(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】有機電界発光素子及び有機電界発光素子用モノアミン化合物
(51)【国際特許分類】
C07C 211/61 20060101AFI20240403BHJP
C07D 307/91 20060101ALI20240403BHJP
C07D 333/76 20060101ALI20240403BHJP
C07D 409/12 20060101ALI20240403BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240403BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20240403BHJP
【FI】
C07C211/61 CSP
C07D307/91
C07D333/76
C07D409/12
H05B33/14 A
H05B33/22 D
(21)【出願番号】P 2019008646
(22)【出願日】2019-01-22
【審査請求日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】10-2018-0009993
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0143745
(32)【優先日】2018-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】1, Samsung-ro, Giheung-gu, Yongin-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002619
【氏名又は名称】弁理士法人PORT
(72)【発明者】
【氏名】三宅 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】上野 雅嗣
(72)【発明者】
【氏名】金 秀蘭
(72)【発明者】
【氏名】高田 一範
(72)【発明者】
【氏名】宇野 卓矢
(72)【発明者】
【氏名】糸井 裕亮
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0094665(KR,A)
【文献】国際公開第2016/178544(WO,A2)
【文献】特開2016-066723(JP,A)
【文献】国際公開第2016/208862(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/116167(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/148127(WO,A2)
【文献】国際公開第2013/002514(WO,A2)
【文献】国際公開第2010/044130(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0127099(KR,A)
【文献】特開平05-303221(JP,A)
【文献】特許第7123466(JP,B2)
【文献】特開2022-169596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるモノアミン化合物:
【化1】
(化学式1)
前記化学式1において、
XはS、OまたはCRR’であり、
R及びR’はそれぞれ独立して置換されたもしくは置換されない炭素数1以上10以下のアルキル基、置換されたもしくは置換されない環形成炭素数6以上20以下のアリール基、置換されたもしくは置換されない環形成炭素数2以上10以下のヘテロアリール基であるか、または隣接する基と結合して環を形成し、
L
1は置換されたもしくは置換されない環形成炭素数6以上12以下のアリーレン基、または置換されたもしくは置換されない環形成炭素数2以上12以下のヘテロアリーレン基であり、
nは1以上2以下の整数であり、
L
2は置換されたもしくは置換されない環形成炭素数6以上12以下のアリーレン基、または置換されたもしくは置換されない環形成炭素数2以上12以下のヘテロアリーレン基であり、
mは0以上2以下の整数であり、
R
Aは水素原子、置換されたもしくは置換されない炭素数1以上10以下のアルキル基、置換されたもしくは置換されない環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換されたもしくは置換されない環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、
qは0以上7以下の整数であり、
Ar
1は置換されたもしくは置換されない環形成炭素数6以上12以下のアリール基、または置換されたもしくは置換されない環形成炭素数2以上12以下のヘテロアリール基であり、かつ置換されたもしくは置換されないベンゾフランおよび置換されたもしくは置換されないベンゾチオフェンを含まず、
Ar
1が置換されたもしくは置換されない環形成炭素数6以上12以下のアリール基であるとき、mは1以上2以下の整数であり、
Ar
1が置換されたもしくは置換されない環形成炭素数2以上12以下のヘテロアリール基であるとき、mは0であり、
XがSまたはOであれば、mは0で、Ar1は置換されたもしくは置換されない環形成炭素数5以上12以下のヘテロアリール基であり、
XがCRR’であれば、Ar
1はヘテロアリール基を含まず、
FRは下記化学式2-1で表される:
【化3】
(化学式2-1)
前記化学式2-1において、
bは0以上5以下の整数であり、R
1は水素原子、重水素原子、またはハロゲン原子である。
【請求項2】
nは1で、L
1は置換されたもしくは置換されない環形成炭素数6以上12以下のアリーレン基である請求項1に記載のモノアミン化合物。
【請求項3】
L
1は置換されたもしくは置換されないフェニレン基である請求項2に記載のモノアミン化合物。
【請求項4】
FRは窒素に対してパラ位に置換された請求項3に記載のモノアミン化合物。
【請求項5】
mは1であり、
L
2は置換されたもしくは置換されない環形成炭素数6以上12以下のアリーレン基であり、Ar
1は置換されたもしくは置換されない環形成炭素数6以上12以下のアリール基である請求項1に記載のモノアミン化合物。
【請求項6】
L
2は置換されたもしくは置換されないフェニレニル基であり、Ar
1は置換されたもしくは置換されないフェニル基、置換されたもしくは置換されないビフェニリル基、または置換されたもしくは置換されないナフチル基である請求項5に記載のモノアミン化合物。
【請求項7】
mは0で、Ar
1は置換されたもしくは置換されない環形成炭素数5以上12以下のヘテロアリール基である請求項1に記載のモノアミン化合物。
【請求項8】
Ar
1は置換されたもしくは置換されないジベンゾフラニル基、または置換されたもしくは置換されないジベンゾチオフェニル基である請求項7に記載のモノアミン化合物。
【請求項9】
前記化学式1で表されるモノアミン化合物は、下記第1化合物群に示した化合物のうちから選択されるいずれか一つである請求項1に記載のモノアミン化合物。
[第1化合物群]
【化4】
【請求項10】
第1電極と、
前記第1電極の上に提供された正孔輸送領域と、
前記正孔輸送領域の上に提供された発光層と、
前記発光層の上に提供された電子輸送領域と、
前記電子輸送領域の上に提供された第2電極と、を含み、
前記正孔輸送領域は、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のモノアミン化合物を含む有機電界発光素子。
【請求項11】
前記正孔輸送領域は複数の層を有する多層構造を有し、
前記複数の層のうち、前記発光層と接する層が前記モノアミン化合物を含む請求項10に記載の有機電界発光素子。
【請求項12】
前記正孔輸送領域は、
前記第1電極の上に配置される正孔注入層と、
前記正孔注入層の上に配置される正孔輸送層と、
前記正孔輸送層の上に配置される電子阻止層と、を含み、
前記電子阻止層は、前記モノアミン化合物を含む請求項10に記載の有機電界発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子及び有機電界発光素子用モノアミン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、映像表示装置として、有機電界発光表示装置(Organic Electro luminescence Display)の開発が盛んに行われている。有機電界発光表示装置は液晶表示装置などとは異なって、第1電極及び第2電極から注入された正孔及び電子を発光層において再結合させることで、発光層において有機化合物を含む発光材料を発光させて表示を実現するいわゆる自発光型表示装置である。
【0003】
有機電界発光素子を表示装置に応用するに当たっては、有機電界発光素子の低駆動電圧化、高発光効率化及び長寿命化が要求されており、これを安定的に具現し得る有機電界発光素子用材料の開発が持続的に要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、有機電界発光素子及び有機電界発光素子用アミン化合物を提供することを一目的とし、より詳しくは、高効率の有機電界発光素子及び有機電界発光素子の正孔輸送領域に含まれるアミン化合物を提供することを一目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態は、第1電極、第1電極の上に提供された正孔輸送領域、正孔輸送領域の上に提供された発光層、発光層の上に提供された電子輸送領域、及び電子輸送領域の上に提供された第2電極を含み、正孔輸送層は、下記化学式1で表されるモノアミン化合物を含むものである有機電界発光素子を提供する。
【化1】
(化学式1)
