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特許7465084素子基板、液体吐出ヘッド、及び記録装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】素子基板、液体吐出ヘッド、及び記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20240403BHJP
   B41J 2/015 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
B41J2/14 611
B41J2/14 201
B41J2/015 101
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019228613
(22)【出願日】2019-12-18
(65)【公開番号】P2021094805
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】葛西 亮
(72)【発明者】
【氏名】根岸 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】平山 信之
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-94878(JP,A)
【文献】米国特許第6382773(US,B1)
【文献】特開2012-183838(JP,A)
【文献】特開2004-150897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数のノズルと、
前記複数のノズルに対応する複数の電気熱変換素子と、
前記複数の電気熱変換素子に対応する複数のドライバと、
入力された信号に基づいて前記複数の電気熱変換素子のいずれかを選択し、該選択された電気熱変換素子に対して対応するノズルから液体を吐出するために印加された第1の信号に続いて前記選択された電気熱変換素子に印加された第2の信号により加熱された前記選択された電気熱変換素子の温度を検知する検知回路と
前記検知回路により検知された電気熱変換素子の温度の時間変化に生じる特徴点に基づいて、前記選択された電気熱変換素子に対応するノズルから液体が吐出されたかどうかを判定する判定回路と、
前記検知回路を駆動するために定電流を供給する第1の定電流源とを有し、
前記複数のドライバに対して印加される第1の電源電圧より前記第1の定電流源を駆動する第2の電源電圧が低いことを特徴とする素子基板。
【請求項2】
前記複数のドライバに前記複数の電気熱変換素子がそれぞれ接続され、
前記複数のドライバが前記第1の電源電圧の側に接続され、前記複数の電気熱変換素子が接地電圧の側に接続されることを特徴とする請求項に記載の素子基板。
【請求項3】
前記検知回路は、前記複数の電気熱変換素子それぞれに備えられることを特徴とする請求項に記載の素子基板。
【請求項4】
前記複数の電気熱変換素子それぞれと前記接地電圧との間にソースフォロア構成のPMOSと、
前記検知回路により検知された電気熱変換素子の温度を示す信号を増幅する差動増幅器とをさらに有することを特徴とする請求項に記載の素子基板。
【請求項5】
前記複数の電気熱変換素子を複数のブロックに分割して時分割駆動するためにブロックを選択するブロック選択回路をさらに有し、
前記複数のドライバの数は、前記複数の電気熱変換素子のうち、互いに近傍に配置される複数の電気熱変換素子から形成される複数のグループの数に等しく、
前記複数のドライバそれぞれは、前記複数のグループそれぞれに属する電気熱変換素子を接続し、
前記検知回路は、前記複数のグループそれぞれに1つ備えられ、
前記ブロック選択回路は前記複数のグループそれぞれに属する複数の電気熱変換素子を時分割に順に選択することを特徴とする請求項に記載の素子基板。
【請求項6】
前記検知回路は、
前記入力された信号により温度を検知する電気熱変換素子を選択する第1の回路と、
前記第1の回路により選択された電気熱変換素子の温度をモニタする第2の回路とを有することを特徴とする請求項又はに記載の素子基板。
【請求項7】
液体を吐出する複数のノズルと、
前記複数のノズルに対応する複数の電気熱変換素子と、
前記複数の電気熱変換素子に対応する複数のドライバと、
入力された信号に基づいて前記複数の電気熱変換素子のいずれかを選択し、該選択された電気熱変換素子に対して対応するノズルから液体を吐出するために印加された第1の信号に続いて前記選択された電気熱変換素子に印加された第2の信号により加熱された前記選択された電気熱変換素子の温度を検知する検知回路と
前記検知回路により検知された電気熱変換素子の温度の時間変化に生じる特徴点に基づいて、前記選択された電気熱変換素子に対応するノズルから液体が吐出されたかどうかを判定する判定回路と、
第2の定電流源と、
前記第2の定電流源により供給される定電流に基づいて、前記複数のドライバを定電流駆動するためのカレントミラー回路とを有することを特徴とする素子基板。
【請求項8】
前記検知回路は、前記入力された信号により温度を検知する電気熱変換素子を選択する回路を含むことを特徴とする請求項に記載の素子基板。
【請求項9】
請求項乃至のいずれか1項に記載の素子基板を用いた液体吐出ヘッド。
【請求項10】
