(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】紙幣処理装置
(51)【国際特許分類】
G06V 40/16 20220101AFI20240403BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240403BHJP
G08B 21/00 20060101ALI20240403BHJP
G07D 7/00 20160101ALI20240403BHJP
【FI】
G06V40/16 A
G06T7/00 510F
G08B21/00 E
G07D7/00 Z
(21)【出願番号】P 2023026994
(22)【出願日】2023-02-24
(62)【分割の表示】P 2022004065の分割
【原出願日】2022-01-14
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000230858
【氏名又は名称】日本金銭機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082049
【氏名又は名称】清水 敬一
(74)【代理人】
【識別番号】100220711
【氏名又は名称】森山 朗
(72)【発明者】
【氏名】大河 勝利
(72)【発明者】
【氏名】関 亨
【審査官】長谷川 素直
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-176659(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0168022(US,A1)
【文献】特開2006-079382(JP,A)
【文献】特開2011-139872(JP,A)
【文献】特開2006-209163(JP,A)
【文献】特開2021-144506(JP,A)
【文献】特開2004-355377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 7/00
G06V 40/00
G06T 7/00
G08B 21/00
G08B 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣鑑別装置の筐体と、筐体に取り付けられるベゼルと、ベゼルに取り付けられて利用者の顔画像を撮影するカメラ装置と、ベゼル内に設けられるインターフェイスと、紙幣鑑別装置に挿入される紙幣を走査するスキャナと、カメラ装置により撮影された利用者の顔画像情報とスキャナにより走査された紙幣の表面画像情報とを対として記憶する鑑別記憶装置とを備え、
インターフェイスは、携帯端末と遠隔通信して、鑑別記憶装置に記憶される利用者の顔画像情報と紙幣の表面画像情報とを携帯端末の送受信部に送信し、
携帯端末は、インターフェイスから受信する利用者の顔画像情報と紙幣の表面画像情報とを表示部に表示することを特徴とする紙幣処理装置。
【請求項2】
紙幣鑑別装置は、時刻信号を発生する計時装置と、紙幣鑑別装置の搬送通路への紙幣の挿入を検出して検出信号を発生する入口センサと、入口センサが検出信号を発生する時刻表示と共に、利用者の顔画像情報と紙幣の表面画像情報とを対として鑑別記憶装置に記憶させる鑑別制御装置とを備える請求項1に記載の紙幣処理装置。
【請求項3】
紙幣鑑別装置に通信接続されるホストサーバを更に備え、
ホストサーバは、カメラ装置から送信される利用者の顔画像情報を記憶し、
ブラックリスト又はロイヤル顧客リストにより顧客を管理する請求項1に記載の紙幣処理装置。
【請求項4】
紙幣鑑別装置に通信接続されかつ危険人物の顔画像を記憶するホストサーバを更に備え、
ホストサーバは、カメラ装置から送信される利用者の顔画像情報をホストサーバの危険人物の顔画像と比較して、これらが一致したときに、紙幣鑑別装置の作動を停止し又は警報装置を作動して周囲に対し視覚的又は音響的警報信号を発生する請求項1に記載の紙幣処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣処理装置、特に、紙幣鑑別装置に取り付けられるベゼル内に収容されて利用者の顔画像を撮影するカメラ装置を有する紙幣処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
