(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】半導体装置用コンタクトソケット
(51)【国際特許分類】
H01R 33/76 20060101AFI20240403BHJP
H01R 13/11 20060101ALI20240403BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20240403BHJP
G01R 31/27 20060101ALI20240403BHJP
G01R 1/067 20060101ALI20240403BHJP
G01R 1/073 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
H01R33/76 505B
H01R13/11 302A
G01R31/26 J
G01R31/27
G01R1/067 F
G01R1/073 D
(21)【出願番号】P 2023171903
(22)【出願日】2023-10-03
【審査請求日】2023-10-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】312014155
【氏名又は名称】株式会社SDK
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100180976
【氏名又は名称】野村 一郎
(72)【発明者】
【氏名】池上 柊
【審査官】鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-111215(JP,A)
【文献】特開2004-199921(JP,A)
【文献】特開2017-152265(JP,A)
【文献】特開2003-264047(JP,A)
【文献】特開2008-034165(JP,A)
【文献】特開2001-203053(JP,A)
【文献】特開2004-103377(JP,A)
【文献】特開2019-138702(JP,A)
【文献】特開2012-238433(JP,A)
【文献】米国特許第06397460(US,B1)
【文献】米国特許第08441275(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 11/00-11/32
H01R 13/10-13/14
H01R 33/00-33/975
G01R 1/06- 1/073
G01R 31/26-31/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
いずれも第1方向に延在する弾性片からなり、前記第1方向に直交する第2方向に対向し、前記第1方向を含む面に関する面対称形状を有する第1本体部および第2本体部と、
前記第1本体部および前記第2本体部の前記第1方向の他方である下側の端部に連設され、前記第1本体部および前記第2本体部を支持する基部と、
を有するコンタクトピンと、
前記基部を収容する固定部と、
前記第1方向に可動であって、前記第1本体部および前記第2本体部のそれぞれの一部を収容する収容部が設けられたスライド部と、
を備える半導体装置用コンタクトソケットであって、
前記第1本体部は、前記第1方向の一方である上側の端部に、半導体装置から前記下側に突出する電極に接触するための第1接触部を有し、
前記第2本体部は、前記上側の端部に、前記半導体装置の前記電極に接触するための第2接触部を有し、
前記第1接触部および前記第2接触部のそれぞれは、前記第2方向に突出する接触突起を有し、
前記収容部は、
前記第1本体部の一部を収容する第1収容部と、前記第2本体部の一部を収容する第2収容部と、前記第2方向で前記第1収容部と前記第2収容部との間に位置して前記第1本体部および前記第2本体部のそれぞれの内側面に接触可能な介在部と、を有し、
前記コンタクトピンは、前記基部側から前記上側へ向けて、前記第1本体部と前記第2本体部との間隔が狭くなって最狭部に至り、前記最狭部から、前記上側の端部に至る前に設けられた最広部までは間隔が広がる形状を有し、
前記スライド部は、
前記最狭部と前記最広部との間の内側面と前記介在部とが接触することにより、前記第1本体部と前記第2本体部とを離間するように弾性変形し、前記第1接触部と前記第2接触部との前記第2方向の離間距離を前記電極の前記第2方向の幅よりも広げる第1位置と、
前記第1位置よりも前記固定部から離間した位置であって、前記最狭部と前記最広部との間に前記介在部を位置させて、前記第1本体部と前記第2本体部との弾性回復力により、前記接触突起を前記電極に接触させる第2位置と、
前記第2位置よりも前記固定部から離間した位置であって、前記第1本体部の外側面が前記第1収容部の内側面に接触し、前記第2本体部の外側面が前記第2収容部の内側面に接触することにより、前記第1接触部の前記接触突起と前記第2接触部の前記接触突起とに、前記第2位置よりも近接させる力を発生させる第3位置と、
に配置可能に前記第1方向に移動すること
を特徴とする半導体装置用コンタクトソケット。
【請求項2】
前記スライド部が前記第2位置から前記第3位置に移動したときに、前記接触突起の前記電極との接触位置を前記下側に移動させる向きの力が発生するように、前記第1本体部および前記第2本体部ならびに前記第1収容部および前記第2収容部は形成されている、
請求項1に記載の半導体装置用コンタクトソケット。
【請求項3】
