(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】茶製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23F 3/14 20060101AFI20240403BHJP
A23L 31/10 20160101ALI20240403BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20240403BHJP
A23F 3/16 20060101ALI20240403BHJP
A23L 2/42 20060101ALI20240403BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20240403BHJP
【FI】
A23F3/14
A23L31/10
A23L2/52
A23F3/16
A23L2/00 N
A23L2/38 G
(21)【出願番号】P 2023071424
(22)【出願日】2023-04-25
【審査請求日】2023-05-01
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】523147233
【氏名又は名称】有限会社アロエランド
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮城 尚史
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/027283(WO,A1)
【文献】特開2022-118242(JP,A)
【文献】特開2023-034770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F、A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶粉末と水とを混合して原料茶液を得る茶液分散工程と、
前記茶粉末を粉砕する茶粉末粉砕工程と、
前記茶粉末とミネラル含有酵母とを混合する酵母混合工程と、
を備え、
前記茶粉末粉砕工程は、前記原料茶液中で前記茶粉末を粉砕することを含み、
前記茶粉末粉砕工程で得られる茶粉末の平均粒子径が2~20μmであり、
前記酵母混合工程において、前記原料茶液の中心温度を110℃以上に加熱することを含
み、
前記茶液分散工程、前記茶末粉砕工程、及び前記酵母混合工程の後に、さらに110℃以上の温度で10分間以上加熱する加熱工程を備え、茶製品としてペースト茶を製造する、茶製品の製造方法。
【請求項2】
前記酵母混合工程において、前記原料茶液を加熱する際に圧力をかけることにより、前記原料茶液の中心温度を110℃以上に加熱する、請求項1に記載の茶製品の製造方法。
【請求項3】
前記茶粉末粉砕工程を前記酵母混合工程の前に行い、
前記酵母混合工程において茶製品のLab値のa値が-6以下となるように加熱することを含む、請求項2に記載の茶製品の製造方法。
【請求項4】
前記酵母混合工程は、前記茶粉末と前記ミネラル含有酵母を、乾燥質量換算で、質量比8:1~32:1で混合することを含み、
前記茶粉末粉砕工程で得られる茶粉末のD90値が10~40μmである、請求項3に記載の茶製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑色を復元又は維持する茶製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、緑茶はその鮮やかな緑色が人目を引き、様々な飲料や食品へ風味付けや色付けを目的として利用されてきた。緑茶が持つ緑色は、緑茶に含まれるクロロフィルの緑色である。緑茶が熱や光の影響を受けると、クロロフィルからマグネシウムが外れ退色することが知られている。
特許文献1には、植物を酵母を含む酵母液に接触させることで、植物の緑色を復元しあるいは緑色に保持する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記先行技術があるところ、本発明は、緑色を復元又は維持する茶製品の新規な製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、茶粉末と水とを混合して原料茶液を得る茶液分散工程と、前記茶粉末を粉砕する茶粉末粉砕工程と、前記茶粉末とミネラル含有酵母とを混合する酵母混合工程と、を備える茶製品の製造方法により、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、下記の[1]~[7]を提供する。
