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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】害虫忌避組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 55/10 20060101AFI20240403BHJP
   A01N 25/04 20060101ALI20240403BHJP
   A01N 27/00 20060101ALI20240403BHJP
   A01N 31/14 20060101ALI20240403BHJP
   A01N 37/02 20060101ALI20240403BHJP
   A01P 17/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
A01N55/10 500
A01N25/04 101
A01N27/00
A01N31/14
A01N37/02
A01P17/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019228899
(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公開番号】P2020109078
(43)【公開日】2020-07-16
【審査請求日】2022-09-05
(31)【優先権主張番号】P 2018248693
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 浩之
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-57570(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0099679(US,A1)
【文献】特開昭59-39808(JP,A)
【文献】特開昭59-39809(JP,A)
【文献】特開2006-36759(JP,A)
【文献】国際公開第01/015658(WO,A1)
【文献】特表2020-514322(JP,A)
【文献】特開2012-118393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 55/10
A01N 25/04
A01N 27/00
A01N 31/14
A01N 37/02
A01P 17/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)及び(B)を含有する、害虫忌避組成物。
(A)25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールからなる群から選ばれる1種以上の不揮発性液状油性成分:40質量%以上99.5質量%以下
(B)シリコーン構造含有ポリマー、及びビニル系ポリマーからなる群から選ばれる1種以上である皮膜形成性ポリマー:0.5質量%以上15質量%以下
【請求項2】
下記成分(A)及び(B)を含有する、害虫停留抑制組成物。
(A)25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による25℃における粘度が400mPa・s以下である、シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールからなる群から選ばれる1種以上の不揮発性液状油性成分:40質量%以上99.5質量%以下
(B)シリコーン構造含有ポリマー、及びビニル系ポリマーからなる群から選ばれる1種以上である皮膜形成性ポリマー:0.5質量%以上15質量%以下
【請求項3】
成分(A)がシリコーン油、エステル油、エーテル油、及び炭化水素油からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
さらに成分(C)として水を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫忌避組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
害虫、例えば、蚊、ハエ等の飛翔害虫は、人等の動物に病原体を媒介して感染症を引き起こしたり、皮膚炎を引き起こしたりする要因となっている。特に、一部の蚊は、デング熱、ジカ熱、黄熱病、脳炎、マラリア等の病原体を媒介することから、衛生学的に非常に有害な昆虫である。
従来、このような飛翔害虫から身を守るために、殺虫剤を散布したり、皮膚表面に忌避剤を塗布する方法が汎用されており、代表的な忌避剤として、DEET(N,N-ジエチルトルアミド)が一般的に使用されている。
【0003】
蚊等の害虫は、動物の体温を感知する温熱受容体、体臭等の揮発性物質を感知する嗅覚受容体、二酸化炭素を感知する二酸化炭素受容体等の化学受容システムを保有しており、これにより動物を探知するが、DEETは、かかる害虫が有する化学受容システムに変調を与えて害虫の認知感覚を無力化することにより、害虫を忌避する。
しかし、DEETには不快臭があり、また、十分な忌避持続効果を発揮するためには一定量以上の配合が必要となる。さらに、人によってはアレルギーや肌荒れを引き起こすことが知られており、幼児や皮膚の敏感な人に対しては使用量や使用回数が制限されるという問題がある。
【0004】
そこで、忌避成分として天然精油の利用が検討されている。シトロネラ油、レモンユーカリ油、レモングラス油、オレンジ油、カシア油等の天然精油はキャンドルやアロマローションにも使用されており、人体への安全性は高い。しかし、それらの害虫に対する忌避効果は十分ではなく、その実用性に問題がある。
【0005】
その他、従来から、害虫用の忌避剤や忌避組成物については、種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、フッ素・ポリエーテル共変性シリコーン及び紫外線防御成分を配合した皮膚保護剤に、DEET等の昆虫忌避剤を配合することが記載されている。
特許文献2には、カラン-3,4-ジオールと粘度が25℃において5000cSt以下であるシリコーンオイルとを含有する害虫忌避剤が開示され、また、特許文献3には、シリコーン系化合物を有効成分として含有することを特徴とする防虫剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平8-59447号公報
【文献】特開平8-81307号公報
【文献】特開2006-36759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
害虫忌避剤のうち、皮膚に施用されるものについては、初期の害虫忌避効果のみならず忌避効果の持続性に優れることや、人体に安全であること、さらには、汗などの水分に対して容易に洗い流されてしまわないように耐水性も備えていることが望まれる。しかし、現在利用できる主要な害虫忌避剤は、これらの要望を十分に満たしていないのが現状である。
前述したように、特許文献1及び特許文献2に記載されるDEET等の既存の害虫忌避剤は、人によってはアレルギーや肌荒れを引き起こすことが知られており、また、国によっては、幼児の使用量に制限が設けられている。このような状況から、より人体への安全性が高く、幼児や皮膚の敏感な人が安心して使用できる忌避剤が求められている。
また、人の皮膚に塗布して用いるタイプの忌避組成物においては、特許文献3に記載の防虫剤とは異なり、初期の害虫忌避効果のみならず忌避効果の持続性に優れることや、該組成物を皮膚に塗布した後、水分に接触させたとしても害虫忌避効果が持続する程度の耐水性といった性能も備えていることが望まれる。
しかし、現状では、害虫忌避持続効果と、上記耐水性とを両立し、皮膚への施用に適した組成物は見出されていなかった。
【0008】
本発明は、害虫、特に飛翔害虫に対する忌避持続効果に優れ、安全で、かつ優れた耐水性を有し、皮膚への施用に適した害虫忌避組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討の結果、特定の表面張力と粘度を有する不揮発性の液状油性成分、及び皮膜形成性ポリマーを含有する害虫忌避組成物が、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、次の[1]~[8]を提供する。
[1]下記成分(A)及び(B)を含有する、害虫忌避組成物又は害虫停留抑制組成物。
(A)25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールからなる群から選ばれる1種以上の不揮発性液状油性成分:40質量%以上99.5質量%以下
(B)皮膜形成性ポリマー:0.5質量%以上15質量%以下
[2]下記成分(A)~(C)を含有し、成分(A)以外の害虫忌避剤の含有量が15質量%以下である、油中水型の蚊忌避組成物又は蚊停留抑制組成物。
(A)25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールからなる群から選ばれる1種以上の不揮発性液状油性成分:40質量%以上90質量%以下
(B)皮膜形成性ポリマー:0.5質量%以上15質量%以下
(C)水:5質量%以上45質量%以下
[3]下記成分(A)~(C)を含有し、成分(A)以外の害虫忌避剤の含有量が15質量%以下である、油中水型の蚊忌避組成物又は蚊停留抑制組成物。
(A)25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールからなる群から選ばれる1種以上の不揮発性液状油性成分:40質量%以上90質量%以下
(B)シリコーン変性ポリノルボルネン、シリコーン変性プルラン、トリメチルシロキシケイ酸、シリコーン構造含有アクリル系ポリマー、及び、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる群から選ばれる1種以上の皮膜形成性ポリマー:0.5質量%以上15質量%以下
(C)水:5質量%以上45質量%以下
[4]下記成分(A)~(C)を含有し、成分(A)と成分(B)との質量比[(A)/(B)]が15以上60以下であり、成分(A)以外の害虫忌避剤の含有量が15質量%以下である、油中水型の蚊忌避組成物又は蚊停留抑制組成物。
(A)25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、シリコーン油、エステル油、エーテル油、及び炭化水素油からなる群から選ばれる1種以上の不揮発性液状油性成分:50質量%以上80質量%以下
(B)シリコーン変性ポリノルボルネン、シリコーン変性プルラン、トリメチルシロキシケイ酸、シリコーン構造含有アクリル系ポリマー、及び、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる群から選ばれる1種以上の皮膜形成性ポリマー:0.5質量%以上15質量%以下
(C)水:5質量%以上45質量%以下
[5]下記成分(A)~(D)を含有し、成分(A)と成分(B)との質量比[(A)/(B)]が15以上60以下であり、成分(A)と成分(C)との質量比[(A)/(C)]が0.2以上15以下であり、成分(A)以外の害虫忌避剤の含有量が15質量%以下である、油中水型の蚊忌避組成物又は蚊停留抑制組成物。
(A)25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、シリコーン油、エステル油、エーテル油、及び炭化水素油からなる群から選ばれる1種以上の不揮発性液状油性成分:50質量%以上80質量%以下
(B)シリコーン変性ポリノルボルネン、シリコーン変性プルラン、トリメチルシロキシケイ酸、シリコーン構造含有アクリル系ポリマー、及び、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる群から選ばれる1種以上の皮膜形成性ポリマー:0.5質量%以上15質量%以下
(C)水:10質量%以上30質量%以下
(D)界面活性剤:0.05質量%以上5質量%以下
[6]成分(D)がHLB8以下のノニオン界面活性剤である、[5]の組成物。
[7][1]~[6]のいずれか1の組成物を人の皮膚表面に塗布する、害虫の忌避方法。
[8][1]~[6]のいずれか1の組成物を害虫の肢に付着させることによって、害虫が人の皮膚に停留することを防ぐ、害虫の停留抑制方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、害虫、特に飛翔害虫に対する忌避持続効果に優れ、安全で、かつ優れた耐水性を有し、皮膚への施用に適した害虫忌避組成物、害虫停留抑制組成物、害虫の忌避方法、及び害虫の停留抑制方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[害虫忌避組成物、害虫停留抑制組成物]
本発明の害虫忌避組成物及び害虫停留抑制組成物(以下、これらを総称して「本発明の組成物」ともいう)は、下記成分(A)及び(B)を含有する組成物である。