前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向に見て、前記接触突起における前記上側の先端が作る稜線は、いずれも、前記第2方向に対して所定の範囲の第1角度を有して前記下側に傾いて前記接触突起の先端へと延びる、請求項1に記載の半導体装置用コンタクトソケット。
【請求項4】
前記第1本体部の前記接触突起および前記第2本体部の前記接触突起のそれぞれは、一対の突起部を有し、
前記一対の突起部は、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向に並ぶ、請求項1に記載の半導体装置用コンタクトソケット。
【請求項5】
前記接触突起は、前記弾性片のプレス加工により形成されたものであり、
前記一対の突起部は、前記弾性片の角部からなる、請求項4に記載の半導体装置用コンタクトソケット。
【請求項6】
前記第1位置において、前記第1本体部および前記第2本体部のそれぞれは、前記最広部を境として、前記最広部から前記上側に向けて前記第1本体部と前記第2本体部との前記第2方向の間隔が狭くなる方向に屈曲する形状に設けられる、請求項1に記載の半導体装置用コンタクトソケット。
【請求項7】
前記最狭部は、前記基部における前記第1本体部および前記第2本体部を支持する支点と、前記上側の端部との中間位置よりも前記基部側に設けられる、請求項1に記載の半導体装置用コンタクトソケット。
【請求項8】
前記第1本体部および前記第2本体部のそれぞれは、前記基部との連結部近傍に弾性係数が局所的に高い強化部を有する、請求項1に記載の半導体装置用コンタクトソケット。
【請求項9】
前記電極は部分球状に設けられ、
前記第2位置において、前記接触突起は、前記第1方向に見て前記電極の部分球状の大円よりも前記上側に接触する、請求項1に記載の半導体装置用コンタクトソケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の導通検査や特性測定などを行う際に用いられる半導体装置用コンタクトソケットおよびコンタクトピンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の電気的な測定を行う際に用いられるコンタクト装置の一つとして、半導体装置用コンタクトソケット(以下、単に「コンタクトソケット」とも言う。)がある。コンタクトソケットでは、収容した半導体装置のパッケージから露出するはんだにコンタクトピンを接触させて、外部の測定機器と半導体装置との電気的な導通を図っている。
【0003】
このようなコンタクトソケットにおいて、特許文献1には、電気部品の浮き上がりを防止するとともに、接触安定性を確保し、かつ、接触部の成形を容易に行うことができるコンタクトピンが開示される。
【0004】
また、特許文献2、3には、コンタクト端子において、試験中、ICソケットのソケット本体に載置されたBGA型のパッケージの半導体装置の電極面が一方向に反った場合、あるいは、電極面が上下に浮き沈む場合であっても、半導体装置の電極部におけるコンタクト端子の可動接点部相互間からの離脱、および、半導体装置の電極部の損傷を回避できるコンタクト端子が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-199921号公報
【文献】特開2017-152265号公報
【文献】特開2020-061378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
BGA型のパッケージを有する半導体装置用コンタクトソケットにおいて、ボール状のはんだに対して確実に電気的な接触を行うためには、コンタクトピンによってボール状のはんだを挟むようにすることが好ましい。この際、コンタクトピンによってはんだの表面を適度に擦り、はんだ表面の酸化膜を破って導電性を高めるワイピング効果を得る必要もある。特に、エージング試験では、厳しい環境条件において長時間にわたる安定したコンタクトが必要になる。
【0007】
本発明は、半導体装置のボール状のはんだとの確実かつ安定した導通を得ることができる半導体装置用コンタクトソケットおよびコンタクトピンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、いずれも第1方向に延在する弾性片からなり、第1方向に直交する第2方向に対向し、第1方向を含む面に関する面対称形状を有する第1本体部および第2本体部と、第1本体部および第2本体部の第1方向の他方である下側の端部に連設され、第1本体部および第2本体部を支持する基部と、を有するコンタクトピンと、基部を収容する固定部と、第1方向に可動であって、第1本体部および第2本体部のそれぞれの一部を収容する収容部が設けられたスライド部と、を備える半導体装置用コンタクトソケットである。
【0009】
この半導体装置用コンタクトソケットにおいて、第1本体部は、第1方向の一方である上側の端部に、半導体装置から下側に突出する電極に接触するための第1接触部を有し、第2本体部は、上側の端部に、半導体装置の電極に接触するための第2接触部を有し、第1接触部および第2接触部のそれぞれは、第2方向に突出する接触突起を有する。
収容部は、第1本体部の一部を収容する第1収容部と、第2本体部の一部を収容する第2収容部と、第2方向で第1収容部と第2収容部との間に位置して第1本体部および第2本体部のそれぞれの内側面に接触可能な介在部と、を有する。
【0010】
コンタクトピンは、基部側から上側へ向けて、第1本体部と第2本体部との間隔が狭くなって最狭部に至り、最狭部から、上側の端部に至る前に設けられた最広部までは間隔が広がる形状を有する。