[1]茶粉末と水とを混合して原料茶液を得る茶液分散工程と、前記茶粉末を粉砕する茶粉末粉砕工程と、前記茶粉末とミネラル含有酵母とを混合する酵母混合工程と、を備える、茶製品の製造方法。
[2]前記茶粉末粉砕工程は、前記原料茶液中で前記茶粉末を粉砕することを含む、[1]に記載の茶製品の製造方法。
[3]前記茶粉末粉砕工程を前記酵母混合工程の前に行う、[1]又は[2]に記載の茶製品の製造方法。
[4]前記酵母混合工程は、前記茶粉末と前記ミネラル含有酵母を、乾燥質量換算で、質量比8:1~32:1で混合することを含む、[1]~[3]の何れかに記載の茶製品の製造方法。
[5]前記茶粉末粉砕工程で得られる茶粉末の平均粒子径が2~20μmである、[1]~[4]の何れかに記載の茶製品の製造方法。
[6]前記茶粉末粉砕工程で得られる茶粉末のD90値が10~40μmである、[1]~[5]の何れかに記載の茶製品の製造方法。
[7]前記茶製品は、茶飲料、ペースト茶、粉末茶及びこれらを原料とする飲食品からなる群より選択される、[1]~[6]の何れかに記載の茶製品の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、緑色を復元又は維持する茶製品の新規な製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、沈殿が起きにくい茶製品の新規な製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の製造方法の一実施形態を示す図である。
【
図2】本発明の製造方法により、茶飲料を製造する際の一実施形態を示す図である。
【
図3】本発明の製造方法により、ペースト茶を製造する際の一実施形態を示す図である。
【
図4】本発明の製造方法により、粉末茶を製造する際の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、A(数値)~B(数値)は、A以上B以下を意味する。また、数値範囲の記載は例示であって、各範囲の上限と下限並びに実施例の数値とを適宜組み合わせた範囲も好ましく使用することができる。なお、本発明において、特別な場合を除き、%は質量%のことを意味する。なお、本発明において、積算%粒子径は体積基準である。
【0010】
本発明の茶製品に用いる茶粉末は、茶の木(Camellia sinensis)を原料として得た粉末を意味し、例えば、茶の木の葉を粉砕、破砕又は磨砕することにより得られる。
【0011】
本発明の茶製品に用いる茶は、好ましくは、茶の若葉、緑茶、碾茶、抹茶、玉露の内、少なくとも一つから選択され、さらに好ましくは、抹茶である。
【0012】
本発明の茶製品に用いる水は、軟水、中間水、硬水のいずれであってもよい。軟水とは、硬度20°以上の水をいい、中間水とは、硬度10°以上20°未満の水をいい、硬水とは、硬度10°未満の水をいう。水は、好ましくは軟水又は中間水であり、より好ましくは軟水である。
【0013】
本発明の茶製品に用いる酵母は、Zn、Cu、Fe、Mg、Se、Mo、Cr、又はMn等の金属を含有するミネラル含有酵母である。
前記ミネラル含有酵母は、好ましくはZn、Cu、Fe又はMg、さらに好ましくはZn及び/又はCuを担持する。
【0014】
前記ミネラル含有酵母全体に対する金属含有率は、1%以上であることが好ましく、より好ましくは2%以上、さらに好ましくは3%以上、さらにより好ましくは4%以上である。
また、前記ミネラル含有酵母全体に対する金属含有率は、20%以下であることが好ましく、より好ましくは18%以下、さらに好ましくは16%以下、さらにより好ましくは14%以下である。
【0015】
前記ミネラル含有酵母が担持する金属がZnの場合、前記ミネラル含有酵母全体に対するZn含有率は、4%以上であることが好ましく、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは6%以上、さらにより好ましくは7%以上である。
