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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】ナットおよび基板構造
(51)【国際特許分類】
   F16B 37/00 20060101AFI20240403BHJP
   F16B 5/02 20060101ALI20240403BHJP
   F16B 37/14 20060101ALI20240403BHJP
   F16B 37/06 20060101ALI20240403BHJP
   H05K 1/14 20060101ALN20240403BHJP
   H05K 7/08 20060101ALN20240403BHJP
【FI】
F16B37/00 D
F16B5/02 G
F16B37/14 A
F16B37/06 A
H05K1/14 H
H05K7/08 D
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023095986
(22)【出願日】2023-06-12
【審査請求日】2023-06-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597131440
【氏名又は名称】株式会社和光精機
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】湯本 康裕
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-295100(JP,A)
【文献】特許第150683(JP,C2)
【文献】実公昭48-002907(JP,Y1)
【文献】特開2006-297444(JP,A)
【文献】特開2023-035428(JP,A)
【文献】特開2018-179207(JP,A)
【文献】特開2005-226735(JP,A)
【文献】登録実用新案第3044374(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2020/0215632(US,A1)
【文献】実開昭49-000352(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 37/02
F16B 37/00
F16B 37/06
F16B 5/02
B21K 1/44
F16B 37/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板に半田によって固定されたナットと、
前記ナットを介して前記第1基板に固定された第2基板と、
前記ナットに螺合し前記第2基板を前記ナットに固定しているネジ部材と、を少なくとも備え、
前記ナットが、
内周面に雌ネジが形成された内筒部と、
前記内筒部の一端から径方向外側に向かって延びる座面部と、
前記座面部の外周部から前記雌ネジの中心軸線に沿った方向に延び、前記座面部と一体である外筒部と、を備え、
前記内筒部は前記座面部から前記中心軸線に沿った前記方向に延び、
前記半田は、少なくとも、前記外筒部の内周面および外周面と前記第1基板とを接続していると共に前記内筒部の外周面と前記第1基板とを接続している、基板構造。
【請求項2】
第1基板と、
前記第1基板に半田によって固定されたナットと、
前記ナットを介して前記第1基板に固定された第2基板と、
前記ナットに前記第2基板側から螺合し前記第2基板を前記ナットに固定しているネジ部材と、を少なくとも備え、
前記ナットが、
内周面に雌ネジが形成された内筒部と、
前記内筒部の一端から径方向外側に向かって延び前記第2基板が接触する座面部と、
前記座面部の外周部から前記雌ネジの中心軸線に沿った方向に延び、前記座面部と一体である外筒部と、を備え、
前記内筒部は前記座面部から前記中心軸線に沿った前記方向に延び、
前記半田は少なくとも前記外筒部の前記中心軸線に沿った前記方向の先端部における内周面および外周面と前記第1基板とを接続している、基板構造。
【請求項3】
前記外筒部における前記先端部には、前記外筒部の径方向の外側を向く切断面又は前記中心軸線に沿った前記方向を向く切断面が形成されている、請求項2に記載の基板構造。
【請求項4】
内周面に雌ネジが形成された内筒部と、
前記内筒部の一端から径方向外側に向かって延びる座面部と、
前記座面部の外周部から前記雌ネジの中心軸線に沿った方向に延び、前記座面部と一体である外筒部と、を少なくとも備えるナットであって、
前記内筒部は前記座面部から前記中心軸線に沿った前記方向に延び、
前記内筒部と前記外筒部との間の空間と前記ナットの外部とを繋ぐガス抜きのための孔が形成されているナット。
【請求項5】
内周面に雌ネジが形成された内筒部と、
前記内筒部の一端から径方向外側に向かって延び前記雌ネジに螺合するネジ部材によって基板が取付けられる座面として機能する座面部と、
前記座面部の外周部から前記雌ネジの中心軸線に沿った方向に延び、前記座面部と一体である外筒部と、
を少なくとも備え、
前記内筒部は前記座面部から前記中心軸線に沿った前記方向に延び、
前記座面部における前記外筒部および前記内筒部が延出している側の面からの前記内筒部の前記中心軸線に沿った前記方向の第1の寸法は前記面からの前記外筒部の前記中心軸線に沿った前記方向の第2の寸法と同等であ、又は、前記第1の寸法が前記第2の寸法よりも大き
