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特許7465032主食用ペットフードの調整方法および調理済み食品
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  • 特許-主食用ペットフードの調整方法および調理済み食品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】主食用ペットフードの調整方法および調理済み食品
(51)【国際特許分類】
   A23K 50/40 20160101AFI20240403BHJP
   A23K 20/147 20160101ALI20240403BHJP
   A23K 20/158 20160101ALI20240403BHJP
   A23K 20/163 20160101ALI20240403BHJP
【FI】
A23K50/40
A23K20/147
A23K20/158
A23K20/163
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023184537
(22)【出願日】2023-10-27
【審査請求日】2023-10-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522177927
【氏名又は名称】ペットフード・テクノリサーチ合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132333
【弁理士】
【氏名又は名称】大澤 孝明
(72)【発明者】
【氏名】藤井 立哉
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/053091(WO,A1)
【文献】特表2019-510493(JP,A)
【文献】特表2009-531448(JP,A)
【文献】トッピングとしての与え方,2023年03月21日,インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20230321180521/https://www.k9natural.jp/switch/topping.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 50/40
A23K 20/147
A23K 20/158
A23K 20/163
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギーを産生する栄養成分としてたんぱく質・脂質・炭水化物の構成比が予め調整された調理済み食品と補充食品を混合してペットフードを調整する主食用ペットフードの調整方法であって、
前記補充食品が、可食状態にある穀類、芋類、およびでん粉類から選択される炭水化物補充食品、植物性および動物性の食用の油脂類から選択される脂質補充食品から選択され、任意にビタミン類やミネラル類などのエネルギー非産生微量栄養成分混合物を含み、
前記調理済み食品に、前記炭水化物補充食品、前記脂質補充食品及び任意に前記エネルギー非産生微量栄養成分混合物の混合比率が示されている混合比率説明であって、ペットの健康の維持または複数の疾病の状態のそれぞれに応じた一意の混合比率が複数示されており、前記調理済み食品を、前記ペットの健康の維持または複数の疾病の状態のうちのひとつに応じた混合比率説明に従って前記補充食品を混合することにより、ペットの健康の維持または疾病の管理に求められる特有の栄養成分の構成となる主食用ペットフードの調整方法。
【請求項2】
前記調理済み食品の前記構成比が、乾物量の重量で、たんぱく質40%以上、脂質25%以下、炭水化物60%以下からなる請求項1に記載の主食用ペットフードの調整方法。
【請求項3】
前記混合比率説明が、前記調理済み食品の包装から知得されるか、前記調理済み食品と共に包装されているものから知得されるか、あるいは、販売者から提供されるものであるか、獣医師から提供されるものである請求項1に記載の主食用ペットフードの調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、犬や猫などのペットの健康または疾病の状態に特有の要求栄養構成を有する食品を、飼い主が容易に調整することができるペットフードに関する。
