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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】複合再生PETの処理方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/88 20060101AFI20240403BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20240403BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240403BHJP
   C08L 23/02 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C08G63/88
C08L67/02
C08K3/04
C08L23/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022175337
(22)【出願日】2022-11-01
(65)【公開番号】P2023154378
(43)【公開日】2023-10-19
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】111113038
(32)【優先日】2022-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】522428221
【氏名又は名称】聚量應用材料股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 仲宏
【審査官】久保 道弘
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/88
C08L 67/02
C08K 3/04
C08L 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相溶化剤を複合再生PETに添加し、均一に混合すると共に造粒し、複数のPET粒子混合物を取得し、前記複合再生PETはPET/PE及びPET/PPのうちの少なくとも1種類のプラスチック複合材を含み、前記相溶化剤は多孔質炭素構造を有し、且つ前記多孔質炭素構造の粒径は300nm~10μmの間の範囲であり、比表面積は300~1500m2/gの間の範囲であるステップと、
これら前記PET粒子混合物に対し前駆結晶化プロセス及び固相重合プロセスを順に実行し、複数の複合PET固相重合粒子を製造し、これら前記複合PET固相重合粒子のIV値は0.6以上であるステップと、を含み、
前記多孔質炭素構造はカーボンエアロゲル(Carbon Aerogel)であり、
前記相溶化剤の添加量は前記複合再生PETの質量比50ppm~2wt%の間の範囲であることを特徴とする複合再生PETの処理方法。
【請求項2】
前記多孔質炭素構造は官能基により改質していることを特徴とする請求項1に記載の複合再生PETの処理方法。
【請求項3】
前記官能基はアミノ基またはカルボキシル基であることを特徴とする請求項に記載の複合再生PETの処理方法。
【請求項4】
前記前駆結晶化プロセスのプロセス温度は130~140℃の間の範囲であり、温度持続時間は2~24時間の間の範囲であり、且つ不活性ガスの陽圧環境で実行することを特徴とする請求項1に記載の複合再生PETの処理方法。
【請求項5】
前記固相重合プロセスのプロセス温度は190~230℃の間の範囲であり、温度持続時間は12~72時間の間の範囲であり、且つ真空または不活性ガスの陽圧環境で実行することを特徴とする請求項1に記載の複合再生PETの処理方法。
【請求項6】
前記固相重合プロセスのステップを実行する際に、先に第1回固相重合プロセスを実行し、これら前記複合PET固相重合粒子のIV値を操作可能な範囲まで上昇させてから第2回固相重合プロセスを実行し、これら前記複合PET固相重合粒子の結晶性及び機械構造強度を更に高めるステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の複合再生PETの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレンテレフタレート(PET)のリサイクル技術に関し、より詳しくは、本来分離不可能なPET/PEまたはPET/PP等プラスチック複合材を完全に再利用可能にする複合再生PETの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタラート(poly(ethylene terephthalate)、PET)は国内生産量が最も多く、最も廉価なポリマー材料であり、優れた機械性能及び透明性を有し、ボトル、包装材料及び人工繊維等の製品に広く応用されている。