(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】水素の持続可能な生成のための継続的なプロセス
(51)【国際特許分類】
C25B 1/04 20210101AFI20240403BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240403BHJP
C25B 15/029 20210101ALI20240403BHJP
C25B 15/021 20210101ALI20240403BHJP
C25C 1/00 20060101ALI20240403BHJP
C25C 1/16 20060101ALI20240403BHJP
C25C 1/14 20060101ALI20240403BHJP
C01B 3/08 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B15/029
C25B15/021
C25C1/00 301A
C25C1/16 A
C25C1/14
C01B3/08
(21)【出願番号】P 2021502868
(86)(22)【出願日】2019-07-18
(86)【国際出願番号】 GB2019052002
(87)【国際公開番号】W WO2020016580
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-07-07
(32)【優先日】2018-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】595042184
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ サリー
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アミニ ホリ,バーマン
(72)【発明者】
【氏名】グ,サイ
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-190275(JP,A)
【文献】国際公開第2017/115269(WO,A1)
【文献】特開2005-255505(JP,A)
【文献】特表2016-527396(JP,A)
【文献】国際公開第2013/181261(WO,A2)
【文献】米国特許第04332650(US,A)
【文献】特表2015-535825(JP,A)
【文献】国際公開第2014/046791(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103703166(CN,A)
【文献】特開2007-145686(JP,A)
【文献】特開2015-173114(JP,A)
【文献】特開2017-155315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/04
C25B 9/00
C25B 15/029
C25B 15/021
C25C 1/00
C25C 1/16
C25C 1/14
C01B 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を生成する方法であって、
-
亜鉛もしくはスズ、またはその合金を蒸気と接触させることによって熱化学反応を行って、
酸化亜鉛および/または水酸化亜鉛、あるいは酸化スズおよび/または水酸化スズ、ならびに水素を生成することと、
-前記熱化学反応で生成された前記
酸化亜鉛および/または水酸化亜鉛、あるいは酸化スズおよび/または水酸化スズを水または塩基性水溶液と接触させて、
亜鉛イオンまたはスズイオンを含む溶液を生成することと、
-アノードとカソードとの間に電圧を適用することによって電気化学反応を行い、それによって前記カソードの少なくとも一部が前記
亜鉛イオンまたはスズイオンを含む前記溶液に接触して、水素、酸素、および前記
亜鉛もしくはスズ、またはその合金を生成することと、を含む、方法。
【請求項2】
水素を生成する方法であって、
-
酸化亜鉛および/または水酸化亜鉛、あるいは酸化スズおよび/または水酸化スズを水または塩基性水溶液と接触させて、
亜鉛イオンまたはスズイオンを含む溶液を生成することと、
-アノードとカソードとの間に電圧を適用することによって電気化学反応を行い、それによって前記カソードの少なくとも一部が前記
亜鉛イオンまたはスズイオンを含む前記溶液に接触して、水素、酸素、および
亜鉛もしくはスズ、またはその合金を生成することと、
-前記電気化学反応で生成された前記
亜鉛もしくはスズ、またはその合金を蒸気と接触させることによって熱化学反応を行って、前記
酸化亜鉛および/または水酸化亜鉛、あるいは酸化スズおよび/または水酸化スズ、ならびに水素を生成することと、を含む、方法。
【請求項3】
(i)前記電気化学反応が、繰り返しまたは連続的に行われる;および/または
(ii)前記熱化学反応が、繰り返しまたは連続的に行われる、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記電気化学反応で生成された前記
亜鉛もしくはスズ、またはその合金を回収することを含む、請求項1~
3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記電気化学反応で生成された前記
亜鉛もしくはスズ、またはその合金は、前記電気化学反応が行われているときに収集される、請求項1~
4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記電気化学反応から収集された前記
亜鉛もしくはスズ、またはその合金が、前記熱化学反応が行われているときに前記熱化学反応に供給される、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
(i)前記
亜鉛もしくはスズ、またはその合金が、100℃~700℃の温度で蒸気と接触する;および/または
(ii)前記
亜鉛もしくはスズ、またはその合金を、前記蒸気と接触させている間に攪拌することを含む;および/または
(iii)前記熱化学反応から得られたガス状混合物から未反応の蒸気を凝縮することを含む、請求項1~
6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、前記
酸化亜鉛および/または水酸化亜鉛、あるいは酸化スズおよび/または水酸化スズを前記塩基性水溶液と接触させることを含み、前記塩基性水溶液が、塩基を含み、
(i)前記塩基が、アレニウス塩基、ルイス塩基、またはブレンステッド-ローリー塩基である;または
(ii)前記塩基がアレニウス塩基であり、アルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物を含む、請求項1~
7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
(i)前記方法が、前記
酸化亜鉛および/または水酸化亜鉛、あるいは酸化スズおよび/または水酸化スズを前記塩基性水溶液と接触させることを含み、前記塩基性水溶液が、0.5~8.5Mの塩基の濃度を含む;および/または
(ii)前記方法が、前記
酸化亜鉛および/または水酸化亜鉛、あるいは酸化スズおよび/または水酸化スズを前記塩基性水溶液と接触させることを含み、前記
酸化亜鉛および/または水酸化亜鉛、あるいは酸化スズおよび/または水酸化スズが、前記
亜鉛イオンまたはスズイオンを含む前記溶液を生成するのに十分な量で前記塩基性水溶液と接触し、前記
亜鉛イオンまたはスズイオンが、0.001~1Mの濃度で存在する;および/または
(iii)前記方法が、前記
酸化亜鉛および/または水酸化亜鉛、あるいは酸化スズおよび/または水酸化スズを水と接触させることを含み、前記
酸化亜鉛および/または水酸化亜鉛、あるいは酸化スズおよび/または水酸化スズが、前記
亜鉛イオンまたはスズイオンを含む前記溶液を生成するのに十分な量で水と接触し、前記
亜鉛イオンまたはスズイオンが、0.2~5Mの濃度で存在する、請求項1~
8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記熱化学反応で生成された前記
酸化亜鉛および/または水酸化亜鉛、あるいは酸化スズおよび/または水酸化スズが、前記熱化学反応が行われているときに収集される、請求項1~
9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
(i)前記熱化学反応から収集された前記
酸化亜鉛および/または水酸化亜鉛、あるいは酸化スズおよび/または水酸化スズを前記水または前記塩基性水溶液と接触させて、
亜鉛イオンまたはスズイオンを含む前記溶液を生成し、前記
亜鉛イオンまたはスズイオンを含む前記溶液が、前記電気化学反応が行われているときに前記カソードを含む電気化学セルに供給される;または
(ii)前記熱化学反応から収集された前記
酸化亜鉛および/または水酸化亜鉛、あるいは酸化スズおよび/または水酸化スズが、前記電気化学反応が行われているときに前記カソードを含む電気化学セルに供給され、前記
亜鉛イオンまたはスズイオンを含む前記溶液中の前記
亜鉛イオンまたはスズイオンの濃度を増加させる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
(i)前記アノードおよび前記カソードが、分割されていない電気化学セル内に配置される;または
(ii)前記アノードおよび前記カソードが、電気化学セル内に配置され、前記電気化学セルが、前記セルを2つの部分に分割する前記アノードと前記カソードとの間に配置された膜を備える、請求項1~
11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、前記セルのカソード部分に前記
亜鉛イオンまたはスズイオンを含む前記溶液を配置して、前記カソードの少なくとも一部が前記
亜鉛イオンまたはスズイオンを含む前記溶液に接触するようにすることを含み、前記方法が、前記セルのアノード部分にさらなる電解液を配置して、前記アノードの少なくとも一部が前記さらなる電解液に接触するようにすることをさらに含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記さらなる電解液が、塩基性水溶液を含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
(i)前記方法が、前記アノードとカソードとの間に1~8Vの電圧を適用することを含む;および/または
(ii)前記方法が、0.5~10Aの電流を前記アノード、カソード、および前記
亜鉛イオンまたはスズイオンを含む前記溶液に通して流すことを含む、請求項1~
14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
水素を生成するための装置であって、
-熱化学反応器であって、
亜鉛もしくはスズ、またはその合金をその中に保持するように構成され、蒸気を前記熱化学反応器に供給し、それによって前記
亜鉛もしくはスズ、またはその合金を
酸化亜鉛および/または水酸化亜鉛、あるいは酸化スズおよび/または水酸化スズに変換するように構成された供給手段を備える、熱化学反応器と、
