(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】悪臭化合物の低減方法。
(51)【国際特許分類】
A61K 8/35 20060101AFI20240403BHJP
A23L 5/20 20160101ALI20240403BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20240403BHJP
A61Q 15/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
A61K8/35
A23L5/20
A61L9/01 H
A61L9/01 J
A61Q15/00
(21)【出願番号】P 2018036922
(22)【出願日】2018-03-01
【審査請求日】2020-12-04
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】306018376
【氏名又は名称】クラシエ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】宮下 哲郎
【合議体】
【審判長】阪野 誠司
【審判官】木村 敏康
【審判官】齊藤 真由美
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-194340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インドール骨格を有する悪臭化合物及び有機酸が存在するヒトの皮膚に対してアルデヒド化合物を供給することによって
、前記悪臭化合物を別の化合物に変換する、悪臭化合物の低減方法(但し、医療行為を除く)(但し、アミドベタインを含有する消臭剤組成物を用いる場合を除く)
であって、
前記アルデヒド化合物は、ヘキシルシンナミックアルデヒドを含み、
前記有機酸は、乳酸、リンゴ酸、及びクエン酸から選ばれる1種又は2種以上のヒドロキシカルボン酸である、方法。
【請求項2】
前記ヒトの皮膚は頭皮である、請求項1に記載の悪臭化合物の低減方法。
【請求項3】
インドール骨格を有する悪臭化合物及び有機酸が存在するヒトの皮膚に対してアルデヒド化合物を供給し、
前記アルデヒド化合物として、ベンズアルデヒド及びヘキシルシンナミックアルデヒドを共に供給する、悪臭化合物の低減方法(但し、医療行為を除く)(但し、アミドベタインを含有する消臭剤組成物を用いる場合を除く)
であって、
前記有機酸は、乳酸、リンゴ酸、及びクエン酸から選ばれる1種又は2種以上のヒドロキシカルボン酸である、方法。
【請求項4】
前記アルデヒド化合物の供給は、前記ベンズアルデヒドと前記ヘキシルシンナミックアルデヒドを1:1/3~40のモル比で供給することにより行う、請求項
3に記載の悪臭化合物の低減方法。
【請求項5】
前記悪臭化合物は、インドール、1-メチルインドール、2-メチルインドール、5-メチルインドール、7-メチルインドール、及び、スカトールから選ばれる少なくとも一つである、請求項1~
4のいずれか1項に記載の悪臭化合物の低減方法。
【請求項6】
前記アルデヒド化合物の供給は、アルデヒド化合物を含む、化粧料、医薬部外
品を供給することにより行なう、請求項1~
5のいずれか1項に記載の悪臭化合物の低減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は悪臭化合物の低減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、臭気は環境の至るところに存在している。ある種の臭気は心地よいものとしてとらえられるが、不快な感覚を引き起こす臭気である悪臭も存在するため、悪臭を多くの方法で制御することが継続的に検討されている。例えば、悪臭としては、ヒトの体臭、体内排泄物等が挙げられる。これらの臭気としては、例えばインドール化合物によるものが知られている。
【0003】
ところで、悪臭を制御するための消臭製品、衛生用品等が以下の通り報告されている。
【0004】
特許文献1では、表面反応炭酸カルシウムを臭気物質と接触させ、排尿により生じる臭気物質を制御する手法が記載されている。
【0005】
特許文献2では、アルデヒド、α,β‐不飽和アルデヒド、アルコール、ケトンから選択される芳香物質により、糞便及び尿汚れ由来の悪臭源であるインドール及びインドール関連物質による悪臭物質の発生を防止するフレグランス組成物とその使用方法について記載されている。
【0006】
特許文献3では、大環状ケトンを有効成分とするβ-グルクロニダーゼ阻害剤を適用することにより、尿に酵素活性が作用することによって生じる揮発性成分の生成を抑制する方法について記載されている。
【0007】