化学式1において、XはS、OまたはCRR’であり、R及びR’はそれぞれ独立して置換されたもしくは置換されない炭素数1以上10以下のアルキル基、置換されたもしくは置換されない環形成炭素数6以上20以下のアリール基、置換されたもしくは置換されない環形成炭素数2以上10以下のヘテロアリール基であるか、または隣接する基と結合して環を形成し、L
1及びL
2はそれぞれ独立して単結合、置換されたもしくは置換されない環形成炭素数6以上12以下のアリーレン基、または置換されたもしくは置換されない環形成炭素数2以上12以下のヘテロアリーレン基であり、n及びmはそれぞれ独立して0以上2以下の整数であり、R
Aは水素原子、置換されたもしくは置換されない炭素数1以上10以下のアルキル基、置換されたもしくは置換されない環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換されたもしくは置換されない環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、qは0以上7以下の整数であり、Ar
1は置換されたもしくは置換されない環形成炭素数6以上12以下のアリール基、または置換されたもしくは置換されない環形成炭素数2以上12以下のヘテロアリール基であり、XがCRR’であれば、Ar
1はヘテロアリール基を含まず、FRは下記化学式2で表される:
【化2】
(化学式2)
化学式2において、R
1は水素原子、重水素原子、またはハロゲン原子であり、aは0以上6以下の整数である。
【0006】
正孔輸送領域は複数の層を有する多層構造を有し、前記複数の層のうち前記発光層と接する層が上述した本発明の一実施形態によるモノアミン化合物を含むものである。
【0007】
正孔輸送領域は、第1電極の上に配置される正孔注入層、正孔注入層の上に配置される正孔輸送層、及び正孔輸送層の上に配置される電子阻止層を含み、前記素子層が上述した本発明の一実施形態によるモノアミン化合物を含むものである。
【0008】
電子輸送領域は、発光層の上に提供された正孔阻止層、正孔阻止層の上に提供された電子輸送層、及び電子輸送層の上に提供された電子注入層を含む。
【0009】
FRは、下記化学式2-1で表される。
【化3】
(化学式2-1)
化学式2-1において、bは0以上5以下の整数であり、R
1は上述したとおりである。
【0010】
nは1で、L1は置換されたもしくは置換されない環形成炭素数6以上12以下のアリーレン基である。
【0011】
L1は置換されたもしくは置換されないフェニレニル基である。
【0012】
FRは窒素に対してパラ位に置換される。
【0013】
mは1であり、L2は置換されたもしくは置換されない環形成炭素数6以上12以下のアリーレン基であり、Ar1は置換されたもしくは置換されない環形成炭素数6以上12以下のアリール基である。
【0014】
L2は置換されたもしくは置換されないフェニレニル基であり、Ar1は置換されたもしくは置換されないフェニル基、置換されたもしくは置換されないビフェニリル基、または置換されたもしくは置換されないナフチレニル基である。
【0015】
mは0で、Ar1は置換されたもしくは置換されない環形成炭素数5以上12以下のヘテロアリール基である。
【0016】
Ar1は置換されたもしくは置換されないジベンゾフラニル基、または置換されたもしくは置換されないジベンゾチオフェニル基である。
【0017】
本発明の一実施形態は、前記化学式1で表されるモノアミン化合物を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一実施形態による有機電界発光素子は、発光効率において優れている。
【0019】
本発明の一実施形態によるモノアミン化合物は有機電界発光素子の正孔輸送領域層の材料として使用されることができ、これを使用することで有機電界発光素子の発光効率及び寿命を向上させることができる。
【0020】
発明の一実施形態によるモノアミン化合物は有機電界発光素子の正孔輸送領域層の材料として使用されることができ、これを使用することで有機電界発光素子の低駆動電圧化の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態による有機電界発光素子を概略的に示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態による有機電界発光素子を概略的に示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態による有機電界発光素子を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
上述した本発明の目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付した図面及び下記好ましい実施形態を介して容易に理解できるはずである。しかし、本発明はここで説明される実施形態に限らず、他の形態に具体化されてもよい。むしろ、ここで紹介される実施形態は開示された内容が徹底で完全なものになるように、そして通常の技術者に本発明の思想が十分に伝達されるようにするために提供されるものである。
【0023】
各図面を説明しながら、類似した参照符号を類似した構成要素に対して使用している。添付した図面において、構造物の寸法は本発明の明確性のために実際より拡大して示している。第1、第2などの用語は多用な構成要素を説明するのに使用されるが、当該構成要素は当該用語に限定されない。当該用語は一つの構造要素を他の構成要素から区別する目的にのみ使用される。例えば、本発明の権利範囲を逸脱しないながらも第1構成要素は第2構成要素と称されてもよく、同様に第2構成要素も第1構成要素と称されてもよい。単数の表現は、文脈上明白に異なるように意味しない限り、複数の表現を含む。
【0024】
本明細書において、「含む」または「有する」などの用語は明細書の上に記載された特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないと理解すべきである。また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上」にあるとする場合、これは他の部分の「直上」にある場合だけでなく、その中間にまた他の部分がある場合も含む。逆に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下部に」にあるとする場合、これは他の部分の「直下」にある場合だけでなく、その中間にまた他の部分がある場合も含む。
【0025】
まず、
図1~
図3を参照して本発明の一実施形態による有機電界発光素子について説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態による有機電界発光素子を概略的に示す断面図である。
図2は、本発明の一実施形態による有機電界発光素子を概略的に示す断面図である。
図3は、本発明の一実施形態による有機電界発光素子を概略的に示す断面図である。
【0027】
図1~
図3を参照すると、本発明の一実施形態による有機電界発光素子10は、第1電極EL1、正孔輸送領域HTR、発光層EML、電子輸送領域ETR、及び第2電極EL2を含む。
【0028】
正孔輸送領域HTRは、本発明の一実施形態によるモノアミン化合物を含む。以下、本発明の一実施形態によるモノアミン化合物を詳しく説明した上、有機電界発光素子10の各層について説明する。
【0029】
【0030】
本明細書において、「置換されたもしくは置換されない」とは重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、シリル基、ホウ素基、ホスフィニル基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、及びヘテロ環基からなる群より選択される一つ以上の置換基に置換されたもしくは置換されないことを意味する。また、前記例示された置換基それぞれは、置換されたもしくは置換されないものであってもよい。例えば、ビフェニリル基はアリール基と解釈されてもよく、フェニル基で置換されたフェニル基と解釈されてもよい。
【0031】
本明細書において、「隣接する基と結合して環を形成」するとは、隣接する基と互いに結合して置換されたもしくは置換されない炭化水素環、または置換されたもしくは置換されないヘテロ環を形成することを意味する。炭化水素環は、脂肪族炭化水素環及び芳香族炭化水素環を含む。ヘテロ環は、脂肪族ヘテロ環及び芳香族ヘテロ環を含む。炭化水素環及びヘテロ環は、単環及び多環であってもよい。また、隣接する基と結合して形成された環は、他の環と連結されてスピロ構造を形成するものであってもよい。
【0032】
本明細書において、「隣接する基」とは当該置換基が置換された原子と直接結合された置換基、当該置換基が置換された原子に置換された他の置換基、または当該置換基と立体構造的に最も隣接した置換基を意味する。例えば、1,2-ジメチルベンゼンにおける2つのメチル基は互いに「隣接する基」と解釈され、1,1-ジエチルシクロペンタンにおける2つのエチル基は互いに「隣接する基」と解釈される。
【0033】
本明細書において、ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、ブロム原子、またはヨウ素原子が挙げられる。
【0034】
