(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】二層状油性化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/89 20060101AFI20240403BHJP
A61K 8/03 20060101ALI20240403BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20240403BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20240403BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
A61K8/89
A61K8/03
A61K8/25
A61Q1/00
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2018098327
(22)【出願日】2018-05-22
【審査請求日】2021-04-27
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】近友 文
(72)【発明者】
【氏名】太丸 卓
(72)【発明者】
【氏名】小河 頌子
(72)【発明者】
【氏名】池田 智子
【合議体】
【審判長】木村 敏康
【審判官】瀬良 聡機
【審判官】野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-23022(JP,A)
【文献】特開2009-184980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)
1~20質量%の非球状オルガノポリシロキサンエラストマー
(b)
0.008~1.2質量%の疎水化微粒子無水ケイ酸
(c)
10~50質量%の前記(b)成分以外の粉末
を含有してなる、二層状油性化粧料。
【請求項2】
粘度が10,000mPa・s以下である、請求項1に記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末を高配合した油性化粧料に関する。さらに詳しくは、粉末を高配合するにもかかわらず、粉末のケーキングが防止され、粉末の再分散性に優れた化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品分野では、肌を彩色したり、肌の凹凸を補正したり、肌に塗布する際の使用感を改善すること等を目的として粉末が配合される。なかでも、油性化粧料は、塗布する際に滑らかな感触が得られる等の理由からメーキャップ化粧料のみならず、スキンケア化粧料等としても調製されるが、油性化粧料においては、てかりを抑え、肌に塗布した際のマットな質感を得るために粉末が配合され、二層ないしは多層型の油性化粧料として調製される場合もある。
【0003】
しかしながら、粉末を配合した油性化粧料を静置しておくと、粉末成分が沈降し、沈降した粉末同士が凝集して分散粒子が大きくなったり、粉末同士が固まってケーキングを起こし、再分散が困難な状態になることが問題となる。
【0004】
例えば、特許文献1には、液状油に無水ケイ酸とともに粉末を配合することによって、粉末の凝集やケーキングが抑制され、粉末の再分散性が良好な多層型油性化粧料が記載されている。しかしながら、配合可能な粉末の量が0.1~10質量%とされており、10質量%より多くの粉末を配合した場合にもケーキングが抑制され、粉末の再分散が良好な油性化粧料が得られるか否かは不明である。
【0005】
従来よりも多くの粉末を配合することが可能であり、なおかつ、使用性の良好な油性化粧料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、粉末を高配合しているにもかかわらずケーキングが生じにくく、塗布時の使用性に優れた油性化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者等は、前記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、粉末を高配合した油性化粧料に非球状オルガノポリシロキサンエラストマーと無水ケイ酸とを組み合わせて配合することによって、粉末を高配合しているにもかかわらず、再分散性に優れ、ケーキングが生じにくく、肌へ塗布した際の伸びに優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(a)非球状オルガノポリシロキサンエラストマー
(b)無水ケイ酸
(c)前記(b)成分以外の粉末
を含有してなる、二層状油性化粧料を提供する。さらに、化粧料全体の粘度が10,000mPa・s以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、上記構成とすることにより、粉末を高配合しているにもかかわらず、粉末の再分散性に優れ、ケーキングが生じにくい化粧料を得ることができる。また、(a)非球状オルガノポリシロキサンエラストマーと(b)無水ケイ酸とを組み合わせたことにより、静置時の粘度が高いにもかかわらず、使用時(肌への塗布時)には粘度が低い化粧料となるので、化粧料の肌への伸び広がりが良好である化粧料を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る二層状油性化粧料は、静置しておくと上層が油性成分、下層が粉末成分に分かれて二層状となり、使用時に振とうすると二層が混ざり合って粉末成分が油性成分に均一に分散して液状を呈する。
【0012】
本発明の二層状油性化粧料は、(a)非球状オルガノポリシロキサンエラストマー、(b)無水ケイ酸、および(c)前記(b)成分以外の粉末を含有することを特徴とする。以下、本発明の化粧料を構成する各成分について詳述する。
