(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】極低温剤の流れの制御
(51)【国際特許分類】
A61B 18/02 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
A61B18/02
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022091916
(22)【出願日】2022-06-06
【審査請求日】2022-06-06
(32)【優先日】2022-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521043951
【氏名又は名称】アイスキュア メディカル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IceCure Medical Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100086461
【氏名又は名称】齋藤 和則
(72)【発明者】
【氏名】ロン、ヒレリィ
(72)【発明者】
【氏名】シャイ、カウフマン
(72)【発明者】
【氏名】ナウム、マックニック
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-531367(JP,A)
【文献】特開2004-275732(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0250524(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110575423(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/02
A61F 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブであって、第1の管腔および第2の管腔を含み、生きている対象の組織に接触するように構成された遠位端を有するプローブと;
流体供給源であって、前記第1の管腔を通って前記プローブの遠位端に極低温剤流体を供給し、そして前記第2の管腔を介して前記プローブから戻る前記極低温剤流体を受け取るように結合された、流体供給源と;
前記遠位端に配置された温度センサと;
圧力センサであって、前記第1の管腔の近位端に配置され、当該圧力センサの中の前記極低温剤流体の圧力を測定するように構成された、圧力センサと;および
プロセッサであって、前記流体供給源からの前記極低温剤流体の供給速度を制御するように構成される、プロセッサと;
を有し、
前記温度センサによって測定された温度が事前設定されたガード温度よりも低い場合、前記供給速度は事前設定された低速度であり、前記温度センサによって測定された温度が前記事前設定されたガード温度以上である場合、前記供給速度は前記圧力センサによって測定された圧力に応答して設定される、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記温度センサによって測定された前記温度が前記事前設定されたガード温度以上である場合、前記供給速度が前記温度に応答して設定される、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記温度センサによって測定された前記温度が前記事前設定されたガード温度以上である場合、前記供給速度は、前記事前設定されたガード温度よりも高い、事前設定された目標温度に応答して設定される、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記事前設定された目標温度が-10℃から-50℃の範囲にある、ことを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記温度センサによって測定された前記温度が前記事前設定されたガード温度以上である場合、前記供給速度は、前記圧力の事前設定された関数から計算される最大供給速度以下である、ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記圧力センサによって測定された前記圧力における、前記事前設定された関数の一次導関数の値が負である、ことを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記温度センサによって測定された前記温度が前記事前設定されたガード温度以上である場合、前記供給速度は、前記極低温剤流体の臨界圧力に応じて選択されたパラメトリック圧力と比較した前記圧力に応答して設定される、ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記パラメトリック圧力が前記臨界圧力よりも大きい、ことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記プロセッサが、比例-積分-微分(PID)コントローラを含む、ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記PIDコントローラが、PIコントローラとして動作する、ことを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
装置を制御するためにコントローラにより実行される方法であって、
前記装置は:
