(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】モータサイクルの挙動を制御する制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
B60W 30/16 20200101AFI20240403BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
B60W30/16
B60W40/02
(21)【出願番号】P 2019557711
(86)(22)【出願日】2018-12-04
(86)【国際出願番号】 IB2018059601
(87)【国際公開番号】W WO2019111139
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-03-29
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2017234051
(32)【優先日】2017-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】プファウ ラーズ
【合議体】
【審判長】山本 信平
【審判官】青木 良憲
【審判官】倉橋 紀夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/030131(WO,A1)
【文献】特開2006-88770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/16
B60W 40/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータサイクル(100)の挙動を制御する制御装置(50)であって、
アダプティブクルーズ動作の追従対象車両(AT)を特定する追従対象車両特定部(52)と、
走行中の前記モータサイクル(100)に対する前記追従対象車両(AT)の相対的な位置情報である車両位置情報を取得する車両位置情報取得部(53)と、
前記車両位置情報取得部(53)で取得された前記車両位置情報に基づいて、前記アダプティブクルーズ動作での制御量を設定する制御量設定部(54)と、
前記モータサイクル(100)に、前記制御量設定部(54)で設定された前記制御量に応じた前記アダプティブクルーズ動作を実行させる実行部(55)と、
を備えており、
更に、走行レーン(L)を走行中の前記モータサイクル(100)に対するレーン境界(LV_R、LV_L)の相対的な位置情報であるレーン位置情報を取得するレーン位置情報取得部(51)を備えており、
前記追従対象車両特定部(52)は、
前記モータサイクル
(100)の前方に位置する複数の先行車両(A1、A2、A3)を認識し、
前記レーン位置情報取得部(51)で取得された前記レーン位置情報に基づいて、
前記複数の先行車両(A1、A2、A3)のうちの、前記走行レーン(L)に
おいて前記モータサイクル(100)の斜め前方を走行する他のモータサイクルである第1車両(A1)と、前記走行レーン(L)において前記モータサイクル(100)の正面を前記第1車両(A1)よりも先行して走行する他のモータサイクルである第2車両(A2)と、を少なくと
も特定し、
前記モータサイクル(100)の走行方向での
、前記モータサイクル(100)と
、前記
第1車両(A1
)および前記第2車両(A2)
のそれぞれと
、の距離(AD_1、AD_2)を特定し、
前記
第1車両(A1
)および前記第2車両(A2)のうち
の、前記距離(AD_1、AD_2)が最も短い先行車両(A1)を、前記追従対象車両(AT)として特定する、
制御装置。
【請求項2】
前記レーン位置情報取得部(51)は、前記走行レーン(L)の幅方向での前記モータサイクル(100)と前記レーン境界(LV_R、LV_L)との距離であるレーンマージン(LM_R、LM_L)を、前記レーン位置情報として取得し、
前記追従対象車両特定部(52)は、
前記走行レーン(L)の幅方向での
、前記モータサイクル(100)と
、前記複数の先行車両(A1、A2、A3)
のそれぞれと
、の距離である先行車両マージン(AM_1、AM_2、AM_3)を特定し、
前記レーンマージン(LM_R、LM_L)と前記先行車両マージン(AM_1、AM_2、AM_3)との大小関係を比較することにより、前記複数の先行車両(A1、A2、A3)が前記走行レーン(L)に位置するか否かを判別する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記先行車両マージン(AM_1、AM_2、AM_3)は、前記走行レーン(L)の幅方向での、前記モータサイクル(100)と、前記先行車両(A1、A2、A3)の該モータサイクル(100)に最も近い箇所と、の距離である、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記モータサイクル(100)は測距センサ(20)を有し、