世界のPETの年間生産量は2020年には7820万tにも達し、関連する廃棄物の量は驚異的なものとなっている。陸や海洋等の環境汚染を減らすため、EU、アメリカ、日本等ではPETの再利用ルールを年々厳格化しており、各製品における再生PETの比率を年々高めている。このため、再生PETの再利用は現在重要な環境保護課題となっており、二酸化炭素排出量を削減するのみならず、3R(減量、回収、再利用)という環境保護要求を満たすことも求められ、同時に省エネ効果も達成する必要があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、PETの回収と再利用の過程において、PET/PEまたはPET/PP等のプラスチック複合材(即ち、リサイクルされたPETであり、以下、複合再生PETという)のような経済効果がない混合プラスチック廃棄物に対する現在の分離処理方式は、コストが高すぎるため焼却埋め立て処理するしかなく、重大な環境汚染を引き起こした。
【0004】
また、複合再生PETは安定性及び剛性が共に劣っており、再利用及び加工成形の需要を満たせなかった。複合再生PETの固有粘度(Intrinsic Viscosity、IV値)は約0.50或いは0.50以下であり、IV値を0.6以上まで高める事ができれば、機械性能及び加工成形の需要を満たすことができる。このため、複合再生PETの固有粘度及び分子量をどのように回復し、更には高めることが、複合再生PETのリサイクルが抱えている重要な問題であった。
【0005】
PET/PEまたはPET/PP等の複合再生PETは2種類或いは多種類の非相溶性プラスチックを含んでおり、分子の極性に水と油のような大きな差異があるため、界面活性効果を有している物質を添加して極性が異なるプラスチックの間の界面張力を低下させなければ、均一に混合して再度造粒して使用することができなかった。この種の添加剤は相溶化剤(compatibilizer)と呼ばれている。相溶化剤は一般的に非反応性及び反応性の2種類に分かれる。反応性助剤は界面活性作用を有するのみならず、極性が異なるプラスチックに相溶性を与え、再生プラスチックに化学結合を形成させ、機械性質を向上させる。然しながら、反応性助剤の欠点は、添加比率を少なくとも0.5%以上にせねばならず、コストを鑑みると後続の製品への応用が制限される点である。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、複合再生PETの処理方法を提供することにある。つまり、本来処理が難しいPET/PEまたはPET/PP等の複合再生PETを混合し、IV値も0.6以上まで上昇させ、従来技術のボトルネックを解決し、複合再生PETの完全な再利用を達成する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の複合再生PETの処理方法は、そのステップは、相溶化剤を複合再生PETに添加し、均一に混合すると共に造粒した後、PET粒子混合物を取得し、PET粒子混合物に対し前駆結晶化プロセス及び固相重合プロセスを順に実行し、複合PET固相重合粒子を製造する。これら複合PET固相重合粒子のIV値が0.6以上となる。本発明に使用する複合再生PETはPET/PE及びPET/PPのうちの少なくとも1種類のプラスチック複合材を含む。本発明に使用する相溶化剤は多孔質炭素構造であり、且つ多孔質炭素構造の粒径は300nm~10μmの間の範囲であり、比表面積は300~1500m2/gの間の範囲である。
【0008】
本発明に採用する相溶化剤の多孔質炭素構造は官能基により改質することが可能であり、例えば、アミノ基またはカルボキシル基により改質し、複合再生PETとの反応効果を強化する。
【0009】
本発明に採用する相溶化剤の複合再生PETへの添加量は、質量比50ppm~2wt%の間の範囲である。
【0010】
本発明は製作する製品の必要に応じて前駆結晶化プロセス及び固相重合プロセスのプロセス温度及び時間のようなプロセス条件を調整することで、複合再生PETを製作するための複合PET固相重合粒子のIV値を必要な値に到達させ、後続の各種関連製品の製作及び応用に使用する。