プローブであって、第1の管腔および第2の管腔を含み、生きている対象の組織に接触するように構成された遠位端を有する、プローブと;
前記プローブの前記遠位端にある温度センサと;、
圧力センサであって、当該圧力センサの中の
極低温剤流体の圧力を測定するように構成される、前記第1の管腔の近位端にある圧力センサと;
を有し、
前記方法は:
前記コントローラが、流体供給源を操作して、前記第1の管腔を通って前記プローブの前記遠位端に
前記極低温剤流体を供給し、そして前記プローブから前記第2の管腔を介して戻る前記極低温剤流体を受け取るステップと;そして
前記コントローラが、前記流体供給源からの前記極低温剤流体の供給速度を制御するステップであって、前記プローブの前記遠位端にある前記温度センサによって測定された温度が事前設定されたガード温度よりも低い場合、前記供給速度が事前設定された低速度であり、前記プローブの前記遠位端にある前記温度センサによって測定された温度が前記事前設定されたガード温度以上の場合、前記第1の管腔の近位端にある前記圧力センサによって測定された圧力に応答して前記供給速度が設定される、ステップと;
を有する、ことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記温度センサによって測定された温度が前記事前設定されたガード温度以上である場合、前記供給速度が温度に応じて設定される、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記温度センサによって測定された温度が前記事前設定されたガード温度以上である場合、前記供給速度は、前記事前設定されたガード温度よりも高い事前設定された目標温度に応答して設定される、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記事前設定された目標温度が-10℃から-50℃の範囲にある、ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記温度センサによって測定された前記温度が前記事前設定されたガード温度以上である場合、前記供給速度は、前記圧力の事前設定された関数から計算される最大供給速度以下である、ことを特徴とする請求項11~13のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記圧力センサによって測定された前記圧力における、前記事前設定された関数の一次導関数の値が負である、ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記温度センサによって測定された前記温度が前記事前設定されたガード温度以上である場合、前記供給速度は、前記極低温剤流体の臨界圧力に応じて選択されたパラメトリック圧力と比較した前記圧力に応答して設定される、ことを特徴とする請求項11~13のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記パラメトリック圧力が前記臨界圧力よりも大きい、ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記供給速度を制御するために比例-積分-微分(PID)コントローラを使用するステップを有する、ことを特徴とする請求項11~13のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記PIDコントローラがPIコントローラとして動作する、ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
装置であって:
第1の管腔および第2の管腔を含み、生きている対象の組織に接触するように構成された遠位端を有するプローブと;
前記第1の管腔を通って前記プローブの遠位端に極低温剤流体を供給し、そして前記第2の管腔を介して前記プローブから戻る前記極低温剤流体を受け取るように結合された流体供給源と;
前記遠位端に配置された温度センサと;
前記第1の管腔の近位端に配置され、その中の前記極低温剤流体の圧力を測定するように構成された圧力センサと;および
前記遠位端の事前設定された目標温度と前記圧力センサによって測定された前記圧力とに応答して、前記温度センサによって測定された温度が前記事前設定された目標温度の周りで事前設定された振幅だけ振動する、ように前記流体供給源からの前記極低温剤流体の供給速度を制御するように構成されたプロセッサと;
を有することを特徴とする装置。
【請求項22】
前記プロセッサは、前記圧力センサによって測定された前記圧力と事前設定された圧力との比に応答して、前記極低温剤流体の前記供給速度を制御するように構成される、ことを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記事前設定された圧力が、前記極低温剤流体の臨界圧力よりも大きい、ことを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記供給速度が少なくとも事前設定された最小供給速度以上である、ことを特徴とする請求項21または22に記載の装置。
【請求項25】
前記プロセッサは、比例-積分-微分コントローラであり、前記コントローラの係数値は、前記温度が前記事前設定された振幅だけ振動するように選択される、ことを特徴とする請求項21または22に記載の装置。
【請求項26】