【0013】
<(a)非球状オルガノポリシロキサンエラストマー>
本発明に係る化粧料に配合される(a)非球状オルガノポリシロキサンエラストマー(以下、単に「(a)成分」と称する場合がある)は、シロキサン結合に有機基が付加され、三次元架橋させたオルガノポリシロキサンエラストマー(シリコーンエラストマー)であって、乳化性および非乳化性のものを含み、任意の溶媒に膨潤した膨潤物として光学顕微鏡下で観察した場合に球状を呈していないものを指す。球状を呈していないもの、つまり非球状のものには、不定形のものも含まれる。
【0014】
乳化性架橋型シロキサンエラストマーとしては、特に限定されるものではないが、架橋型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン、アルキル基含有架橋型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン、架橋型ポリグリセリン変性シリコーン、アルキル基含有架橋型ポリグリセリン変性シリコーン等が挙げられる。これら乳化性架橋型シロキサンエラストマーは、シリコーン油、ミネラルオイル、トリエチルヘキサノイン、スクワラン等の各種油分に膨潤された膨潤物の形態で市販されているものを用いることができる。具体例としては以下のものが挙げられる。
【0015】
ポリオキシエチレンメチルポリシロキサンクロスポリマーの膨潤物としては、KSG-210(((PEG-10/15)/ジメチコン)クロスポリマー、ジメチコンの混合物で架橋物は20~30%、信越化学工業株式会社製)、9011シリコーンエラストマーブレンド((PEG-12/ジメチコン)クロスポリマー、シクロメチコンの混合物、東レ・ダウコーニング株式会社製)等が挙げられる。
【0016】
アルキル基含有ポリオキシエチレンメチルポリシロキサンクロスポリマーの膨潤物としては、KSG-310((PEG-15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、ミネラルオイルの混合物で架橋物は25~35%)、KSG-320((PEG-15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、イソドデカンの混合物で架橋物は20~30%)、KSG-330((PEG-15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、トリエチルヘキサノインの混合物で架橋物は15~25%)、KSG-340((PEG-15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、(PEG-10/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、スクワランの混合物で架橋物は25~35%)(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0017】
ポリグリセリン変性シリコーンクロスポリマーの膨潤物としては、KSG-710((ジメチコン/ポリグリセリン-3)クロスポリマー、ジメチコンの混合物で架橋物は20~30%、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0018】
アルキル基含有ポリグリセリン変性シリコーンクロスポリマーの膨潤物としては、KSG-810((ラウリルジメチコン/ポリグリセリン3)クロスポリマー、ミネラルオイルの混合物で架橋物は25~35%)、KSG-820((ラウリルジメチコン/ポリグリセリン3)クロスポリマー、イソドデカンの混合物で架橋物は20~30%)、KSG-830((ラウリルジメチコン/ポリグリセリン3)クロスポリマー、トリエチルヘキサノインの混合物で架橋物は15~25%)、KSG-840((ラウリルジメチコン/ポリグリセリン3)クロスポリマー、スクワランの混合物で架橋物は25~35%)(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0019】
非乳化性架橋型シロキサンエラストマーとしては、特に限定されるものではないが、メチルポリシロキサンクロスポリマー、メチルフェニルポリシロキサンクロスポリマー、ビニルジメチコン/ラウリルジメチコンクロスポリマー、ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン/ビス-ビニルジメチコンクロスポリマー、アルキル(C30-45)セテアリルジメチコンクロスポリマー、セテアリルジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビス-イソブチルPPG-20)クロスポリマー等が挙げられる。これら非乳化性架橋型シロキサンエラストマーは、シリコーン油、ミネラルオイル、トリエチルヘキサノイン、スクワラン等の各種油分に膨潤された膨潤物の形態で市販されているものを用いることができる。具体例としては以下のものが挙げられる。
【0020】