また、前記ミネラル含有酵母が担持する金属がZnの場合、前記ミネラル含有酵母全体に対するZn含有率は、20%以下であることが好ましく、より好ましくは18%以下、さらに好ましくは16%以下、さらにより好ましくは14%以下である。
【0016】
前記ミネラル含有酵母が担持する金属がZnの場合、前記ミネラル含有酵母全体に対するZn含有率は、4~20%であることが好ましく、より好ましくは5~18%、さらに好ましくは6~16%、さらにより好ましくは7~14%である。
【0017】
前記ミネラル含有酵母が担持する金属がCuの場合、前記ミネラル含有酵母全体に対するCu含有率は、1%以上であることが好ましく、より好ましくは2%以上、さらに好ましくは3%以上、さらにより好ましくは4%以上である。
また、前記ミネラル含有酵母が担持する金属がCuの場合、前記ミネラル含有酵母全体に対するCu含有率は、14%以下であることが好ましく、より好ましくは12%以下、さらに好ましくは10%以下、さらにより好ましくは8%以下である。
【0018】
前記ミネラル含有酵母が担持する金属がCuの場合、前記ミネラル含有酵母全体に対するCu含有率は、1~14%であることが好ましく、より好ましくは2~12%、さらに好ましくは3~10%、さらにより好ましくは4~8%である。
【0019】
前記ミネラル含有酵母は、酵母に金属を担持させることができれば、その製造・入手方法に特に制限はないが、例えば、金属を添加した培地で培養し、酵素処理して不活性化し、洗浄後、不溶性成分を除去し、乾燥することにより得られる。
【0020】
以下、本発明の茶製品の製造方法について詳細に説明を加える。
【0021】
(1)茶液分散工程
本発明の製造方法は、茶粉末と水とを混合して原料茶液を得る茶液分散工程を備える。
前記茶液分散工程は、茶粉末を水に浸漬することができる態様であれば特に限定されない。
【0022】
前記原料茶液において、水の量が、茶粉末乾燥質量換算1質量部に対し、10質量部以上であることが好ましく、より好ましくは13質量部以上、さらに好ましくは15質量部以上である。
また、前記原料茶液において、水の量が、茶粉末乾燥質量換算1質量部に対し、100質量部以下であることが好ましく、より好ましくは80質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下である。
【0023】
前記原料茶液において、茶粉末と水の質量比は、茶粉末の乾燥質量換算で、好ましくは1:10~1:100、より好ましくは1:13~1:80、さらに好ましくは1:15~1:50である。
【0024】
前記茶液分散工程において、水に茶粉末を分散させる他、通常の茶製品に用いられる添加剤、例えば、酸化防止剤、乳化剤、保存料、pH調整剤、香料、調味料、酸味料、品質安定剤等を単独、あるいは併用して添加することができる。
本発明において、原料茶液の酸化を防ぐために、アスコルビン酸(ビタミンC)やアスコルビン酸ナトリウムなどの酸化防止剤を添加することが好ましい。
【0025】
前記水は、ミネラル含有酵母を含有する水であってもよく、ミネラル含有酵母を含有する水を前処理した水であってもよい。
【0026】
(2)茶粉末粉砕工程
本発明の製造方法は、茶粉末を粉砕する茶粉末粉砕工程を備える。
前記茶粉末粉砕工程において、茶粉末を粉砕するに当たり、使用する装置、方法は、特に限定されず、通常の装置、方法を使用することができる。
前記茶粉末粉砕工程は、前記原料茶液中で茶粉末を粉砕することが好ましく、例えば、ミキサーやホモジナイザー等を使用して茶粉末を粉砕することができる。
【0027】
前記茶粉末粉砕工程において粉砕された茶粉末の平均粒子径は、2μm以上であることが好ましく、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは4μm以上、さらにより好ましくは5μm以上である。
また、前記茶粉末粉砕工程において粉砕された茶粉末の平均粒子径は、20μm以下であることが好ましく、より好ましくは18μm以下、さらに好ましくは16μm以下、さらにより好ましくは14μm以下である。