(A)25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールからなる群から選ばれる1種以上の不揮発性液状油性成分:40質量%以上99.5質量%以下
(B)皮膜形成性ポリマー:0.5質量%以上15質量%以下
【0012】
本発明の組成物は特定量の成分(A)及び(B)を含有し、害虫、特に飛翔害虫に対する忌避持続効果に優れ、安全で、かつ優れた耐水性を有し、皮膚への施用に適した組成物である。
【0013】
本発明において「害虫に対する忌避効果」とは、害虫が対象物へ接触しても停留せずに直ぐに離れていくことを意味し、本発明の組成物は接触忌避組成物に該当する。すなわち、本発明における害虫忌避効果は、害虫を対象物へ寄せ付けないもの、あるいは害虫が対象物へ寄り付かないもの等のように対象物へ非接触で忌避する忌避剤ないし防虫剤や、害虫に対して殺虫力を有し、害虫を駆除する殺虫剤とは異なる。
本発明の組成物は、それらが塗布又は付着された対象物に蚊等の害虫が降着しても、害虫がその場に停留せず、直ぐに立ち去ることにより、害虫を忌避する効果を奏するものである。具体的には、蚊等の害虫が人等の動物の皮膚に降着した後、刺針を差し込むほどの時間、具体的には1秒間以上、皮膚表面の所定領域内に停留させないという停留抑制効果を有する。かかる効果は、従来にない害虫忌避原理に基づくものであり、しかも肌荒れ等の副作用がなく安全である。したがって本発明の組成物は、害虫停留抑制組成物として用いることができる。
本発明において「害虫に対する忌避持続効果」とは、本発明の組成物を対象物に塗布後、時間が経過しても上記忌避効果が持続することを意味する。
なお、以降の記載において、特に飛翔害虫に対する忌避持続効果を単に「忌避持続効果」と表記し、また、組成物を皮膚に塗布し、次いで水や汗等の水分に接触させた後の忌避効果の持続性を単に「耐水性」と表記する。
【0014】
本発明の組成物は、成分(A)として25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、(a)シリコーン油、(b)エステル油、(c)エーテル油、(d)炭化水素油、(e)脂肪族アルコール、及び(f)多価アルコールからなる群から選ばれる1種以上の不揮発性液状油性成分を含有する。成分(A)を含有することで、害虫、特に飛翔害虫に対する忌避効果に優れる。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。
本発明者らは、蚊等の飛翔害虫は、肢に濡れが生じた際に、降着面から生じる引力を避けるため、肢が濡れる表面への停留を避ける性質を有することを見出した。蚊等の飛翔害虫の肢は疎水性であるため、25℃における表面張力が40mN/m以下の液状油性成分であると飛翔害虫の肢と親和性が高くなり、また、粘度が400mPa・s以下の液状油性成分であると、飛翔害虫の肢が液状油性成分と触れた際、短時間で液状油性成分と飛翔害虫の肢との接触面積が十分に大きくなる。そのため、成分(A)が塗布又は付着された表面に飛翔害虫が降着すると、肢に濡れが生じ、その際、降着面から生じる引力を避け、降着地点に停留せずに飛び去ると考えられる。
なお、本発明における降着とは、蚊等の飛翔害虫が対象物に1秒未満の時間接触することを指す。また、本発明における停留とは、蚊等の飛翔害虫が対象物に1秒以上の時間接触しつづけることを指す。
【0015】
また本発明の組成物は、成分(A)に加え、さらに成分(B)を含有することで、成分(A)とも相まって皮膚表面に成分(A)の皮膜を長時間形成することが可能となり、これにより忌避持続効果を向上させつつ、耐水性を向上させることができたと考えられる。
【0016】
<成分(A):不揮発性液状油性成分>
本発明の組成物が含有する成分(A)は、25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、(a)シリコーン油、(b)エステル油、(c)エーテル油、(d)炭化水素油、(e)脂肪族アルコール、及び(f)多価アルコールからなる群から選ばれる1種以上の不揮発性液状油性成分である。
【0017】
成分(A)は、皮膚に施用し易くし、かつ、忌避持続効果を向上させる観点から、好ましくは20℃で液状であり、より好ましくは15℃で液状であり、さらに好ましくは10℃で液状である不揮発性油である。
なお、液状油性成分の「液状」とは、米国材料試験協会規格「ASTM D 4359-90:Standard Test Method for Determining Whether a Material is a Liquid or Solid」による液体-固体の判定試験で、液体に判定されるものを意味する。
成分(A)は、忌避持続効果を向上させる観点から、難水溶性又は非水溶性の成分であることが好ましく、具体的には、20℃における水100gに対する溶解量が、好ましくは1g以下、より好ましくは0.5g以下、さらに好ましくは0.1g以下であり、そして、よりさらに好ましくは実質0gである。
【0018】
本発明に用いる成分(A)の液状油性成分は、忌避持続効果を向上させる観点から、不揮発性の液状油性成分を用いる。ここで、本発明における不揮発性の液状油性成分とは、1気圧下、25℃、60分乾燥後の揮発率が、50%以下であるものをいい、好ましくは、1気圧下、25℃、120分乾燥後の揮発率が、50%以下であるものをいう。揮発率の評価は、ドイツ試験規格DIN53249に従って測定され、具体的には、下記の1~4の手順で行われる。
1.直径150mmの丸型ろ紙の重量(P(g))を測定する。
2.ピペットを用いて成分(A)0.3gのサンプルを丸型ろ紙に滴下し、直後にろ紙の重量(W(g))を測定する。
3.通気の無い中、25℃、5分間隔で、約0.001gの正確さによる重量測定で、ろ紙の重量を測定する。2を測定した後、60分経過後に測定したろ紙の重量をW60(g)とする。
4.計算式{((W-P)-(W60-P))/(W-P)}×100で導かれる値を揮発率(%)とする。
揮発率が低いほど、皮膚に塗布した際に、液状油性成分が長時間滞留するため、忌避持続効果が高いものとなる。
2種以上の液状油性成分を用いる場合、液状油性成分の揮発率とは、2種以上の液状油性成分の混合物としての揮発率を意味する。したがって当該混合物の揮発率が前記範囲となる限り、1気圧下、25℃で60分乾燥後の揮発率が50%超の液状油性成分を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
成分(A)の25℃における表面張力は、入手性の観点から、好ましくは15mN/m以上、より好ましくは17mN/m以上であり、そして、忌避持続効果を向上させる観点、及び耐水性を向上させる観点から、40mN/m以下、好ましくは30mN/m以下、より好ましくは28mN/m以下、さらに好ましくは25mN/m以下、よりさらに好ましくは23mN/m以下、よりさらに好ましくは21mN/m以下である。また、それ自体では25℃における表面張力が40mN/m超のものであったとしても、他の液状油性成分との混合物とすることで、表面張力を下げれば忌避持続効果を発現する。
成分(A)のB形回転粘度計による23℃における粘度は、揮発性を抑え、忌避持続効果を向上させる観点から、好ましくは1mPa・s以上であり、忌避持続効果を向上させる観点、及び皮膚に塗布した際の耐水性を向上させる観点から、400mPa・s以下であり、好ましくは300mPa・s以下、より好ましくは210mPa・s以下、さらに好ましくは100mPa・s以下、よりさらに好ましくは60mPa・s以下、よりさらに好ましくは40mPa・s以下、よりさらに好ましくは30mPa・s以下である。なお、粘度の異なる2種以上の液状油性成分を用いる場合は、これら液状油性成分の混合物としての粘度を意味する。
なお、成分(A)の表面張力、粘度は、実施例に記載の方法により測定される。
【0020】
(a)シリコーン油
シリコーン油としては、忌避持続効果を向上させる観点から、ジメチルポリシロキサン、ジメチコノール(末端にヒドロキシ基を有するジメチルポリシロキサン)、メチルフェニルポリシロキサン、及び変性シリコーンからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
変性シリコーンとしては、アミノ変性シリコーン(アミノ基を有するジメチルポリシロキサン)、ポリエーテル変性シリコーン、グリセリル変性シリコーン、アミノ誘導体シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、脂肪族アルコール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられる。
【0021】
シリコーン油の中では、忌避持続効果を向上させる観点、及び耐水性を向上させる観点から、ジメチルポリシロキサン、ジメチコノール、メチルフェニルポリシロキサン、及び変性シリコーンからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、ジメチルポリシロキサン、ジメチコノール、及びポリエーテル変性シリコーンからなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、ジメチルポリシロキサンがさらに好ましい。
【0022】
ジメチルポリシロキサンとしては、直鎖状ジメチルポリシロキサン及び環状ジメチルポリシロキサンからなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中では、忌避持続効果を向上させる観点、及び耐水性を向上させる観点から、直鎖状ジメチルポリシロキサンがより好ましい。
直鎖状ジメチルポリシロキサンの市販品例としては、信越化学工業(株)のKF-96シリーズ、東レ・ダウコーニング(株)のSH200Cシリーズ、「2-1184 Fluid」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社の「Silsoft DML」、「Element14 PDMS 5-JC」、「Element14 PDMS 10-JC」、「Element14 PDMS 20-JC」等が挙げられる。
【0023】
(b)エステル油
エステル油としては、忌避持続効果を向上させる観点、及び耐水性を向上させる観点から、下記一般式(1)~(3)のいずれかで表されるエステル油、及び下記一般式(4)で表されるジアルキルカーボネート化合物が好ましい。
【0024】
1-COO-R2 (1)
一般式(1)において、R1は、水酸基が置換していてもよく、炭素数7以上23以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、又は炭素数6以上24以下の芳香族炭化水素基を示し、R2は炭素数1以上22以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示す。
1がアルキル基の場合、忌避持続効果を向上させる観点、及び耐水性を向上させる観点から、炭素数は好ましくは7以上、より好ましくは9以上であり、そして、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは21以下、より好ましくは17以下である。また、R1が芳香族炭化水素基の場合、忌避持続効果を向上させる観点、及び耐水性を向上させる観点から、炭素数は好ましくは8以上、より好ましくは10以上であり、そして、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは22以下、より好ましくは20以下である。
2は、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは炭素数が20以下、より好ましくは18以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基である。また、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、R1又はR2の少なくとも一方が、分岐アルキル基であることが好ましい。
【0025】
一般式(1)で表されるエステル油としては、2-エチルヘキサン酸ミリスチル、2-エチルヘキサン酸セチル、2-エチルヘキサン酸ステアリル、オクタン酸イソデシル、オクタン酸イソセチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸セテアリル、プロピルへプタン酸オクチル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸イソセチル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸イソトリデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸オクチル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソステアリル、ヒドロキシステアリン酸2-エチルヘキシル、オレイン酸メチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸イソブチル、エルカ酸オレイル、安息香酸アルキル(アルキルの炭素数12~15)、及びナフタレンジカルボン酸ジエチルヘキシル等からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0026】
