(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】太陽電池パネル用コーティング材
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0216 20140101AFI20240403BHJP
H01L 31/048 20140101ALI20240403BHJP
G02B 1/111 20150101ALI20240403BHJP
【FI】
H01L31/04 240
H01L31/04 560
G02B1/111
(21)【出願番号】P 2022068403
(22)【出願日】2022-04-18
(62)【分割の表示】P 2017242415の分割
【原出願日】2017-12-19
【審査請求日】2022-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】508179615
【氏名又は名称】株式会社 シリコンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】100118201
【氏名又は名称】千田 武
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 栄造
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-173428(JP,A)
【文献】国際公開第2017/150393(WO,A1)
【文献】特開2005-010470(JP,A)
【文献】特開2015-156462(JP,A)
【文献】特開2014-227528(JP,A)
【文献】特開2014-105330(JP,A)
【文献】特開2016-115927(JP,A)
【文献】特開2001-337211(JP,A)
【文献】特開2011-009468(JP,A)
【文献】国際公開第01/042156(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/150132(WO,A1)
【文献】特開2014-152180(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0023854(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1081746(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/078
H01L 31/18-31/20
H10K 30/00-39/18
H02S 10/00-10/40
H02S 30/00-99/00
G02B 1/11- 1/118
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラアルコキシシラン、
ケイ酸ナトリウム、ホウ酸又はホウ酸化合物、平均粒子径1nm~100nmのシリカ粒子を水中に含有する水分散体であって、
前記水分散体中に、前記テトラアルコキシシラン100重量部に対し、前記
ケイ酸ナトリウム5重量部~30重量部、前記シリカ粒子1,000重量部~3,000重量部を含有し、
前記ケイ酸ナトリウム100重量部に対し、前記ホウ酸又は前記ホウ酸化合物10重量部~700重量部を含有し、
前記シリカ粒子は、平均粒子径1nm~100nmの球状シリカ粒子20重量%~40重量%と、平均長さ30nm~200nmの鎖状シリカ粒子60重量%~80重量%との混合物(但し、混合物中の球状シリカ粒子と鎖状シリカ粒子の合計は100重量%である)であることを特徴とする太陽電池パネル用コーティング材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池パネル用コーティング材に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池パネルのカバーガラス(強化ガラス)の表面には、太陽電池本体により多くの太陽光を入射させるために、光反射を低減する反射防止膜が形成されている。このような反射防止膜には、例えば、特許文献1に、透明基体の表面に中空シリカ粒子を含む反射防止膜を有する反射防止膜付き基体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、反射防止膜は太陽電池パネルのガラス表面に対する密着性を高めることにより、膜の安定性が保たれ、その結果、太陽光の反射が低減される。
本発明の目的は、太陽電池パネルのガラス表面に塗布することにより太陽光の反射を低減する反射防止膜が形成される太陽電池パネル用コーティング材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、加水分解性オルガノシラン、アルカリ金属ケイ酸塩、平均粒子径1nm~100nmのシリカ粒子を水中に含有する水分散体であって、前記水分散体中に、前記加水分解性オルガノシラン100重量部に対し、前記アルカリ金属ケイ酸塩5重量部~30重量部、前記シリカ粒子1,000重量部~3,000重量部を含有することを特徴とする太陽電池パネル用コーティング材が提供される。
ここで、前記加水分解性オルガノシランは、4官能加水分解性アルコキシシランであることが好ましい。
前記アルカリ金属ケイ酸塩は、ケイ酸ナトリウムであることが好ましい。