【0011】
スライド部は、最狭部と最広部との間の内側面と介在部とが接触することにより、第1本体部と第2本体部とを離間するように弾性変形し、第1接触部と第2接触部との第2方向の離間距離を電極の第2方向の幅よりも広げる第1位置と、第1位置よりも固定部から離間した位置であって、最狭部と最広部との間に介在部を位置させて、第1本体部と第2本体部との弾性回復力により、接触突起を電極に接触させる第2位置と、第2位置よりも固定部から離間した位置であって、第1本体部の外側面が第1収容部の内側面に接触し、第2本体部の外側面が第2収容部の内側面に接触することにより、第1接触部の接触突起と第2接触部の接触突起とに、第2位置よりも近接させる力を発生させる第3位置と、に配置可能に第1方向に移動する。
【0012】
このような構成によれば、スライド部が第1位置に配置されると、コンタクトピンの第1接触部と第2接触部とが開く。また、スライド部が第2位置に配置されると、コンタクトピンの接触突起が半導体装置の電極に接触する。また、スライド部が第3位置に配置されると、コンタクトピンの接触突起が半導体装置の電極に噛み込むようになる。このような半導体装置用コンタクトソケットにおいて、コンタクトピンの第1本体部と第2本体部とが面対称形状のため、コンタクトピンの接触突起が半導体装置の電極の両側から均一に噛み込むようになる。
【0013】
上記半導体装置用コンタクトソケットにおいて、スライド部が第2位置から第3位置に移動したときに、接触突起の電極との接触位置を下側に移動させる向きの力が発生するように、第1本体部および第2本体部ならびに第1収容部および第2収容部は形成されていてもよい。これにより、コンタクトピンの接触突起が上から下に向けて半導体装置の電極を噛み込むようになり、電極表面の酸化皮膜などを破って確実な導通が行われる。
【0014】
上記半導体装置用コンタクトソケットにおいて、第1方向および第2方向に直交する第3方向に見て、接触突起における上側の先端が作る稜線は、いずれも、第2方向に対して所定の範囲の第1角度を有して下側に傾いて接触突起の先端へと延びるように構成されていてもよい。これにより、コンタクトピンの接触突起の先端が下向きに傾くようになり、接触突起によって半導体装置の電極を上から下に向けて噛み込むようになる。
【0015】
上記半導体装置用コンタクトソケットにおいて、第1本体部の接触突起および第2本体部の接触突起のそれぞれは、一対の突起部を有し、一対の突起部は、第1方向および第2方向に直交する第3方向に並ぶように構成されていてもよい。これにより、コンタクトピンの第1本体部および第2本体部のそれぞれに設けられた一対の突起部によって、第1方向に見て左右2点の合計4点で半導体装置の電極への噛み込みが行われる。
【0016】
上記半導体装置用コンタクトソケットにおいて、接触突起は、弾性片のプレス加工により形成されたものであり、一対の突起部は、弾性片の角部からなるものであってもよい。これにより、弾性片のプレス加工によってコンタクトピンの接触突起が形成され、切削による形成に比べて製造が容易となる。
【0017】
上記半導体装置用コンタクトソケットにおける第1位置において、第1本体部および第2本体部のそれぞれは、最広部を境として、最広部から上側に向けて第1本体部と第2本体部との第2方向の間隔が狭くなる方向に屈曲する形状に設けられていてもよい。これにより、コンタクトピンの第1本体部および第2本体部のそれぞれが、最広部から上側が内側に向けて絞られる形状になり、第1本体部および第2本体部の第2方向の挟み込み動作でも、電極の上から下への噛み込みが行いやすくなる。
【0018】
上記半導体装置用コンタクトソケットにおいて、最狭部は、基部における第1本体部および第2本体部を支持する支点と、上側の端部との中間位置よりも基部側に設けられていてもよい。これにより、介在部が当接する最狭部の位置を力点、接触突起の位置を作用点として、最狭部の移動量に対して接触突起の移動量が大きくなる。
【0019】
上記半導体装置用コンタクトソケットにおいて、第1本体部および第2本体部のそれぞれは、基部との連結部近傍に弾性係数が局所的に高い強化部を有していてもよい。これにより、強化部によって第1本体部および第2本体部の機械的強度が高まる。
【0020】
上記半導体装置用コンタクトソケットにおいて、電極は部分球状に設けられ、第2位置において、接触突起は、第1方向に見て電極の部分球状の大円よりも上側に接触するように構成されていてもよい。これにより、半導体装置の電極の部分球状の大円よりも上側の面にコンタクトピンの接触突起が接触して、接触突起の電極への確実な噛み込みが行われる。
【0021】
本発明の他の一態様は、半導体装置用コンタクトソケットに用いられるコンタクトピンであって、いずれも第1方向に延在する弾性片からなり、第1方向に直交する第2方向に対向し、第1方向を含む面に関する面対称形状を有する第1本体部および第2本体部と、第1本体部および第2本体部の第1方向の他方である下側の端部に連設され、第1本体部および第2本体部を支持する基部と、を備え、第1本体部は、第1方向の一方である上側の端部に、半導体装置から下側に突出する電極に接触するための第1接触部を有し、第2本体部は、上側の端部に、半導体装置の電極に接触するための第2接触部を有し、第1接触部および第2接触部のそれぞれは、第2方向に突出する接触突起を有し、第1本体部および第2本体部は、基部側から上側へ向けて、第1本体部と第2本体部との間隔が狭くなって最狭部に至り、最狭部から、上側の端部に至る前に設けられた最広部までは間隔が広がる形状を有するコンタクトピンである。