(R3O)-CH2CH(OR4)-CH2(OR5) (2)
一般式(2)において、R3、R4及びR5は、各々独立に、水素原子、又は下記一般式(2-1)で示される基であって、全てが水素原子であることはない。
-CO-R6 (2-1)
(式中、R6は、水酸基が置換していてもよい炭素数7以上23以下、好ましくは17以下のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
一般式(2)で表されるエステル油としては、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリルからなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。これらホホバ油、オリーブ油、ひまわり油、大豆油、落花生油、菜種油、アーモンド油、パーム油、ココヤシ油、ひまし油、小麦胚芽油、ぶどう種油、あざみ油、宵待草油、マカデミアナッツ油、とうもろこし胚芽油、及びアボカド油等の植物由来のエステル油であっても良い。
【0027】
7O-(AO)m-COR8 (3)
一般式(3)において、R7は炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基を示し、R8は炭素数1以上25以下のアルキル基又はアルケニル基を示す。AOは、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基を示し、mは1以上50以下の平均付加モル数を表す。
7は、忌避持続効果を向上させる観点、及び耐水性を向上させる観点から、好ましくは平均炭素数が6以上であり、そして、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは12以下、より好ましくは10以下の芳香族炭化水素基、より好ましくはベンジル基である。
8は、忌避持続効果を向上させる観点、及び耐水性を向上させる観点から、好ましくは平均炭素数が7以上、より好ましくは11以上であり、そして、好ましくは21以下、より好ましくは15以下であるアルキル基である。
AO基は、忌避持続効果を向上させる観点、及び耐水性を向上させる観点から、好ましくはプロピレンオキシ基であり、mは好ましくは1以上10以下、より好ましくは1以上5以下である。
一般式(3)で表されるエステル油としては、ベンジルアルコールのプロピレンオキシド3モル付加体とミリスチン酸のエステル(クローダ社「クロダモルSTS」)、ベンジルアルコールのプロピレンオキシド3モル付加体と2-エチルヘキサン酸のエステル(クローダ社「クロダモルSFX」)からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0028】
9-O-(CH2CH2O)v-CO-(OCH2CH2)w-OR10 (4)
一般式(4)において、R9及びR10は、各々独立に、炭素数6以上22以下のアルキル基又はアルケニル基を示し、v及びwは、各々独立に、0又は1以上50以下の平均付加モル数を示す。
9及びR10は、忌避持続効果を向上させる観点、及び耐水性を向上させる観点から、好ましくは炭素数8以上であり、そして、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは18以下、より好ましくは12以下のアルキル基である。
v及びwは、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは0又は1以上5以下の数であり、より好ましくは0である。
一般式(4)で表されるジアルキルカーボネート化合物としては、ジオクチルカーボネート(コグニス社「セチオールCC」)等が挙げられる。
【0029】
上記以外のエステル油としては、多価カルボン酸とアルコールとのエステルや、グリセリンを除く多価アルコールと脂肪酸とのエステル等が挙げられる。
その具体例としては、ダイマー酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、コハク酸ジエトキシエチル、コハク酸2-エチルヘキシル、ジカプリン酸プロパンジオール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール等からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中では、忌避持続効果を向上させる観点、及び耐水性を向上させる観点から、ネオペンチルグリコールと脂肪酸とのエステルが好ましく、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール及びジ2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコールからなる群から選ばれる1種以上がより好ましい。
上記の(b)エステル油の中では、一般式(1)で表されるエステル油、及びネオペンチルグリコールと脂肪酸とのエステルからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0030】
(c)エーテル油
エーテル油としては、忌避持続効果を向上させる観点、及び耐水性を向上させる観点から、下記一般式(5)で表されるジアルキルエーテル化合物、又は下記一般式(6)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル化合物が好ましい。
【0031】
11-O-R12 (5)
一般式(5)において、R11及びR12は、各々独立に、炭素数6以上22以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、又は炭素数6以上24以下の芳香族炭化水素基を示す。
11及びR12は、忌避持続効果を向上させる観点、及び耐水性を向上させる観点から、好ましくはアルキル基であり、その炭素数は、忌避持続効果を向上させる観点、及び耐水性を向上させる観点から、好ましくは8以上であり、そして、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、さらに好ましくは12以下である。
一般式(5)で表されるジアルキルエーテル化合物としては、ジヘキシルエーテル、ジオクチルエーテル(コグニス社「セチオールOE」)、ジカプリリルエーテル、セチル-1,3-ジメチルブチルエーテル(花王(株)「ASE-166K」)等が挙げられる。
【0032】
13-O-(PO)r(EO)s-H (6)
一般式(6)において、R13は炭素数6以上22以下のアルキル基又はアルケニル基を示し、POはプロピレンオキシ基を示し、EOはエチレンオキシ基を示す。rは0.1以上15以下の平均付加モル数を示し、sは0以上10以下の平均付加モル数を示す。sが0でない場合、PO及びEOの付加形式は、ランダムであってもブロックであってもよい。
13の炭素数は、好ましくは8以上であり、そして、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、さらに好ましくは12以下である。
平均付加モル数rは、忌避持続効果を向上させる観点、及び耐水性を向上させる観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上であり、そして、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは13以下、より好ましくは10以下であり、平均付加モル数sは、好ましくは5以下、より好ましくは1以下、さらに好ましくは0である。
一般式(6)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル化合物としては、ポリプロピレングリコール、プロピレンオキシ基の平均付加モル数rが3以上10以下である、ポリオキシプロピレンオクチルエーテル、ポリオキシプロピレンデシルエーテル、及びポリオキシプロピレンラウリルエーテルからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
上記の(c)エーテル油の中では、忌避持続効果を向上させる観点、及び耐水性を向上させる観点から、一般式(5)で表されるエーテル油が好ましい。
【0033】
(d)炭化水素油
炭化水素油としては、流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、イソヘキサデカン、イソエイコサン、水添ポリイソブテン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、α-オレフィンオリゴマー、及びシクロパラフィン等が挙げられる。
これらの中では、忌避持続効果を向上させる観点、及び皮膚に塗布した際の耐水性を向上させる観点から、流動パラフィン、流動イソパラフィン、及びスクワランからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0034】
(e)脂肪族アルコール
脂肪族アルコールとしては、1価の鎖状又は環状脂肪族アルコールが挙げられ、忌避持続効果を向上させる観点から、1価の鎖状脂肪族アルコールが好ましい。脂肪族アルコールの炭素数は、忌避持続効果を向上させる観点から、炭素数が好ましくは14以上、より好ましくは18以上であり、そして、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは28以下、より好ましくは24以下、さらに好ましくは22以下である。
前記脂肪族アルコールは、直鎖及び分岐鎖のいずれであってもよく、飽和及び不飽和のいずれであってもよいが、直鎖又は分岐鎖の脂肪族飽和アルコールが好ましい。
直鎖脂肪族アルコールとしては、オレイルアルコール等が挙げられ、分岐鎖脂肪族飽和アルコールとしては、ブチルオクタノール、ブチルデカノール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール等が挙げられる。
これらの中では、忌避持続効果を向上させる観点、耐水性を向上させる観点、及び皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、分岐鎖脂肪族飽和アルコールが好ましく、ヘキシルデカノール、及びオクチルドデカノールからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0035】
(f)多価アルコール
多価アルコールとしては、炭素数2以上の脂肪族アルコール、芳香族アルコール、炭素数4以上の糖アルコール等が挙げられ、飽和及び不飽和のいずれであってもよいが、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、炭素数2以上10以下の脂肪族アルコール、芳香族アルコール、及び炭素数4以上10以下の糖アルコールからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
多価アルコールのうち、炭素数2以上の脂肪族アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、へキシレングリコール等の2価アルコール等が挙げられる。
また、前記糖アルコールとしては、ソルビトール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、キシリトール、マンニトール等が挙げられる。
【0036】
前記の不揮発性液状油性成分の中では、忌避持続効果を向上させる観点、及び耐水性を向上させる観点から、(a)シリコーン油、(b)エステル油、(c)エーテル油、及び(d)炭化水素油からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、(a)シリコーン油、(b)エステル油、及び(c)エーテル油からなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、(a)シリコーン油及び(b)エステル油からなる群から選ばれる1種以上がさらに好ましく、さらに、組成物の長期保存安定性を高める観点から(a)シリコーン油がよりさらに好ましい。(a)シリコーン油のうち、好ましくはジメチルポリシロキサン、ジメチコノール、メチルフェニルポリシロキサン、及び変性シリコーンからなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくはジメチルポリシロキサン、ジメチコノール、及びポリエーテル変性シリコーンからなる群から選ばれる1種以上であり、さらに好ましくはジメチルポリシロキサンであり、よりさらに好ましくは直鎖状ジメチルポリシロキサンである。