さらに、前記シリカ粒子は、平均粒子径1nm~100nmの球状シリカ粒子20重量%~40重量%と、平均長さ30nm~200nmの鎖状シリカ粒子60重量%~80重量%との混合物(但し、混合物中の球状シリカ粒子と鎖状シリカ粒子の合計は100重量%である)であることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、太陽電池パネルのガラス表面に塗布することにより太陽光の反射を低減する反射防止膜が形成される太陽電池パネル用コーティング材が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための形態について説明する(以下、実施の形態)。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0008】
(加水分解性オルガノシラン)
本実施の形態で使用する加水分解性オルガノシランは、分子中に酸性触媒又は塩基性触媒の存在下に加水分解する加水分解基を有するケイ素化合物である。加水分解性オルガノシランが有する加水分解基としては、例えば、アルコキシ基、アセトキシ基、オキシム基、エノキシ基、アミノ基、アミノキシ基、アミド基等が挙げられる。これらの中でもアルコキシ基を有する加水分解性アルコキシシランが好ましい。
【0009】
加水分解性アルコキシシランとしては、4官能加水分解性アルコキシシラン、3官能加水分解性アルコキシシラン、2官能加水分解性アルコキシシランが挙げられる。これら中でも4官能加水分解性アルコキシシランが好ましい。
4官能加水分解性アルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類が挙げられる。
【0010】
3官能加水分解性アルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ステアリルトリメトキシシラン、ステアリルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類が挙げられる。
【0011】
2官能加水分解性アルコキシシランとしては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン類等が挙げられる。これらの化合物は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
上記アルコキシシランの中でも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシランが好ましい。さらに、テトラアルコキシシランが好ましく、テトラエトキシシラン(TEOS)が特に好ましい。
【0012】
加水分解性アルコキシシランの加水分解反応に使用する酸性触媒としては、例えば、酢酸、クロロ酢酸、クエン酸、安息香酸、ジメチルマロン酸、蟻酸、プロピオン酸、グルタール酸、グリコール酸、マレイン酸、マロン酸、トルエンスルホン酸、シュウ酸等の有機酸;塩酸、硝酸、ハロゲン化シラン等の無機酸が挙げられる。また、塩基性触媒としては、例えば、アンモニア等が挙げられる。これらの触媒を1種又は2種以上使用することができる。酸性触媒の使用量は、加水分解性アルコキシシラン100重量部に対し、通常、0.5重量部~15重量部の範囲である。
【0013】
加水分解性アルコキシシランは、通常、疎水性であるため、加水分解反応は加水分解性アルコキシシランと水の双方と混ざり合う有機溶媒を共通溶媒として使用することが好ましい。この場合、加水分解性アルコキシシランと水を別個に有機溶媒で希釈してから、両者を混合することが好ましい。有機溶媒と水との使用量の重量比は、通常、(有機溶媒2~15):(水85~98)の範囲である(但し、有機溶媒と水との合計は100である)。
【0014】
有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルセロソルブ、ジエチルカルビトール等のグリコールエーテル類;N-メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド等が挙げられる。これらの中でも、アルコール類が好ましく、エタノールが特に好ましい、これらの有機溶媒は単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0015】
(アルカリ金属ケイ酸塩)
本実施の形態で使用するアルカリ金属ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸ナトリウム(水ガラス)、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸アンモニウム等が挙げられる。
アルカリ金属ケイ酸塩は、太陽電池パネル用コーティング材を太陽電池パネルの強化ガラス表面に塗布することにより成膜される反射防止膜のバインダ(結合剤)として作用すると考えられる。
【0016】
アルカリ金属ケイ酸塩を添加する場合、硬化剤としてホウ酸又はホウ酸化合物を使用することが好ましい。ここでホウ酸は、(xB2O3・yH2O)の組成を有する酸の総称であって、具体的には、オルトホウ酸(H3BO3)、メタホウ酸(HBO2)、四ホウ酸(H2B4O7)等が挙げられる。アルカリ金属ケイ酸塩とホウ酸又はホウ酸化合物を混合するとアルカリ金属ケイ酸塩がゲル化し、成膜される反射防止膜が太陽電池パネルの強化ガラス表面に固着すると考えられる。ホウ酸又はホウ酸化合物の添加量は、通常、アルカリ金属ケイ酸塩100重量部に対して10重量部~700重量部の範囲である。
【0017】