請求項に記載の液体吐出ヘッドを、前記液体をインクとし、該インクを吐出する記録ヘッドとして用い、記録媒体に記録を行う記録装置であって、
前記複数のドライバを駆動して対応するノズルからインクを吐出させるために前記第1の信号を生成して前記記録ヘッドに出力する第1の生成手段と、
前記検知回路が温度を検知する電気熱変換素子を選択するための信号を生成して前記記録ヘッドに出力する第2の生成手段と、
前記判定回路により判定された結果に基づいて、前記記録ヘッドによる記録を制御する制御手段とを有することを特徴とする記録装置。
【請求項11】
前記第1の生成手段は、前記第1の信号に続いて前記選択された電気熱変換素子の降温過程において前記特徴点が発生する前に前記選択された電気熱変換素子を加熱するために前記第2の信号を生成することを特徴とする請求項10に記載の記録装置。
【請求項12】
前記第1の信号と前記第2の信号の電流値は同じであり、前記第2の信号のパルス幅は前記第1の信号のパルス幅より短いことを特徴とする請求項11に記載の記録装置。
【請求項13】
前記第1の信号の電流値より前記第2の信号の電流値は小さく、前記第2の信号のパルス幅は相対的に長いことを特徴とする請求項11に記載の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は素子基板、液体吐出ヘッド、及び記録装置に関し、特に、例えば、素子基板を組み込んだ液体吐出ヘッドをインクジェット方式に従って記録を行うために記録ヘッドとして適用した記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータ、ファクシミリ等における情報出力装置として、所望される文字や画像等の情報を用紙やフィルム等のシート状の記録媒体に記録を行う記録装置が広く用いられている。このような記録装置の中にインク液滴をその記録媒体に吐出して文字や画像を記録するインクジェット記録装置がある。
【0003】
そのインクジェット記録装置(以下、記録装置)には、記録媒体を搬送しながら固定した記録媒体の幅と同じ記録幅をもつフルライン記録からインクを吐出するタイプや、記録ヘッドを搭載したキャリッジを往復走査しながらインク液滴を吐出するタイプがある。いずれにせよ、そのような記録ヘッドには複数の記録素子を実装したヘッド基板が内蔵されており、インク液滴を吐出させるエネルギーとして熱エネルギーを利用したものが良く知られている。そのような熱エネルギーを利用してインク吐出を行うヘッド基板には、記録素子としてインク液滴を吐出する吐出口に連通する部位に電気熱変換素子(ヒータ)を設け、電気熱変換素子に電流を供給して発熱させインクの膜沸騰によりインク液滴を吐出させる。
【0004】
このような記録ヘッドは多数の吐出口、電気熱変換素子(ヒータ)を高密度に配置することが容易であり、これにより高精細な記録画像を得ることができる。一方で、異物によるノズルの目詰まりや、インク供給経路内に混入した気泡やノズル表面の濡れ性の変化等により、全体又は一部のノズルで吐出不良が発生することがある。このような記録ヘッドでは、吐出不良の発生したノズルを特定して別のノズルからインクを吐出して補完記録を行うことや記録ヘッドの回復動作に反映させることが重要な課題となっている。
【0005】
この課題に対し、特許文献1では、ヘッド基板内において、記録素子各々に絶縁膜を介し薄膜抵抗体で形成される温度検知素子を設け、ノズル毎の温度情報を検知して温度変化の具合から吐出不良のノズルを検査する方法が提案されている。具体的には、ヒータ温度の降温過程において、急激な降温変化(以下、特徴点)があるか否かを検知し、その特徴点が発生すれば、正常吐出と判定する。なお、この特徴点は、吐出したインク液滴の後端がヒータ上に接触して記録素子の温度を冷却することで生じると考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5801612号公報
【文献】特開平4-211961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さてインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッド)は、ヘッド基板に大電流が流れる上に電源がある記録装置本体部から記録素子までの配線が非常に長いため大きなノイズが発生するため高感度の温度検知素子が必要とされる。また、近年の記録ヘッドはその記録幅が長くなっていることに伴いヘッド基板が大型化し、その結果として生産コストがアップしているため、コストダウンが要求されている。
【0008】
図11は特許文献1で提案されたヘッド基板に実装されたヒータ部の断面とヒータの温度変化をシミュレーションした結果を示す図である。図11において、(A)はヒータを加熱しセンサにより検知して得られたヒータの温度変化を示しており、(B)はヘッド基板に実装されたヒータの断面を示している。図11(A)において、縦軸は温度(℃)を示し、横軸は時間(μs)を示し、実線はヒータ中心の温度の時間変化を、破線はヒータの温度を検知するセンサの中心の温度変化を示している。また、図11(A)の上部にはヒータを駆動するために印加されるパルス信号を示している。
【0009】