なお、本発明の茶粉末のサイズに関し、平均粒子径というときは、特別な場合を除き、レーザ回析式粒度分布測定装置により測定されたメジアン径(50積算%粒子径、D50値)をいう。
上記構成とすることで、効率よく茶製品の緑色を復元又は維持させることができる。また、茶粉末の分散能が向上し、沈殿が生じにくくなる。
【0028】
前記茶粉末粉砕工程において粉砕された茶粉末の平均粒子径は、2~20μmであることが好ましく、より好ましくは3~18μm、さらに好ましくは4~16μm、さらにより好ましくは5~14μmである。
上記構成とすることで、効率よく茶製品の緑色を復元又は維持させることができる。また、茶粉末の分散能が向上し、沈殿が生じにくくなる。
【0029】
前記茶粉末粉砕工程において粉砕された茶粉末の10積算%粒子径(D10値)は、1μm以上であることが好ましく、より好ましくは2μm以上である。
また、前記茶粉末粉砕工程において粉砕された茶粉末の10積算%粒子径(D10値)は、10μm以下であることが好ましく、より好ましくは9μm以下である。
上記構成とすることで、効率よく茶製品の緑色を復元又は維持させることができる。また、茶粉末の分散能が向上し、沈殿が生じにくくなる。
【0030】
前記茶粉末粉砕工程において粉砕された茶粉末の10積算%粒子径(D10値)は、1~10μmであることが好ましく、より好ましくは2~9μmである。
上記構成とすることで、効率よく茶製品の緑色を復元又は維持させることができる。また、茶粉末の分散能が向上し、沈殿が生じにくくなる。
【0031】
前記茶粉末粉砕工程において粉砕された茶粉末の90積算%粒子径(D90値)は、10μm以上であることが好ましく、より好ましくは15μm以上である。
また、前記茶粉末粉砕工程において粉砕された茶粉末の90積算%粒子径(D90値)は、80μm以下であることが好ましく、より好ましくは70μm以下である。
上記構成とすることで、効率よく茶製品の緑色を復元又は維持させることができる。また、茶粉末の分散能が向上し、沈殿が生じにくくなる。
【0032】
前記茶粉末粉砕工程において粉砕された茶粉末の90積算%粒子径(D90値)は、10~80μmであることが好ましく、より好ましくは10~70μm、さらに好ましくは15~70μmである。
上記構成とすることで、効率よく茶製品の緑色を復元又は維持させることができる。また、茶粉末の分散能が向上し、沈殿が生じにくくなる。
【0033】
上記の茶粉末の粒子径は、特に限定されないが、例えば、後述する実施例で示すように、レーザ回析式粒度分布測定装置(LA-950V2、(株)堀場製作所製)により測定して求めることができる(体積基準)。
【0034】
(3)酵母混合工程
本発明の製造方法は、茶粉末とミネラル含有酵母とを混合する酵母混合工程を備える。
前記酵母混合工程において、金属イオンの作用により、茶粉末の緑色が復元又は維持される。
【0035】
前記酵母混合工程において、茶粉末と混合するミネラル含有酵母は、1種類の金属を含有するミネラル含有酵母であってもよく、複数種類の金属を含有するミネラル含有酵母であってもよい。
本発明において、Znを含有するミネラル含有酵母及び/又はCuを含有するミネラル含有酵母を用いることが好ましい。
【0036】
前記酵母混合工程において、茶粉末とミネラル含有酵母とを混合するに当たり、使用する装置、方法は、特に限定されず、通常の装置、方法を使用することができる。例えば、撹拌機を用いて、茶粉末を含む水にミネラル含有酵母を混合する方法や、ミネラル含有酵母を含む水に茶粉末を混合する方法を用いることにより、茶粉末とミネラル含有酵母とを混合することができる。
【0037】
前記酵母混合工程において、茶粉末の量が、ミネラル含有酵母1質量部に対し、乾燥質量換算で、8質量部以上であることが好ましく、より好ましくは12質量部以上、さらに好ましくは16質量部以上である。
また、前記酵母混合工程において、茶粉末の量が、32質量部以下であることが好ましく、より好ましくは28質量部以下、さらに好ましくは24質量部以下である。
上記構成とすることで、効率よく茶製品の緑色を復元又は維持させることができる。
【0038】
前記酵母混合工程において、茶粉末とミネラル含有酵母との混合比率は、乾燥質量換算で、質量比8:1~32:1であることが好ましく、より好ましくは12:1~28:1、さらに好ましくは16:1~24:1である。
