IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビッツロ イーエム カンパニー リミテッドの特許一覧

特許7465008ビッグデータを用いたエッジコンピューティング及びクラウドベースの工場エネルギー管理システム(FEMS)
<>
  • 特許-ビッグデータを用いたエッジコンピューティング及びクラウドベースの工場エネルギー管理システム(FEMS) 図1
  • 特許-ビッグデータを用いたエッジコンピューティング及びクラウドベースの工場エネルギー管理システム(FEMS) 図2
  • 特許-ビッグデータを用いたエッジコンピューティング及びクラウドベースの工場エネルギー管理システム(FEMS) 図3
  • 特許-ビッグデータを用いたエッジコンピューティング及びクラウドベースの工場エネルギー管理システム(FEMS) 図4
  • 特許-ビッグデータを用いたエッジコンピューティング及びクラウドベースの工場エネルギー管理システム(FEMS) 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】ビッグデータを用いたエッジコンピューティング及びクラウドベースの工場エネルギー管理システム(FEMS)
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20240403BHJP
【FI】
G06Q50/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022184249
(22)【出願日】2022-11-17
【審査請求日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】10-2022-0146902
(32)【優先日】2022-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522450912
【氏名又は名称】ビッツロ イーエム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】VITZRO EM Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】327 Byeolmang-ro, Danwon-gu, Ansan-si, Gyeonggi-do, 15603, Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】キム、ミンジェ
【審査官】佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-526250(JP,A)
【文献】特許第7074932(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0164353(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工場または産業設備、建物を備えるとともに、センサネットワークを築いて、設備のステータスを確認可能なデータを与える多数の産業施設部と、
前記産業施設部と通信しながら、電力管理データ、施設管理データを取り集めてビッグデータを実現し、マシンラーニングをして、その結果を与えるクラウドサーバと、
前記クラウドサーバの情報に基づいて、特定の産業施設部の設備異常を検出してメンテナンスを行う機械設備業者端末と、
前記クラウドサーバの情報に基づいて、前記産業施設部において用いるセンサ及びモノのインターネット(IoT)プラットフォームの異常有無を検出し、メンテナンスを行うセンサ及びモノのインターネット(IoT)企業端末と、
を備え
前記クラウドサーバは、
前記設備を構成する各コンポーネントの温度と外気温度検出結果との差、又はコンポーネントの温度検出結果を外気温度で割って相対的な比を用いて温度パターンを求め、
前記温度パターンの大きさと温度パターンの増加の推移を用いて、前記コンポーネントの経年劣化を推定することにより、前記コンポーネントの寿命を予測して取り替え時期を推定するが、
前記経年劣化は、温度パターンの大きさを確認して、コンポーネントの材質に応じた寿命を予測して第1の推定値とし、
前記コンポーネントの種類に応じて、前記第1の推定値を補正して第2の推定値を求め、
前記第2の推定値は、可動部分がなく、固定されたコンポーネントの場合には変更なく、可動部分があるコンポーネントの場合には、前記第1の推定値が示す残存寿命をさらに短縮する補正を行うことにより求め、