前記事前設定された振幅が8℃から12℃の間である、ことを特徴とする請求項21または22に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、極低温剤の流れ、特に極低温剤の流れを効率的に制御することに関する。
【背景技術】
【0002】
極低温剤材料用のポンプは、効率的に動作するために、弾性の低下など、極低温によって引き起こされる制限を克服できなければならない。蒸気ロックも、極低温剤ポンプの問題である。極低温剤ポンプの効率を改善するためのシステムおよび方法は、当技術分野で知られている。
【0003】
Neilsonらの米国特許第6,007,571号(特許文献1)は、液体冷却剤を温熱療法カテーテルに供給するための液体冷却剤供給システムを記載している。このシステムには、ポンプ、冷却装置、温度センサ、圧力センサを含むセンサ制御ユニットがある。
【0004】
Kudaravalliらの米国特許第6,471,694号(特許文献2)は、凍結手術のための制御システムを記載している。システムを所望の動作状態にし、冷媒流量を制御することによって動作を制御し、安全チェックを実行し、および安全なシャットダウンを達成するための手順が開示されている。
【0005】
Kannenbergらの米国特許第6,939,346号(特許文献3)は、温度制御プローブを制御するための装置を記載している。この装置は、プローブに結合されたコントローラ、およびプローブ温度を変化させるための熱要素を含む。
【0006】
Rybaの米国特許第7,357,797号(特許文献4)は、凍結切除カテーテルの先端温度を制御するために戻り圧力を変化させるためのシステムを記載している。このシステムでは、冷媒供給ラインの遠位端が中央の内腔に配置され、膨張チャンバーを確立するためにカテーテルチューブの遠位先端から離れて配置される。
【0007】
Levinの米国特許第7,731,711号(特許文献5)は、振動特性を有する凍結手術装置の中央管腔内の流れを記載している。装置では、冷媒は分離された部分の形の遠位極低温チップの内面に提供される。
【0008】
Abboudらの米国特許第7,780,657号(特許文献6)は、冷却システムを記載している。システムのコンソールは、冷却剤供給ラインに沿って第1の温度で冷却剤を医療装置に向ける第1の冷却システムと、冷却剤が接続ポイントに到達する前に、冷却剤供給ライン内の冷却剤を第1の温度以下に冷却する第1の冷却システムとを有する。
【0009】
Littrupらの米国特許第7,921,657号(特許文献7)は、臨界点圧力および臨界点温度によって定義される臨界点を有する極低温剤で物体を冷却するためのシステムを記載している。極低温剤の圧力は、蒸気ロックを防ぐ減少したモル体積で極低温剤を提供するために決定された圧力値を超えて上昇される。
【0010】
Lalondeらの米国特許第10,098,685号(特許文献8)は、冷凍切除処置中の心筋組織の病変深度に関連するフィードバックデータまたは情報を提供するシステムを記載している。
【0011】
Fourkasらの米国特許第10,213,244号(特許文献9)は、ヒータに結合された極低温剤システムの極低温剤針を記載している。ヒータに供給される電力は、針の性能および/または極低温剤システムの動作パラメータを補間するために使用される。
【0012】
Geiselhartの米国特許第10,485,602号(特許文献10)は、凍結プローブの温度を調節するための温度調節器を記載している。凍結プローブは、少なくとも部分的に液体の冷媒を第1の圧力で蒸発領域に供給し、それにより第2の圧力の存在下で冷却剤が少なくとも一時的に蒸発し、凍結プローブの冷却部分を冷却する。
【0013】
Georgeらの米国特許10,828,080号(特許文献11)は、凍結療法バルーンカテーテル内の圧力をより低い温度に調節するための方法を記載している。
【0014】
Waltonらの米国特許出願第2005/0159735号(特許文献12)は、組織の切除またはマッピングのためにカテーテルに冷蔵力を提供する冷蔵システムの自動操作のための装置を記載している。一次冷凍システムは開ループまたは閉ループにすることができ、予冷ループは通常閉ループである。
【0015】
Lentzらの米国特許出願2005/0198972号(特許文献13)は、冷凍切除カテーテルシステムの圧力-温度制御について記載している。温度センサは、冷凍カテーテルの遠位端に取り付けられる。システムコントローラは、圧力レギュレータと温度センサの両方と電子通信する。
【0016】
Kimらの米国特許出願第2019/0175395号(特許文献14)は、医療目的および他の目的のために生体組織を冷却するための装置および方法を記載している。冷却装置は、冷却媒体を収容するように構成され、冷却媒体に直接接触することによって冷却媒体と熱的に結合される容器を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】米国特許第6,007,571号
【文献】米国特許第6,471,694号
【文献】米国特許第6,939,346号
【文献】米国特許第7,357,797号
【文献】米国特許第7,731,711号
【文献】米国特許第7,780,657号
【文献】米国特許第7,921,657号
【文献】米国特許第10,098,685号
【文献】米国特許第10,213,244号
【文献】米国特許第10,485,602号
【文献】米国特許第10,828,080号
【文献】米国特許出願第2005/0159735号
【文献】米国特許出願2005/0198972号
【文献】米国特許出願第2019/0175395号
【発明の概要】
【0018】
