(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】駆動装置、液圧ポンプ、自動車
(51)【国際特許分類】
H02K 5/10 20060101AFI20240403BHJP
H02K 5/14 20060101ALI20240403BHJP
H02K 5/173 20060101ALI20240403BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20240403BHJP
B60T 17/02 20060101ALI20240403BHJP
F16J 15/3204 20160101ALI20240403BHJP
【FI】
H02K5/10 Z
H02K5/14 A
H02K5/173 A
H02K7/14 B
B60T17/02
F16J15/3204 201
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019161811
(22)【出願日】2019-09-05
【審査請求日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】10 2018 216 558.0
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】クルツ,エドガー
(72)【発明者】
【氏名】ヘッカー,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】アンブロジ,マッシミリアノ
(72)【発明者】
【氏名】アイゼンラウアー,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】シュラー,ヴォルフガング
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-516680(JP,A)
【文献】特開2008-253026(JP,A)
【文献】特開2009-095153(JP,A)
【文献】国際公開第2012/169007(WO,A1)
【文献】特開2001-050287(JP,A)
【文献】特開2010-175020(JP,A)
【文献】実公昭43-030967(JP,Y1)
【文献】国際公開第2004/090391(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/10
H02K 5/14
H02K 5/173
H02K 7/14
B60T 17/02
F16J 15/3204
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(5)において支持され、かつロータ(8)を支えるロータ軸(6)と、前記ハウジング(5)に配置された整流子(9)とを備え、該整流子が、ブラシ支持体(11)によって保持される少なくとも1つの整流子ブラシ(12)を有し、該整流子ブラシが、前記ロータ軸(6)上に回動不能に配置された整流子リング(10)と協働する、
自動車のブレーキシステムの液圧ポンプ(2)のための駆動装置(1)において、前記ブラシ支持体(11)が、前記整流子(9)に割り当てられた
環状のシールリング(13)を有し、該シールリングが前記ロータ軸(6)と同軸に配置されているとともに、前記ロータ軸(6)と密封するように協働し、
前記ブラシ支持体(11)と前記シールリング(13)とが一緒にワンピースに形成されており、
前記シールリング(13)は、縦断面から見て前記ロータ軸(6)の軸方向に対して斜めに傾けて方向づけされている、ことを特徴とする、駆動装置。
【請求項2】
前記ブラシ支持体(11)がプラスチックから製作されていることを特徴とする、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記シールリング(13)がプラスチックから製作されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記シールリング(13)が、
シールリップ状に形成されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記シールリング(13)が、
少なくとも領域的に弾性変形可能に形成されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記シールリング(13)が、
前記ロータ軸(6)の方向に先細りに延びることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記シールリング(13)が、
縦断面で見たとき、漏斗状に形成されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記シールリング(13)が、
前記整流子(9)と前記ロータ軸(6)を支持する転動体軸受(7)との間に配置されていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記ロータ軸(6)上で前記ブラシ支持体(11)の、前記整流子(9)から離反した側に、前記液圧ポンプ(2)の少なくとも1つのポンプピストン(3)を操作するための偏心軸受(3)が配置されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項10】
少なくとも1つの操作可能なポンプピストン(3)と、前記ポンプピストン(3)を操作するための駆動装置(1)と、を備える自動車のブレーキシステムの液圧ポンプ(2)において、請求項1~9のいずれか1項に記載の駆動装置(1)の形態を特徴とする、液圧ポンプ。
【請求項11】