前記車両位置情報は、前記測距センサ(20)の出力に基づいて取得される、
請求項1から3の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記モータサイクル(100)は画像センサ(10)を有し、
前記レーン位置情報は、前記画像センサ(10)の出力に基づいて取得される、
請求項1から4の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
モータサイクル(100)の挙動を制御する制御方法であって、
アダプティブクルーズ動作の追従対象車両(AT)を特定する追従対象車両特定ステップ(S102)と、
走行中の前記モータサイクル(100)に対する前記追従対象車両(AT)の相対的な位置情報である車両位置情報を取得する車両位置情報取得ステップ(S103)と、
前記車両位置情報取得ステップ(S103)で取得された前記車両位置情報に基づいて、前記アダプティブクルーズ動作での制御量を設定する制御量設定ステップ(S104)と、
前記モータサイクル(100)に、前記制御量設定ステップ(S104)で設定された前記制御量に応じた前記アダプティブクルーズ動作を実行させる実行ステップ(S105)と、
を備えており、
更に、走行レーン(L)を走行中の前記モータサイクル(100)に対するレーン境界(LV_R、LV_L)の相対的な位置情報であるレーン位置情報を取得するレーン位置情報取得ステップ(S101)を備えており、
前記追従対象車両特定ステップ(S102)では、
前記モータサイクル
(100)の前方に位置する複数の先行車両(A1、A2、A3)を認識し、
前記レーン位置情報取得ステップ(S101)で取得された前記レーン位置情報に基づいて、
前記複数の先行車両(A1、A2、A3)のうちの、前記走行レーン(L)に
おいて前記モータサイクル(100)の斜め前方を走行する他のモータサイクルである第1車両(A1)と、前記走行レーン(L)において前記モータサイクル(100)の正面を前記第1車両(A1)よりも先行して走行する他のモータサイクルである第2車両(A2)と、を少なくと
も特定し、
前記モータサイクル(100)の走行方向での
、前記モータサイクル(100)と
、前記
第1車両(A1
)および前記第2車両(A2)
のそれぞれと
、の距離(AD_1、AD_2)を特定し、
前記
第1車両(A1
)および前記第2車両(A2)のうち
の、前記距離(AD_1、AD_2)が最も短い先行車両(A1)を、前記追従対象車両(AT)として特定する、 制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、ライダーによるモータサイクルの運転を適切に支援することができる制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のモータサイクル(自動二輪車又は自動三輪車)に関する技術として、ライダーによる運転を支援するためのものがある。例えば、特許文献1には、走行方向又は実質的に走行方向にある障害物を検出するための検出装置の出力に基づいて、不適切に障害物に接近していることをモータサイクルのライダーへ警告する運転者支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ライダーによる運転を支援するために、モータサイクルにアダプティブクルーズ動作を実行させることが考えられる。アダプティブクルーズ動作では、モータサイクルが走行する走行レーンの先行車両が追従対象車両として特定され、モータサイクルと追従対象車両の相対的な位置情報が取得され、モータサイクルから追従対象車両までの距離が距離基準値に近づくように、モータサイクルの挙動が制御される。
【0005】
ここで、幅広車両(例えば4輪を有する乗用車、トラック等)で実行されるアダプティブクルーズ動作に関しては、既に広く普及しており、追従対象車両を特定するための種々の方式が既に確立されている。しかしながら、モータサイクルで実行されるアダプティブクルーズ動作に関しては、追従対象車両を特定するための好適な方式が未知であるとの課題がある。つまり、モータサイクルは、車幅が狭いため、走行レーンの幅方向における走行位置の自由度が大きい。そのため、モータサイクルにアダプティブクルーズ動作を実行させる場合には、幅広車両にアダプティブクルーズ動作を実行させる場合と比較して、追従対象車両の特定の困難性が高い。そして、モータサイクルにアダプティブクルーズを実行させる場合には、追従対象車両を適切に特定できる方式を、幅広車両で実行されるアダプティブクルーズ動作とは異なる観点で確立させなければならない。