本発明の一実施形態は、装置であって:第1の管腔および第2の管腔を含み、生きている対象の組織に接触するように構成された遠位端を有するプローブと;第1の管腔を通ってプローブの遠位端に極低温剤流体を送達し、そして第2の管腔を介してプローブから戻る極低温剤流体を受け取るように結合された流体供給源と;遠位端に配置された温度センサと;第1の管腔の近位端に配置され、その中の極低温剤流体の圧力を測定するように構成された圧力センサと;および温度センサによって測定された温度が事前設定されたガード温度よりも低い場合、供給速度は事前設定された低速度であり、温度センサによって測定された温度が事前設定されたガード温度以上である場合、供給速度は圧力センサによって測定された圧力に応じて設定される、ように流体供給源からの極低温剤流体の供給速度を制御するように構成されたプロセッサと;を有することを特徴とする装置、を提供する。
【0019】
開示された一実施形態では、温度センサによって測定された温度が事前設定されたガード温度以上である場合、送達速度が温度に応答して設定される。
【0020】
さらに開示された一実施形態では温度センサによって測定された温度が事前設定されたガード温度以上である場合、送達速度は、事前設定されたガード温度よりも高い、事前設定された目標温度に応答して設定される。一般的に事前設定された目標温度が-10℃から-50℃の範囲にある。
【0021】
さらに開示された一実施形態では温度センサによって測定された温度が事前設定されたガード温度以上である場合、送達速度は、圧力の事前設定された関数から計算される最大送達速度以下である。一般的に圧力センサによって測定された圧力における、事前設定された関数の一次導関数の値が負である。
【0022】
代替的一実施形態では、温度センサによって測定された温度が事前設定されたガード温度以上である場合、供給速度は、極低温剤流体の臨界圧力に応じて選択されたパラメトリック圧力と比較した圧力に応答して設定される。一般的にパラメトリック圧力が臨界圧力よりも大きい。
【0023】
さらに代替的一実施形態ではプロセッサが、比例-積分-微分(PID)コントローラを含む。一般的にPIDコントローラが、PIコントローラとして動作する。
【0024】
本発明の一実施形態はさらに方法であって:第1の管腔および第2の管腔を含み、生きている対象の組織に接触するように構成された遠位端を有するプローブを提供するステップと;流体供給源を結合して、第1の管腔を通ってプローブの遠位端に極低温剤流体を送達し、そしてプローブから第2の管腔を介して戻る極低温剤流体を受け取るステップと;遠位端に温度センサを配置するステップと;第1の管腔の近位端に圧力センサを配置し、そしてその中の極低温剤流体の圧力を測定するように圧力センサを構成するステップと;そして温度センサによって測定された温度が事前設定されたガード温度よりも低い場合、供給速度が事前設定された低速度であり、温度センサによって測定された温度が事前設定されたガード温度以上の場合、圧力センサによって測定された圧力に応じて供給速度が設定されるように、流体供給源からの極低温剤流体の供給速度を制御するステップと;を有することを特徴とする方法を提供する。
【0025】
本発明の一実施形態はさらに装置であって:第1の管腔および第2の管腔を含み、生きている対象の組織に接触するように構成された遠位端を有するプローブと;第1の管腔を通ってプローブの遠位端に極低温剤流体を送達し、そして第2の管腔を介してプローブから戻る極低温剤流体を受け取るように結合された流体供給源と;遠位端に配置された温度センサと;第1の管腔の近位端に配置され、その中の極低温剤流体の圧力を測定するように構成された圧力センサと;および遠位端の事前設定された目標温度と圧力センサによって測定された圧力とに応答して、温度センサによって測定された温度が事前設定された目標温度の周りで事前設定された振幅だけ振動する、ように流体供給源からの極低温剤流体の供給速度を制御するように構成されたプロセッサと;を有することを特徴とする装置を提供する。
【0026】
一般的にプロセッサは、圧力センサによって測定された圧力と事前設定された圧力との比に応答して、極低温剤流体の送達速度を制御するように構成される。事前設定された圧力が、極低温剤流体の臨界圧力よりも大きい。
【0027】
一般的に送達速度が少なくとも事前設定された最小送達速度以上である。
【0028】
一般的にプロセッサは、比例-積分-微分コントローラであり、コントローラの係数値は、温度が事前設定された振幅だけ振動するように選択される。
【0029】
一般的に事前設定された振幅が8℃から12℃の間である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本開示は以下の図面を参照した実施形態の詳細な説明からより完全に理解されよう:
【
図1】本発明の一実施形態による、極低温剤医療処置に使用される装置の概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、プローブの概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態による、装置の要素がどのように一緒に接続されるかを示す、装置の概略ブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態による、手順の第1の段階中にアルゴリズムを実行する際にプロセッサによって取られる操作のフローチャートである。
【
図5】本発明の一実施形態による、