本実施の形態では、アルカリ金属ケイ酸塩を加える場合、必要に応じてその他の添加剤を加えることができる。添加剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどの無機酸塩;酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、クエン酸マグネシウム、クエン酸カルシウム等の有機酸塩が挙げられる。その他の添加剤の添加量は、通常、アルカリ金属ケイ酸塩100重量部に対して5重量部~20重量部の範囲である。
【0018】
(シリカ粒子)
本実施の形態で使用するシリカ粒子は、平均粒子径1nm~100nmの微細シリカ粒子が好ましい。本実施の形態では、このような微細シリカ粒子が液体媒体中に安定して分散している状態のコロイダルシリカを使用する。コロイダルシリカは、固形分としてのシリカ粒子を通常15重量%~50重量%含有しており、この値からシリカ粒子の配合量を決めることができる。
コロイダルシリカとしては、例えば、非水系の有機溶媒分散型コロイダルシリカ(オルガノシリカゾル)が好ましい。オルガノシリカゾルは、有機溶媒にナノレベルのコロイダルシリカを安定的に分散させたコロイド溶液である。このような微細シリカ粒子は、太陽電池パネルのガラス表面に反射防止膜を形成する主剤と考えられる。
【0019】
有機溶媒分散型コロイダルシリカ(オルガノシリカゾル)は市販品として容易に入手することができる。有機溶媒分散型コロイダルシリカの有機溶媒としては、親水性有機溶媒であれば、特に限定されない。例えば、メタノール、エタノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール等の低級脂肪族アルコール類;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコール誘導体;ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール誘導体;ジアセトンアルコール等が挙げられる。これら親水性有機溶媒は、1種または2種以上の混合物として使用することができる。上記親水性有機溶剤は、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトオキシム等の1種または2種以上の有機溶剤と併用することもできる。
【0020】
微細シリカ粒子の形状としては、球状構造(球状シリカ)、鎖状構造(鎖状シリカ)、パールスライク構造等が挙げられる。球状構造、鎖状構造およびパールスライク構造のコロイダルシリカを併用してもよい。
ここで、球状シリカは、通常、平均粒子径1nm~100nm、好ましくは5nm~80nmの範囲で選択されるシリカ微粒子である。また、鎖状シリカとは、シリカ微粒子がシロキサン結合等の化学結合により連続して鎖状となったものを言い、直線状に伸びた形状、二次元的または三次元的に湾曲した形状のものが挙げられる。鎖状シリカは、通常、平均粒子径10nm~25nmのシリカ微粒子が、平均長さ30nm~200nmを有するまで連続したものである。
【0021】
本実施の形態では、シリカ粒子は、球状シリカ粒子20重量%~50重量%と、鎖状シリカ粒子50重量%~80重量%との混合物(但し、混合物中の球状シリカ粒子と鎖状シリカ粒子の合計は100重量%である)であることが好ましい。球状シリカゾルと鎖状シリカゾルの混合物を使用することにより、太陽電池パネルの強化ガラス面に成膜されたコーティング膜の強度が向上し、強化ガラス表面との接着性が増大する傾向がある。
【0022】
本実施の形態が適用される太陽電池パネル用コーティング材は、上述した加水分解性オルガノシラン、アルカリ金属ケイ酸塩、平均粒子径1nm~100nmのシリカ粒子を水中に含有する水分散体であって、各成分を、前記水分散体中に、加水分解性オルガノシラン100重量部に対し、アルカリ金属ケイ酸塩5重量部~30重量部、シリカ粒子1,000重量部~3,000重量部の範囲で含有している。
【0023】
ここで、上記の各成分を含有する水分散体中に使用する水としては、特に制限なく、例えば水道水を使用できる。また、脱イオン水、純水、超純水を使用してもよい。また、金属材料等の腐食のおそれがある場合は脱塩水を使用し、不純物の混入が望ましくない場合は、純水、超純水を使用する。本実施の形態では、純水を使用することが好ましい。
本実施の形態では、水分散体としての太陽電池パネル用コーティング材の加水分解性アルコキシシランの濃度は、通常、0.03重量%~5重量%の範囲である。また、太陽電池パネル用コーティング材の固形分の濃度は、通常、0.5重量%~20重量%であり、好ましくは1重量%~10重量%の範囲である。
【0024】
(太陽電池パネル用コーティング材の調製方法)
本実施の形態が適用される太陽電池パネル用コーティング材の調製方法は、特に限定されない。例えば、所定の容器中に、上述した加水分解性オルガノシラン、アルカリ金属ケイ酸塩、平均粒子径1nm~100nmのシリカ粒子を、例えば純水に添加し、撹拌混合により調製する方法(一括調製方法);加水分解性オルガノシランの水溶液とアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液とを、それぞれ別々に調製し、これらを平均粒子径1nm~100nmのシリカ粒子及び純水と一緒に撹拌混合により調製する方法(分割調製方法)が挙げられる。
【0025】
