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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】エンジンシステム
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/20 20060101AFI20240403BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20240403BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20240403BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20240403BHJP
   F01P 3/20 20060101ALI20240403BHJP
   F02M 31/13 20060101ALI20240403BHJP
   F01M 5/00 20060101ALI20240403BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20240403BHJP
   B60K 6/485 20071001ALI20240403BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20240403BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20240403BHJP
   B60W 20/16 20160101ALI20240403BHJP
   B60W 20/40 20160101ALI20240403BHJP
【FI】
F01N3/20 K
F01N3/08 B
F01N3/035 E
F01N3/24 Z
F01P3/20 E
F02M31/13 311
F01M5/00 C
F02D45/00 364
B60K6/485 ZHV
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60W20/16
B60W20/40
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019222616
(22)【出願日】2019-12-10
(65)【公開番号】P2020101177
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】1820068.3
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519394322
【氏名又は名称】ジェイ.シー. バンフォード エクスカベターズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】アラン トリー
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-338235(JP,A)
【文献】特開2017-048744(JP,A)
【文献】特開2014-084759(JP,A)
【文献】特開2014-084811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/20
F01N 3/08
F01N 3/035
F01N 3/24
F01P 3/20
F02M 31/13
F01M 5/00
F02D 45/00
B60K 6/485
B60W 10/06
B60W 10/08
B60W 20/16
B60W 20/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンシステムを備えるオフハイウェイ車両であって、
前記エンジンシステムは、
a.前記車両のドライブラインを駆動するように構成されたディーゼルエンジンと、
b.前記エンジンシステムからのエミッションを低減するように構成された後処理装置と、
c.前記後処理装置の動作温度を上昇させるように構成された後処理加熱要素と、
d.電気エネルギー貯蔵デバイスと、
e.前記電気エネルギー貯蔵デバイスからのエネルギーを前記後処理加熱要素に配向して前記後処理装置の動作温度を上昇させるように構成されたコントローラと、
f.前記車両のドライブラインを駆動するように構成されたモータジェネレータであって、前記エンジンシステムが、電気モードでは前記モータジェネレータを介して、エンジンモードでは前記ディーゼルエンジンを介して、または両モードの組み合わせで、前記車両のドライブラインを駆動するように構成されたモータジェネレータと、を備え、
前記システムが、前記後処理装置の動作温度を決定するように構成され、
前記システムが前記エンジンモードで動作しているときに、前記動作温度が低下していると判定された場合、及び/又は、前記動作温度が所定の最低温度に達したと判定された場合で、かつ、前記電気エネルギー貯蔵デバイスの充電量が所定量を上回ると判定された場合に、前記コントローラが、前記電気モードで動作するようにシステムに指示する、
オフハイウェイ車両
【請求項2】
前記エンジンシステムは更に、前記ディーゼルエンジンを加熱するように構成されたエンジン加熱要素を備え、前記コントローラは、前記電気エネルギー貯蔵デバイスからのエネルギーをエンジン加熱要素に配向して、前記ディーゼルエンジンの温度を上昇させるように構成される、請求項1に記載のオフハイウェイ車両
【請求項3】
前記エンジンシステムは、前記コントローラが、前記ディーゼルエンジンに前記ドライブラインを駆動するよう指示する前に、前記後処理装置を加熱するように構成され、任意選択的に、前記コントローラが、前記ディーゼルエンジンに前記ドライブラインを駆動するよう指示した後、前記コントローラは、前記電気エネルギー貯蔵デバイスに、前記後処理加熱要素へのエネルギーの供給を停止するよう指示し、任意選択的に、前記コントローラは、前記電気エネルギー貯蔵デバイスに、前記後処理加熱要素へのエネルギーの供給を徐々に停止するよう指示する、請求項1又は2に記載のオフハイウェイ車両
【請求項4】
前記後処理装置及び/又は前記エンジンを加熱する前、及び/又は、前記エンジンを加熱する間、前記コントローラは、前記電気エネルギー貯蔵デバイスからのエネルギーを前記モータジェネレータに配向して前記電気モードで前記ドライブラインを駆動する、請求項1から3の何れかに記載のオフハイウェイ車両
【請求項5】
前記車両を始動させる要求に対応する入力を受け取ると、前記コントローラは、前記電気エネルギー貯蔵デバイスからのエネルギーを前記モータジェネレータに配向して前記電気モードで前記ドライブラインを駆動する、請求項1からの何れかに記載のオフハイウェイ車両
【請求項6】