本明細書において、アルキル基は直鎖、分枝鎖、または環状であってもよい。アルキル基の炭素数は、1以上30以下、1以上20以下、1以上10以下、または1以上4以下である。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、i-ブチル基、2-エチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、シクロペンチル基、1-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-エチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、n-ヘキシル基、1-メチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-ブチルヘキシル基、シクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、4-t-ブチルシクロヘキシル基、n-ヘプチル基、1-メチルペプチル基、2,2-ジメチルヘプチル基、2-エチルヘプチル基、2-ブチルヘプチル基、n-オクチル基、tーオクチル基、2-エチルオクチル基、2-ブチルオクチル基、2-ヘキシルオクチル基、3,7-ジメチルオクチル基、シクロオクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、アダマンチル基、2ーエチルデシル基、2-ブチルデシル基、2-ヘキシルデシル基、2-オクチルデシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、2-エチルドデシル基、2-ブチルドデシル基、2-ヘキシルドデシル基、2-オクチルデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、2-エチルヘキサデシル基、2-ブチルヘキサデシル基、2-ヘキシルヘキサデシル基、2-オクチルヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基、2-エチルイコシル基、2-ブチルイコシル基、2-ヘキシルイコシル基、2-オクチルイコシル基、n-ヘンイコシル基、n-ドコシル基、n-トリコシル基、n-テトラコシル基、n-ペンタコシル基、n-ヘキサコシル基、n-ヘプタコシル基、n-オクタコシル基、n-ノナコシル基、及びn-トリアコンチル基などが挙げられるが、これに限定されない。
【0035】
本明細書において、アリール基は芳香族炭化水素環から誘導された任意の官能基または置換基を意味する。アリール基は、単環式アリール基または多環式アリール基であってもよい。アリール基の環形成炭素数は、6以上30以下、6以上20以下、または6以上12以下である。アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、アントラセニル基、ビフェニリル基、テルフェニリル基、クォーターフェニリル基、キンクフェニリル基、セキシフェニリル基、ビフェニレニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、ベンゾフルオランテニル基、クリセニル基などが挙げられるが、これに限定されない。
【0036】
本明細書において、フルオレニル基は置換されてもよく、2つの置換基が互いに結合してスピロ構造を形成してもよい。フルオレニル基が置換された場合の例示は以下のようである。但し、これに限定されない。
【化4】
【0037】
本明細書において、ヘテロアリール基はヘテロ原子としてO、N、P、Si及びSのうち一つ以上を含むヘテロアリール基である。ヘテロアリール基がヘテロ原子を2つ含む場合、2つのヘテロ原子は互いに同じであってもよく、異なってもよい。ヘテロアリール基の環形成炭素数は、2以上30以下、または5以上12以下である。ヘテロアリール基は、単環式ヘテロアリール基または多環式ヘテロアリール基であってもよい。多環式ヘテロアリール基は、例えば2環または3還構造を有するものであってもよい。ヘテロアリール基の例としては、チオフェニル基、フラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、トリアゾリル基、ピリジニル基、ビピリジニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、アクリジル基、ピリダジニル基、ピリジニル基、キノリニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、フェノキサニル基、フタラジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、ピラジノピラジニル基、イソキノリニル基、インドリル基、カルバゾリル基、N-アリールカルバゾリル基、N-ヘテロアリールカルバゾリル基、N-アルキルカルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾカルバゾリル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾチオフェニル基、チエノチオフェニル基、ベンゾフラニル基、フェナントレニル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、フェノチアジニル基、ジベンゾシロリル基、及びジベンゾフラニル基などが挙げられるが、これに限定されない。
【0038】
本明細書において、シリル基はアルキルシリル基及びアリールシリル基を含む。シリル基の例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルシリル基、フェニルシリル基などが挙げられるが、これに限定されない。
【0039】
本明細書において、ホウ素基はアルキルホウ素基及びアリールホウ素基を含む。ホウ素基の例としては、トリメチルホウ素基、トリエチルホウ素基、t-ブチルジメチルホウ素基、トリフェニルホウ素基、ジフェニルホウ素基、フェニルホウ素基などが挙げられるが、これに限定されない。
【0040】
本明細書において、アルケニル基は直鎖または分枝鎖であってもよい。炭素数は特に限定されないが、2以上30以下、2以上20以下、または2以上10以下である。アルケニル基の例としては、ビニル基、1-ブテニル基、1-ペンテニル基、1,3-ブタジエニルアリール基、スチレニル基、スチリルビニル基などが挙げられるが、これに限定されない。
【0041】
本明細書において、アリーレン基は、2価基であることを除いては上述したアリール基に関する説明が適用される。
【0042】
本明細書において、ヘテロアリーレン基は、2価基であることを除いては上述したヘテロアリール基に関する説明が適用される。
【0043】
本発明の一実施形態によるモノアミン化合物は、下記化学式1で表される。
【化5】
(化学式1)
【0044】
化学式1において、XはS、OまたはCRR’であり、R及びR’はそれぞれ独立して置換されたもしくは置換されない炭素数1以上10以下のアルキル基、置換されたもしくは置換されない環形成炭素数6以上20以下のアリール基、置換されたもしくは置換されない環形成炭素数2以上10以下のヘテロアリール基であるか、または隣接する基と結合して環を形成し、L1及びL2はそれぞれ独立して単結合、置換されたもしくは置換されない環形成炭素数6以上12以下のアリーレン基、または置換されたもしくは置換されない環形成炭素数2以上12以下のヘテロアリーレン基であり、n及びmはそれぞれ独立して0以上2以下の整数であり、RAは水素原子、置換されたもしくは置換されない炭素数1以上10以下のアルキル基、置換されたもしくは置換されない環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換されたもしくは置換されない環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、qは0以上7以下の整数であり、Ar1は置換されたもしくは置換されない環形成炭素数6以上12以下のアリール基、または置換されたもしくは置換されない環形成炭素数2以上12以下のヘテロアリール基であり、XがCRR’であれば、Ar1はヘテロアリール基を含まない。
【0045】
Ar1がヘテロアリール基を含まないということは、Ar1自体がヘテロアリール基ではない場合、及びAr1がヘテロアリール基に置換されていない場合を全て含む。
【0046】
化学式1において、nが2であれば2つのL1は互いに同じであるか異なり、mが2であれば2つのL2は互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0047】
化学式1において、qが2であれば複数のRAは互いに同じであるか異なり、qが1であれば複数のRAは水素原子ではない。
【0048】
化学式1において、FRは一つのフェニル基に置換されたナフチル基である。FRは追加に置換されてもよいが、追加の置換基はフェニル基を含まない。詳しくは、FRは下記化学式2で表される。
【化6】
(化学式2)
【0049】
化学式2において、R1は水素原子、重水素原子、またはハロゲン原子であり、aは0以上6以下の整数である。aが2以上であれば、複数のR1は互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。aが1であれば、R1は水素原子ではない。
【0050】
FRが化学式2で表されれば、有機電解発光素子に適用される際に高効率化に有利である。
【0051】
FRは、例えば下記化学式2-1で表される。
【化7】
(化学式2-1)
【0052】
化学式2-1において、bは0以上5以下の整数であり、R1は上述したとおりである。
【0053】
FRは、例えば下記化学式のうちいずれか一つで表される。
【化8】
【0054】
化学式2-1において、R1は水素原子、または重水素原子である。但し、これに限定されない。
【0055】
化学式2において、aは0である。但し、これに限定されない。例えば、aは1で、R1はフッ素原子であってもよい。他の例として、aは2以上で、複数のR1はそれぞれ重水素原子であってもよい。
【0056】