特許文献4では、口腔内のインドール、スカトール、フェノール、p-クレゾールなどの臭い成分を効果的に洗浄することを目的とした口腔用組成物について記載されている。
【0008】
特許文献5では、硫化水素およびインドールにより引き起こされる口臭を低減するためにセリンを用いた口腔ケア組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特表2017-528172号公報(2017年9月28日公表)
【文献】特開2008-36434(2008年2月21日公開)
【文献】特開2014-195696(2014年10月16日公開)
【文献】特開2004-203872(2004年7月22日公開)
【文献】特表2013-508453(2013年3月7日公表)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ヒトの体臭は、特に有機酸が存在する箇所において、不快な悪臭として感じられる場合がある。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みて成された発明であり、有機酸が存在する箇所における悪臭の低減方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る悪臭化合物の低減方法は、インドール骨格を有する悪臭化合物及び有機酸が存在するヒトの皮膚に対してアルデヒド化合物を供給する(但し、医療行為を除く)。
【0013】
また、前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るインドール骨格を有する悪臭化合物及び有機酸が存在する箇所の当該悪臭化合物を低減するための組成物は、アルデヒド化合物を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、インドール骨格を有する悪臭化合物及び有機酸が存在する箇所における悪臭の低減方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<悪臭化合物の低減方法>
本発明の一態様に係る悪臭化合物の低減方法(以下、悪臭化合物の低減方法を単に「低減方法」という。)は、インドール骨格を有する悪臭化合物及び有機酸が存在するヒトの皮膚に対してアルデヒド化合物を供給する方法である(但し、医療行為を除く)。なお、本明細書において悪臭化合物とは悪臭の原因となる化合物をいい、具体的には後述するインドール骨格を有する化合物である。
【0016】
〔アルデヒド化合物〕
本発明の一態様において用いるアルデヒド化合物は、悪臭化合物と反応して当該悪臭化合物を別化合物に変換する。例えば、分子内に芳香環を含む芳香族アルデヒド化合物が好ましく、より好ましくはベンズアルデヒド、ヘキシルシンナミックアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、シンナミックアルデヒド、α-アミルシンナミックアルデヒド、ヒドラトロピックアルデヒド、アニスアルデヒド、p-メチルフェニルアセトアルデヒド、クミンアルデヒド、シクラメンアルデヒド、3-(p-t-ブチルフェニル)-プロピルアルデヒド、p-エチル-2,2-ジメチルヒドロシンナムアルデヒド、2-メチル-3-(p-メトキシフェニル)-プロピルアルデヒド、p-t-ブチル-α-メチルヒドロシンナミックアルデヒド、サリチルアルデヒド、ヘリオトロピン、ヘリオナール、バニリン、エチルバニリン、メチルバニリン等である。このようなアルデヒド化合物を含むことによりインドール骨格を有する悪臭化合物を低減し、より効率的に悪臭を除去できる。
【0017】
本発明の一態様において、嗜好性向上の観点から、2種以上のアルデヒド化合物を組み合わせて用いてもよい。ベンズアルデヒド、ヘキシルシンナミックアルデヒドの片方のみを用いると当該片方の香りが際立つため、使用者によっては香りに不満を持ち、より良い香りを求める可能性があるが、両方を組み合わせることでお互いが他方の香りを和らげて嗜好性がより向上する。
【0018】
また、ベンズアルデヒド、ヘキシルシンナミックアルデヒドを組み合わせる場合、ベンズアルデヒド:ヘキシルシンナミックアルデヒドのモル比は目的とする嗜好性等に応じて適宜設定すればよいが、1:1/3~40の範囲で用いることが好ましい。ベンズアルデヒド及びヘキシルシンナミックアルデヒドをこれらの範囲のモル比で用いることにより、悪臭化合物を低減させるだけでなく、より嗜好性を高めた悪臭化合物の低減方法を提供できる。
【0019】
〔インドール骨格を有する悪臭化合物〕