図11(B)に示すように、ヒータ901の直下にはヒータ温度を検知するために薄膜抵抗体からなるセンサ(温度検知素子)902が設けられている。また、ヒータ901とセンサ902とは絶縁膜903により電気的には互いに絶縁されている。ヒータ901の上部には耐キャビテーション膜904が形成されている。
【0010】
このような構造において、図11(A)に示すように、ヒータ901にメインパルス908が印加され加熱されると泡906が発生し、その発泡力によりインク液滴を吐出するが、消泡過程でヒータ901は放熱しヒータ温度は徐々に降下する。完全に消泡すると、耐キャビテーション膜904の表面は泡906からインク907に代わるため、一気にインクへ放熱し、ヒータの温度変化には特徴点905(急峻な温度変化)が生じる。
【0011】
インクが正常吐出した場合と比べインク不吐の場合は、消泡タイミングが極めて遅くなるため、特徴点905が発生するタイミングと温度変化量に差が出る。その差を比較して吐出と不吐を検知する。特許文献1では特徴点905が生じる直前にポストパルス909を印加することにより、特徴点905におけるヒータ901の温度変化量をより顕著にすることで、吐出検知信号の振幅が大きくなるようにしている。
【0012】
特徴点905における温度変化をより高感度で検知するためには、泡906により近い場所で温度を検知するのが理想である。このため、特許文献1ではヒータ901の直下にセンサ902を設けている。図11(A)によると、特徴点905の周辺において、ヒータ中心に比べてセンサ中心は温度変化が鈍く、感度が低いことがわかる。また、ヒータ901の直下にセンサ902を形成するためにはヘッド基板を製造する半導体製造工程において工程の追加が必要となるため、これはコストアップの要因になる。
【0013】
一方、特許文献2が提案する構成ではヒータ自体を温度検知を行うセンサとしても使用しているため、熱応答がよい場所で温度検知が可能になる。しかし、このような回路では温度出力部分が分圧抵抗出力となり、その結果、出力信号電圧が高くなり、このような高電圧出力を実現するためには回路のコストがアップする要因になってしまう。さらに分圧比で信号出力が弱くなってしまう。このため、信号出力を上げ、出力電圧を下げるために抵抗分圧比を上げると、より多くの電流が流れるのでヒータが加熱され、ヒータ断線やヒータ劣化の原因となってしまう。
【0014】
本発明は上記従来例に鑑みてなされたもので、より安価な構成で高精度でヒータの温度を検知可能な素子基板、液体吐出ヘッド、及び記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために本発明の素子基板は次のような構成からなる。
【0016】
即ち、液体を吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルに対応する複数の電気熱変換素子と、前記複数の電気熱変換素子に対応する複数のドライバと、入力された信号に基づいて前記複数の電気熱変換素子のいずれかを選択し、該選択された電気熱変換素子に対して対応するノズルから液体を吐出するために印加された第1の信号に続いて前記選択された電気熱変換素子に印加された第2の信号により加熱された前記選択された電気熱変換素子の温度を検知する検知回路と、前記検知回路により検知された電気熱変換素子の温度の時間変化に生じる特徴点に基づいて、前記選択された電気熱変換素子に対応するノズルから液体が吐出されたかどうかを判定する判定回路と、前記検知回路を駆動するために定電流を供給する第1の定電流源とを有し、前記複数のドライバに対して印加される第1の電源電圧より前記第1の定電流源を駆動する第2の電源電圧が低いことを特徴とする。
【0017】
また本発明を別の側面から見れば、上記素子基板を用いた液体吐出ヘッドである。
【0018】
さらに本発明を別の側面から見れば、上記構成の液体吐出ヘッドを、前記液体をインクとし、該インクを吐出する記録ヘッドとして用い、記録媒体に記録を行う記録装置であって、前記複数のドライバを駆動して対応するノズルからインクを吐出させるために前記第1の信号を生成して前記記録ヘッドに出力する第1の生成手段と、前記検知回路が温度を検知する電気熱変換素子を選択するための信号を生成して前記記録ヘッドに出力する第2の生成手段と、前記判定回路により判定された結果に基づいて、前記記録ヘッドによる記録を制御する制御手段とを有することを特徴とする記録装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、専用のセンサを用いることがなく、より安価な構成で高精度でヒータの温度を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の代表的な実施例である記録ヘッドを備えた記録装置の構成概略を示す斜視図である。
図2図1に示した記録装置の制御構成を示すブロック図である。
図3】吐出検知回路を内蔵したヘッド基板の概要構成を示すブロック図である。
図4】実施例1に従うヒータ駆動/ヒータ温度出力回路の詳細な構成を示す等価回路図である。
図5図4に示したヒータ駆動/ヒータ温度出力回路のヒータ温度検知に係る信号のタイミングチャートである。
図6】実施例2に従うヒータ駆動/ヒータ温度出力回路のヒータ温度検知に係る信号のタイミングチャートである。
図7】実施例2に従うヒータ駆動/ヒータ温度出力回路のヒータ温度検知に係る信号のタイミングチャートである。