化学式1において、nは1で、L1は置換されたもしくは置換されない環形成炭素数6以上12以下のアリーレン基である。L1は、例えば置換されたもしくは置換されないフェニレン基である。但し、これに限定されない。
【0057】
化学式1において、L1が置換されたもしくは置換されないフェニレン基であれば、FRは窒素に対してパラ位置に置換されたものである。
【0058】
化学式1は、例えば下記化学式1-1で表される。
【化9】
(化学式1-1)
【0059】
化学式1-1において、X、L2、Ar1、RA、R1、q、m、bは上述したとおりである。
【0060】
化学式1において、Ar1は置換されたもしくは置換されないフェニル基、置換されたもしくは置換されないビフェニリル基、または置換されたもしくは置換されないナフチル基である。
【0061】
化学式1において、Ar1が置換されたもしくは置換されない環形成炭素数6以上12以下のアリール基であればmは1であり、L2は置換されたもしくは置換されない環形成炭素数6以上12以下のアリーレン基である。例えば、Ar1は置換されたもしくは置換されないフェニル基、置換されたもしくは置換されないビフェニリル基、または置換されたもしくは置換されないナフチル基であり、L2は置換されたもしくは置換されないフェニレン基である。但し、これに限定されない。
【0062】
化学式1において、Ar1が置換されたもしくは置換されない環形成炭素数5以上12以下のヘテロアリール基であれば、mは0である。つまり、Ar1がヘテロアリール基であれば、Ar1は窒素原子に直接置換された。例えば、mは0で、Ar1は置換されたもしくは置換されないジベンゾフラニル基、または置換されたもしくは置換されないジベンゾチオフェニル基である。但し、これに限定されない。
【0063】
化学式1において、qは0であってもよい。但し、これに限定されない。例えば、qは1で、RAは置換されたもしくは置換されない環形成炭素数6以上15以下のアリーレン基であってもよい。例えば、qは1で、RAは置換されたもしくは置換されないフェニル基であってもよい。
【0064】
化学式1において、XがCRR’であれば、R及びR’はそれぞれ独立して置換されたもしくは置換されないフェニル基、または置換されたもしくは置換されない炭素数1以上5以下のアルキル基である。例えば、R及びR’は、それぞれ独立して置換されたもしくは置換されないフェニル基、または置換されたもしくは置換されないメチル基であってもよい。これ限定されないが、R及びR’は互いに同じであってもよい。
【0065】
本発明の一実施形態による化学式1で表されるモノアミン化合物は、下記第1化合物群に示した化合物のうちから選択されるいずれか一つであってもよい。但し、これに限定されない。
[第1化合物群]
【化10】
【0066】
本発明の一実施形態によるモノアミン化合物は、縮合環及び熱耐性、電荷耐性の高いフェニルナフチル基を含み、そのため有機電界発光素子に適用すれば、長寿命化に寄与することができる。フェニルナフチル基の体積により、分子の対称性が低下し結晶化が抑制されることで膜質を向上させることができるため、高効率化にも寄与することができる。
【0067】
更に
図1~
図3を参照して、本発明の一実施形態による有機電界発光素子について説明する。本発明の一実施形態による有機電界発光素子は、上述した本発明の一実施形態によるモノアミン化合物を含む。例えば、正孔輸送領域HTRは化学式1で表されるモノアミン化合物を含む。
【0068】
以下では上述した本発明の一実施形態によるモノアミン化合物との差を中心に詳しく説明するが、説明されていない部分は上述した本発明の一実施形態によるモノアミン化合物に従う。
【0069】
第1電極EL1は導電性を有する。第1電極EL1は画素電極または正極である。第1電極EL1は、透過型電極、半透過型電極、または反射型電極である。第1電極EL1が透過型電極であれば、第1電極EL1は透明金属酸化物、例えば、ITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide)、ZnO(zinc oxide)、ITZO(indium tin zinc oxide)などを含む。第1電極EL1が半透過型電極または反射型電極であれば、第1電極EL1はAg、Mg、Cu、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Mo、Ti、またはこれらの化合物や混合物(例えば、AgとMgの混合物)を含む。また、前記物質で形成された反射膜や半透過膜、及びITO、IZO、ZnO、ITZOなどで形成された透明導電膜を含む複数の層構造であってもよい。例えば、第1電極EL1はITO/Ag/ITOの3槽構造を有してもよいが、これに限定されない。
【0070】
第1電極EL1の厚さは、約100nm以上約1000nm以下、例えば、約100nm以上約300nm以下である。
【0071】
正孔輸送領域HTRは第1電極EL1の上に提供される。正孔輸送領域HTRは、正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、正孔バッファ層及び電子阻止層EBLのうち少なくとも一つを含む。
【0072】
正孔輸送領域HTRは、上述したように、本発明の一実施形態によるモノアミン化合物を含む。
【0073】
正孔輸送領域HTRは、単一物質で形成された単一層、複数の互いに異なる物質で形成された単一層、または複数の互いに異なる物質で形成された複数の層を有する多層構造を有する。
【0074】
例えば、正孔輸送領域HTRは正孔注入層HILまたは正孔輸送層HTLの単一層の構造を有してもよく、正孔注入物質と正孔輸送物質で形成された単一構造を有してもよい。また、正孔輸送領域HTRは、複数の互いに異なる物質で形成される単一層の構造を有するか、第1電極EL1から順番に積層された正孔注入層HIL/正孔輸送層HTL、正孔注入層HIL/正孔輸送層HTL/正孔バッファ層、正孔注入層HIL/正孔バッファ層、正孔輸送層HTL/正孔バッファ層、または正孔注入層HIL/正孔輸送層HTL/電子阻止層EBLの構造を有してもよいが、これに限定されない。
【0075】
上述したように、正孔輸送領域HTRは複数の層を有する多層構造を有し、複数の層のうち発光層EMLと接する層が化学式1で表されるモノアミン化合物を含むものである。例えば、正孔輸送領域HRTは、第1電極EL1の上に配置された正孔注入層HIL、正孔注入層HILの上に配置された正孔輸送層HTL、及び正孔輸送層HTLの上に配置された電子阻止層EBLを含み、電子阻止層EBLが化学式1で表されるモノアミン化合物を含むものである。但し、これに限らず、例えば、正孔輸送領域HTRは正孔注入層HIL及び正孔輸送層HTLを含み、正孔輸送層HTLが化学式1で表されるモノアミン化合物を含むものであってもよい。
【0076】
正孔輸送領域HTRは、化学式1で表されるモノアミン化合物を1種または2種以上含む。例えば、正孔輸送領域HTRは、上述した第1化合物群に表した化合物のうちから選択される少なくとも一つを含む。
【0077】
正孔輸送領域HTRは、真空蒸着法、スピンコート法、LB法(Langmuir-Blodgett)、インクジェットプリント法、レーザプリント法、レーザ熱転写法(Laser Induced Thermal Imaging、LITI)などのような多様な方法を利用して形成される。
【0078】
正孔注入層HTLは、例えば、銅フタロシアニンなどのフタロシアニン化合物と、DNTPD(N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス-[4-フェニル-m-トリル-アミノ)-フェニル]-ビフェニル-4、4’-ジアミン)、m-MTDATA(4,4’,4”-トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミノ)、TDATA(3,4’,4”-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン)、2-TNATA(3,4’,4”-トリス{N,-(2-ナフチル)-N-フェニルアミノ}-トリフェニルアミン)、PEDOT/PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルフォナート)、PANI/DBSA(ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸)、PANI/CSA(ポリアニリン/カンファースルホン酸)、PANI/PSS(ポリアニリン)/ポリ(4-スチレンスルフォナート)、NPD(N,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニル-ベンジジン)、トリフェニルアミンを含むポリエテールケトン(TPAPEK)、4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、HAT-CN(ジピラジノ[2,3-f:2’、3’-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル)などを含んでもよい。
【0079】
正孔輸送層HTLは、例えば、N-フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなどのカルバゾール系誘導体、フルオレン系誘導体、TPD(N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1、1-ビフェニル]-3,4’-ジアミン)、TCTA(3,4’,4”-トリス(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン)などのようなトリフェニルアミン系誘導体、NPD(N,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニル-ベンジジン)、TAPC(3,4’-シクロへキシリデンビス[N,N-ビス(4-メチルフェニル)フェニルアミン])、HMTPD(3,4’-ビス[N,N’-(3-トリル)アミノ]-3,3’-ジメチルビフェニル)などを含んでもよい。