-アノードおよびカソードを含む電気化学セルであって、前記アノードと前記カソードとの間に電圧を適用したときに水素、酸素、および
亜鉛もしくはスズ、またはその合金を生成するように、
亜鉛イオンまたはスズイオンを含む溶液を受容し、前記カソードの少なくとも一部が前記
亜鉛イオンまたはスズイオンを含む前記溶液に接触するように構成されている、電気化学セルと、
-前記電気化学セルから前記
亜鉛もしくはスズ、またはその合金を除去するように構成された除去手段と、を備える、装置。
【請求項17】
前記装置が、
(i)前記電気化学セルから除去された前記
亜鉛もしくはスズ、またはその合金を前記熱化学反応器に供給するように構成された供給手段;および/または
(ii)前記
酸化亜鉛および/または水酸化亜鉛、あるいは酸化スズおよび/または水酸化スズを前記電気化学セルに供給するように構成された供給手段
を含む、請求項
16に記載の装置。
【請求項18】
前記装置が、熱化学反応が前記熱化学反応器内で行われている間、前記
亜鉛もしくはスズ、その合金、または前記
酸化亜鉛および/もしくは水酸化亜鉛、または酸化スズおよび/もしくは水酸化スズが前記熱化学反応器から漏れるのを防ぐように構成される、請求項
16または
17に記載の装置。
【請求項19】
前記装置が、中に前記
亜鉛もしくはスズ、またはその合金を保持し、前記熱化学反応器内に取り付けられるように構成された容器を備え、前記供給手段が、直接蒸気を前記容器に供給するように構成され、前記容器が、ガスが前記容器から流出することを可能にするように構成される一方で、前記
亜鉛もしくはスズ、その合金、または前記
酸化亜鉛および/もしくは水酸化亜鉛、または酸化スズおよび/もしくは水酸化スズが前記容器から除去されるのを防ぐようにさらに構成されたメッシュを備える、請求項
18に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガスを生成する方法に関する。本発明の特定の実施形態では、本方法は、持続可能な循環プロセスであり得る。本発明はまた、水素ガスを生成するための装置にも及ぶ。
【背景技術】
【0002】
水素は重要なエネルギー担体であり、持続可能な開発のために炭化水素ベースの燃料を置き換える可能性がある。大気汚染、気候変動、および資源の不足など、炭化水素燃料に伴う現在のエネルギー関連の問題は、水素を探索するための重要な動機である。代替燃料源として、水素はすべての燃料の中で最も高い比エネルギー含有量を有し、正味の大気放出が制限されているかまたはまったくない燃料電池でのクリーンな発電に使用され得、効率的なエネルギー貯蔵に便利である。水素は輸送用燃料として直接使用できるため、エネルギー効率がより高く、技術的および政治的な論点としてはるかに有利な注目を集めている。
【0003】
現在、水素生成のいくつかの工業的方法が存在し、それらの中には、卓越しているとされる改質、光変換、および電気分解がある。それらについて賛否両論が考察されている。水の電気分解は、水素生成のための最もクリーンな解決策を提供する。その利点は次のとおりであり、(i)二酸化炭素排出量がゼロであり、(ii)純粋な水素を生成し、水素供給中の不純物によって影響を大きく受ける燃料電池技術に影響を与え、(iii)炭化水素資源から独立しており、(iv)小規模プラントで運用でき、(v)再生可能エネルギー源(太陽光発電、風力発電、水力発電など)は、水電解セルと簡単に関連付けて、水素を生成することが可能である。
【0004】
水分解の電解プロセスは技術的に単純であり、アルカリ電解、ポリマー電解液膜(PEM)、および固体酸化物電解セル(SOEC)など、水電解プロセスに関する多くの技術がある。電解プロセスに関して増大している問題は、必要とされるエネルギーの高さ、設置コストおよび低い安全性、耐久性、ならびにエネルギー効率である。一部の電解槽、特にPEMは水の純度に非常に敏感であるため、電解の前に追加の水処理を適用する必要がある。したがって、電極および電解液の電気化学的活性の側面を含む動作条件の改善、ならびに電解セルの総抵抗の低減に熱心な研究努力が注がれている。
【0005】
本発明は、先行技術に関連付けられる問題を克服しようとする発明者の研究から生じた。
【0006】
本発明の第1の態様によれば、水素を生成する方法が提供され、本方法は、
-金属またはその合金を蒸気と接触させることによって熱化学反応を行って、金属酸化物および/または金属水酸化物、ならびに水素を生成することと、
-熱化学反応で生成された金属酸化物および/または金属水酸化物を水または塩基性水溶液と接触させて、金属イオンを含む溶液を生成することと、
-アノードとカソードとの間に電圧を適用することによって電気化学反応を行い、それによってカソードの少なくとも一部が金属イオンを含む溶液に接触して、水素、酸素、および金属またはその合金を生成することと、を含む。
【0007】
有利なことに、熱化学反応および電気化学反応の両方が水素を生成する。
【0008】
電気化学反応が、熱化学反応の前に行われ得ることが理解され得る。
【0009】
したがって、第2の態様によれば、水素を生成する方法が提供され、本方法は、
-金属酸化物および/または金属水酸化物を水または塩基性水溶液と接触させて、金属イオンを含む溶液を生成することと、
-アノードとカソードとの間に電圧を適用することによって電気化学反応を行い、それによってカソードの少なくとも一部が金属イオンを含む溶液に接触して、水素、酸素、および金属またはその合金を生成することと、
-電気化学反応で生成された金属またはその合金を蒸気と接触させることによって熱化学反応を行って、金属酸化物および/または金属水酸化物、ならびに水素を生成することと、を含む。
【0010】
電気化学反応は、連続的にまたは繰り返し行われ得る。熱化学反応は、連続的にまたは繰り返し行われ得る。金属酸化物および/または金属水酸化物を水または塩基性水溶液と接触させて、金属イオンを含む溶液を生成することは、連続的にまたは繰り返し行われ得る。
【0011】
好ましい実施形態では、電気化学反応は、連続的に行われる。したがって、電気化学反応で生成された金属またはその合金は、電気化学反応が行われているときに収集され得る。熱化学反応は、好ましくは連続的に行われる。したがって、電気化学反応から収集された金属またはその合金は、それが行われているときに熱化学反応に供給され得る。さらに、熱化学反応で生成された金属酸化物および/または金属水酸化物は、熱化学反応が行われているときに収集され得る。
【0012】
熱化学反応から収集された金属酸化物および/または金属水酸化物を水または塩基性水溶液と接触させて、金属イオンを含む溶液を生成することができる。金属イオンを含む溶液は、電気化学反応が行われるときにカソードを含む電気化学セルに供給され得る。あるいは、熱化学反応から収集された金属酸化物および/または金属水酸化物は、電気化学反応が行われるときにカソードを含む電気化学セルに供給され得る。したがって、金属酸化物および/または金属水酸化物は、金属イオンを含む溶液中の金属イオンの濃度を増加させるであろう。
【0013】
好ましい実施形態では、第1および第2の態様の方法が繰り返される。有利には、追加の金属、その合金、金属酸化物、または金属水酸化物を提供する必要なしに、さらなる水素が生成され得る。
【0014】
したがって、例として、本方法は、
-金属またはその合金を蒸気と接触させることによって第1の熱化学反応を行って、金属酸化物および/または金属水酸化物、ならびに水素を生成することと、
-第1の熱化学反応で生成された金属酸化物および/または金属水酸化物を水または塩基性水溶液と接触させて、金属イオンを含む溶液を生成することと、
-アノードとカソードとの間に電圧を適用することによって第1の電気化学反応を行い、それによってカソードの少なくとも一部が金属イオンを含む溶液に接触して、水素、酸素、および金属またはその合金を生成することと、
-第1の電気化学反応で生成された金属またはその合金を蒸気と接触させることによって第2の熱化学反応を行って、金属酸化物および/または金属水酸化物、ならびに水素を生成することと、
-第2の熱化学反応で生成された金属酸化物および/または金属水酸化物を水または塩基性水溶液と接触させて、金属イオンを含む溶液を生成することと、
-アノードとカソードとの間に電圧を適用することによって第2の電気化学反応を行い、それによってカソードの少なくとも一部が金属イオンを含む溶液に接触して、水素、酸素、および金属またはその合金を生成することと、を含み得る。
【0015】
第2の態様の方法も同様に繰り返し可能であることが理解され得る。
【0016】
好ましくは、第1および第2の態様の方法は、繰り返し複数回である。
【0017】
したがって、第1および第2の態様の方法は、複数回繰り返される個別のステップ、または並行して実行される連続反応を含み得る。いずれにせよ、水素を生成する方法は、熱化学的/電気化学的サイクルと見なすことができる。
図14に示されるように、水素ガスの連続生成に必要な原料は水だけである。したがって、初期量の金属、その合金、金属酸化物、および/または金属水酸化物が供給されると、これは、熱化学的/電気化学的サイクルにおいて連続的に再利用され得る。したがって、さらなる金属/金属酸化物/金属水酸化物は必要とされないであろう。同様に、アルカリ性溶液が使用される実施形態では、水を添加し、それを金属酸化物および/または金属水酸化物と、熱化学反応で生成されるときに接触させることによって補充され得る。ただし、それ以上の塩基は必要とされない。
【0018】
金属またはその合金は、sブロック金属、pブロック金属、遷移金属(すなわち、dブロック金属)、fブロック金属、またはそれらの合金であり得る。好ましくは、金属またはその合金は、遷移金属、pブロック金属、またはそれらの合金である。sブロック金属またはその合金は、アルカリ土類金属またはその合金であり得る。アルカリ土類金属またはその合金は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、およびバリウムからなる群から選択され得る。pブロック金属またはその合金は、スズ、鉛、タリウム、セレニウム、およびビスマスからなる群から選択され得る。好ましくは、pブロック金属は、鉛またはスズである。最も好ましい実施形態では、pブロック金属またはその合金は、スズである。遷移金属またはその合金は、亜鉛、銅、鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、チタン、モリブデン、カドミウム、クロム、バナジウム、銀、ロジウム、白金、パラジウム、イリジウム、オスミウム、レニウム、ルテニウム、ランタン、およびジルコニウムからなる群から選択され得る。好ましくは、遷移金属またはその合金は、亜鉛、銅、鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、およびバナジウムからなる群から選択される。より好ましくは、遷移金属またはその合金は、亜鉛、鉄、ニッケル、クロム、およびバナジウムからなる群から選択される。最も好ましい実施形態では、遷移金属またはその合金は、亜鉛である。fブロック金属またはその合金は、セリウム、ガドリニウム、イットリウム、ホルミウム、サマリウム、およびテルビウムからなる群から選択され得る。