前記内筒部の先端部の外周面、前記外筒部の先端部の内周面、および前記外筒部の前記先端部の外周面は、半田によって前記基板と異なる基板に固定される被固定部である、ナット。
【請求項6】
内周面に雌ネジが形成された内筒部と、
前記内筒部の一端から径方向外側に向かって延びる座面部と、
前記座面部の外周部から前記雌ネジの中心軸線に沿った方向に延び、前記座面部と一体である外筒部と、
前記外筒部の先端部に設けられ半田によって基板に固定される被固定部と、を少なくとも備えるナットであって、
前記内筒部は前記座面部から前記中心軸線に沿った前記方向に延び、
前記外筒部の前記先端部の外周面には径方向の外側を向く切断面が形成され、
前記被固定部は、前記外筒部の前記外周面と前記切断面とを有する、ナット。
【請求項7】
内周面に雌ネジが形成された内筒部と、
前記内筒部の一端から径方向外側に向かって延びる座面部と、
前記座面部の外周部から前記雌ネジの中心軸線に沿った方向に延び、前記座面部と一体である外筒部と、
前記外筒部の先端部に設けられ半田によって基板に固定される被固定部と、を少なくとも備えるナットであって、
前記内筒部は前記座面部から前記中心軸線に沿った前記方向に延び、
前記外筒部の前記先端部の外周面には周方向に延びる溝が形成され、
前記被固定部は、前記外筒部の前記外周面と前記溝とを有する、ナット。
【請求項8】
内周面に雌ネジが形成された内筒部と、
前記内筒部の一端から径方向外側に向かって延びる座面部と、
前記座面部の外周部から前記雌ネジの中心軸線に沿った方向に延び、前記座面部と一体である外筒部と、
前記外筒部の先端部に設けられ半田によって基板に固定される被固定部と、を少なくとも備えるナットであって、
前記内筒部は前記座面部から前記中心軸線に沿った前記方向に延び、
前記外筒部はその先端に向かって径方向外側に拡がるように形成され、前記ナットの前記中心軸線を通る切断面において前記外筒部の外周面が延びる方向と前記中心軸線との成す角度は2°以上であり、
前記被固定部は、前記径方向外側に拡がるように形成された前記外筒部の前記外周面から成る、ナット。
【請求項9】
前記内筒部の先端は端部材によって閉鎖されている、請求項4~の何れかに記載のナット。
【請求項10】
前記端部材はその一部が前記内筒部の前記先端の側に接続されており、前記内筒部の前記先端における前記一部以外の他の部分に、前記端部材が前記内筒部と切り離された非接続部が形成されている、請求項に記載のナット。
【請求項11】
前記外筒部の前記中心軸線に沿った前記方向の先端部の外周面に、径方向外側に突出する突出部が形成されている、請求項4又は5に記載のナット。
【請求項12】
前記内筒部の前記中心軸線に沿った前記方向の先端部の外周面に、径方向外側に突出する内筒突出部が形成されている、請求項5に記載のナット。
【請求項13】
内周面に雌ネジが形成された内筒部と、
前記内筒部の一端から径方向外側に向かって延びる座面部と、
前記座面部の外周部から前記雌ネジの中心軸線に沿った方向に延び、前記座面部と一体である外筒部と、を少なくとも備え、
前記内筒部は前記座面部から前記中心軸線に沿った前記方向に延び、
前記内筒部における前記雌ネジよりも先端側の前記内周面に、前記中心軸線に沿った前記方向において前記内筒部の先端の側を臨む半田上がり防止面が形成されている、ナット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナットおよび基板構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のナットとして、金属板に絞り加工を加えることによって、筒部と、筒部の上端に設けられたフランジ形状の座面部とを成形し、筒部の内周面に雌ネジを形成したものが知られている。例えば特許文献1を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-068782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、基板を重ねて配置することにより省スペース化が図られ、そのような基板が自動車等の比較的大きい振動が加わる場所に取付けられる場合もある。ナットには、軽量であると共に、基板にしっかりと固定できることが要求される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様のナットは、内周面に雌ネジが形成された内筒部と、前記内筒部の一端から径方向外側に向かって延びる座面部と、前記座面部の外周部から前記雌ネジの中心軸線に沿った方向に延び、前記座面部と一体である外筒部と、を少なくとも備えるナットであって、前記内筒部は前記座面部から前記中心軸線に沿った記方向に延び、前記内筒部と前記外筒部との間の空間と前記ナットの外部とを繋ぐガス抜きのための孔が形成されている
本発明の第2の態様のナットは、内周面に雌ネジが形成された内筒部と、前記内筒部の一端から径方向外側に向かって延び前記雌ネジに螺合するネジ部材によって基板が取付けられる座面として機能する座面部と、前記座面部の外周部から前記雌ネジの中心軸線に沿った方向に延び、前記座面部と一体である外筒部と、を少なくとも備え、前記内筒部は前記座面部から前記中心軸線に沿った前記方向に延び、前記座面部における前記外筒部および前記内筒部が延出している側の面からの前記内筒部の前記中心軸線に沿った前記方向の第1の寸法は前記面からの前記外筒部の前記中心軸線に沿った前記方向の第2の寸法と同等である、又は、前記第1の寸法が前記第2の寸法よりも大きい。