【0080】
電子阻止層EBLは、上述したように、化学式1で表されるモノアミン化合物を含む。但し、これに限らず、電子阻止層EBLは、当該技術分野で知られている一般的な材料を含んでもよい。電子阻止層EBLは、例えば、N-フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなどのカルバゾール系誘導体、フルオレン系誘導体、TPD(N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1-ビフェニル]-3,4’-ジアミン)、TCTA(3,4’,4”-トリス(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン)などのようなトリフェニルアミン系誘導体、NPD(N,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニル-ベンジジン)、TAPC(3,4’-シクロへキシリデンビス[N,N-ビス(4-メチルフェニル)フェニルアミン])、HMTPD(3,4’-ビス[N,N’-(3-トリル)アミノ]-3,3’-ジメチルビフェニル)、またはmCPなどを含んでもよい。
【0081】
正孔輸送領域HTRの厚さは、約10nm以上約1000nm以下、例えば、約10nm以上約500nm以下である。正孔注入層HILの厚さは、例えば約3nm以上約100nm以下であり、正孔輸送層HTLの厚さは、約3nm以上約100nm以下である。例えば、電子阻止層EBLの厚さは、約1nm以上約100nm以下であってもよい。正孔輸送領域HTR、正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、及び電子阻止層EBLの厚さが上述したような範囲を満足すれば、実質的な駆動電圧の上昇なしに満足できる程度の正孔輸送特性が得られる。
【0082】
正孔輸送領域HTRは、上述した物質以外に、導電性を向上するために電荷生成物質を更に含む。電荷生成物質は、正孔輸送領域HTR内に均一にまたは不均一に分散されている。電荷生成物質は、例えば、p-ドーパント(dopant)である。p-ドーパントはキノン誘導体、金属酸化物及びシアノ基含有化合物のうちいずれか一つであってもよいが、これに限定されない。例えば、p-ドーパントの非制限的な例としては、TCNQ(テトラシアノキノジメタン)及びF4-TCNQ(2,3,5,6-テトラフルオロ-テトラシアノキノジメタン)などのようなキノン誘導体、タングステン酸化物及びモリブデン酸化物のような金属酸化物などが挙げられるが、これに限定されない。
【0083】
上述したように、正孔輸送領域HTRは、正孔バッファ層及び電子阻止層EBLのうち少なくとも一つを更に含む。正孔バッファ層は、発光層EMLから放出される光の波長による共振距離を補償して光放出効率を増加させる。正孔バッファ層に含まれる物質としては、正孔輸送領域HTRに含まれ得る物質を使用する。電子阻止層EBLは、電子輸送領域ETRから正孔輸送領域HTRへの電子の注入を防止する役割をする層である。
【0084】
発光層EMLは正孔輸送領域HTRの上に提供される。発光層EMLは、例えば約10nm以上100nm以下、または約10nm以上約60nm以下の厚さを有するものである。発光層EMLは、単一物質からなる単一層、複数の互いに異なる物質からなる単一層、または複数の互いに異なる物質からなる複数の層を有する多層構造を有する。
【0085】
発光層EMLの材料としては公知の発光材料を使用してもよく、特に限定されないが、フルオランテン誘導体、ピレン誘導体、アリールアセチレン誘導体、アントラセン誘導体、フルオレン誘導体、ぺリレン誘導体、クリセン誘導体などから選択される。好ましくは、ピレン誘導体、ぺリレン誘導体、アントラセン誘導体が誘導体が挙げられる。例えば、発光層EMLのホスト材料として、下記化学式3で表されるアントラセン誘導体を使用してもよい。
【化11】
(化学式3)
【0086】
化学式3において、W1~W4はそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換されたもしくは置換されないシリル基、置換されたもしくは置換されない炭素数1以上20以下のアルキル基、置換されたもしくは置換されない環を形成する炭素数6以上30以下のアリール基、または置換されたもしくは置換されない環を形成する炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であるか、隣接する基と互いに結合して環を形成してもよく、m1及びm2はそれぞれ独立して0以上4以下の整数であり、m3及びm4はそれぞれ独立して0以上5以下の整数である。
【0087】
m1が1であればW1は水素原子ではなくてもよく、m2が1であればW2は水素原子ではなくてもよく、m3が1であればW3は水素原子ではなくてもよく、m4が1であればW4は水素原子ではなくてもよい。
【0088】
m1が2以上であれば、複数のW1は互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。m2が2以上であれば、複数のW2は互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。m3が2以上であれば、複数のW3は互いに同じでってもよいし、異なっていてもよい。m4が2以上であれば、複数のW4は互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0089】
化学式3で示される化合物としては、一例として、下記構造式で表した化合物が挙げられる。但し、前記化学式3で表示される化合物は以下に限定されない。
【化12】
【0090】
発光層EMLは、例えば、スピロ-DPVBi、スピロ-6P、2,2’、7,7’-テトラキス(ビフェニル-4-イル)-9,9’-スピロビフルオレン(スピロ-セキシフェニル))、DSB(ジスチリル-ベンゼン)、DSA(ジスチリル-アリーレン)、PFO(ポリフルオレン)系高分子、及びPPV(ポリ(p-フェニレンビニレン)系高分子で形成される群から選択されたいずれか一つを含む蛍光物質を含むものであってもよい。
【0091】
発光層EMLは、例えば、ドーパントを更に含んでもよいが、ドーパントとしては公知の材料を使用する。例えば、スチリル誘導体(例えば、1,4-ビス[2-(3-N-エチルカルバゾリル)ビニル」ベンゼン(BCzVB)、4-(ジ-p-トリルアミノ)-4”-[(ジ-p-トリルアミノ)スチリル]スチルベン(DPAVB)、N-(4-((E)-2-(6-((E)-4-(ジフェニルアミノ)スチリル)ナフタレン-2-イル)ビニル)フェニル)-N-フェニルフェニルアミン(N-BDAVBi)、ぺリレン及びその誘導体(例えば、2,5,8,8,11-テトラ-t-ブチルぺリレン(TBPe))、ピレン及びその誘導体(例えば、1,1-ジピレン、1,4-ジピレニルベンゼン、1-4-ビス(N,N-ジフェニルアミノ)ピレン、1,6-ビス(N,N-ジフェニルアミノ)ピレン)、2,5,8,11-テトラ-t-ブチルぺリレン(TBP)、TPBi(1,3,5-トリス(N-フェニルベンズイミダゾール-2-イル)ベンゼン)などをドーパントして使用してもよい。
【0092】
発光層EMLは、例えば、Alq3(トリス(8-ヒドロキシキノリノ)アルミニウム)、CBP(3,4’-ビス(N-カルバゾリル)-1,1’-ビフェニル)、PVK(ポリ(N-ビニルカルバゾール)、ADN(9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン)、TCTA(3,4’,4”-トリス(カルバゾール-9-イル)-トリフェニルアミン)、TPBi(1,3,5-トリス(N-フェニルベンゾイミダゾール-2-イル)ベンゼン)、TBADN(3-tert-ブチル-9,10-ジ(ナフト-2-イル)アントラセン)、DSA(ジスチリルアリーレン)、CDBP(3,4’-ビス(9-カルバゾリル)-2,2’-ジメチル-ビフェニル)、MADN(2-メチル-9,10-ビス(ナフタレン-2-イル)アントラセン)、DPEPO(ビス[2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテルオキシド)、CP1(ヘキサフェニルシクロトリホスファゼン)、UGH2(1,4-ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン)、DPSiO3(ヘキサフェニルシクロトリシロキサン)、DPSiO4(オクタフェニルシクロテトラシロキサン)、またはPPF(2,8-ビス(ジフェニルホスフォリル)ジゼンゾフラン)などを含むものである。
【0093】
電子輸送領域ETRは、発光層EMLの上に提供される。電子輸送領域ETRは、正孔阻止層HBL、電子輸送層ETL及び電子注入層のEILうち少なくとも一つを含むが、これに限定されない。
【0094】
電子輸送領域ETRは、単一物質からなる単一層、複数の互いに異なる物質からなる単一層、または複数の互いに異なる物質からなる複数の層を有する多層構造を有する。
【0095】
例えば、電子輸送領域ETRは電子注入層のEILまたは電子輸送層ETLの単一層の構造を有してもよく、電子注入物質と電子輸送物質で形成された単一層構造を有してもよい。また、電子輸送領域ETRは、複数の互いに異なる物質からなる単一層の構造を有するか、発光層EMLから順番に積層された電子輸送層ETL/電子注入層EIL、正孔阻止層HBL/電子輸送層ETL/電子注入層EILの構造を有してもよいが、これに限定されない。電子輸送領域ETRの厚さは、例えば、約100nm以上約150nm以下である。