図4のフローチャートの動作中に得られた一組の概略グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(概要)
極低温剤処置での極低温剤プローブの操作で発生する問題の1つは、蒸気ロックによるプローブの操作効率の低下、または完全な操作の失敗ですらある。蒸気ロック、つまり液体の流量の減少または完全な停止は、蒸発した極低温剤液体からの極低温剤蒸気が液体の流れを収縮または停止させるときに、極低温剤システムで発生する。流れの減少は、処置中にプローブがプローブに接触する組織を冷却することを妨げる。極低温剤液体が実質的に非圧縮性である場合、蒸気ロック問題は悪化する。これは、プローブが使用されている極低温剤の臨界点の圧力値とは大きく異なる低圧で動作している場合に当てはまる。たとえば、液体窒素の臨界圧力は約33.5 atm(大気圧)であるため、約1~10atmの範囲の圧力では比較的非圧縮性である。
【0032】
本発明の実施形態は、プローブを、本明細書では液体窒素であると想定される極低温剤の臨界圧力に近い高圧で短時間定期的に動作するように構成することにより、比較的低圧でほとんど操作しながら、極低温剤プローブの蒸気ロック問題を克服する。これらの期間では、液体窒素は比較的圧縮可能であり、より自由に流れることができ、初期の蒸気ロックを緩和する。
【0033】
高圧を短時間実現するために、本発明の実施形態は、遠位端を目標温度に維持しようとするのではなく、プローブの遠位端の温度を目標温度の周りで振動するように構成する。プロセッサは、プローブ内の極低温剤の圧力と遠位端の温度を測定する。プロセッサは、測定された温度と圧力の値を使用して、極低温剤のポンプの回転速度を制御する。つまり、極低温剤がポンプからプローブに排出される流量を制御し、プロセッサは、速度(ポンプの回転速度)が流量の高い値と低い値の間で振動的に変化するように構成される。
【0034】
流量の振動は、上記の短時間の高圧と、目標温度に関する振動を提供する。
【0035】
本発明の一実施形態は、第1の管腔および第2の管腔を含み、生体対象の組織に接触するように構成された遠位端を有する、プローブからなる装置を提供する。第1の管腔を通ってプローブの遠位端に極低温剤流体を送達し、プローブから第2の管腔を介して戻る極低温剤流体を受け取るように結合された流体供給源が存在する。
【0036】
温度センサはプローブの遠位端に配置され、圧力センサは第1管腔の近位端に配置される。圧力センサは、第1の管腔を流れる極低温剤流体の圧力を測定する。
【0037】
プロセッサは、流体供給源からの極低温剤流体の供給速度を制御するように構成されているため、温度センサによって測定された温度が事前設定されたガード温度よりも低い場合、供給速度は事前設定された低速度になる。温度センサによって測定された温度が事前設定されたガード温度以上である場合、送達速度は、遠位端の目標温度および圧力センサによって測定された圧力に応じて設定される。
【0038】
(詳細な説明)
以下の説明では、図面内の同様の要素は同様の数字で識別される。
【0039】
ここで、本発明の一実施形態による、極低温剤医療処置に使用されている装置20の概略図である
図1を参照する。例として、以下の説明で想定される処置は乳房腫瘍に関するものであるが、装置20は、前立腺または腎臓腫瘍などの他の処置に使用することができ、そのような処置はすべて本発明の範囲内に含まれると見なされることが理解されよう。
【0040】
乳房腫瘍の極低温剤処置は、2つの段階で実行される。第1の段階では、プローブ60の遠位端112の温度が初期温度(通常は約-10°C~約-30°C)に下げられます。そして第2の段階では、遠位端温度が初期温度よりも低い後続の温度にさらに低下する。一実施形態では、後続の温度は約-160±10℃である。
【0041】
処置は、医師24によって患者28に対して実行され、医師は、装置20に含まれるディスプレイ32上で処置の結果を観察することができる。(通常、乳房腫瘍に対する処置の第1段階は、超音波の実行を含む。患者28の乳房のスキャン、およびスキャンの結果をディスプレイ32に提示する。)スキャンは、通常、医師24以外の超音波専門家によって実行される。超音波スキャンの詳細は本開示に関連せず、簡潔化のため超音波専門医は
図1には示されていない。代替的または追加的に、第1の段階には乳房のCT(コンピューター断層撮影)スキャンの実行が含まれる場合がある。
【0042】
装置20は、装置の動作のためのソフトウェア44が格納されているメモリ40に結合されたプロセッサ36によって制御される。プロセッサ36およびメモリ40は、操作コンソール42にインストールされる。メモリ40内のソフトウェア44は、例えば、ネットワークを介して、電子形式でプロセッサにダウンロードされ得る。代替的または追加的に、ソフトウェアは、光学的、磁気的、または電子的記憶媒体などの非一過性有形媒体で提供され得る。ソフトウェア44は、装置操作アルゴリズム48のためのソフトウェアを含み、装置20においてプロセッサによって実行されるステップを含む。装置操作アルゴリズム48は、以下により詳細に説明される。
【0043】
乳房腫瘍の処置の第1および第2段階では、装置20を使用して、最初は通常、本明細書では流体供給源56とも呼ばれるポンプ56に保持された極低温剤流体52を、腫瘍の近くに挿入された遠位端112を有するプローブ60に注入する。ポンプ56は、その下部空間80に液体の形で保持される極低温剤流体52を保持するデュワー72を備える。デュワーの液体の上、上部のスペース84には、極低温剤液体の蒸発によって形成されたガスがある。ポンプ56と同様のポンプは、参照により本明細書に組み込まれる、Hilleliらの「極低温剤ポンプ」と題された米国特許出願第16/785,686号に記載されている。