【0037】
(成分(A)の含有量)
本発明の組成物中の成分(A)の含有量は、忌避持続効果を向上させる観点、及び耐水性を向上させる観点から、40質量%以上であり、好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは55質量%以上であり、忌避持続効果を向上させる観点、成分(A)由来の臭気を抑制する観点、及び、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、99.5質量%以下であり、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以下である。そして、本発明の組成物中の成分(A)の含有量は、40~99.5質量%であり、好ましくは45~90質量%であり、より好ましくは50~80質量%であり、さらに好ましくは55~70質量%である。
【0038】
<成分(B):皮膜形成性ポリマー>
本発明の組成物は、成分(B)として、皮膜形成性ポリマーを含有する。皮膜形成性ポリマーは、組成物を塗布後、乾燥時に皮膜形成能を有し、水、水及び水溶性溶媒との混合物、又は成分(A)中に分散するものであれば特に制限されない。また水、水及び水溶性溶媒と混合し、溶液として配合してもよい。
【0039】
成分(B)としては、例えば、シリコーン構造含有ポリマー、ビニル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、多糖類系ポリマー等が挙げられ、これらを単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(シリコーン構造含有ポリマー)
成分(B)としてのシリコーン構造含有ポリマーは、少なくとも一部にシリコーン構造を有しかつ皮膜形成能を有するポリマーである。シリコーン構造含有ポリマーにおける「シリコーン構造」とは、下記一般式(I)で表される構造をいう。
【化1】

一般式(I)中、R21はそれぞれ独立に炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、pは1以上の整数である。R21は、組成物を皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは炭素数1以上12以下のアルキル基又は炭素数6以上12以下のアリール基であり、より好ましくは炭素数1以上12以下のアルキル基又はフェニル基、さらに好ましくは炭素数1以上3以下のアルキル基、よりさらに好ましくはメチル基である。
【0040】
当該シリコーン構造はポリマー中、主鎖、側鎖のいずれに存在していてもよい。シリコーン構造がポリマー主鎖に存在する場合、その結合形態にも特に制限はなく、例えば、シリコーン構造がポリマー主鎖の末端に存在していてもよいし、ポリマー主鎖中にシリコーン構造がブロック状又はランダム状に結合した共重合ポリマーであってもよい。また、シリコーン構造を有する化合物によりグラフト変性されたポリマーも用いることができる。
【0041】
成分(B)として用いられるシリコーン構造含有ポリマーの好ましい具体例としては、忌避持続効果を向上させる観点、及び耐水性を向上させる観点から、シリコーン変性脂環構造含有ポリマー;シリコーン変性プルラン;トリアルキルシロキシケイ酸、フッ素変性アルキルシロキシケイ酸、フェニル変性アルキルシロキシケイ酸等のシリコーン構造含有ケイ酸化合物;シリコーン構造含有ビニル系ポリマーが挙げられる。
【0042】
〔シリコーン変性脂環構造含有ポリマー〕
シリコーン変性脂環構造含有ポリマーとしては、例えば、シリコーン変性された環状ポリオレフィンが挙げられ、下記一般式(7)で表されるシリコーン変性ポリノルボルネンが好ましいものとして挙げられる。
【化2】

式中、R22はそれぞれ独立に炭素数1以上12以下のアルキル基であり、Xは下記式(i)で表される基である。aは1以上3以下の整数である。b、cは繰り返し単位数であり、それぞれ独立に1以上の整数である。
【化3】

式中、R21は前記と同じであり、dは1以上5以下の整数である。
前記一般式(7)中、組成物の忌避持続効果を向上させ、かつ耐水性を向上させる観点からは、R22はメチル基、エチル基、n-プロピル基、ブチル基、又はペンチル基が好ましく、組成物を皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点からはメチル基がより好ましい。
Xは前記式(i)で表される基であり、式(i)中、R21はそれぞれ独立に炭素数1以上12以下の炭化水素基である。忌避持続効果を向上させる観点、及び耐水性を向上させる観点から、R21は好ましくは炭素数1以上12以下のアルキル基又はフェニル基であり、組成物を皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、より好ましくは炭素数1以上3以下のアルキル基、よりさらに好ましくはメチル基である。dは1以上5以下の整数であり、汎用性の観点から、d=1が好ましい。すなわちXは、好ましくはトリメチルシロキシ基である。
aは1以上3以下の整数であり、例えばa=2の繰り返し単位とa=3の繰り返し単位が混合して存在する重合体であってよい。汎用性の観点から、aは3であることが好ましい。
組成物の耐水性を向上させる観点から、前記一般式(7)中のbとcの割合は、好ましくはb/c=20/80~90/10(mol/mol)、より好ましくは30/70~80/20(mol/mol)であり、さらに好ましくは50/50~70/30(mol/mol)である。bとcの割合は、H-NMR測定により求めることができる。
【0043】
シリコーン変性ポリノルボルネンとしては、下記式(8)で表されるシリコーン変性ポリノルボルネンがより好ましい。
【化4】

式中、b、cは前記と同じである。
【0044】
式(8)で表されるシリコーン変性ポリノルボルネンとしては、INCI名(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第16版,第2巻,2016年,p.2274):NORBORNENE/TRIS(TRIMETHYLSILOXY)SILYLNORBORNENE COPOLYMERで表記される化合物である、ノルボルネン/トリス(トリメチルシロキシ)シリルノルボルネン)コポリマーが挙げられる。
市販のシリコーン変性ポリノルボルネンとしては、信越化学工業(株)「NBN-30-ID」(ノルボルネン/トリス(トリメチルシロキシ)シリルノルボルネン)コポリマーのイソドデカン溶液)等が挙げられる。
【0045】
〔シリコーン変性プルラン〕
シリコーン変性プルランとしては、側鎖にシリコーン構造を有するプルランが挙げられ、具体的には、忌避持続効果を向上させる観点、及び耐水性を向上させる観点から、プルラン中のOH基の水素原子の少なくとも一部が下記一般式(9)で表される基で置換されたシリコーン変性プルランが好ましい。
【化5】

式中、Zは単結合又は2価の有機基である。R22、X、aは前記と同じであり、汎用性の観点から、Xは好ましくはトリメチルシロキシ基、aは好ましくは3である。
【0046】
一般式(9)において、忌避持続効果を向上させる観点、及び耐水性を向上させる観点から、Zは2価の有機基であることが好ましく、下記一般式(10)又は(11)で表される2価の基がより好ましく、下記一般式(11)で表される2価の基がより好ましい。
【化6】

式中、R31は炭素数1以上10以下のアルキレン基であり、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が例示される。忌避持続効果を向上させる観点、及び耐水性を向上させる観点から、これらの中でもエチレン基、トリメチレン基、プロピレン基が好ましく、トリメチレン基又はプロピレン基がより好ましい。
【0047】
市販のシリコーン変性プルランとしては、信越化学工業(株)「TSPL-30-ID」(トリ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルカルバミド酸プルランのイソドデカン溶液)、「TSPL-30-D5」(トリ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルカルバミド酸プルランのシクロペンタシロキサン溶液)等が挙げられる。
【0048】
〔シリコーン構造含有ケイ酸化合物〕
シリコーン構造含有ケイ酸化合物としては、末端にシリコーン構造を有するシリケート化合物が挙げられ、例えば、トリアルキルシロキシケイ酸、フッ素変性アルキルシロキシケイ酸、フェニル変性アルキルシロキシケイ酸等が挙げられる。
トリアルキルシロキシケイ酸におけるアルキル基は、忌避持続効果を向上させる観点、及び耐水性を向上させる観点から、好ましくは炭素数1以上10以下、より好ましくは炭素数1以上4以下であり、さらに好ましくはメチル基である。トリアルキルシロキシケイ酸の具体例としてはトリメチルシロキシケイ酸が挙げられる。
フッ素変性アルキルシロキシケイ酸としては、トリアルキルシロキシケイ酸中のアルキル基の少なくとも一部の水素原子がフッ素原子に置換された化合物が挙げられる。その具体例としては、トリフルオロプロピルジメチルシロキシケイ酸、トリフルオロプロピルジメチル/トリメチルシロキシケイ酸等が挙げられる。
フェニル変性アルキルシロキシケイ酸としては、例えば、フェニルプロピルジメチルシロキシケイ酸、フェニルプロピルジメチル/トリメチルシロキシケイ酸等が挙げられる。
シリコーン構造含有ケイ酸化合物の中でも、忌避持続効果を向上させる観点、及び耐水性を向上させる観点からはトリアルキルシロキシケイ酸が好ましく、トリメチルシロキシケイ酸がより好ましい。
【0049】
市販のシリコーン構造含有ケイ酸化合物としては、信越化学工業(株)「KF-7312J」(トリメチルシロキシケイ酸のシクロペンタシロキサン溶液)、「KF-7312K」(トリメチルシロキシケイ酸のジメチコン溶液)、「KF-7312L」(トリメチルシロキシケイ酸の揮発性ジメチコン溶液)、「X-21-5249」(トリメチルシロキシケイ酸のシクロペンタシロキサン溶液)、「X-21-5249L」(トリメチルシロキシケイ酸の揮発性ジメチコン溶液)、「X-21-5250」(トリメチルシロキシケイ酸のシクロペンタシロキサン溶液)、「X-21-5250L」(トリメチルシロキシケイ酸の揮発性ジメチコン溶液)、「KF-9021」(トリメチルシロキシケイ酸のシクロペンタシロキサン溶液)、「KF-9021L」(トリメチルシロキシケイ酸の揮発性ジメチコン溶液)、「X-21-5595」(トリメチルシロキシケイ酸のイソドデカン溶液)、「X-21-5616」(トリメチルシロキシケイ酸のイソドデカン溶液)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社「XS66-B8226」(トリフルオロプロピルジメチル/トリメチルシロキシケイ酸のシクロペンタシロキサン溶液)、「XS66-B8636」(トリフルオロプロピルジメチル/トリメチルシロキシケイ酸のジメチコン溶液)、「SilShine151」(フェニルプロピルジメチルシロキシケイ酸)等を用いることができる。
【0050】
〔シリコーン構造含有ビニル系ポリマー〕
シリコーン構造含有ビニル系ポリマーとしては、シリコーン構造を主鎖又は側鎖に有するビニル系ポリマーであって、前記シリコーン変性脂環構造含有ポリマー以外のものが挙げられる。
忌避持続効果を向上させる観点、及び耐水性を向上させる観点からは、シリコーン構造含有アクリル系ポリマーが好ましい。シリコーン構造含有アクリル系ポリマーは、少なくとも、シリコーン構造と、(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位とを有するポリマーであればよい。
シリコーン構造含有アクリル系ポリマーの具体例としては、シロキサンデンドリマー構造を側鎖に有するアクリル系ポリマー(以下「アクリルシリコーンデンドリマー」ともいう)や、アクリル系ポリマーとジメチルポリシロキサンとのグラフト共重合体等が挙げられる。
【0051】
アクリルシリコーンデンドリマーにおけるシロキサンデンドリマー構造は、忌避持続効果を向上させ、かつ耐水性を向上させる観点から、具体的には下記一般式(12)で表される基であることが好ましい。
【化7】

式中、R21は前記と同じである。Zは単結合又は2価の有機基である。Xはi=1とした場合の下記一般式(13)で表される基であり、iは該基の階層を示す1以上10以下の整数である。
【化8】

式中、R21は前記と同じであり、R32は炭素数1以上10以下のアルキル基である。Zは炭素数2以上10以下のアルキレン基である。Xi+1は水素原子、炭素数1以上10以下のアルキル基、アリール基又は一般式(13)で表される基であり、aは0以上3以下の整数である。
【0052】
上記のシロキサンデンドリマー構造を側鎖に有するアクリル系ポリマーとしては、下記一般式(14)で表される単量体由来の構成単位を有するポリマーが挙げられる。
【化9】