【0096】
電子輸送領域ETRは、真空蒸着法、スピンコート法、LB法(Langmuir-Blodgett)、インクジェットプリント法、レーザプリント法、レーザ熱転写法(Laser Induced Thermal Imaging、LITI)などのような多様な方法を利用して形成される。
【0097】
電子輸送領域ETRが電子輸送層ETLを含む場合、電子輸送領域ETRは、Alq3(トリス(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム)、1,3,5-トリ[(3-ピリジル)-フェン-3-イル]ベンゼン、2,3,6-トリス(3’-ピリジン-3-イル)ビフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン、DPEPO(ビス[2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテルオキシド)、2-(4-(N-フェニルベンゾイミダゾリル-1-イルフェニル)-9,10-ジナフチルアントラセン、TPBi(1,3,5-トリ(1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)フェニル)、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、Bphen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、TAZ(3-(4-ビフェニルイル)-4-フェニル-5-テルト-ブチルフェニル-1,2,4-トリアゾール)、NTAZ(4-(ナフタレン-1-イル)-3,5-ジフェニル-4H-1,2,4-トリアゾール)、tBu-PBD(2-(4-ビフェニルイル)-5-(4-テルトーブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール)、BAlq(ビス(2-メチル-8-キノリノラト-N1,O8)-(1,1’-ビフェニル-4-オラト)アルミニウム)、Bebq2(ベリリウムビス(ベンゾキノリン-10-オラト)、ADN(9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン)、及びこれらの混合物を含むが、これに限定されない。正孔輸送領域HTRの厚さは、約10nm以上約100nm以下、例えば、約15nm以上約50nm以下である。電子輸送層HTLの厚さが上述したような範囲を満足する場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに満足できる程度の電子輸送特性が得られる。
【0098】
電子輸送領域ETRが電子注入層EILを含む場合、電子輸送領域ETRは、LiF、LiQ(Lithum quinolate)、Li2O、BaO、NaCl、CsF、Ybのようなランタン族金属、またはRbCl、Rblのようなハロゲン化金属などが使用されてもよいが、これに限定されない。電子注入層EILはまた、電子輸送物質と絶縁性の有機金属塩(organo metal slat)が混合された物質からなってもよい。有機金属塩は、エネルギーバンドギャップ(energy band gap)が約4eV以上の物質であってもよい。詳しくは、例えば、有機金属塩は、酢酸金属塩(metal acetate)、安息香酸塩金属塩(metal benzoate)、アセト酢酸金属塩(metal acetoacetate)、アセチルアセト酢酸金属塩(metal acetylacetonate)、またはステアリン酸金属塩(stearate)を含む。電子注入層EILの厚さは、約0.1nm以上約10nm以下、例えば、約0.3nm以上約9nm以下である。電子注入層EILの厚さが上述したような範囲を満足する場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに満足できる程度の電子注入特性が得られる。
【0099】
電子輸送領域ETRは、上述したように、正孔阻止層HBLを含む。正孔阻止層HBLは、例えば、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、Bphen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、またはDPEPO(ビス[2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテルオキシド)などを含んでもよいが、これに限ることはない。
【0100】
第2電極EL2は、電子輸送領域ETRの上に提供される。第2電極EL2は、共通電極または負極である。第2電極EL2は、透過型電極、半透過型電極、または反射型電極である。第2電極EL2が透過型電極であれば、第2電極EL2は透明金属酸化物、例えば、ITO、IZO、ZnO、ITZOなどからなる。
【0101】
第2電極EL2が半透過型電極または反射型電極であれば、第2電極EL2はAg、Mg、Cu、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Mo、Ti、またはこれらを含む化合物や混合物(例えば、AgとMgの混合物)を含む。また、前記物質で形成された反射膜や半透過膜、及びITO、IZO、ZnO、ITZOなどで形成された透明導電膜を含む複数の層構造であってもよい。
【0102】
図示していないが、第2電極EL2は補助電極と接続される。第2電極EL2が補助電極と接続されれば、第2電極EL2の抵抗を減少させることができる。
【0103】
有機電解発光素子10において、第1電極EL1と第2電極EL2にそれぞれ電圧が印加されることで、第1電極EL1から注入された正孔(hole)は正孔輸送領域HTRを介して発光層EMLに移動し、第2電極EL2から注入された電子は電子輸送領域ETRを経て発光層EMLに移動する。電子と正孔は発光層EMLで再結合して励起子(exciton)を生成し、励起子が励起状態から基底状態に落ちながら発光するようになる。
【0104】
有機電界発光素子10が前面発光型であれば、第1電極EL1は反射型電極であって、第2電極EL2は透過型電極または半透過型電極であってもよい。有機電界発光素子10が背面発光型であれば、第1電極EL1は透過型電極または半透過型電極であって、第2電極EL2は反射型電極であってもよい。
【0105】
本発明の一実施形態による有機電界発光素子10は、化学式1に表されるモノアミン化合物を含むことを特徴とし、それによって高効率化及び長寿命化効果を具現することができる。また、低駆動電圧の効果もある。
【実施例】
【0106】
以下、具体的な実施例及び比較例を介して本発明をより詳細に説明する。下記実施例は、本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲がこれに限ることはない。
【0107】
(合成例)
本発明の一実施例によるモノアミン化合物は、例えば、下記のように合成される。但し、本発明の一実施例によるモノアミン化合物の合成方法はこれに限定されない。
【0108】
1.化合物1の合成
本発明の一実施例によるモノアミン化合物である化合物1は、例えば、下記反応によって合成される。
(中間体Aの合成)
【化13】
【0109】
アルゴン(Ar)雰囲気下、1Lの三口フラスコに8-アミノ-2-ナフトール10.0g、及びトリエチルアミン12mLを溶解したジオキサン溶液200mLに、N-フェニルトリフルオロメタンスルホンアミド25.1gが溶解したジオキサン80mをL0℃で30分間にわたって滴下し、室温で4時間加熱攪拌した。反応溶液にヘキサンを加え、析出した固体を吸引ろ過して、褐色固体の中間体Aを15.9g(収率87%)得た。
【0110】
FAB-MS測定で測定された中間体Aの分子量は291であった。
【0111】
【0112】
アルゴン(Ar)雰囲気下、300mLの三口フラスコに中間体A 3.00g、Pd(PPh3)4 0.361g、K2CO3 2.85g、及びフェニルボロン酸 1.67gを溶解したTHF/水(8:2)の混合溶液110mLを、70℃で5時間加熱攪拌した。空冷後、ジクロロメタンを加えて有機層を分離し、溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィ(へキサンとトルエン使用)で精製した後、淡黄色固体の中間体Bを1.83g(収率81%)得た。
【0113】
FAB-MS測定で測定された中間体Bの分子量は219であった。
【0114】
【0115】
大気下、300mLの三口フラスコに中間体B 1.50g、濃塩酸5.20mL、NaNO2 0.78gを溶解したMeCN/水(1:1)の混合溶液13mLを、0℃で15分間攪拌した。次に、KI 9.38gが溶解した水26mLを徐々に加え、0℃で2時間攪拌した。その後、ジクロロメタンを加えて有機層を分離し、溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィ(へキサン使用)で精製した後、褐色オイルの中間体Cを1.73g(収率57%)得た。
【0116】
GC-MS測定で測定された中間体Cの分子量は330であった。
【0117】
【0118】
アルゴン(Ar)雰囲気下、300mLの三口フラスコに中間体C 2.86g、Pd(PPh3)4 0.30g、K2CO3 2.39g、及び4-ブロモフェニルボロン酸 1.74gを溶解したTHF/水(8:2)の混合溶液90mLを、70℃で5時間加熱攪拌した。空冷後、ジクロロメタンを加えて有機層を分離し、溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィ(へキサンとトルエン使用)で精製した後、白色固体の中間体Dを2.46g(収率79%)得た。