種々形式の紙幣鑑別用ベゼルが従来公知である。例えば、下記特許文献1は、指紋、網膜、顔、音声認証等の生体情報を検出して認証する装置をベゼルに取り付けて、例えば、会社の従業員の指紋を認証して、会社の自動販売機で食品を購入できるベゼルを示す。この認証装置では、ベゼルの上部に搭載するカメラで紙幣画像及び利用者の顔画像を記録して、自動販売機の不正使用に対する安全性を向上することができる。顔画像認識ベゼルは、フラッシュを使って利用者の顔に閃光を当てて、利用者の正確な顔画像を取得することができる。利用者の顔画像情報を個人認識表示として使用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2020/0168022A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるベゼルは、複数のカメラをベゼル外面に取り付ける構造のため、利用者は、紙幣鑑別装置の前でカメラを目視でき、カメラ正面から視線を逸らして正面顔画像を撮影できず又はカメラに触れて悪戯して損傷を与える危険もある。そこで、本発明は、カメラをベゼルに取り付けて、紙幣鑑別装置の利用者の鮮明な顔画像を取得できる紙幣処理装置を提供することを目的とする。また、利用者の顔画像情報と紙幣の表面画像情報とを記憶する紙幣処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の紙幣処理装置は、紙幣鑑別装置(1)の筐体(1a)と、筐体(1a)に取り付けられるベゼル(8)と、ベゼル(8)に取り付けられて利用者の顔画像を撮影するカメラ装置(4)と、ベゼル(8)内に設けられるインターフェイス(80)と、紙幣鑑別装置(1)に挿入される紙幣を走査するスキャナ(16)と、カメラ装置(4)により撮影された利用者の顔画像情報とスキャナ(16)により走査された紙幣の表面画像情報とを対として記憶する鑑別記憶装置(18)とを備え、インターフェイス(80)は、携帯端末(70)と遠隔通信して、鑑別記憶装置(18)に記憶される利用者の顔画像情報と紙幣の表面画像情報とを携帯端末(70)の送受信部(74)に送信し、携帯端末(70)は、インターフェイス(80)から受信する利用者の顔画像情報と紙幣の表面画像情報とを表示部(75)に表示する。
【0006】
本発明の紙幣処理装置では、紙幣鑑別装置(1)のベゼル(8)内に収容されるカメラ装置(4)により利用者の顔画像を撮影すると共に、紙幣鑑別装置(1)のスキャナ(16)により紙幣の表面画像を走査して、カメラ装置(4)による利用者の顔画像情報と、スキャナ(16)による紙幣の表面画像情報とを対として鑑別記憶装置(18)に記憶するので、紙幣鑑別装置(1)により利用者の顔画像情報と紙幣の表面画像情報とを取得して、紙幣処理装置の管理者は、顔画像情報、紙幣画像又は紙幣情報を閲覧できる。取得した利用者の顔画像情報を保存して、利用者の利用履歴を作成できる。問題のある人物と同一の顔画像を有する利用者が紙幣を挿入したとき、紙幣鑑別装置(1)の動作を停止し又は視覚的若しくは音響的警報機を作動できる。紙幣鑑別装置(1)が不真正紙幣を受理したときの利用者の顔画像から犯行者を特定でき、防犯に役立つ。利用金額又は利用回数の多い優良な人物と同一の顔画像を有する利用者が紙幣を挿入したとき、付加的なサービスを利用者に提供できる。紙幣処理装置の管理者は、鑑別記憶装置(18)に記憶される利用者の顔画像情報と紙幣の表面画像情報とを管理者の携帯端末(70)の送受信部(74)に送信して表示部(75)に表示し、入金額に疑義を唱える利用者に提示できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】ベゼルの開口から紙幣鑑別装置に紙幣を挿入する断面図
【
図3】カメラ装置を取り付ける前のベゼルの装入枠の部分断面図
【
図4】カメラ装置を取り付け後のベゼルの装入枠の部分断面図
【
図5】カメラ装置を取り付ける前のベゼルの装入枠の全体斜視図
【
図6】カメラ装置を取り付け後のベゼルの装入枠の全体斜視図