上記構成とすることで、効率よく茶製品の緑色を復元又は維持させることができる。
【0039】
前記酵母混合工程において、前記原料茶液の中心温度を110℃以上に加熱することが好ましく、115℃以上に加熱することがより好ましく、120℃以上に加熱することがさらに好ましい。
上記温度で加熱することにより、効率よく茶製品の緑色を復元又は維持させることができる。
【0040】
また、前記酵母混合工程において、前記原料茶液の中心温度を140℃以下に加熱することが好ましく、135℃以下に加熱することがより好ましい。
前記酵母混合工程において、前記原料茶液の中心温度を120~140℃に加熱する場合、茶製品は時間をかけずに緑色を復元又は維持する。
【0041】
前記酵母混合工程において、前記原料茶液を加熱する際に圧力をかけることにより、上記温度とすることができる。加圧方法としては、既存の加圧容器を用いて、0.12MPa以上0.40MPa以下の圧力をかけることが好ましい。
【0042】
前記酵母混合工程において、前記原料茶液を45分間以下加熱することが好ましく、より好ましくは30分間以下、さらに好ましくは10分間以下であり、さらにより好ましくは5分間以下である。
上記時間加熱することにより、少ない熱エネルギーで効率よく茶製品の緑色を復元又は維持させることができる。
【0043】
本発明の製造方法は、茶液分散工程、茶粉末粉砕工程、酵母混合工程の順で茶製品を製造してもよく、茶液分散工程、酵母混合工程、茶粉末粉砕工程の順で茶製品を製造してもよい。また、茶液分散工程と酵母混合工程を同時に行う、すなわち、ミネラル含有酵母を含む水に、茶粉末を分散させてもよい。好ましくは、
図1に示す通り、茶液分散工程、茶粉末粉砕工程、酵母混合工程の順で茶製品を製造する。
本発明の製造方法により、茶製品の緑色を復元又は維持させることができる。
【0044】
本発明の製造方法において、茶液分散工程、茶粉末粉砕工程、酵母混合工程の順で茶製品を製造する場合、茶粉末粉砕工程の後に沈殿ろ過を行い、沈殿ろ過後の上澄み液にミネラル含有酵母を添加することで、茶粉末とミネラル含有酵母とを混合することが好ましい。
上記構成とすることで、少ない酵母量で効率よく茶製品の緑色を復元又は維持させることができる。
【0045】
本発明の茶製品としては、例えば、茶飲料、ペースト茶、粉末茶、及びこれらを原材料とした飲食品が挙げられる。
本発明の茶製品は、ビン、缶、ペットボトル、カートン、パウチ及び小袋等の容器に包装されていることが好ましい。
【0046】
本発明の茶製品は、衛生確保のために加熱殺菌されることが好ましい。
【0047】
以下、本発明の茶製品として茶飲料、ペースト茶、及び粉末茶を製造する場合について、さらに説明を加える。
【0048】
<茶飲料>
本発明の茶製品として茶飲料を製造する場合、
図2に示す通り、茶液分散工程、茶粉末粉砕工程、及び酵母混合工程の後に、ろ過工程を備えることが好ましい。
前記ろ過工程において、そのろ過方法は特に限定されず、沈殿ろ過する方法や、フィルターろ過する方法が挙げられる。
【0049】
前記ろ過工程後の茶飲料に含まれる茶粉末の平均粒子径は、3μm以上であることが好ましく、より好ましくは4μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。
また、前記ろ過工程後の茶飲料に含まれる茶粉末の平均粒子径は、15μm以下であることが好ましく、より好ましくは14μm以下、さらに好ましくは13μm以下、さらにより好ましくは12μm以下である。
上記構成とすることで、より沈殿が起きにくい茶飲料とすることができる。
【0050】
前記ろ過工程後の茶飲料に含まれる茶粉末の平均粒子径は、3~15μmであることが好ましく、より好ましくは3~14μm、さらに好ましくは4~14μm、さらに好ましくは4~13μm、さらにより好ましくは5~12μmである。
上記構成とすることで、より沈殿が起きにくい茶飲料とすることができる。
【0051】
前記ろ過工程後の茶飲料に含まれる茶粉末の10積算%粒子径(D10値)は、1μm以上であることが好ましく、より好ましくは2μm以上である。
また、前記ろ過工程後の茶飲料に含まれる茶粉末の10積算%粒子径(D10値)は、8μm以下であることが好ましく、より好ましくは7μm以下である。