前記温度パターンの増加の推移を用いて第2の推定値を補正して、最終的な寿命予測結果である第3の推定値を推定し、
前記第3の推定値を推定するための補正値は、-X/nの式により求め、前記Xは、前記コンポーネントの温度パターンの推移の勾配であり、nは、定数であり、勾配が大きければ大きいほど、補正値の絶対値はさらに大きくなり、温度パターンの変化の推移が急俊に変化すればするほど、残存寿命の推定値がさらに短くなるように補正される、ビッグデータを用いたエッジコンピューティング及びクラウドベースの工場エネルギー管理システム(FEMS)。
【請求項2】
前記センサネットワークは、
設備の電流、電圧等電気的データを検出するセンサと、
設備の温度、湿度等環境的データを検出するセンサと、
を備えることを特徴とする、請求項1に記載のビッグデータを用いたエッジコンピューティング及びクラウドベースの工場エネルギー管理システム(FEMS)。
【請求項3】
前記センサネットワークは、
設備の写真、画像、音響を検出するユーザー端末をさらに備え、
前記ユーザー端末は、検出された写真、画像、音響データを位置データとともにクラウドサーバに送信することを特徴とする、請求項2に記載のビッグデータを用いたエッジコンピューティング及びクラウドベースの 工場エネルギー管理システム(FEMS)。
【請求項4】
産業施設部は、
多数の設備及び前記センサネットワークと、
前記多数の設備に電力を供給する受配電盤と、
多数の設備を制御する分散制御システムと、
を備え、
前記受配電盤は、人工知能(AI)ベースの監視診断モジュールを組み込んだインテリジェント電子装置(IED)を備えることを特徴とする、請求項1に記載のビッグデータを用いたエッジコンピューティング及びクラウドベースの工場エネルギー管理システム(FEMS)。
【請求項5】
前記産業施設部は、
多数の設備及び前記センサネットワークと、
前記多数の設備に電力を供給する受配電盤と、
多数の設備を制御する分散制御システムと、
人工知能(AI)ベースの監視診断モジュールを内蔵し、データを取り集めて前記クラウドサーバに与えるデータ収集及び制御装置と、
を備えることを特徴とする、請求項1に記載のビッグデータを用いたエッジコンピューティング及びクラウドベースの工場エネルギー管理システム(FEMS)。
【請求項6】
前記人工知能(AI)ベースの監視診断モジュールは、
短期データを用いて救急-瞬時事故の予測及び保護を行うことを特徴とする、請求項4または5に記載のビッグデータを用いたエッジコンピューティング及びクラウドベースの工場エネルギー管理システム(FEMS)。
【請求項7】
前記クラウドサーバは、
マシンラーニングを行うが、マシンラーニングのレイヤーを分割して、
低いレベルの資産管理及び中長期の電力料金の低減のための学習を行い、その結果情報を前記産業施設部に与え、
情報の提供を目指して、高いレベルの資産管理及び産業施設部に与えられた類似設備の相関性の分析結果を前記機械設備業者端末とセンサ及びモノのインターネット(IoT)企業端末に与えることを特徴とする、請求項1に記載のビッグデータを用いたエッジコンピューティング及びクラウドベースの工場エネルギー管理システム(FEMS)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビッグデータを用いたエッジコンピューティング及びクラウドベースの工場エネルギー管理システム(FEMS)に係り、さらに詳しくは、クラウドサーバを用いて、機器及びプラットフォームの診断及び事故の予測が行えるエッジコンピューティング及びクラウドベースの工場エネルギー管理システム(FEMS)に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ネットワークを用いた産業管理は、一部分に限られており、これにより、産業施設物の全般的な管理が正常に行われておらず、しかも、これに起因して、産業施設物の総括的なシステムの管理を行うに当たって人手がムダ使いされているのが現状である。
【0003】
また、働き手を用いた産業施設物の総活的な制御が行われることに起因して、リアルタイムにて制御を行い難く、その結果、産業施設物に対する異常兆候の発生を予防することができず、それにより、産業施設物の運営に伴う災害、不良及びリスクに対して即座で対応し難いという不都合がある。
【0004】