【背景技術】
【0002】
犬や猫などのペットのための食品には、毎日の主要な食事として給与することを目的として、当該ペットフードと水のみで指定された成長段階における健康を維持できるような栄養的にバランスのとれた総合栄養食、栄養成分の量や比率が調整され、特定の疾病又は健康状態にあるペットの栄養学的サポートを目的に、獣医療において獣医師の指導のもとで食事管理に使用されることを意図した療法食、おやつ・ご褒美・コミュニケーションの手段として、時を選ばず給与することを目的とした間食、特定の栄養成分の調整・補給・又は嗜好増進として与えることを目的とし、一般食(おかずタイプ)、栄養補完食、カロリー補給食、副食、サプリメントなどと呼ばれるその他の目的食がある。
犬や猫などのペットも人間と同じく、たんぱく質、脂質、炭水化物、ミネラル、ビタミンなどの栄養素が必要であり、主食として、健康な場合は総合栄養食を与え、また、病気の犬猫の治療において食事管理が必要な場合、栄養成分の量や比率が調整された療法食による食事療法が行われている。
【0003】
ペットフードは水分含量により、ドライタイプ、半生タイプ、ウエットタイプなどに分類されるが、それぞれ取り扱いやすさ、食べやすさ、栄養構成など異なる特徴を有している。しかしながら、ペットがその体調により食欲が減退している場合でも、積極的に摂取できるよう、ペットに好んで食される様々な工夫が継続してなされている。(特許文献1、特許文献2)。
また、健康に配慮した総合栄養食や、ペットの疾病や症状に適した栄養特性を有する療法食は、多くの品種が販売されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-118735
【文献】特開2020-89343
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
市販されている総合栄養食と療法食は非常に多くの種類があり、一般に製造品目数が多くなるほど、コストが割高となり、生産効率も低下する。また、市販されているペットフードの食味や風味を改善することは、常に存在する課題である。
総合栄養食は、栄養バランスが整えられているので、ペットの食欲を増進させる食材を過度に増加させることはできず、また、療法食は、疾病に適した栄養特性とするため、たんぱく質が制限されていたり、脂質が制限されている。それにより、所謂おいしさの元となるアミノ酸や脂質の割合が減少してしまい、おいしさも減少することとなる。疾病のために体調を崩しているペットは、食欲も減退しているので、療法食には一層の食味や風味の改善が求められている。
【0006】
また、療法食は、ペットの嗜好に合わないからと言って、他の用途に調整されたペットフードを与えることはできず、代替品を探すことが難しいため、ペットの飼い主が手作りで食事を工夫するということも考えられる。それは、新鮮な材料を使った作りたての食事は、食味や風味に優れ、ペットの好物となるからである。また、ペットの飼い主が、ペットに手作りの食事を与えることは、ペットへ愛情を注ぐ手段の一つとなる。
しかしながら、調理の際、栄養バランスを整えることは大変難しく煩わしいものであり、原材料から毎回調理することは、大変な手間である。まして、食事療法においては、手作り食で特別な要求栄養構成に適合させることは非常に困難である。
さらに、手作り食でビタミン類やミネラル類などの微量栄養成分を適切な量に調整することも煩わしいものである。
【0007】
本発明は、上記課題を解決し、犬や猫などのペットの総合栄養食や療法食に相当する食味や風味の改善された主食用ペットフードを簡便に作ることができる主食用ペットフードの調整方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、犬や猫などのペットの総合栄養食や療法食に相当する食味や風味の改善された主食用ペットフードを簡便に作ることができる主食用ペットフードの調整方法に用いることができる調理済み食品を提供することを目的とする。
