との間を通って弁口41まで流れる。空気は、弁口41を通過し、流出口32を介してケーシング1から流出する。
【0052】
一方、流入口31からケーシング1内へ水が流入すると、水は、空気と同様に、第1ケーシング11の周壁11aとフロートカバー261の周壁262との間の隙間33aを通って弁口41へ向かって流れていく。水の一部は、連通孔264を通過し、フロートカバー261の周壁262とフロート5との間を通って弁口41へ向かって流れていく。このとき、フロート5は、水の浮力によって浮上する。フロート5は、ケーシング1内の水位に応じて上昇し、やがて弁座4に着座して弁口41を閉じる。フロート5は、水が弁口41に達するよりも先に弁口41を閉じる。これにより、排気弁200からの水の流出が阻止される。
【0053】
このとき、フロート5の初期位置は、フロート受け206によって調節される。詳しくは、フロート5が空気若しくは水の流通又は排気弁200の振動によって不意に弁口41を閉じることがなく、且つ、水の流入時にはフロート5が弁座4に安定的に着座する位置に初期位置が調節される。
【0054】
以上のように、排気弁200は、流入口31及び流出口32が形成されたケーシング1と、ケーシング1内において流入口31と流出口32との間に設けられ、弁口41を有する弁座4と、ケーシング1内において、弁座4よりも流入口31側であって且つ弁座4よりも下方に配置されたフロート受け206と、ケーシング1内において弁座4とフロート受け206との間を移動可能に配置され、弁口41を開閉するフロート5とを備え、フロート5は、ケーシング1内に流体が流入していないときには、フロート受け206上の位置である初期位置に位置して、弁口41を開いており、流入口31からケーシング1内に気体が流入するときには、弁口41を開いた状態で流出口32からの気体の流出を許容する一方、流入口31からケーシング1内に液体が流入するときには、液体の浮力によって浮上して弁口41を閉じ、流出口32からの液体の流出を阻止し、フロート受け206は、弁座4までの距離を変更して初期位置を調節可能に構成されている。
【0055】
この構成によれば、ケーシング1内に流体が流入していないときには、フロート5は、フロート受け206上の初期位置に位置し、弁口41は開かれている。この状態からケーシング1内に気体が流入すると、フロート5は、弁口41を開いたまま維持し、流出口32からの気体の流出を許容する。つまり、気体は、排気弁200を通過する。一方、ケーシング1内に液体が流入すると、フロート5は、液体の浮力によって浮上して弁口41を閉じ、流出口32からの液体の流出を阻止する。つまり、液体は、排気弁200を通過しない。このように動作する排気弁200において、フロート受け206は、弁座4までの距離を変更して、フロート5の初期位置を調節する。これにより、フロート5の周囲を流れる流体によってフロート5が跳ね上げられて、意図せず弁口41を閉じてしまったり、フロート5が初期位置から弁座4まで浮上する間に大きく揺れ動いて弁口41を安定的に閉じることができなかったりすることを防止できる。その結果、空気の適切な排出と水の排出の阻止とのバランスをとることができる。
【0056】
また、排気弁200は、ケーシング1内に配置され、流入口31から流入する流体のうちフロート5に接触する流体を低減するためのフロートカバー261をさらに備え、フロート受け206は、フロートカバー261から独立して移動し、弁座4までの距離を変更可能に構成されている。
【0057】
この構成によれば、フロートカバー261は、フロート受け206の弁座4までの距離を変更する際に、フロート受け206と共に移動する必要がない。つまり、フロートカバー261を移動可能に構成する必要がないという点で、フロートカバー261の構成を簡易にすることができる。
【0058】
《実施形態3》
続いて、実施形態3に係る排気弁300について、
図7を参照しながら説明する。
図7は、排気弁300の断面図である。
【0059】
排気弁300は、さらに逆止弁を備える点で、排気弁100と異なる。以下では、排気弁300のうち、排気弁100と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略し、排気弁100と異なる構成を中心に説明する。
【0060】
排気弁300は、ケーシング301と、弁座4と、フロート5と、フロート受け6と、逆止弁307とを備えている。
【0061】
ケーシング301には、流入口31、流出口332及び弁室27が形成されている。ケーシング301には、流入口31から流入した流体が流出口332へ向かって流れる流路333が形成されている。ケーシング301は、第1ケーシング11と、第2ケーシング312と、第3ケーシング313とを有している。第1ケーシング11は、排気弁100の第1ケーシング11と同じ構成をしている。
【0062】