式中、R21及びXは前記と同じである。Yは(メタ)アクリロイル基である。
アクリルシリコーンデンドリマーは、さらに、一般式(14)で表される単量体以外の(メタ)アクリル系単量体に由来する構成単位をさらに含んでもよい。
【0053】
市販のアクリルシリコーンデンドリマーとしては、東レ・ダウコーニング(株)「FA 4001 CM Silicone Acrylate」((アクリレーツ/メタクリル酸ポリトリメチルシロキシ)コポリマーのシクロペンタシロキサン溶液)、「FA 4002 ID Silicone Acrylate」((アクリレーツ/メタクリル酸ポリトリメチルシロキシ)コポリマーのイソドデカン溶液)等が挙げられる。
【0054】
また、アクリル系ポリマーとジメチルポリシロキサンとのグラフト共重合体の市販品としては、信越化学工業(株)の「KP-543」((アクリレーツ/ジメチコン)コポリマーの酢酸ブチル溶液)、「KP-545」((アクリレーツ/ジメチコン)コポリマーのシクロペンタシロキサン溶液)、「KP-545L」((アクリレーツ/ジメチコン)コポリマーのジメチコン溶液)、「KP-550」((アクリレーツ/ジメチコン)コポリマーのイソドデカン溶液)等が挙げられる。
【0055】
上記シリコーン構造含有ポリマーの中でも、忌避持続効果を向上させる観点、かつ耐水性を向上させる観点からは、シリコーン変性ポリノルボルネン、シリコーン変性プルラン、トリメチルシロキシケイ酸、及びシリコーン構造含有アクリル系ポリマーからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0056】
(ビニル系ポリマー)
ビニル系ポリマーとしては、前記シリコーン構造含有ポリマー以外の、アニオン性ビニル系ポリマー、カチオン性ビニル系ポリマー、ノニオン性ビニル系ポリマー、及び両性ビニル系ポリマーが挙げられる。
【0057】
〔アニオン性ビニル系ポリマー〕
アニオン性ビニル系ポリマーとしては、アニオン性基としてカルボキシ基又はスルホン酸基を有するビニル系ポリマーが挙げられる。汎用性の観点からは、カルボキシ基を有するビニル系ポリマーが好ましく、例えば、クロトン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、イタコン酸、又は(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を含むビニル系ポリマーが挙げられる。
クロトン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、イタコン酸のいずれかに由来する構成単位を含むビニル系ポリマーとしては、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、ビニルアルコール類からなる群から選ばれる1種以上と共重合されているものが好ましく、例えば、メチルビニルエーテル/マレイン酸アルキル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸/ネオデカン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸/プロピオン酸ビニル共重合体、ビニルアルコール/イタコン酸共重合体からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中でも、忌避持続効果を向上させる観点、かつ耐水性を向上させる観点からは、メチルビニルエーテル/マレイン酸アルキル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸/ネオデカン酸ビニル共重合体、及び、酢酸ビニル/クロトン酸/プロピオン酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0058】
(メタ)アクリル酸由来の構成単位を含むアニオン性ビニル系ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びN-アルキル(メタ)アクリルアミドからなる群から選ばれる1種以上との共重合体が挙げられ、例えば、アクリル酸/エチルアクリレート/N-t-ブチルアクリルアミド共重合体、オクチルアクリルアミド/アクリル酸共重合体、アクリレート/メタクリレート/アクリル酸/メタクリル酸共重合体、アクリレーツ/ジアセトンアクリルアミド共重合体、アクリレーツ/C1-18アルキルアクリレーツ/C1-8アルキルアクリルアミド共重合体等が挙げられる。
これらの中でも、組成物を皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、(メタ)アクリル酸由来の構成単位を含むビニル系ポリマーが好ましい。
【0059】
〔カチオン性ビニル系ポリマー〕
カチオン性ビニル系ポリマーとしては、例えば、ビニルピロリドン/メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体ジエチル硫酸塩、ビニルピロリドン/ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド/ラウリルジメチルアミノプロピルメタクリルアミド共重合体、ビニルピロリドン/メタクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル/アクリル酸アルキル/ジアクリル酸トリプロピレングリコール共重合体、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム、塩化ジメチルジアリルアンモニウム/アクリルアミド共重合体、塩化トリメチルアンモニオプロピルアクリルアミド/ジメチルアクリルアミド共重合体、アルキルアクリルアミド/アクリレート/アルキルアミノアルキルアクリルアミド/ポリエチレングリコールメタクリレート共重合体、t-ブチルアクリルアミド/ジメチルアクリルアミド/ジメチルアミノプロピルアクリルアミド/メトキシポリエチレングリコールメタクリレート共重合体等が挙げられる。
【0060】
〔ノニオン性ビニル系ポリマー〕
ノニオン性ビニル系ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、スチレン、及びビニルピロリドンからなる群から選ばれる1種以上に由来する構成単位を含むノニオン性ポリマーが好ましく、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、スチレン/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体、ビニルピロリドン/メタクリルアミド/ビニルイミダゾール共重合体、ポリビニルカプロラクタム等が挙げられる。これらの中でも、組成物を皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステルを構成する(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位は、1種のみでもよく、2種以上でもよい。
【0061】
〔両性ビニル系ポリマー〕
両性ビニル系ポリマーとしては、ホスホベタイン基やスルホベタイン基を側鎖に有する(メタ)アクリレート系ポリマー、(メタ)アクリル系両イオン性重合体等の、カチオン性基及びアニオン性基の両方を含むビニル系ポリマーが挙げられる。
【0062】
〔ウレタン系ポリマー〕
ウレタン系ポリマーとしては、ポリウレタン、ポリアクリルウレタン等が挙げられ、市販品としては、アクゾノーベル(株)の「DynamX」等が挙げられる。
【0063】
〔多糖類系ポリマー〕
多糖類系ポリマーとしては、例えば、アラビアガム、グルカン、サクシノグリカン、カラギーナン、カラヤガム、トラガカントガム、グアガム、ローカストビーンガム、ガラクトマンナンガム、キサンタンガム、デンプン、キャロブガム、クインスシード、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、ペクチン酸ナトリウム、アラギン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース等が挙げられる。また、これらのポリマーにカチオン性基、アニオン性基、又はその両方を導入したポリマーも用いることができる。
【0064】
成分(B)は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。成分(B)の中でも、忌避持続効果を向上させる観点、かつ耐水性を向上させる観点から、シリコーン構造含有ポリマー及びビニル系ポリマーからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、シリコーン構造含有ポリマー及びノニオン性ビニル系ポリマーからなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、シリコーン変性ポリノルボルネン、シリコーン変性プルラン、トリメチルシロキシケイ酸、シリコーン構造含有アクリル系ポリマー、及び、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる群から選ばれる1種以上がさらに好ましく、シリコーン変性ポリノルボルネン、シリコーン変性プルラン、トリメチルシロキシケイ酸、及びシリコーン構造含有アクリル系ポリマーからなる群から選ばれる1種以上がよりさらに好ましい。
【0065】
(成分(B)の含有量)
本発明の組成物中の成分(B)の含有量は、忌避持続効果を向上させる観点、及び耐水性を向上させる観点から、0.5質量%以上であり、好ましくは0.7質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上であり、忌避持続効果を向上させる観点、及び耐水性を向上させる観点から、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは4質量%以下である。そして、本発明の組成物中の成分(B)の含有量は、0.5~15質量%であり、好ましくは0.7~10質量%、より好ましくは1~4質量%であり、さらに好ましくは2~4質量%である。
【0066】
本発明の組成物において、成分(A)と成分(B)との質量比[(A)/(B)]は、忌避持続効果を向上させる観点、及び耐水性を向上させる観点から、好ましくは1以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは6以上、よりさらに好ましくは15以上であり、忌避持続効果を向上させる観点、及び耐水性を向上させる観点から、好ましくは120以下、より好ましくは85以下、さらに好ましくは60以下、よりさらに好ましくは30以下である。そして、本発明の組成物において、成分(A)と成分(B)との質量比[(A)/(B)]は、好ましくは1~120であり、より好ましく4~120であり、さらに好ましくは6~85であり、よりさらに好ましくは15~60であり、よりさらに好ましくは15~30である。
【0067】
<成分(C):水>
本発明の組成物は、忌避持続効果を向上させる観点、及び、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、さらに成分(C)として水を含有することができる。
本発明の組成物が水を含有する場合、組成物中の成分(C)の含有量は、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。また、忌避持続効果を向上させる観点から、好ましくは85質量%以下であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下である。そして、本発明の組成物中の成分(C)の含有量は、好ましくは5~85質量%以下であり、より好ましくは10~80質量%、さらに好ましくは15~75質量%である。
本発明の組成物は、忌避持続効果を向上させる観点、及び皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、油中水型の組成物とすることが好ましい。なお、油中水型の組成物とした場合には、組成物中の成分(C)の含有量は、皮膚に塗布した際の感触を良いものとする観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。
また、忌避持続効果を向上させる観点、耐水性を向上させる観点、及び長期保存安定性を確保する観点から、油中水型の組成物とした場合の成分(C)の含有量は、好ましくは45質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下である。そして、油中水型の組成物中の成分(C)の含有量は、好ましくは5~45質量%であり、より好ましくは10~30質量%、さらに好ましくは15~25質量%である。
【0068】