【0006】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、ライダーによるモータサイクルの運転を適切に支援することができる制御装置及び制御方法を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る制御装置は、モータサイクルの挙動を制御する制御装置であって、アダプティブクルーズ動作の追従対象車両を特定する追従対象車両特定部と、走行中の前記モータサイクルに対する前記追従対象車両の相対的な位置情報である車両位置情報を取得する車両位置情報取得部と、前記車両位置情報取得部で取得された前記車両位置情報に基づいて、前記アダプティブクルーズ動作での制御量を設定する制御量設定部と、前記モータサイクルに、前記制御量設定部で設定された前記制御量に応じた前記アダプティブクルーズ動作を実行させる実行部と、を備えており、更に、走行中の前記モータサイクルに対するレーン境界の相対的な位置情報であるレーン位置情報を取得するレーン位置情報取得部を備えており、前記追従対象車両特定部は、前記レーン位置情報取得部で取得された前記レーン位置情報に基づいて、前記追従対象車両を特定する。
【0008】
本発明に係る制御方法は、アダプティブクルーズ動作の追従対象車両を特定する追従対象車両特定ステップと、走行中の前記モータサイクルに対する前記追従対象車両の相対的な位置情報である車両位置情報を取得する車両位置情報取得ステップと、前記車両位置情報取得ステップで取得された前記車両位置情報に基づいて、前記アダプティブクルーズ動作での制御量を設定する制御量設定ステップと、前記モータサイクルに、前記制御量設定ステップで設定された前記制御量に応じた前記アダプティブクルーズ動作を実行させる実行ステップと、を備えており、更に、走行中の前記モータサイクルに対するレーン境界の相対的な位置情報であるレーン位置情報を取得するレーン位置情報取得ステップを備えており、前記追従対象車両特定ステップでは、前記レーン位置情報取得ステップで取得された前記レーン位置情報に基づいて、前記追従対象車両が特定される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る制御装置及び制御方法では、モータサイクルでアダプティブクルーズ動作が実行される際に、追従対象車両が、モータサイクルに対するレーン境界の相対的な位置情報に基づいて特定される。つまり、モータサイクルが走行レーンの幅方向の何処を走行しているかが加味された上で、追従対象車両が特定される。そのため、走行レーンの幅方向における走行位置の自由度が大きいとの特徴があるモータサイクルに特化した、適切なアダプティブクルーズ動作が実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る挙動制御システムの、モータサイクルへの搭載状態を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係る挙動制御システムの、システム構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態1に係る挙動制御システムの、制御装置の追従対象車両特定部の処理を説明するための図である。
【
図4】本発明の実施の形態1に係る挙動制御システムの、制御装置の処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る制御装置及び制御方法について、図面を用いて説明する。
【0012】
なお、「モータサイクル」との用語は、ライダーが跨って搭乗する鞍乗型車両のうちの自動二輪車又は自動三輪車を意味する。また、以下では、モータサイクルが自動二輪車である場合を説明しているが、モータサイクルが自動三輪車であってもよい。
【0013】
また、以下で説明する構成及び処理等は一例であり、本発明に係る制御装置及び制御方法は、そのような構成及び処理等である場合に限定されない。また、以下では、同一の又は類似する説明を適宜簡略化又は省略している。また、各図において、同一の又は類似する部材又は部分については、符号を付すことを省略しているか、又は、同一の符号を付している。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。
【0014】
実施の形態1.
以下に、実施の形態1に係る挙動制御システムを説明する。
【0015】
<挙動制御システムの構成>
実施の形態1に係る挙動制御システムの構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る挙動制御システムの、モータサイクルへの搭載状態を示す図である。