本発明の第3の態様のナットは、内周面に雌ネジが形成された内筒部と、前記内筒部の一端から径方向外側に向かって延びる座面部と、前記座面部の外周部から前記雌ネジの中心軸線に沿った方向に延び、前記座面部と一体である外筒部と、前記外筒部の先端部に設けられ半田によって基板に固定される被固定部と、を少なくとも備えるナットであって、前記内筒部は前記座面部から前記中心軸線に沿った前記方向に延び、前記外筒部の前記先端部の外周面には径方向の外側を向く切断面が形成され、前記被固定部は、前記外筒部の前記外周面と前記切断面とを有する。
本発明の第4の態様のナットは、内周面に雌ネジが形成された内筒部と、前記内筒部の一端から径方向外側に向かって延びる座面部と、前記座面部の外周部から前記雌ネジの中心軸線に沿った方向に延び、前記座面部と一体である外筒部と、前記外筒部の先端部に設けられ半田によって基板に固定される被固定部と、を少なくとも備えるナットであって、前記内筒部は前記座面部から前記中心軸線に沿った前記方向に延び、前記外筒部の前記先端部の外周面には周方向に延びる溝が形成され、前記被固定部は、前記外筒部の前記外周面と前記溝とを有する。
本発明の第5の態様のナットは、内周面に雌ネジが形成された内筒部と、前記内筒部の一端から径方向外側に向かって延びる座面部と、前記座面部の外周部から前記雌ネジの中心軸線に沿った方向に延び、前記座面部と一体である外筒部と、前記外筒部の先端部に設けられ半田によって基板に固定される被固定部と、を少なくとも備えるナットであって、前記内筒部は前記座面部から前記中心軸線に沿った前記方向に延び、前記外筒部はその先端に向かって径方向外側に拡がるように形成され、前記ナットの前記中心軸線を通る切断面において前記外筒部の外周面が延びる方向と前記中心軸線との成す角度は2°以上であり、前記被固定部は、前記径方向外側に拡がるように形成された前記外筒部の前記外周面から成る。
本発明の第6の態様のナットは、内周面に雌ネジが形成された内筒部と、前記内筒部の一端から径方向外側に向かって延びる座面部と、前記座面部の外周部から前記雌ネジの中心軸線に沿った方向に延び、前記座面部と一体である外筒部と、を少なくとも備え、前記内筒部は前記座面部から前記中心軸線に沿った前記方向に延び、前記内筒部における前記雌ネジよりも先端側の前記内周面に、前記中心軸線に沿った前記方向において前記内筒部の先端の側を臨む半田上がり防止面が形成されている。
【0006】
本発明の第7の態様の基板構造は、第1基板と、前記第1基板に半田によって固定されたナットと、前記ナットを介して前記第1基板に固定された第2基板と、前記ナットに螺合し前記第2基板を前記ナットに固定しているネジ部材と、を少なくとも備え、前記ナットが、内周面に雌ネジが形成された内筒部と、前記内筒部の一端から径方向外側に向かって延びる座面部と、前記座面部の外周部から前記雌ネジの中心軸線に沿った方向に延び、前記座面部と一体である外筒部と、を備え、前記内筒部は前記座面部から前記中心軸線に沿った記方向に延び、前記半田は、少なくとも前記外筒部の内周面および外周面と前記第1基板とを接続していると共に前記内筒部の外周面と前記第1基板とを接続している。
本発明の第8の態様の基板構造は、第1基板と、前記第1基板に半田によって固定されたナットと、前記ナットを介して前記第1基板に固定された第2基板と、前記ナットに前記第2基板側から螺合し前記第2基板を前記ナットに固定しているネジ部材と、を少なくとも備え、前記ナットが、内周面に雌ネジが形成された内筒部と、前記内筒部の一端から径方向外側に向かって延び前記第2基板が接触する座面部と、前記座面部の外周部から前記雌ネジの中心軸線に沿った方向に延び、前記座面部と一体である外筒部と、を備え、
前記内筒部は前記座面部から前記中心軸線に沿った前記方向に延び、前記半田は少なくとも前記外筒部の前記中心軸線に沿った前記方向の先端部における内周面および外周面と前記第1基板とを接続している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係るナットの実施例1~3の断面図である。
図2】第1実施形態に係る基板構造の断面図である。
図3】第1実施形態に係るナットの実施例2の斜視図である。
図4】第1実施形態に係るナットの実施例2の斜視図である。
図5】第1実施形態に係るナットの実施例4~6の断面図である。
図6】第1実施形態に係るナットの実施例7,8の断面図および実施例7の平面図である。
図7】第1実施形態に係るナットの実施例9~11の断面図である。
図8】第1実施形態に係るナットの実施例12,13の断面図である。
図9】第1実施形態に係るナットの実施例14,15の断面図である。
図10】第1実施形態に係るナットの実施例16,17の断面図である。
図11】第1実施形態に係るナットの実施例18,19の断面図である。
図12】第2実施形態に係るナットの斜視図である。
図13】第2実施形態に係るナットの実施例2-1,2-2の断面図である。