このような不都合を改善すべく、工場や産業現場では、施設や装備のモニターリングを行うために、ネットワークを用いたモニターリングシステムを利用している。これは、管理者が現場に常駐しなければならないという不便さを軽減し、中央制御室において全般的な現場の状況を監視しかつ制御することができるので、時間的に、かつ空間的に効率を高めることができる。のみならず、人間がアクセスし難い環境や制限された地域をまとめて管理することができるので、その重要性が益々高まりつつある傾向にある。
【0005】
前述したような不都合を改善するための先行技術としては、大韓民国公開特許第2016-0034023号(2016年03月29日)公報が挙げられる。
【0006】
しかしながら、従来には、産業施設の管理を電力管理と施設管理とに分けて行うが故に、管理のためのシステムが複雑であり、しかも、コストが高騰してしまうという不都合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】大韓民国公開特許第2016-0034023号(2016年03月29日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みて案出されたものであり、その目的は、電力の管理と機器及びプラットフォームを備える設備の統合管理とを行うことのできるビッグデータを用いたエッジコンピューティング及びクラウドベースの工場エネルギー管理システム(FEMS:Factory Energy Management System、以下、単にFEMSと称する。)を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の如き技術的課題を解決するための本発明に係るビッグデータを用いたエッジコンピューティング及びクラウドベースのFEMSは、工場または産業設備、建物を備えるとともに、センサネットワークを築いて、設備のステータスを確認可能なデータを与える多数の産業施設部と、前記産業施設部と通信しながら、電力管理データ、施設管理データを取り集めてビッグデータを実現し、マシンラーニングをして、その結果を与えるクラウドサーバと、前記クラウドサーバの情報に基づいて、特定の産業施設部の設備異常を検出してメンテナンスを行う機械設備業者端末と、前記クラウドサーバの情報に基づいて、前記産業施設部において用いるセンサ及びモノのインターネット(IoT)プラットフォームの異常有無を検出し、メンテナンスを行うセンサ及びIoT企業端末と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の実施形態において、前記センサネットワークは、設備の電流、電圧等電気的データを検出するセンサと、設備の温度、湿度等環境的データを検出するセンサと、を備えていてもよい。
【0011】
本発明の実施形態において、前記センサネットワークは、設備の写真、画像、音響を検出するユーザー端末をさらに備え、前記ユーザー端末は、検出された写真、画像、音響データを位置データとともにクラウドサーバに送信してもよい。
【0012】
本発明の実施形態において、産業施設部は、多数の設備及び前記センサネットワークと、前記多数の設備に電力を供給する受配電盤と、多数の設備を制御する分散制御システムと、を備え、前記受配電盤は、人工知能(AI)ベースの監視診断モジュールを組み込んだインテリジェント電子装置(IED)を備えていてもよい。
【0013】
本発明の実施形態において、前記産業施設部は、多数の設備及び前記センサネットワークと、前記多数の設備に電力を供給する受配電盤と、多数の設備を制御する分散制御システムと、AIベースの監視診断モジュールを内蔵し、データを取り集めて前記クラウドサーバに与えるデータ収集及び制御装置と、を備えていてもよい。
【0014】
本発明の実施形態において、前記AIベースの監視診断モジュールは、短期データを用いて救急-瞬時事故の予測及び保護を行ってもよい。
【0015】
本発明の実施形態において、前記クラウドサーバは、マシンラーニングを行うが、マシンラーニングのレイヤーを分割して、低いレベルの資産管理及び中長期の電力料金の低減のための学習を行い、その結果情報を前記産業施設部に与え、情報の提供を目指して、高いレベルの資産管理及び産業施設部に与えられた類似設備の相関性の分析結果を前記機械設備業者端末とセンサ及びIoT企業端末に与えてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、ビッグデータを用いて、電力の管理と機器及びプラットフォームを備える設備の統合管理を行うことにより、管理の便宜性を向上させ、コストを削減することができるという効果がある。
【0017】