第2ケーシング312は、排気弁100の第2ケーシング12と概ね同じ構成をしている。第2ケーシング212は、軸心Xの方向に延びる有底の筒状に形成されている。第2ケーシング212は、軸心Xの方向に開口する開口16を有している。第2ケーシング212の底が天井17を形成している。第2ケーシング312は、開口16に第1軸受375が設けられている。第1軸受375は、軸心Xを中心とする環状に形成されている。第1軸受375は、軸心Xを中心とする半径方向に延びるアーム(図示省略)によって、第1軸受375と同心状に形成されたベースリング377に連結されている。第1軸受375、アーム及びベースリング377は、全体として平板状に形成されている。第2ケーシング312の開口16の端部には、ベースリング377が載置される段差と、該段差よりも開口端に近い位置に軸心Xを中心として周方向に延びる溝とが形成されている。ベースリング377が段差に載置された状態において、溝にC形止め輪378が嵌められている。これにより、第1軸受375が、開口16に配置されている。
【0063】
第3ケーシング313には、軸心Xの方向に沿って下方に開口する第1開口323と、第1開口323よりも上方に位置し、軸心Xを中心とする半径方向に開口する第2開口324と、第1開口323と第2開口324とを連通させる連通孔325とが形成されている。第1開口323の開口端部には、雌ネジが形成されている。第1ケーシング11の第2開口15側の端部に第2ケーシング312が載置された状態で、第3ケーシング313が第1ケーシング11の第2開口15側の端部にネジ締結される。これにより、第2ケーシング312及び第3ケーシング313が第1ケーシング11に取り付けられる。
【0064】
ケーシング301には、周壁11aと天井17とで区画された、フロート5用の弁室27が形成されている。さらに、ケーシング301には、第2ケーシング312の開口16と第3ケーシング313の第1開口323とによって、逆止弁307用の弁室379が形成されている。第1ケーシング11、第2ケーシング312及び第3ケーシング313の内部に、流路333が形成されている。流路333の一部は、周壁11aとフロートカバー61との隙間33aで形成されている。第2開口324が、流出口332である。流出口332は、流入口31よりも上方に配置されている。
【0065】
第3ケーシング313は、第2軸受376が形成されている。第2軸受376は、連通孔325内に設けられている。第2軸受376は、連通孔325の内周面から延びる複数のアーム(図示省略)に連結されている。第2軸受376は、軸心Xの方向に延びる開口を有している。
【0066】
逆止弁307は、弁体371と弁座372とを有している。
【0067】
弁体371は、円盤状に形成されている。弁体371は、開口16の開口端の内径よりも大きな外径を有する。弁体371は、第1シャフト373と第2シャフト374とを有している。第1シャフト373及び第2シャフト374は、弁体371の両側から弁体371の軸心方向へ延びている。すなわち、第1シャフト373及び第2シャフト374は、一直線状に配置されている。第1シャフト273及び第2シャフト274は、弁体271の中心に配置されている。
【0068】
弁座372は、第2ケーシング312の開口16の開口端に形成されている。
【0069】
弁体371は、弁室379に収容されている。第1シャフト373は、第1軸受375に挿入されている。第2シャフト374は、第2軸受376に挿入されている。第1シャフト373及び第2シャフト374は、それぞれ第1軸受375及び第2軸受376に対して軸心Xの方向に摺動自在となっている。ケーシング301に流体が流入していない状態においては、弁体371は、その自重により弁座372に着座した状態となる(
図7の実線参照)。弁体371は、弁座372に着座することによって開口16を閉鎖する。
【0070】
続いて、このように構成された排気弁300の動作について説明する。排気弁300におけるフロート5の動作は、排気弁100におけるフロート5の動作と同じである。
【0071】
まず、排気弁300に流体が流入する前の状態においては、フロート5は、フロートカバー61の底63に載置された初期位置に位置し、弁口41を開放している。また、弁体371は、弁座372に着座して、開口16を閉鎖している。
【0072】
この状態において、流入口31からケーシング301内へ空気が流入すると、空気は、ケーシング301の流路333を通って弁口41に流入する。弁口41を通過した空気は、弁体371を押し上げて開弁させる。空気は、開口16から第3ケーシング313の第1開口323及び連通孔325を順に通過し、流出口332を介してケーシング301から流出する。
【0073】
一方、流入口31からケーシング301内へ水が流入すると、水は、空気と同様に、弁口41へ向かって流れていく。このとき、フロート5は、水の浮力によって浮上する。やがて、フロート5は、弁座4に着座して弁口41を閉じる。フロート5は、水が弁口41に達するよりも先に弁口41を閉じる。これにより、排気弁300からの水の流出が阻止される。
【0074】
このとき、フロート5の初期位置は、フロート受け6によって調節される。詳しくは、フロート5が空気若しくは水の流通又は排気弁300の振動によって不意に弁口41を閉じることがなく、且つ、水の流入時にはフロート5が弁座4に安定的に着座する位置に初期位置が調節される。
【0075】
このように構成された排気弁300は、図示省略の送水管又はポンプ等に設置される。排気弁300は、送水始めの初期ガスを排出する一方、送水が進んで排気弁300内に水が進入すると閉弁し、ガスの排出を停止すると共に水の排出も阻止する。