図14】第2実施形態に係るナットの実施例2-3,2-4の図12のXIV-XIV線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
第1実施形態に係るナット1および基板構造2が図面を参照しながら以下説明される。
第1実施形態の基板構造2は、第1基板51と、第2基板52と、1つ又は複数のナット1と、ナット1に螺合するボルト等のネジ部材54とを少なくとも備える(図2)。
基板51,52は、その厚さ方向の一方又は両方に抵抗、コンデンサ、集積回路、ダイオード等の公知の電子部品が用途、機能等に応じて実装された基板である。
【0009】
第1実施形態では図2に示すように第2基板52にネジ部材54が挿通する孔52aが形成され、第1基板51における孔52aに対応する位置にナット1が半田60によって固定されている。
ナット1は、図1に示すように、内周面11に雌ネジ11aが形成された円筒状の内筒部10と、内筒部10の一端から径方向外側に向かって延びる板状の座面部20と、座面部20の外周部から雌ネジ11aの中心軸線CLに沿った延出方向に延び、座面部20と一体である筒状の外筒部30と、を少なくとも備える。内筒部10および外筒部30の断面の外形が円形ではなく多角形や他形状であってもよく、その場合は座面部20も相応の形状となる。
【0010】
図1の実施例1では、内筒部10の前記延出方向の先端部10aは端部材12であり、内筒部10の先端部10aは端部材12によって閉鎖されている。座面部20において筒部10,30が突出している側の面20aから外筒部30の先端までの寸法L1と内筒部10の先端までの寸法L2は同等である、又は、寸法L2の方が少し短い。なお、寸法L1,L2は前記延出方向の寸法である。これにより、第1基板51に内筒部10に対応した孔が無くても、外筒部30の先端部30aが半田60によって第1基板51により確実に固定される。
【0011】
また、実施例1では、内筒部10の先端部10aも半田60によって第1基板51に固定され、これはナット1の第1基板51への固着力を上げることに寄与する。この場合、先端部10aの端部材12は半田60による被固定部である。実施例1のように端部材12の面が半田60によって第1基板51に固定されると、ナット1を固定するための半田の面積が大きくなる。
【0012】
図1の実施例2は、寸法L1に対し寸法L2が長い。この場合、第1基板51に内筒部10の先端の側が収容される収容孔51aが形成され、外筒部30の先端部30aが半田60によって第1基板51に固定された時に、内筒部10の先端の側が収容孔51aに収容される。
実施例2のように内筒部10の先端の側の外周面が収容孔51aの内周面に半田60によって固定されることは、ナット1の第1基板51への固着力を上げることに寄与する。なお、実施例2の内筒部10の先端部10aは端部材12によって閉鎖されているが、下記の実施例3のように実施例2の内筒部10の先端が端部材12によって閉鎖されずに開口している場合もあり得る。実施例2では内筒部10の先端側が細くなっていると共に段差部10bが形成されている。このような構成は、第1基板51に大きな孔51aを設けることができない場合や、段差部10bを第1基板51に当てることにより基板51に対するナット1の位置決めをする場合等に有用である。
【0013】
図1の実施例3は、実施例1において、内筒部10の先端が端部材12によって閉鎖されずに開口している。この場合、内筒部10の内周面の全面に雌ネジ11aを確実に形成でき、これはナット1の前記延出方向の寸法を小さくするために有用である。図1の実施例3で第1基板51に設けられている収容孔51aを省くことも可能である。
【0014】
なお、実施例1において、端部材12の一部12aだけが内筒部10の先端の側に接続されており、端部材12の他の部分が内筒部10の基端の側と切り離された非接続部12bが形成されていてもよい。この場合、端部材12は、内周面11に雌ネジ11aを形成する際には図1の実施例1に破線で示す位置に配置され、雌ネジ11aが形成された後に図1の実施例1に実線で示す位置に配置される。これにより雌ネジ11aが内周面11の全体に亘って形成される。これは、例えばナット1の中心軸線CLに沿った方向のサイズを小さくするために有用であり、ネジ部材54と雌ネジ11aとの結合を確実にするためにも有用である。実施例2の端部材12にも同様の構成が適用され得る。勿論、実施例1において実施例2のように内筒部10に非接続部12bが設けられない場合もある。
なお、実施例1では非接続部12bの面は中心軸線CLに交差する方向に延びているが、非接続部12bの面が中心軸線CLに沿った方向に延びる場合もある。また、端部材12の径方向の中心等に小さな孔が空いている場合もあり得る。
【0015】
なお、リフロー炉等の加熱炉を用いた半田付けを行う場合に、半田60の雌ネジ11aへの侵入の防止および/又は低減のために、実施例3の内筒部10の先端部10a又はその近傍に半田上がり防止処理を施すことも可能である。半田上がり防止処理として、特殊金属エクセル社製のオビワン(登録商標)コートと呼ばれるコーティング、金メッキ等を用いた公知の処理を用いることができる。
【0016】