【0019】
金属酸化物および/または金属水酸化物が、上に列挙された金属のうちの1つの酸化物および/または水酸化物であり得ることが理解され得る。例えば、金属が遷移金属またはその合金である場合、金属酸化物および/または金属水酸化物は、遷移金属酸化物および/または遷移金属水酸化物であり得る。同様に、遷移金属酸化物および/または遷移金属水酸化物は、酸化亜鉛(例えば、ZnO)、水酸化亜鉛、酸化銅、水酸化銅、酸化鉄、水酸化鉄、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、酸化コバルト、水酸化コバルト、酸化マンガン、水酸化マンガン、酸化チタン、水酸化チタン、酸化モリブデン、水酸化モリブデン、酸化カドミウム、水酸化カドミウム、酸化クロム、水酸化クロム、酸化バナジウム、水酸化バナジウム、酸化銀、水酸化銀、酸化ロジウム、水酸化ロジウム、酸化白金、白金、水酸化物、酸化パラジウム、水酸化パラジウム、酸化イリジウム、水酸化イリジウム、酸化オスミウム、水酸化オスミウム、酸化レニウム、水酸化レニウム、酸化ルテニウム、水酸化ルテニウム、酸化ランタン、水酸化ランタン、酸化ジルコニウム、および水酸化ジルコニウムからなる群から選択され得る。
【0020】
あるいは、金属がpブロック金属またはその合金である場合、金属酸化物および/または金属水酸化物は、pブロック金属酸化物および/またはpブロック金属水酸化物であり得る。同様に、pブロック金属酸化物および/またはpブロック金属水酸化物は、酸化スズ(二酸化スズ(SnO2)またはスズ酸塩(SnO3
2-)など)、水酸化スズ(水酸化スズ(IV)など)、酸化鉛、水酸化鉛、酸化タリウム、水酸化タリウム、酸化セレニウム、水酸化セレニウム、酸化ビスマス、および水酸化ビスマスからなる群から選択され得る。
【0021】
さらにあるいは、金属がfブロック金属またはその合金である場合、金属酸化物および/または金属水酸化物は、fブロック金属酸化物および/またはfブロック金属水酸化物であり得る。同様に、fブロック金属酸化物および/またはfブロック金属水酸化物は、酸化セリウム、水酸化セリウム、酸化ガドリニウム、水酸化ガドリニウム、酸化イトリウム、水酸化イトリウム、酸化ホルミウム、水酸化ホルミウム、酸化サマリウム、水酸化サマリウム、酸化テルビウム、および水酸化テルビウムからなる群から選択され得る。
【0022】
金属酸化物および/または金属水酸化物が陰イオン(例えば、スズ酸塩)を含む実施形態では、陰イオンに対イオンが提供され得る。対イオンは、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンであり得、例えば、対イオンは、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、またはストロンチウムイオンであり得る。いくつかの実施形態では、イオンは、ナトリウムイオンである。したがって、金属酸化物および/または金属水酸化物は、スズ酸ナトリウム(Na2SnO3)またはスズ酸ナトリウム三水和物(Na2[Sn(OH)6])であり得る。
【0023】
金属またはその合金は、蒸気と接触させることができ、蒸気は、少なくとも0.01標準立方メートル/時の流量で水素上を流れ、より好ましくは、蒸気は、少なくとも0.05、少なくとも0.1、少なくとも0.15、少なくとも0.2、または少なくとも0.25標準立方メートル/時の流量で水素上を流れ、最も好ましくは、蒸気は、少なくとも0.3または少なくとも0.31標準立方メートル/時の流量で水素上を流れる。金属またはその合金は、蒸気と接触させることができ、蒸気は、5標準立方メートル/時未満の流量で水素上を流れ、より好ましくは、蒸気は、2未満、1.75未満、1.5未満、1.25未満、または1標準立方メートル/時未満の流量で水素上を流れ、最も好ましくは、蒸気は、0.8未満または0.78標準立方メートル/時未満の流量で水素上を流れる。金属またはその合金は、蒸気と接触させることができ、蒸気は、0.01~5標準立方メートル/時の流量で水素上を流れ、より好ましくは、蒸気は、0.05~2、0.1~1.75、0.15~1.5、0.2~1.25、または0.25~1標準立方メートル/時の流量で水素上を流れ、最も好ましくは、蒸気は、0.3~0.8または0.31~0.78標準立方メートル/時の流量で水素上を流れる。
【0024】
好ましくは、金属またはその合金は、少なくとも100℃の温度で、より好ましくは少なくとも150℃、少なくとも200℃、または少なくとも250℃の温度で、最も好ましくは少なくとも300℃または少なくとも350℃の温度で蒸気と接触する。好ましくは、金属またはその合金は、700℃未満の温度で、より好ましくは650℃未満、600℃未満、または550℃未満の温度で、最も好ましくは500℃未満または450℃未満の温度で蒸気と接触する。好ましくは、金属またはその合金は、100℃~700℃の温度で、より好ましくは150℃~650℃、200℃~600℃、または250℃~550℃の温度で、最も好ましくは300℃~500℃または350℃~450℃の温度で蒸気と接触する。有利なことに、より高い温度では、水素がより迅速に生成される。
【0025】
好ましくは、金属またはその合金は、少なくとも10kPaの圧力で、より好ましくは少なくとも50kPa、少なくとも75kPa、または少なくとも100kPaの温度で、最も好ましくは少なくとも500kPa、少なくとも1,000kPa、または少なくとも20,000kPaの温度で蒸気と接触する。好ましくは、金属またはその合金は、500,000kPa未満の圧力で、より好ましくは300,000kPa未満、200,000kPa未満、または100,000kPa未満の圧力で、最も好ましくは50,000kPa未満、40,000kPa未満、または30,000KPa未満の温度で蒸気と接触する。好ましくは、金属またはその合金は、10~500,000kPaの圧力で、より好ましくは50~300,000kPa、75~200,000kPa、または100~100,000kPaの圧力で、最も好ましくは、500~50,000kPa、1,000~40,000kPa、または2,000~30,000kPaの圧力で蒸気と接触する。
【0026】
金属またはその合金は、粉末、ペレット、またはフレークを含み得る。
【0027】
本方法は、金属またはその合金を蒸気と接触させる前に、金属またはその合金を熱化学反応器に入れることを含み得る。本方法は、熱化学反応が行われている間、金属またはその合金を熱化学反応器に連続的に供給することを含み得る。金属またはその合金を熱化学反応器に連続的に供給する方法は、当業者に知られることになる。例えば、熱化学反応器は、金属またはその合金を熱化学反応器に供給するように構成された第1の回転弁を備え得る。第1の回転弁は、電動回転弁であり得る。
【0028】
本方法は、熱化学反応の終わりに熱化学反応器から金属酸化物および/または金属水酸化物を除去することを含み得る。あるいは、本方法は、熱化学反応が行われている間、熱化学反応器から金属酸化物および/または金属水酸化物を除去することを含み得る。金属酸化物および/または金属水酸化物を連続的に除去する方法は、当業者に知られることになる。例えば、熱化学反応器は、そこから金属酸化物および/または金属水酸化物を除去するように構成された第2の回転弁を備え得る。第2の回転弁は、電動回転弁であり得る。
【0029】
本方法は、金属またはその合金を、蒸気と接触させている間に攪拌することを含み得る。したがって、本方法は、自己攪拌熱化学反応器内で熱化学反応を行うことを含み得る。自己攪拌反応器は、噴流床反応器、流動床反応器、または空気輸送床反応器であり得る。有利なことに、金属またはその合金を攪拌すると、蒸気に接触する表面積が増加し、熱化学反応の効率が増加する。
【0030】
熱化学反応で生成された水素が、未反応の蒸気をさらに含むガス状混合物中に存在することが理解され得る。したがって、本方法は、熱化学反応から得られたガス状混合物から未反応の蒸気を凝縮することを含み得る。有利なことに、反応に担体ガスが使用されない場合、凝縮ステップによって、ユーザーは水素ガスを得ることができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、金属またはその合金に接触するために使用される蒸気は、担体ガスと一緒に提供され得る。担体ガスは、窒素またはアルゴンなどの不活性ガスであり得る。したがって、ガス状混合物は、担体ガスをさらに含み得る。したがって、本方法は、不活性ガスから水素を分離することを含み得る。本方法は、圧力スイング吸収ユニットまたは極低温システムを使用して、不活性ガスから水素を分離することを含み得る。
【0032】
本方法は、
-金属酸化物および/または金属水酸化物を水または塩基性水溶液と接触させて、第1の容器内に金属イオンを含む溶液を生成することと、
-アノードおよびカソードを含む電気化学セル内に金属イオンを含む溶液を配置し、その結果、カソードの少なくとも一部が金属イオンを含む溶液に接触することと、を含み得、
第1の容器は、電気化学セルとは別個のものである。
【0033】
あるいは、本方法は、熱化学反応で生成された金属酸化物および/または金属水酸化物を水または塩基性水溶液と接触させて、電気化学セル内に金属イオンを含む溶液を生成し、その結果、カソードの少なくとも一部が得られた金属イオンを含む溶液に接触することを含み得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、本方法は、金属酸化物を塩基性水溶液と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、金属水酸化物を塩基性水溶液と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、金属酸化物を水と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、金属水酸化物を水と接触させることを含む。
【0035】
塩基性水溶液が、塩基を含むことが理解され得る。塩基は、有機または無機の塩基であり得る。塩基は、アレニウス塩基、ルイス塩基、および/またはブレンステッド-ローリー塩基、より好ましくは強力なアレニウス塩基および/またはルイススーパー塩基であり得る。アレニウス塩基は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物を含み得る。アレニウス塩基は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、水酸化セシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、および/または水酸化ルビジウムを含み得る。したがって、塩基性水溶液は、アルカリ性水溶液を含み得る。
【0036】
ルイス塩基は、アンモニア(NH3)、ブチルリチウム(n-BuLi)、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、リチウムジエチルアミド(LDEA)、ナトリウムアミド、水素化ナトリウム(NaH)、および/またはリチウムビス(トリメチルシリル)アミドを含み得る。