図8】実施例3に従うヒータ駆動/ヒータ温度出力回路の詳細な構成を示す等価回路図である。
図9】実施例4に従うヒータ駆動/ヒータ温度出力回路の詳細な構成を示す等価回路図である。
図10】実施例5に従うヒータ駆動/ヒータ温度出力回路の詳細な構成を示す等価回路図である。
図11】特許文献1で提案されたヘッド基板に実装されたヒータ部の断面とヒータの温度変化をシミュレーションした結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には、複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられても良い。さらに添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0022】
なお、この明細書において、「記録」(「プリント」という場合もある)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わない。また人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または媒体の加工を行う場合も表すものとする。
【0023】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
【0024】
さらに、「インク」(「液体」と言う場合もある)とは、上記「記録(プリント)」の定義と同様広く解釈されるべきものである。従って、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。
【0025】
またさらに、「ノズル」とは、特にことわらない限り吐出口ないしこれに連通する液路およびインク吐出に利用されるエネルギーを発生する素子を総括して言うものとする。
【0026】
以下に用いる記録ヘッド用の素子基板(ヘッド基板)とは、シリコン半導体からなる単なる基体を指し示すものではなく、各素子や配線等が設けられた構成を差し示すものである。
【0027】
さらに、基板上とは、単に素子基板(ヘッド基板)の上を指し示すだけでなく、素子基板の表面、表面近傍の素子基板内部側をも示すものである。また、本発明でいう「作り込み(built-in)」とは、別体の各素子を単に基体表面上に別体として配置することを指し示している言葉ではなく、各素子を半導体回路の製造工程等によって素子板上に一体的に形成、製造することを示すものである。
【0028】
<記録装置の概要説明(図1図2)>
図1は本発明の代表的な実施例であるインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッド)を用いて記録を行なう記録装置の構成の概要を示す外観斜視図である。
【0029】
図1に示すように、インクジェット記録装置(以下、記録装置)1はインクジェット方式に従ってインクを吐出して記録を行なうインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッド)3をキャリッジ2に搭載している。そして、キャリッジ2を矢印A方向に往復移動させて記録を行う。記録紙などの記録媒体Pを、給紙機構5を介して給紙し、記録位置まで搬送し、その記録位置において記録ヘッド3から記録媒体Pにインクを吐出することで記録を行なう。
【0030】
記録装置1のキャリッジ2には記録ヘッド3を搭載するのみならず、記録ヘッド3に供給するインクを貯留するインクタンク6を装着する。インクタンク6はキャリッジ2に対して着脱自在になっている。
【0031】
図1に示した記録装置1はカラー記録が可能であり、そのためにキャリッジ2にはマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロ(Y)、ブラック(K)のインクを夫々、収容した4つのインクカートリッジを搭載している。これら4つのインクカートリッジは夫々独立に着脱可能である。
【0032】
この実施例の記録ヘッド3は、熱エネルギーを利用してインクを吐出するインクジェット方式を採用している。このため、電気熱変換素子(ヒータ)を備えている。この電気熱変換素子は各吐出口のそれぞれに対応して設けられ、記録信号に応じて対応する電気熱変換素子にパルス電圧を印加することによって対応する吐出口からインクを吐出する。なお、記録装置は、上述したシリアルタイプの記録装置に限定するものではなく、記録媒体の幅方向に吐出口を配列した記録ヘッド(ラインヘッド)を記録媒体の搬送方向に配置するいわゆるフルラインタイプの記録装置にも適用できる。
【0033】
図2図1に示した記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【0034】
図2に示すように、コントローラ600は、MPU601、ROM602、特殊用途集積回路(ASIC)603、RAM604、システムバス605、A/D変換器606などで構成される。ここで、ROM602は後述する制御シーケンスに対応したプログラム、所要のテーブル、その他の固定データを格納する。ASIC603は、キャリッジモータM1の制御、搬送モータM2の制御、及び、記録ヘッド3の制御のための制御信号を生成する。RAM604は、画像データの展開領域やプログラム実行のための作業用領域等として用いられる。システムバス605は、MPU601、ASIC603、RAM604を相互に接続してデータの授受を行う。A/D変換器606は以下に説明するセンサ群からのアナログ信号を入力してA/D変換し、デジタル信号をMPU601に供給する。