また、本発明は、ビタミン類やミネラル類が調整された、犬や猫などのペットの総合栄養食や療法食に相当する食味や風味の改善された主食用ペットフードを簡便に作ることができる主食用ペットフードの調整方法および主食用ペットフードの調整方法に用いることができる調理済み食品を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)(3)(5)~(7)の本発明により、達成される。
【0009】
(1) エネルギーを産生する栄養成分としてたんぱく質・脂質・炭水化物の構成比が予め調整された調理済み食品と補充食品を混合してペットフードを調整する主食用ペットフードの調整方法であって、前記補充食品が、可食状態にある穀類、芋類、およびでん粉類から選択される炭水化物補充食品、植物性および動物性の食用の油脂類から選択される脂質補充食品から選択され、任意にビタミン類やミネラル類などのエネルギー非産生微量栄養成分混合物を含み、前記調理済み食品に、前記炭水化物補充食品、前記脂質補充食品及び任意に前記エネルギー非産生微量栄養成分混合物の混合比率が示されている混合比率説明であって、ペットの健康の維持または複数の疾病の状態のそれぞれに応じた一意の混合比率が複数示されており、前記調理済み食品を、前記ペットの健康の維持または複数の疾病の状態のうちのひとつに応じた混合比率説明に従って前記補充食品を混合することにより、ペットの健康の維持または疾病の管理に求められる特有の栄養成分の構成となる主食用ペットフードの調整方法。
【0011】
(3) 前記調理済み食品の前記構成比が、乾物量の重量で、たんぱく質40%以上、脂質25%以下、炭水化物60%以下からなる前記(1)または(2)に記載の主食用ペットフードの調整方法。
【0013】
(5) 乾物量の重量で、前記脂質が20%以下である前記(3)または(4)に記載の主食用ペットフードの調整方法。
【0014】
(6) 前記調理済み食品に、ビタミン・ミネラル等のエネルギー非産生微量栄養成分が所定の比率で含まれてなる前記(1)ないし(5)に記載の主食用ペットフードの調整方法。
【0015】
(7) 前記混合比率説明が、前記調理済み食品の包装から知得されるか、前記調理済み食品と共に包装されているものから知得されるか、あるいは、販売者から提供されるものであるか、獣医師から提供されるものである前記(1)ないし(6)に記載の主食用ペットフードの調整方法。
【0016】
(8) エネルギーを産生する栄養成分としてたんぱく質・脂質・炭水化物の構成比が、乾物量の重量で、たんぱく質40%以上、脂質25%以下、炭水化物60%以下からなる調理済み食品。
【0017】
(9) 乾物量の重量で、前記脂質が20%以下である前記(8)に記載の調理済み食品。
【0018】
(10) 補充食品を、ペットの健康の維持または複数の疾病の状態のそれぞれに応じた所定の混合比率で混合することにより、ペットの健康の維持または複数の疾病のそれぞれの管理に求められる特有の要求栄養構成とすることができる前記(8)または(9)に記載の調理済み食品。
【0019】
(11) 前記補充食品が、可食状態にある穀類、芋類、およびでん粉類から選択される炭水化物補充食品、植物性および動物性の食用の油脂類から選択される脂質補充食品から選択され、任意にビタミン類やミネラル類などのエネルギー非産生微量栄養成分混合物を含む前記(10)に記載の調理済み食品。
【0020】
(12) エネルギーを産生しない栄養成分であるビタミン類とミネラル類から選ばれる微量成分が所定の比率で含まれてなる前記(8)ないし(11)に記載の調理済み食品。
【0021】
(13) 前記混合比率が表示されている混合比率説明を有する前記(8)ないし(12)に記載の調理済み食品。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、汎用の食品である炭水化物補充食品及び汎用食品である脂質補充食品を混合比率の説明の通りに混合することで、食味や風味を改善し、ペットの総合栄養食や種々の療法食に相当する主食用ペットフードを簡便に手作りすることができる。