本発明の組成物が成分(C)を含有する場合において、成分(A)と成分(C)との質量比[(A)/(C)]は、油中水型の組成物とした場合には、忌避持続効果を向上させる観点、耐水性を向上させる観点、及び長期保存安定性を確保する観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.5以上、よりさらに好ましくは1以上、よりさらに好ましくは2以上であり、同様の観点から、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは10以下、よりさらに好ましくは5以下であり、よりさらに好ましくは3.5以下である。そして、本発明の組成物において、成分(A)と成分(C)との質量比[(A)/(C)]は、好ましくは0.1~20であり、より好ましくは0.2~15であり、さらに好ましくは0.5~10であり、よりさらに好ましくは1~5であり、よりさらに好ましくは2~3.5である。
【0069】
(成分(D):界面活性剤)
本発明の組成物は、各成分を良好に分散又は溶解させて皮膚への優れた塗布性を確保できる観点、及び組成物の長期保存安定性を確保する観点から、さらに成分(D)として界面活性剤を含有することが好ましい。
界面活性剤としては、適度な乳化能を有するものが好ましく、本発明の組成物を油中水型の組成物とした場合には、特にHLB8以下のノニオン界面活性剤を含有することが好ましい。
ここで、HLB(親水性-親油性のバランス:Hydrophilic-Lypophilic Balance)は、界面活性剤の全分子量に占める親水基部分の分子量を示すものであり、グリフィン(Griffin)の式により求められるものである。
ノニオン界面活性剤のHLBは、乳化能の観点から、より好ましくは6以下、さらに好ましくは5.5以下であり、好ましくは3以上である。
【0070】
HLB8以下のノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレントリイソステアリン酸グリセリル、ポリオキシエチレントリオレイン酸グリセリル等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;モノステアリン酸テトラグリセリル、モノオレイン酸テトラグリセリル等のポリグリセリン脂肪酸エステル;パルミチン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン硬化ひまし油;モノステアリン酸プロピレングリコール等のプロピレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-デシルエーテル等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル;アルキルアルカノールアミド;脂肪酸アルカノールアミド;ポリオキシエチレンアルキルアミン;ポリエーテル変性シリコーン;グリセリン変性シリコーン等が挙げられる。これらの中でも、油中水型組成物の乳化安定性を向上させる観点から、ポリエーテル変性シリコーンが好ましい。
【0071】
ポリエーテル変性シリコーンのシリコーン鎖は、直鎖又は分岐鎖のいずれでもよく、例えば、直鎖型ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、直鎖型ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体、シリコーン鎖分岐型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体、アルキル鎖・シリコーン鎖分岐型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体等が挙げられる。直鎖型ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体及び直鎖型ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体は、さらにアルキル変性等された変性体でもよい。
これらの中でも、乳化安定性を向上させる観点から、直鎖型ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、直鎖型ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体、及びこれらの変性体からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0072】
成分(D)として用いられる、直鎖型ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体又はその変性体の市販品としては、信越化学工業(株)の「KF-6015」(PEG-3ジメチコン、HLB4.5)、「KF-6016」(PEG-9メチルエーテルジメチコン、HLB4.5)、「KF-6017」(PEG-10ジメチコン、HLB4.5)、東レ・ダウコーニング(株)の「SS-2910」(PEG-10ジメチコン、HLB4.0)、「SH3772M」、「SH3773M」(以上、PEG-12ジメチコン、HLB8.0)、「SH3775M」(PEG-12ジメチコン、HLB5.0)、等が挙げられる。
成分(D)として用いられる、直鎖型ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体又はその変性体の市販品としては、信越化学工業(株)の「KF-6012」(PEG/PPG-20/22ブチルエーテルジメチコン、HLB7.0)、「KF-6026」(PEG/PPG-10/3オレイルエーテルジメチコン、HLB5.0)、信越化学工業(株)の「KF-6048」(セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、HLB3.5)、東レ・ダウコーニング(株)の「SH3749」(PEG/PPG-20/20ジメチコン、HLB7.5)、「BY22-008M」、「BY11-030」、「BY25-337」(以上、PEG/PPG-19/19ジメチコン、HLB3.0)、「5200 Formulation Aid」(ラウリルPEG/PPG-18/18メチコン、HLB2.0)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社の「SF1528」、「SF1540」(以上、PEG/PPG-20/15ジメチコン、HLB4.0)、Evonik Nutrition&Care GmbHの「ABIL EM 97 S」(Bis-PEG/PPG-14/14ジメチコン、HLB5.0)等が挙げられる。
成分(D)として用いられる、シリコーン鎖分岐型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体の市販品としては、信越化学工業(株)の「KF-6028」(PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、HLB4.0)等が挙げられる。
また、アルキル鎖・シリコーン鎖分岐型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体としては、信越化学工業(株)の「KF-6038」(ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、HLB3.0)等が挙げられる。
上記以外のポリエーテル変性シリコーンの市販品として、東レ・ダウコーニング(株)の「FZ-2222」、「FZ-2233」、「FZ-2231」(以上、直鎖型ポリエーテル変性シリコーン)等も用いることができる。
【0073】
本発明の組成物に成分(D)を用いる場合、その含有量は、皮膚への塗布後の流動性を調整することにより忌避持続効果を向上させる観点、各成分を良好に分散又は溶解させて皮膚への優れた塗布性を確保する観点、及び組成物の長期保存安定性を向上させる観点から、組成物中、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、同様の観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0074】
(成分(E):揮発性油)
本発明の組成物は、油中水型組成物とした場合には、組成物の長期保存安定性を確保する観点から、さらに成分(E)として揮発性油を含有することが好ましい。
本明細書において揮発性油とは、前記方法により測定される、1気圧下、25℃、60分乾燥後の揮発率が、50%超であるものをいう。成分(E)としては、上記で規定する揮発率が50%超の液状油性成分であれば特に制限なく用いられるが、組成物の長期保存安定性を確保する観点から、イソドデカン、ヘキサメチルジシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルトリメチコン、及び、25℃における動粘度が2cSt以下のジメチルポリシロキサンからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。なお当該動粘度は、ウベローデ粘度計を用いて測定できる。
【0075】
本発明の組成物に成分(E)を用いる場合、その含有量は、組成物の長期保存安定性を確保する観点から、組成物中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、同様の観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0076】
<その他の成分>
本発明の組成物は、発明の効果を損なわない範囲で、前記以外の成分、例えば、増粘剤、防腐剤、着色剤、保湿剤、香料、pH調整剤等を適宜含有することができる。また、ビタミン類、血行促進剤、活性酸素消去剤、抗炎症剤、美白剤、殺菌剤等の薬効成分や生理活性成分を含有することもできる。なお、例えば香料を殺菌剤として用いるなど、他の用途としても用いることができる。
【0077】
本発明の組成物は、害虫忌避に対して、成分(A)を忌避有効成分として含有し、それ以外の害虫忌避剤を有効量含まないことが、使用者のアレルギーや肌荒れを防止するといった観点から好ましい。
本発明の組成物は、後述する既存の害虫忌避剤を有効量含まなくても、害虫忌避持続効果を有する。言い換えれば、本発明の組成物が、成分(A)以外の害虫忌避剤を有効量下限値未満で含有する場合であっても、害虫が、降着してもその場に停留しなければ、本発明の停留抑制効果が発現されていることになる。すなわち本発明の組成物は、成分(A)以外の害虫忌避剤を実質的に含有しなくてもよい。
【0078】
ここで、成分(A)以外の害虫忌避剤を「有効量含まない」とは、一般的には、成分(A)以外の既存の害虫忌避剤の含有量が、本発明の組成物中、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、よりさらに好ましくは4質量%以下、よりさらに好ましくは3質量%以下、よりさらに好ましくは1質量%以下であることを意味する。
既存の害虫忌避剤の有効量は、例えば、各忌避剤製品の製造会社等により公表されている最小有効量等を参考にすることができる。
より具体的には、後述する既存の害虫忌避剤であるDEET:N,N-ジエチルトルアミドの有効量は4質量%以上、好ましくは10質量%以上であり、イカリジン:1-メチルプロピル-2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピぺリジンカルボキシレートの有効量は4質量%以上、IR3535:3-(アセチルブチル)アミノプロピオン酸エチルエステルの有効量は4質量%以上、シトロネラ油の有効量は10質量%以上である。
【0079】
また、既存の害虫忌避剤の有効量は、以下に記載する忌避評価試験で測定することもできる。
(忌避評価試験)
メッシュで囲われたプラスチックケージ(30×30×30cm:BugDorm-1ケージ)に、交尾済みのメス蚊(ヒトスジシマカ)100匹を入れる。クアラテックスーパーロング手袋(50cm)(アズワン(株)、Catalog number : 3-6432-02)の手首部分より約15cm肘側に縦5cm×横4cm長方形型の切り込みを入れたものに、腕を挿入する。切り込みからの露出部に何も塗布しない状態で、ケージに腕を挿入し、2分間以内に、肌露出部で2か所、蚊に降着された後、1秒間以上停留されることを確認する。1秒以上停留されない場合は、新しく蚊を用意する。以下、1秒以上の停留を単に停留と表現する。
害虫忌避剤の溶液である評価サンプルの試験は、肌露出部(5cm×4cm)に、該評価サンプルを2mg/cmで塗布できるようにエタノールで濃度を調整して行う。
露出部にピペットマンを用いて、濃度を調整した液を乗せ、肌露出部全体に行き渡るように塗布する(必要溶液量:40~50μl)。その後3分間静置し、試験を開始する。
試験は、該評価サンプルを塗布した腕をケージに2分間挿入し、停留数をカウントすることで行う。トータルで2回停留された時点で試験を終了とし、試験終了まで30分間毎に2分間ずつ腕を挿入する試験を行う。30分目に2回目の停留がされた場合は、忌避効果持続時間を0分間と判定し、60分目で2回目の停留がされた場合は30分間の忌避効果持続時間と判定する。試験は3人の被験者にて行い、平均の忌避効果持続時間を算出する。