産業施設は、電力料金の低減、低いレベルの資産管理、プラットフォーム/管理コストの最小化、簡便なモニターリング体系を構築し、既存の監視制御及びデータ取得(SCADA)/分散制御システム(DCS)と連携可能な効果を予測することができる。
【0018】
また、機械設備業者にとっては、新規な設備の納品、設備に対する高いレベルの資産管理、産業施設との新規なメンテナンスサービスの契約による収益の創出を期待することができるという効果がある。
【0019】
さらに、センサ/IoTプラットフォーム企業にとっては、産業施設へのプラットフォームの拡大適用、既存の設備チューニングの最小化、産業施設との新規な便宜サービスの更新契約による収益の創出を期待することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の好適な実施形態によるビッグデータを用いたエッジコンピューティング及びクラウドベースのFEMSの構成図である。
図2】クラウドサーバのビッグデータ処理手順の一例を示すフローチャートである。
図3】クラウドサーバにおいて、設備部品の残存寿命を予測するプロセスのフローチャートである。
図4図3におけるステップS500の詳細フローチャートである。
図5図3におけるステップS600の詳細フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の構成及び効果を十分に理解するために、添付図面に基づいて、本発明の好適な実施形態について説明する。しかしながら、本発明は以下に開示される実施形態に何ら限定されるものではなく、異なる様々な形態に具体化でき、種々の変更を加えることができる。単に、これらの実施形態についての説明は、本発明の開示を完全たるものにし、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者に発明の範ちゅうを完全に知らせるために提供されるものである。添付の図面における構成要素は、説明のしやすさのために、その大きさを実際よりも拡大して示すものであり、各構成要素の比率は、誇張されてもよく、縮小されてもよい。
【0022】
「第1の」、「第2の」などの言い回しは、様々な構成要素を説明するうえで使用可能であるが、前記構成要素は、前記言い回しによって何等限定されない。前記言い回しは、ある構成要素を他の構成要素から区別する目的でしか使えない。例えば、本発明の権利範囲を逸脱しない範囲内において、「第1の構成要素」は「第2の構成要素」と命名されてもよく、同様に、「第2の構成要素」もまた「第1の構成要素」と命名されてもよい。また、単数の表現は、文脈からみて明らかに他の意味を有さない限り、複数の言い回しを含む。本発明の実施形態において用いられる用語や言い回しは、特に断りのない限り、当該技術分野において通常の知識を有する者にとって通常的に知られている意味として解釈されてもよい。
【0023】
図1は、本発明の好適な実施形態によるビッグデータを用いたエッジコンピューティング及びクラウドベースのFEMSの構成図である。
【0024】
図1を参照すると、本発明は、工場または産業設備、建物を備える多数の産業施設部10と、前記産業施設部10と通信しながら、電力管理データ、施設管理データを取り集めるクラウドサーバ20と、前記クラウドサーバ20において取り集められた電力管理ビッグデータ及び施設管理ビッグデータを確認して、特定の産業施設部10の設備異常を検出してメンテナンスを行う機械設備業者端末30と、前記クラウドサーバ20に取り集められたデータを確認して、前記産業施設部10において用いるセンサ及びIoTプラットフォームの異常有無を検出し、メンテナンスを行うセンサ及びIoT企業端末40と、を備えてなる。
【0025】
以下、上記のような構成を有する本発明のビッグデータを用いたエッジコンピューティング及びクラウドベースのFEMSの構成と作用についてさらに詳しく説明する。
【0026】
まず、産業施設部10としては、生産工場、ビルなどが挙げられ、少なくとも受配電盤11が設けられて設備12に電力を供給し、設備12のステータスを検出するセンサ13ネットワークを備える構成であれば、その種類を問わずに本発明に適用することができる。
【0027】
また、分散制御システム14を備えて、受配電盤11及び設備12と直列通信を行うことにより制御可能な構造であってもよい。分散制御システムは、SCADAまたはDCSであってもよい。
【0028】
このとき、受配電盤11にはインテリジェント電子装置(IED:Intelligent Electronic Device)を適用して、分散エッジネットワークを実現することができ、データ収集及び制御装置(DAU)15を適用して分散エッジネットワークを実現することができる。