また、本発明は、市販のペットの総合栄養食や種々の療法食の種類を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の主食用ペットフードの調整方法の概念を表す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明において、ペットフードに関する用語については、『飼い主のためのペットフード・ガイドライン』(環境省発行2018年8月第3版)に掲載されているものはその用法に基づく。また、療法食に関する用語については、『療法食ガイドライン』(一般社団法人獣医療法食評価センター 2016年7月改訂)に掲載されているものはその用法に基づく。
【0025】
本発明の主食用ペットフードの調整方法は、エネルギーを産生する栄養成分としてたんぱく質・脂質・炭水化物の構成比が調整された調理済み食品と補充食品を混合してペットフードを調整する主食用ペットフードの調整方法であって、前記補充食品の混合比率が示されている混合比率説明に従って前記補充食品を前記調理済み食品と混合することにより、ペットの健康の維持または疾病の管理に求められる特有の要求栄養の構成となるものである。
主食用ペットフードとは、総合栄養食や療法食のように、犬や猫などペットに、毎日の主要な食事として与えるペットフードである。
【0026】
前記補充食品は、可食状態にある穀類、芋類、およびでん粉類などの汎用の炭水化物食品から選択される炭水化物補充食品、植物性および動物性の食用の汎用の油脂類から選択される脂質補充食品から選択され、任意にビタミン類やミネラル類などのエネルギー非産生微量栄養成分混合物を含む。前記炭水化物補充食品と前記脂質補充食品のどちらか一つは、前記混合比率説明に必ず含まれ、ビタミン類やミネラル類などのエネルギー非産生微量栄養成分混合物は、前記混合比率説明に含まれなくてもよい。
【0027】
図1は、本発明の主食用ペットフードの調整方法の概念を表す模式図である。それぞれの外枠は、ペットへ与える食品全体を表し、枠の内側のそれぞれの領域は、本発明の調理済み食品、炭水化物補充食品、脂質補充食品を表し、それぞれの領域の面積比率は、それぞれの食品の混合比率を表し、この比率が混合比率説明に記載されている。
それぞれの外枠は、左から、A:総合栄養食相当、B:消化器疾患のひとつである膵炎の栄養管理に用いる低脂肪の療養食相当、C:慢性腎機能低下の状態である腎臓病の栄養管理に用いる療法食相当、D:皮膚疾患(皮膚病)の栄養管理に用いる療養食相当を表している。Bは、膵炎の栄養管理に用いるために、脂質補充食品は混合せず、Cは、腎臓病の栄養管理に用いるために、たんぱく質を含む調理済み食品の比率が抑えられている。Dは、たんぱく質を含む前記調理済み食品の割合が大きく、炭水化物が抑えられることになる。
【0028】
図1から理解されるように、本発明の調理済み食品は既定の栄養構成を有するので、前記調理済み食品と、それぞれの用途に特有の要求栄養構成とに基づいた混合比率が示されている混合比率説明に従って、各補充食品を混合することにより、簡便にペットの健康の維持または複数の疾病の管理に求められる特有の要求栄養構成とすることができ、健康の維持のための総合栄養食と複数の疾患の状態に合わせた療養食に相当する主食用ペットフードを調整することができるのである。
本発明は、前記調理済み食品と前記補充食品を前記混合比率説明に従って混合することにより、総合栄養食と複数の疾患の状態に合わせた療養食に相当する食品を提供することができる優れた主食用ペットフードの調整方法である。
【0029】
本発明の調理済み食品は、たんぱく質と脂質と炭水化物および場合によりビタミン類やミネラル類の構成比が調整されている。前記構成比率は、具体的には、それぞれ乾物量の重量で、たんぱく質40%以上、脂質25%以上、炭水化物60%以下である。好ましくは、たんぱく質40%以上、脂質20%以下、炭水化物60%以下である。
本発明の調理済み食品は、ペットへ食事を与える際に、汎用の食品である炭水化物補充食品と汎用の食品である脂質補充食品のうち少なくとも一つを所定の比率で混合することで、総合栄養食および複数の疾患の療法食に相当する主食用ペットフードとすることができる。