インドール骨格を有する化合物とは、インドール骨格を基本骨格として有する化合物を指し、同一分子内に各種置換基が導入されていてもよい。例えば、インドール、1-メチルインドール、2-メチルインドール、5-メチルインドール、7-メチルインドール、スカトール、などが挙げられる。
【0020】
インドール骨格を有する悪臭化合物を本発明の一態様に係る低減方法によって処理することにより、効果的に悪臭を低減させることができる。
【0021】
〔有機酸〕
有機酸が存在する箇所(つまり本発明の一態様における、アルデヒド化合物の供給箇所)としては、ヒトの皮膚が挙げられる。ヒトの皮膚としては、例えば、頭皮、耳の後ろ、襟足、脇の下、胸、背中、鼻の周り、足の裏等が挙げられる。例えば頭皮であれば、汗の成分である乳酸が存在しており、本発明の一態様に係る悪臭化合物の低減方法を好適に用いることができる。乳酸が存在することにより、アルデヒド化合物と悪臭化合物との反応が効率よく進行し、効果的に悪臭を低減させることができる。
【0022】
ヒトの頭皮等の皮膚に存在する有機酸としては、例えば、カルボン酸、スルホン酸が挙げられ、中でもカルボン酸が低減効果の促進において、より好ましい。カルボン酸とは、分子内にカルボキシル基を一つ以上有している化合物である。カルボン酸としては、例えば、飽和脂肪カルボン酸、不飽和脂肪カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、芳香族カルボン酸などが挙げられる。特に、分子内にヒドロキシル基を有するヒドロキシカルボン酸が好ましい。
【0023】
ヒドロキシカルボン酸の中でも、例えば、炭素数2~4の飽和脂肪ヒドロキシカルボン酸、複数のカルボキシル基を有するヒドロキシカルボン酸、芳香族ヒドロキシカルボン酸が好ましい。炭素数2~4の飽和脂肪ヒドロキシカルボン酸としては乳酸、複数のカルボキシル基を有するヒドロキシカルボン酸としてはリンゴ酸、クエン酸、また、芳香族ヒドロキシカルボン酸としてはサリチル酸が挙げられる。中でも、頭皮および皮膚に存在する乳酸の存在下で本発明の一態様はより好適に適用できる。
【0024】
〔アルデヒド化合物の供給方法〕
(供給方法)
本発明の一態様に係る低減方法において、供給の方法としては特に限定されるものではないが、例えば、外用剤の形態で、アルデヒド化合物を対象箇所に塗布する方法、スプレーとして散布する方法などが挙げられる。また、アルデヒド化合物を供給して、インドール骨格を有する悪臭化合物を別の化合物に変換して低減させた後は、例えば水で流すなどして除去してもよい。また、供給の方法として、化粧料、医薬部外品、若しくは医薬品の利用が挙げられる。また、食品、若しくは飲料の摂取が挙げられ、各用途の使用態様に応じて、種々の剤型、形態を選択することが可能である。
【0025】
化粧料であれば、例えばクリーム、乳液、化粧水、エッセンス、洗顔料、クレンジング料、パックなどの基礎化粧料、口紅、ファンデーション、アイカラーなどのメイクアップ化粧料、ボディソープ、石鹸、シャンプー、リンス、コンデッショナーなどのトイレタリー製品、毛髪用セット剤などの毛髪用化粧料、制汗スプレー、消臭クリームなどのデオドラント製品、ヘアコロンや練り香水などのフレグランス製品に適用することができる。
【0026】
医薬品の剤型であれば、経口投与製剤でも非経口投与製剤のいずれであっても構わない。具体的には、エアゾール剤、液剤、エキス剤、エリキシル剤、カプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセル、マイクロカプセル)、顆粒剤、丸剤、眼軟膏剤、経皮吸収型製剤、懸濁剤、乳剤、坐剤(含膣剤)、散剤、酒精剤、錠剤(素錠、コーティング錠、特殊錠)、シロップ剤、浸剤・煎剤、注射剤(水溶性注射剤、非水溶性注射剤)、貼付剤、チンキ剤、点眼剤、トローチ剤、軟膏剤、パップ剤、芳香水剤、リニメント剤、リモナーデ剤、流エキス剤、ローション剤などが挙げられる。これらの製剤は、製剤技術分野における慣用方法にて製造でき、例えば日本薬局方記載の方法で製造することができる。
【0027】
飲食品組成物の形態としては、例えば、ジェル、粉末、液体、顆粒、クリーム状、ペースト状、固形等を挙げることができる。また、本発明の飲食品組成物の種類としても特に限定されず、例えば、菓子類(チューインガム、キャンディ、グミ、タブレット、チョコレート、ゼリー等)、氷菓(アイスキャンディー、アイスクリーム、シャーベット等)、冷菓(ゼリー、プリン、水ようかん等)、麺類をはじめとする澱粉系食品、粉末飲食品、飲料(スープ、コーヒー、茶類、ジュース、炭酸飲料、ココア、アルコール飲料、ゼリー状ドリンク等)、ベーカリー食品(クッキー、ビスケット、パン、パイ、ケーキ等)、油脂食品(マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド等)、乳製品(牛乳、ヨーグルト、乳清飲料、乳酸菌飲料、バター、クリーム、チーズ等)等を挙げることができる。