【0035】
また、図2において、610は画像データの供給源となる図1に示したホストやMFPに対応するホスト装置である。ホスト装置610と記録装置1との間ではインタフェース(I/F)611を介して画像データ、コマンド、ステータス等をパケット通信により送受信する。このパケット通信については後で説明する。なお、インタフェース611としてUSBインタフェースをネットワークインタフェースとは別にさらに備え、ホストからシリアル転送されるビットデータやラスタデータを受信できるようにしても良い。
【0036】
さらに、620はスイッチ群であり、電源スイッチ621、プリントスイッチ622、回復スイッチ623などから構成される。
【0037】
630は装置状態を検出するためのセンサ群であり、位置センサ631、温度センサ632等から構成される。この実施例では、この他にもインク残量を検出するフォトセンサが設けられる。このフォトセンサの詳細について後述する。
【0038】
さらに、640はキャリッジ2を矢印A方向に往復走査させるためのキャリッジモータM1を駆動させるキャリッジモータドライバ、642は記録媒体Pを搬送するための搬送モータM2を駆動させる搬送モータドライバである。
【0039】
ASIC603は、記録ヘッド3による記録走査の際に、RAM604の記憶領域に直接アクセスしながら記録ヘッドに対して発熱素子(インク吐出用のヒータ)を駆動するためのデータを転送する。加えて、この記録装置には、ユーザインタフェースとしてLCDやLEDで構成される表示部が備えられている。
【0040】
記録ヘッド3には、複数のノズルや複数の電気熱変換素子(ヒータ)や複数の電気熱変換素子を駆動するための論理回路などが実装されたヘッド基板を内蔵している。このヘッド基板には、インク液滴を吐出する複数のノズルに対応して複数の電気熱変換素子が備えられ、これら電気熱変換素子を加熱することでインクに膜沸騰を生じさせインクを発泡させ、その発泡力によりインクを吐出する。また、ヘッド基板には複数の電気熱変換素子(ヒータ)のうちの所望の電気熱変換素子(ヒータ)を選択して、その温度を検知する構成を備えている。このため、ヘッド基板は選択され検知された電気熱変換素子の温度変化によってインクが正常に吐出されるか不吐となるかを検知することができる。
【0041】
図3は吐出検知回路を内蔵したヘッド基板の概要構成を示すブロック図である。
【0042】
ヘッド基板300は、一列に256個の電気熱変換素子(ヒータ)を配列したヒータ列を5列(A列、B列、C列、D列、E列)備えている。図3に示すように、ヒータ列毎にヒータ駆動/ヒータ温度出力回路301を備え、各ヒータ列256セグメント(seg)毎にヒータ温度出力回路309とモニタスイッチ302が設けられている。
【0043】
さらに、吐出/不吐判定回路303はA列~E列に対して1つ設けられており、モニタスイッチ302は1つのヒータ列のみをONして所望の列の所望のsegのヒータ温度電圧を出力し、対応するノズルの吐出/不吐を検知する。そして、各列のヒータには異なる色(例えば、Y,M,C,染料K,顔料K)のインクを供給して、フルカラー記録を実現するようにできる。
【0044】
各電気熱変換素子(ヒータ:発熱抵抗体)の抵抗値は温度依存性があり、駆動パルス信号の投入により、その温度は急激に上昇するが、その温度がピーク温度に達した後は下降し、その降温過程において、その抵抗値も変化する。従って、駆動された電気熱変換素子の電圧はその温度に依存して変化するので、その電圧値を監視することで、電気熱変換素子の温度を推定(検知)することができる。このような理由から、その監視される電圧はヒータ温度電圧とも言われる。
【0045】
ヒータ温度電圧を示す信号は演算器304に入力され、その信号から高周波ノイズを取り除き、時間に関して1階微分を行い特徴点の時間変化を波高値に変換する。微分後の信号波形はマスク回路305によって特徴点前後をマスクし比較器307によりDAC306から出力される閾値電圧と微分波形ピークを比較して吐出/不吐出を判定する。その後、デジタル化された判定データはレジスタ308から記録装置の本体部に転送される。一方、各ヒータ駆動/ヒータ温度出力回路301には記録装置の本体部よりヘッド基板の電気熱変換素子(ヒータ)駆動して記録を行うための駆動信号や、ヒータ温度検知のための制御信号などが入力される。
【0046】
以下、上記構成の記録装置の記録ヘッドに内蔵されるヘッド基板における電気熱変換素子の温度検知構成いくつかの実施例について説明する。
【実施例1】
【0047】
図4は実施例1に従うヒータ駆動/ヒータ温度出力回路301の詳細な構成を示す等価回路図である。
【0048】
図5図4に示したヒータ駆動/ヒータ温度出力回路301のヒータ温度検知に係る信号のタイミングチャートである。
【0049】