【0044】
極低温剤流体52は、最初は液体の形態であるが、処置中に、流体は、液体から液体/気体混合物に、あるいは完全に気体の状態にさえ変化する可能性がある。特に明記しない限り、本明細書では、極低温剤流体52は、例として、液体または気体の窒素を含むと想定されている。しかしながら、極低温剤アルゴンなどの他の極低温剤流体を装置20で使用することができ、そのような極低温剤流体はすべて、本発明の範囲内に含まれると想定されることが理解されよう。ポンプ56はプローブ60に接続されており、医師24はプローブ60を操作して、腫瘍に対してプローブの遠位端を正しく配置する。(操作は通常、上記の超音波スキャンを観察する医師によって支援される。)プローブ60については、以下で詳しく説明する。
【0045】
図2は、本発明の実施形態による、プローブ60の概略図である。プローブ60は、シャフトの近位端でプローブのシャフト108に取り付けられたハンドル104を備える。シャフト108は、尖った遠位端112で終端し、これにより、シャフトは、患者28の乳房の一部などの組織を貫通することができる。(シャフトの外壁のマーキング102は、遠位端からの距離を示し、そして処置中に医師24によりプローブ60の配置に使用され得る。)区画116に示されるように、シャフト108は、典型的には薄壁のステンレス鋼から形成される3つの同心円管を含む。第1の内側管120は中央管腔124を取り囲み、第1の内側管は第2の管128によって囲まれる。第1の管および第2の管は中間空間132によって分離される。第3の外側管136は第2の管128を囲む。第2および第3の管は、空間140によって分離されている。マーキング102は、第3の外側管136の外壁に配置され得る。
【0046】
温度センサ144、典型的には熱電対またはサーミスタは、遠位端112内に固定的に配置され、典型的には、遠位端に配置された管120を取り囲む熱交換器146の近くに配置される。温度センサ用のケーブル148は、通常、空間140に配置される。ケーブルは、プロセッサ36に接続され、プロセッサがセンサ144によって感知された温度を測定することを可能にする。
【0047】
装置20の操作において、シャフト108の第2の管と第3の管との間の空間140は、密封された真空状態に維持される。以下でより詳細に説明するように、中央管腔124は、極低温剤流体をポンプ56から遠位端112に運ぶために使用され、中間空間132は、極低温剤流体を遠位端からポンプに戻すために使用される。
【0048】
シャフト108の内部構造に概ね類似した内部構造を有するフレキシブル管152は、ハンドル104を介してシャフトに結合される。管152内の管腔は、極低温剤流体をポンプ56から中央管腔124に移送し、そして極低温剤流体を中間空間132からポンプに戻すように構成される。
【0049】
図3は、本発明の実施形態による、装置の要素がどのように一緒に接続されるかを示す、装置20の概略ブロック図である。ブロック図は、要素間の極低温剤流体の流れと信号データの流れを示している。
【0050】
プロセッサ36は、ポンプモータ制御信号をモータ68に提供することにより、装置20の動作を制御する。起動時に、モータは、ポンプ56を作動させ、極低温剤流体が、モータの回転速度に依存する流量で、デュワーから排出される。したがって、本明細書の説明では、特に明記しない限り、モータの速度、すなわちモータの回転速度は、排出された極低温剤流体の流量に正比例するので、大きな回転速度は大きな流量に対応し、そして小さな回転速度は、小さな流量に対応する。流量は、本明細書では送達速度とも呼ばれる。
【0051】
ここでの説明では、流量はrpm(1分あたりの回転数)として示され、一実施形態では、ポンプは1:50のギア比のモータを備えているため、モータの3,000rpmはポンプの60rpmに対応する。流体が100%液体の場合、ポンプrpmから流量へのおおよその変換係数は60 rpm=0.36リットル/分である。
排出された極低温剤流体は、デュワーから、フレキシブル管152、ハンドル104、および管120の管腔124を経由して、遠位端112に流れ出る。
【0052】
開示された実施形態では、プロセッサ36は、PID(比例-積分-微分)コントローラである。
【0053】
極低温剤流体は、通常は液体/気体混合物として遠位端112から、プローブ60の空間132、ハンドル104、およびフレキシブル管152を経由してデュワー72に戻る。
【0054】
図に示されるように、プローブの遠位端にある温度センサ144は、プローブ先端の温度を示す信号をプロセッサ36に提供する。プロセッサ36はまた、ハンドル104内の圧力センサ100から管腔124に入る極低温剤流体の圧力を示す信号を受信する。センサ100は、ハンドル104内に、典型的には第1の内側管120に近接して配置され、その結果、センサは、流入する極低温剤流体と接触する。
【0055】
プロセッサ36は、圧力センサと温度センサからの信号を使用してアルゴリズム48を操作する。これにより、プロセッサはポンプモータ68を制御する出力信号を生成できる。ポンプモータに転送された出力信号は、モータの回転速度、したがって、デュワー72から排出される極低温剤流体の流量を制御する。
【0056】