【0022】
このような構成によれば、コンタクトピンの第1本体部と第2本体部とが面対称形状であるとともに第1本体部と第2本体部とで略X字型の形状を有するため、第1接触部と第2接触部とで半導体装置の電極を両側から均一に抱え込むように電極を挟み、電極の上側から下側に向けた力によって接触突起が電極を噛み込むようになる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、半導体装置のボール状のはんだとの確実かつ安定した導通を得ることができる半導体装置用コンタクトソケットおよびコンタクトピンを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施形態に係る半導体装置用コンタクトソケットを例示する概略斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る半導体装置用コンタクトソケットを例示する概略側面図である。
【
図3】本実施形態に係る半導体装置用コンタクトソケットを例示する概略断面図である。
【
図4】本実施形態に係る半導体装置用コンタクトソケットを例示する部分拡大断面図である。
【
図8A】コンタクトピンの接触部を例示する拡大斜視図である。
【
図8B】コンタクトピンの接触部を例示する拡大正面図である。
【
図9A】本実施形態に係るコンタクトソケットによるコンタクト動作を例示する断面図である。
【
図9B】本実施形態に係るコンタクトソケットによるコンタクト動作を例示する断面図である。
【
図9C】本実施形態に係るコンタクトソケットによるコンタクト動作を例示する断面図である。
【
図10A】コンタクトピンの接触部と、はんだボールとの接触状態を例示する斜視図である。
【
図10B】コンタクトピンの接触部と、はんだボールとの接触状態を例示する正面図である。
【
図10C】コンタクトピンの接触部と、はんだボールとの接触状態を例示する平面図である。
【
図11】コンタクトピンの接触部の具体例を示す正面図である。
【
図12】コンタクトピンの接触部の具体例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0026】
(コンタクトソケット)
図1は、本実施形態に係る半導体装置用コンタクトソケットを例示する概略斜視図である。
図2は、本実施形態に係る半導体装置用コンタクトソケットを例示する概略側面図である。
図3は、本実施形態に係る半導体装置用コンタクトソケットを例示する概略断面図である。
図4は、本実施形態に係る半導体装置用コンタクトソケットを例示する部分拡大断面図である。
本実施形態に係るコンタクトソケット1は、半導体装置100の特性を測定する際に半導体装置100の電極との電気的導通を得るためのソケットである。
【0027】
コンタクトソケット1の測定対象は、BGA(Ball Grid Array)からなる半導体装置100である。コンタクトソケット1は、BGAからなる半導体装置100の複数の電極であるはんだボールBとの導通接触を行うため、複数のコンタクトピン10を備えている。コンタクトソケット1は、コンタクトピン10のほか、コンタクトピン10を収容する固定部20と、コンタクトピン10を可動するためのスライド部30とを備える。
【0028】
コンタクトピン10は、いずれも一方向に延在する弾性片からなる第1本体部11および第2本体部12と、第1本体部11および第2本体部12を支持する基部13と、を有する。ここで、本実施形態では、コンタクトピン10の延在方向を第1方向D1、第1方向D1と直交する方向の一つを第2方向D2、第1方向D1および第2方向D2と直交する方向を第3方向D3とする。また、第1方向D1を上下方向とも言い、第2方向D2を左右方向とも言う。
【0029】
第1本体部11および第2本体部12は、互いに第2方向D2に対向し、第1方向D1を含む面に関する面対称形状を有する。基部13は、第1本体部11および第2本体部12の第1方向D1の他方である下側の端部に連設され、第1本体部11および第2本体部12の下端側を支持する。
【0030】
コンタクトピン10は、BGAからなる半導体装置100の複数のはんだボールBのそれぞれに対応して設けられる。コンタクトピン10の下端側はベース基板50に埋設されており、第1方向D1の一方である上側に向けて第1本体部11および第2本体部12が延在する。半導体装置100は、はんだボールBを下側にして配置され、はんだボールBと対向するように上側を向くコンタクトピン10の先端部分とはんだボールBとの導通接触が行われる。
【0031】
固定部20は、ベース基板50の上側に配置され、コンタクトピン10の基部13を埋設することで基部13を支持する。固定部20で支持された基部13は、コンタクトピン10の第1本体部11および第2本体部12の可動の支点となる。
【0032】
スライド部30は、固定部20の上側であって、コンタクトピン10の基部13と先端との間に配置され、第1方向D1にスライド移動可能に設けられる。スライド部30は、コンタクトピン10の第1本体部11および第2本体部12のそれぞれの一部を収容する収容部31を有する。
【0033】
収容部31は、第1本体部11の一部を収容する第1収容部311と、第2本体部12の一部を収容する第2収容部312と、第2方向D2で第1収容部311と第2収容部312との間に位置して第1本体部11および第2本体部12のそれぞれの内側面に接触可能な介在部313と、を有する。