【0037】
ブレンステッド-ローリー塩基は、水酸化アンモニウム、脂肪族アミン、または芳香族アミンを含み得る。脂肪族アミンは、メチルアミン、エチルアミン、またはジメチルアミンを含み得る。芳香族アミンは、アニリン、フェニレンジアミン、またはo-トルジンを含み得る。
【0038】
好ましい実施形態では、塩基性水溶液は、アレニウス塩基を含む。
【0039】
塩基性水溶液は、少なくとも0.5M、少なくとも1M、または少なくとも1.5Mの塩基、より好ましくは少なくとも2M、少なくとも2.5M、または少なくとも3Mの塩基、最も好ましくは少なくとも3.5Mまたは少なくとも4Mの塩基の濃度を含み得る。塩基性水溶液は、8.5M未満、8M未満、または7.5M未満の塩基、より好ましくは7M未満、6.5M未満、または6M未満の塩基、最も好ましくは5.5M未満または5M未満の塩基の濃度を含み得る。塩基性水溶液は、0.5~8.5M、1~8M、または1.5~7.5Mの塩基、より好ましくは2~7M、2.5~6.5M、または3~6Mの塩基、最も好ましくは3.5~5.5Mまたは4~5Mの塩基の濃度を含み得る。有利なことに、本発明者らは、約4.5Mの水酸化ナトリウムを含む溶液が最大の導電性を示すことを見出した。
【0040】
金属酸化物および/または金属水酸化物は、金属イオンを含む溶液を生成するのに十分な量で水または塩基性水溶液と接触させることができ、金属イオンは、少なくとも0.001Mまたは少なくとも0.005M、より好ましくは少なくとも0.01M、少なくとも0.02M、または少なくとも0.06M、最も好ましくは少なくとも0.08Mまたは少なくとも0.1Mの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、金属イオンは、少なくとも0.2Mまたは少なくとも0.6M、最も好ましくは少なくとも0.8Mまたは少なくとも1Mの濃度で存在する。金属酸化物および/または金属水酸化物は、金属イオンを含む溶液を生成するのに十分な量で水または塩基性水溶液と接触させることができ、金属イオンは、5M未満、4M未満、3M未満、2M未満、1.5M未満、1M未満、または0.5M未満、より好ましくは0.3M未満、0.25M未満、または0.2M未満、最も好ましくは0.17M未満または0.14未満の濃度で存在する。金属酸化物および/または金属水酸化物は、金属イオンを含む溶液を生成するのに十分な量で水または塩基性水溶液と接触させることができ、金属イオンは、0.001~5Mまたは0.005~4M、より好ましくは0.02~3M、0.06~2M、または0.1~1.5Mの濃度で存在する。
【0041】
一実施形態では、金属酸化物および/または金属水酸化物は、金属イオンを含む溶液を生成するのに十分な量で水または塩基性水溶液と接触し、金属イオンは、0.001~1Mまたは0.005~0.5M、より好ましくは0.01~0.3M、0.02~0.25M、または0.06~0.2M、最も好ましくは0.08~1.7Mまたは0.1~0.14Mの濃度で存在する。好ましくは、この実施形態では、金属酸化物および/または金属水酸化物は、塩基性水溶液と接触する。
【0042】
代替の実施形態において、金属酸化物および/または金属水酸化物は、金属イオンを含む溶液を生成するのに十分な量で水または塩基性水溶液と接触し、金属イオンは、0.2~5Mまたは0.4~4M、より好ましくは0.6~3Mまたは1~1.5Mの濃度で存在する。好ましくは、この実施形態では、金属酸化物および/または金属水酸化物は、水と接触する。
【0043】
アノードおよびカソードは、電気化学セル内に配置され得る。電気化学セルは、分割されていないセルであり得る。したがって、この実施形態では、電気化学セル内に金属イオンを含む溶液を配置することによって、アノードの少なくとも一部が金属イオンを含む溶液に接触するようになる。金属酸化物および/または金属水酸化物が水と接触する実施形態では、分割されていないセルが使用され得る。
【0044】
代替の実施形態では、電気化学セルは、分割されたセルを備える。したがって、セルは、セルを2つの部分に分割するアノードとカソードとの間に配置された膜を備え得る。好ましくは、膜は陰イオン交換膜であり、より好ましくはアルカリ性陰イオン交換膜(AAEM)である。好適なAAEMは当業者に知られることになるが、クロロメチル化ポリスルホンのポリマー陰イオン交換基底膜、またはクロロメチルスチレンおよびジビニルベンゼンとポリエチレン布とのコポリマーを含むことが可能である。金属酸化物および/または金属水酸化物が塩基性水溶液と接触する実施形態では、分割されていないセルが使用され得る。
【0045】
この実施形態では、本方法は、セルのカソード部分に金属イオンを含む溶液を配置し、その結果、カソードの少なくとも一部が金属合金を含む溶液に接触することを含み得る。本方法はまた、セルのアノード部分にさらなる電解液を配置し、その結果、アノードの少なくとも一部がさらなる電解液に接触することも含み得る。さらなる電解液は、好ましくは水溶液、より好ましくは塩基性水溶液を含む。塩基性水溶液は、上で定義された通りであり得る。
【0046】
電気化学反応が進行するにつれて、水が反応して、水素および酸素を生成することが理解され得る。したがって、金属合金を含む溶液中の塩基の濃度は、増加するであろう。同様に、セルが分割されたセルを備える実施形態では、さらなる電解液中の塩基の濃度も増加するであろう。
【0047】
したがって、本方法は、金属合金を含む溶液を十分な量の水と接触させて、金属合金を含む溶液に所望の濃度の塩基を持たせることを含み得る。本方法は、金属合金を含む溶液のpHを監視することと、pHが所定の最大値を超えて上昇したときに、金属合金を含む溶液を十分な量の水と接触させて、金属合金を含む溶液に所望の濃度の塩基を持たせることと、を含み得る。
【0048】
セルが分割セルを備える実施形態では、本方法は、さらなる電解液を十分な量の水と接触させて、さらなる電解液に所望の濃度の塩基を持たせることを含み得る。本方法は、さらなる電解液のpHを監視することと、pHが所定の最大値を超えて上昇したときに、さらなる電解液を十分な量の水と接触させて、さらなる電解液に所望の濃度の塩基を持たせることと、を含み得る。
【0049】
塩基の所望の濃度は、少なくとも0.5M、少なくとも1Mまたは少なくとも1.5Mの塩基、より好ましくは少なくとも2M、少なくとも2.5M、または少なくとも3Mの塩基、最も好ましくは少なくとも3.5Mまたは少なくとも4Mの塩基であり得る。塩基の所望の濃度は、8.5M未満、8M未満、または7.5M未満の塩基、より好ましくは7M未満、6.5M未満、または6M未満の塩基、最も好ましくは5.5M未満または5M未満の塩基であり得る。塩基の所望の濃度は、0.5および8.5M、1~8M、または1.5~7.5Mの塩基、より好ましくは2~7M、2.5~6.5M、または3~6Mの塩基、最も好ましくは3.5~5.5Mまたは4~5Mの塩基であり得る。
【0050】
所定の最大pHは、少なくとも8.5M、少なくとも8M、または少なくとも7.5Mの塩基、より好ましくは少なくとも7M、少なくとも6.5M、または少なくとも6Mの塩基、最も好ましくは少なくとも5.5Mまたは少なくとも5Mの塩基の濃度の塩基に対応し得る。
【0051】
本方法は、電気化学反応が行われている間、金属イオンを含む溶液を電気化学セルに連続的に供給することを含み得る。本方法は、電気化学反応が行われるときにセルから金属イオンを含む溶液を除去することをさらに含み得る。有利なことに、このステップは、金属イオンを含む溶液を連続的にリフレッシュする。
【0052】
セルが分割セルである実施形態では、本方法は、電気化学反応が行われている間、金属イオンを含む溶液を電気化学セルのカソード部分に供給することを含み得る。本方法は、電気化学反応が行われるときにセルのカソード部分から金属イオンを含む溶液を除去することをさらに含み得る。本方法は、電気化学反応が行われている間、さらなる電解液を電気化学セルのアノード部分に供給すること、および/または電気化学反応が行われるときにセルのカソード部分からさらなる電解液を除去することを含み得る。
【0053】
アノードおよびカソードは、独立して、炭素ベースの電極または金属ベースの電極を含み得る。炭素ベースの電極または各炭素ベースの電極は、グラファイトを含み得る。金属ベースの電極または各金属ベースの電極は、クロム、ニッケル、亜鉛、カドミウム、銅、スズ、鉛、ロジウム、白金、金、パラジウム、イリジウム、オスミウム、レニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、ベリリウム、および/または銀を含み得る。あるいは、金属ベースの電極または各金属ベースの電極は、真ちゅう、青銅、または鋼などの合金を含み得る。鋼は、ステンレス鋼であり得る。好ましい実施形態では、電極は、グラファイトまたは鋼を含む。代替の好ましい実施形態では、電極は、金属またはその合金と同じ金属を含む。例えば、電気化学反応が亜鉛を生成する場合、電極は、亜鉛を含み得る。
【0054】
本方法は、アノードとカソードとの間に少なくとも1V、少なくとも1.5V、少なくとも1.75V、または少なくとも2Vの電圧を適用することを含み得、より好ましくは、本方法は、アノードとカソードとの間に少なくとも2.5V、少なくとも3V、または少なくとも3.5Vの電圧を適用することを含み、最も好ましくは、本方法は、アノードとカソードとの間に少なくとも4Vまたは少なくとも4.5Vの電圧を適用することを含む。本方法は、アノードとカソードとの間に8V未満または7.5V未満の電圧を適用することを含み得、より好ましくは、本方法は、アノードとカソードとの間に7V未満、6.5V未満、または6V未満の電圧を適用することを含み、最も好ましくは、本方法は、アノードとカソードとの間に5.5V未満または5V未満の電圧を適用することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、4V未満、3V未満、または2.5V未満の電圧を適用することを含む。本方法は、アノードとカソードとの間に1~8Vまたは2~7.5Vの電圧を適用することを含み得る。いくつかの実施形態では、本方法は、アノードとカソードとの間に2.5~7V、3~6.5V、または3.5~6Vの電圧を適用することを含み、最も好ましくは、本方法は、アノードとカソードとの間に4~5.5Vまたは4.5~5Vの電圧を適用することを含む。代替の実施形態では、本方法は、アノードとカソードとの間に1~4V、1.5~3V、または1.75~2.5Vの電圧を適用することを含む。
【0055】
本方法は、少なくとも0.5A、少なくとも1A、または少なくとも1.5Aの電流をアノード、カソード、および金属イオンを含む溶液に通して流すことと、より好ましくは、少なくとも2A、少なくとも2.5A、または少なくとも3Aの電流をアノード、カソード、および金属イオンを含む溶液に通して流すことと、最も好ましくは、少なくとも3.5Aの電流をアノード、カソード、および金属イオンを含む溶液に通して流すことと、を含み得る。本方法は、10A未満、8A未満、または6A未満の電流をアノード、カソード、および金属イオンを含む溶液に通して流すことと、より好ましくは、5.5A未満、5A未満、または4.5A未満の電流をアノード、カソード、および金属イオンを含む溶液に通して流すことと、最も好ましくは、4A未満の電流をアノード、カソード、および金属イオンを含む溶液に通して流すことと、を含み得る。本方法は、0.5~10A、1~8A、または1.5~6Aの電流をアノード、カソード、および金属イオンを含む溶液に通して流すことと、より好ましくは2~5.5A、2.5~5A、または3~4.5Aの電流をアノード、カソード、および金属イオンを含む溶液に通して流すことと、最も好ましくは、3.5~4Aの電流をアノード、カソード、および金属イオンを含む溶液に通して流すことと、を含み得る。