【
図8】ベゼルを取り付ける前の紙幣鑑別装置との有線電気接続線を示す斜視図
【
図10】ベゼル内のカメラ装置と紙幣鑑別装置の電気構成ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1及び
図2に示すベゼル(8)は、紙幣鑑別装置(1)の筐体(1a)に固定される枠体(4a)と、枠体(4a)に取り付けられて利用者の顔又は上半身の画像(映像)をカラー又は白黒画像で撮影するカメラ装置(4)と、カメラ装置(4)を覆って枠体(4a)に着脱自在に取り付けられる蓋(4c)とを備える。枠体(4a)は、樹脂材料により形成され、蓋(4c)は、ガラス材料又は樹脂材料で形成される。蓋(4c)は、蒸着又は塗布によりニッケル、銀又はアルミニウム等の光透過性かつ光反射性の金属薄膜で被覆したガラス又はアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の光透過性の合成樹脂により形成され、所謂ハーフミラー又はマジックミラーと呼ばれる構造を構成する。ハーフミラーの可視光線透過率は、30%~70%、特に、利用者が枠体(4a)内のカメラ装置(4)を目視困難かつカメラ装置(4)により利用者を撮影可能な50%が好ましい。ねじ又は弾性係止爪等の構造で枠体(4a)に蓋(4c)を着脱自在に取り付けると、蓋(4c)は、カメラ装置(4)を覆いかつカメラ装置(4)を収容する暗室(4d)が形成される。カメラ装置(4)は、図示しないシャッタと、紙幣鑑別装置(1)の鑑別制御装置(14)に駆動接続されて、適切な時期にシャッタを開閉する駆動装置とを備える。シャッタは、グローバルシャッタ又はローリングシャッタから選択できる。フレーム全体を一度に撮影するグローバルシャッタを選択して、利用者の正面画像を短時間に撮影できる。
【0009】
枠体(4a)は、紙幣鑑別装置(1)の正面に垂直に取り付けられる背板(4e)と、背板(4e)に水平に固定されて紙幣を挿入する装入枠(4f)と、装入枠(4f)の頂部に設けられてカメラ装置(4)を支持する支持台(4g)とを備える。背板(4e)に固定される装入枠(4f)の支持台(4g)にカメラ装置(4)が固定されるが、
図2及び
図4に示すように、カメラ装置(4)のレンズ(42)の中心光軸は、水平面に対し角度15°~30°傾斜して配置され、カメラ装置(4)が写し込む画角範囲45°~80°にカメラ装置(4)が固定され、ベゼル(8)の前方に着座する利用者の顔面を確実に撮影できる。
【0010】
図2~
図4に示すように、装入枠(4f)の支持台(4g)は、ねじ孔(4h)を有し、カメラ装置(4)は、利用者の顔面からの光が入射するレンズ(42)を支持するカメラ本体(41)と、貫通孔(45)が形成されてカメラ本体(41)から突出するブラケット(46)とを備える。
図4及び
図5に示すように、枠体(4a)の装入枠(4f)のねじ孔(4h)とブラケット(46)の貫通孔(45)とにねじ(50)を垂直に装着すると、ねじ(50)軸周りにカメラ本体(41)を回転可能に配置して、垂直なねじ(50)軸周りの水平面上でカメラ装置(4)を回転できる。このため、カメラ装置(4)のレンズ(42)の水平撮影方向、即ち利用者の顔面に対する左右方向を変更して、適切な撮影角度にカメラ装置(4)を設定し保持することができる。
【0011】
カメラ装置(4)のねじ(50)軸周りの回転を一時的に固定するため、
図3に示す実施の形態では、周方向に間欠的な環状突起(27)を枠体(4a)の支持台(4g)に設けると共に、周方向に間欠的な環状凹部(28)をカメラ本体(41)のブラケット(46)に設けて、カメラ本体(41)を枠体(4a)の支持台(4g)上に配置したとき、環状突起(27)が環状凹部(28)に篏合して、ブラケット(46)とカメラ装置(4)の回転を阻止できる。ねじ(50)を緩めて、ブラケット(46)を支持台(4g)から僅かに上昇させると、環状突起(27)の篏合が環状凹部(28)から外れて、ブラケット(46)とカメラ装置(4)とを回転して、所望の回転角度位置で環状突起(27)を環状凹部(28)に篏合して、カメラ装置(4)の回転を阻止することができる。
【0012】