図2は、本発明の実施の形態1に係る挙動制御システムの、システム構成を示す図である。
図3は、本発明の実施の形態1に係る挙動制御システムの、制御装置の追従対象車両特定部の処理を説明するための図である。
【0016】
図1に示されるように、挙動制御システム1は、モータサイクル100に搭載される。挙動制御システム1は、少なくとも、モータサイクル100の走行路面を撮像する画像センサ10と、モータサイクル100の前方からの反射を受信する測距センサ20と、モータサイクル100の走行速度を知るための速度センサ30と、制御装置(ECU)50と、を含む。
【0017】
画像センサ10は、モータサイクル100の前部又は側部に、走行路面を向いた状態で取り付けられる。画像センサ10の検出範囲は、モータサイクル100が走行している走行レーンLの幅方向を規定する両側のレーン境界LV_R、LV_Lを撮像可能な広さである(
図3参照)。両側のレーン境界LV_R、LV_Lが、1つの画像センサ10で撮像されてもよく、また、別々の画像センサ10で撮像されてもよい。
【0018】
測距センサ20は、モータサイクル100の前部に、前方を向いた状態で取り付けられる。測距センサ20は、例えば、Radarセンサ、Lidarセンサ、超音波センサ、ステレオビジョンセンサ等であり、モータサイクル100からその前方に位置する物体までの距離及び方位を検出するものである。測距センサ20は、モータサイクル100の前方の交通状況を取得し得る他の検出装置であってもよく、また、画像センサ10の機能を併せ持っていてもよい。
【0019】
速度センサ30は、モータサイクル100の運動部分に取り付けられる。例えば、速度センサ30は、モータサイクル100の前輪及び後輪の回転速度を検出するものである。速度センサ30は、モータサイクル100の走行速度を知ることができるものであれば、どのようなものであってもよい。
【0020】
図2に示されるように、制御装置50は、レーン位置情報取得部51と、追従対象車両特定部52と、車両位置情報取得部53と、制御量設定部54と、実行部55と、を含む。制御装置50の各部は、1つの筐体に纏めて設けられていてもよく、また、複数の筐体に分けられて設けられていてもよい。また、制御装置50の一部又は全ては、例えば、マイコン、マイクロプロセッサユニット等で構成されてもよく、また、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
【0021】
制御装置50には、各種センサ(画像センサ10、測距センサ20、速度センサ30等)の出力が入力される。また、制御装置50は、挙動制御機構90に信号を出力して、モータサイクル100の挙動を制御する。挙動制御機構90には、車輪制動機構、エンジン駆動機構等が含まれる。つまり、制御装置50は、モータサイクル100に搭載されている挙動制御機構90の制御を担う装置である。なお、モータサイクル100の走行方向は、自動的に制御されるのではなく、ライダーによるモータサイクル100の操作に依存して変化する。
【0022】
レーン位置情報取得部51は、画像センサ10の出力に基づいて、走行中のモータサイクル100に対するレーン境界LV_R、LV_L(
図3参照)の相対的な位置情報である、レーン位置情報を取得する。
【0023】
具体的には、
図3に示される状況において、レーン位置情報取得部51は、画像センサ10に撮像された画像でのレーン境界LV_R、LV_Lの位置に基づいて、レーンマージンLM_R、LM_Lを取得する。レーンマージンLM_Rは、走行レーンLの幅方向でのモータサイクル100と右側のレーン境界LV_Rとの距離として定義される。また、レーンマージンLM_Lは、走行レーンLの幅方向でのモータサイクル100と左側のレーン境界LV_Lとの距離として定義される。
【0024】
なお、レーンマージンLM_R、LM_Lは、画像センサ10からレーン境界LV_R、LV_Lまでの距離と定義されてもよく、また、モータサイクル100の各部からレーン境界LV_R、LV_Lまでの距離と定義されてもよい。また、レーンマージンLM_R、LM_Lは、モータサイクル100から、レーン境界LV_R、LV_Lの中心までの距離と定義されてもよく、また、モータサイクル100から、レーン境界LV_R、LV_Lのモータサイクル100に近い側のエッジまでの距離と定義されてもよい。また、レーン境界LV_R、LV_Lは、レーンマーク自体と定義されてもよく、また、モータサイクル100の走行方向において断続的に並ぶ2つのレーンマークを結ぶ想像上の境界と定義されてもよい。また、レーン位置情報取得部51が、レーンマージンLM_R、LM_Lに実質的に換算可能な他の物理量を、レーンマージンLM_R、LM_Lとして取得してもよい。例えば、レーン位置情報取得部51が、走行レーンLの幅方向でのモータサイクル100とレーン境界LV_R、LV_Lとの距離に実質的に換算可能な他の距離をレーンマージンLM_R、LM_Lとして取得してもよく、また、画像センサ10のピクセル数をレーンマージンLM_R、LM_Lとして取得してもよい。