前記エンジンシステムは、前記エンジンシステムに対する負荷要求を判定するように構成され、前記エンジンシステムが前記電気モードで作動しているときに、前記負荷要求が下限負荷閾値を下回ると判定された場合に、前記コントローラは、前記エンジンシステムに前記電気モードで前記ドライブラインを駆動し続けるよう指示する、請求項1からの何れかに記載のオフハイウェイ車両
【請求項7】
前記コントローラは、前記エンジンシステムに対して、前記電気モードから前記エンジンモードに切り替えるよう指示するように構成され、前記電気モードから前記エンジンモードに切り替える段階は、
a.前記後処理装置を予熱する段階と、
b.予熱後、前記エンジンに前記エンジンモードで前記ドライブラインを駆動させるように前記コントローラを構成する段階と、
を含み、任意選択的に、前記後処理装置を予熱する段階は、前記コントローラが、それぞれの所定の時間期間にわたって前記電気エネルギー貯蔵デバイスからのエネルギーを前記後処理加熱要素に配向する段階を含む、請求項から6の何れかに記載のオフハイウェイ車両
【請求項8】
前記後処理装置を予熱する段階は、前記後処理装置及び/又は前記エンジンが所定の温度に達するまで、前記コントローラが、前記電気エネルギー貯蔵デバイスからのエネルギーを前記後処理加熱要素に配向する段階を含む、請求項7に記載のオフハイウェイ車両
【請求項9】
前記エンジンシステムは、前記エンジンシステムに対する負荷要求を判定するように構成され、前記エンジンシステムが前記電気モードで作動しているときに、前記負荷要求下限負荷閾値を上回る場合に、前記コントローラは、前記エンジンシステムに前記電気モードから前記エンジンモードに切り替えるよう指示する、請求項7又は8に記載のオフハイウェイ車両
【請求項10】
前記所定量は第2の所定量であり、前記エンジンシステムが前記電気モードで作動しているときに、前記電気エネルギー貯蔵デバイスにおける充電量が第1の所定量を下回る場合に、前記コントローラは、前記エンジンシステムに前記電気モードから前記エンジンモードに切り替えるよう指示する、請求項7から9の何れかに記載のオフハイウェイ車両
【請求項11】
前記エンジンシステムが前記エンジンモードで動作しているときに、前記動作温度が低下していると判定された場合及び/又は前記動作温度が所定の最低温度に達したと判定された場合に、前記コントローラは更に、前記エンジンに対して、電気エネルギーに変換されて前記電気エネルギー貯蔵デバイスに貯蔵するため機械的エネルギーを前記モータジェネレータに供給するよう指示するように構成されている、請求項から10の何れかに記載のオフハイウェイ車両
【請求項12】
前記後処理装置の動作温度は、前記ディーゼルエンジンからの排気ガスの温度に基づいて判定される、請求項1から11の何れかに記載のオフハイウェイ車両
【請求項13】
前記エンジンシステムは、前記エンジンシステムに対する負荷要求を判定するように構成され、前記負荷要求が上限負荷閾値を上回る場合に、前記コントローラは、前記エンジンシステムに前記電気モード及び前記エンジンモードの両方で作動するよう指示する、請求項から12の何れかに記載のオフハイウェイ車両
【請求項14】
前記エンジンシステムは、前記電気エネルギー貯蔵デバイスにおける充電量を判定するように構成され、前記所定量は第2の所定量であり、前記エンジンシステムが前記エンジンモードで作動しているときに、前記車両を停止する要求に対応する入力を受け取ると、
a.前記充電量が第3の所定量を上回る場合に、前記コントローラは、前記エンジンにオフにするよう指示し、
b.前記充電量が第3の所定量を下回る場合に、前記コントローラは、前記エンジンに対して、作動し続けて、電気エネルギーに変換されて前記電気エネルギー貯蔵デバイスに貯蔵するため機械的エネルギーを前記モータジェネレータに供給するよう指示する、請求項から13の何れかに記載のオフハイウェイ車両
【請求項15】
前記モータジェネレータは、エンジンオーバーラン及び/又は車両制動から電気エネルギーを生成して、前記エネルギーを前記電気エネルギー貯蔵デバイスに伝達するように構成される、請求項から14の何れかに記載のオフハイウェイ車両
【請求項16】
前記コントローラは、前記車両を始動させる要求に対応する入力を受け取ると、エネルギーを前記後処理加熱要素に配向するように構成される、請求項1から15の何れかに記載のオフハイウェイ車両
【請求項17】
前記エンジンシステムは、前記後処理装置の動作温度及び/又は前記ディーゼルエンジンのエンジン温度を判定するように構成され、前記後処理装置の前記判定された動作温度及び/又は前記判定されたエンジン温度が、それぞれの所定の閾値を満たす場合に、前記コントローラは、前記ディーゼルエンジンに前記ドライブラインを駆動するよう指示する、請求項1から16の何れかに記載のオフハイウェイ車両
【請求項18】
前記後処理装置は、ディーゼル微粒子フィルタ(DPF)及び/又は選択的触媒還元(SCR)装置を備え、任意選択的に、前記後処理加熱要素は、前記ディーゼルエンジンからの排気ガスの加熱及び/又はSCR触媒の加熱により、前記後処理装置の動作温度を上昇させるように構成される、請求項1から17の何れかに記載のオフハイウェイ車両
【請求項19】
前記エンジンを加熱する段階は、冷却材及び/又はオイル及び/又は前記エンジンに誘導される空気を加熱する段階を含む、請求項1から18の何れかに記載のオフハイウェイ車両
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エンジンシステム並びにエンジンシステムを備えたオフハイウェイ車両に関する。より具体的には、限定されるものではないが、本開示は、オフハイウェイ車両からのエミッションを低減するように構成されたエンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
オフハイウェイ車両は、ほぼ例外なく、運転に必要なエネルギー及び動力を供給するのに燃焼エンジンを使用する。これらのエンジンは、効率的で費用対効果の高いものであり得るが、これらのエンジンは排気汚染物(炭化水素、窒素酸化物、及び粒子状物質)を放出し、これらは健康及び環境に有害である可能性がある。
【0003】
これらの有害なエミッションを低減するためのディーゼルエンジン用に様々な削減技術が知られており、これらは単独で又は組み合わせて使用することができる。これら技術には、以下のものが挙げられる。
【0004】