この篏合構造では、逆に環状突起(27)をブラケット(46)に設け、環状凹部(28)を支持台(4g)に設けられるから、枠体(4a)の支持台(4g)とカメラ本体(41)のブラケット(46)との一方に環状突起(27)を設け、支持台(4g)とブラケット(46)の他方に環状凹部(28)を設けて、環状凹部(28)内に回転可能に環状突起(27)を嵌合できる。このように、環状突起(27)を環状凹部(28)内に回転可能に嵌合して、ねじ(50)を緩めない限り、環状突起(27)及び環状凹部(28)周りにカメラ装置(4)を回転可能に確実に支持することができる。
【0013】
図2に示す枠体(4a)は、紙幣鑑別装置(1)の正面に垂直に取り付けられる背板(4e)と、背板(4e)に水平に固定されて紙幣を挿入する装入枠(4f)と、装入枠(4f)の頂部に設けられてカメラ装置(4)を支持する支持台(4g)とを備える。枠体(4a)の背板(4e)は、例えば、ねじ、弾性係止爪又はフック等の図示しない公知の手段により、紙幣鑑別装置(1)の正面に着脱自在に取り付けられる。
図7~
図9に示すように、紙幣鑑別装置(1)、ベゼル(8)及び紙幣収納装置(2)を有する紙幣処理装置の組み立て時に、ベゼル(8)の枠体(4a)に蓋(4c)を取り付ける前又は後に、ベゼル(8)を紙幣鑑別装置(1)に取り付けると共に、ハンドルの付いた箱状の紙幣収納装置(2)が紙幣鑑別装置(1)に装着される。ベゼル(8)内のカメラ装置(4)及びインターフェイス(80)と紙幣鑑別装置(1)の正面に設けられる出入力部とを有線接続して、紙幣鑑別装置(1)からカメラ装置(4)及びインターフェイス(80)に電力供給すると共に、カメラ装置(4)及びインターフェイス(80)と紙幣鑑別装置(1)との間で情報通信が可能となる。
【0014】
図2及び
図6に示すように、枠体(4a)の装入枠(4f)は、紙幣鑑別装置(1)の紙幣入口(12)に連絡する挿入口(5)を備える。装入枠(4f)の上部に支持台(4g)が形成され、蓋(4c)は、暗室(4d)内のカメラ装置(4)を覆う湾曲上部(9)と、湾曲上部(9)の下部に一体接合される矩形枠(10)とを備える。蓋(4c)の矩形枠(10)内に挿入される紙幣は、装入枠(4f)の挿入口(5)を通り、紙幣鑑別装置(1)の紙幣入口(12)に設けられる入口センサ(13)により検出される。紙幣鑑別装置(1)の紙幣入口(12)に設けられる入口センサ(13)により紙幣の挿入を検出するので、ベゼル(8)には、紙幣検出器を設ける必要がない。
【0015】
紙幣鑑別装置(1)の入口センサ(13)は、装入枠(4f)の挿入口(5)に挿入される紙幣を検出して、検出信号を発生し、入口センサ(13)の検出信号により、紙幣鑑別装置(1)の紙幣搬送装置(17)が起動される同時に、カメラ装置(4)内蔵のシャッタが連続開閉されて、カメラ装置(4)の連写撮影が行われる。入口センサ(13)の検出信号の発生に同期して、紙幣鑑別装置(1)の紙幣搬送装置(17)を起動する同時に、カメラ装置(4)のシャッタを駆動するので、ベゼル(8)の正面に着座する利用者の顔面画像をカメラ装置(4)により確実に撮影することができる。
【0016】
図2に示すように、枠体(4a)は、装入枠(4f)の奥に配置されて紙幣鑑別装置(1)の前面で枠体(4a)に固定される接続装置(4b)を備え、接続装置(4b)は、装入枠(4f)の背部に配置される。装入枠(4f)の挿入口(5)と接続装置(4b)は、装入枠(4f)に挿入される紙幣を紙幣鑑別装置(1)の紙幣入口(12)に案内して、挿入される紙幣を確実に紙幣入口(12)と入口センサ(13)に案内する。
【0017】
図1及び
図10に示すように、カメラ装置(4)は、レンズ(42)を通る画像情報を電気信号に変換して、紙幣鑑別装置(1)の鑑別制御装置(14)に送信する光電素子(43)を備える。カメラ装置(4)の図示しないシャッタの駆動装置及び光電素子(43)は、紙幣鑑別装置(1)の鑑別制御装置(14)に電気的に駆動接続される。
【0018】
図1及び
図2に示すように、紙幣鑑別装置(1)は、装入枠(4f)の挿入口(5)及び紙幣入口(12)に連絡する搬送通路(15)とを備え、更に、