【0056】
好ましくは、電気化学反応は、少なくとも0℃の温度で、より好ましくは少なくとも10℃、少なくとも12.5℃、少なくとも15℃、少なくとも17.5℃、または少なくとも20℃の温度で行われる。いくつかの実施形態では、電気化学反応は、少なくとも25℃の温度で、最も好ましくは少なくとも30℃または少なくとも55℃の温度で行われる。好ましくは、電気化学反応は、95℃未満の温度で、より好ましくは90℃未満、85℃未満、または80℃未満の温度で、最も好ましくは70℃未満または65℃未満の温度で行われる。いくつかの実施形態では、電気化学反応は、50℃未満、40℃未満、30℃未満、または25℃未満の温度で行われる。好ましくは、電気化学反応は、0℃~95℃の温度で、より好ましくは10℃~90℃の温度で行われる。いくつかの実施形態では、電気化学反応は、20℃~85℃または25℃~80℃の温度で、最も好ましくは30℃~70℃または55℃~65℃の温度で行われる。有利なことに、より高い温度では、水素がより迅速に生成される。いくつかの実施形態では、電気化学反応は、10℃~50℃、12.5~40℃、15℃~30℃、または17.5℃~25℃の温度で行われる。
【0057】
好ましくは、本方法は、電気化学反応で生成された金属またはその合金を回収することを含む。電気化学反応で生成された金属またはその合金を回収することは、カソードから電気化学反応で生成された金属またはその合金を除去することを含み得る。金属またはその合金は、電気化学反応が完了した後に除去され得る。あるいは、金属またはその合金は、電気化学反応が行われるときに連続的に除去され得る。例えば、電気化学セルは、カソードから金属またはその合金を除去するように構成されたブレードを備え得る。ブレードは、カソードを横切って動き、それによってカソードの表面から金属またはその合金を除去するように構成され得る。ブレードは、磁力または電気モーターを使用して動かされ得る。電気化学セルは、金属またはその合金を、カソードからそれが除去されたら受容し、セルからそれを除去するように構成された収集容器を備え得る。セルが分割セルである実施形態では、収集容器は、セルのカソード部分に配置され得る。収集容器は、金属またはその合金を、カソードからそれが除去されたら受容し、セルからそれを除去するように構成された回転弁を備え得る。回転弁は、電動式であり得る。
【0058】
本発明者らは、第1および第2の態様の方法を行うために使用される装置が、それ自体が新規で発明性があると確信している。
【0059】
したがって、第3の態様によれば、水素を生成するための装置が提供され、本装置は、
-熱化学反応器であって、金属またはその合金をその中に保持するように構成され、蒸気を熱化学反応器に供給し、それによって金属またはその合金を金属酸化物および/または金属水酸化物に変換するように構成された供給手段を備える、熱化学反応器と、
-アノードおよびカソードを含み、金属イオンを含む溶液を受容し、その結果、カソードの少なくとも一部が金属イオンを含む溶液に接触するように構成された電気化学セルと、を備える。
【0060】
好ましくは、装置は、熱化学反応がその中で行われている間、金属、その合金、または金属酸化物および/もしくは金属水酸化物が熱化学反応器から漏れるのを防ぐように構成される。したがって、装置は、中に金属またはその合金を保持し、熱化学反応器内に取り付けられるように構成された容器を備え得る。供給手段は、直接蒸気を容器に供給するように構成され得る。容器は、ガスが容器から流出することを可能にするように構成される一方で、金属、その合金、または金属酸化物および/もしくは金属水酸化物が容器から除去されるのを防ぐようにさらに構成されたメッシュを備え得る。メッシュは、0.1~1000μm、より好ましくは1~750μm、2~500μm、または3~250μm、最も好ましくは5~100μm、10~50μm、15~40μm、または20~30μmの孔径を含み得る。メッシュは、2つ以上のさらなるメッシュの間に挟まれてもよい。さらなるメッシュは、0.1~1000μm、より好ましくは10~900μm、25~850μm、または50~800μm、最も好ましくは75~750μm、100~700μm、125~650μm、または150~600μmの孔径を含み得る。有利には、さらなるメッシュは、得られるメッシュ構造が、金属、その合金、ならびに/または金属酸化物および/もしくは金属水酸化物の重量を保持するのに十分な強度を有することを確実にする。
【0061】
装置は、熱化学反応器内で金属またはその合金を攪拌するように構成された攪拌手段を備え得る。したがって、熱化学反応器は、自己攪拌熱化学反応器を備え得る。自己攪拌熱化学反応器は、噴流床反応器、流動床反応器、または空気輸送床反応器であり得る。
【0062】
好ましくは、熱化学反応器は、金属またはその合金を少なくとも100℃の温度に、より好ましくは少なくとも150℃、少なくとも200℃、または少なくとも250℃の温度に、最も好ましくは少なくとも300℃または少なくとも350℃の温度に保持するように構成される。好ましくは、熱化学反応器は、金属またはその合金を700℃未満の温度に、より好ましくは650℃未満、600℃未満、または550℃未満の温度に、最も好ましくは500℃未満または450℃未満の温度に保持するように構成される。好ましくは、熱化学反応器は、金属またはその合金を100℃~700℃の温度に、より好ましくは150℃~650℃、200℃~600℃、または250℃~550℃の温度に、最も好ましくは300℃~500℃または350℃~450℃の温度に保持するように構成される。
【0063】
熱化学反応器に蒸気を供給することができる装置は、当業者によく知られることになる。例えば、供給手段は、その中に配置された水を蒸発させ、それによって蒸気を形成するように構成され得る。したがって、供給手段は、熱化学反応器内に配置されたコイル状のセクションを備え得る。装置は、水または蒸気、好ましくは水を供給手段に送り込むように構成されたポンプを備え得る。ポンプは、シリンジポンプを備え得る。
【0064】
装置は、金属またはその合金を熱化学反応器に供給するように構成された供給手段を備え得る。供給手段は、第1の回転弁を備え得る。第1の回転弁は、電動回転弁であり得る。
【0065】
装置は、金属酸化物および/または金属水酸化物を反応器から供給するように構成された供給手段を備え得る。供給手段は、第2の回転弁を備え得る。第2の回転弁は、電動回転弁であり得る。
【0066】
装置は、ガス混合物から蒸気を除去するように構成された凝縮器を備え得る。好ましくは、装置は、熱化学反応器と凝縮器との間に延びる導管を備える。したがって、凝縮器は、未反応の蒸気を凝縮して、水素ガスを得ることができる。
【0067】
装置は、担体ガスから水素を分離するように構成された圧力スイング吸収ユニットまたは極低温システムを備え得る。
【0068】
装置は、熱化学反応器で生成された水素ガスを受容するように構成された水素収集容器を備え得る。装置は、凝縮器と水素収集容器との間に延びる導管を備え得る。
【0069】
電気化学セルは、分割されていないセルであり得る。
【0070】
あるいは、電気化学セルは、分割されたセルを備え得る。したがって、セルは、セルを2つの部分に分割するアノードとカソードとの間に配置された膜を備え得る。好ましくは、膜は、第1および第2の態様に関して定義された通りである。
【0071】
この実施形態では、セルのカソード部分は、金属イオンを含む溶液を受容するように構成され、その結果、カソードの少なくとも一部が金属イオンを含む溶液に接触し得る。セルのアノード部分は、さらなる電解液を受容するように構成され、その結果、アノードの少なくとも一部が電解液に接触し得る。さらなる電解液は、第1および第2の態様に関して定義された通りであり得る。
【0072】
装置は、金属イオンを含む溶液を含むように構成されたリザーバーを備え得る。装置は、リザーバーと電気化学セルとの間に延びる第1の導管と、金属イオンを含む溶液をリザーバーから第1の導管に沿って第1の電気化学セルに流すように構成されたポンプと、を備え得る。装置は、電気化学セルとリザーバーとの間に延びる第2の導管と、金属イオンを含む溶液を電気化学セルから第2の導管に沿ってリザーバーに流すように構成されたポンプと、を備え得る。同じポンプは、金属イオンを含む溶液をリザーバーから第1の導管に沿って電気化学セルに流し、また金属イオンを含む溶液を電気化学セルから第2の導管に沿ってリザーバーに流すように構成され得る。ポンプまたは各ポンプは、蠕動ポンプであり得る。
【0073】
装置は、金属イオンを含む溶液のpHを監視するように構成されたpHメーターを備え得る。pHメーターは、リザーバーまたは電気化学セルに配置され得る。好ましくは、pHメーターは、リザーバー内に配置される。装置は、水をリザーバーまたは電気化学セルに供給するように構成された供給手段を備え得る。好ましくは、水をリザーバーに供給するように構成された供給手段。装置は、pHメーターが所定の最大pHを超えるpHを感知したときに、水をリザーバーまたは電気化学セルに供給するように構成され得る。
【0074】
装置は、金属酸化物および/または金属水酸化物をリザーバーまたは電気化学セルに供給するように構成された供給手段を備え得る。好ましくは、供給手段は、金属酸化物および/または金属水酸化物をリザーバーに供給するように構成される。供給手段は、回転弁を備え得る。回転弁は、電動回転弁であり得る。
【0075】
セルが分割セルである実施形態では、装置は、金属イオンを含む溶液を含むように構成された第1のリザーバーを備え得る。装置は、リザーバーと電気化学セルのカソード部分との間に延びる第1の導管と、金属イオンを含む溶液を第1のリザーバーから第1の導管に沿って電気化学セルのカソード部分に流すように構成されたポンプと、を備え得る。装置は、電気化学セルのカソード部分と第1のリザーバーとの間に延びる第2の導管と、金属イオンを含む溶液を電気化学セルのカソード部分から第2の導管に沿って第1のリザーバーに流すように構成されたポンプと、を備え得る。同じポンプは、金属イオンを含む溶液を第1のリザーバーから第1の導管に沿って電気化学セルのカソード部分に流し、また金属イオンを含む溶液を電気化学セルのカソード部分から第2の導管に沿って第1のリザーバーに流すように構成され得る。ポンプまたは各ポンプは、蠕動ポンプであり得る。
【0076】