第1実施形態では、ナット1は公知の鋼板等の金属板にプレス加工およびタップ加工を行うことによって成形される。例えば、実施例1,2,3の場合は、厚さ0.4~2.0mmの金属板が用いられ、好ましくは、強度と重量の両立を考慮し厚さ0.6~1.5mmの金属板が用いられる。そして、実施例1,2の場合は、複数の加工ステージを有するプレス加工型を用いて、平面状の金属板に内筒部10および端部材12が成形され、内筒部10の径方向外側の平面部分が座面部20となり、その後に座面部20の径方向外側の材料を用いて外筒部30が成形される。実施例3の場合は、同様のプレス加工型を用いて、内筒部10が成形され、その後に外筒部30が成形される。このため、第1実施形態では、内筒部10は座面部20と一体であり、外筒部30も座面部20と一体であり、内筒部10、座面部20、および外筒部30は1枚の金属板から成形されている。図2および図3に実施例2の斜視図を示す。
実施例1,2,3において、内筒部10と外筒部30が同時に成形されてもよく、外筒部30が内筒部10よりも先に成形されてもよい。
【0017】
一例では、プレス加工型は上型および下側を備え、上型および下側の複数の加工ステージに対応した位置にそれぞれパンチ又はダイが設けられている。パンチとしては、絞りパンチ、曲げパンチ、抜きパンチ等の各ステージに必要なものが用いられる。
【0018】
第1実施形態では、例えば、上記プレス加工によって成形された内筒部10内に、雌ネジ11aを形成するためのタップが挿入され、タップの形状に応じた雌ネジ11aが形成される。一例では、タップは雌ネジ形成機等に装着され、雌ネジ形成機の所定位置に配置された内筒部10に雌ネジ11aが成形される。雌ネジ形成機はプレス加工機内に設けられてもよい。
【0019】
第1実施形態では、第1基板51におけるナット1の半田付け部にクリーム状の半田が施され、ナット1が半田付け部に載せられ、この状態で第1基板51およびナット1が加熱炉で加熱される。これにより、図1の実施例1~3に示すように、例えば半田上がりによって、外筒部30の先端部30aの内周面31および外周面32と第1基板51とが半田60によって接続される。半田上がり以外によって内周面31および外周面32と第1基板51とが半田60によって接続されてもよい。当該構成はナット1を第1基板51に確実に固定するために有用である。なお、半田60は、内周面31および外周面32の全周に亘って延びる傾向があるが、条件によっては全周に亘って存在しない場合もあり得る。また、条件によっては、半田60は内周面31および外周面32の一方にのみ付く場合もあり得る。
【0020】
図2に示すように、半田60によって固定されたナット1の座面部20の座面21に第2基板52の厚さ方向一方の面および/又はネジ部材54の頭部が接触する態様で、ネジ部材54がナット1に螺合し、ネジ部材54によって第2基板52がナット1および第1基板51に固定される。
【0021】
なお、図5に示すように、外筒部30の先端部30aの外周面に径方向外側に突出する突出部33が形成されてもよい。実施例4の突出部33は、前述のプレス加工によって形成されるフランジ状の突出部である。一例では実施例4の突出部33はピンチトリミングにより形成される。例えば、プレス加工時に、外筒部30の先端から径方向外側に延びる平面部が形成され、平面部をプレス加工の切断加工で切断することにより、実施例4のフランジ状の突出部33が形成される。実施例4のようにピンチトリミングを用いると外筒部30の先端面の平面度が向上し易く、これは基板構造2の強度、寸法精度等の向上に寄与する。
【0022】
実施例5の突出部33’は、前述のプレス加工で金属板における外筒部30の先端面に対応する位置を切断する際に形成され、又は、前述のプレス加工で外筒部30の先端面に型で力を加えることによって形成される。
実施例6の突出部33’’は、前述のプレス加工で外筒部30をその先端に向かって拡がるように形成して成る。図5のように、ナット1の中心軸線CLを通る切断面において、実施例6の外筒部30の全体又はその先端の側の外周面32が延びる方向に沿った線と中心軸線CLが延びる方向との成す角度αは2°以上である。角度αが40°程度になる場合もあり得る。この場合でも外筒部30は座面部20の外周部から中心軸線CLに沿った方向に延びていると言える。
【0023】
突出部33,33’,33’’の突出高さL3は0.02mm以上であればよく、突出部33,33’,33’’は外筒部30の周方向の複数箇所に互いに間隔をおいて設けられていてもよい。
実施例4~6は実施例1~3に必要に応じて適用可能である。
実施例4~6の構成は、外筒部30が半田60に対し前記延出方向に抜け難くする効果を奏する。
【0024】
なお、例えば実施例4において図6の実施例7のように突出部33に複数の切欠き34が形成されてもよい。切欠き34が外筒部30の基端側や中間部まで延びる場合もあり得る。図6の実施例7の底面図のように、複数の切欠き34は外筒部30の周方向に間隔をおいて設けられている。当該構成は、半田60と外筒部30との接触面積の増加、半田60と外筒部30との周方向の引っ掛かりの形成等に寄与する。切欠き34が1つだけ設けられる場合もあり得る。
また、図6の実施例8のように、外筒部30を貫通する孔35が形成されてもよい。当該孔35や、前述のように外筒部30の基端側や中間部まで延びる切欠き34は、空間Sのガス抜き等のために機能する。
実施例7,8は実施例1~6に必要に応じて適用可能である。
【0025】