エンジン排気ガスから粒子状物質を除去するためのディーゼル微粒子フィルタ(DPF)が提供されている。粒子状物質がフィルタ内に蓄積して目詰まりを引き起こす場合があるので、フィルタを清掃するための機構が必要である。受動フィルタは、触媒を使用して蓄積物を除去するが、作動には高温が必要である。これは、エンジンがアイドリングにかなりの時間を費やしてしまい、受動的には十分な温度に達しない場合があるので、オフハイウェイ用途では保証されない可能性がある。従って、「能動的」DPFは、この技術がオフハイウェイ用途で効果的であるため望ましい。能動的DPFは、燃料バーナーにおいて、又はエンジン管理システムを使用して一定期間ごとに燃料を燃焼させて、燃料噴射方式を変更することにより排気温度を上昇させて、粒子状物質の燃焼温度にまでフィルタを加熱する。粒子状物質の大幅な低減が達成可能である(最適な条件で99%を上回る)。能動的DPFの欠点は、燃料消費率の増加を含む。
【0005】
選択的触媒還元(SCR)は、バナジウム、タングステン、銅ゼオライト(Cu-ゼオライト)、又は鉄ゼオライト(Fe-ゼオライト)などの触媒を無水アンモニア、アンモニア水、又はより典型的には尿素などの還元剤と組み合わせて使用して、NO及びNO2を窒素及び水に変換する。尿素は、典型的には、還元剤として使用されるが、SCR触媒に入る地点の近くにアンモニアに熱分解するために、SCR触媒の幾らか上流側で排気ガスに注入される必要がある。尿素は、貯蔵及び輸送が実質的に安全であるので、アンモニアよりも好ましい。米国では、SCRと共に使用される市販の尿素は、ディーゼル排気流体(DEF)と呼ばれ、欧州では、「AdBlue(登録商標)」と呼ばれる。SCRが、温度スペクトルの下端で効果的に機能するためには、これまではNOとNO2との比率が50:50であることが望ましかったが、NO2がほとんど利用可能でない場合に、300°Cより低い温度で性能を高めるためにCu-ゼオライト触媒が発見された。SCRの利点は、燃料消費率に与える影響が最小であることである。欠点として、尿素還元剤の過剰注入、又は低温でSCR触媒内に存在し、触媒が加熱されるときに放出されるアンモニアにより、未反応のアンモニアがSCRから大気中に放出される危険性がある。このことは、業界では「アンモニアスリップ」と呼ばれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなエミッション制御装置は、エミッションを除去するのに極めて効果的である(99%を超える)が、効果的であるのに最適な動作条件を必要とする可能性がある。
【0007】
従って、本開示は、従来技術の問題を克服するか、又は少なくとも軽減しようとするものである。例えば、本開示は、オフハイウェイ車両からの排気汚染物の放出を、例えばゼロ近くに低減しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、オフハイウェイ車両用のエンジンシステムを提供し、エンジンシステムは、
車両のドライブラインを駆動するように構成されたディーゼルエンジンと、
エンジンシステムからのエミッションを低減するように構成された後処理装置と、
後処理装置の動作温度を上昇させるように構成された後処理加熱要素と、
電気エネルギー貯蔵デバイスと、
電気エネルギー貯蔵デバイスからのエネルギーを後処理加熱要素に配向して後処理装置の動作温度を上昇させるように構成されたコントローラと、を備える。
【0009】
このようにして、後処理システムは、エンジンシステムからのエミッションが最も効果的に低減される最適な動作温度に維持することができる。このことは、エンジンシステムからの有害なエミッション(例えば、NOx及び粒子状物質)を低減するという利点を有する。以下で更に詳細に説明するように、このようなエンジンシステムを含むオフハイウェイ機械からの排出量は、「ゼロ」とみなされるほど十分に少なくなることができ、「ゼロエミッションゾーン」でのエンジンシステムの使用が可能になる。このことは、炭化水素を燃料とする燃焼エンジンを搭載した車両の効率、範囲、及びコストを提供しながら達成可能である。
【0010】
SCR及びDPFシステムなどの後処理システムは、特定の条件下で、例えば特定の温度条件下で99.9%までの効率を達成することができる。例えば、SCR装置が低温である場合に、NOx排出量が大きくなる、例えば、約500ppmとなる場合がある。その一方、Cu-ゼオライト触媒の場合には、SCRが約300°Cの温度に達すると、NOx排出量はほぼゼロに低減される。従って、後処理装置を加熱することにより、極めて低減されたNOx排出量が達成される。SCRの性能は、温度に大きく依存する。
【0011】
更に、受動的DPFは温度に依存する。従って、後処理装置を加熱することにより、可能性のある受動的DPFの再生の割合が増加する。このことは、蓄積された粒子状物質を除去するのに更に燃料を燃焼させる必要があるDPFの「能動的」再生の必要性を減少させる。従って、燃料消費量の低減が達成される。また、後処理加熱要素は、必要であり望ましい場合に、DPFの能動的再生の一部として使用することもできる。
【0012】
このようにして、後処理装置を加熱することにより、エンジンシステムから生じるエミッションが、低減されるか又は無視できる程度になりながら、依然としてディーゼルシステムに関連する効率及びコストの利点が達成される。具体的には、低減された又は無視できる程度のエミッションは、純然たる電気エンジンシステムよりもはるかに低いコストでもたらされる。
【0013】
EU第5次排出ガス基準は、56kWを下回るエンジン及び130kWを上回るエンジンに対して、2019年1月1日に施行される。この基準は、56kWから129kWの範囲内のエンジンに対して、1年後の2020年1月1日に効力を生じることになる。規制2016/1628は、全てのカテゴリーの圧縮点火(ディーゼル)エンジン及びポジティブ点火モバイルノンロードエンジンの排出要件を指定しており、指令97/68/EC及びその修正案に取って代わる。本明細書に開示されるエンジンシステムを使用することにより第5次基準よりも何倍も少ない排出量を達成することが可能であることが判明した。
【0014】
更に、使用地点での排出量は、ほんのわずかであり「ゼロ」として分類されるほど十分に少なく、「ゼロエミッションゾーン」でのエンジンシステムの使用が可能になる。
【0015】
例として、本明細書で開示されるエンジンシステムは、車両始動時のエミッションを低減するのに好都合である。このような場合、電気エネルギー貯蔵デバイスは、後処理加熱要素にエネルギーを供給して、後処理装置の動作温度を、効率が最適になる温度まで上昇させるのに使用することができる。従って、後処理装置を加熱するのにディーゼルエンジンを始動させる必要はない。このようにして、エミッションは、エンジン始動からエンジン使用中ずっと低減できる。
【0016】
幾つかの実施形態では、オフハイウェイ車両は、ハイブリッドエネルギーオフハイウェイ車両である。
【0017】
任意選択的に、本システムは更に、ディーゼルエンジンを加熱するように構成されたエンジン加熱要素を備え、コントローラは、電気エネルギー貯蔵デバイスからのエネルギーをエンジン加熱要素に配向して、ディーゼルエンジンの温度を上昇させるように構成される。
【0018】