【0029】
また、産業施設部10は、パソコン(PC)またはモバイル機器であるユーザー端末16を備えて、クラウドサーバ20に取り集められたデータをユーザー端末16を用いて確認することができる。
【0030】
このとき、ユーザー端末16は、産業施設部10のセンサとして働くことができる。産業施設部10は、大規模かつ広範であってもよく、産業施設部10内のモバイル機器であるユーザー端末16を用いてデータを取り集めることができる。
【0031】
ユーザー端末16を用いて取り集めるデータは、受配電盤11等産業施設部10の構成要素の写真、動画、音響情報であってもよい。
【0032】
ユーザー端末16は、全地球測位システム(GPS)を用いた位置情報とともに取得した写真、動画、音響情報をセンサ13ネットワークに与えることができる。
【0033】
本発明は、ユーザー端末16をセンサとして用いることにより、監視及び管理のためのコストを削減することができ、高解像度の映像及び画像を用いて、設備12の特定の異常部分を検出することができる。
【0034】
また、音響情報を用いて、以降に音響分析を行うことで、特定の設備12の故障の発生が予測可能なように応用することができる。
【0035】
すなわち、本発明は、設備12の監視のための固定型センサ13の他に、複数のユーザーが携行する持ち運び型ユーザー端末16をセンサネットワークに接続して、より様々な情報を取得することができ、これをデータ化して様々な応用をすることができるという特徴がある。
【0036】
図1には、産業施設部10の実現可能な別の例を一緒に示している。
【0037】
左側の産業施設部10は、IEDを適用した例であり、右側の産業施設部10は、データ収集及び制御装置15が適用された例を示す。
【0038】
前記IEDは、AIベースの監視診断モジュールを組み込んだプロテクション(Protection IED)であることとする。
【0039】
前記設備12は、受配電盤11から電力を供給されて動作し、供給される電力データは、IDEを介してクラウドサーバ20に与えられる。なお、設備12のステータスを検出するセンサ13及びユーザー端末16の検出データもまた、クラウドサーバ20に与えられる。
【0040】
各機械設備に電力料金の低減のための新規な弁などのアクチュエータを取り付けて電力の消費を減らすことができる。例えば、圧縮空気設備及び分岐される多くの出力配管に弁を取り付けて、需要のない圧縮空気工程の弁を閉じて圧縮空気設備の消費電力を下げることができる。
【0041】
また、既存の10年ものの分散制御システム14にデータをつないで、設備チームにおいて管理できるようにしてもよい。このとき、受け入れられない監視/制御カテゴリを、モバイル及びPCなどのユーザー端末16を用いて手軽にアクセス可能なものにしてもよい。
【0042】
右側の産業施設部10の例は、受配電盤11の施設の取り替えを行い難かったり、施設の取り替えを行う必要がなかったりする場合、AIベースの監視診断モジュールを組み込んだデータ収集及び制御装置(DAU)15を付設して用いてもよい。
【0043】
このときのデータ収集及び制御装置15は、上述したIDEと同じ役割を果たすものであると理解可能である。
【0044】
このように、産業施設部10において取り集められたデータは、クラウドサーバ20に送られ、クラウドサーバ20は、データを保存し、様々な狙いのマシンラーニングを行う。
【0045】
このとき、マシンラーニングの狙いとしては、電力の管理のための学習、施設の管理のための学習が挙げられる。なお、ユーザー端末16を介して取り集められた写真、画像、音響を用いて、設備12の異常有無を確認する学習を行ってもよい。
【0046】
このように、クラウドサーバ20に取り集められたビッグデータを用いて、様々な狙いの処理を行うことができる。
【0047】
上述した産業施設部10のIEDまたはデータ収集及び制御装置15に組み込まれたAIベースの監視診断モジュールは、救急-瞬時事故の予測及び保護を行うことを狙っており、短期データを用いて速やかな判断を行う。
【0048】
これに対し、クラウドサーバ20におけるマシンラーニングは、ビッグデータを用いて産業施設部10に各種の情報を与えるためのものであり、低いレベルの資産管理(設備、電力管理)及び中長期の電力料金の低減のための情報を与える。
【0049】
また、クラウドサーバ20は、機械設備業者端末30とセンサ及びIoT企業端末40に情報を与えることを目指す高いレベルの資産管理情報及び様々な類似設備の相関性の分析結果を与えるものであってもよい。