メチルポリシロキサンクロスポリマーの膨潤物としては、9040シリコーンエラストマーブレンド(ジメチコンクロスポリマー、シクロペンタシロキサンの混合物で架橋物は12%)、9041シリコーンエラストマーブレンド(ジメチコンクロスポリマー、ジメチコン5mPa・sの混合物で架橋物は16%)、9045シリコーンエラストマーブレンド(ジメチコンクロスポリマー、シクロペンタシロキサンの混合物で架橋物は12.5%)、EL-8040IDシリコーンオーガニックブレンド(ジメチコンクロスポリマー、イソドデカンの混合物で架橋物は18%)(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)等のジメチコンクロスポリマーの膨潤物や、KSG-15((ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、シクロペンタシロキサンの混合物で架橋物は4~10%)、KSG-16((ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、ジメチコン6mPa・sの混合物で架橋物は20~30%)、KSG-1610((ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、メチルトリメチコンの混合物で架橋物は15~20%)(以上、信越化学工業株式会社製)、CXG-1101((ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、シクロペンタシロキサンの混合物で架橋物は12%、粘度550,000mPa・s、ヌシルテクノロジー社製)等のジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマーの膨潤物等が挙げられる。
【0021】
メチルフェニルポリシロキサンクロスポリマーの膨潤物としては、KSG-18A((ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマー、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコンの混合物で架橋物は10~20%)(信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0022】
ビニルジメチコン/ラウリルジメチコンクロスポリマーの膨潤物としては、KSG-41A((ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、ミネラルオイルの混合物で架橋物は20~30%)、KSG-42A((ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、イソドデカンの混合物で架橋物は15~25%)、KSG-43((ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、トリエチルヘキサノインの混合物で架橋物は25~35%)、KSG-44((ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、スクワランの混合物で架橋物は25~35%)(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0023】
ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン/ビス-ビニルジメチコンクロスポリマーの膨潤物としては、KSG-042Z((ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン/ビス-ビニルジメチコン)クロスポリマー、イソドデカンの混合物で架橋物は約20%)、KSG-045Z((ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン/ビス-ビニルジメチコン)クロスポリマー、シクロペンタシロキサンの混合物で架橋物は約20%)(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0024】
アルキル(C30-45)セテアリルジメチコンクロスポリマーの膨潤物としては、VELVESIL 125(アルキル(C30-45)セテアリルジメチコンクロスポリマー、シクロペンタシロキサンの混合物で架橋物は約12.5%)、VELVESIL 034(アルキル(C30-45)セテアリルジメチコンクロスポリマー、カプリリルメチコンの混合物で架橋物は約16%)(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)等が挙げられる。
【0025】
セテアリルジメチコンクロスポリマーの膨潤物としては、VELVESIL DM(セテアリルジメチコンクロスポリマー、ジメチコン5mPa・sの混合物で架橋物は約17%、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)等が挙げられる。
【0026】
(ジメチコン/ビス-イソブチルPPG-20)クロスポリマーの膨潤物としては、EL-8050ID Silicone Organic Elastomer Blend((ジメチコン/ビス-イソブチルPPG-20)クロスポリマー、イソドデカンの混合物で架橋物は15%、以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)等が挙げられる。
【0027】
上記したように、本発明に係る非球状オルガノポリシロキサンエラストマーは、シリコーン油、ミネラルオイル、トリエチルヘキサノイン、スクワラン等の各種油分に膨潤された膨潤物の形態で市販されているが、本発明の化粧料においては、シリコーン油に膨潤された膨潤物の形態で配合するのが好ましい。さらに、本発明の非球状オルガノポリシロキサンエラストマーとしては、シクロペンタシロキサンに実分3%で分散したときの粘度(30℃)が5~10,000mPa・s、さらには200~5,000mPa・s、よりさらには1,000~5,000mPa・sであるものが好ましい。
【0028】