【0030】
本発明の調理済み食品は、肉類、魚介類、野菜類、きのこ類、豆類、藻類など、全ての食材の中から、各素材の各栄養成分の割合を考慮し、前記乾物量のたんぱく質、脂質、および炭水化物の重量構成比が上記の所定の比率となるよう選択し、適当な大きさに切り、水を加え、加熱等して調理して得ることができる。製品の性状に合わせ、加水、除水など行うことができる。
また、ビタミン類やミネラル類を調整するために、それぞれ精製された単体を添加することができる。
【0031】
前記調理された食品は、包装工程において、種々の包装と保存の形態を取ることができる。即ち、プラスチックなどの密封容器に入れて冷凍保存としたり、缶やプラスチックの密封容器に入れてレトルト殺菌し、常温保存としたり、凍結乾燥して密封容器にいれ常温保存するなどが挙げられる。
【0032】
本発明の炭水化物補充食品は、日常の生活において入手が容易な汎用食品であり、米飯、もち、粥、うどん、そば、パン、とうもろこしなどを可食状態とした穀類や、可食状態のさつまいも、さといも、じゃがいもなどの芋類、およびでんぷん粉類がある。
また、本発明の脂質補充食品は、日常の生活において入手が容易な、アマニ油、オリーブ油、なたね油、大豆油、べに花油、ごま油などの植物油、牛脂、ラードなどの動物性の油脂など、食用の油脂類がある。
また、ビタミン類やミネラル類を調整するための、本発明のエネルギー非産生微量栄養成分混合物としては、骨粉末、貝殻粉末、各種食品添加物などを用いることができる。
【0033】
さらに、本発明は、エネルギーを産生しない栄養成分であるビタミン類やミネラル類などのエネルギー非産生微量栄養成分混合物について、前記調理済み食品の食材に含まれる前記微量成分の含有量が不足する場合は、適量のミネラル類やビタミン類などの微量成分を予め添加して調理済み食品として製造することができる。
また、適用する総合栄養食や療法食の必要量に合わせ、補充食品として、必要なミネラル類やビタミン類などの微量成分を含有する汎用食材であるエネルギー非産生微量栄養成分混合物の混合比率を前記混合比率説明に記載することができる。
必要な前記微量成分を所定の比率で予め添加して製造することにより、より優れた調理済み食品とすることができ、また、必要なエネルギー非産生微量栄養成分混合物が記載された混合比率説明を採用することにより、より優れた調理済み食品とすることができる。
前記エネルギー非産生微量栄養成分混合物としては、具体的には、骨粉末、貝殻粉末、各種食品添加物などが挙げられる。
【0034】
本発明の混合比率説明は、前記調理済み食品の包装から知得されるか、前記調理済み食品と共に包装されているものから知得されるか、あるいは、販売者から提供されるものであるか、獣医師から提供されるものである。
『包装から知得され』とは、前記調理済み食品が直接あるいは重畳して包装されているプラスチックや紙、金属などの袋や箱・函などの容器や包装のいずれかに、前記混合比率説明が直接記載され、あるいは印刷されたシールが貼付されているものを含む。また、『共に包装され』とは、前記混合比率が印刷などして表示された、前記調理済み食品の前記容器や前記包装とは別の物が、前記調理済み食品とともに包装されることを含む。また『知得され』とは、前記混合比率説明が文字通り記載されている他、前記混合比率説明を知得できるコンピュータ読み取り可能な表示やウエブサイトアドレスが表示されていることを含む。ここで、コンピュータ読み取り可能な表示とは、画像読み取り装置を有するパーソナルコンピュータ、スマートフォンなどの電子機器により読み取られるバーコードなどの情報が埋め込まれた画像、あるいは電磁誘導などにより通信可能なICタグなどが貼付等されていることにより前記電子機器等に読み込まれることにより、前記混合比率説明の表示が可能なることなどを含む。また、前記混合比率説明が掲載されているウエブサイトアドレスが記載されていることを含む。
【0035】
『販売者から提供されるもの』とは、本発明の調理済み食品が、流通、販売等される際、販売者、配達業者など、本発明の調理済み食品の提供者から、購入者、使用者に提供され書面や電子機器を介した電子情報として提供される前記混合比率説明を含む。