【0050】
前記クラウドサーバ20を介して与えられる情報を用いて、機械設備業者端末30とセンサ及びIoT企業端末40は、特定の産業施設部10の施設またはセンサの異常を感知し、これに対応してメンテナンス及び新規なサービスを提供できるようにする。
【0051】
特に、ユーザー端末16において撮影された写真、画像、音響のビッグデータを用いて、マシンラーニングを用いて設備12の故障または異常有無を診断した後、診断結果を機械設備業者端末30とセンサ及びIoT企業端末40に与えて設備の異常に対してより正確かつ迅速な措置が取れるようにする。
【0052】
また、設備やセンサに対して更新されたフォームウェア等ソフトウェアをクラウドサーバ20を介して与えてもよい。
【0053】
このとき、与えられたソフトウェアは、分散制御システム14を介して各設備12やセンサ13、受配電盤11に直列通信により与えられて、ソフトウェアの更新が自動的に行われることが可能になる。
【0054】
図2は、クラウドサーバ20のビッグデータ処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0055】
図2を参照すると、本発明は、センサ13とユーザー端末16とを連動させてセンサネットワークを築き、センサ13とユーザー端末16から与えられる検出データを入力される(S10)。
【0056】
クラウドサーバ20は、センサ13とユーザー端末16のデータを保存して、広範なビッグデータを得ることができ、これを用いて、上述した設備12に対する種々の診断を行うことができる。
【0057】
クラウドサーバ20に取り集められたデータとしては、電圧、電流、温度などの設備12において検出されるデータと、設備12の特定の部品の写真、動画が挙げられ、さらに、特定の位置において録音された音響データが挙げられる。
【0058】
クラウドサーバ20は、取り集められたデータと設備12とをマッチングする(S20)。
【0059】
電圧、電流、温度など設備12においてセンサ13により検出されたデータは、各センサ13の番号により特定の設備12とのマッチングが行われる。
【0060】
これに対し、ユーザー端末16を介して取り集められた設備12の特定の部品の写真、動画、音響は、どのような設備12の写真、画像または音響であるか区別がつかない。
【0061】
このために、クラウドサーバ20は、各設備12の位置情報を保存し、ユーザー端末16において取り集められたデータの位置情報を用いて、データと設備とをマッチングする。
【0062】
このようにしてマッチングが行われると、クラウドサーバ20は、各設備12に関するデータをマシンラーニングモデルを用いて学習し、学習結果である診断を行う(S30)。
【0063】
学習診断の結果は、センサ13において検出された電圧、電流検出値の学習結果である電気的な診断を含んでいてもよい。なお、温度、湿度等環境情報を用いた環境診断を含んでいてもよい。
【0064】
また、ユーザー端末16を介して検出された写真、画像を用いて、設備12を構成する部品の物理的な診断を行うことができ、しかも、音響の分析及び学習を用いた音響の診断を行うことにより、部品及び故障の診断を行うことができる。
【0065】
このように、本発明は、設備からより様々なデータを取得して、広範なビッグデータを構成し、設備に対する総合的な診断を行うことができる。
【0066】
図3は、本発明の具体的な実施形態の手順図である。
【0067】
以上の説明において、センサ13は、設備12の温度を検出するものであると説明され、このとき、温度を検出するセンサは、設備12の内部部品の温度を検出する内部温度センサと、設備12の外部の温度を検出する外部温度センサと、を備えていてもよい。以下において説明する実施形態は、以上において説明したステップS30の具体例であることとする。
【0068】
まず、クラウドサーバ20は、センサ13のうち、多数の内部温度センサを用いて、設備12を構成するコンポーネントの温度を検出するステップ(S100)と、外部温度センサを用いて、設備12の外側の外気温度を検出するステップ(S200)と、クラウドサーバ20において、前記コンポーネントの温度と外気温度を用いてパターン化する温度パターン算出ステップ(S300)と、前記温度パターンを時系列的に並べて各コンポーネントに対する期間ごとの温度パターンの変化を確認するステップ(S400)と、温度パターンの経時変化の推移を確認して火災の発生可能性をモニターリングするステップ(S500)と、クラウドサーバ20に保存された各コンポーネントの種類と機能の情報と前記パターン化された各コンポーネントの温度パターンを用いて経年劣化の度合いを推定するステップ(S600)と、を含む方法を行って、各設備12のコンポーネントに対する残存寿命を予測することができる。