【0034】
コンタクトピン10は、スライド部30の収容部31を第1方向D1に貫通し、その第1本体部11および第2本体部12の先端部分をスライド部30の上側に露出させる。
【0035】
スライド部30の上下移動によって介在部313の第1本体部11および第2本体部12との接触位置が変化し、第1本体部11と第2本体部12との第2方向D2の間隔が変化する。この間隔の変化によって、第1本体部11および第2本体部12でのはんだボールBの挟み込みと、挟み込み解除との切り替えが行われる。
【0036】
コンタクトピン10はベース基板50を通して外部の機器と導通している。半導体装置100の測定を行う場合、コンタクトソケット1によって半導体装置100のはんだボールBとコンタクトピン10とを接触させ、外部の機器(測定機器)と半導体装置100とを導通させて信号の入出力を行う。コンタクトソケット1による半導体装置100の試験は、様々な環境で行われる。例えば、バーンイン試験では、高温の環境下で長時間の特性検査や信頼性検査が行われる。コンタクトソケット1においては、このような過酷環境であっても、はんだボールBとコンタクトピン10との確実な導通接触の状態を長時間維持できることが重要な要素となる。
【0037】
(コンタクトピン)
図5は、コンタクトピンを例示する斜視図である。
図6は、コンタクトピンを例示する正面図である。
図7は、コンタクトピンを例示する側面図である。
コンタクトピン10の第1本体部11は、第1方向D1の一方である上側の端部に、半導体装置100(
図2参照)から下側に突出する電極であるはんだボールB(
図2参照)と接触するための第1接触部111を有する。また、コンタクトピン10の第2本体部12は、上側の端部に、はんだボールBと接触するための第2接触部121を有する。第1接触部111および第2接触部121のそれぞれは、第2方向D2に突出する接触突起113を有する。
【0038】
また、コンタクトピン10は、基部13側から上側へ向けて、第1本体部11と第2本体部12との間隔が狭くなって最狭部10aに至り、最狭部10aから、上側の端部に至る前に設けられた最広部10bまでは間隔が広がる形状を有する。すなわち、コンタクトピン10は、正面(第3方向D3)に見て、第1本体部11と第2本体部12とで線対称(左右対称)な略X字型の形状に設けられる。
【0039】
図4に示すように、スライド部30の介在部313は、コンタクトピン10の第1本体部11と第2本体部12との間の最狭部10aと最広部10bとの間で上下移動する。介在部313が最狭部10aの位置にあると、介在部313から第1本体部11および第2本体部12に両者間を拡げる方向の力が加わり、第1本体部11と第2本体部12との間隔が拡げられる。一方、介在部313が最広部10bの位置にあると、介在部313から第1本体部11および第2本体部12に両者間を拡げる方向の力が加わらず、第1本体部11と第2本体部12との間隔は拡がらない。
【0040】
スライド部30の上下移動の量と、第1本体部11と第2本体部12との間隔の変化の量との関係は、介在部313の幅、最狭部10aと最広部10bとの間における第1本体部11および第2本体部12の傾斜角度(第1方向D1に対する傾斜角度)によって設定される。
【0041】
コンタクトピン10の第1本体部11と第2本体部12とは、正面(第3方向D3)に見て線対称な略X字型に設けられているため、スライド部30の介在部313の上下移動によって第1本体部11と第2本体部12との両方が左右対称に移動する。これにより、第1本体部11と第2本体部12との間隔の広狭変化も、両者間の中央を中心として均等に行われる。
【0042】
コンタクトピン10の第1本体部11および第2本体部12は弾性片であるため、介在部313が最広部10bに位置し、第1本体部11および第2本体部12の内側面に接触していない状態では、第1本体部11の外側面が第1収容部311の内側面に当接し、第2本体部12の外側面は第2収容部312の内側面に当接している。これにより、第1本体部11と第2本体部12との間隔の拡がりが規制される。
【0043】
図6に示すように、第1本体部11および第2本体部12のそれぞれは、最広部10bの上側が互いに接近する方向へ屈曲した形状に設けられているとよい。すなわち、第1本体部11および第2本体部12のそれぞれは、最広部10bを境として、最広部10bから上側に向けて第1本体部11と第2本体部12との第2方向D2の間隔が狭くなる方向に屈曲する形状に設けられていることが好ましい。これにより、最広部10bから上側における第1本体部11および第2本体部12のそれぞれが内側に向けて絞られる形状になる。このような形状によって、第1本体部11および第2本体部12の左右方向の挟み込み動作において、はんだボールB(
図2参照)の上から下への噛み込みが行いやすくなる。
【0044】
また、第1本体部11および第2本体部12のそれぞれは、基部13との連結部近傍に弾性係数が局所的に高い強化部15を有していてもよい。強化部15としては、例えば第1本体部11および第2本体部12のそれぞれの表面に設けられた凹凸構造やリブ構造が挙げられる。第1本体部11および第2本体部12は、スライド部30の上下移動によって弾性変形し、この弾性変形の応力が基部13との連結部近傍に集中しやすい。このため、強化部15を設けることで、第1本体部11および第2本体部12の機械的強度を高めることができる。
【0045】