【0025】
追従対象車両特定部52は、測距センサ20の出力と、レーン位置情報取得部51で取得されたレーン位置情報と、に基づいて、モータサイクル100にアダプティブクルーズ動作を実行させる際の追従対象車両ATを特定する。
【0026】
具体的には、
図3に示される状況において、追従対象車両特定部52は、まず、測距センサ20の出力に基づいて、測距センサ20の検出範囲R内に位置する全ての先行車両A1、A2、A3を認識する。ここで、検出範囲Rの特性(例えば、広さ、方向等)は、制御可能であってもよく、また、制御不能であってもよい。
【0027】
追従対象車両特定部52は、走行レーンLの幅方向でのモータサイクル100と先行車両A1、A2、A3のそれぞれとの距離として定義される、先行車両マージンAM_1、AM_2、AM_3を、測距センサ20の出力に基づいて取得する。そして、追従対象車両特定部52は、先行車両マージンAM_1、AM_2、AM_3とレーンマージンLM_R、LM_Lの大小関係を比較し、モータサイクル100が走行している走行レーンLに位置する先行車両A1、A2を抽出する。つまり、走行レーンLに位置しない先行車両A3は、追従対象車両ATの候補から除外される。
【0028】
例えば、先行車両A1が走行レーンLに位置するか否かを判別するために、追従対象車両特定部52は、先行車両マージンAM_1を、先行車両A1を基準としてモータサイクル100の反対側にあるレーン境界LV_Rに係るレーンマージンLM_Rと比較し、先行車両マージンAM_1がレーンマージンLM_Rよりも小さい場合には、先行車両A1は走行レーンLに位置すると判別する。一方、先行車両マージンAM_1がレーンマージンLM_Rよりも大きい場合には、先行車両A1は走行レーンLに位置しないと判別する。
【0029】
なお、先行車両マージンAM_1、AM_2、AM_3は、測距センサ20から先行車両A1、A2、A3までの距離と定義されてもよく、また、モータサイクル100の各部から先行車両A1、A2、A3までの距離と定義されてもよい。また、先行車両マージンAM_1、AM_2、AM_3は、モータサイクル100から先行車両A1、A2、A3のモータサイクル100に最も近い箇所までの距離と定義されてもよく、また、モータサイクル100から先行車両A1、A2、A3の車軸上の後端までの距離と定義されてもよい。また、追従対象車両特定部52が、先行車両マージンAM_1、AM_2、AM_3に実質的に換算可能な他の物理量を、先行車両マージンAM_1、AM_2、AM_3として取得してもよい。例えば、追従対象車両特定部52が、走行レーンLの幅方向でのモータサイクル100と先行車両A1、A2、A3との距離に実質的に換算可能な他の距離を先行車両マージンAM_1、AM_2、AM_3として取得してもよい。
【0030】
モータサイクル100が走行している走行レーンLに位置する先行車両A1、A2が抽出されると、追従対象車両特定部52は、モータサイクル100の走行方向でのモータサイクル100と先行車両A1、A2のそれぞれとの距離AD_1、AD_2を、測距センサ20の出力に基づいて取得する。そして、距離AD_1、AD_2のうちから最短のものを特定し、その最短の距離AD_1に該当する先行車両A1を、追従対象車両ATとして特定する。
【0031】
なお、距離AD_1、AD_2は、測距センサ20から先行車両A1、A2までの距離と定義されてもよく、また、モータサイクル100の各部から先行車両A1、A2までの距離と定義されてもよい。また、距離AD_1、AD_2は、モータサイクル100から、先行車両A1、A2の車軸上の後端までの距離と定義されてもよく、また、モータサイクル100から、先行車両A1、A2のモータサイクル100に最も近い箇所までの距離と定義されてもよい。また、追従対象車両特定部52が、距離AD_1、AD_2に実質的に換算可能な他の物理量を、距離AD_1、AD_2として取得してもよい。例えば、追従対象車両特定部52が、走行レーンLの延在方向でのモータサイクル100と先行車両A1、A2のそれぞれとの距離を、距離AD_1、AD_2として取得してもよく、モータサイクル100と先行車両A1、A2のそれぞれとの直線距離を、距離AD_1、AD_2として取得してもよい。
【0032】