【0028】
(アルデヒド化合物の供給量)
本発明の一態様において、アルデヒド化合物の供給量は所望の消臭効果等に応じて適宜設定すればよく、例えば、インドール骨格を有する悪臭化合物1モルに対して0.01モル~1000モル供給されることが好ましく、0.1モル~100モル供給されることがさらに好ましい。また、アルデヒド化合物は、有機酸1モルに対して0.01モル~1000モル供給されることが好ましく、0.2モル~500モル供給されることがさらに好ましい。なお、使用者が容易に使用量を特定できるようにするために、アルデヒド化合物を使用者に提供する者は対応箇所毎に目安となる量を設定してもよい。前記提供する者は、例えば、その他に共に供給する成分も含めた組成物の総量に基づいて、頭皮に何mLを供給すればよいかを設定したり、供給する箇所の単位面積当たりの使用量を設定したりして、それらの使用量を使用者に知らせてもよい。
【0029】
また、本発明の一態様において、アルデヒド化合物は、インドール骨格を有する悪臭化合物と有機酸とが、1:10~10:1のモル比で存在する箇所に供給されることが好ましい。また、インドール骨格を有する悪臭化合物が存在する箇所に、好ましい量の有機酸が存在していない場合はアルデヒド化合物と共に有機酸を供給してもよい。
【0030】
アルデヒド化合物を、インドール骨格を有する悪臭化合物と有機酸とが前記のモル比で存在する箇所に供給することによって、効果的に悪臭化合物を低減することができる。
【0031】
(その他の材料)
また、本発明の一態様に係る低減方法は、使用の態様に応じて、アルデヒド化合物とその他の材料とを混合した混合物を供給する方法であってもよい。その他の材料としては、溶媒、消臭補助剤、防腐剤、界面活性剤、変色防止剤、酸化防止剤、着色料、香料、樹脂、可塑剤などが挙げられる。その他の成分の量は、その他の成分が溶媒である場合は1重量%~99.9重量%、消臭補助剤、界面活性剤、香料、又は樹脂である場合は0.001重量%~80重量%、防腐剤、変色防止剤、酸化防止剤、着色料、又は可塑剤の場合は0.00001重量%~1重量%であることが好ましい。
【0032】
(混合物の形態)
本発明の一態様に係る低減方法において、アルデヒド化合物とその他の材料との混合物を、種々の形態として用いることができる。形態としては、例えば、液状、ゲル状、クリーム状、顆粒状などが挙げられる。
【0033】
〔まとめ〕
本発明は、これに制限されるものではないが、以下の発明を包含する。
(1)インドール骨格を有する悪臭化合物及び有機酸が存在するヒトの皮膚に対してアルデヒド化合物を供給する、悪臭化合物の低減方法(但し、医療行為を除く)。
(2)前記ヒトの皮膚は頭皮である、(1)に記載の悪臭化合物の低減方法。
(3)前記アルデヒド化合物は、芳香族アルデヒド化合物である、(1)又は(2)に記載の悪臭化合物の低減方法。
(4)前記アルデヒド化合物は、ベンズアルデヒド及びヘキシルシンナミックアルデヒドのうち少なくとも一つである、(3)に記載の悪臭化合物の低減方法。
(5)前記アルデヒド化合物の供給は、前記ベンズアルデヒドと前記ヘキシルシンナミックアルデヒドを1:1/3~40のモル比で供給することにより行う、(4)に記載の悪臭化合物の低減方法。
(6)前記有機酸はヒドロキシカルボン酸である、(1)~(5)のいずれか1つに記載の悪臭化合物の低減方法。
(7)前記ヒドロキシカルボン酸は、乳酸、リンゴ酸、及びクエン酸から選ばれる1種又は2種以上である、(6)に記載の悪臭化合物の低減方法。
(8)前記悪臭化合物は、インドール、1-メチルインドール、2-メチルインドール、5-メチルインドール、7-メチルインドール、及び、スカトールから選ばれる少なくとも一つである、(1)~(7)のいずれか1つに記載の悪臭化合物の低減方法。
(9)前記アルデヒド化合物の供給は、アルデヒド化合物を含む、化粧料、医薬部外品、医薬品、食品、飲料を供給することにより行なう、(1)~(8)のいずれか1つに記載の悪臭化合物の低減方法。
【0034】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0035】
〔実施例1~15:擬似体臭(インドール様臭及び乳酸様臭の混合臭)の低減試験〕
様々な種類のアルデヒド化合物のインドール様臭及び乳酸様臭に対する有効性を確認するための試験を行なった。インドール様臭とは、未反応のインドール臭、及びインドールが変化したことで生じる臭気を指す。
【0036】