自動車のブレーキシステムであって、請求項10に記載の液圧ポンプ(2)を有する、
ブレーキシステム。
【請求項12】
自動車であって、請求項11に記載のブレーキシステムを有する、自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングにおいて支持され、かつロータを支えるロータ軸と、特に該ロータ軸上に配置され、ロータ軸上に回動不能に配置された内輪と、少なくとも実質的に軌道を回るだけの、かつ少なくとも1つのポンプピストンを操作するように形成された外輪とを有する偏心軸受と、ハウジングに配置された整流子と、を備え、該整流子が、ブラシ支持体によって保持される少なくとも1つの整流子ブラシを有し、該整流子ブラシは、ロータ軸上に配置された整流子リングと協働する、自動車のブレーキシステムの液圧ポンプのための駆動装置に関する。
【0002】
さらに、本発明は、1つまたは複数のポンプピストンと、偏心軸受を用いてポンプピストンを駆動する上記の駆動装置と、を備える液圧ポンプに関する。さらに、本発明は、このような液圧ポンプを有する自動車のブレーキシステム、およびそのようなブレーキシステムを有する自動車に関する。
【背景技術】
【0003】
冒頭で述べた種類の駆動装置は従来技術から知られている。液圧システムを運転するために、1つまたは複数の駆動可能な液圧ポンプを用いて液圧を発生させることが知られている。その際、ピストンポンプが効率的であることが明らかになった。ピストンポンプを駆動するために(1つまたは複数のピストンポンプを駆動するために)、回転するか、または軌道を回る(orbitieren)偏心体を利用することが知られている。その際、ピストンポンプのポンプピストンは、偏心体の回転軸に対して径方向に向けられ、ばね付勢によって偏心体の外面に押し付けられており、それによって偏心体を支える軸が回転すると、ポンプピストンが径方向に駆動される。偏心軸受の外側部材が軌道を回る運動と並んで回転運動も行うことを回避するために、偏心軸受を内輪と、この内輪に相対して変位可能な外輪とで形成することが知られている。その際、内輪と外輪との間に転動体、特にニードル体が配置されている。内輪は回動不能にロータ軸と接続されており、転動体によって内輪の回転運動が外輪に伝達されない。それによってポンプピストンと偏心体との間の相対運動と摩耗とが回避される。多くの場合、そのときすでに偏心体に対するポンプピストンの押圧力は外輪の回転運動を阻止するのに十分である。
【発明の概要】
【0004】
請求項1の特徴を有する本発明による駆動装置は、液体が整流子へ、または電気モータのハウジングに達すること、あるいは整流子ブラシが整流子リング上で摺動することによって生じ得る(entstehenden Kanten)整流子の摩耗破片(Abrieb)がハウジングから漏れ出し、例えば駆動装置によって駆動される液圧ポンプに、またはオプションの偏心軸受に達し得ることが簡単かつ低コストで阻止されるという利点を有する。本発明によれば、このために、ブラシ支持体が、整流子に割り当てられたシールリングを有し、このシールリングが軸と同軸に配置されているとともに、ロータ軸と密封するように協働することが予定されている。ブラシ支持体はもともとあるので、シールリングを保持するための追加の保持具の必要がない。シールリングは、ロータ軸を取り囲むか、または包囲し、それにより液体が一方向または別の方向に移動すること、および整流子の汚れ粒子、特に摩耗粉塵の侵入または漏れ出しを阻止する。ブラシ支持体にシールリングを配置することによって、駆動装置の簡単な組み立てと、さらに駆動装置のコンパクトな構造が保証されている。
【0005】
本発明の好ましい一展開形態では、ブラシ支持体がプラスチックから製作されている。それによりブラシ支持体は、わずかな重量しか有さず、さらに非導電性であり、その結果、整流子ブラシの簡単かつ電気的に安全な支持が保証されている。
【0006】
さらに、シールリングがプラスチックから製作されていることが好ましい。それによりシールリングも低コストかつ軽量化して形成される。その際、シールリングは、好ましくはブラシ支持体と同じ材料から製作され、またはこれに代えて、別のプラスチック材料から製作されている。ブラシ支持体とシールリングとが異なったプラスチック材料から製作されている場合、異なった特性を利用することができる。例えば整流子ブラシの確実な保持を保証するためにブラシ支持体がより硬質のプラスチック材料から製作され、シールリングはそれほど硬質でない、特に弾性変形可能なプラスチック材料から製作され、このことはロータ軸との協働において有利なシールを提供する。この場合、ブラシホルダとシールリングとは、好ましくは簡単な組み立てを可能にする堅固なユニットをなす二成分射出成形部品として形成されている。
【0007】
本発明の好ましい一展開形態では、ブラシ支持体とシールリングとはワンピースに形成されており、したがって同じ材料を有する。これによって、特に低コストの製造が可能になる。
【0008】
本発明の好ましい一展開形態では、シールリングはシールリップ状に形成されている。それによりロータ軸へのシールリングの摩耗の少ない有利な当接が保証されている。特に、そのためにシールリングは、公差を補償するとともに摩耗を低減するために、少なくとも領域的に弾性変形可能である。
【0009】
シールリングが、その内径に向かって、もしくはロータ軸の方向に先細りに延びるように形成されていることが特に好ましい。それによりシールリングは、ロータ軸と接触コンタクト(Beruehrungskontakt)できるか、または接触コンタクトするごく小さい接触面を有する。
【0010】