【0076】
ここで、排気弁300は逆止弁307を有しているので、流出口332からケーシング301内に流体が流入してきても、逆止弁307が閉弁して、流体の逆流を防止する。例えば、排気弁300が
図5に示すような給水システム9に組み込まれている場合、給水ポンプ91への呼び水の引き込みが完了した後は真空ポンプ92の作動が停止される。その結果、排気弁300の流出口332には吸引力が作用しなくなる。その一方で、給水ポンプ91が吸入管93を介して水を吸引するため、排気弁300の流入口31には給水ポンプ91による吸引力が作用し得る。そのような場合に、流出口332からケーシング301内に空気が流入しても、逆止弁307が開口16を閉弁するので、排気弁300を空気が逆流することが防止される。その結果、排気管95を介して吸入管93に空気が流入することが防止され、給水ポンプ91による給水が適切に継続される。
【0077】
以上のように、排気弁300は、流入口31及び流出口332が形成されたケーシング301と、ケーシング301内において流入口31と流出口332との間に設けられ、弁口41を有する弁座4と、ケーシング301内において、弁座4よりも流入口31側であって且つ弁座4よりも下方に配置されたフロート受け6と、ケーシング301内において弁座4とフロート受け6との間を移動可能に配置され、弁口41を開閉するフロート5とを備え、フロート5は、ケーシング301内に流体が流入していないときには、フロート受け6上の位置である初期位置に位置して、弁口41を開いており、流入口31からケーシング301内に気体が流入するときには、弁口41を開いた状態で流出口332からの気体の流出を許容する一方、流入口31からケーシング301内に液体が流入するときには、液体の浮力によって浮上して弁口41を閉じ、流出口332からの液体の流出を阻止し、フロート受け6は、弁座4までの距離を変更して初期位置を調節可能に構成されている。
【0078】
この構成によれば、ケーシング301内に流体が流入していないときには、フロート5は、フロート受け6上の初期位置に位置し、弁口41は開かれている。この状態からケーシング301内に気体が流入すると、フロート5は、弁口41を開いたまま維持し、流出口332からの気体の流出を許容する。つまり、気体は、排気弁300を通過する。一方、ケーシング301内に液体が流入すると、フロート5は、液体の浮力によって浮上して弁口41を閉じ、流出口332からの液体の流出を阻止する。つまり、液体は、排気弁300を通過しない。このように動作する排気弁300において、フロート受け6は、弁座4までの距離を変更して、フロート5の初期位置を調節する。これにより、フロート5の周囲を流れる流体によってフロート5が跳ね上げられて、意図せず弁口41を閉じてしまったり、フロート5が初期位置から弁座4まで浮上する間に大きく揺れ動いて弁口41を安定的に閉じることができなかったりすることを防止できる。その結果、空気の適切な排出と水の排出の阻止とのバランスをとることができる。
【0079】
また、排気弁300は、ケーシング301内において弁座4と流出口332との間に配置され、流出口332から流入する流体が流入口31の方へ流れるのを阻止する逆止弁307をさらに備える。
【0080】
この構成によれば、流体が排気弁300を逆流することが防止される。前述の如く、排気弁300が給水ポンプ91へ呼び水を導くために用いられる場合には、給水ポンプ91への呼び水の導入が完了した後は真空ポンプ92の作動が停止される。つまり、排気弁300の流入口31から流出口332の方へ向かう吸引が停止される。その場合、給水ポンプ91の吸引により、流出口332から流入口31へ向かう流れ、即ち、排気弁300を逆流する流れが生じ得る。それに対し、排気弁300には逆止弁307が設けられているので、流体の逆流が防止される。これにより、給水ポンプ91の適切な給水が維持される。
【0081】
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0082】
例えば、ケーシング1,301の構成は、一例に過ぎず、任意の構成を採用し得る。
【0083】
フロート受け6は、フロートカバー61を有していなくてもよい。つまり、フロート受けは、初期位置のフロート5を支えることができる構成であれば、任意の構成を採用し得る。排気弁200においても、フロートカバー261が省略されてもよい。
【0084】
排気弁100~300は、給水ポンプ91への呼び水のために使用されるものに限定されない。排気弁100~300は、気体を通過させ且つ液体の通過を阻止することが要求される部分に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上説明したように、ここに開示された技術は、排気弁について有用である。
【符号の説明】
【0086】
100,200,300 排気弁
1,301 ケーシング
31 流入口
32,332 流出口
4 弁座
41 弁口
5 フロート
6,206 フロート受け
61,261 フロートカバー
65 調節ロッド
307 逆止弁
91 給水ポンプ
92 真空ポンプ
95 排気管