図4は、本発明の実施形態による、処置の第1段階中にアルゴリズム48を実行する際にプロセッサ36によって行われる動作のフローチャートである。フローチャートの説明では、プロセッサ36は、式(1)によって与えられる出力を有するPID(比例-積分-微分)コントローラを備えると想定されている。
【数1】
ここで、u(t)は時刻 t においてプロセッサによって出力される制御信号であり、
K
c、t
i、t
dは、比例項、積分項、および微分項のそれぞれの係数である。
【0057】
当業者は、必要な変更を加えて、過度の実験を行うことなく、フローチャートの説明をPIDコントローラ以外のプロセッサに対して適合させることができる。
【0058】
第1のステップ150において、本明細書では、上記のように、PIDコントローラを含むと想定されるプロセッサ36のパラメータが、プロセッサに入力される。以下の説明では、PIDコントローラは、Kc = 0.1およびti = 0.05の係数値を有すると想定され、td = 0、すなわち、プロセッサ36は、PIコントローラとして動作し、当技術分野の通常のスキルを有する者は、過度の実験を行わずに、Kc、ti、およびtdの他の値について本説明を適応することができる。
【0059】
ステップ150において、プロセッサ36は、遠位端112が冷却される公称温度である目標温度Ttを提供される。温度Ttは、典型的には-10℃から-50℃の範囲であるが、いくつかの実施形態では、Ttはこの範囲外である。プロセッサ36はまた、遠位端の公称温度限界として機能する、Ttより低い温度のガード温度Tgを備えている。一実施形態では、Tt = -20℃、Tg = -23℃である。
【0060】
プロセッサはまた、フローチャートのステップに従って、プロセッサがポンプモータ68に適用する最小流量または最小供給速度に対応する最小モータ速度Mmを設定する。一実施形態では、最小モータ速度は224rpmに設定されている。
【0061】
最初のステップ150で、プロセッサには、ポンプモータに適用される最大流量または最大供給速度に対応する最大モータ速度M
uを計算するためにプロセッサが使用する関数f(P)も提供される。即ち、
【数2】
ここで、fは、圧力センサ100によって測定された圧力Pの関数である。
【0062】
本発明の一実施形態では、f(P)は、Pが増加すると最大モータ速度Muが低下し、最大流量が低下し、Pが減少するとMuが増加し、最大流量が増加するように構成される。この実施形態では、両方の導関数dMu/dPおよびdP/dtは負である。
【0063】
開示された一実施形態では、式(2)は式(3)として設定される。
【数3】
ここで、P
arbは、装置20によって使用されている極低温剤流体の臨界圧力よりも大きくなるように設定された固定値を有するパラメトリック圧力である。
K
1は、式(3)の右辺の式をM
uの単位に変換するために使用される比例定数である。
【0064】
式(3)から、式の1次導関数に相当する勾配dM
u/d
Pは、式(3a)で与えられる。
【数3a】
【0065】
開示された実施形態の一例では、Pがpsi(ポンド/平方インチ)で測定され、Muがrpm(回転/分)で測定される場合、K1 =960rpmおよびParb=800 psiであるため、dMu/dP= -1.2rpm/psiである。
【0066】
処置初期化ステップ154において、医師24は、プローブ60を患者28に挿入し、ポンプ56を作動させて、極低温剤流体をプローブに注入する。
第1の決定ステップ158において、プロセッサは、次の式を評価することによって、センサ144によって測定された温度Tをガード温度T
gと比較する。
【数4】
【0067】
式(4)が正を返す場合、すなわち、温度Tがガード温度Tgよりも低い場合、プロセッサは、第1の設定流量ステップ162に進み、プロセッサは、流用を最小流量に設定することに相当する、モータ速度を最小速度Mmに設定する。次に、制御は決定ステップ158に戻る。
【0068】
式(4)が負を返す場合、すなわち、温度Tがガード温度以上である場合、制御は第2の決定ステップ166に進む。ステップ166において、プロセッサは、以下の式を評価することによって温度Tを目標温度Ttと比較する。
【数5】
【0069】
ステップ166が正を返す場合、すなわち、温度Tが目標温度Ttよりも低い場合、モータ速度低下ステップ168において、プロセッサは、低下した目標流量に対応する低下した目標モータ速度MTを計算する。
【0070】
ステップ166が負を返す場合、すなわち、温度Tが目標温度Tt以上である場合、モータ速度の増加ステップ170において、プロセッサは、増加した目標流量に対応する増加した目標モータ速度MTを計算する。
【0071】
ステップ168および170で、プロセッサは式(1)に従ってu(t)を評価し、以下の式(6)に従って目標モータ速度M
Tを決定する。
【数6】
ここで、K
2は、u(t)をモータ速度の単位に変換するために使用される比例定数である。
開示された実施形態では、K
2 = 640rpm。
【0072】
ステップ168および170からの制御は、最大速度ステップ172で続行される。
【0073】
ステップ172において、プロセッサは、圧力センサ100によって提供される圧力Pの値にアクセスし、その値を使用して、式(2)に従って最大モータ速度Muを計算する。
【0074】
第3の決定ステップ174において、プロセッサは、モータ速度M
TおよびM
uを比較する。すなわち、プロセッサは、以下の式を評価することによって、目標流量および最大流量を比較する。