【0011】
また、本発明の固相重合プロセスの温度持続時間は累積性を有するため、まず第1回固相重合プロセスを実行し、複合PET固相重合粒子のIV値を操作(例えば、繊維のファゴティング)可能な範囲まで上昇させ、第2回固相重合プロセスを実行し、製品の結晶性及び機械構造強度を更に向上させる。
【0012】
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る複合再生PETの処理方法の一実施例を示すフローチャートである。
図2】本発明の実施例1に係る複合PET固相重合粒子サンプルが異なる固相重合時間でのIV値テスト結果を示すグラフであって、実線が実際のテストデータで、点線が回帰曲線である。
図3】本発明の実施例2に係る複合PET固相重合粒子サンプルが異なる固相重合時間でのIV値テスト結果を示すグラフである。
図4】本発明の実施例3に係る複合PET固相重合粒子サンプルが異なる固相重合時間でのIV値テスト結果を示すグラフである。
図5】本発明の実施例7に係る複合PET固相重合粒子サンプルが射出成形によるプラスチック蛇口を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態について詳述するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0015】
図1は本発明に係る複合再生PETの処理方法の一実施例を示すフローチャートである。本発明の方法は下記ステップを含む。まず、ステップS10において、本発明に採用する相溶化剤を複合再生PETに添加し、均一に混合した後に造粒を行い、ポリマー結晶核(Polymer Nucleation)を生成し、複数のPET粒子混合物を取得する。
【0016】
本発明に採用する相溶化剤は多孔質炭素構造を有し、多孔質炭素構造の例としてカーボンエアロゲル(Carbon Aerogel)を含み、且つ多孔質炭素構造の粒径は300nm~10μmの間の範囲であり、比表面積は300~1500m2/gの間の範囲であるが、これに限られない。この相溶化剤の多孔質炭素構造は複合再生PETのポリマー鎖との架橋反応または脱水反応を発生させ、ポリマー鎖が増長するかネットワークが形成される。このため、相溶化剤はポリマー鎖延長剤(Polymer Chain Extender)と見做すことができる。
【0017】
本発明の方法に採用する複合再生PETはPET/PE及びPET/PPのうちの少なくとも1種類のプラスチック複合材を含む。本発明は複合再生PETの用途に応じて適量の相溶化剤を添加し、IV値を必要な値まで上昇させる。好ましくは、相溶化剤の添加量は複合再生PETの質量比50ppm~2wt%とする。
【0018】
さらに、本発明の相溶化剤の多孔質炭素構造は官能基により改質し、官能基は、例えば、アミノ基やカルボキシル基であり、複合再生PETとの反応効果を増強している。例えば、多孔質炭素粉末を改質した後、カルボキシル基により改質された相溶化剤粉末を獲得する。
【0019】
続いて、ステップS20に示す如く、前述のPET粒子混合物の前駆結晶化プロセスを実行する。前駆結晶化プロセスのプロセス温度は好ましくは130~140℃の間の範囲であり、温度持続時間は2~24時間の間の範囲であり、且つ不活性ガスの陽圧環境で実行する。
【0020】
そして、ステップS30に示す如く、前駆結晶化したPET粒子混合物の固相重合(SSP)プロセスを実行する。固相重合プロセスのプロセス温度は190~230℃の間の範囲であり、温度持続時間は12~72時間の間の範囲であり、且つ真空或不活性ガスの陽圧環境で実行する。
【0021】
最後に、室温に戻るまで自然冷却した後、本発明の均一性及び結晶性が良好でIV値も上昇した複合PET固相重合粒子を取得する。これら複合PET固相重合粒子のIV値は0.6以上に達し、後続の各種関連製品の製作及び応用に使用する。
【0022】
本発明は製品の製作の需要に応じて、前駆結晶化プロセス及び固相重合プロセスのプロセス条件を調整し、例えば、プロセス温度及び時間を調整することで、複合再生PETで製造した複合PET固相重合粒子が、後続の再生PETの製品の製作及び応用に必要なIV値を獲得する。
【0023】