なお、図7に示すように、内筒部10の先端部10aの外周面に径方向外側に突出する内筒突出部13が形成されてもよい。図7の実施例9の内筒突出部13は、前述のプレス加工で先端部10aに型で中心軸線CLに沿った方向の力を加えることによって形成される。実施例9では、内筒部10の先端面の外周面側に前記先端面に対し傾斜している傾斜面13aが形成され、これにより内筒部10の先端部10aに内筒突出部13が形成されている。内筒突出部13の突出高さは、典型的には、内筒部10又は座面部20の材料の板厚の1/2程度、1/2以下等となる。図7の実施例10の内筒突出部13’は、内筒部10の外周面の先端の側の一部に機械加工等によって溝14を形成することにより、溝14の底面に対し径方向に突出する突出部として形成される。外筒部30に内筒突出部13,13’と同様の突出部が設けられてもよい。
【0026】
また、図7の実施例11のように、前述のプレス加工で先端部10aに型で中心軸線CLに沿った方向の力を加えることによって、内筒部10の先端部10aの外周面に径方向外側に突出する内筒突出部13’’が形成されてもよい。
また、図8の実施例12のように、内筒部10の外周面に内筒突出部13,13’,13’’が設けられない状態で、内筒部10の外周面の半田60による接続が行われる範囲に凹凸が形成されてもよい。
【0027】
当該凹凸は、例えば、前記プレス加工の型に放電加工等によって凹凸を形成し、当該凹凸が内筒部10の外周面に前記プレス加工によって押付けられ、形成される。例えば、内筒部10の外周面において、前記凹凸を形成することにより、前記凹凸が形成された範囲は前記凹凸が形成されていない範囲に対して表面粗さ測定機で測定した時の算術平均粗さ(Ra)の計測値が実質的に大きくなる。前記プレス加工時に内筒部10の外周面に積極的に傷をつけ、当該傷を前記凹凸として機能させる場合もあり得る。実施例12の凹凸が実施例1,3等の短い内筒部10の外周面に設けられても同様の効果を奏する。また、実施例12の凹凸が外筒部30の外周面32の半田60による接続が行われる範囲に設けられてもよい。また、図8の実施例13のように長い内筒部10の先端部10aに内筒突出部13が形成されてもよい。
【0028】
実施例9~13は実施例1~8に必要に応じて適用可能である。
実施例9~13の構成は、内筒部10が半田60に対し前記延出方向に抜け難くする効果を奏する。
なお、内筒部10の先端部10a、外筒部30の先端部30a等に必要に応じて機械加工が施されてもよい。
【0029】
第1実施形態のナット1は、内筒部10と外筒部30との間に径方向の空間Sが設けられる分だけナット1が軽量化され、また、外筒部30の先端部30aの内周面31および外周面32の両方が半田60による第1基板51への接続に使われ、これはナット1の基板への固着力の向上に寄与する。鍛造ナットでは当該効果は得られず、前記先行技術文献のナットも外筒部30に相当する構成を持たないため当該効果は得られない。内筒部10と外筒部30との距離は1.5mm以上であり、好ましくは2mm以上であり、より好ましくは2.5mm以上である。なお、条件に応じて筒部10と外筒部30との距離が1.5mm以下になる場合もあり得る。
【0030】
なお、第1実施形態において、図9の実施例14ように座面部20の外周部の位置が内周部に対して中心軸線CLに沿った方向にずれている場合もあり得る。座面部20の外周部の位置が実施例14と逆方向にずれる場合もある。図2では座面部20の大部分が第2基板52に接触しているが、実施例14では座面部20の内周部および径方向の中央側が第2基板52に接触することになる。座面部20の形状によっては座面部20の外周部又は径方向の中央側のみが第2基板52に接触する場合もあり得る。座面部20がその他の形状を有する場合もあり得る。中心軸線CLを通る断面において、座面部20が全体的に延びる方向と中心軸線CLとの成す鋭角が45°程度になる場合もあり得る。これらの場合でも、座面部20は座面21を有する部分であり、座面部20は内筒部10の一端から少なくとも径方向外側には延びている。そして、座面部20が内筒部10の一端から径方向外側に延び、外筒部30は座面部20の外周部から中心軸線CLに沿った方向に延びている。
【0031】
上記の各実施例では、金属板にプレス加工を行うことによって内筒部10、座面部20、および外筒部30から成るナット1の全体形状が作製されるので、鍛造ナットよりも加工に必要な荷重が少なくて済み、小設備化、少エネルギー化に寄与し、また、鍛造ナットよりもナット1つ当たりの製造に要する時間を低減することも可能となる。
【0032】
上記の各実施例において、図9の実施例15ように内筒部10’を別体で作製し、内筒部10’を嵌合、溶接、接着等によって座面部20に固着することも可能である。
上記の各実施例では、空間Sがあることによる軽量化、外筒部30の内周面31も半田60によって第1基板51に接続されることによる固着力の向上があるので、ナット1の高さ寸法を高くすることも可能である。さらに、ナット1が薄い金属板を用いて成形されているので、ナット1の高さ寸法を自由に設定可能である。
【0033】
また、図10の実施例16のように、中心軸線CLに沿った方向において、外筒部30の先端と内筒部10の先端との間の寸法L4が1mm以上であってもよい。この場合、内筒部10に端部材12が設けられていなくても、雌ネジ11aへの半田上がりが効果的に防止され得る。