例示的な実施形態では、エンジンは、冷却材、及び/又はオイル、及び/又はエンジンに誘導される空気を加熱することによって加熱される。例えば、オイル及び/又は冷却材は、40°Cから80°Cの範囲、例えば、約60°Cの温度に加熱することができる。例えば、誘導された空気は、10°Cから40°Cの範囲、例えば、約25°Cの温度に加熱することができる。
【0019】
同様に例として、本明細書で開示されるエンジンシステムは、車両始動時のエミッションを低減するのに好都合である。このような場合、電気エネルギー貯蔵デバイスは、エンジン加熱要素にエネルギーを供給して、ディーゼルエンジンの温度を、例えば、エミッションが低減される最適な動作温度に上昇させるのに使用することができる。従って、エンジンは、エンジンを始動させる前に予熱することができる。このことは、エンジンがこの温度に達する前に作動する必要がないことを意味する。
【0020】
任意選択的に、本システムは、コントローラが、ディーゼルエンジンにドライブラインを駆動するよう指示する前に、後処理装置及び/又はエンジンを加熱するように構成される。
【0021】
このようにして、後処理システム及び/又はディーゼルエンジンが或る温度に上がったときに、エンジンが、始動して、ドライブラインを駆動するのに使用される。このことは、エンジンの始動時点からエミッションが最小になることを保証する。
【0022】
任意選択的に、コントローラが、ディーゼルエンジンにドライブラインを駆動するよう指示した後、コントローラは、電気エネルギー貯蔵デバイスに、後処理加熱要素及び/又はエンジン加熱要素へのエネルギーの供給を停止するよう指示する。
【0023】
ほとんどの場合、後処理システム及び/又はエンジンの温度は、エンジン自体の動作によって維持される。
【0024】
任意選択的に、コントローラは、電気エネルギー貯蔵デバイスに、後処理加熱要素及び/又はエンジン加熱要素へのエネルギーの供給を徐々に停止するよう指示する。
【0025】
状況によっては、後処理装置を加熱するためのエネルギーの供給は、エンジンを加熱するためのエネルギーの供給が停止する前又はその後、停止することができる。このようにして、加熱は、後処理装置及び/又はエンジンの必要な温度が維持されるように調整することができる。
【0026】
任意選択的に、本システムは更に、車両のドライブラインを駆動するように構成されたモータジェネレータを備えて、エンジンシステムが、電気モードでモータジェネレータを介して、エンジンモードでディーゼルエンジンを介して、又はこれら両方のモードの組み合わせで車両のドライブラインを駆動するように構成されるようになる。
【0027】
このようにして、車両のドライブラインは、モータジェネレータを使用して車両のドライブラインを駆動することにより、エンジンがまだ始動していないときに動作することができる。このことは、エンジン及び/又は後処理装置が或る温度に上がっている間、車両が依然として使用できることを意味する。
【0028】
また、このことは、極めて高い負荷要求のもとで、ディーゼルエンジン及びモータジェネレータの両方を使用して車両のドライブラインを駆動できるという利点を有する。
【0029】
別の状況では、車両に対する負荷要求が低い場合に、車両のドライブラインは、モータジェネレータのみを使用して駆動することができる。
【0030】
任意選択的に、後処理装置及び/又はエンジンを加熱する前及び/又はその間、コントローラは、電気エネルギー貯蔵デバイスからのエネルギーをモータジェネレータに配向して電気モードでドライブラインを駆動する。
【0031】
このようにして、車両は、後処理システム及び/又はエンジンが或る温度に達する間、モータジェネレータを使用して車両のドライブラインを駆動することにより、依然として使用することができる。このことは、車両によって生じる排出量を依然として最小又はゼロにすることを保証しながら、車両の使用が妨げられないことを意味する。
【0032】
任意選択的に、車両を始動させる要求に対応する入力を受け取ると、コントローラは、電気エネルギー貯蔵デバイスからのエネルギーをモータジェネレータに配向して電気モードでドライブラインを駆動する。
【0033】
このことは、車両に十分な負荷要求が課せられていると判定されるまで、エンジンが始動しないことを保証し、従って、エンジンが不必要に始動しないことを保証する。更に、このことは、エンジン及び後処理装置が或る温度に上がった時点でのみ、エンジンが始動することを保証する。
【0034】
任意選択的に、本システムは、システムに対する負荷要求を判定するように構成され、システムが電気モードで作動しているときに、要求が下限負荷閾値を下回ると判定された場合に、コントローラは、システムに電気モードでドライブラインを駆動し続けるよう指示する。
【0035】
例示的な実施形態では、下限負荷閾値は、10%から30%、例えば20%とすることができる。
【0036】
言い換えると、低負荷要求が車両に課せられている場合に、エンジンシステムは、電気モードでドライブラインを駆動し、従って、エンジンを始動させないように構成される。従って、エンジンは、それを必要とする程度に負荷要求が大きい場合にのみ、始動することになる。従って、エンジンの不必要な使用が防止される。
【0037】
更に、エンジンが低負荷要求で作動している場合に、エンジンからの排気ガスは、比較的低温であるため、後処理装置の温度は、エミッションを最小にするのに最適でない。従って、電気モードでの作動は、エンジンシステムが非クリーンモードで作動することを回避する。
【0038】
任意選択的に、コントローラは、システムに、電気モードからエンジンモードに切り替えるよう指示するように構成され、電気モードからエンジンモードに切り替える段階は、後処理装置及び/又はエンジンを予熱する段階と、予熱後、エンジンにエンジンモードでドライブラインを駆動させるようにコントローラを構成する段階と、を含む。
【0039】
従って、都合よく、エンジンシステムは、後処理装置及び/又はエンジンが或る温度に上がった場合、例えば、それぞれの所定の温度を満たす場合にのみ、電気モードからエンジンモードに切り替わる。このようにして、エンジンの使用は、エミッションが最も効果的に低減できる場合、すなわち、後処理装置及び/又はエンジンが最適温度で動作している場合に限定される。更に、車両は、車両の使用を妨げることなく、排出レベルを最適にするのに電気モード又はエンジンモードの何れかで使用することができる。
【0040】
任意選択的に、後処理装置及び/又はエンジンを予熱する段階は、コントローラが、それぞれの所定の時間期間にわたって電気エネルギー貯蔵デバイスからのエネルギーを後処理加熱要素及び/又はエンジン加熱要素に配向する段階を含む。
【0041】
例示的な実施形態では、それぞれの所定の時間期間は、エンジン及び/又は後処理システムがそれぞれの所定の温度に達するのに必要な期間に対応するように選択される。