コンタクトピンの構成材料は、適切な導電性を有していればよく、銅、銅合金などの銅系材料、アルミニウム、アルミニウム合金などのアルミニウム系材料、鉄、鋼などの鉄系材料が具体例として挙げられる。コンタクトピンは、後述するように接触突起113をプレス加工により形成することから、プレス加工性(塑性変形性)に優れていることが好ましい。また、接触突起113におけるはんだボールBの把持力には第1本体部11、第2本体部12の弾性回復力が含まれることから、適度なばね性を有していることが好ましい。これらの要請に応える観点から、コンタクトピンの構成材料の好適な例として、ベリリウム銅が挙げられる。
【0046】
(コンタクトピンの接触部)
図8Aは、コンタクトピンの接触部を例示する拡大斜視図である。
図8Bは、コンタクトピンの接触部を例示する拡大正面図である。
第1本体部11は、上側の端部に、半導体装置100のはんだボールB(
図2参照)と接触するための第1接触部111を有し、第2本体部12は、上側の端部に、はんだボールBと接触するための第2接触部121を有する。また、第1接触部111および第2接触部121のそれぞれは、左右方向に突出する接触突起113を有する。
【0047】
例えば、第1本体部11の接触突起113および第2本体部12の接触突起113のそれぞれは、一対の突起部113aを有し、一対の突起部113aは、第3方向D3に並ぶように構成される。これにより、第1本体部11の接触突起113および第2本体部12の接触突起113のそれぞれに設けられた一対の突起部113aによって、第1方向D1に見て左右2点の合計4点で半導体装置100のはんだボールBへの噛み込みが行われる。
【0048】
第1本体部11および第2本体部12は弾性片であり、接触突起113は、弾性片のプレス加工により形成される。また、一対の突起部113aは、矩形に設けられた弾性片の隅部をプレス加工によって斜め内側の下向きに折り曲げることで形成される。これにより、弾性片のプレス加工によってコンタクトピン10の接触突起113が形成され、切削による形成に比べて製造が容易となる。
【0049】
また、
図8Bに示すように、第3方向D3に見て、接触突起113における上側の先端が作る稜線Lは、いずれも、第2方向D2に対して所定の範囲の第1角度θを有して下側に傾いて接触突起113の先端へと延びるように構成される。これにより、コンタクトピン10の接触突起113の先端が下向きに傾くようになり、接触突起113によって半導体装置100のはんだボールBを上から下に向けて噛み込むようになる。また、この際、4点の突起部113aのそれぞれから、突起部113aの接触点から下側で、はんだボールBの中心側に向く方向への噛み込み力が加えられ、半導体装置100の浮き上がりを効果的に抑制することができる。
【0050】
接触突起113には、第1本体部11、第2本体部12を構成する材料(ベース材料)上に、他の材料からなる表面層が設けられていてもよい。例えば、ロジウムやロジウム合金、あるいはダイヤモンドライクカーボンのような、ベース材料よりも硬質の材料からなる表面層が設けられていれば、はんだボールBに咬み込んだ接触突起113の接触圧を高めることができる。これにより、はんだボールBにおいて適切に酸化膜の破壊が行われ、接触突起113とはんだボールBとの金属接触がより安定的に行われ、接触抵抗を低減させることができる。
【0051】
表面層の好ましい具体例として、接触突起113の基材側から、ニッケルなどの下地層、金または金合金からなる層(金系材料層)、およびロジウムまたはロジウム合金からなる層(ロジウム系材料層)を有する積層構造が挙げられる。下地層および金系材料層は、ベリリウム銅などからなる基材に対するロジウム系材料層の密着性を高めるものであり、下地層の厚さとして数μm程度が例示され、金系材料層の厚さとして0.1μm以下が例示される。ロジウム系材料層はある程度の厚さを有していることにより層としての機械強度を高めることができるが、過度に厚い場合には内部応力に基づくクラックが生じやすくなる。それゆえ、ロジウム系材料層は、その組成にも依存するが、1μm~10μm程度とすることが好ましい場合がある。なお、ロジウム系材料層ははんだに対する相互作用は金系材料層よりも少ないため、ロジウム系材料層の硬度の高さに起因してはんだボールBに対する接触圧が高くなっても、ロジウム系材料層ははんだボールBに対する凝着が生じにくい。
【0052】
表面層の他の例として、接触突起113とはんだボールBとの接触抵抗を低くする観点から、表面層の最表面を金系材料層から構成してもよい。この場合において、最表面に位置する金系材料層と下地層との間に、銀または銀合金からなる層(銀系材料層)が位置することが好ましい場合がある。
【0053】
金系材料層は軟質であるためはんだボールBとの接触面積が増えやすく、それゆえ接触抵抗が低くなるという利点を有するが、コスト的理由などから、厚膜を形成することは実用的でない。このため、例えば接触突起113の加工ばらつきなどに起因して表面に微小突起が存在すると、接触突起113上の金系材料層においてはんだボールBとの接触圧が局所的に高くなり、この接触圧が高い部分において金系材料層とはんだボールBとの凝着が生じやすくなる傾向があった。この傾向は、金系材料層とはんだボールBとの接触時間が長くなるバーンインテストにおいて顕在化しやすい。
【0054】