装置は、さらなる電解液を含有するように構成された第2のリザーバーを備え得る。装置は、第2のリザーバーと電気化学セルのアノード部分との間に延びる第3の導管と、さらなる電解液を第2のリザーバーから第3の導管に沿って電気化学セルのアノード部分に流すように構成されたポンプと、を備え得る。この装置は、電気化学セルのアノード部分と第2のリザーバーとの間に延びる第4の導管と、さらなる電解液を電気化学セルのアノード部分から第4の導管に沿って第2のリザーバーに流すように構成されたポンプと、を備え得る。同じポンプは、さらなる電解液を第2のリザーバーから第3の導管に沿って電気化学セルのアノード部分に流し、またさらなる電解液を電気化学セルのアノード部分から第4の導管に沿って第2のリザーバーに流すように構成され得る。ポンプまたは各ポンプは、蠕動ポンプであり得る。
【0077】
装置は、金属イオンを含む溶液のpHを監視するように構成された第1のpHメーターを備え得る。第1のpHメーターは、第1のリザーバーまたは電気化学セルのカソード部分に配置され得る。好ましくは、第1のpHメーターは、第1のリザーバーに配置される。装置は、水を第1のリザーバーまたは電気化学セルのカソード部分に供給するように構成された供給手段を備え得る。好ましくは、水を第1のリザーバーに供給するように構成された供給手段。装置は、第1のpHメーターが所定の最大pHを超えるpHを感知したときに、水を第1のリザーバーまたは電気化学セルのカソード部分に供給するように構成され得る。
【0078】
装置は、さらなる分析物のpHを監視するように構成された第2のpHメーターを備え得る。第2のpHメーターは、第2のリザーバーまたは電気化学セルのアノード部分に配置され得る。好ましくは、第2のpHメーターは、第2のリザーバーに配置される。装置は、電気化学セルの第2のリザーバーまたはアノード部分に水を供給するように構成された供給手段を備え得る。好ましくは、水を第2のリザーバーに供給するように構成された供給手段。装置は、第2のpHメーターが所定の最大pHを超えるpHを感知したときに、水を第2のリザーバーまたは電気化学セルのアノード部分に供給するように構成され得る。
【0079】
装置は、金属酸化物および/または金属水酸化物を第1のリザーバーまたは電気化学セルのカソード部分に供給するように構成された供給手段を備え得る。好ましくは、供給手段は、金属酸化物および/または金属水酸化物を第1のリザーバーに供給するように構成される。供給手段は、回転弁を備え得る。回転弁は、電動回転弁であり得る。
【0080】
アノードおよびカソードは、第1および第2の態様に関して定義された通りであり得る。
【0081】
装置は、電気化学セルから金属またはその合金を除去するように構成された除去手段を備え得る。除去手段は、カソードから金属またはその合金を除去するための手段を備え得る。除去手段は、カソードから金属またはその合金を除去するように構成されたブレードを備え得る。ブレードは、カソードを横切って動き、それによってカソードの表面から金属またはその合金を除去するように構成され得る。装置は、磁力または電気モーターを使用してブレードを動かすように構成され得る。除去手段は、金属またはその合金を、カソードからそれが除去されたら受容し、セルからそれを除去するように構成された収集容器を備え得る。セルが分割セルである実施形態では、収集容器は、セルのカソード部分に配置され得る。収集容器は、金属またはその合金を、カソードからそれが除去されたら受容し、セルからそれを除去するように構成された回転弁を備え得る。回転弁は、電動式であり得る。
【0082】
装置は、アノードとカソードとの間に電圧を適用するように構成された電源を備え得る。電源は、バッテリー、発電機、再生可能電源を備える場合もあれば、ナショナルグリッドを備える場合もある。再生可能電源は、太陽光発電機、風力発電機、または水力発電機を備え得る。電源は、直流をアノードおよびカソードに供給するように構成され得る。
【0083】
電源は、アノードとカソードとの間に少なくとも1Vまたは少なくとも2Vの電圧、より好ましくはアノードとカソードとの間に少なくとも2.5V、少なくとも3V、または少なくとも3.5Vの電圧、最も好ましくは、アノードとカソードとの間に少なくとも4Vまたは少なくとも4.5Vの電圧を適用するように構成され得る。電源は、アノードとカソードとの間に8V未満または7.5V未満の電圧、より好ましくは、アノードとカソードとの間に7V未満、6.5V未満、または6V未満の電圧、最も好ましくはアノードとカソードとの間に5.5V未満または5V未満の電圧を適用するように構成され得る。電源は、アノードとカソードとの間に1~8Vまたは2~7.5Vの電圧、より好ましくはアノードとカソードとの間に2.5~7V、3~6.5V、または3.5~6Vの電圧、最も好ましくはアノードとカソードとの間に4~5.5Vまたは4.5~5Vの電圧を適用するように構成され得る。
【0084】
電源は、少なくとも0.5A、少なくとも1A、または少なくとも1.5Aの電流をアノード、カソード、および金属イオンを含む溶液に通して流し、より好ましくは少なくとも2A、少なくとも2.5A、または少なくとも3Aの電流をアノード、カソード、および金属イオンを含む溶液に通し、最も好ましくは少なくとも3.5Aの電流をアノード、カソード、および金属イオンを含む溶液に通して流すように構成され得る。電源は、10A未満、8A未満、または6A未満の電流をアノード、カソード、および金属イオンを含む溶液に通して流し、より好ましくは5.5A未満、5A未満、または4.5A未満の電流をアノード、カソード、および金属イオンを含む溶液に通して流し、最も好ましくは、4A未満の電流をアノード、カソード、および金属イオンを含む溶液に通して流すように構成され得る。電源は、0.5~10A、1~8A、または1.5~6Aの電流をアノード、カソード、および金属イオンを含む溶液に通して流し、より好ましくは、2~5.5A、2.5~5A、または3~4.5Aの電流をアノード、カソード、および金属イオンを含む溶液に通して流し、最も好ましくは3.5~4Aの電流をアノード、カソード、および金属イオンを含む溶液に通して流すように構成され得る。
【0085】
装置は、電気化学セルで生成された水素ガスを受容するように構成された水素収集容器を備え得る。装置は、電気化学セルと水素収集容器との間に延びる導管を備え得る。セルが分割セルである実施形態では、導管は、電気化学セルのカソード部分と水素収集容器との間に延びることができる。
【0086】
熱化学反応器で生成された水素ガスを受容するように構成された水素収集容器はまた、電気化学セルで生成された水素ガスを受容するように構成された水素収集容器であり得る。あるいは、装置は、2つの別個の水素収集容器を備えることが可能である。
【0087】
さらなる態様によれば、水素を生成する方法が提供され、本方法は、
-金属またはその合金を蒸気と接触させることによって熱化学反応を行って、金属酸化物および水素を生成することと、
-熱化学反応で生成された金属酸化物をアルカリ性水溶液と接触させて、金属イオンを含む溶液を生成することと、
-アノードとカソードとの間に電圧を適用することによって電気化学反応を行い、それによってカソードの少なくとも一部が金属イオンを含む溶液に接触して、水素、酸素、および金属またはその合金を生成することと、を含む。
【0088】
さらに別の態様によれば、水素を生成する方法が提供され、本方法は、
-金属酸化物をアルカリ性水溶液と接触させて、金属イオンを含む溶液を生成することと、
-アノードとカソードとの間に電圧を適用することによって電気化学反応を行い、それによってカソードの少なくとも一部が金属イオンを含む溶液に接触して、水素、酸素、および金属またはその合金を生成することと、
-電気化学反応で生成された金属またはその合金を蒸気と接触させることによって熱化学反応を行って、金属酸化物および水素を生成することと、を含む。
【0089】
最終的な態様によれば、水素を生成するための装置が提供され、本装置は、
-熱化学反応器であって、金属またはその合金をその中に保持するように構成され、蒸気を熱化学反応器に供給し、それによって金属またはその合金を金属酸化物に変換するように構成された供給手段を備える、熱化学反応器と、
-アノードおよびカソードを含み、金属イオンを含む溶液を受容し、その結果、カソードの少なくとも一部が金属イオンを含む溶液に接触するように構成された電気化学セルと、を備える。
【0090】
装置は、電気化学セルで生成された酸素ガスを受容するように構成された酸素収集容器を備え得る。装置は、電気化学セルと酸素収集容器との間に延びる導管を備え得る。セルが分割セルである実施形態では、導管は、電気化学セルのアノード部分と酸素収集容器との間に延びることができる。
【0091】
本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約、および図面を含む)に記載のすべての特徴、および/またはそのように開示される任意の方法もしくはプロセスのすべてのステップは、そのような特徴および/またはステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで上の態様のいずれかと組み合わせることができる。
【0092】
本発明をよりよく理解するために、かつ本発明の実施形態がどのように実行され得るかを示すために、ここで、例として、添付の図面の参照が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【
図1】熱化学反応を行うために使用される装置の概略図である。
【
図2】熱化学反応で生成される水素の体積に対する温度の影響を示すグラフである。
【
図3】熱化学反応で生成される水素の体積に対する蒸気流量の影響を示すグラフである。
【
図4】熱化学反応で生成される水素の体積に対する亜鉛の形態の影響を示すグラフである。
【
図5】熱化学反応で生成される水素の体積に対する亜鉛の混合の影響を示すグラフである。
【
図6】完了まで実行した実験での水素生成実験を示すグラフである。
【
図9】異なる濃度の水酸化ナトリウム(NaOH)を含む水溶液中の酸化亜鉛(ZnO)の最大溶解度を示すグラフである。
【
図10】亜鉛酸ナトリウム溶液の導電率が、亜鉛酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウムの濃度によってどのように変化するかを示すグラフである。
【
図11】水酸化ナトリウム溶液の導電率が水酸化ナトリウムの濃度によってどのように変化するかを示すグラフである。
【
図12】電極間に適用される電圧が生成される水素の体積にどのように影響を及ぼすかを示すグラフである。
【
図13】電極間に適用される電圧が電流にどのように影響を及ぼすかを示すグラフである。
【
図14】プロセス全体の周期的な性質を示す概略図である。
【
図15】スズ酸ナトリウム三水和物溶液の導電率および抵抗が、スズ酸ナトリウム三水和物の濃度によってどのように変化するかを示すグラフである。
【
図16】適用された電圧が2Vの場合の、異なる濃度のスズ酸ナトリウム三水和物の時間に対する水素生成を示すグラフである。
【
図17】適用された電圧を変化させた場合の、1.2M電解液の時間に対する水素生成を示すグラフである。実施例1-亜鉛の熱化学反応 行われた第1の実験では、亜鉛を蒸気と反応させて、酸化亜鉛および水素を形成することを伴った。方法 熱化学実験を、
図1に示す装置1を使用して実行した。装置1は、るつぼ4およびその中に配置された温度センサー5を備えた管状炉2を備える。るつぼ4は、メッシュカバー6を備える。