なかでも、本発明の非球状オルガノポリシロキサンエラストマーとしては、メチルポリシロキサンクロスポリマーの膨潤物であることが好ましく、CXG-1101((ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、シクロペンタシロキサンの混合物で架橋物は12%、粘度550,000mPa・s、ヌシルテクノロジー社製)、KSG-16((ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、ジメチコン6mPa・sの混合物で架橋物は20~30%、信越化学工業株式会社製)、又はKSG-15((ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、シクロペンタシロキサンの混合物で架橋物は4~10%、信越化学工業株式会社製)であることがさらに好ましい。
【0029】
本発明の(a)成分として前記エラストマーの一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(a)成分の配合量は、化粧料全量に対して、1~20質量%、好ましくは3~18質量%、より好ましくは5~12質量%である。(a)成分の配合量が1質量%未満では振とう時の粉末の再分散性が劣り、20質量%を超えて配合すると肌に塗布した際の化粧料の伸びが悪くなるなどの点から好ましくない。
【0030】
<(b)無水ケイ酸>
本発明に係る化粧料に配合される(b)無水ケイ酸(以下、単に「(b)成分」と称する場合がある)は、通常化粧料に使用可能な無水ケイ酸(シリカ)であればよく、特に限定されない。また、本発明の無水ケイ酸の形状は、特に限定されず、球状、板状、ロッド状等の任意の形態であってよい。なお、本発明に用いる無水ケイ酸の大きさは特に限定されないが、平均一次粒子径が1~100nm、さらには5~50nmの微粒子無水ケイ酸であるのが好ましい。ここで、本発明における「平均一次粒子径」とは、化粧料の分野で一般的に用いられる方法で測定される一次粒子の径を意味するものであり、具体的には透過電子顕微鏡写真、あるいはレーザー散乱・回折法等から求められる、粒子の長軸と短軸の相加平均として求められる値である。
【0031】
化粧料に使用可能な無水ケイ酸には、表面無処理の親水性無水ケイ酸、疎水性物質で表面処理した疎水化無水ケイ酸等があり、本発明の(b)成分としていずれも使用可能である。本発明の化粧料において、疎水性物質で表面処理した疎水化無水ケイ酸が好ましく用いられる。
【0032】
本発明における疎水化無水ケイ酸は、無水ケイ酸表面のシラノール基(水酸基)が、ジメチルジクロロシラン処理、オクチルシラン処理、ヘキサメチルジシラザン処理、ジメチルシリコーンオイル処理又はメタクリロキシシラン処理されたものである。なかでも、化粧料の安定性向上効果に優れることから、ジメチルジクロロシラン処理、オクチルシラン処理、ヘキサメチルジシラザン処理又はジメチルシリコーンオイル処理されたものが好ましい。
【0033】
疎水化無水ケイ酸の市販品としては、例えば、ジメチルジクロロシラン処理品であるAEROSIL R972、R972V、R972CF、R974、R976、R976S(日本アエロジル株式会社製)、オクチルシラン処理品であるAEROSIL R805(日本アエロジル株式会社製)、ヘキサメチルジシラザン処理品であるAEROSIL R812、R812S、RX200(日本アエロジル株式会社製)、ジメチルシリコーンオイル処理品であるAEROSIL R202、RY200(日本アエロジル株式会社製)等を挙げることができる。本発明ではこれらの1種又は2種以上を配合して使用することができる。
【0034】
(b)成分の配合量は、化粧料全量に対して、0.005~2.0質量%、より好ましくは0.008~1.2質量%、さらに好ましくは0.008~1.0質量%である。(b)成分の配合量が0.005質量%未満であると振とう時の粉末の再分散性が劣り、2.0質量%を超えると肌にきしみを感じたり、塗布時の伸びが悪い等、使用性に悪影響を与える傾向が認められる。
【0035】
<(c)粉末>
本発明に係る化粧料に配合される(c)粉末(以下、単に「(c)成分」と称する場合がある)は、特に限定されず、通常化粧料に配合できる粉末成分であって、前記(b)成分を除く粉末成分をいう。(c)粉末の形状は、特に限定されるものでなく、球状、板状、ロッド状等の任意の形態であってよい。例としては、無機粉末、有機粉末等が挙げられる。
【0036】
無機粉末としては、例えば、タルク、カオリン、雲母、ゼオライト等の無機粉末;二酸化チタン、酸化亜鉛等の無機白色顔料;酸化鉄(ベンガラ)等の無機赤色系顔料;黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料;黒酸化鉄、カーボンブラック等の黒色系顔料;酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等の無機緑色系顔料;群青、紺青等の無機青色系顔料;酸化チタンコーテッドマイカ、着色酸化チタンコーテッドマイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等のパール顔料;アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等の金属粉末顔料等を挙げることができる。
【0037】
有機粉末としては、例えば、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、及び青色404号等の有機顔料;赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号及び青色1号などのジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料;ポリアミド樹脂(ナイロン粉末)ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリウレタン粉末、ポリスチレン粉末、ポリアクリル酸アルキル粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、シリコーン粉末、架橋型シリコーン粉末等の樹脂粉末等が挙げられる。樹脂粉末の市販品としては、ポリメチルシルセスキオキサン粉末(商品名「トスパール2000B」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、シリコーン複合パウダー(商品名「KSP100」、信越化学工業株式会社製)、ポリメチルメタクリレート(商品名「マツモトマイクロスフェアーM-330」、マツモト油脂社製)等を挙げることができる。