上述した分割混合方法の場合、加水分解性オルガノシランの水溶液の調製は、所定量の有機溶媒、酸性触媒又は塩基性触媒の水溶液、加水分解性オルガノシランを添加し、撹拌して調製することが好ましい。有機溶媒は、予め水で希釈して添加する。酸性触媒又は塩基性触媒の水溶液は、濃度1mol/リットル~3mol/リットル程度の水溶液に調製することが好ましい。また、加水分解性オルガノシランも有機溶媒で希釈することが好ましい。かかる水溶液中の加水分解性オルガノシランの濃度は、通常、0.2重量%~10重量%の範囲であり、好ましくは、0.5重量%~5重量%の範囲である。
また、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液中に含まれるアルカリ金属ケイ酸塩の濃度は、通常、0.05重量%~1重量%の範囲であり、好ましくは0.1重量%~0.5重量%の範囲である。
【0026】
続いて、他の容器に前述した加水分解性オルガノシランの水溶液とアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液を混合し、さらに、オルガノシリカゾルを添加し、純水を加えて太陽電池パネル用コーティング材を調製する。ここで、シリカ粒子は、前述したように、平均粒子径1nm~100nmの球状シリカゾルと、平均長さ30nm~200nmの鎖状シリカゾルとを添加することが好ましい。球状シリカゾルと鎖状シリカゾルを添加する方法は、それぞれ個別に添加する、または、予めこれらを混合する、分割して添加する等いずれの方法を適宜選択する。
【0027】
前述した操作により調製した太陽電池パネル用コーティング材は、太陽電池パネルの強化ガラス面に塗工され、コーティング層が成膜される。塗工方法は特に限定されず、公知の一般的な方法が挙げられる。具体的には、例えば、ハケ塗り、スクリーン印刷法、スプレーコート、スピン塗布法、ディップコート等が挙げられる。
コーティング層の厚さは適宜選択され、特に限定されず、通常、厚さ50nm~100nmの範囲である。
【0028】
太陽電池パネルの強化ガラス面に成膜されたコーティング層は、反射防止膜として機能する。通常、空気と強化ガラスとの屈折率の差が大きいと、反射光が強くなるところ、太陽電池パネルの強化ガラス面にコーティング層を成膜することにより、太陽光の反射が抑制される。この場合、コーティング層は空気と強化ガラスの中間の屈折率であるため、コーティング層の表面から入射する光は、空気→コーティング層→強化ガラスへと入射し、太陽電池セルに到達する透過光が増大する。その結果、太陽電池パネルの発電量が増大することが期待される。
【実施例】
【0029】
以下に、実施例に基づき本実施の形態をさらに詳細に説明する。尚、本実施の形態は以下の実施例に限定されない。
【0030】
(太陽電池パネル用コーティング材の調製)
(1)テトラエトキシシラン水溶液
第1の容器に、エチルアルコール(和光純薬工業株式会社製)、塩酸水溶液(濃度2モル/L)、テトラエトキシシラン(東京化成工業株式会社製)を添加し、純水を入れて撹拌しテトラエトキシシラン水溶液を調製した。調製したテトラエトキシシラン水溶液中のテトラエトキシシランの濃度は1.09重量%である。
テトラエトキシシラン水溶液中の各成分の割合は、テトラエトキシシラン100重量部と、これに対しエチルアルコール816重量部、塩酸水溶液(濃度2モル/L)11重量部である。
(2)ケイ酸ナトリウム水溶液
第2の容器に、ホウ酸(和光純薬工業株式会社製)、ケイ酸ナトリウム(水ガラス:関東化学株式会社製)、水酸化マグネシウム(関東化学株式会社製)を添加し、純水を入れて撹拌しケイ酸ナトリウム水溶液を調製した。調製したケイ酸ナトリウム水溶液中のケイ酸ナトリウムの濃度は0.28重量%である。
ケイ酸ナトリウム水溶液中の各成分の割合は、ケイ酸ナトリウム(水ガラス)100重量部と、これに対してホウ酸584重量部、水酸化マグネシウム13重量部である。
【0031】
次に第3の容器に、前述したテトラエトキシシラン水溶液とケイ酸ナトリウム水溶液%とを入れ、さらに、球状シリカ粒子を含むメタノールシリカゾル(固形分30重量%)(日産化学工業株式会社製)、鎖状シリカ粒子を含む鎖状メタノールシリカゾル(固形分20重量%)(日産化学工業株式会社製MA-ST-UP)を添加し、純水を加えて撹拌し、固形分濃度1.53重量%の水分散体の太陽電池パネル用コーティング材を調製した。
上述した水分散体中の各成分の割合は、テトラエトキシシラン100重量部と、これに対しケイ酸ナトリウム15.6重量部、球状シリカ粒子(但し、メタノールシリカゾル(固形分30重量%)に含まれる)577重量部、鎖状シリカ粒子(但し、鎖状メタノールシリカゾル(但し、MA-ST-UP(固形分20重量%)に含まれる)1064重量部である。
【0032】
(可視光線透過率の測定)
ガラス板(厚さ3.2mm)の表面に前述の太陽電池パネル用コーティング材を塗布し、乾燥して、厚さ50nm~100nmのコーティング層を形成した。
次に、市販の可視光線透過率測定計を用いて、前述した表面にコーティング層を形成したガラス板の可視光領域(波長350nm~800nm)の透過率を測定した。尚、比較のため、コーティング層を形成しないガラス板についても同じ条件で透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0033】
【0034】
表1の結果から、可視光領域(波長350nm~800nm)における透過率は、前述した太陽電池パネル用コーティング材を塗布してコーティング層が形成されたガラス板が、コーティング層が無いガラス板と比較して、増大することが分かる。
これにより、太陽電池パネル用コーティング材を塗布してコーティング層が形成されたガラス板が採光側に設けられた太陽電池パネルは、太陽電池セルに到達する太陽光が増大し、発電量が増大することが期待される。