図4によれば、256個のヒータH1~256を駆動する256個のドライバD1~256はNDMOSのソースフォロア構成になっており、ドライバD1~256にヒータH1~256が直列接続されている。256個のドライバD1~D256に並列接続で供給される電源電圧は24~34Vの程度の電圧であり、ドライバD1~256はこの電圧を充分に満たすソースドレイン間耐圧を持っている。ソースフォロア構成ではソース電圧(ヒータH1~256の+側の電圧)はゲート電圧に追従し、ゲート電圧に対し、Vth+(2Id/β)1/2だけ低い電圧を出力する。そのため、ヒータH1~H256を駆動する時の電流による電圧降下によってドライバD1~256のドレイン側である電源電圧VHが変動してもヒータH1~256には一定の電圧が印加される。
【0050】
ヒータH1を駆動する場合、図5に示すように、ヒータ駆動期間TDRにおいてヒータ駆動信号HE1のパルス幅に応じた時間とパルス電圧に応じてヒータ電流がヒータH1に流れる。そして、メインパルス220によってインクは発泡しノズルから吐出する。その後、泡が消泡し特徴点が生じる直前に発泡を生じさせない程度のポストパルス221を印加して再びヒータ温度を上げることで特徴点の温度変化をより強調する。
【0051】
そして、温度モニタ期間TMNではスイッチ信号sw1がONとなり、所望の1セグメント(seg)のみ(この場合はヒータH1)、電流スイッチ105、モニタスイッチ106がONになる。この時、定電流源107から温度電圧を出力するための電流が電流スイッチ105を通ってヒータH1に流れる。同時に、モニタスイッチ106を通り、温度電圧はバッファアンプ108に入力され、温度電圧を増幅した出力信号outが出力される。バッファアンプ108の入力はハイインピーダンス(HiZ)になっているため、定電流源107からの電流はすべてのヒータH1~256に供給される。
【0052】
この実施例ではヒータH1~256の抵抗値は正の温度特性を持っており、加熱により出力信号outの電圧は上昇し放熱により降下する。定電流源107とバッファアンプ108の電源電圧VDDはドライバD1~256に印加される電源電圧VHよりも小さい電圧であり、その電圧はおよそ5~3V程度である。電圧が低いことでこれらの回路を小型化することが可能になり、その結果、生産コストの低減が図られる。このように回路を低電圧動作が可能に構成できるのは電源電圧VHとヒータH1~256の間にドライバD1~256が配置されており、温度モニタ期間TMNに高電圧から遮断することができるためである。定電流源107はバッファアンプ108の入出力レンジに対して信号出力が最大化できるような適切な電流値を選択して出力する。
【0053】
また、図4に示唆されているように、電流スイッチ105とモニタスイッチ106は高耐圧のNMOS又はNDMOSで構成される。ヒータ駆動期間TDRでは、ヒータH1~256の+側の電圧は電源電圧VHと同等の高電圧が印加される。そのため、ドライバD1~256と同様、電源電圧VHである24~34Vに耐える充分な耐圧を持ったトランジスタが必要になる。そのため、ドライバD1~D256と同じNDMOSを使用してもよい。これにより、ヒータ駆動期間TDRにおいて低耐圧素子で構成された定電流源107やバッファアンプ108を高電圧から遮断できる。電流スイッチ105とモニタスイッチ106のゲート電圧は電源電圧VDDで制御され、スイッチ信号sw1~256がONとなる時にはそのゲートに3~5V程度の電圧が印加される。
【0054】
さらに、電流スイッチ105とモニタスイッチ106のヒータ側のノードをドレインに、定電流回路107とバッファアンプ108側をソースにする。このような構成により、仮にヒータ駆動期間TDRに回路誤動作によりスイッチ信号sw1~256がONになっても、ソースフォロア構成になるため、定電流回路107とバッファアンプ108側にはゲート電圧であるVDD以上の電圧が印加されることはない。これにより、回路は高電圧から保護される。このように、電流スイッチ105とモニタスイッチ106をCMOSスイッチ構成にせずNMOSもしくはDMOSだけで構成することによって回路を小型化できるだけではなく、回路の安全性も向上させている。
【0055】
従って以上説明した実施例に従えば、温度センサを追加することなく高感度にヒータの温度を検知し、低い電源電圧で温度検知回路を構成することで、ヘッド基板のコスト低減と高精度な吐出検知を両立させることができる。
【0056】
なお、上述した実施例ではドライバD1~256をNDMOSのソースフォロア構成としたがPDMOSで構成しても良い。その場合、PDMOSはソース接地構成になるため、前述したようなヒータH1~256の電圧を一定化制御するような機能は失われ、スイッチとしての機能となる。また、ヒータ駆動信号HE1~256は反転信号(Loで駆動)となる。しかしながら、ドライバD1~256の構成が変わったとしても、ヒータ温度を検知し出力する回路を高電圧から遮断した状態でヒータH1~256の温度をモニタする目的が果たされれば不都合は生じない。
【実施例2】
【0057】
ここでは実施例1に示したヒータ駆動/ヒータ温度出力回路301を用いて実施例1とは異なるヒータ温度検知の例について説明する。
【0058】
図6図7は実施例2に従うヒータ駆動/ヒータ温度出力回路301のヒータ温度検知に係る信号のタイミングチャートである。なお、図6図7においても、図5で言及したのと同じ信号を用いるので、これらの信号の詳細についての説明は省略する。
【0059】