図10に示すように、紙幣入口(12)に挿入される紙幣を搬送通路(15)に沿って奥に移動する紙幣搬送装置(17)と、搬送通路(15)に沿って搬送される紙幣の表面画像を走査する密着イメージセンサ等のスキャナ(16)と、スキャナ(16)が紙幣を走査して作成する紙幣の表面画像情報を記憶する鑑別記憶装置(18)とを備える。鑑別制御装置(14)は、鑑別記憶装置(18)に記憶される紙幣の表面画像情報を鑑別記憶装置(18)から必要に応じて読み出すことができる。
【0019】
図10は、ベゼル(8)内のカメラ装置を作動する電気制御ブロック図を示す。ベゼル(8)は、カメラ装置(4)と、カメラ装置(4)に内蔵される光電素子(光電変換素子)(43)とを備える。ベゼル(8)を取り付ける紙幣鑑別装置(1)は、搬送通路(15)への紙幣の挿入を検出して、検出信号を発生する入口センサ(13)と、挿入された紙幣を搬送通路(15)に沿って搬送する紙幣搬送装置(17)と、搬送通路(15)を通過する紙幣の主面画像を走査して紙幣画像を作成するスキャナ(16)と、入口センサ(13)の検出信号を受信して、紙幣搬送装置(17)を駆動する鑑別制御装置(14)と、時刻信号を発生する計時装置(36)と、紙幣画像から得られる紙幣情報を送信するアンテナ(11)を有する鑑別送受信装置(3)とを備える。鑑別制御装置(14)は、紙幣の主面画像をスキャナ(16)から取得すると共に、走査した時刻を計時装置(36)から取得して、鑑別記憶装置(18)に紙幣の主面画像と走査時刻とを記録する。
【0020】
装入枠(4f)の挿入口(5)を通じて紙幣入口(12)に紙幣を挿入すると、入口センサ(13)は、紙幣が紙幣鑑別装置(1)に挿入される毎に、紙幣を検出して検出信号を発生し、鑑別制御装置(14)に検出信号を送信する。鑑別制御装置(14)は、入口センサ(13)の検出信号を受信して、紙幣搬送装置(17)を駆動すると共に、スキャナ(16)とカメラ装置(4)のシャッタ駆動装置とを作動する。このため、スキャナ(16)は、搬送通路(15)に沿って搬送される紙幣の表面画像を走査すると共に、カメラ装置(4)は、利用者の変化する顔画像を連写して、顔画像ピクセルの相互一致割合を判断するので、鑑別制御装置(14)は、入口センサ(13)が検出信号を発生した直後に取得する顔画像情報と紙幣の表面画像情報とを対として、計時装置(36)からの現時刻表示と共に鑑別記憶装置(18)に記憶させる。
【0021】
鑑別制御装置(14)は、紙幣鑑別装置(1)に接続されるインターフェイス(80)とアンテナ(91)を介して、スキャナ(16)が走査した紙幣画像(紙幣情報)を外部のホストサーバ(100)に鑑別送受信装置(3)から送信し、ホストサーバ(100)に記録される正規の紙幣画像と比較する。走査した紙幣画像が正規の紙幣画像と同一(真札)と鑑別制御装置(14)が判断すると、鑑別制御装置(14)は、紙幣搬送装置(17)を駆動して、紙幣を紙幣収納装置(2)に搬送して、紙幣収納装置(2)に収容する。鑑別制御装置(14)は、鑑別記憶装置(18)に記録される正規の紙幣画像と比較して、スキャナ(16)が走査した紙幣の真贋を判断してもよい。紙幣収納装置(2)の収納送受信装置(21)及び収納記憶装置(22)は、紙幣鑑別装置(1)の鑑別制御装置(14)に電気的に駆動接続される。鑑別制御装置(14)は、鑑別送受信装置(3)及びそのアンテナ(11)を通じて、紙幣収納装置(2)の収納送受信装置(21)及びそのアンテナ(31)にデジタル紙幣情報を送信するので、紙幣収納装置(2)の収納記憶装置(22)は、そのデジタル紙幣情報を記憶する。
【0022】
スキャナ(16)が走査した紙幣画像をホストサーバ(100)又は鑑別記憶装置(18)に記録される正規の紙幣画像と比較して、走査した紙幣画像が正規の紙幣画像に一致しないと鑑別制御装置(14)が判断すると、鑑別制御装置(14)は、紙幣搬送装置(17)を逆転して、不受理紙幣を搬送通路(15)の紙幣入口(12)に戻すため、利用者は、ベゼル(8)の挿入口(5)を通じて搬送通路(15)の紙幣入口(12)から紙幣を受け取ることができる。しかし、不受理紙幣の紙幣情報は、真札と同様に、紙幣収納装置(2)の収納送受信装置(21)及びそのアンテナ(31)にデジタル紙幣情報を送信するので、紙幣収納装置(2)の収納記憶装置(22)は、そのデジタル紙幣情報を記憶する。