インドール又は1-メチルインドールに乳酸を表1に示すモル濃度になるように、メタノールに溶解させ1mLにした各種擬似体臭試料を作製した。試料を35℃で、24時間静置した後、試験を行った。試料のインドール様臭の強さを20名の被験者により5段階で評価した。なお、5段階評価は「1」が非常に強くわかる、「2」が強くわかる、「3」が分かる、「4」が弱いが分かる、「5」がほとんど分からない、として行い、被験者の評価の平均値を算出した。平均値が4.0~5.0の場合を◎、2.0~4.0の場合を○、1.0~2.0の場合を△として、評価した。結果を表1に示す。
【表1】
【0037】
表1に示す通り、アルデヒド化合物の添加により、インドール様臭および乳酸様臭からなる擬似体臭が良好に抑制されることが示された。
【0038】
〔実施例:アルデヒド化合物の性能試験〕
アルデヒド化合物の悪臭低減効果を確認するため、各種香料を用いて以下の定量試験を行った。
【0039】
インドール、各種化合物、及び乳酸を表2に示すモル濃度になるようメタノールに溶解させ、溶液の全体量が1mLになるようサンプルを調製した。各種化合物は、(3)ベンズアルデヒド、(4)ヘキシルシンナミックアルデヒド、(5)ベンジルサリシレート、(6)リモネン、及び(7)ヘキシルサリシレートを使用した。サンプルを45℃で1日間静置して測定試料として、インドールの減少率を算出した。
【0040】
減少率は次の方法で算出した。まず、インドール0.1mol/Lのメタノール溶液1mLをアジレントテクノロジー社製ガスクロマトグラフィー分析装置にて分析し、インドール由来のピーク面積を算出し、これをインドールが100%存在するときの参照試料の面積とする。次に、測定試料をガスクロマトグラフィー分析装置にて分析し、インドール由来のピーク面積を計測した。参照試料の面積と測定試料の面積とを比較し、インドールの減少率を算出した。減少率が0~25%のときに1、26~50%のときに2、51~75%のときに3、76~100%のときに4として、4段階で評価した。結果を表2に示す。
【表2】
【0041】
表2に示す通り、比較例においては、試験後のインドールの量が、参照試料と比較して0~25%減少した。それに対し、ベンズアルデヒド又はヘキシルシンナミックを含む試料を用いた実施例において、試験後のインドールの量が、参照試料と比較して、51~75%減少した。すなわち、アルデヒド化合物によってインドールの量が低減したことが示された。
【0042】
〔実施例:アルデヒド化合物とインドール化合物との反応性試験〕
アルデヒド化合物とインドール化合物との反応性を確認するため、以下の試験を行った。
【0043】
アルデヒド化合物として、ベンズアルデヒド又はヘキシルシンナミックアルデヒドを用いた。また、インドール化合物として、インドール又は1-メチルインドールを用いた。サンプルを静置する温度を35℃にした以外は、〔実施例:アルデヒド化合物の性能試験〕と同様の方法で試験を行った。
【0044】
測定試料をガスクロマトグラフィー分析装置にて分析し、インドール由来のピーク面積を計測した。参照試料の面積と測定試料の面積とを比較し、インドールの減少率を算出した。減少率が0~25%のときに1、26~50%のときに2、51~75%のときに3、76~100%のときに4として、4段階で評価した。結果を表3に示す。
【表3】
【0045】
表3に示す通り、比較例においては、試験後のインドール及び1-メチルインドールの量が、試験前と比較して0~25%減少した。それに対し、アルデヒド化合物を含む試料を用いた実施例において、試験後のインドール化合物の量は、比較例よりも減少した。すなわち、アルデヒド化合物とインドール化合物とが反応し、インドール化合物が消費されたことが示された。
【0046】
〔実施例:有機酸の種類の評価〕
どの種類の有機酸の存在が効果的であるかを検討するため、以下の試験を行った。
【0047】
有機酸の種類とモル濃度が異なること以外は、〔実施例:アルデヒド化合物の性能試験〕と同じ方法で試験を行った。測定試料をガスクロマトグラフィー分析装置にて分析し、インドール由来のピーク面積を計測した。参照試料の面積と測定試料の面積とを比較し、インドールの減少率を算出した。減少率が0~25%のときに1、26~50%のときに2、51~75%のときに3、76~100%のときに4として、4段階で評価した。結果を表4に示す。
【表4】
【0048】
表4に示す通り、有機酸非存在である比較例4-1においては、インドールの量が、参
照試料と比較してほとんど減少しなかった。それに対し、有機酸が存在する実施例において、測定試料のインドールの量が、参照試料と比較して減少した。ベンズアルデヒドが、有機酸の存在下において効果的にインドールと反応し、インドールの量を低減していることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、悪臭化合物の低減に利用することができる。