そこで、金系材料層の下地層側に金系材料層と同様に軟質であって導電性に優れる銀系材料層を配置することにより、接触突起113の表面に微小突起があっても、銀系材料層が適度に変形して微小突起の影響を緩和し、金系材料層とはんだボールBとの接触圧が局所的に高まることを抑制することができる。このような銀系材料層の接触状態の緩和機能を適切に果たす観点から、銀系材料層の厚さは例えば1μm~10μm程度とすることが好ましい場合がある。
【0055】
(コンタクト動作)
図9Aから
図9Cは、本実施形態に係るコンタクトソケットによるコンタクト動作を例示する断面図である。
図9Aには、スライド部30を第1位置にスライドさせた状態が示され、
図9Bには、スライド部30を第2位置にスライドさせた状態が示され、
図9Bには、スライド部30を第3位置にスライドさせた状態が示される。
【0056】
図9Aに示すように、第1位置では、スライド部30の介在部313が最狭部10aと最広部10bとの間において、第1本体部11および第2本体部12のそれぞれの内側面と接触する。この介在部313の第1本体部11および第2本体部12への接触によって、第1本体部11および第2本体部12は互いを離間する方向に弾性変形する。この弾性変形によって、第1接触部111と第2接触部121との第2方向D2の離間距離が、はんだボールBの第2方向D2の幅よりも広くなり、第1接触部111および第2接触部121と、はんだボールBとの接触は行われない。第1位置は、コンタクトソケット1(
図2参照)に対して半導体装置100を着脱可能にする位置である。
【0057】
図9Bに示すように、第2位置では、スライド部30は第1位置よりも固定部20(
図3参照)から離間した位置となる。スライド部30の介在部313は、最狭部10aと最広部10bとの間において、第1位置のときよりも最広部10b側に位置することになる。これにより、第1本体部11と第2本体部12との弾性回復力によって、第1位置のときよりも第1本体部11と第2本体部12との第2方向D2の間隔が狭くなる。これにより、第1本体部11の第1接触部111および第2本体部12の第2接触部121が左右方向から均一に抱え込むようにはんだボールBを挟み、接触突起113によってはんだボールBとの接触が行われる。
【0058】
図9Cに示すように、第3位置では、スライド部30は第2位置よりもさらに固定部20(
図3参照)から離間した位置となる。第3位置では、介在部313と第1本体部11および第2本体部12とは接触せず、第1本体部11の外側面が第1収容部311の内側面に接触し、第2本体部12の外側面が第2収容部312の内側面に接触する。これにより、第1接触部111の接触突起113と第2接触部121の接触突起113とに、第2位置のときよりも、はんだボールBに近接させる力が与えられ、接触突起113がはんだボールBの左右両側から均一に噛み込むようになる。
【0059】
接触突起113とはんだボールBとの接触を解除する場合は、上記とは逆に、
図9Cに示す第3位置から
図9Bに示す第2位置、さらに
図9Aに示す第1位置へスライド部30を移動させる。これにより、第1本体部11および第2本体部12が左右均一に開いて、接触突起113がはんだボールBから離れることになる。
【0060】
ここで、介在部313の下端側にはテーパ部313aが設けられていることが好ましい。テーパ部313aは第1本体部11および第2本体部12とそれぞれ対向する面に設けられる。テーパ部313aのテーパ角度(第1方向D1に対する角度)は、第1本体部11および第2本体部12のそれぞれの内側面の傾斜角度よりも僅かに大きくなっている。これにより、スライド部30が第3位置から第2位置、さらには第1位置へ移動する動作(解除動作)において、介在部313と第1本体部11および第2本体部12との当接がテーパ部313aによって互いに平行に近い状態で接触することになり、滑らかに可動させることができる。
【0061】
また、コンタクトピン10の最狭部10aは、基部13における第1本体部11および第2本体部12を支持する支点と、上側の端部との中間位置よりも基部13側に設けられているとよい。すなわち、コンタクトピン10の最狭部10aの位置を、基部13と上側の端部との中間位置よりも下側に設けておくとよい。これにより、介在部313が当接するコンタクトピン10の最狭部10aの位置を力点、接触突起113の位置を作用点として、力点の位置が支点と作用点との中間よりも支点側に位置するため、最狭部10aの移動量に対して接触突起113の移動量を大きくすることができる。つまり、スライド部30の少ない移動量で第1本体部11および第2本体部12の先端を大きく開閉できるようになる。
【0062】
本実施形態では、スライド部30の上下方向の移動によって第1本体部11および第2本体部12の左右均一な挟み込み移動を行うことができる。これにより、スライド部30を左右方向に移動させたり、第1本体部11および第2本体部12を左右不均一に動作させたりする場合に比べ、コンタクトピン10やスライド部30といった可動部材の左右方向の可動範囲を狭くすることができる。これにより、左右に隣り合うコンタクトピン10の配置間隔を狭くすることができ、狭ピッチのはんだボールBにも対応可能となる。また、コンタクトソケット1の左右方向への大型化を抑制することができる。
【0063】
このような動作によって、コンタクトピン10の接触突起113がはんだボールBと接触する際、スライド部30が第2位置にある段階で接触が開始され、第2位置からさらに第3位置に至ることで、第1本体部11と第2本体部12とが左右からスライド部30の第1収容部311の内側面と第2収容部312の内側面とで左右両側から押圧され、接触突起113をはんだボールBに噛み込ませるようになる。