図5によれば、実施例1ではメインパルス220とポストパルス221で流れるヒータ電流の波高値(電流値)が等しく、ホストパルス221のパルス幅がメインパルス220のパルス幅より短い。これに対して、ここでは、図6に示すように、メインパルス401とポストパルス402の電流値が異なり、ポストパルス402での電流値が実施例1(図5)で説明したポストパルス221の電流値よりも小さく、パルス幅が相対的に長い。そもそも、メインパルスはインクの膜沸騰が目的のため高い熱流束が必要であるが、ポストパルスはインク加熱が目的であるため、衝撃的な加熱よりもゆっくり長い時間加熱するほうが熱を広く均等ヒータに伝えることができ適している。これにより、特徴点におけるヒータの温度変動をより急峻にすることが可能となる。このような駆動はドライバD1~256をNDMOSソースフォロア構成にして、そのゲートに印加する電圧振幅を図6に示すヒータ駆動信号HE1のように制御することによって可能となる。
【0060】
また、図5図6に示した駆動例はポストパルスをヒータ駆動信号HE1により印加する例であるが、ヒータをゆっくり長い時間加熱する方がより適しているなら、定電流源107からポストパルスを印加しても良い。
【0061】
図7は定電流源107でポストパルスを印加する例を示した図である。
【0062】
図7によれば、ヒータ駆動信号HE1によりメインパルス501を印加してインクを吐出し、特徴点が発生する前に定電流源107より大きな電流を供給してヒータD1を加熱する。そして、特徴点が発生する直前にその電流供給を低下させて温度電圧を出力する。
【0063】
ここで、図6図7の駆動例を比較すると、図6の構成ではポストパルス402によりヒータD1の発熱が絞られる分ドライバD1が発熱する欠点はあるが、図7の構成よりも高い熱をヒータD1に印加できる。図7の構成は図6に示した駆動例よりも消費電力は小さく加熱熱量も小さくなるが、低い電源電圧で回路を駆動させる構成なので回路応答性が良く、図7に示すように特徴点の発生より直前まで加熱が可能である。
【0064】
従って以上説明した実施例に従えば、実施例1を比べてポストパルスの駆動法を変化させることで、ヒータ加熱をより適切に行ったり、回路応答性を改善して、吐出検知の精度を上げることが可能になる。
【実施例3】
【0065】
図8は実施例3に従うヒータ駆動/ヒータ温度出力回路301の詳細な構成を示す等価回路図である。なお、図8において、既に図4を参照して説明したのと同じ構成要素や信号には同じ参照番号や参照記号を付し、その説明は省略する。
【0066】
図8図4とを比較すると分かるように、図4に示した例ではソースフォロア構成のドライバD1~256が電源電圧VH側に設けられていたが、図8に示す例は接地電圧GNDH側にもソースフォロア構成のPMOS203が設けられている。そして、そのPMOSのゲートには制御電圧VCNTLが印加されており、ヒータ駆動時にドレイン電圧は制御電圧VCNTLに対して(2Id/β)1/2だけ上乗せされた電圧に制御される。そのため、図8に示す構成では、電源電圧VHと接地電圧GNDHの両側の電圧が変動してもヒータH1~256の両側の電圧が一定に保たれる。従って、ヒータ駆動による電圧変動に対してもヒータ電圧を一定化でき、ヒータ駆動信号HE1~256のパルス幅変調も不要になるため、より安定なインク吐出が可能となる。また、PMOS203には高電圧が印加されることはないので、低耐圧素子であるPMOSで構成することが可能であるが、高耐圧素子であるPDMOSで構成しても良い。
【0067】
なお、吐出検知動作に関しては、図8に示す回路構成でも、実施例1、実施例2において図5図7を用いて説明したのと同様の駆動制御が可能である。ただし、温度モニタ期間TMNにおいて、定電流を流すとヒータH1~256の接地電圧GNDH側の電圧はPMOS203のソースフォロア動作によって電圧が上がるので、図4の構成と比較してヒータ電圧のレンジは狭くなる。そこで、図8では単純なバッファアンプ108で構成していた部分を差動増幅器201の構成にしてヒータH1~256の両側の電圧の差動を取り、レンジを狭くなった分だけ信号増幅して信号出力レンジを最大化するようにしている。
【0068】
従って以上説明した実施例に従えば、ヒータの両側をソースフォロア構成とした場合においても、実施例1、2と同様の効果を得ることが可能である。また、この実施例の構成によりヒータH1~256の両側の電圧が一定に保たれるという利点がある。
【実施例4】
【0069】
図9は実施例4に従うヒータ駆動/ヒータ温度出力回路301の詳細な構成を示す等価回路図である。なお、図9において、既に図4を参照して説明したのと同じ構成要素や信号には同じ参照番号や参照記号を付し、その説明は省略する。
【0070】
図9図4を比較すると分かるように、この実施例では16seg分、即ち、16個のヒータに対してソースフォロアのドライバを1つ接続する構成としている。従って、256seg分、即ち、256個のヒータH1~256に対して16個のドライバD1~16を接続し、これらのヒータを時分割駆動する構成となっている。このような回路構成とすることで、レイアウト面積の大きいソースフォロア構成を複数のヒータ(この実施例では16個)で兼用することで、比較的小さなレイアウト面積でヒータ電圧を一定化する制御を行う回路を実現できる。そして、256個のヒータH1~256の接地電圧GNDH側にはソース接地のブロック選択ドライバ701が各ヒータに接続されている。ブロック選択ドライバ701は時分割駆動に応じて各ブロック駆動期間で順次ONされる。そのため、16個のブロック選択ドライバ(ブロック選択回路)には16個のブロック選択信号be1~16が入力される構成となっている。