【0023】
図11は、ベゼル(8)の動作に連携する紙幣鑑別装置(1)の動作シーケンスのフローチャートを示す。ステップ200では、ベゼル(8)と紙幣鑑別装置(1)は、待機状態に保持され、ベゼル(8)の前面に配置される座席に利用者が着席して、紙幣をベゼル(8)の挿入口(5)に挿入すると、紙幣鑑別装置(1)の入口センサ(13)が紙幣を検出してオンとなり検出信号を発生して、ステップ203に進むが、紙幣をベゼル(8)に挿入しないと、動作状態は、ステップ200に戻る。
【0024】
紙幣を検出する入口センサ(13)の検出信号は、鑑別制御装置(14)に送信され、検出信号を受信する鑑別制御装置(14)は、カメラ装置(4)を駆動するので、カメラ装置(4)は、利用者の顔画像を連写する。カメラ装置(4)は、利用者の変化する顔画像を連写して、顔画像ピクセル単位が、0.9以上の相互一致割合の複数の顔画像情報を紙幣鑑別装置(1)の鑑別制御装置(14)に送信し、鑑別制御装置(14)は、鑑別記憶装置(18)に顔画像情報を記憶させる。逆に、利用者が動いて非静止状態で連写すると、顔画像情報が変化して連写するピクセル単位で顔画像情報の相互に一致する割合が0.9に満たず、動作工程は、ステップ203に戻される。カメラ装置(4)は、利用者が着座する静止状態にあり、連写する各ピクセルの顔画像情報の相互に一致する割合が、0.9以上のとき、利用者が静止状態で着座したと判断して、鑑別制御装置(14)は、連写映像顔画像を鑑別記憶装置(18)に記憶して、ステップ203から204に移行する。紙幣の挿入口(5)とカメラ装置(4)とを互いに近接してベゼル(8)内に配置するので、紙幣をベゼル(8)の挿入口(5)に挿入する瞬間の利用者の顔正面を撮影し、顔画像情報との一致割合が高い良好な顔画像を得ることができる。公知の顔認識方法とそのアルゴリズムの説明を省略する。
【0025】
その後、処理は、ステップ205に進み、鑑別制御装置(14)は、鑑別送受信装置(3)及びそのアンテナ(11)及び収納送受信装置(21)及びそのアンテナ(31)を通じて、スキャナ(16)が走査した紙幣画像を収納送受信装置(21)に送信して、収納記憶装置(22)に記憶させる。これと同時に、紙幣の真贋判断を行うため、鑑別制御装置(14)は、紙幣搬送装置(17)を駆動して、一時保留(エスクロウ)位置に紙幣を移動して、停止させる。
【0026】
次に、鑑別制御装置(14)は、光電素子(43)から利用者の顔画像情報を鑑別制御装置(14)に転送(ステップ206)し、良好な顔画像情報を選定する(ステップ207)。更に、鑑別制御装置(14)は、スキャナ(16)が走査した紙幣画像をホストサーバ(100)又は鑑別記憶装置(18)に記録される正規の紙幣画像と比較する鑑別を行う(ステップ208)。ステップ209では、鑑別制御装置(14)は、走査した紙幣画像が正規の紙幣画像に一致しないと判断すると、紙幣搬送装置(17)を逆転(ステップ211)して、不受理紙幣を搬送通路(15)の入口に戻すため、利用者は、搬送通路(15)の紙幣入口(12)で紙幣を受け取ることができる。しかし、不受理紙幣の紙幣情報も、真札と同様に、紙幣収納装置(2)の収納送受信装置(21)及びそのアンテナ(31)にデジタル紙幣情報を送信するので、紙幣収納装置(2)の収納記憶装置(22)は、そのデジタル紙幣情報を記憶する。
【0027】
ステップ209では、鑑別制御装置(14)は、紙幣搬送装置(17)を駆動して、真正と判断した紙幣を紙幣収納装置(2)に搬送して、紙幣収納装置(2)に収容する(ステップ210)と共に、鑑別制御装置(14)は、鑑別送受信装置(3)及びそのアンテナ(11)を通じて、紙幣収納装置(2)の収納送受信装置(21)及びそのアンテナ(31)にデジタル紙幣情報を送信し、紙幣収納装置(2)の収納記憶装置(22)は、そのデジタル紙幣情報を記憶する。紙幣鑑別装置(1)から紙幣収納装置(2)を回収したとき、紙幣収納装置(2)の収納記憶装置(22)から収容された紙幣情報を取り出して、ゲーム機、現金自動預払機、券売機、精算機又は自動販売機等の紙幣取扱装置に記録される紙幣の金額とを照合することができる。