本試験において、平均2時間以上の忌避効果持続時間を示す害虫忌避剤の濃度をその害虫忌避剤の有効濃度(有効量)とすることができる。
なお、本発明の組成物は、既存の害虫忌避剤を有効量含まなくても忌避持続効果を有することから、むしろ、成分(A)以外の害虫忌避剤を実質的に含有しないことが好ましい。本発明の組成物中、成分(A)以外の害虫忌避剤の含有量は、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以下、さらにより好ましくは実質0質量%である。
【0080】
成分(A)以外の既存の害虫忌避剤としては、DEET、イカリジン、ジメチルフタレート、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、p-メンタン-3,8-ジオール、カラン-3,4-ジオール、ジ-n-ブチルサクシネート、ヒドロキシアニソール、ロテノン、3-(アセチルブチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、シトロネロール、ユーカリプトール、α-ピネン、ゲラニオール、シトロネラール、カンファー、リナロール、2-ウンデカノン等の公知の害虫忌避化合物の他、シトロネラ油、レモングラス油などの忌避精油等が挙げられる。「忌避精油」とは、植物に含まれる成分を抽出、蒸留、又は圧搾等により得られる精油(エッセンシャルオイル)のうち害虫忌避効果を有するものを意味する。
【0081】
本発明は様々な組成物の形態に適用することができ、例えば、水分を含有しない非水型の組成物、及び水分を含有する油中水型の組成物、或いは水中油型の組成物に用いることができるが、忌避持続効果を向上させる観点、及び組成物を皮膚に塗布した際の耐水性を向上させる観点から、非水型の組成物又は油中水型の組成物とするのが好ましく、さらに皮膚に塗布した時の感触を良いものとする観点から、油中水型の組成物とするのがより好ましい。
【0082】
本発明の組成物は、常法により製造できる。例えば、成分(A)、(B)及び必要に応じその他の成分を配合し、公知の装置を用いて撹拌することにより製造することができる。
【0083】
本発明の組成物が忌避対象とする害虫に特に制限はないが、飛翔害虫に対してより効果的である。
「飛翔害虫」とは、飛行しながら人等の動物に近づき、その皮膚から吸血する害虫、吸血はしなくても飛翔しながら病原細菌等を媒介する害虫、飛行すること自体が人間に対し不快感を与える害虫等をいう。
飛翔害虫の具体例としては、アカイエカ、コガタアカイエカ、チカイエカ、ネッタイイエカ等のイエカ、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ、シナハマダラカ、トウゴウヤブカ、ガンビエハマダラカ、ステフェンスハマダラカ等の蚊;セスジユスリカ、アカムシユスリカ等のユスリカ;クロオオブユ、キアシオオブユ、アオキツメトゲブユ等のブユ;イエバエ、オオイエバエ、ヒメイエバエ、クロバエ、ニクバエ、タネバエ、タマネギバエ、ミバエ、ショウジョウバエ、チョウバエ、チェチェバエ、サシバエ等のハエ;シクロアブ、ウシアブ、メクラアブ、ゴマフアブ等のアブ;トクナガクロヌカカ、オオシマヌカカ、ニワトリヌカカ等のヌカカ;キイロスズメバチ、セグロアシナガバチ、ミツバチ等のハチ等が挙げられる。
本発明の組成物は、これらの中でも、特に蚊に対する忌避持続効果が優れている。前述した蚊の中でも、アカイエカ、コガタアカイエカ、チカイエカ、ネッタイイエカ、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカに対する忌避持続効果に優れる。
【0084】
[害虫の忌避方法、停留抑制方法]
本発明の害虫の忌避方法は、本発明の害虫忌避組成物を、人の皮膚表面に塗布することにより行われる。
また、本発明の害虫の停留抑制方法は、本発明の害虫停留抑制組成物を、害虫、特に飛翔害虫の肢に付着させることによって、害虫が人の皮膚に停留することを防ぐものである。以下、これらの方法を総称して「本発明の方法」ともいう。
【0085】
ここで、「皮膚表面に塗布する」とは、皮膚表面に手などで組成物を直接塗布することだけでなく、噴霧等により組成物を皮膚表面に付着させることを含む。
皮膚表面に塗布する組成物の量は、害虫に対する忌避持続効果を向上させる観点から、1cmあたり、好ましくは0.1mg以上であり、より好ましくは0.2mg以上、さらに好ましくは0.25mg以上である。また、塗布量の上限は、べたつき抑制及び経済性の観点から、1cmあたり、好ましくは10mg以下、より好ましくは7mg以下、さらに好ましくは5mg以下である。
【0086】
本発明の組成物は、蚊に対する忌避持続効果に優れ、安全で、かつ優れた耐水性を兼ね備え、長期保存安定性にも優れる忌避組成物を提供する観点から、下記成分(A)~(C)を含有し、成分(A)以外の害虫忌避剤の含有量が15質量%以下である、油中水型の蚊忌避組成物又は蚊停留抑制組成物であることが好ましい。
(A)25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールからなる群から選ばれる1種以上の不揮発性液状油性成分:40質量%以上90質量%以下
(B)皮膜形成性ポリマー:0.5質量%以上15質量%以下
(C)水:5質量%以上45質量%以下
【0087】
本発明の組成物は、蚊に対する忌避持続効果に優れ、安全で、かつ優れた耐水性を兼ね備え、長期保存安定性にも優れる忌避組成物を提供する観点から、下記成分(A)~(C)を含有し、成分(A)以外の害虫忌避剤の含有量が15質量%以下である、油中水型の蚊忌避組成物又は蚊停留抑制組成物であることが好ましい。
(A)25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールからなる群から選ばれる1種以上の不揮発性液状油性成分:40質量%以上90質量%以下
(B)シリコーン変性ポリノルボルネン、シリコーン変性プルラン、トリメチルシロキシケイ酸、シリコーン構造含有アクリル系ポリマー、及び、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる群から選ばれる1種以上の皮膜形成性ポリマー:0.5質量%以上15質量%以下
(C)水:5質量%以上45質量%以下
【0088】
本発明の組成物は、蚊に対する忌避持続効果に優れ、安全で、かつ優れた耐水性を兼ね備え、長期保存安定性にも優れる忌避組成物を提供する観点から、下記成分(A)~(C)を含有し、成分(A)と成分(B)との質量比[(A)/(B)]が15以上60以下であり、成分(A)以外の害虫忌避剤の含有量が15質量%以下である、油中水型の蚊忌避組成物又は蚊停留抑制組成物であることが好ましい。
(A)25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールからなる群から選ばれる1種以上の不揮発性液状油性成分:40質量%以上90質量%以下
(B)シリコーン変性ポリノルボルネン、シリコーン変性プルラン、トリメチルシロキシケイ酸、シリコーン構造含有アクリル系ポリマー、及び、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる群から選ばれる1種以上の皮膜形成性ポリマー:0.5質量%以上15質量%以下
(C)水:5質量%以上45質量%以下
【0089】
本発明の組成物は、蚊に対する忌避持続効果に優れ、安全で、かつ優れた耐水性を兼ね備え、長期保存安定性にも優れる忌避組成物を提供する観点から、下記成分(A)~(D)を含有し、成分(A)と成分(B)との質量比[(A)/(B)]が15以上60以下であり、成分(A)と成分(C)との質量比[(A)/(C)]が0.2以上15以下であり、成分(A)以外の害虫忌避剤の含有量が15質量%以下である、油中水型の蚊忌避組成物又は蚊停留抑制組成物であることが好ましい。
(A)25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、シリコーン油、エステル油、及び炭化水素油からなる群から選ばれる1種以上の不揮発性液状油性成分:50質量%以上80質量%以下
(B)シリコーン変性ポリノルボルネン、シリコーン変性プルラン、トリメチルシロキシケイ酸、シリコーン構造含有アクリル系ポリマー、及び、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる群から選ばれる1種以上の皮膜形成性ポリマー:0.5質量%以上15質量%以下
(C)水:10質量%以上30質量%以下
(D)界面活性剤:0.05質量%以上5質量%以下
上記組成物において、成分(D)は、HLB8以下のノニオン界面活性剤であることがより好ましい。
【0090】
本発明の害虫の忌避方法は、本発明の組成物が塗布又は付着された対象物に蚊等の害虫が降着しても、害虫がその場に停留しないことによって、害虫を忌避する方法であり、具体的には、蚊等の害虫が、人等の動物の皮膚に降着した後、刺針を差し込むことができる程度の時間、具体的には例えば1秒間以上、動物の皮膚表面に滞在させないという停留抑制効果を有する。かかる効果は、従来にない害虫忌避原理に基づくものであり、しかも肌荒れ等の副作用がなく安全である。また本発明の組成物は優れた耐水性を有しているため、本発明の方法によれば、組成物を皮膚に塗布し、次いで水や汗等の水分に接触させた後であっても害虫忌避効果及び害虫停留抑制効果の持続性に優れる。
【0091】
上述の実施形態に関し、本発明はさらに以下の実施態様を開示する。
<1>
下記成分(A)及び(B)を含有し、成分(A)と成分(B)との質量比[(A)/(B)]が1以上120以下である、害虫忌避組成物又は害虫停留抑制組成物。
(A)25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールからなる群から選ばれる1種以上の不揮発性液状油性成分:40質量%以上99.5質量%以下
(B)皮膜形成性ポリマー:0.5質量%以上15質量%以下
<2>
成分(A)と成分(B)との質量比[(A)/(B)]が好ましくは4以上、より好ましくは6以上、さらに好ましくは15以上であり、好ましくは85以下、より好ましくは60以下、さらに好ましくは30以下である、<1>に記載の組成物。
<3>
成分(A)以外の害虫忌避剤の含有量が15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは4質量%以下、よりさらに好ましくは3質量%以下、よりさらに好ましくは1質量%以下である、<1>又は<2>に記載の組成物。
<4>
成分(A)以外の害虫忌避剤がDEET、イカリジン、3-(アセチルブチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、及びシトロネラ油からなる群から選ばれる1種以上である、<3>に記載の組成物。
<5>
成分(A)の25℃における表面張力が15mN/m以上、好ましくは17mN/m以上であり、30mN/m以下、好ましくは28mN/m以下、より好ましくは25mN/m以下、さらに好ましくは23mN/m以下、よりさらに好ましくは21mN/m以下である、<1>~<4>のいずれか1に記載の組成物。
<6>
成分(A)のB形回転粘度計による23℃における粘度が1mPa・s以上であり、300mPa・s以下、好ましくは210mPa・s以下、より好ましくは100mPa・s以下、さらに好ましくは60mPa・s以下、よりさらに好ましくは40mPa・s以下、よりさらに好ましくは30mPa・s以下である、<1>~<5>のいずれか1に記載の組成物。
<7>
成分(A)の液状油性成分がシリコーン油、エステル油、エーテル油、及び炭化水素油からなる群から選ばれる1種以上、好ましくはシリコーン油、エステル油、及びエーテル油からなる群から選ばれる1種以上、より好ましくはシリコーン油及びエステル油からなる群から選ばれる1種以上、さらに好ましくはシリコーン油である、<1>~<6>のいずれか1に記載の組成物。
<8>
成分(A)の含有量が45質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である、<1>~<7>のいずれか1に記載の組成物。
<9>
成分(B)がシリコーン構造含有ポリマー、ビニル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、及び多糖類系ポリマーからなる群から選ばれる1種以上、好ましくはシリコーン構造含有ポリマー及びビニル系ポリマーからなる群から選ばれる1種以上、より好ましくはシリコーン構造含有ポリマー及びノニオン性ビニル系ポリマーからなる群から選ばれる1種以上、さらに好ましくはシリコーン変性ポリノルボルネン、シリコーン変性プルラン、トリメチルシロキシケイ酸、シリコーン構造含有アクリル系ポリマー、及び、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる群から選ばれる1種以上、よりさらに好ましくはシリコーン変性ポリノルボルネン、シリコーン変性プルラン、トリメチルシロキシケイ酸、及びシリコーン構造含有アクリル系ポリマーからなる群から選ばれる1種以上である、<1>~<8>のいずれか1に記載の組成物。