【0119】
GC-MS測定で測定された中間体Dの分子量は358であった。
【0120】
【0121】
アルゴン(Ar)雰囲気下、200mLの三口フラスコにN-[4-(1-ナフタレニル)フェニル]-4-ジベンゾチオフェニルアミン2.80g、中間体D 2.51g、 Pd(dba)2 0.14g, tBu3P 0.11g、及びtBuONa 1.34gが溶解した脱水トルエン溶液93mLを、80℃で5時間加熱攪拌した。空冷後、ジクロロメタンを加えて有機層を分離し、溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(へキサン使用)で精製した後、白色固体の化合物1を4.31g(収率91%)を得た。
【0122】
FAB-MS測定で測定された化合物1の分子量は679であった。
[1H NMR(CDCl3、25℃、300Hz)δ=8.92-8.36(m、12H)、8.33(d、J=8.5Hz、2H)、7.96(d、J=8.5Hz、2H)、7.86-7.70(m、6H)、7.55(d、J=8.5Hz、4H)、7.51-7.32(m、4H)、7.27-7.14(m、3H)]
【0123】
2.化合物17の合成
本発明の一実施例によるモノアミン化合物である化合物17は、例えば、下記反応によって合成される。
【0124】
【0125】
アルゴン(Ar)雰囲気下、1Lの三口フラスコに1,5-ジブロモナフタレン18.7g、フェニルボロン酸2.86g、Pd(PPh3)4 0.813g、及びK2CO3 5.15gを溶解したTHF/水(8:2)の混合溶液360mLを、70℃で5時間加熱攪拌した。空冷後、ジクロロメタンを加えて有機層を分離し、溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィ(へキサン使用)で精製した後、淡黄色固体の中間体Eを4.65g(収率70%)得た。
【0126】
GC-MS測定で測定された中間体Eの分子量は282であった。
【0127】
【0128】
アルゴン(Ar)雰囲気下、1Lの三口フラスコに中間体E 2.02g、4-クロロウェニルボロン酸1.12g、Pd(PPh3)4 0.213g、及びK2CO3 1.98gを溶解したTHF/水(8:2)の混合溶液110mLを、70℃で7時間加熱攪拌した。空冷後、ジクロロメタンを加えて有機層を分離し、溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィ(へキサンとAcOEt使用)で精製した後、淡黄色固体の中間体Fを2.25g(収率82%)得た。
【0129】
GC-MS測定で測定された中間体Fの分子量は314であった。
【0130】
【0131】
アルゴン(Ar)雰囲気下、200mLの三口フラスコにN-[4-(1-ナフタレニル)フェニル]-4-ジベンゾチオフェニルアミン3.19g、中間体F 2.50g、 Pd(dba)2 0.14g, tBu3P 0.14g、及びtBuONa 1.54gが溶解した脱水トルエン溶液53mLを、80℃で8時間加熱攪拌した。空冷後、ジクロロメタンを加えて有機層を分離し、溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(へキサンとAcOEt使用)で精製した後、白色固体の化合物17を4.70g(収率87%)を得た。
【0132】
FAB-MS測定で測定された化合物17の分子量は679であった。
[1H NMR(CDCl3、25℃、300Hz)δ=9.00(d、J=7.5Hz、2H)、8.82-8.41(m、12H)、7.96(d、J=8.2Hz、2H)、7.86-7.71(m、6H)、7.55(d、J=8.8Hz、4H)、7.51-7.30(m、3H)、7.26-7.14(m、4H)]
【0133】
3.化合物71の合成
本発明の一実施例によるモノアミン化合物である化合物71は、例えば、下記反応によって合成される。
【0134】
【0135】
上述した中間体Eの合成方法において、1,5-ジブロモナフタレンの代わりに1,4-ジブロモナフタレンを利用したことを除いては、同じ方法で中間体Gを合成した。
【0136】
FAB-MS測定で測定された中間体Gの分子量は283であった。
【0137】
【0138】
上述した中間体Fの合成方法において、中間体Eの代わりに中間体Gを利用したことを除いては、同じ方法で中間体Hを合成した。
【0139】
GC-MS測定で測定された中間体Hの分子量は314であった。
【0140】
【0141】
上述した化合物17の合成方法において、中間体Fに代わって中間体Hを利用し、N-[4-(1-ナフタレニル)フェニル]-4-ジベンゾチオフェニルアミンの代わりにN-3-ジベンゾフラニル-3-ジベンゾフラニルアミンを利用したことを除いては、同じ方法で化合物71を合成した。
【0142】
FAB-MS測定で測定された化合物71の分子量は627であった。
[1H NMR(CDCl3、25℃、300Hz)δ=8.22(d、J=8.5Hz、2H)、8.01-7.88(m、12H)、7.86(d、J=8.2Hz、2H)、7.77-7.73(m、6H)、7.51-7.30(m、3H)、7.16-7.07(m、4H)]
【0143】
4.化合物94の合成
本発明の一実施例によるモノアミン化合物である化合物94は、例えば、下記反応によって合成される。
【0144】
(中間体Lの合成)
【化24】
上述した中間体Dの合成方法において、B-(4-ブロモフェニル)-ボロン酸の代わりにB-(3-ブロモフェニル)-ボロン酸を利用したことを除いては、同じ方法で中間体Lを合成した。
【0145】
GC-MS測定で測定された中間体Lの分子量は358であった。
【0146】
【0147】
上述した化合物17の合成方法において、中間体Fの代わりに中間体Lを利用したことを除いては、同じ方法で化合物94を合成した。
【0148】
FAB-MS測定で測定された化合物94の分子量は679であった。
[1H NMR(CDCl3、25℃、300Hz)δ=8.77-8.36(m、12H)、8.33(d、J=8.5Hz、2H)、8.00(d、J=8.3Hz、2H)、7.85-7.70(m、6H)、7.58(d、J=8.5Hz、4H)、7.51-7.42(m、4H)、7.34-7.24(m、3H)]
【0149】
5.化合物80の合成
本発明の一実施例によるモノアミン化合物である化合物80は、例えば、下記反応によって合成される。
【0150】
【0151】
上述した中間体Fの合成方法において、中間体Eの代わりに中間体Mを利用したことを除いては、同じ方法で中間体Nを合成した。
【0152】
GC-MS測定で測定された中間体Nの分子量は314であった。
【0153】
【0154】
上述した化合物17の合成方法において、中間体Fに代わって中間体Nを利用し、N-[4-(1-ナフタレニル)フェニル]-3-ジベンゾチオフェニルアミンの代わりにN-(4-(ナフタレン-1-イル)フェニル)-3-ジベンゾフラニルアミンを利用したことを除いては、同じ方法で化合物80を合成した(収率79%)。
【0155】
FAB-MS測定で測定された化合物80の分子量は663であった。
[1H NMR(CDCl3、25℃、300Hz)δ=8.97-8.94(m、2H)、8.55(d、J=8.2Hz、1H)、8.33-8.00(m、6H)、7.73-7.60(m、5H)、7.55-7.51(m、6H)、7.49-7.46(m、6H)、7.44-7.28(m、6H)、6.97(d、J=8.3Hz、1H)]
【0156】
6.化合物105の合成
(中間体0の合成)
【化28】
1,5-ジブロモナフタレンの代わりに4,6-ジブロモジベンゾチオフェン(22.4g)を用いた以外は中間体Eと同じ合成方法を行って中間体Oを合成した(収率66%)。
【0157】
【0158】
上述した化合物1の合成方法において、中間体Dに代わって中間体Oを利用し、N-[4-(1-ナフタレニル)フェニル]-4-ジベンゾチオフェニルアミンの代わりにN-[4-(1-ナフタレニル)フェニル]アミンを利用したことを除いては、同じ方法で中間体Pを合成した。
【0159】
FAB-MS測定で測定された中間体Pの分子量は477であった。
【0160】
【0161】
上述した化合物1の合成方法において、N-[4-(1-ナフタレニル)フェニル]4-ジベンゾチオフェニルアミンの代わりに中間体Pを利用したことを除いては、同じ方法で化合物105を合成した(収率71%)。
【0162】
FAB-MS測定で測定された化合物105の分子量は755であった。
[1H NMR(CDCl3、25℃、300Hz)δ=8.85(d、J=8.2Hz、1H)、8.55-8.52(m、3H)、8.44(d、J=8.1Hz、1H)、8.35(d、J=7.9Hz、1H)、8.21-8.08(m、4H)、8.01(s、1H)、7.80-7.69(m、5H)、7.64-7.54(m、6H)、7.50-7.40(m、6H)、7.38-7.33(m、7H)]
【0163】
7.化合物117の合成
(中間体Rの合成)
【化31】
【0164】
上述した化合物1の合成方法において、中間体Dに代わって中間体Qを利用し、N-[4-(1-ナフタレニル)フェニル]-4-ジベンゾチオフェニルアミンの代わりにN-[4-(1-ナフタレニル)フェニル]アミンを利用したことを除いては、同じ方法で中間体Rを合成した。
【0165】
FAB-MS測定で測定された中間体Rの分子量は535であった。
【0166】
【0167】
上述した化合物17の合成方法において、N-[4-(1-ナフタレニル)フェニル]-3-ジベンゾチオフェニルアミンの代わりに化合物Rを利用したことを除いては、同じ方法で化合物117を合成した(収率77%)。