【0028】
最後に、ステップ213に進み、鑑別制御装置(14)は、同一の利用者が引続き次の紙幣をベゼル(8)に挿入したか判断する。このとき、入口センサ(13)の検出信号が発生しないとステップ200に戻り、別の紙幣が挿入されると、ステップ203に戻される。
【0029】
本発明の実施の形態では、下記の作用効果が得られる。
1. 枠体(4a)と共にカメラ装置(4)を収容する暗室(4d)を形成する光透過性の蓋(4c)は、暗室(4d)外からの光を反射して、暗室(4d)内のカメラ装置(4)の外部からの目視を阻止する。
2. 蓋(4c)で覆われるカメラ装置(4)に対する悪戯を防止できる。
3. カメラ装置(4)は、蓋(4c)を通じて紙幣鑑別装置(1)の前面に着座する利用者の顔画像を撮影して、顔画像情報を紙幣鑑別装置(1)内に保存できる。
4. 光反射性でかつ光透過率30%~70%の樹脂材料で蓋(4c)を軽量に形成できる。
5. 取得した利用者の顔画像情報を保存して、利用者の利用履歴を作成できる。
6. 問題のある人物と同一の顔画像を有する利用者が紙幣を挿入したとき、紙幣鑑別装置(1)の動作を停止し又は視覚的若しくは音響的警報機を作動できる。
7. 紙幣鑑別装置(1)が不真正紙幣を受理したときの利用者の顔画像から犯行者を特定でき、防犯に役立つ。
8. 利用金額又は利用回数の多い優良な人物と同一の顔画像を有する利用者が紙幣を挿入したとき、付加的なサービスを利用者に提供できる。
9. ベゼル(8)を既存の紙幣鑑別装置(1)にも取り付けることができる。
【0030】
図示しないが、ゲーム機、現金自動預払機、券売機、精算機又は自動販売機等の紙幣取扱装置では、開閉可能に紙幣取扱装置に取り付けられるドアの内側で紙幣取扱装置内に紙幣鑑別装置(1)が配置され、ベゼル(8)は、紙幣鑑別装置(1)に固定されてドアの閉扉時にドアに形成される開口を通じて外側に突出して保持される。よって、ベゼル(8)は、紙幣鑑別装置(1)を分解せずかつ紙幣取扱装置の筐体に穴を開けずに、既に設置された紙幣鑑別装置(1)及び紙幣取扱装置に、カメラ装置(4)による利用者の顔画像撮影機能を容易かつ安価に付加することができる。
【0031】
本発明の実施の形態は、変更が可能である。例えば、携帯端末(70)と遠隔通信するインターフェイス(80)をベゼル(8)内に設けてもよい。携帯端末(70)は、例えば、タッチパネルからなる表示部(75)を備えるスマートフォン又はタブレット端末である。インターフェイス(80)を通じて、紙幣鑑別装置(1)の鑑別記憶装置(18)に記憶される顔画像情報及び紙幣画像並びに紙幣収納装置(2)の収納記憶装置(22)に記憶されるデジタル紙幣情報の全て又はその何れかを携帯端末(70)の送受信部(74)に送信して、携帯端末(70)の表示部(75)に顔画像情報及び紙幣情報の画面を表示して、管理者が顔画像情報、紙幣画像又は紙幣情報を閲覧でき、又記憶部(72)にこれらの情報を記憶させることができる。カメラ装置(4)から送信される顔画像情報とスキャナ(16)から送信される紙幣画像情報とを鑑別記憶装置(18)に一時的に記憶し、携帯端末(70)に送信して表示部(75)に表示するので、例えば、紙幣処理装置の管理者は、管理者の携帯端末(70)に顔画像情報と紙幣画像情報とを送信して表示部(75)に表示し、入金額に疑義を唱える利用者に提示することができる。顔画像情報は、ネットワークインターフェイス(81)を介して紙幣鑑別装置(1)に通信接続されるホストサーバ(100)に記憶され、紙幣画像情報は、紙幣収納装置(2)の収納記憶装置(22)に記憶され、その後、鑑別記憶装置(18)から顔画像情報及び紙幣画像情報が消去される。
【0032】
ネットワークインターフェイス(81)を介して、ベゼル(8)のインターフェイス(80)をゲーム機(82)、危険人物の顔画像を記憶するホストサーバ(100)及び警報装置(101)に接続して、カメラ装置(4)の光電素子(43)から送信される画像情報をホストサーバ(100)の危険人物の顔画像と比較して、これらが一致したときに、紙幣鑑別装置(1)の作動を停止し又は警報装置(101)を作動して、周囲に対し視覚的又は音響的警報信号を発生して、高い防犯効果が得られる。顔画像情報及び顔認証の結果は、ネットワークインターフェイス(81)を介して、管理者の管理端末(102)に送信され、各情報及び結果を閲覧できる。