【0042】
任意選択的に、後処理装置及び/又はエンジンを予熱する段階は、後処理装置及び/又はエンジンが所定の温度に達するまで、コントローラが、電気エネルギー貯蔵デバイスからのエネルギーを後処理加熱要素及び/又はエンジン加熱要素に配向する段階を含む。
【0043】
任意選択的に、本システムは、システムに対する負荷要求を判定するように構成され、システムが電気モードで作動しているときに、要求が下限負荷閾値を上回る場合に、コントローラは、システムに電気モードからエンジンモードに切り替えるよう指示する。
【0044】
従って、エンジンは、必要とする程度に負荷要求が大きい場合にのみ始動する。要求が下限負荷閾値よりも大きい場合、これはこのような負荷に対してより効率的であるので、エンジンは始動する。
【0045】
任意選択的に、システムが電気モードで作動しているときに、電気エネルギー貯蔵デバイスにおける充電量が第1の所定量を下回る場合に、コントローラは、システムに電気モードからエンジンモードに切り替えるよう指示する。
【0046】
例示的な実施形態では、第1の所定量は、10%から50%の間、例えば、20%である。このことは、車両のドライブラインを駆動するのに十分な動力があることを保証する。更に、このような場合、コントローラはまた、エンジンに対して、モータジェネレータを介して電気エネルギー貯蔵デバイスを充電するよう指示することもでき、従って、システムに対する負荷要求は、例えば下方負荷要求を上回るまで増加する。
【0047】
任意選択的に、本システムは、後処理システムの動作温度を判定するように構成され、システムがエンジンモードで動作しているときに、動作温度が低下していると判定された場合及び/又は動作温度が所定の最低温度に達したと判定された場合に、コントローラは更に、エンジンに対して、電気エネルギーに変換されて電気エネルギー貯蔵デバイスに貯蔵するため機械的エネルギーをモータジェネレータに供給するよう指示するように構成される。
【0048】
例えば、システムの負荷要求がさほど大きくない場合には、後処理システムの動作温度は、低くなることができる。従って、更に電気エネルギー貯蔵デバイスを充電するようディーゼルエンジンに指示することにより、エンジンに対する負荷要求が大きくなり、従って、生じる排気ガスの温度は、やはり高くなる。これにより、後処理装置の動作温度が上昇する。
【0049】
任意選択的に、システムがエンジンモードで動作しているときに、動作温度が低下していると判定された場合及び/又は動作温度が所定の最低温度に達したと判定された場合で、且つ電気エネルギー貯蔵デバイスにおける充電量が第2の所定量を上回ると判定された場合に、コントローラは、システムに電気モードで作動するよう指示する。
【0050】
例示的な実施形態では、第2の所定量は、50%から100%の間、例えば、90%である。
【0051】
このようにして、後処理装置の動作温度が、最適温度を下回るまで低下し、従って、最適な動作条件外となっている可能性がある場合に、エンジンが停止して、エミッションが最小に保たれることが保証される。その間、車両は電気モードで走行する。
【0052】
任意選択的に、後処理装置の動作温度は、ディーゼルエンジンからの排気ガスの温度に基づいて判定される。
【0053】
任意選択的に、本システムは、システムに対する負荷要求を判定するように構成され、要求が上限負荷閾値を上回る場合に、コントローラは、システムに電気モード及びエンジンモードの両方で作動するよう指示する。
【0054】
このことは、高負荷要求を満たすのに十分な動力があることを保証する。例えば、上限負荷閾値は、エンジンのみで満たすことができる負荷要求を上回る。
【0055】
任意選択的に、本システムは、電気エネルギー貯蔵デバイスにおける充電量を判定するように構成され、システムがエンジンモードで作動しているときに、車両を停止する要求に対応する入力を受け取ると、充電量が第3の所定量を上回る場合に、コントローラは、エンジンにオフにするよう指示し、充電量が第3の所定量を下回る場合に、コントローラは、エンジンに対して、作動し続けて機械的エネルギーをモータジェネレータに供給するよう指示して、機械的エネルギーが電気エネルギーに変換されて電気エネルギー貯蔵デバイスに貯蔵される。
【0056】
例示的な実施形態では、第3の所定量は、50%から100%の間、例えば、90%である。
【0057】
このことは、車両が後の時間に再度始動したときに、電気エネルギー貯蔵デバイスが十分充電されていることを保証する。このことは、エミッションを最小に保ちながら、車両が動作できることを保証する。
【0058】
任意選択的に、モータジェネレータは、エンジンオーバーラン及び/又は車両制動から電気エネルギーを生成して、エネルギーを電気エネルギー貯蔵デバイスに伝達するように構成される。
【0059】
任意選択的に、コントローラは、車両を始動させる要求に対応する入力を受け取ると、エネルギーを後処理加熱要素及び/又はエンジン加熱要素に配向するように構成される。
【0060】
車両始動時、後処理装置及び/又はエンジンは、比較的低温である可能性が高く、従って、本システムは、これらの温度を即座に上昇させるように作用して、エンジンが可能な限り早く始動することを可能にすることができる。
【0061】
任意選択的に、本システムは、後処理装置の動作温度及び/又はディーゼルエンジンのエンジン温度を判定するように構成され、後処理システムの判定された動作温度及び/又は判定されたエンジン温度が、それぞれの所定の閾値を満たす場合に、コントローラは、ディーゼルエンジンにドライブラインを駆動するよう指示する。
【0062】
任意選択的に、後処理装置は、ディーゼル微粒子フィルタ(DPF)及び/又は選択的触媒還元(SCR)装置を備え、任意選択的に、後処理加熱要素は、ディーゼルエンジンからの排気ガスの加熱及び/又はSCR触媒の加熱により後処理装置の動作温度を上昇させるように構成される。
【0063】
任意選択的に、エンジンを加熱する段階は、冷却材、及び/又はオイル、及び/又はエンジンに誘導される空気を加熱する段階を含む。
【0064】
本発明の第2の態様は、本明細書に開示されるエンジンシステムを備えるオフハイウェイ車両を提供する。
【0065】
次に、本明細書で開示される実施形態について添付図面を参照して単に例証として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】本開示の実施形態によるオフハイウェイ車両を示す。
図2】本開示の実施形態によるエンジンシステムの概略図を示す。
図3図2のエンジンシステムの始動処理を示す。
図4】車両に対する負荷要求に応じた図2のエンジンシステムの動作を示す。
図5図2のエンジンシステムにおける電気モードからエンジンモードへの切り替え処理を示す。
図6】後処理装置の動作温度に応じた図2のエンジンシステムの動作を示す。