【0071】
なお、256個のヒータH1~256のうち、近傍に配置される16個ずつのヒータが1つのグループを構成し、合計で16個のグループが形成される。そして、各グループから1つのヒータが時分割的に選択され、合計で16個のヒータからなるブロックが形成され、各ブロックに属する最大16個のヒータが時分割に駆動される。このような構成のため、図9に示すように、16個のドライバH1~16があれば良い。
【0072】
このような構成では、電流スイッチ105とモニタスイッチ106を16seg毎(即ち、16個のヒータ毎)に1つ設ければ良いので、図4の構成と比較して小さなレイアウト面積で吐出検知を実現することができる。加えてヘッド基板のコストダウンも図られることになる。またさらに1つのバッファアンプ108に並列接続されるモニタスイッチ106の数も16個と少ないので寄生容量の影響も小さく、図4の構成と比較して周波数特性も良くより感度の良い温度電圧波形を得ることができる。
【0073】
一方、ブロック選択ドライバ701を設けたために、温度電圧波形にこのドライバ分の電圧が重畳されて信号電圧レンジを制限してしまう。ただし、ブロック選択ドライバはソース接地でありヒータ抵抗に比べればその抵抗も小さいので、その影響は大きくはない。また、より高精度に温度信号を取り出したい場合は、バッファアンプの構成を図8に示したように差動増幅器601のような構成としても良い。
【0074】
従って以上説明した実施例に従えば、実施例1、2で示したように吐出検知を実現できるとともに、ヘッド基板の面積をより小さくすることができるので、さらなるコストダウンに貢献できる。
【実施例5】
【0075】
図10は実施例5に従うヒータ駆動/ヒータ温度出力回路301の詳細な構成を示す等価回路図である。なお、図10において、既に図4を参照して説明したのと同じ構成要素や信号には同じ参照番号や参照記号を付し、その説明は省略する。
【0076】
上述した実施例の回路構成はいずれもインク吐出のためにヒータを電圧駆動、吐出検知のためにヒータを電流駆動とする構成であったが、ここではいずれも定電流駆動を行う構成とする。
【0077】
図10に示す構成によれば、ヒータH1~256に供給する電流は可変の定電流源801で決められる。ここでの電流がミラー元PMOS802に流れ、ミラー後PMOS803にミラーされ、PMOSのドライバD1~S256はヒータ駆動信号HE1~256に応じたパルス幅でONされ、ヒータH1~256に所望の定電流を供給する。ここでは、PMOS802とPMOS803とで構成される1段構成のカレントミラー回路を例示したが、カスケード構成のカレントミラー回路を用いてもよい。
【0078】
図10に示した回路構成を用いると、インク吐出のヒータ駆動に関して電源電圧VH、接地電圧GNDHの電圧変動によらず常に一定の電流で駆動できる。これにより、ヒータ駆動信号HE1~256のパルス幅変調(PWM)制御も不要になるので、より安定したインク吐出が可能となる。
【0079】
さらに吐出検知動作に関しては他の実施例の構成と比べ、温度検知用の定電流源107が削減され、さらに電流スイッチ105も削減することができるので、ヘッド基板の生産コストをさらに低減することが可能である。また、ヒータH1~256に供給する電流も定電流源801では可変であるため、図5図7を参照して説明したヒータ駆動制御も容易に実現できる。また、図8図9に示したようにヒータH1~256の接地電圧GNDH側に何の素子もないので、図4に示した回路構成と同様で電圧レンジを広くとることができるため、より高精度に吐出検知が可能となる。
【0080】
以上説明した実施例において吐出/不吐出を判定する判定回路を基板上に設けられていたが、判定回路を記録装置の本体部に設けてヒータ温度出力回路の出力をそのまま本体部へ出力する構成でもよい。
【0081】
なお、以上説明した実施例では、インクを吐出する記録ヘッドとその記録装置を例として説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、プリンタ、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリンタ部を有するワードプロセッサなどの装置、さらには各種処理装置と複合的に組み合わせた産業記録装置に適用可能である。また本発明は、例えば、バイオチップ作製や電子回路印刷やカラーフィルタ製造などの用途としても用いることができる。
【0082】
以上の実施例で説明した記録ヘッドは、一般的には、液体吐出ヘッドということもできる。また、そのヘッドから吐出するのはインクに限定されるものではなく、一般的に、液体ということもできる。
【0083】
本発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0084】
1 記録装置、2 キャリッジ、3 記録ヘッド、6 インクタンク、
105 電流スイッチ、106 モニタスイッチ、107 定電流源、
108 バッファアンプ、D1~D256 ドライバ、H1~256 ヒータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図11