【0064】
接触突起113の噛み込みははんだボールBの左右両側から均一に行われる。そして、スライド部30が第2位置から第3位置に移動したときに、接触突起113のはんだボールBとの接触位置を下側に移動させる向きの力が発生するため、接触突起113が上側から下側に向けてはんだボールBを噛み込むようになり、はんだボールBの表面の酸化皮膜などを破って確実な導通が行われる。
【0065】
(はんだボールとの接触)
図10Aは、コンタクトピンの接触部と、はんだボールとの接触状態を例示する斜視図である。
図10Bは、コンタクトピンの接触部と、はんだボールとの接触状態を例示する正面図である。
図10Cは、コンタクトピンの接触部と、はんだボールとの接触状態を例示する平面図である。
なお、説明の便宜上、
図10Aから
図10Cでは、はんだボールBを球体で表しているが、半導体装置100に設けられる電極としてのはんだボールBは、大円Sよりも上の所定位置を平面で切り取った下側の部分が半導体装置100から露出した部分球状(球欠型)となっている。
【0066】
図10Aから
図10Cには、スライド部30が第2位置のときの接触突起113とはんだボールBとの位置関係が示される。第1接触部111および第2接触部121によりはんだボールBを両側から挟み込むと、第1接触部111の接触突起113および第2接触部121の接触突起113のそれぞれが、はんだボールBと接触することになる。この際、接触突起113は、第1方向D1に見て、はんだボールBの部分球状の大円Sよりも上側に接触する。これにより、はんだボールBの部分球状の大円Sよりも上側の面にコンタクトピン10の接触突起113が接触して、接触突起113のはんだボールBへの確実な噛み込みが行われる。
【0067】
また、スライド部30が第3位置のときは、第2位置のときよりも第1本体部11および第2本体部12に挟み込みの力が加わるため、接触突起113は、はんだボールBとの接触位置からさらに噛み込む力が増して接触するようになる。この際、第1本体部11および第2本体部12の噛み込み力は、左右の接触突起113を接触位置から斜め下方、内向きに動かす力として作用する。これにより、接触突起113は、はんだボールBと接触してから表面を掻きながら内部に食い込むようになり、はんだボールBの表面の酸化皮膜などを確実に破り、低抵抗で導通できるようになる。このような接触突起113の噛み込みによる接触で、エージング試験やバーンイン試験のような環境下でも確実な導通が維持されることになる。
【0068】
(コンタクトピンの接触部の具体例)
図11は、コンタクトピンの接触部の具体例を示す正面図である。
図12は、コンタクトピンの接触部の具体例を示す側面図である。
コンタクトピン10は、弾性部材をプレス加工することで形成される。コンタクトピン10は、プレス加工によって第1本体部11と第2本体部12とで互いの内面側を向かい合わせ、線対称(左右対称)な略X字型に設けられる。また、第1本体部11および第2本体部12のそれぞれの先端部の矩形に形成された隅部を斜め内側に折り曲げるプレス加工によって接触突起113が形成され、隅部が下方内向きに尖る突起部113aとなる。
【0069】
このように、第1本体部11および第2本体部12の形成とともに、接触突起113もプレス加工によって形成できるため、切削による形成に比べてコンタクトピン10の製造が容易となる。
【0070】
以上説明したように、実施形態によれば、半導体装置100のはんだボールBとの確実かつ安定した導通を得ることができるコンタクトソケット1およびコンタクトピン10を提供することが可能になる。
【0071】
なお、上記に本実施形態およびその具体例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、前述の実施形態またはその具体例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0072】
1…コンタクトソケット
10…コンタクトピン
10a…最狭部
10b…最広部
11…第1本体部
12…第2本体部
13…基部
15…強化部
20…固定部
30…スライド部
31…収容部
50…ベース基板
100…半導体装置
111…第1接触部
113…接触突起
113a…突起部
121…第2接触部
311…第1収容部
312…第2収容部
313…介在部
313a…テーパ部
B…はんだボール
L…稜線
S…大円
θ…第1角度
【要約】
【課題】半導体装置のボール状のはんだとの確実かつ安定した導通を得ることができる半導体装置用コンタクトソケットおよびコンタクトピンを提供すること。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る半導体装置用コンタクトソケットは、いずれも第1方向に延在する弾性片からなり、第1方向に直交する第2方向に対向し、第1方向を含む面に関する面対称形状を有する第1本体部および第2本体部と、第1本体部および第2本体部の第1方向の他方である下側の端部に連設され、第1本体部および第2本体部を支持する基部と、を有するコンタクトピンと、基部を収容する固定部と、第1方向に可動であって、第1本体部および第2本体部のそれぞれの一部を収容する収容部が設けられたスライド部と、を備え、コンタクトピンは、基部側から上側へ向けて、第1本体部と第2本体部との間隔が狭くなって最狭部に至り、最狭部から、上側の端部に至る前に設けられた最広部までは間隔が広がる形状を有する。
【選択図】
図3