【0094】
シリンジポンプ8は炉2の外側に配置され、導管10はシリンジポンプ8とるつぼ4との間に延びる。導管10は、炉2の内側に配置されたコイル状のセクション12を備える。
【0095】
凝縮器16、メスシリンダー18、水浴20、および真空ポンプ22もまた、炉2の外側に配置されている。シリンダー18は、水浴20内で反転され、導管24は、シリンダー18のベース26と真空ポンプ22との間に延びる。導管28は、炉2と凝縮器16との間に延び、さらなる導管30は、凝縮器とシリンダー18との間に延びる。
【0096】
ユーザーが実験を実行したいときは、あらかじめ計量した量の亜鉛32をるつぼ4に入れる。以下に記載の実験では、各実験に10gの亜鉛を使用した。
【0097】
ユーザーは、シリンジポンプ8を脱イオン水34で満たす。ユーザーはまた、水浴20を水36で満たし、真空ポンプ22を作動させる。真空ポンプ22は、シリンダー18からガスを除去し、それを水36に置き換える。次に、ユーザーはシステムを窒素でフラッシュしてから、オーブン2を作動させて、所望の温度に達するのを待つ。
【0098】
実験を実行する前に、ユーザーは再び真空ポンプ22を作動させて、オーブン2の加熱によって引き起こされたガス膨張のためにシリンダー18に入った一切のガスを除去する。次に、ユーザーは、シリンジポンプ8を作動させる。これによって、導管10に沿って脱イオン水34が供給される。脱イオン水34がコイル状セクション12を通過すると、それは蒸発し、確実に蒸気がるつぼ4に供給され、亜鉛粉末32に接触する。蒸気は、次の式に従って亜鉛32と反応する。
【0099】
【0100】
メッシュは、亜鉛32および酸化亜鉛がるつぼから漏れるのを防ぐ一方で、ガスがるつぼから流れることを可能にする。次に、ガスは導管28に沿って流れ、蒸気を水に凝縮して、それを除去する凝縮器16を通って流れる。水素ガス38は、導管30に沿ってシリンダー38内に流れ続け、水36を置換する。それによってユーザーは、生成された水素ガス38の体積を測定することができる。以下に記載の実験では、5分ごとに読み取りを行った。
結果
温度の影響を、250℃、300℃、350℃、および400℃の4つの異なる温度で水素生成を測定することによって研究した。実験のすべては、亜鉛粉末を使用して150ml/分の蒸気流量で実行した。温度実験の結果は、反応温度の増加が反応で生成される水素の体積の増加につながることを示しており、これは
図2を参照されたい。異なる温度のすべては、水素は最初に急激に増加し、その後生成量が減少するという同様の形状に従う。生成量は、温度が高いほど、水素生成量が大きくなるという一般的なパターンに従う。さらなる観察は、温度が高いほど、水がシステムに注入された後の水素生成の遅延が少なくなることである。
【0101】
50ml/分、100ml/分、150ml/分の3つの異なる流量で水素生成を測定することによって、蒸気の体積流量の影響を研究した。実験のすべてを、亜鉛粉末を使用して350℃の一定温度で実行した。結果は、蒸気の体積流量の増加が、生成される水素の体積の増加につながることを示しており、これは
図3を参照されたい。結果は、水素生成量は急激に増加し、その後漸減していくパターンに従う。温度の影響と比較した場合、生成量および生成される体積の違いは少ない。水がシステムに注入された後、反応の開始前に10分の一貫した遅延がある。
【0102】
粉末と比較して亜鉛がペレットの形状で提供されたときに生成された水素の体積を比較することによって、亜鉛の形状の影響を研究した。実験のすべてを、350℃の一定温度および150ml/分の蒸気の体積流量を使用して実行した。結果は、粉末の形状の亜鉛がペレットの形状の亜鉛よりも多くの水素を生成することを示しており、これは
図4を参照されたい。実験の終わりに、るつぼから亜鉛サンプルを取り出した。取り出すと、ペレットがわずか破損していることがわかり、破損した亜鉛粉末に囲まれた亜鉛の塊があった。
【0103】
上の実験中に、るつぼにチャネリングが観察され、それによって蒸気が大量の亜鉛をバイパスして、特定の領域のるつぼから流出したのであろう。したがって、亜鉛サンプルの一部の領域は蒸気に曝露されたが、他の領域は曝露されなかった。このチャネリングが反応率にどのように影響するかを評価するために、亜鉛サンプルを除去し、実験の途中で混合することを伴う実験を実行した。実験を、亜鉛粉末を使用して400℃の一定温度および150ml/分の蒸気の体積流量で実行した。予想されるように、最初の反応は両方の実験において類似しているが、生成される水素の体積は、亜鉛が混合されるポイントで跳ね上がり、これは
図5を参照されたい。
【0104】
反応が完了するまでにかかる時間を決定するために、水素生成が停止するまで2つの実験を実行した。最初の実験を、亜鉛粉末を使用して350℃および100ml/分の蒸気の体積流で実行し、約8時間後に生成が頭打ちになるまで実行し、これは
図6を参照されたい。第2の実験を、亜鉛粉末を使用して400℃および150ml/分の蒸気の体積流で実行した。第1の実験と同様に、水素生成が横ばいになり始めるまでに約8時間かかり、これは
図6を参照されたい。
【0105】
実施例2-酸化亜鉛の電気化学反応
方法
行われた第2の実験は、
図7に示される装置100を使用する電気化学反応であった。装置100は、University of Surrey Workshopによって作製された電解セル102を備えていた。
図8に示されるように、セル102は、2つの別個の部分106、108に提供されたPerspex(商標)ハウジング104を備えていた。カソード110をハウジング104の第1の部分106に配置し、アノード112をハウジング104の第2の部分108に配置した。カソード110およびアノード112の両方は、グラファイトプレートを含んだ。
【0106】
ゴム製のOリング114を、カソードを取り囲むようにハウジング104の第1の部分106に配置した。使用前に陰イオン交換膜116をカソード110およびOリング114上に取り付けたため、膜116の縁部は、Oリング114上に延びた。次に、ハウジング104の第2の部分108を膜116上に取り付け、ハウジングの第1および第2の部分106、108を、ハウジングの第1および第2の部分106、108に配置された対応するボルト穴118にボルトをねじ込むことによって一緒に固定した。
【0107】
蠕動ポンプ(図示せず)を使用して、実験の間中、亜鉛酸ナトリウム120をセル102のカソード110側に循環させ、水酸化ナトリウム122をセル102のアノード112側に循環させた。亜鉛酸ナトリウム120の調製を記載した詳細を以下に提供する。
【0108】
従来のDC電源124を使用して、電力を電極110、112に適用した。
【0109】
2つのメスシリンダー126a、126bを、水130を含む浴128内に逆さに配置した。ナイロンチューブ132をシリンダー126の上部に接続すると、実験の開始前に真空ポンプ134を使用してシリンダーに廃棄物130を充填することが可能になった。次に、弁136を閉じることが可能になった。セル102のカソード110側とメスシリンダー126aのうちの1つとの間に延びるナイロンチューブ138は、実験で生成された水素140をメスシリンダー126aに運ぶように構成される。同様に、セル102のアノード112側とメスシリンダー126bのうちの1つとの間に延びるナイロンチューブ142は、実験で生成された酸素144をメスシリンダー126bに運ぶように構成される。
【0110】
結果
溶解度実験結果
一切の電解セルの実験を実行する前に、使用するのに最適な電解溶液を決定する必要があった。
【0111】
酸化亜鉛は水に溶けない。ただし、次の式に従って水酸化ナトリウムと反応する。
【0112】
【0113】
次に、酸化ナトリウムは次のように水と反応する。
【0114】
【0115】
溶液中で利用可能な過剰のNaOHを使用して、Zn(OH)2を溶解して、次のように亜鉛酸ナトリウム、Na2Zn(OH)4としてラベル付けできる疑似化合物を形成する。
【0116】
【0117】
作製することが可能である亜鉛酸ナトリウム溶液のモル濃度の範囲を見つけるために、水への水酸化ナトリウム(NaOH)の溶解度を最初に決定しなければならなかった。室温での水への水酸化ナトリウムの最大溶解度を見つけるために実験を実行した。これは、水酸化ナトリウムを100mlの脱イオン水に定期的に添加し、磁気攪拌装置によって連続的に混合することによって達成された。溶液が濁り始めたとき、溶解が止まったことが認識された。
【0118】
水酸化ナトリウムの水への溶解は発熱性であるため、溶液を冷却した状態に維持するために氷浴を使用した。最初に、水酸化ナトリウムペレットを10g間隔で水に添加し、添加の合間に溶液を冷却した。最大溶解度の範囲(80g~90gの範囲)が見つかったら、溶液を作製し直し、室温で飽和点のより近くまで水酸化ナトリウムを少しずつ添加した。
【0119】
最大質量である82gのNaOHは100mlの水に溶解できることが見出された。見つかった最大値は、109gを20℃で100mlの水に溶解できると述べている文献(O’Neil、2006)よりも少なかった。溶液を封じ込め、水蒸気の一切の漏れを止めるために、パラフィルムを使用して、水酸化ナトリウムペレットの添加の合間にビーカーの上部を覆った。ただし、いくつかの水滴がフィルムの下側に形成され、これにより水酸化ナトリウムが溶解する水が少なくなったため、この文献との不一致に寄与した可能性がある。
【0120】
水酸化ナトリウム溶液中の酸化亜鉛の最大溶解度を見つけるために、100mlの水および4gのNaOHを使用して、最初に1MのNaOH溶液を作成した。次に、0.5gのZnOを添加し、約5分間混合したままにした。溶解した場合は、さらに0.5gのZnOを添加し、溶解しなかった場合は、さらに4グラムのNaOHを溶液に添加した。より多くのNaOHを溶液に添加したにもかかわらず、ZnOが溶解しなくなるまで本方法を実行し、結果を
図9に示す。酸化亜鉛の最大溶解度は、100mlの水および64gのNaOHを含有する(1.78Mの亜鉛酸ナトリウム溶液を作成するため)溶液で14gであることが見出された。グラフは、より多くのNaOHを溶液に添加すると、より多くの酸化亜鉛が反応し得、亜鉛酸ナトリウムが溶液に溶解し得ることを示す。ただし、
図9に示されるように、溶液が30重量%のNaOHに達すると、反応および溶解する酸化亜鉛の割合はよりゆっくりと増加し、次に8重量%のZnOのすぐ下で横ばいになる。
【0121】
導電率実験結果
亜鉛酸ナトリウム溶液を、12g、16g、20g、または24gのいずれかのNaOHおよび必要な量のZnOを100mlの脱イオン水に添加することによって調製した。溶液を透明になるまで5~10分間溶解させたままにしてから、メトラートレド導電率プローブを使用して導電率を測定した。結果の一貫性および直接比較を維持するために、すべての読み取り値を20℃に校正した。読み取りが完了した後、導電率プローブを脱イオン水で、一切の亜鉛酸ナトリウム溶液を除去し、汚染を避けるために読み取りの合間に脱イオン水中に置いておいた。
【0122】