【数7】
【0075】
式(7)が正を返す場合、すなわち、目標モータ速度MTが最大モータ速度Muよりも小さい場合、プロセッサは、第2の設定流量ステップ178に進み、プロセッサは、モータ速度を目標モータ速度MTに設定する。即ち、プロセッサは流量を目標流量に設定する。
【0076】
式(7)が負を返す場合、すなわち、モータ速度MTが最大速度Mu以上である場合、プロセッサは、第3の設定流量ステップ182に進み、プロセッサは、モータ速度を最大モータ速度Muに設定する。つまり、プロセッサは流量を最大流量に設定する。
【0077】
図4のフローチャートは、流量ステップ162、178、および182からの制御により、決定ステップ158に戻ることを繰り返す。
【0078】
アルゴリズム48に対応するフローチャートのステップは、
図1を参照して説明した処置の第1段階中に実行される。第1段階は、医師がフローチャートステップの反復を停止したとき、つまりアルゴリズム48の動作を停止したときに終了する。この時点で、医師は、遠位端112の温度をさらに下げるために、処置の第2段階に進むことができる。第2段階では、アルゴリズム48はアクティブ化されず、より低い温度は、通常、ポンプ56の流量を増やすことによって達成される。
【0079】
図5は、本発明の実施形態による、
図4のフローチャートの動作中、すなわち、アルゴリズム48の起動中に得られた一組の概略グラフである。第1のグラフ200は、センサ144によって測定された遠位端112の温度対時間をプロットしている。第2のグラフ204は、センサ100によって測定された圧力対時間をプロットする。第3のグラフ208は、プロセッサ36からポンプ68への入力に対応した、ポンプモータ速度によって測定された極低温剤の流量、対時間をプロットしている。
【0080】
グラフに示されているように、遠位端温度Tがガード温度Tgよりも低い場合、フローチャートの第1の流量ステップ162に対応して、流量およびモータ速度は低く、ほぼ一定である。流量が少ないと、遠位端の温度がガード温度Tgを超えて上昇し、圧力も上昇する可能性がある。典型的には、時間212に示されているように、ガード温度Tgから出ると、圧力は最初は低く、その結果、最大流量および最大モータ速度Mu(ステップ172で計算される)の値が高くなり、そしてTがTtより低いため、決定166は正を返し、プロセッサはステップ168で流量およびモータ速度を低下させ始める。次に決定174は正を返すので、この状況は、モータ速度が目標速度MTに設定されることにより流量が目標流量に設定される第2の流量ステップ178に対応する。
【0081】
しかしながら、TがTt以上である場合、プロセッサは、ステップ170で目標流量および目標モータ速度MTを増加させ始める。最大流量および最大モータ速度Muは依然として高いので、決定174は正を返し、第2の流量ステップ178は依然として適用され、増加した目標流量および目標モータ速度MTは継続することができる。
【0082】
増加した流量は、たとえば時間80のグラフ204に示すように、増加した流量のために圧力が急激に増加するまで続く。高圧では液体の極低温剤は低圧の時よりフレキシブルであるため、高圧は初期の蒸気ロックを緩和する。さらに、臨界圧力の近くまたはそれを超えると、極低温剤は超臨界流体であるか、またはそのように振る舞う。したがって、極低温剤はプローブ内をより簡単に流れる。
【0083】
グラフ200に示すように、流量が増加すると、温度もTgを大幅に下回る。圧力が増加すると、最大モータ速度Muによって設定される最大流量の値が低くなり、決定174は負を返し、第3の流量ステップ182が適用される。その結果、最大モータ速度Muに対応して流量は急激に低下し、そしてこの流量は時間216まで続く。
【0084】
グラフから明らかなように、プロセッサ36によって実装されるプロセスは反復プロセスであり、時間212と216の間に1回の反復がある。反復中、グラフ200に示すように、遠位端の温度はターゲット温度Ttを中心に振動する。グラフ204はまた、圧力センサ100によって測定された圧力が、約100psiの比較的低い値と約300psiの比較的高い値との間で振動することを示している。温度、圧力、および流量の振動は制限され、それぞれの上限と下限は、とりわけ、設定された最小の流量とモータ速度Mm、および式(3)で与えられる最大の流量とモータ速度Muに依存する。したがって、振動は式(1)で使用されるPIDコントローラ項の係数にも依存する。
【0085】
本発明の一実施形態では、遠位端の温度振動の振幅は、それが目標温度Ttの周りで振動しているとき、約10℃であり、ここで、振幅は、遠位端の局所最高温度と遠位端の局所最低温度との間の温度差である。
【0086】
本明細書で使用される場合、任意の数値または範囲の「約」または「概算」という用語は、部品または構成要素の集合が本明細書に記載される意図された目的のために機能することを可能にする適切な寸法公差を示す。より具体的には、「約」または「ほぼ」は、記載された値の±20%の値の範囲を指す場合があり、例えば「約80%」は、64%から96%の値の範囲を指す。
【0087】
上記の実施形態は例として引用されており、本発明は、本明細書で特に示され、記載されているものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の様々な特徴の組み合わせおよびサブ組合せの両方、ならびに前述の説明を読んだときに当業者に想起される、先行技術に開示されていないその変形および修正を含む。