図7図2のエンジンシステムのスイッチを切る処理を示す。
【発明を実施するための形態】
【0067】
図1を参照すると、例えば掘削機などのオフハイウェイ車両10が示されており、このオフハイウェイ車両は、シャーシ12と、車両を制御することができるオペレータステーションを搭載する上部構造14と、を含む。上部構造14は、シャーシ12に取り付けられる。トラック16のペアの形態の地面係合輸送手段がシャーシ12に設けられ、機械が地面上で移動する。
【0068】
オフハイウェイ車両は、例えば、建設業で使用されるもの(例えば、バックホーローダ、旋回掘削機、伸縮式ハンドラ、フォークリフト、スキッドステアローダ、ダンプトラック、ブルドーザ、グレーダ)、農産業で使用されるもの(トラクタ、コンバインハーベスタ、自走式ハーベスタ、及び噴霧器)、採石業で使用されるもの(例えば、ショベルカー、骨材破砕機)、及び林業で使用されるもの(材木ハーベスタ、フェラーバンチャ)である。
【0069】
アーム組立体18が、車両上部構造14に取り付けられおり、このアーム組立体は、ブーム20の形態での第1のアーム部、ディッパ22の形態での第2のアーム部、及びバケット24の形態での地面係合機械を含む。ブーム20は、枢動部(図示せず)によって第1の端部20Aにてフレーム14に旋回可能に取り付けられる。ディッパ22は、枢動部28を介してブーム20の第2の端部20Bに旋回可能に取り付けられる。枢動部28は、水平方向に配向されている。バケットは、枢動部30を介して、ディッパ22の端部22Aから離れたディッパ22の端部22Bに旋回可能に取り付けられる。枢動部30は、水平方向に配向されている。
【0070】
第1の油圧ラム32の形態の第1の油圧アクチュエータは、上部構造14に旋回可能に取り付けられた第1の端部と、ブーム20の第1の端部と第2の端部との間でブームに旋回可能に取り付けられた第2の端部とを有する。第2の油圧ラム34の形態の第2の油圧アクチュエータは、ブーム20の第1の端部と第2の端部との間でブームに旋回可能に取り付けられた第1の端部と、ディッパ22の第1の端部に近接してこのディッパに取り付けられた第2の端部とを有する。第3の油圧ラム36の形態での第3の油圧アクチュエータは、ディッパ22の第1の端部に近接してディッパ22に旋回可能に取り付けられた第1の端部と、このディッパの第2の端部に近接してリンク機構38に旋回可能に取り付けられた第2の端部とを有する。リンク機構38は、それ自体が公知であり、単純に第3の油圧ラム36の伸縮運動を枢動部30の周りのバケット24の回転運動に変換する。
【0071】
第1の油圧ラム32の伸長により、ブーム20が上昇し、第1の油圧ラム32の収縮によりブーム20が下降する。第2のラム34の伸長により、ディッパ22が枢動部28の周りで時計回り方向(図1を見たとき)に旋回し、すなわち、ブームが「ディッパを入れる」方向に移動し、第2の油圧ラム34の後退により、ディッパ22が、図1を見たときに枢動部28の周りで反時計回り方向に、すなわち「ディッパを出す」方向に移動する。第3の油圧ラム36の伸長により、バケット24が枢動部30の周りで時計回り方向、すなわち「集まる」方向に移動し、第3の油圧ラム36の後退により、バケットが枢動部30の周りで反時計回り方向に、すなわち「放出」方向に移動する。
【0072】
図2を参照すると、オフハイウェイ車両10は、この車両10に動力を供給するように構成されたエンジンシステム40を含む。本エンジンシステムは、好適なトランスミッション及びドライブライン44を介してトラック16に動力を供給するように構成されたディーゼル内燃エンジン42を含む。エンジン42はまた、油圧ポンプ44に動力を供給するように構成され、この油圧ポンプは、オペレータ制御装置にリンクされ、油圧ラム32、34、36のうちの1又は2以上に油圧油を選択的に供給して作業アームを操作し、これによって作業動作を行うことが可能になる。
【0073】
エンジンシステムのエンジン42は、物理的に設計されたものであり、そのエンジン管理システムは、粒子状物質及びNOxエミッションを最小限にするようにプログラムされる。このタイプのエンジンは、「クリーン燃焼」エンジンと呼ばれる。
【0074】
このタイプのエンジンの例は、Dieselmax RTM及びEcomax RTMという商標で提供される、出願人の一連のエンジンである。これらのエンジンは、4気筒型で3.0l、4.4l、及び4.8lの容量を有し、6気筒型で7.2lの容量を有する。エンジンは、4ストロークであり、4又は6つのシリンダーを有し、55kWから212kWの出力範囲を有する。エンジンは、燃料の微粒子化、従って、燃焼を高めるように最適化されたインジェクタノズル特性を有するコモンレール式燃料噴射、並びに可変容量型ターボチャージャを利用し、これらは全て、エンジン排出ガスの低減に貢献する。
【0075】
エンジンシステム40はまた、システムからのエミッション(例えばNOx及び特定の物質)を低減するように構成された後処理装置46を含む。例示的な実施形態では、後処理装置46は、SCR及びDPF要素(図示せず)を含む。後処理装置46の動作温度を上昇させるように構成される後処理加熱要素48が設けられる。
【0076】
エンジンシステム40は、バッテリ50又は他の好適な電気エネルギー貯蔵デバイス(キャパシタ又はバッテリとキャパシタとの組み合わせなど)と、エンジンシステム40におけるエネルギー供給を制御するように構成されたコントローラ(図示せず)とを含む。具体的には、コントローラは、バッテリ50からのエネルギーを後処理加熱要素48に配向して後処理装置46の動作温度を上昇させるように構成される。
【0077】
例示的な実施形態では、後処理加熱要素48は、SCR触媒を加熱するための第1の加熱要素及び/又はエンジンからの排気管に設けられ且つエンジン42からの排気ガスを加熱するように構成された第2の加熱要素を備える。幾つかの実施形態では、SCRが最初に加熱され、続いて排気ガスを加熱することができる。幾つかの実施形態では、排気ガスは、エンジンが作動し始めるとき又はその直前に加熱される。
【0078】
例示的な実施形態では、SCR触媒は、Cu-ゼオライト触媒であり、本システムは、触媒の温度を250°Cから350°Cの範囲、例えば、300°Cの温度に上昇させるように構成される。触媒が加熱される温度は、使用される触媒の特定の材料に依存する。
【0079】
例示的な実施形態では、本システムは、SCRへのガス注入口温度が約150°Cから250°C、例えば、200°Cになるように排気ガスを加熱するように構成される。
【0080】