図10に示されるように、亜鉛酸ナトリウムのモル濃度が減少すると、導電率が増加する。さらに、NaOHの濃度が増加すると、溶液の導電率が増加する。これらの結果に基づいて、100mlの水、16gのNaOH、および1gのZnO(0.12M)を含有する溶液を選択して、セルのカソード側の電解液として使用するためのリットル溶液にスケールアップした。より高い導電率を有する溶液が所望される場合、より高い濃度のNaOHが使用可能であることが理解され得る。
【0123】
また、水酸化ナトリウムの導電率を測定して、どの水酸化ナトリウム溶液が最適な導電率を有し、したがってセルに最適な性能を提供するかを決定する必要があった。0.5M~7Mの水酸化ナトリウム溶液を調製し、導電率を測定した。
図11に示されるように、本発明者らは、導電率が低下し始める4.5Mでピークに達するまで、モル濃度の増加に伴う導電率の増加を観察した。したがって、アノード側の電解液中の最高の導電率を与えるとする水酸化ナトリウムの濃度を4.5Mであると選択した。
【0124】
細胞実験結果
亜鉛酸ナトリウム(Na2Zn(OH)4)溶液は、次のアノード-カソードの要約反応で記載されるように、水素ガスを発生させるとともにカソードの表面に亜鉛粒子を同時に電着させ、またアノードで酸素ガスを発生させることによって、セル内で電解分解される。
【0125】
【0126】
水素生成に対する電圧の影響を、2.5V、3.0V、および3.5Vの電圧を使用して研究した。
図12に示されるように、電圧が増加すると生成される水素の量も増加する。2.5Vから3Vまで、水素生成においてわずかな増加のみが発生した。
【0127】
セル内の電流に対する電圧の影響を、2.5V、3.0V、および3.5Vの3つの異なる電圧について研究し、結果を
図13に示す。結果は、電圧が増加すると電流が増加することを示す。2.5V実験のパターンは、電流は最初に減少し、その後時間とともに安定し、平均電流が0.25Aになることを示す。3V実験の電流は最初は横ばいのままであったが、その後ゆっくりとほぼ1.5Aに増加し、実験全体の平均電流は1.22Aとして記録された。3.5Vの実験では、最初は急激に上昇し、その後時間とともにゆっくりと上昇し続け、平均電流は3.51Aになった。
【0128】
上の実験で生成された亜鉛を電極表面から回収したさまざまな実験パラメータを変更してさらに実験を実行し、結果を表1に示す。
【0129】
【0130】
表1に示されるように、電圧、つまり電流が高いほど、亜鉛の回収量は多くなる。実験8および9を比較すると、亜鉛酸ナトリウム溶液の濃度を増加すると、回収される亜鉛の質量が増加することが認識される。電流は実験9でより速い速度で増加し、実験8よりも全体的に高い電流に達したことが認識された。これは、電解液の導電率が増加したため、亜鉛の質量の増加につながったと考えられる。
【0131】
実験1~3のセル効率を計算して、それらの性能を比較可能にし、結果を表2に示す。
【0132】
【0133】
この傾向は、電圧が増加し、より多くの水素が生成されると、セル効率が増加することを示す。
【0134】
実施例3-スズ酸ナトリウムの電気化学反応
本方法が亜鉛以外の金属での使用に適用可能であることを示すために、本発明者らはまた、スズ酸ナトリウムの電気化学反応を調査した。
【0135】
方法
装置
分割されていない電解セルを使用して、バッチ実験を実行した。セルは、長方形のオープントップパースペックスアクリル容器で構成され、2つの円筒形グラファイト電極が6cm離れて配置され、容器の底に接続されている。容器は、25cmの高さ、20cmの長さ、12cmの幅を有した。容器の内側に残った電極部分は、3cmの長さ、1cmの直径を有した。電線は、電極を電源に接続した。電源は、各実験の前に電圧(および電流)を設定した。各電極はシリンダー(500ml)を有し、その上に固定弁が取り付けられている。チューブを使用して、シリンダーの1つを真空ポンプに接続し、実験の開始前にシリンダーを電解溶液で充填するためにこの真空ポンプを使用した。次に、実験の開始前に弁を閉じた。
【0136】
電気伝導率
電解液を、55.4gのスズ酸ナトリウム(42~45%SnO2ベース)を200mlの蒸留水に溶解することによって調製した。生成された溶液は、1.3Mの濃度を有した。この濃度をスズ酸ナトリウムの水への溶解限度に基づいて決定した。発生した反応は発熱性であった。
【0137】
【0138】
電解液の電気伝導率を、導電率測定デバイスを使用して測定した。次に、蒸留水を添加して溶液を所望の濃度に希釈した。これらは1.3~0.1Mの範囲で、各間隔で0.1Mずつ減少した。導電率をすべての濃度で測定した。導電率を使用して、次の式を使用して抵抗を計算した。
【0139】
【0140】
式中、Rは電気抵抗(Ω)であり、σは導電率(mS/cm)であり、Lは電極間の距離(cm)であり、Sは電極表面積(cm2)である。この実験では、電極表面積を11cm2に固定した。
【0141】
水素生成
上記のように、電解液が所望の濃度で生成されたら、それを完全に混合して、一定の濃度勾配を確保した。次に、それを反応容器に注意深く注ぎ、電源を入れた。電流をすべての実験で1Aに固定した。
【0142】
2つの異なる実験手順を実行した。最初の実験手順は、最適な電解液の3つの異なる濃度で水素生成量を経時的に測定することを伴った。電気伝導率測定の結果から最適濃度を決定した。第2の実験手順は、2、2.5、および3Vの3つの異なる電圧で水素生成量を経時的に測定することを伴った。各実験は3時間続き、水素生成量を5分間隔で測定した。
【0143】
望ましい電気分解は、スズ酸ナトリウム三水和物の電気分解である。ただし、以下に示されるように、水酸化スズ(IV)およびNaOHと平衡状態で存在し得る。
【0144】
【0145】
このプロセスを室温で実行したが、これは、平衡状態でのスズ酸ナトリウム三水和物の形成に有利に働く傾向があるため有益である。このプロセスでは水の解離は比較的小さいが、それでも可能である。それにより、カソードでの水素ガスの生成につながる。ただし、同時に発生するより顕著な反応は、水酸化スズ(IV)のスズへの還元である。金属は、カソードの表面に堆積する。これらの反応は、それぞれ次のように見ることができる。
【0146】
【0147】
【0148】
アノードでの反応は、酸素ガスの生成を伴う。
【0149】
【0150】
式6~9を合計すると、次のように簡略化される。
【0151】
【0152】
次に、カソードに堆積したスズを酸化して、水酸化スズ(IV)および水素ガスを生成することができる。このプロセスは、実施例1に記載の装置を使用して実行可能であることが理解されよう。この反応の式は次のとおりである。
【0153】
【0154】
生成された水酸化スズ(IV)は、式6に従って反応したスズ酸ナトリウム三水和物の代わりに使用され得る。式10と11とを合計すると、本プロセスを表すために使用される式全体を次のように簡略化できる。
【0155】
【0156】
セル効率
セル効率を、実験から得られた測定値と実験を行うために使用されたパラメータとの組み合わせに基づいて計算した。セル効率を決定するために使用された式は、次のとおりであった。
【0157】
【0158】
式中、nは、水素生成量に基づいて、電池効率[m3m-3h-1(kWh)-1]であり、qは、電解セルにおける電解液の単位体積当たりの水素生成量であり(m3m-3h-1)、Uは、セル電圧(V)であり、Iは、セル電流(A)であり、tは、時間(時間)である。
【0159】
項(kWh)-1は、式10の分母の項の組み合わせである。これは、電気分解によって消費される電力量を表している。
【0160】
これらの実験中、電圧は、一定の電解液濃度、電流、および指定された時間で変化する(2、2.5、および3V)。
【0161】
結果および考察
濃度および導電率
上で説明したように、電解液の導電率をさまざまな濃度で測定した。
図15に示されるように、電解液の濃度が減少すると、導電率の減少につながる。これは、濃度が減少すると単位体積当たりのイオン数が減少するためである。したがって、単位体積当たりの電荷を運ぶイオンが少なくなり、導電率の減少をもたらす。この事実に基づいて、実験で使用された最大濃度である1.3Mの電解液濃度が最高の導電率を有すると予想される。ただし、そうはならなかった。最適な導電率は、1.2Mの濃度であった。予期しない結果は、溶解限度にある電解液によって説明可能である。
【0162】
さらに、抵抗と導電率との関係は、相互関係にある。
【0163】
濃度および水素生成
最高の導電率を有するこれらの電解液に基づいて、1.1M、1.2M、および1.3Mのスズ酸ナトリウム三水和物の濃度を選択した。次に、これらの電解液の水素生成を測定した。
【0164】
水素の最大収率を1.2Mの電解液で測定し、これは
図16を参照されたい。したがって、最高の導電率を有する電解液は、所与の時間に最も多くの水素を生成した。
【0165】
電圧および水素生成
図17で検討されている3つの電圧は、水素生成用の水の電気分解で使用される最小セル電圧である2Vに基づいて選択した。次に、水素生成を測定した。
【0166】
蓄積された水素の最大量は、電圧が最も高いとき、すなわち3Vのときであった。これは、電圧が大きくなると電気分解が発生する速度が加速するため、電極に流れるイオンの増加につながると考えられる。したがって、より多くの水素が経時的に蓄積された。これを
図16と比較すると、電圧が濃度よりも水素生成に対してより大きな影響を有することを見ることができる。2Vと2.5Vとの間の水素生成量の差は、約150cm
3であった。これは、電圧の相対的な変化に対する生成規模に基づいて、蓄積された水素の実質的な変化である。
【0167】
セル効率
セル効率を1.2M電解溶液に基づいて計算し、結果を表3に提供する。
【0168】
【0169】
行われた最初の観察は、電圧の増加がセル効率の減少につながるということである。それはよりかなりの量の水素を生成するが、セルは効率が低く、望ましくない。これらの結果に基づいて、亜鉛酸ナトリウム(実施例2で考察)を使用するセルの方がより効率的であると考えられる。ただし、電気分解実験で消費された電力量が同じではなかったため、直接比較することは困難である。したがって、これは結果にいくつかの不一致をもたらすであろう。
【0170】
2.5~3Vと比較して、2~2.5Vの範囲では、効率が大幅に低下しているようである。このため、より小さな電圧を使用する方が効率的であるが、それは、この場合セルが最も効率的であるためである。それにもかかわらず、より低い電圧、すなわち2Vでは、セルは水電解槽よりも効率的であることは明らかであるが、それは電解溶液中のイオン活性剤の結果である可能性がある。
【0171】
結論
本発明者らは、熱化学反応において亜鉛を酸化亜鉛に変換することによって水素ガスを生成することが可能であり、電気化学反応において酸化亜鉛を亜鉛に変換することによってさらに水素ガスを生成することが可能であることを示した。したがって、初期量の亜鉛/酸化亜鉛が提供されると、
図14に示されるように、これらの反応をサイクルで実行して、大量の水素ガスを生成することが可能であり、ここで必要な原料は水だけである。
【0172】
本発明者らは、このシステムがスズなどの他の金属にも適用できることを示した。特に、本発明者らは、電解反応においてスズ酸ナトリウムからスズを生成した。