車両位置情報取得部53は、走行中のモータサイクル100に対する追従対象車両ATの相対的な位置情報である、車両位置情報を取得する。具体的には、追従対象車両特定部52において取得された、モータサイクル100の走行方向でのモータサイクル100と先行車両A1との距離AD_1を、車両位置情報として取得する。車両位置情報取得部53が、追従対象車両特定部52で取得された距離AD_1を流用することなく、距離AD_1を別途取得してもよい。
【0033】
制御量設定部54は、車両位置情報取得部53で取得された車両位置情報と、速度センサ30の出力と、に基づいて、アダプティブクルーズ動作での制御量を設定する。具体的には、制御量設定部54は、距離AD_1が距離基準値に近づくような制御量(速度、加速度等)を設定する。距離基準値は、モータサイクル100から追従対象車両ATまでの距離としてライダーの安全性を確保し得る値に設定される。また、制御量設定部54は、モータサイクル100の走行速度が速度基準値を超えないような制御量(速度、加速度等)を設定する。速度基準値は、例えば、ライダーによって適宜設定され得る。
【0034】
実行部55は、制御量設定部54で設定された制御量に応じたアダプティブクルーズ動作を、モータサイクル100に実行させる。具体的には、実行部55は、制御量設定部54で設定された制御量に応じた信号を挙動制御機構90に出力する。
【0035】
<挙動制御システムの処理>
実施の形態1に係る挙動制御システムの処理について説明する。
図4は、本発明の実施の形態1に係る挙動制御システムの、制御装置の処理フローを示す図である。
【0036】
制御装置50は、ライダーがアダプティブクルーズ動作をONに設定すると、モータサイクル100の走行中において、
図4に示される処理フローを繰り返す。
【0037】
(レーン位置情報取得ステップ)
ステップS101において、制御装置50のレーン位置情報取得部51は、画像センサ10の出力に基づいて、走行中のモータサイクル100に対するレーン境界LV_R、LV_Lの相対的な位置情報である、レーン位置情報を取得する。
【0038】
(追従対象車両特定ステップ)
ステップS102において、制御装置50の追従対象車両特定部52は、測距センサ20の出力と、レーン位置情報取得部51で取得されたレーン位置情報と、に基づいて、追従対象車両ATを特定する。
図3に示される例においては、モータサイクル100の前方の交通状況を取得するための検出装置(例えば、測距センサ20)の検出範囲R内に位置する先行車両A1、A2、A3のうちの、モータサイクル100の走行レーンLに位置し、且つ、モータサイクル100の走行方向でのモータサイクル100からの距離が最も短い先行車両A1が、追従対象車両ATとして特定される。
【0039】
(車両位置情報取得ステップ)
ステップS103において、制御装置50の車両位置情報取得部53は、走行中のモータサイクル100に対する追従対象車両ATの相対的な位置情報である、車両位置情報を取得する。
【0040】
(制御量設定ステップ)
ステップS104において、制御装置50の制御量設定部54は、車両位置情報取得部53で取得された車両位置情報と、速度センサ30の出力と、に基づいて、アダプティブクルーズ動作での制御量を設定する。
【0041】
(実行ステップ)
ステップS105において、制御装置50の実行部55は、制御量設定部54で設定された制御量に応じたアダプティブクルーズ動作を、モータサイクル100に実行させる。
【0042】
<挙動制御システムの効果>
実施の形態1に係る挙動制御システムの効果について説明する。
制御装置50が、走行中のモータサイクル100に対するレーン境界LV_R、LV_Lの相対的な位置情報であるレーン位置情報を取得するレーン位置情報取得部51を備えており、追従対象車両特定部52は、レーン位置情報取得部51で取得されたレーン位置情報に基づいて、追従対象車両ATを特定する。つまり、モータサイクル100が走行レーンLの幅方向の何処を走行しているかが加味された上で、追従対象車両ATが特定される。そのため、走行レーンLの幅方向における走行位置の自由度が大きいとの特徴があるモータサイクル100に特化した、適切なアダプティブクルーズ動作が実現可能である。
【0043】
例えば、
図3に示される例において、モータサイクル100が走行レーンLの幅方向の何処を走行しているかが加味されずに追従対象車両ATが特定される場合には、モータサイクル100の走行方向でのモータサイクル100からの距離が最も短い先行車両A3が、追従対象車両ATとして特定されることとなる。先行車両A3は、モータサイクル100と異なるレーンに位置する車両であるため、アダプティブクルーズ動作の追従対象車両ATとして不適格である。しかしながら、モータサイクル100が、走行レーンLの幅方向における走行位置の自由度が大きいとの特徴を有していることで、モータサイクル100と異なるレーンに位置する先行車両A3が追従対象車両ATとして特定されてしまうケースが生じやすい。他方、そのようなケースを生じにくくするために、モータサイクル100の前方の交通状況を取得するための検出装置(例えば、測距センサ20)の検出範囲Rを狭く設定してしまうと、先行車両A1が検出範囲R外に位置してしまい、モータサイクル100が、先行車両A1の前を走行する先行車両A2に追従して、本来追従すべき先行車両A1の脇をすり抜けるケースが生じてやすくなってしまう。