【0038】
本発明の化粧料における(c)成分の配合量は、化粧料全量に対して、10~50質量%、より好ましくは15~45質量%である。(c)成分の配合量が10質量%未満であるとべたつきを強く感じ、50質量%を超えて配合すると再分散性が劣り、塗布時の伸びが悪くなる等の使用性の低下が懸念される。
【0039】
本発明に係る二層状油性化粧料は、前記(a)~(c)成分を配合することによって、従来よりも多くの粉末が配合されているにもかかわらず、再分散性に優れた化粧料を得ることができる。また、前記(a)成分と(b)成分を組み合わせることによって、肌上で塗り広げる際には低粘度でありながら、静置時の粘度が高い化粧料を得ることができるので、肌への伸び広がりが良く、粉末の分散性に優れた油性化粧料を実現することができる。
【0040】
本発明に係る二層状油性化粧料は、メーキャップ化粧料、スキンケア化粧料等の様々な形態に調製することが可能である。特に、本発明の二層状油性化粧料は、粉末を高配合しているので、既に調製された液状化粧料の使用時に数滴混合して、肌に塗布したときの質感を好みの質感へ変更するための、質感調整用化粧料として利用可能である点で特に新しい。例えば、既存の液状メーキャップ化粧料に混合する本発明の二層状油性化粧料の量を多くすればするほど、マットな質感に変化する。この場合の液状化粧料は特に限定されないが、油中水型乳化化粧料や油性化粧料であれば本発明の二層状油性化粧料を良好に混合することができる。
【0041】
本発明の化粧料は、用途に応じて好適な粘度が異なるが、肌への伸び広げ易さおよび他の液状化粧料との混合し易さの観点から、全体が均一になるまで20回程度振とうし、BL型粘度計を用いて30℃の条件下で測定した粘度が10,000mPa・s以下であることを特徴とする。
【0042】
また、本発明の油性化粧料においては、化粧料に通常用いられる各種成分を、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜配合してもよい。例えば、油分、紫外線防御剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、皮膜剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調製剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、殺菌防腐剤、その他の薬剤、色素、香料、水等が挙げられる。
【0043】
本発明の化粧料に配合される油分は、通常化粧料において用いられる油分でよく、特に限定されるものではない。具体例として、アボカド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ミンク油、オリーブ油、ヒマシ油、ホホバ油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン等の液体油脂;ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等の固体油脂;流動パラフィン、スクワラン、パラフィン、セレシン、ワセリン、スクワレン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素油;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、べヘン酸、オレイン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸等の高級脂肪酸;ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、べヘニルアルコール、オレイルアルコール、モノステアリルグリセロールエーテル、モノパルミチルグリセロールエーテル、コレステロール、フィトステロール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール;ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸デシル、ジオクタン酸エチレングリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、トリオクタン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラオクタン酸ぺンタオリスリトール、トリオクタン酸グリセリン、トリイソステアリン酸グリセリン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル油;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、シクロぺンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、3次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、シリコーンゴム、各種変性ポリシロキサン(アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等)等のシリコーン油が挙げられる。なかでも、本発明の化粧料においてはシリコーン油が好ましく用いられる。本発明の油分として、前記油分から選択される1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