【0034】
また、図10の実施例17のように、内筒部10の先端側に径方向外側に延びる径方向の延在部10cが形成されてもよい。延在部10cは内筒部10と一体に形成され、実施例17では内筒部10の先端は延在部10cとなっている。延在部10cの第1基板51側の面10dは好ましくは第1基板51に対して実施例17のように傾斜して配置される。このため、リフロー炉等の加熱炉を用いた半田付けの際に、半田が面10dと第1基板51との間の空間に溜まり易くなり、内筒部10に端部材12が設けられていなくても、雌ネジ11aへの半田上がりが効果的に防止され得る。
【0035】
また、図10の実施例17のように、面10dに面取り形状の半田上がり防止面10eが設けられてもよい。半田上がり防止面10eは、中心軸線CLに沿った方向において内筒部10の先端の側に臨んでおり、つまり図10の下側を臨んでいる。半田上がり防止面10eと第1基板51とが成す角度は30°以上であることが好ましい。当該構成は、半田が半田上がり防止面10eと第1基板51との間の空間に溜まり易くなり、雌ネジ11aへの半田上がりがより効果的に防止され得る。
【0036】
また、図11の実施例18のように、内筒部10の先端側に径方向外側に延びる径方向の延在部10fが形成されてもよい。延在部10fは内筒部10と一体に形成され、実施例17では内筒部10の先端は延在部10fとなっている。内筒部10において雌ネジ11aよりも先端側の内周面11には、中心軸線CLに沿った方向において内筒部10の先端の側を臨む半田上がり防止面10gが形成されている。
【0037】
実施例18では雌ネジ11aの小径部よりも直径が大きい穴10hが内筒部10の先端側に形成され、穴10hの形成によって半田上がり防止面10gが形成されている。このため、リフロー炉等の加熱炉を用いた半田付けの際に、半田が半田上がり防止面10gよりも第1基板51側に溜まり易くなり、内筒部10に端部材12が設けられていなくても、雌ネジ11aへの半田上がりが効果的に防止され得る。
面10d、半田上がり防止面10e,10gは、内筒部10の該当箇所に型で力を加えることによって形成されるが、機械加工等の他の方法で形成される場合もあり得る。なお、実施例17,18のように内筒部10の先端側を径方向外側に曲げることは、半田上がり防止面の形成のために有用である。
【0038】
また、図11の実施例19のように、内筒部10において雌ネジ11aよりも先端側の内周面11に機械加工等によって溝10iが形成され、溝10iを形成することによって半田上がり防止面10jが形成されてもよい。半田上がり防止面10e,10g,10jは、中心軸線CLに沿った方向において内筒部10の先端よりも雌ネジ11a側に配置されている。条件に応じて、半田上がり防止面10e,10g,10jを曲面にすることも可能である。
【0039】
実施例17,18の延在部10c,10fは実施例9等と同様に内筒突出部として機能し得る。面10dおよび半田上がり防止面10e,10g,10jの少なくとも1つは、実施例3や端部材12が設けられていない実施例2に必要に応じて適用可能であり、実施例4~15にも必要な変更を加えながら適用可能である。
【0040】
第2実施形態に係るナット1および基板構造が図面を参照しながら以下説明される。
第2実施形態の基板構造は、第1実施形態に対しナット1をナット3に変更したものである。つまり、ナット3が第1基板51に半田60によって固定され、ネジ部材54がナット3に螺合し、ネジ部材54によって第2基板52がナット3および第1基板51に固定される。第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成には同じ符号が付され、その説明は省略される。
【0041】
ナット3は、複数の板状部材4を重ね合わせると共に互いに結合することにより形成されている。各板状部材4は金属板にプレス加工の打ち抜き加工を行うことによって成形される。本実施形態では、図12のように、各板状部材4の外周4aは多角形であり、各板状部材4の内孔4bは円形であるが、各板状部材4の外周は円形や他形状とし得る。
【0042】
図13の実施例2-1,2-2のように、互いに結合された複数の板状部材4の内孔4bはナット3の内周面となり、内周面に第1実施形態と同様にタップ加工によって雌ネジ6aが形成される。実施例2-1は端の板状部材4に内孔4bが設けられておらず、このため雌ネジ6aの一端が閉鎖されている。この場合でも、雌ネジ6aを形成した後に端の板状部材4を取付けることができるので、雌ネジ6aが内周面の全体に亘って確実に形成される。実施例2-2は雌ネジ6aの両端が開口している。
【0043】
各板状部材4には係合部5が形成されている。一例では、図14の実施例2-3および実施例2-4のように、プレス加工時に切り曲げ等と呼ばれることもある公知の半抜き加工(ハーフパンチ加工)を用いて係合部5が形成される。実施例2-3では、プレス加工によって、各板状部材4において係合片5aが半抜き加工される。この時、係合片5aの全周が板状部材4から切断されず、係合片5aの一部は板状部材4と切断されていない状態となる。係合片5aの少なくとも一部が板状部材4の板厚方向に屈曲することにより、板状部材4の厚さ方向一方の面から係合片5aが突出して係合突起5bが形成され、係合突起5bの突出の分だけ板状部材4の板厚方向の一方の面に係合凹部5cが形成される。