【0069】
内部温度センサは、設置に際してそれぞれが検出するコンポーネントの種類を確認して、内部温度センサとコンポーネントの種類を1:1マッチングして、マッチング情報をクラウドサーバ20に保存することができる。
【0070】
また、外部温度センサは、設備12の外部温度を検出する。このとき、外部温度は、設備12の外部を意味するものであって、必ずしも屋外の温度を意味するとは限らない。すなわち、設備が屋内に配置された場合、屋内の温度であってもよい。
【0071】
ステップS100においては、設備の内部コンポーネントの温度を検出し、ステップS200においては、設備の外部温度を検出する。
【0072】
ステップS100とステップS200のそれぞれの温度検出結果は、クラウドサーバ20に送信される。クラウドサーバ20は、ステップS300のように、同じ時間に検出されたステップS100の各コンポーネントの温度検出結果とステップS200の外気温度検出結果との差を用いて温度パターンを求める。
【0073】
ここで、各コンポーネントの温度検出結果には差が出ることがあり、同じ時点において外気温度は一つの値として測定されるので、外気温度に対する各コンポーネントの温度の特徴を求めることができる。
【0074】
本発明において用いる温度のパターン化は、コンポーネントの温度検出結果から外気温度を差し引いて行うことができ、別の例を挙げると、コンポーネントの温度検出結果を外気温度で割って相対的な比を検出することもできる。
【0075】
このように、温度パターンは、温度を用いた処理に際して外気温度の影響を排除した値を形成するためのものであって、外気の影響を除いた実際の設備の運転に際して生じる各コンポーネントの温度の変化を確認することができる。
【0076】
特に、温度パターンは、周期的に取り集められるようにしてもよい。温度パターンの収集周期は、任意に設定可能である。
【0077】
このようにして得られた温度パターンは、クラウドサーバ20においてステップS400のように時系列的に並べられて、各コンポーネントに対する温度パターンの変化を検出することができる。
【0078】
次いで、ステップS500においては、マシンラーニングモデルを用いて温度パターンの変化の推移を検出しかつ学習して火災の発生可能性を予測する。
【0079】
より具体的に、図4は、ステップS500の詳細フローチャートである。
【0080】
図4を参照すると、温度パターンの変化の推移が設定された勾配以上に変化する区間が生じたか否かを判断(S510)し、設定された勾配以上の変化区間があれば、現在の温度パターンの値が火災リスク設定温度以上であるか否かを確認する(S520)。
【0081】
前記ステップS520における確認の結果、火災リスク設定温度以上であれば、火災リスク警報を発令する(S540)。
【0082】
火災リスク設定温度未満であれば、現在、設定勾配以上の変化区間が設定回数以上生じたか否かを確認する(S530)。
【0083】
設定回数以上生じなかった場合には、再びステップS510を行い、設定回数以上生じた場合には経年劣化の推定を行う(S600)。
【0084】
このような過程を行うことで、外気温度の影響を排除したコンポーネントの温度と温度の変化の推移を確認して、より正確なコンポーネントの温度を検出し、それによる火災リスクをモニターリングすることができる。
【0085】
図5は、経年劣化推定ステップの詳細フローチャートである。
【0086】
図5を参照すると、経年劣化推定ステップ(S600)は、クラウドサーバ20に保存された当該コンポーネントの材料の特性を確認するステップ(S610)と、当該コンポーネントが可動部品であるか、あるいは、固定部品であるかを確認するコンポーネント種類確認ステップ(S620)と、確認された材料の特性とコンポーネントの種類の特性に応じて、温度パターンの大きさ及び変化の推移をマシンラーニングモデルを用いて学習して、当該コンポーネントの劣化度を推定するステップ(S630)と、を含む。
【0087】
設備12のコンポーネントは、高温下で長時間にわたって動作するものであって、高温下で長時間にわたって晒される場合、材料に応じて固有元素の欠乏層が形成されたり、粒界への不純物の析出の度合いに差が出てしまったりする虞がある。