また、『獣医師から提供されるもの』とは、動物病院等の動物医療機関において、ペットの診療を受けた際、獣医師から療法食による食事療法を処方されたときに、獣医師から提供される処方箋、指示書等を含む。
【0036】
前記混合比率説明には、調理済み食品の名称、ペットの動物種、相当する食品の区分(総合栄養食、食事療法の適応となる特定の疾病又は健康状態など)、相当する食品の種別に対応した調理済み食品、炭水化物補充食品および脂質補充食品の重量または比率、炭水化物補充食品の種別、脂質補充食品の種別が記載されていてもよい。また場合によりエネルギー非産生微量栄養成分混合物の重量又は比率、種別が記載されていてもよい。
【0037】
(調理済み食品の実施例1)
調理済み食品の原材料は、鶏もも肉100g、豚ひき肉50g、煮干し粉10g、かぼちゃ40g、にんじん40g、ブロッコリー40g、しめじ25g、水適量とした。
前記原材料全てを、それぞれ適当な大きさにカットし、加熱調理用容器に入れ、混合し、材料が食事に適する硬さになるまで加熱調理した。
加熱調理が終了したら、加熱により水分を蒸発させ、製品の水分含量は70%であった。水分含量は、試作段階で、食品の性状を確認しながら、加熱温度と時間を管理して調整した。食品調理後、水分含量その他成分の分析を行い製造条件を定めた。実生産では、試作段階で定めた条件を管理し製造した。
【0038】
水分の調節ができたら、調理済み食品を販売に供するための包装工程として、プラスチック容器に充填密封し、急速冷凍し、調理済み食品とした。
【0039】
表1に、上記方法で製造した調理済み食品について、日本食品標準成分表2020年版(八訂)をもとに算出した栄養成分の構成比を示す。
水分含量が70%に調整された調理済み食品100gには、たんぱく質17.4g、脂質6.1g、炭水化物5.0gが含まれ、乾物量による構成比でたんぱく質57.9%、脂質20.4%、炭水化物16.6%となる。
【0040】
【表1】
【0041】
表2は、ペットの健康または疾病の状態に特有の要求栄養に応じて設定される本実施例の調理済み食品、炭水化物補充食品、脂質補充食品の混合比率説明である。炭水化物補充食品としてご飯を選択し、脂質補充食品としてアマニ油を選択し、体重4kgの犬または猫の一日あたりの食事量として計算している。
なお、ぞれぞれの利用目的に応じた混合比率は次のとおりである。
A:犬の健康維持食(成犬用)の配合例
B:犬の膵炎などの栄養管理に脂質の含有量を制限した配合例
C:犬の腎臓病などの栄養管理にたんぱく質の含有量を制限した配合例
D:犬の皮膚疾患などの栄養管理に必須脂肪酸を増強した配合例
E:猫の健康維持食(成猫用)の配合例
F:猫の腎臓病などの栄養管理にたんぱく質の含有量を制限した配合例
【0042】
【表2】
【0043】
表3は、上記調理済み食品・炭水化物補充食品・脂質補充食品の混合物に含まれる栄養成分の構成比を乾物量で示している。
【0044】
【表3】
【0045】
(調理済み食品の実施例2)
調理済み食品の原材料は、鶏もも肉140g、豚ひき肉20g、かぼちゃ40g、にんじん40g、ブロッコリー20g、しめじ20g、片栗粉10g、骨粉末4g、食塩1.5g、水適量とした。
その他は、実施例1と同様に行った。
【0046】
表4に、上記方法で製造した調理済み食品について、日本食品標準成分表2020年版(八訂)をもとに算出した栄養成分の構成比を示す。
水分含量が70%に調整された調理済み食品100gには、たんぱく質15.4g、脂質4.4g、炭水化物7.5gが含まれ、乾燥物質量による構成比でたんぱく質51.5%、脂質14.5%、炭水化物24.9%となる。
【0047】
【表4】
【0048】
表5は、ペットの健康の維持または疾病の管理に求められる特有の要求栄養に応じて設定される本実施例の調理済み食品、炭水化物補充食品、脂質補充食品の混合比率説明である。炭水化物補充食品としてご飯を選択し、脂質補充食品としてアマニ油を選択し、体重4kgの犬または猫の一日あたりの食事量として計算している。
なお、ぞれぞれの利用区分は、表2の区分と同様である。