【0044】
実施例2-4では、プレス加工によって、各板状部材4において係合片5dが半抜き加工される。これにより、板状部材4の厚さ方向一方の面から係合片5dが突出して係合突起5eが形成され、係合突起5eの突出の分だけ板状部材4の板厚方向の一方の面に係合凹部5fが形成される。
【0045】
複数の板状部材4を重ね、この時に隣り合う2つの板状部材4の一方の係合突起5b,5eが他方の係合凹部5c,5fに挿入されることにより、複数の板状部材4が互いに結合される。当該構成では、係合突起5b,5eおよび係合凹部5c,5fがプレス加工時に成形され、複数の板状部材4の結合が確実に行われる。これは、ナット3の機能確保と製造コストの低減の両方に有用である。ナット3の積層方向の端の板状部材4の係合突起5b,5eは機械加工等によって除去されてもよく、ナット3の積層方向の端の板状部材4として係合突起5b,5eが無い板状部材4を用いることも可能である。
【0046】
他の例では、複数の板状部材4が接着剤、溶接等を用いて互いに結合される。さらに他の例では、互いに重ねられた複数の板状部材4の外周面に筒部材を嵌合し、環状部材によって複数の板状部材4が互いに結合される。
【0047】
なお、第1実施形態において、外筒部30がその先端から突出する1つ又は複数の脚部を有し、第1基板51に脚部が挿入される脚収容孔が形成されてもよい。1つ又は複数の脚部はプレス加工によって成形される。例えば、基板への取り付け位置に関する指定がある場合に、外筒部を部分的に延長した1個以上の脚により、基板に対するナット1の位置が固定される。当該構成はナット1の位置が中心軸線CL周りにずれることの防止にも繋がる。第2実施形態のナット3に同様の脚部を設けることも可能である。
【0048】
なお、第1実施形態において、複数の加工ステージを有するプレス加工型が、各ステージのパンチおよびダイを他のサイズのナット1を成形するためのパンチおよびダイに交換可能に構成されていてもよい。他のサイズのナット1は、例えば雌ネジ11aの径が異なるナットである。
【0049】
また、複数のサイズのナット1を準備することにより、第1基板51に第2基板52を重ねて固定するユーザの設計の選択肢が広がる。この時、雌ネジ11aの呼び径がM5(5mm)以上、M6(6mm)以上等の比較的大きいナット1や、高さ寸法の大きいナット1を使用する場合でも、前記空間Sによってナット1が軽量化されているので、ユーザは基板への振動入力の問題等を解決し易く、前述の半田60による確実な固定も達成できる。
なお、第2実施形態でも、複数サイズのナット3を準備することにより、第1基板51に第2基板52を重ねて固定するユーザの設計の選択肢が同様に広がる。
本発明について以下を記載する。
[付記1]
内周面に雌ネジが形成された内筒部と、
前記内筒部の一端から径方向外側に向かって延びる座面部と、
前記座面部の外周部から前記雌ネジの中心軸線に沿った延出方向に延び、前記座面部と一体である外筒部と、を少なくとも備え、
前記内筒部は前記座面部から前記延出方向に延びている、ナット。
[付記2]
前記内筒部の前記延出方向の先端部は端部材によって閉鎖されている、付記1に記載のナット。
[付記3]
前記外筒部の前記延出方向の先端部の外周面に、径方向外側に突出する突出部が形成されている、付記1に記載のナット。
[付記4]
前記内筒部の前記延出方向の先端部の外周面に、径方向外側に突出する内筒突出部が形成されている、付記1又は2に記載のナット。
[付記5]
前記内筒部における前記雌ネジよりも先端側の前記内周面に、前記中心軸線に沿った方向において前記内筒部の先端の側を臨む半田上がり防止面が形成されている、付記1又は2に記載のナット。
[付記6]
第1基板と、
前記第1基板に半田によって固定されたナットと、
前記ナットを介して前記第1基板に固定された第2基板と、
前記ナットに螺合し前記第2基板を前記ナットに固定しているネジ部材と、を少なくとも備え、
前記ナットが、
内周面に雌ネジが形成された内筒部と、
前記内筒部の一端から径方向外側に向かって延びる座面部と、
前記座面部の外周部から前記雌ネジの中心軸線に沿った延出方向に延び、前記座面部と一体である外筒部と、を備え、
前記内筒部は前記座面部から前記延出方向に延び、
前記半田は少なくとも前記外筒部の内周面および外周面と前記第1基板とを接続している、基板構造。
【符号の説明】
【0050】
1,3 ナット
2 基板構造
10 内筒部
10e,10g,10j 半田上がり防止面
11a 雌ネジ
12 端部材
20 座面部
30 外筒部
33 突出部
51 第1基板
52 第2基板
54 ネジ部材
60 半田
CL 中心軸線
【要約】      (修正有)
【課題】軽量であると共に、基板にしっかりと固定できるナットを提供する。
【解決手段】内周面11に雌ネジ11aが形成された内筒部10と、内筒部10の一端から径方向外側に向かって延びる座面部20と、座面部20の外周部から雌ネジ11aの中心軸線CLに沿った延出方向に延び、座面部20と一体である外筒部30と、を少なくとも備え、内筒部10は座面部20から前記延出方向に延びている、ナット1。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14