【0088】
クラウドサーバ20には、材料に応じた固有元素の欠乏層の形成度と、不純物の析出の度合いに関する値と、が保存されており、ステップS610においては、このような材料の特性を確認して、内部構造の変化によるステータスを確認することができる。
【0089】
また、S620ステップにおいては、コンポーネントの種類を確認する。このとき、コンポーネントの種類は、コンポーネントの機械的な性質を確認するためのものであり、コンポーネントが機械的可動部分のあるものであるときには、機械的可動に伴うストレスが繰り返し生じて、経年劣化に伴う期待寿命が、可動部分がなく、固設されたコンポーネントに比べてさらに短いという特徴がある。
【0090】
このように、コンポーネントの機械的可動部分の有無を確認して、経年劣化を推定して、より正確な経年劣化の推定を行うことができる。
【0091】
次いで、クラウドサーバ20は、以上のようにして求められた温度パターンの大きさと温度パターンの増加の推移を用いて、当該コンポーネントの経年劣化を推定する。すなわち、コンポーネントの寿命を予測し、取り替え時期を推定することができる。
【0092】
具体的な経年劣化の推定は、順次に行われることができる。
【0093】
まず、温度パターンの大きさを確認して、コンポーネントの材質に応じた寿命を予測する(第1の推定値)。
【0094】
次いで、コンポーネントの種類に応じて、前記求められた第1の推定値を補正して第2の推定値を求める。
【0095】
このとき、第2の推定値を補正するための補正値は、可動部分がなく、固定されたコンポーネントの場合には0を、可動部分があるコンポーネントの場合には-Nの値を与えることができる。ここで、Nは、任意の数であって、第1の推定値が示す残存寿命を可動部分があるコンポーネントの場合にさらに短縮する補正を行って第2の推定値を求めることになる。
【0096】
次いで、温度パターンの増加の推移を用いて第2の推定値を補正して、最終的な寿命予測結果である第3の推定値を推定する。
【0097】
このとき、第3の推定値を推定するための補正値は、-X/nの式により求めることができる。
【0098】
Xは、当該コンポーネントの温度パターンの推移の勾配であり、nは、定数であることとする。
【0099】
すなわち、勾配が大きければ大きいほど、補正値の絶対値はさらに大きくなり、温度パターンの変化の推移が急俊に変化すればするほど、残存寿命の推定値がさらに短くなるように補正される。
【0100】
このようにして推定された経年劣化の度合いは、表示部(図示せず)などに表示されてもよく、通信部(図示せず)を介して管理者が認識できるように処理してもよい。
【0101】
このように、本発明は、外気温度を除いた設備の内部コンポーネントの温度を用いて、火災リスクのモニターリングを行うことができるとともに、コンポーネントの温度及びコンポーネントの温度の変化の推移を用いて各コンポーネントの残存寿命を推定することができる。
【0102】
以上、本発明に係る実施形態が図示されかつ説明されたが、これは、単なる例示的なものに過ぎず、当該分野において通常の知識を有する者であれば、これより様々な変形及び均等な範囲の実施形態が採用可能であるということが理解できる筈である。よって、本発明の真の技術的な保護範囲は、次の特許請求の範囲によって定められるべきである。
【符号の説明】
【0103】
10:産業施設部
20:クラウドサーバ
30:機械設備業者端末
40:IoT企業端末
【要約】
【課題】 ビッグデータを用いたエッジコンピューティング及びクラウドベースの工場エネルギー管理システム(FEMS)を提供すること。
【解決手段】 工場または産業設備、建物を備えるとともに、センサネットワークを築いて、設備のステータスを確認可能なデータを与える多数の産業施設部と、前記産業施設部と通信しながら、電力管理データ、施設管理データを取り集めてビッグデータを実現し、マシンラーニングをして、その結果を与えるクラウドサーバと、前記クラウドサーバの情報に基づいて、特定の産業施設部の設備異常を検出してメンテナンスを行う機械設備業者端末と、前記クラウドサーバの情報に基づいて、前記産業施設部において用いるセンサ及びモノのインターネット(IoT)プラットフォームの異常有無を検出し、メンテナンスを行うセンサ及びIoT企業端末と、を備えるビッグデータを用いたエッジコンピューティング及びクラウドベースの工場エネルギー管理システム(FEMS)。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5