上記構成とすることで、より沈殿が起きにくい茶飲料とすることができる。
【0052】
前記ろ過工程後の茶飲料に含まれる茶粉末の10積算%粒子径(D10値)は、1~8μmであることが好ましく、より好ましくは1~7μm、さらに好ましくは2~7μmでである。
上記構成とすることで、より沈殿が起きにくい茶飲料とすることができる。
【0053】
前記ろ過工程後の茶飲料に含まれる茶粉末の90積算%粒子径(D90値)は、10μm以上であることが好ましく、より好ましくは15μm以上である。
また、前記ろ過工程後の茶飲料に含まれる茶粉末の90積算%粒子径(D90値)は、40μm以下であることが好ましく、より好ましくは30μm以下である。
上記構成とすることで、より沈殿が起きにくい茶飲料とすることができる。
【0054】
前記ろ過工程後の茶飲料に含まれる茶粉末の90積算%粒子径(D90値)は、10~40μmであることが好ましく、より好ましくは15~30μmである。
上記構成とすることで、より沈殿が起きにくい茶飲料とすることができる。
【0055】
本発明の茶製品として茶飲料を製造する場合、茶飲料に含まれる固形分は、茶飲料全体に対して3.0%以下であることが好ましく、2.5%以下であることがより好ましい。
また、本発明の茶製品として茶飲料を製造する場合、茶飲料に含まれる固形分は、1.0%以上であることが好ましく、より好ましくは1.5%以上である。
上記構成とすることで、より沈殿が起きにくい茶飲料とすることができる。
【0056】
<ペースト茶>
本発明の茶製品としてペースト茶を製造する場合、
図3に示す通り、茶液分散工程、茶粉末粉砕工程、及び酵母混合工程の後に、さらに110℃以上の温度で10分間以上加熱する加熱工程を備えることにより流動性のある半固形状(ペースト状)のペースト茶を得ることが好ましく、20分間以上加熱することがより好ましい。また、45分間以下加熱することが好ましく、30分間以下加熱することがより好ましい。
【0057】
また、本発明の茶製品としてペースト茶を製造する場合、茶液分散工程、茶粉末粉砕工程、及び酵母混合工程の後に、遠心分離機を用いて、固液分離をすることで、ペースト茶を製造することもできる。
【0058】
<粉末茶>
本発明の茶製品として粉末茶を製造する場合、
図4に示す通り、茶液分散工程、茶粉末粉砕工程、及び酵母混合工程の後に、通常の乾燥方法を用いて乾燥させる乾燥工程を備えることで、粉末茶を製造することができる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【0060】
<茶粉末の平均粒子径の測定>
レーザ回析式粒度分布測定装置(LA-950V2、(株)堀場製作所製)によって、本発明の茶粉末粉砕工程で得られた茶粉末の平均粒子径(メジアン径、50積算%粒子径、D50)を測定した。
また、同時に10積算%粒子径(D10)及び90積算%粒子径(D90)を測定した。
茶粉末の粒子径の測定には、茶粉末を水に分散させ、ミキサー(カッターミキサー25S型、(株)愛工舎製作所製)により茶粉末を粉砕した茶液(サンプルNo.1~3)を用いた。
さらに、上記手順に加えて沈殿ろ過を行った茶液(サンプルNo.4)に含まれる茶粉末の粒子径を測定した。
この際、屈折率1.600-0.000iにて測定した。結果を以下に示す。
【0061】
<茶粉末の平均粒子径の測定_結果>
サンプルNo.1:
D10値 7.921μm
D50値 15.21μm
D90値 54.39μm
サンプルNo.2:
D10値 8.083μm
D50値 18.24μm
D90値 81.95μm
サンプルNo.3:
D10値 7.973μm
D50値 18.20μm
D90値 80.48μm
サンプルNo.4:
D10値 5.447μm
D50値 9.821μm
D90値 18.39μm
【0062】
上記の結果より、本発明の茶粉末の平均粒子径は、2~20μmであることが分かる。
また、1のサンプルにおいて固形分量を測定したところ、サンプル全体に対する固形分量は2.08%であった。
【0063】
また、サンプルNo.4の茶液は、沈殿がほとんど生じていなかった。したがって、D10値が1~7μmである茶製品は、より沈殿が起きにくいことが分かる。