再度図2を参照すると、エンジンシステム40は、ディーゼルエンジン42を加熱するように構成されたエンジン加熱要素52を含む。例示的な実施形態では、ディーゼルエンジン42の加熱は、冷却材、及び/又は、オイル及び/又はエンジンに吸入される空気によって行われる。コントローラは、バッテリ50からのエネルギーをエンジン加熱要素52に配向して、ディーゼルエンジン42の温度を上昇させるように構成される。例示的な実施形態では、エンジンは、所定の温度に加熱される。例示的な実施形態では、オイル及び/又は冷却材は、40°Cから80°Cの範囲、例えば、60°Cの温度に加熱することができる。例えば、空気は、10°Cから40°Cの範囲、例えば、25°Cの温度に加熱することができる。このようにしてエンジンを加熱することは、エンジンがクリーンで安全なモードで始動できることを保証する。
【0081】
エンジンシステム40は、例えば、排気ガスの温度などの、後処理装置46の動作温度を判定し、ディーゼルエンジン42のエンジン温度を判定するように構成される。例えばエンジンシステム内の好適な位置に設けられた温度センサなどの任意の適切な手段が、これらの温度を判定するのに使用できる。
【0082】
また、エンジンシステム40は、好適なトランスミッション及び/又はドライブライン44を介してトラック16に動力を供給するように構成されたモータジェネレータ54も含む。この実施形態では、ドライブライン44は、上部構造14内のモータジェネレータ54及び/又はエンジン42によって機械的に駆動された油圧ポンプを備え、この油圧ポンプは、パイプ及び回転結合部(図示せず)を介してシャーシ12内の各トラック16を駆動するように構成された油圧モータに流体結合される。モータジェネレータ54及び/又はエンジン42はまた、油圧ポンプ44に動力を供給して、オペレータが、油圧ラム32、34、36に油圧油を送り込むことにより作業アームを操作し、それによって作業動作を行うことを可能にするように構成される。ドライブラインの油圧ポンプは、作業アームの操作を可能にするのに使用されるのと同じ油圧ポンプ44とすること、又は異なる油圧ポンプとすることができる。他の実施形態では、トランスミッションは、代替的に、ギアボックス及び/又はトルクコンバータのうちの1又は2以上を備えることができ、好適な機構のドライブシャフト及び差動装置を備えるドライブラインによって地面係合構造に接続することができる。
【0083】
従って、車両は、電気モードでモータジェネレータを介して、エンジンモードでディーゼルエンジン42を介して、又はこれら両方のモードの組み合わせによって駆動することができる。
【0084】
図2は、エンジンシステム40の概略図を示しており、この図において、矢印は、エネルギーがシステムの周りに供給されるのに利用可能な経路に対応している。
【0085】
例示的な実施形態では、掘削機10は、20トンから30トンの掘削機であり、ディーゼルエンジン42は、150kWのエンジンであり、モータジェネレータは、25kWのモータジェネレータであり、バッテリは、20kWhのバッテリである。本明細書に開示されるシステムは、掘削機がこの大きさの掘削機に予期される通常のデューティサイクルのもとで動作している場合に、このような例示的な実施形態で使用することができる。バッテリ50は、例えば、リチウムイオンバッテリ、リチウムイオンバッテリとキャパシタとの組み合わせ、又は他の任意の好適な媒体などの、任意の電気エネルギー貯蔵媒体とすることができる。代替実施形態では、エンジンシステム構成要素の任意の他の適切な組み合わせが使用できる。
【0086】
エンジンシステム40は、使用されているときに、以下のように動作する。
【0087】
図3を参照すると、オペレータが車両を始動させたときに、コントローラは、エンジンシステム40を始動させる要求に対応する入力を受け取る。これは図3のステップS100に示されている。この要求が受け取られると、コントローラは、バッテリ50における充電量が始動所定量を上回るか否かを判定する。これはステップS102に示されている。例えば、バッテリの始動所定充電量は、例えば、フル充電の20%から100%、例えば、50%とすることができる。バッテリ充電量が、始動所定量であるか又はそれを上回る場合に、エンジンシステム40は、電気モードで作動する。これはステップS104に示されている。従って、コントローラは、バッテリ50に、モータジェネレータ54にエネルギーを供給してドライブライン及び油圧ポンプ44を駆動するよう指示する。
【0088】
ステップS102において、バッテリ充電量が始動所定量を下回っていると判定された場合には、電気モードでエンジンシステム40を動作させるには充電が不十分である。この場合、ディーゼルエンジン42及び後処理装置46を加熱するのにシステムに必要とされる充電量は不十分である。従って、ほぼゼロエミッションが義務付けられる環境(例えば、都市のゼロエミッションゾーン)内の場合に、バッテリは、車両を使用できる前に交換又は充電される必要があり、車両からのエミッションが低減されるか又は無視できる程度であることが保証される必要がある。車両は、このような区域の外側に存在する場合に、非ゼロエミッションモードで動作することができる。車両は、マニュアルオーバーライドシステムを装着されて、非ゼロエミッションモードであるか否かを判定することができるか、又は、車両は、測位デバイス(GPSシステムなど)を装着されて、ゼロエミッション走行が特定の位置でのみ許容される動作モードであるようにジオフェンシングすることができる。このことは、図3において、「ゼロ」エミッションエンジンシステムモードが利用できないことを説明するステップS106に示されている。
【0089】
図4を参照すると、エンジンシステム40が電気モードで作動している場合に、コントローラは更に、車両に課せられている負荷要求を判定することができる(S108)。このステップにおいて、コントローラは、負荷要求が下限負荷閾値よりも大きいか否かを判定する。例示的な実施形態では、下限負荷閾値は20%である。負荷要求が下限負荷閾値よりも大きい場合に、エンジンシステムは、エンジンモードで動作する準備をする(S110)。このことは、以下で詳細に説明される。
【0090】
負荷要求が下限負荷閾値よりも小さい場合に、エンジンシステムは、電気モードで作動し続けることができる。このことは、バッテリ50で利用可能な充電量に依存するため、コントローラは、バッテリ充電量が第1の所定量を上回るか否かを判定する(S112)。例えば、第1の所定量は、フル充電の10%から50%、例えば20%とすることができる。
【0091】
バッテリ充電量が第1の所定量を上回る場合に、車両は、電気モードで作動し続けることになる(S114)。バッテリ充電量が第1の所定量を下回る場合に、コントローラは、エンジンシステム40にエンジンモードの準備をするよう指示する(S110)。このようにして、残りのバッテリ充電は、ディーゼルエンジン42及び後処理装置46が、それぞれの加熱要素を加熱するためのエネルギー供給によりエミッションを低減して又はほぼゼロエミッションで作動する準備をするのに使用される。更に、エンジン42を始動させることは、バッテリを充電することを可能にする。