【0033】
前記実施の形態では、入口センサ(13)による紙幣の検出信号によりカメラ装置(4)を起動するが、何等かのセンサにより紙幣投入前の利用者の動作又は利用者の接近を検知してカメラ装置(4)を駆動してもよい。また、自動車のドライブレコーダと同様に、カメラ装置(4)を常時駆動し、カメラ装置(4)の撮影画像を一時的に記憶装置に記録しておき、紙幣の投入を検知すると、その前後の画像を切り出し、最も画像の記録又は認識に適する利用者の顔画像を取得してもよい。なお、顔認識に最適な顔画像の選択は、目、鼻、耳等の顔構成部分について、特徴点のシンメトリー(左右対称性)が所定割合以上一致する場合等であるが、公知のアルゴリズムで処理する当該方法の説明を省略する。
【0034】
本発明の紙幣処理装置を活用する様々な運用法が可能である。例えば、顔認証の利用用途では、顧客管理(ブラックリスト、ロイヤル顧客リスト)、利用者情報管理(性別、年齢、客風、時間帯、購入好み等)が挙げられる。また、本実施の形態の紙幣処理装置は、紙幣及びクーポン券等の有価紙葉に限らず、運転免許証、パスポート、IDカード等の本人確認書類を読み込み可能としてもよい。この場合、紙幣処理装置により、カメラ装置(4)が撮影した顔画像と本人確認書類とを比較して、利用者の本人確認を実施できる。更に、カメラ装置(4)が撮影した顔画像を利用して、ギャンブル依存症(個人申告)の登録等のアプリケーションを紙幣処理装置で実施してもよい。
【0035】
カメラ装置(4)により2次元コードを読み取り可能としてもよい。これによりキャッシュレス電子決済に対応することができる。また、スマートフォン等の携帯端末(70)の表示部(75)に表示した2次元コードを読み込み、購入メニュー等の操作端末として利用してもよい。更に、入場料の支払い、入退室管理、会員証、プレーヤーズカード、アワードカード、自動販売機での購入時のクーポン券の受け取り(商品交換、割引、ポイント付加)、食券購入時のクーポン券の受け取り(商品交換、割引、ポイント付加等)、レンタル機器(自動販売機)の返却管理、交通定期券の代用、納金端末のID管理、レジ入金端末のID管理、ガソリンスタンドの支払い(割引、ポイント付加)、セルフレジ支払い(割引、ポイント付加)に本発明を利用してもよい。
【0036】
カメラ装置(4)の撮影は、体温検知、暗視カメラ、TITOチケットの代用(顔認証)、プレーヤーズカード又はアワードカードの代用(顔認証)、運転免許書と顔の複合認証(なりすまし防止)、ゲーミング市場でのプレーヤー観察、顔認証支払い、機器いたずら時の証拠記録、人々の動線又は混み具合情報への活用、モーションコントロールの活用、ゲームの表情読み取りによる嗜好分析、犯罪心理による行動分析に利用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の紙幣処理装置は、紙幣を利用する種々の技術分野、例えば、ゲーム機、現金自動預払機、券売機、精算機又は自動販売機等に使用することができる。
【符号の説明】
【0038】
(1)・・紙幣鑑別装置、 (4)・・カメラ装置、 (4a)・・枠体、 (4b)・・接続装置、 (4c)・・蓋、 (4d)・・暗室、 (4f)・・装入枠、 (4g)・・支持台、 (4h)・・ねじ孔、 (5)・・挿入口、 (8)・・ベゼル、 (9)・・湾曲上部、 (10)・・矩形枠、 (11)・・筐体、 (12)・・紙幣入口、 (13)・・入口センサ、 (14)・・鑑別制御装置、 (15)・・搬送通路、 (16)・・スキャナ、 (17)・・紙幣搬送装置、 (18)・・鑑別記憶装置、 (20)・・開口、 (21)・・収納送受信装置、 (22)・・収納記憶装置、 (27)・・環状突起、 (28)・・環状凹部、 (41)・・カメラ本体、 (42)・・レンズ、 (43)・・光電素子、 (45)・・貫通孔、 (50)・・ねじ、 (80)・・インターフェイス、 (81)・・ネットワークインターフェイス、 (82)・・ゲーム機、 (100)・・ホストサーバ、