また、D50値(平均粒子径)が3~15μmである茶製品は、より沈殿が起きにくいことが分かる。
また、D90値が10~40μmである茶製品は、より沈殿が起きにくいことが分かる。
【0064】
<茶製品(酵母含有茶液)の製造>
[実施例1]
下記に示す配合で酵母含有茶液を製した。
まず、水、茶粉末、及びビタミンCを混合し原料茶液を製した。次に、原料茶液を15分間ミキサーにかけ、茶粉末を粉砕した。そして、ミキシング後の原料茶液に、ミネラル含有酵母及びビタミンCを混合し、125℃で1分間加熱した。その後、沈殿ろ過を行い、上澄み液のみを採取し、酵母含有茶液を製した。
なお、ミネラル含有酵母として、ミネラル含有酵母全体に対してZnを10%担持する酵母と、Cuを5%担持する酵母とを合わせて用いた。
【0065】
<配合:原料茶液>
水 1000g
茶粉末 50g
ビタミンC 1g
【0066】
<配合:酵母含有茶液(沈殿ろ過前)>
原料茶液 500g
ミネラル含有酵母 0.4g
ビタミンC 1g
【0067】
[比較例1]
実施例1において、原料茶液をミキシングしない以外は同様に、酵母含有茶液を製した。
【0068】
実施例1及び比較例1において調製した酵母含有茶液を目視にて比較したところ、実施例1において調製した酵母含有茶液の方が、鮮やかな緑色を呈していることが分かった。また、実施例1において調製した酵母含有茶液の方が、長時間静置した場合であっても、沈殿がほとんど生じていなかった。
そこで、原料茶液、及び酵母含有茶液の配合を以下のとおり変更し、原料茶液をミキシングする工程の有無が、酵母含有茶液の液色及び沈殿に与える影響について評価した。
【0069】
[実施例2]
実施例1において、原料茶液の配合を、水を9500gに変更し、茶粉末を500gに変更し、酵母含有茶液の配合を、原料茶液を2000gに変更し、酵母を2.4gに変更し、ビタミンCを1gに変更する以外は同様に、酵母含有茶液を製した。
【0070】
[比較例2]
実施例2において、原料茶液をミキシングしない以外は同様に、酵母含有茶液を製した。
【0071】
[対照例1]
比較例2において調製した酵母含有茶液を200g用意し、そこに、ミネラル含有酵母を0.8g及びビタミンCを1g追加し、125℃で1分間加熱した。
【0072】
[評価方法]
酵母含有茶液のLab値を色差計(カラーリーダーCR-13、コニカミノルタ(株)製)で測定し、以下の評価基準に従い緑色度を評価した。ここで、緑色度の指標として、Lab表色系におけるL値(明るさ)、a値(赤緑度)、b値(青黄度)のうち、a値を用いた。a値は、マイナスの値が大きいほど緑色が強く、プラスの値では赤色が強いと評価される。通常、-6以下の数値で、飲料として適した鮮やかな緑色であると評価される。b値は、マイナスの値が大きければ青色が強く、プラスの値では黄色が強いと評価される。L値は0に近づくほど暗く、100に近づくほど明るいと評価される。結果を表1に示す。
【0073】
[評価基準]
〇:a値が-6以下
×:a値が-6より大きい
【0074】
【0075】
表1の結果から、実施例2において調製した酵母含有茶液は、比較例2において調製した酵母含有茶液と比べて鮮やかな緑色を呈していた。このことから、同量の酵母を添加した場合であっても、原料茶液をミキシングすることで、より鮮やかな緑色を呈する酵母含有茶液を調製することができることが分かる。
【0076】
また、対照例1において調製した酵母含有茶液は、実施例2において調製した酵母含有茶液と同等の鮮やかな緑色を呈していた。このことから、原料茶液をミキシングすることで、酵母含有茶液が鮮やかな緑色を呈するのに必要なミネラル含有酵母の量を減らすことができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、茶製品の製造方法に応用することができる。
【要約】
【課題】緑色を復元又は維持する茶製品の新規な製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、茶粉末と水とを混合して原料茶液を得る茶液分散工程と、前記茶粉末を粉砕する茶粉末粉砕工程と、前記茶粉末とミネラル含有酵母とを混合する酵母混合工程と、を備える、茶製品の製造方法。
【選択図】
図1