【0168】
FAB-MS測定で測定された化合物117の分子量は813であった。
[1H NMR(CDCl3、25℃、300Hz)δ=8.99(d、J=8.1Hz、1H)、8.90(d、J=8.5Hz、1H)、8.87(d、J=8.4Hz、1H)、8.54(d、J=8.1Hz、1H)、8.38-8.37(m、2H)、8.24(d、J=7.9Hz、1H)、8.11(d、J=8.0Hz、1H)、7.99(d、J=8.6Hz、1H)、7.81(d、J=8.2Hz、2H)、7.80-7.69(m、3H)、7.60-7.54(m、5H)、4.48-4.40(m、4H)、7.38-7.35(m、6H)、7.29-7.21(7H)、7.18-7.09(m、7H)]
【0169】
【0170】
上述した化合物17の合成方法において、中間体Fに代わって中間体Nを利用し、また、N-[4-(1-ナフタレニル)フェニル]-4-ジベンゾチオフェニルアミンの代わりにN-4-ジベンゾフラニル-4-ジベンゾフラニルアミンを使用したことを除いては、化合物25の合成と同じく化合物40を合成した。FAB-MS測定で測定された化合物40の分子量は659であった。
[1H NMR(CDCl3、25℃、300Hz)δ=8.87(d、J=7.5Hz、1H)、8.50(d、J=7.7Hz、2H)、8.37-8.30(m、2H)、8.15(m、2H)、8.01(d、J=7.5Hz、2H)、7.85(d、J=8.2Hz、2H)、7.76(d、J=8.1Hz、1H)、7.60(m、2H)、7.53-7.49(m、7H)、7.46(d、J=8.3Hz、2H)、7.42-7.39(m、4H)、7.37(d、J=8.3Hz、2H)]
【0171】
9.化合物189の合成
(189の合成)
【化34】
【0172】
上述した化合物17の合成方法において、N-[4-(1-ナフタレニル)フェニル]-4-ジベンゾチオフェニルアミンの代わりにN-フェニル-9,9’-スピロビスフルオレン-2-アミンを使用したことを除いては、化合物17の合成と同じく化合物189を合成した。FAB-MS測定で測定された化合物189の分子量は685であった。
[1H NMR(CDCl3、25℃、300Hz)δ=8.79(m、2H)、8.44(m、2H)、7.92-7.82(m、4H)、7.79(d、J=8.2Hz、2H)、7.68(m、2H)、7.60(d、J=8.1Hz、2H)、7.50-7.41(m、7H)、7.39-7.33(m、4H)、7.29-7.23(m、9H)、7.12(t、J=8.2Hz、1H)]
【0173】
10.化合物203の合成
(Qの合成)
【化35】
【0174】
上述した中間体Lの合成方法において、3-ブロモフェニルボロン酸の代わりに2-(7-ブロモジベンゾフラン-3-イル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロランを使用したことを除いては、中間体Lの合成と同じく中間体Qを合成した。FAB-MS測定で測定された中間体Qの分子量は449であった。
【0175】
【0176】
上述した化合物1の合成方法において、中間体Dに代わって中間体Qを利用したことを除いては、化合物1の合成と同じく化合物203を合成した。FAB-MS測定で測定された化合物203の分子量は769であった。
[1H NMR(CDCl3、25℃、300Hz)δ=8.90(d、J=7.9Hz、1H)、8.61(d、J=8.2Hz、1H)、8.56(d、J=8.1Hz、1H)、8.45-8.41(m、2H)、8.25-8.21(m、2H)、8.14-8.07(m、2H)、8.01-7.98(m、3H)、7.91-7.75(m、7H)、7.60-7.51(m、10H)、7.42-7.35(m、5H)、6.99(d、J=7.9Hz、1H)]
【0177】
11.化合物206の合成
(Rの合成)
【化37】
【0178】
上述した化合物Fの合成方法において、中間体Eに代わって中間体Lを利用したことを除いては、中間体Fの合成と同じく中間体Rを合成した。FAB-MS測定で測定された中間体Rの分子量は390であった。
【0179】
【0180】
上述した化合物80の合成方法において、中間体Nに代わって中間体Rを利用したことを除いては、化合物80の合成と同じく化合物206を合成した。FAB-MS測定で測定された化合物206の分子量は739であった。
[1H NMR(CDCl3、25℃、300Hz)δ=8.81(d、J=7.9Hz、1H)、8.66(d、J=8.1Hz、1H)、8.54(d、J=8.1Hz、1H)、8.46(m、1H)、8.31(m、1H)、8.21(m、1H)、8.10-8.01(m、3H)、7.98-7.95(m、2H)、7.84(m、1H)、7.79-7.74(4H)、6.99-7.61(m、3H)、7.55-7.41(m、12H)、7.38-7.35(m、6H)、7.01(d、J=8.0Hz、1H)]
【0181】
上述した合成例は一例示であって、反応条件は必要に応じて変更され得る。また、本発明の一実施例による化合物は、該当技術分野で知られている方法及び材料を利用して多様な置換基を有するように合成され得る。化学式1で表されるコア構造に多様な置換体を取り入れることで、有機電界発光素子に使用されるに適合した特性を有することができる。
【0182】
(素子作成例)
上述した化合物1、17、71、94、80、105、117、40、189、203、及び206を電子阻止層の材料として使用し、実施例1~11の有機電界発光素子を製作した。
【0183】
[実施例化合物]
【化39】
下記比較例化合物A-1~A-9を電子阻止層の材料として使用して、比較例1~9の有機電界発光素子を製作した。
【0184】
【0185】
実施例1~11、比較例1~9の有機電界発光素子は、ITOで150nmの厚さの第1電極を形成し、HT1にHILを2%でドーピングした10nmの厚さの正孔注入層を形成し、HT1で120nmの厚さの正孔輸送層を形成し、実施例化合物または比較例化合物で10nmの厚さの電素素子層を形成し、BHにBDを2%ドーピングした30nmの厚さの発光層を形成し、ET1で10nmの厚さの正孔阻止層を形成し、ET2で20nm厚さの電子輸送層を形成し、LiFで1nm厚さの電子注入層を形成し、マグネシウム(Mg)と銀(Ag)を9:1(体積比)で共蒸着して120nm厚さの第2電極を形成した。各層は、全て真空蒸着法で形成した。
【0186】
【0187】
実施例1~11、及び比較例1~9による有機電界発光素子の電圧、半減寿命、発光効率、及び色座標を下記表1に示す。
【0188】
【0189】
発光効率は10mA/cm2で測定した値であり、半減寿命は1.0mA/cm2における値である。
【0190】
前記表1を参照すると、実施例1~11は、比較例1~9に比べ低駆動電圧化、長寿命化、及び高効率化されている。本発明の一実施例によるモノアミン化合物は、熱耐性、電荷耐性の高いフェニルナフチル基を含むことで長い素子寿命が達成されている。また、ナフチル基がフェニル基に置換されていることで体積が大きくなり、分子の対称性が低下し結晶化が抑制されて、結果的に膜質を向上させることができるため、効率も向上されている。
【0191】
実施例1~11の場合、ナフチル基の1番位置でリンカーを介して窒素原子と結合しており、分子全体の体積が大きくなり結晶性が抑制されるため、膜質が向上されて高効率化されている。
【0192】
比較例1は、フェニルナフチル基を含むアミン化合物であるが、窒素原子と縮合環が結合しておらず電荷耐性が低く、素子寿命が短い。比較例2は、ナフチル基を含むアミン化合物であるが、フェニルナフチル基を含んでおらず電荷耐性が低く、膜質が十分ではないため、素子寿命が短く効率が低い。
【0193】
比較例3、4は、置換されたナフチル基を含んでいるが、窒素原子と縮合環が結合しておらず電荷耐性が低く、素子寿命が短い。また、ナフタレンの1位及び8位にそれぞれ置換されている構造を有するため、体積が非常に大きく分解が起こりやすく、分子間の距離も遠いため正孔伝達も短くて、寿命・効率が実施例に比べ低い。
【0194】
比較例5及び6は、環形成炭素数12を超えるフェナントレン環を含むため分子スタッキング(stacking)が強く、蒸着温度が高いため熱分解が起こりやすく、効率及び寿命が低い。
【0195】
比較例7は、ヘテロ縮合環が窒素原子とp-フェニレン基を介して連結されておりアミンを安定化する効果が低く、寿命が短い。比較例8は、ヘテロ縮合環が窒素原子に直接連結されているが、フェニルナフチル基を含まないため安定化効果が弱く、寿命が短い。
【0196】
比較例9は、ナフチル基が直接アミン基と結合することで、アミン基の体積が大きくなり分解が発生しやすく、寿命が低下されている。また、フルオレニル基と縮合へテロ環基を同時に含み、電荷輸送能力の大きい置換基の取り入れが過度になって素子内の電化バランスが弱化し、それによって効率及び寿命が低下されている。
【0197】
本発明の一実施例によるモノアミン化合物は正孔輸送領域使用され、有機電界発光素子の低駆動電圧化、高効率化及び長寿命化に寄与する。
【0198】
これまで本発明の実施例を説明したが、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更せず、他の具体的な形態に実施され得ることを理解できるはずである。よって、上述した実施例は全ての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解すべきである。
【符号の説明】
【0199】
10:有機電界発光素子 EL1:第1電極
HTR:正孔輸送領域 HIL:正孔注入層
HTL:電子輸送層 EML:発光層
ETR:電子輸送領域 ETL:電子輸送層
EIL:電子注入層 EL2:第2電極