【0044】
それに対して、実施の形態1に係る挙動制御システムでは、モータサイクル100が走行レーンLの幅方向の何処を走行しているかが加味された上で、追従対象車両ATが特定されるため、モータサイクル100の前方の交通状況を取得するための検出装置(例えば、測距センサ20)の検出範囲Rを適切な広さに維持しつつ、本来追従すべき先行車両A1を適切に特定することが可能となる。
【0045】
特に、モータサイクル100が複数のモータサイクルとグループ走行を行う場合、つまり、先行車両A1、A2がモータサイクルである場合には、走行レーンLの幅方向における先行車両A1、A2の走行位置の自由度も大きくなるため、モータサイクル100の前方の交通状況を取得するための検出装置(例えば、測距センサ20)の検出範囲Rを狭く設定することが、より困難になる。そのため、モータサイクル100が走行レーンLの幅方向の何処を走行しているかが加味された上で、追従対象車両ATが特定されることは、モータサイクル100がグループ走行を行う状況において特に有用である。
【0046】
好ましくは、制御装置50では、追従対象車両特定部52が、モータサイクル100の走行レーンLに位置し、且つ、モータサイクル100の走行方向でのモータサイクル100からの距離が最も短い先行車両A1を、追従対象車両ATとして特定する。そのため、モータサイクル100に特化した、適切なアダプティブクルーズ動作の実現が確実化される。
【0047】
特に、レーン位置情報取得部51が、走行レーンLの幅方向でのモータサイクル100とレーン境界LV_R、LV_Lとの距離であるレーンマージンLM_R、LM_Lを、レーン位置情報として取得し、追従対象車両特定部52が、走行レーンLの幅方向でのモータサイクル100と先行車両A1、A2、A3との距離である先行車両マージンAM_1、AM_2、AM_3と、レーンマージンLM_R、LM_Lと、に基づいて、先行車両A1、A2、A3が走行レーンLに位置するか否かを判別するとよい。そのような構成により、モータサイクル100に特化した、適切なアダプティブクルーズ動作の実現が更に確実化される。
【0048】
更に、先行車両マージンAM_1、AM_2、AM_3が、走行レーンLの幅方向での、モータサイクル100と、先行車両A1、A2、A3のモータサイクル100に最も近い箇所と、の距離であるとよい。そのような構成により、先行車両A1、A2、A3が走行レーンLに位置するか否かの判別が、先行車両A1、A2、A3の車幅に影響されることを抑制することができる。
【0049】
以上、実施の形態1について説明したが、本発明は実施の形態の説明に限定されない。例えば、実施の形態の全て又は一部のみが実施されてもよい。また、制御装置50における各ステップの順序が入れ替えれられてもよい。
【0050】
つまり、実施の形態1においては、画像センサ10が、レーン境界LV_R及びレーン境界LV_Lの両方を撮像する場合を説明したが、制御装置50が走行レーンLの幅を他の情報源(例えば、地図情報等)から取得できるのであれば、画像センサ10が、レーン境界LV_R及びレーン境界LV_Lの一方のみを撮像してもよい。
【0051】
また、実施の形態1においては、走行レーンLに位置する先行車両A1、A2が抽出された後に、抽出された先行車両A1、A2に係る距離AD_1、AD_2のみが取得される場合を説明したが、全ての先行車両A1、A2、A3に係る距離AD_1、AD_2、AD_3が取得された後に、走行レーンLに位置し、且つ、モータサイクル100の走行方向でのモータサイクル100からの距離が最も短い先行車両A1が抽出されてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 挙動制御システム、10 画像センサ、20 測距センサ、30 速度センサ、50 制御装置、51 レーン位置情報取得部、52 追従対象車両特定部、53 車両位置情報取得部、54 制御量設定部、55 実行部、90 挙動制御機構、100 モータサイクル、R 検出範囲、L 走行レーン、LV_R、LV_L レーン境界、A1、A2、A3 先行車両、AT 追従対象車両、LM_R、LM_L レーンマージン、AM_1、AM_2、AM_3 先行車両マージン、AD_1、AD_2 モータサイクルと先行車両との距離。