さらに好ましくは、シールリングが縦断面で見て漏斗状に形成されていることが予定されている。その際、漏斗形は、特に整流子から離れる方向を向き、それによりシールリングの内径が整流子の方向に大きくなる。それによりシールリングは、外から来る液体に対して有利な液体バリアを形成する。
【0011】
本発明の好ましい一展開形態では、整流子と、ハウジングにおいてロータ軸を支持する転動体軸受との間にシールリングが配置されている。それによりシールリングは、整流子を、特に転動体軸受を通って整流子の方向に運ばれる液体に対して、および転動体軸受を整流子において生じ得る摩耗粉塵に対して保護する。
【0012】
請求項11の特徴を有する本発明による液圧ポンプは、本発明により駆動装置が形成されていることを特徴とする。それによって上記の利点が明らかになる。
【0013】
請求項12の特徴を有する本発明によるブレーキシステムは、本発明による液圧ポンプを特徴とする。上記の利点が明らかになる。
【0014】
請求項13の特徴を有する本発明による自動車は、本発明によるブレーキシステムを有する。上記の利点が明らかになる。
【0015】
他の利点および好ましい特徴および特徴の組み合わせは、上記の説明および請求項から明らかになる。以下、図面をもとにして本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】自動車のブレーキシステムの液圧ポンプの簡略化した断面図である。
【
図2】液圧ポンプのブラシ支持体の縦断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、少なくとも1つのポンプピストンを有するここでは詳しく図示されない液圧ポンプ2のための駆動装置1の簡略化した縦断面図を示し、ポンプピストンは、駆動装置1により駆動可能な偏心軸受3によって駆動可能である。
図1において、偏心軸受3は破線で示されるにすぎない。
【0018】
駆動装置1は電気モータ4を有し、電気モータはハウジング5を有し、該ハウジングにおいてロータ軸6が回転可能に支持されている。ロータ軸6は、ハウジング5において複数の転動体軸受7によって回転可能に支持されている。さらに、ロータ軸6上にはロータ8が回動不能に配置されているとともに、偏心軸受3の内輪が配置されている。さらに、電気モータ4は整流子9を有し、整流子は、ロータ軸6上に回動不能に配置された整流子リング10と、ブラシホルダ11によって支えられた複数の整流子ブラシ12とを有している。その際、整流子ブラシ12は、整流子リング10に対して弾性的に径方向に付勢されており、この整流子リングと協働する。
【0019】
その際、整流子リング10は、ハウジング5において、ロータ8と転動体軸受7と偏心軸受3との間に配置されている。ブラシホルダ11は、ディスク状に、特にリングディスク状に形成されており、ハウジング5を実質的に端面側で閉鎖し、ハウジング5においてロータ軸6と同軸に配置されている。ブラシ支持体11は、その内径にシールリング13を有している。シールリング13はブラシ支持体11とワンピースに形成されており、シールリップ形状を有している。このために、シールリング13は、ロータ軸6の方向に先細りに延びている。その際、シールリップは径方向にではなく、これに対して斜めに傾けて方向づけされ、それによりシールリング13は、縦断面で見たとき、内径が整流子9の方向に大きくなる漏斗状に形成されている。
【0020】
シールリング13と回転ハウジング(Drehgehaeuse)11とはプラスチックから製作されており、特にシールリング13は、少なくとも領域的に弾性変形可能に形成されている。シールリング13の内径は、シールリングがロータ軸6の外面上、もしくは外周壁上に載るように選択されている。その際、弾性変形可能であることと、先端の接触面が細いこととにもとづいて、ごくわずかな摩耗しか生じない。
【0021】
図2は、シールリング13が形成されたブラシ支持体11の断面斜視図を示す。断面図にはブラシホルダ14も見て取れる。整流子ブラシは、このブラシホルダとともにばね要素の力に抗して押し込み可能であり、それにより組立状態において、ばね力によって整流子リング10の方向に押さえられる。ワンピースに形成することによってブラシ支持体11とシールリング13とを簡単かつ低コストで製造可能である。
【0022】
その際、シールリング13の輪郭は、特に、射出成形用具の主要離型方向に向いており、したがって特別な追加コストなしに実現可能である。提案される一体化の形成のために必要な構造空間は、通常、駆動装置にすでにある。剥離形状(Abstreifgeometrie)を有するシールリング13は、液体および摩耗粉塵に対する確実な密封を実現するために、ロータ軸6もしくはその外周壁にわずかな付勢下で当接することが好ましい。付勢は、例えば、軸挿通開口部が、組立前の状態において、シールリング13に割り当てられた区分におけるロータ軸6の外径より小さいことによって達成される。
【0023】
これに代わるここに図示されない一実施例では、ブラシホルダ11とシールリング13とが、好ましくは2成分射出成形部品として製造され、すなわち2成分射出成形法で製造されている。それによって、例えばシールリング13には、特にブラシ支持体11に使用されるものとは別の、特にそれよりも高い弾力性を有するプラスチックを使用することができる。それによって両方の要素をそのそれぞれの機能に最適に適合させることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 駆動装置
2 液圧ポンプ
3 偏心軸受、ポンプピストン
4 電気モータ
5 ハウジング
6 ロータ軸
7 転動体軸受
8 ロータ
9 整流子
10 整流子リング
11 ブラシ支持体
12 整流子ブラシ
13 シールリング
14 ブラシホルダ