本発明の化粧料は、粉末を配合する油性化粧料として常法により製造することができる。
【実施例】
【0045】
以下に具体例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例等における配合量は特に断らない限り質量%を示す。
【0046】
下記表1に示す組成を有する二層状油性化粧料を常法により調製して、(1)粘度の測定、(2)粉末の再分散性、(3)肌への伸び広がりの評価を行った。評価は以下のように行った。
【0047】
(1)粘度の測定
調製した試料を30℃で1日間静置した後、全体が均一になるまで20回程度振とうし、BL型粘度計(粘度幅に合わせて任意でローターを選択、12回転、1分)により粘度(mPa・s)を測定した。結果は表に示す。
【0048】
(2)再分散性の評価
調製した試料を室温にて1か月静置した後、容器を上下に10回振とうしたときの粉末成分の再分散性の状態を目視にて観察し、下記の基準に基づいて評価した。結果は表に示す。
<評価基準>
A:非常に良好
B:良好
C:やや不良
D:不良
【0049】
(3)肌への伸びの良さ
10名の専門パネルによる実使用性試験を行った。各化粧料を肌へ塗布した際の伸びの良さについて下記の基準に基づいて評価した。結果は表に示す。
<評価基準>
A:パネルの7名以上が、伸びが良いと回答した。
B:パネルの4~6名が、伸びが良いと回答した。
C:パネルの3名以下が、伸びが良いと回答した。
【0050】
【0051】
粉末を高配合している油性化粧料において、本発明の(b)成分を配合していない場合(比較例1)、(a)成分を配合していない場合(比較例2)、(b)成分の配合量が0.005質量%未満である場合(比較例3)、(a)成分の配合量が1質量%未満である場合(比較例5)には、粉末の再分散性が劣っていた。また、(b)成分の配合量が2質量%を超える場合(比較例4)および(a)成分の配合量が20質量%を超える場合(比較例6)には、肌への伸びが劣る傾向にあった。一方、実施例1~5の化粧料はいずれも、粉末の再分散性に優れ、肌への伸びが良好であった。
【0052】
次に、実施例1の化粧料と比較例1の化粧料について異なる回転数の下での粘度を測定し、比較した。結果を以下の表2に示す。回転数の低い条件(10回転程度以下)での粘度は、化粧料の静置時の粘度を表し、回転数が高い条件(80回転程度以上)での粘度は、肌上で塗り広げたときあるいは混合するとき(使用時)の粘度を表す。
【0053】
【0054】
表2に示されるように、比較例1の化粧料は回転数が低い条件下でも高い条件下でも粘度が低かった。これは、比較例1の化粧料は、静置時および使用時のいずれの場合にも化粧料の粘度が低いことを示す。よって、比較例1の化粧料は、使用時の化粧料の伸びは良いが、静置時に粉末が沈降しやすく、ケーキングが起こりやすいことが予測される。一方、実施例1の化粧料は、低い回転数での粘度が高い一方で、高い回転数での粘度が低かった。これは、静置時の粘度が高く、使用時の粘度が低いことが示されており、静置時の粉末の分散性が良好であり、かつ、使用時の伸びも良好であることが認められる。
【0055】
以下に、本発明による二層状油性化粧料の別の処方例を挙げる。いずれの処方も、粉末の再分散性に優れ、肌への伸びが良好であった。
【0056】
(処方例1)質感調整用油性化粧料
配合成分 質量%
エチルアルコール 5.00%
非球状オルガノポリシロキサンエラストマー*1 8.00%
シリコーン樹脂粉末 24.00%
煙霧状無水ケイ酸 0.01%
シクロペンタシロキサン 62.99%
*1CXG-1101
【0057】
(処方例2)質感調整用油性化粧料
配合成分 質量%
エチルアルコール 5.00%
非球状オルガノポリシロキサンエラストマー*1 10.00%
シリコーン樹脂粉末 10.00%
疎水化処理煙霧状無水ケイ酸 0.01%
シクロペンタシロキサン 74.99%
*1CXG-1101
【0058】
(処方例3)質感調整用油性化粧料
配合成分 質量%
エチルアルコール 5.00%
非球状オルガノポリシロキサンエラストマー*1 7.00%
シリコーン樹脂粉末 30.00%
疎水化処理煙霧状無水ケイ酸 0.01%
シクロペンタシロキサン 57.99%
*1CXG-1101
【0059】
(処方例4)リキッドファンデーション化粧料
配合成分 質量%
エチルアルコール 5.00%
非球状オルガノポリシロキサンエラストマー*1 8.00%
シリコーン樹脂粉末 22.60%
酸化チタン 1.00%
黄酸化鉄 0.20%
黒酸化鉄 0.10%
ベンガラ 0.10%
疎水化処理煙霧状無水ケイ酸 0.01%
シクロペンタシロキサン 62.99%
*1CXG-1101
【0060】
(処方例5)質感調整用油性化粧料
配合成分 質量%
エチルアルコール 5.00%
非球状オルガノポリシロキサンエラストマー*2 17.00%
シリコーン樹脂粉末 24.00%
疎水化処理煙霧状無水ケイ酸 0.01%
シクロペンタシロキサン 53.99%
*2KSG-15
【0061】
(処方例6)口唇用化粧料
配合成分 質量%
非球状オルガノポリシロキサンエラストマー*1 8.00%
パール剤 1.00%
シリコーン樹脂粉末 12.00%
PMMA粉末 12.00%
疎水化処理煙霧状無水ケイ酸 0.01%
メチルフェニルポリシロキサン10CS 66.99%
*1CXG-1101
【0062】
(処方例7)ボディオイル
配合成分 質量%
エチルアルコール 5.00%
非球状オルガノポリシロキサンエラストマー*1 8.00%
シリコーン樹脂粉末 10.00%
マイカ 5.00%
パール剤 0.50%
疎水化処理煙霧状無水ケイ酸 0.01%
シクロペンタシロキサン 71.49%
*1CXG-1101