<10>
成分(B)の含有量が0.7質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、10質量%以下、好ましくは4質量%以下である、<1>~<9>のいずれか1に記載の組成物。
【0092】
<11>
さらに成分(C)として水を含有する、<1>~<10>のいずれか1に記載の組成物。
<12>
成分(C)の含有量が5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、85質量%以下、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下である、<11>に記載の組成物。
<13>
油中水型の組成物であり、組成物中の成分(C)の含有量が5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、40質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である、<12>に記載の組成物。
<14>
成分(A)と成分(C)との質量比[(A)/(C)]が0.1以上、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1以上、よりさらに好ましくは2以上であり、20以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下、よりさらに好ましくは3.5以下である、<11>~<13>のいずれか1に記載の組成物。
<15>
さらに成分(D)として界面活性剤を、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、また、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下含有する、<1>~<14>のいずれか1に記載の組成物。
<16>
成分(D)がHLB8以下、好ましくは6以下、より好ましくは5.5以下であり、好ましくは3以上のノニオン界面活性剤である、<15>に記載の組成物。
<17>
ノニオン界面活性剤がポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、アルキルアルカノールアミド、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリエーテル変性シリコーン、及びグリセリン変性シリコーンかならなる群から選ばれる1種以上、好ましくはポリエーテル変性シリコーン、より好ましくは直鎖型ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、直鎖型ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体、及びこれらの変性体からなる群から選ばれる1種以上である、<16>に記載の組成物。
<18>
さらに成分(E)として揮発性油を、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下含有する、<1>~<17>のいずれか1に記載の組成物。
<19>
下記成分(A)~(C)を含有し、成分(A)以外の害虫忌避剤の含有量が15質量%以下である、油中水型の蚊忌避組成物又は蚊停留抑制組成物。
(A)25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールからなる群から選ばれる1種以上の不揮発性液状油性成分:40質量%以上90質量%以下
(B)皮膜形成性ポリマー:0.5質量%以上15質量%以下
(C)水:5質量%以上45質量%以下
<20>
下記成分(A)~(C)を含有し、成分(A)以外の害虫忌避剤の含有量が15質量%以下である、油中水型の蚊忌避組成物又は蚊停留抑制組成物。
(A)25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、シリコーン油、エステル油、エーテル油、炭化水素油、脂肪族アルコール、及び多価アルコールからなる群から選ばれる1種以上の不揮発性液状油性成分:40質量%以上90質量%以下
(B)シリコーン変性ポリノルボルネン、シリコーン変性プルラン、トリメチルシロキシケイ酸、シリコーン構造含有アクリル系ポリマー、及び、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる群から選ばれる1種以上の皮膜形成性ポリマー:0.5質量%以上15質量%以下
(C)水:5質量%以上45質量%以下
【0093】
<21>
下記成分(A)~(C)を含有し、成分(A)と成分(B)との質量比[(A)/(B)]が15以上60以下であり、成分(A)以外の害虫忌避剤の含有量が15質量%以下である、油中水型の蚊忌避組成物又は蚊停留抑制組成物。
(A)25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、シリコーン油、エステル油、エーテル油、及び炭化水素油からなる群から選ばれる1種以上の不揮発性液状油性成分:50質量%以上80質量%以下
(B)シリコーン変性ポリノルボルネン、シリコーン変性プルラン、トリメチルシロキシケイ酸、シリコーン構造含有アクリル系ポリマー、及び、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる群から選ばれる1種以上の皮膜形成性ポリマー:0.5質量%以上15質量%以下
(C)水:5質量%以上45質量%以下
<22>
下記成分(A)~(D)を含有し、成分(A)と成分(B)との質量比[(A)/(B)]が15以上60以下であり、成分(A)と成分(C)との質量比[(A)/(C)]が0.2以上15以下であり、成分(A)以外の害虫忌避剤の含有量が15質量%以下である、油中水型の蚊忌避組成物又は蚊停留抑制組成物。
(A)25℃における表面張力が40mN/m以下、B形回転粘度計による23℃における粘度が400mPa・s以下である、シリコーン油、エステル油、エーテル油、及び炭化水素油からなる群から選ばれる1種以上の不揮発性液状油性成分:50質量%以上80質量%以下
(B)シリコーン変性ポリノルボルネン、シリコーン変性プルラン、トリメチルシロキシケイ酸、シリコーン構造含有アクリル系ポリマー、及び、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる群から選ばれる1種以上の皮膜形成性ポリマー:0.5質量%以上15質量%以下
(C)水:10質量%以上30質量%以下
(D)界面活性剤:0.05質量%以上5質量%以下
<23>
成分(D)がHLB8以下のノニオン界面活性剤である、<22>の組成物。
<24>
<1>~<23>のいずれか1に記載の組成物を人の皮膚表面に塗布する、害虫の忌避方法。
<25>
<1>~<23>のいずれか1に記載の組成物を害虫の肢に付着させることによって、害虫が人の皮膚に停留することを防ぐ、害虫の停留抑制方法。
【実施例
【0094】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。なお本実施例において、各種測定及び評価は以下の方法により行った。
【0095】
(液状油性成分の表面張力)
液状油性成分の表面張力は、自動表面張力計「Tensiometer K100」(KRUSS社)を使用し、白金プレートを用いたウィルヘルミー法にて、25℃の環境下で静的表面張力を測定した。
【0096】
(液状油性成分の粘度)
JIS K7117-1:1999によるB形回転粘度計として、東機産業(株)「Viscometer TVB-10」を使用した。被測定成分は、それぞれの試料ごとに粘度の値が大きく異なるため、一つの測定条件で全てを正確に測定するのは困難である。そこで、2種類のローターを使用して測定した。粘度は、まず、ローターM2を使用して23℃環境下で、回転速度12rpmで測定した。このとき、2500mPa・s以上の粘度を持つ成分は回転速度6rpmで再度測定し、粘度の値を得た。
一方、20mPa・s以下の粘度を持つ成分は、低粘度用ローターであるLアダプターを使用して、23℃環境下で、回転速度を30rpmに設定して再度測定し、粘度の値を得た。
【0097】
(害虫に対する忌避持続効果の評価)
(I)ヒトスジシマカの準備
ヒトスジシマカは、住友テクノサービス(株)より購入したヒトスジシマカ卵を27℃、相対湿度(RH)60%の条件下ケージ内で飼育し、成長させて成虫としたものを使用した。
透明なプラスチックパンに水を1cm程度張り、購入した卵が産み付けられているろ紙を入れ、蛹へと孵化させた。その後、孵化させた蛹に対して、日々、幼虫用餌として熱帯魚用エサ(テトラミン)を与えた。1週間後、蛹をスポイトで回収し、20mL用プラスチックカップに移し、網を張ったケージに移した。蛹に対して、成虫用の餌として、10質量%スクロースを25mLプラスチックチューブに入れたものを与えた。羽化後、5日間オスとメスを同じケージで飼育することで交尾を行わせた。飼育5日後、成虫を吸虫管を用いて集め、氷上で5分間麻酔後に目視下でオスとメスを分け、メスのみを回収し、評価に用いた。
【0098】
(II)忌避効果持続時間の測定
約100匹のメスヒトスジシマカをプラスチックケージ(30×30×30cm)に移し、27℃、相対湿度(RH)60%の条件下、試験を実施した。被験者の腕が覆われる大きさのゴム製手袋の前腕部に4×5cmの大きさの穴をあけ、各例の組成物を2mg/cmとなるように均一に塗布した。
その後、ヒトスジシマカの活性化のために、プラスチックゲージに息を5秒間吹きかけた。試験は、組成物を塗布した直後の前腕部を、プラスチックゲージに入れることでヒトスジシマカに2分間暴露させ、停留数をカウントすることで行った。
トータルで2回停留された時点で試験を終了とし、試験終了まで30分間毎に2分間の暴露を行った。30分目の暴露中に2回目の停留がされた場合は、忌避効果持続時間を0分間と判定し、60分目の暴露で2回目の停留がされた場合は忌避効果持続時間を30分間と判定した。試験は3人の被験者にて行い、平均の忌避効果持続時間を算出した。
【0099】
(水流暴露後の忌避効果持続時間の測定(耐水性評価))
被験者の前腕部(6×6cmの範囲)に各例の組成物を2mg/cmとなるように均一に塗布した。
プロペラ(150rpm)で水流を発生させることができる水浴(29℃)に前腕を浸し、60分間水流に暴露させた。自然乾燥後、前腕部を4×5cmの大きさの穴をあけたゴム製手袋に挿入した。その後、ヒトスジシマカの活性化のために、プラスチックゲージに息を5秒間吹きかけた。試験は、組成物を塗布した前腕部を、プラスチックゲージに入れることでヒトスジシマカに2分間暴露させ、停留数をカウントすることで行った。
トータルで2回停留された時点で試験を終了とし、試験終了まで30分間毎に2分間の暴露を行った。
30分目の暴露中に2回目の停留がされた場合は、忌避効果持続時間を0分間と判定し、60分目の暴露で2回目の停留がされた場合は忌避効果持続時間を30分間と判定した。試験は3人の被験者にて行い、平均の忌避効果持続時間を算出した。
【0100】
(長期保存安定性の評価)
100mLのガラス瓶に、各例の組成物80mLを入れ、密閉して、50℃で1か月間保存した後、組成物中の油相の分離の有無を目視により確認し、下記基準で示した。
A:変化なし。
B:僅かに油相の分離が見られる。
C:明らかな油相の分離が見られる。
【0101】
実施例1~31、比較例1~8(組成物の製造及び評価)
表1に示す各成分を表2~5に示す配合量にて配合し、T.K.ロボミックス(特殊機化工業(株))の撹拌部をT.K.ホモミキサー MARKII2.5型に換えたものを用いて8,000rpmで2分撹拌する工程を経て、各例の油中水型組成物を得た。表に記載した(A)~(E)の表記は、それぞれ本明細書における成分(A)~(E)に対応し、(a)の表記は、本明細書における成分(A)の範囲外の液状油性成分に対応する。また表2~5に記載した配合量は各成分の有効成分量(質量%)である。得られた組成物を用いて、前記方法により各種評価を行った。結果を表2~5に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
【表3】
【0105】
【表4】
【0106】
【表5】
【0107】
表2~5より、成分(A)及び(B)を所定量含有する本発明の組成物は、忌避効果が長時間持続し、かつ水流暴露後の忌避効果持続時間も長く耐水性に優れる。また、長期保存安定性も良好であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明によれば、害虫、特に飛翔害虫に対する忌避持続効果に優れ、安全で、かつ優れた耐水性を有し、皮膚への施用に適した害虫忌避組成物、害虫停留抑制組成物、害虫の忌避方法、及び害虫の停留抑制方法を提供することができる。