また、本発明の固相重合プロセスの温度持続時間は累積性を有するため、固相重合プロセスを実行するステップS30において、製品の製作の需要に応じて、まず第1回固相重合プロセスを実行し、複合PET固相重合粒子のIV値を操作(例えば、繊維のファゴティング)可能な範囲まで上昇させ、第2回固相重合プロセスを実行して複合PET固相重合粒子の結晶性及び機械構造強度を高めてもよい。
【0024】
次いで、以下、複数の具体的な実施例1~5を示し、本発明の処理方法を利用して複合再生PETのIV値を効果的に上昇させる方法について更に説明する。
【0025】
実施例1~6で使用する相溶化剤粉末として、多孔質炭素構造を有しているカーボンエアロゲルを採用し、その製作方式に関しては既に大量の国際的なジャーナル文献において公開されている。多くの論文で用いられている製作方式を参照し、例えば、フェノール樹脂を脱水乾燥した後に高温で炭化し、多孔質炭素構造の相溶化剤粉末を獲得する。
【0026】
<実施例1>
実施例1において使用する相溶化剤粉末は、粒径を400nmとし、比表面積を700m2/gとしている。複合再生PETに対し250ppmの重量比で均一に混合した後、2軸押出機で押し出して「炭素粉末-複合再生PET」粒子を製作し、以下PET粒子混合物という。
【0027】
この250ppmのPET粒子混合物に対し前駆結晶化プロセス及び固相重合プロセスを実行し、複合PET固相重合粒子サンプルを製造する。前駆結晶化プロセスのプロセス温度は135℃とし、窒素の陽圧環境で実行し、温度持続時間は3時間とする。固相重合プロセスのプロセス温度は200℃とし、窒素の陽圧環境で実行する。
【0028】
固相重合プロセスを実行する際に、複合PET固相重合粒子サンプルに対し、12、18.5、36、42、及び62時間後にサンプルを採取してIV値を測定し、固相重合時間に対するIV値の図を作成すると共に補間と線形回帰の計算(the calculation of Interpolation and Linear Regression)を実行する。図2の破線に示す如く、その曲線の数式はy=-0.0001x2+0.0141x+0.4809、R2=0.9963であり、yはIV値を示し、xは時間(時間)を示し、R2は決定係数を示す。異なるプロセス時間での複合PET固相重合粒子のIV値を計算すると共に予測し、後続のプロセスにおける需要を満たす。本実施例の複合PET固相重合粒子サンプルの12、18.5、36、42、及び62時間後のIV値はそれぞれ0.626、0.693、0.87、0.875、及び0.936である。
【0029】
<実施例2>
実施例2において使用する相溶化剤粉末は、実施例1と同じである。複合再生PETに対し150ppmの重量比で均一に混合した後、2軸押出機で押し出して150ppmのPET粒子混合物を製作する。
【0030】
この150ppmのPET粒子混合物に対し前駆結晶化プロセス及び固相重合プロセスを実行し、複合PET固相重合粒子サンプルを製造する。前駆結晶化プロセスのプロセス温度は135℃とし、窒素の陽圧環境で実行し、温度持続時間は3時間とする。固相重合プロセスのプロセス温度は200℃とし、窒素の陽圧環境で実行する。
【0031】
固相重合プロセスを実行する際に、複合PET固相重合粒子サンプルに対し12、18.5、及び36時間後にサンプルを採取してIV値を測定し、固相重合時間に対するIV値の図を作成すると共に補間と線形回帰計算を行う。図3に示す如く、異なるプロセス時間での複合PET固相重合粒子のIV値を計算すると共に予測し、後続のプロセスにおける需要を満たす。本実施例の複合PET固相重合粒子サンプルの12、18.5、及び36時間後のIV値はそれぞれ0.624、0.703、及び0.766である。
【0032】
<実施例3>
実施例3において使用する相溶化剤粉末は、粒径を10μmとし、比表面積を590m2/gとしている。複合再生PETに対し500ppmの重量比で均一に混合した後、2軸押出機で押し出して500ppmのPET粒子混合物を製作する。
【0033】
上述の500ppmのPET粒子混合物に対し前駆結晶化プロセス及び固相重合プロセスを実行し、複合PET固相重合粒子サンプルを製造する。前駆結晶化プロセスのプロセス温度は135℃とし、窒素の陽圧環境で実行し、温度持続時間は3時間とする。固相重合プロセスのプロセス温度は200℃とし、窒素の陽圧環境で実行する。
【0034】