【0092】
図5を参照すると、エンジンシステム40がエンジンモードで作動する準備をしているときに、後処理装置46及びディーゼルエンジン42は、最初に、エンジンが作動している間、車両からのエミッションが低減されるか又は無視できる程度であることを保証する温度に上がる。最初に、エンジンが加熱され(S118)、例えば、冷却材、オイル、及び/又は誘導された空気が加熱される。幾つかの実施形態では、システム40は、エンジンの温度を判定するためのセンサを備える。幾つかの実施形態では、システム40は、エンジン42を或る温度に上げるのに必要な推定加熱時間を計算する。
【0093】
エンジンが或る温度まで上がっているときに、後処理装置46が、同様に加熱される(S120)。例示的な実施形態では、システム40は、後処理システム46を或る温度に上げるのに必要な推定加熱時間を計算する。幾つかの実施形態では、システム40は、後処理システム46の温度を判定するためのセンサを備える。例示的な実施形態では、SCR触媒が加熱され、次にエンジンが始動する直前又はそのときに、排気ガスが同様に加熱される。
【0094】
エンジン42及び後処理装置46が或る温度に上がると(例えば、推定時間にわたって加熱されると)、コントローラは、ディーゼルエンジンに対して、ドライブライン及び油圧ポンプ44を始動させてそれらに動力を供給するよう指示する(S126)。
【0095】
ディーゼルエンジン42及び後処理装置46は、最適温度に加熱されるので、ディーゼルエンジンが作動しているときの車両からのエミッションは、極めて少なくなり、無視できる程度であり得る。
【0096】
エンジン及び後処理装置が加熱されて、エンジンが始動すると、コントローラは、バッテリに、後処理加熱要素及びエンジン加熱要素へのエネルギーの供給を停止するよう指示する。バッテリは、後処理加熱要素及び/又はエンジン加熱要素へのエネルギーの供給を徐々に停止することができる。状況によっては、後処理装置を加熱するためのエネルギーの供給は、エンジンを加熱するためのエネルギーの供給が停止する前又はその後に、停止することができる。このようにして、加熱は、後処理装置及び/又はエンジンの必要な温度が維持されるように、調整することができる。
【0097】
図6を参照すると、エンジンモードで作動している場合(S126)、コントローラは、後処理装置46の動作温度S128を監視し続ける(S128)。この動作温度が十分に高いままである(例えば、所定の閾値を上回る、及び/又はほぼ一定の温度である)間、エンジンシステムは、エンジンモードで作動し続ける(S130)。動作温度が低下しているとシステムによって判定された場合、及び/又は動作温度が所定の閾値を下回って低下していると判定された場合、コントローラは、バッテリの充電量を判定する(S132)。バッテリ充電量が、第2の所定量を上回る場合に、コントローラは、エンジンシステム40に、電気モードで作動するよう指示し、すなわち、コントローラは、バッテリ50に、モータジェネレータ54にエネルギーを供給してドライブライン及び油圧ポンプ44を駆動するよう指示する。バッテリ充電量が、第2の所定量を下回る場合には、コントローラは更に、ディーゼルエンジン42に、モータジェネレータ54を介してバッテリ50を充電するよう指示する(S134)。このことは、ディーゼルエンジン42の負荷を大きくし、従って、後処理装置46の動作温度を上昇させるように作用する。例示的な実施形態では、第2の所定量は、フル充電の50%から100%、例えば、90%とすることができる。また、本システムは、車両に対する負荷要求が上限負荷閾値を上回る場合に、コントローラが、電気モード及びエンジンモードの両方で作動して高負荷要求を満たすようシステムに指示できるように構成される。例えば、この上限負荷閾値は、エンジンのみで提供できる閾値を上回ることができる。
【0098】
幾つかの実施形態では、後処理装置46の動作温度は、ディーゼルエンジンからの排気ガスの温度に基づいて判定される。別の実施形態では、後処理装置の動作温度は、直接測定されるのではなく推定される。
【0099】
また、モータジェネレータ54は、エンジンオーバーラン及び/又は車両制動から電気エネルギーを生成して、このエネルギーをバッテリ50に伝達してバッテリを充電するように構成される。
【0100】
例示的な実施形態では、バッテリ50は更に、車両に取り付けられている間、外部充電器への接続(例えば、電気の幹線への接続)により充電すること、及び/又はバッテリは、車両から取り外されて、充電されたバッテリと交換することができる。充電切れになったバッテリは、車両から取り外して充電することができる。
【0101】
図7を参照すると、オペレータが車両のスイッチを切ったときに、コントローラは、エンジンシステムを停止する要求を受け取る(S136)。車両がエンジンモードで動作している場合に、コントローラは、バッテリ充電量が第3の所定量を上回るか否かを判定する(S138)。例えば、第3の所定量は、50%から100%の範囲、例えば、90%することができる。
【0102】
バッテリが十分に充電されている場合に、エンジンは停止する(S140)。バッテリが十分に充電されていない場合には、コントローラは、エンジンに作動し続けるよう指示し(S142)、バッテリを充電する必要があることにより、車両を停止するユーザ要求が拒否されたことをユーザに通知する(S144)。エンジンを作動させ続けることにより、コントローラは、エンジンに対して、モータジェネレータ54を介してバッテリ50を充電するよう指示することができる(S146)。このことは、バッテリが車両の次の使用に備えて十分に充電されることを保証する。従って、ステップS106に関して上述したシナリオは、通常の動作状態では通常生じないと予期される。このシナリオが生じる可能性のある場合の例は、車両が使用されていないときの長期間の後、バッテリが充電切れになった場合とすることができる。
【0103】
幾つかの実施形態では、緊急オーバーライド機構が提供される。この機構は、オペレータがエンジンを強制的に停止することを可能にする。
【0104】
本開示について1又は2以上の実施形態を参照して上記で説明したが、添付の特許請求の範囲で規定される本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更又は修正を行うことができることが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0105】
40 エンジンシステム
42 ディーゼルエンジン
44 ドライブライン
46 後処理装置
48 後処理加熱要素
50 電気エネルギー貯蔵デバイス
52 エンジン加熱要素
54 モータジェネレータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7