【0049】
【表5】
【0050】
表6は、本実施例の調理済み食品に、炭水化物補充食品として表5の例2とは別の種類を使用した場合の混合比率説明である。炭水化物補充食品としてさつまいもを選択し、脂質補充食品としてアマニ油を選択し、体重4kgの犬または猫の一日あたりの食事量として計算している。炭水化物補充食品の種類を変更した場合、この混合比率は次のように変化する。
【0051】
【表6】
【0052】
表7は、例3の調理済み食品・炭水化物補充食品・脂質補充食品の混合物に含まれる栄養成分の構成比を乾物量で示している。
【0053】
【表7】
【0054】
表8は、市販のペットフードに含まれる栄養成分の構成比を乾物量で示している。
犬用のペットフードにおけるUは成犬用の健康維持食、Vは膵炎などの栄養管理に用いる低脂肪の療法食、Wは腎臓病の栄養管理に用いる療法食、Xは皮膚疾患などの栄養管理に用いる療法食で、猫用のYは成猫用の健康維持食、Zは腎臓病の栄養管理に用いる療法食となる。
【0055】
【表8】
【0056】
本発明の調理済み食品は、実施例1のように、炭水化物補充食品と、脂質補充食品の構成に着目し調整することができる。また、実施例2の通り、ビタミン類やミネラル類を加えて調整することができる。この場合であっても、市販のペットフードの栄養成分を比較すると、ナトリウム、カルシウム、リンなどのエネルギー非産生微量栄養成分の含有量が低くなる場合がある。
このような場合、適量のミネラル類やビタミン類を、それぞれの利用目的に合わせて提供される混合比率説明に基づき、使用時に添加することができる。
表9は、実施例2の調理済み食品に、炭水化物補充食品および脂質補充食品の他、エネルギー非産生微量栄養成分混合物を混合添加する場合の混合比率説明である。炭水化物補充食品としてご飯を選択し、脂質補充食品としてアマニ油を選択し、エネルギー非産生微量栄養成分混合物として骨粉末、貝殻粉末を使用した場合の、体重4kgの犬または猫の一日あたりの食事量として計算している。
【0057】
【表9】
【0058】
【表10】
【0059】
表10のB,C,D,Fに示すとおり、市販の療法食と同様の栄養構成となっている。
【0060】
以上説明した通り本発明は、汎用の食品である炭水化物補充食品及び汎用食品である脂質補充食品および場合により、エネルギー非産生微量栄養成分混合物を、混合比率説明の通りに混合することで、手作り食品の優れた特徴である、食味や風味の改善された、ペットの総合栄養食や種々の療法食に相当する主食用ペットフードを調整することができる調理済み食品を提供することができる。
また、本発明は、上記調理済み食品と上記混合比率説明を用いることにより、食味や風味の改善された犬や猫などのペットの総合栄養食や療法食に相当する主食用ペットフードを簡便に作ることができる主食用ペットフードの調整方法を提供することができる。
【0061】
なお、本発明は、以上説明した実施態様に限定されることなく、本発明を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 総合栄養食相当食品を表す概念図
2 膵炎の療養食相当食品を表す概念図
3 腎臓病の療法食相当食品を表す概念図
4 皮膚疾患の療養食相当食品を表す概念図
6 調理済み食品
7 炭水化物補充食品
8 脂質補充食品

【要約】
【課題】
本発明は、犬や猫などのペットの総合栄養食や療法食に相当する主食用ペットフードの調理において食味や風味を簡便に改善することが求められている。
【解決手段】
たんぱく質・脂質・炭水化物の構成比が予め調整された調理済み食品と補充食品を混合してペットフードを調整する主食用ペットフードの調整方法。
調理済み食品に、補充食品の混合比率が示されている混合比率説明に従って補充食品を混合することにより、ペットの健康の維持または疾病の管理に求められる特有の要求栄養の構成となる主食用ペットフードを調整する。
炭水化物補充食品及び脂質補充食品を混合比率の説明の通りに混合することで、食味を改善し、ペットの総合栄養食や種々の療法食に相当する主食用ペットフードを簡便に手作りすることができる
【選択図】 図1
図1