固相重合プロセスを実行する際に、複合PET固相重合粒子サンプルに対し4、16、24、46、及び72時間後にサンプルを採取してIV値を測定する(図4参照)。本実施例の複合PET固相重合粒子サンプルの4、16、24、46、及び72時間後のIV値はそれぞれ0.576、0.761、0.8、0.987、及び0.979である。実施例1と比較し、本実施例の相溶化剤粉末の濃度は実施例1の2倍となっており、粒径は大きいが、IV値の上昇曲線は略同じであり、且つ垂直に上昇していることを見出し、相溶化剤粉末の濃度が高くなるほど、IV値の上昇が加速したことを示している。一方、相溶化剤粉末の粒径が小さくなるほど、少ない添加量で同じIV値の上昇を達成するが、比較的長い時間がかかった。
【0035】
<実施例4>
実施例4において使用する相溶化剤粉末及びその添加比率は実施例3と同じであり、その粒径は10μmとし、比表面積は590m2/gとしている。複合再生PETに対し500ppmの重量比で均一に混合した後、2軸押出機で押し出して500ppmのPET粒子混合物を製作する。
【0036】
上述の500ppmのPET粒子混合物に対し前駆結晶化プロセス及び固相重合プロセスを実行し、複合PET固相重合粒子サンプルを製造する。前駆結晶化プロセスのプロセス温度は135℃とし、空気環境で実行し、温度持続時間は3時間とする。固相重合プロセスのプロセス温度は200℃とし、空気環境で実行する。
【0037】
固相重合プロセスを実行する際に、複合PET固相重合粒子サンプルに対し16、24、及び46時間後にサンプルを採取してIV値を測定し、IV値が測定不能なほど低くなっていることを見出し、空気環境がPETの溶解を招いたことを示している。
【0038】
<実施例5>
実施例5において使用する相溶化剤粉末及び前駆結晶化プロセスは実施例3と同じであるが、固相重合プロセスのプロセス温度は200℃とし、真空環境で実行する。72時間後にサンプルを採取して測定したIV値は約0.78であり、固相重合プロセスが窒素環境においては真空環境よりも効率的であったことを示している。
【0039】
<実施例6>
実施例6において、実施例3の方式で複合PET固相重合粒子サンプルを製作し、且つ固相重合プロセスを24時間実行した後に終了して採取し、200ppmのサンプルのIV値が約0.85となった。
【0040】
この複合PET固相重合粒子により引張試験片を製作し、且つ引張試験片をオーブンに入れて二次固相重合プロセスを実行する(プロセス温度は200℃とし、温度持続時間は48時間とし、窒素の陽圧環境で実行する)。結果からは、その引張強度が更に上昇したことを見出した。表1には本発明の実施例6の引張試験片と一般的なPETパッキングテープの引張試験結果を示す。
【0041】
【表1】
【0042】
<実施例7>
実施例7において、実施例1の方式により、複合再生PET+複合再生PEの複合再生PETに対し500 ppmの重量比で均一に混合した後、複合PET固相重合粒子サンプルを製作する。複合再生PETと複合再生PEとの割合は80%及び20%とする。このサンプルのメルトフローインデックスMI値は14.4である(ASTM D1238試験方法に基づく)。
【0043】
この複合PET固相重合粒子サンプルによりプラスチック射出成形を行うことでプラスチック製蛇口物品を製作する。図5に示す如く、色彩が一致していることを目視で確認し、複合再生PET+複合再生PEの複合再生PETが本発明の相溶化剤粉末と混合して造粒した後に均一な相溶状態を確実に達成していることを示している。この蛇口物品に対し1.5mの高さからの落下試験を10回以上行っても如何なる損傷も生じておらず、この複合PET固相重合粒子サンプルによりプラスチック射出成形を行うことで製作した物品の強度及び靭性が仕様を満たしていることを示している。
【0044】
以上を総合すると、本発明に係る複合型再生PETの処理方法は、複合再生PETに多孔質炭素構造を有している相溶化剤を添加し、前駆結晶化プロセス及び固相重合プロセスのプロセス条件を制御した後、複合再生PETの結晶性が高まるのみならず、IV値も0.6以上まで上昇し、複合PETプラスチックが形成され、製作する後続の製品の仕様要求を満たす。これにより、トン級の複合再生PETの完全な再利用という目標を達成し、これがもたらす経済効果はリサイクル産業の永続的な発展に貢献する。
【0045】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
S10~S30 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5