(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】ポリウレタン樹脂およびコーティング材
(51)【国際特許分類】
C08G 18/66 20060101AFI20240403BHJP
C08G 18/73 20060101ALI20240403BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20240403BHJP
C09D 175/06 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C08G18/66 007
C08G18/73
C09D175/04
C09D175/06
(21)【出願番号】P 2020009775
(22)【出願日】2020-01-24
【審査請求日】2022-10-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(72)【発明者】
【氏名】薄井 裕太
(72)【発明者】
【氏名】中島 烈士
(72)【発明者】
【氏名】福田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】近藤 隆博
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/136892(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/063729(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/046369(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリイソシアネートおよび/またはその誘導体を含むポリイソシアネートと、
活性水素基を分子末端に2つ以上有し、ポリオキシエチレン基を側鎖に有するポリオキシエチレン側鎖含有活性水素化合物と、
水酸基を分子末端に2つ以上有する低分子量ポリオールと、
水酸基を分子末端に2つ以上有する高分子量ポリオール(但し、前記ポリオキシエチレン側鎖含有活性水素化合物を除く。)と、
鎖伸長剤と含む原料成分の反応生成物であり、
前記低分子量ポリオールが、炭素環を有する炭素環含有低分子量ポリオールを含み、
前記炭素環含有低分子量ポリオールが、芳香環含有低分子量ポリオールおよび脂環含有低分子量ポリオールを含み、
前記芳香環含有低分子量ポリオールの配合割合が、前記芳香環含有低分子量ポリオールおよび前記脂環含有低分子量ポリオールの総量100質量部に対して、60質量部以上
80質量部以下であり、
前記脂環含有低分子量ポリオールの配合割合が、前記芳香環含有低分子量ポリオールおよび前記脂環含有低分子量ポリオールの総量100質量部に対して、
20質量部以上40質量部以下であることを特徴とする、ポリウレタン樹脂。
【請求項2】
前記高分子量ポリオールが、ポリカーボネートポリオールまたはポリエステルポリオールを含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン樹脂。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポリウレタン樹脂を含むことを特徴とする、コーティング材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂およびコーティング材に関し、詳しくは、ポリウレタン樹脂およびそのポリウレタン樹脂を含むコーティング材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷の観点から、有機溶剤の使用を低減することが望まれており、溶媒として有機溶剤を使用する有機溶媒系ポリウレタン樹脂から、分散媒として水を使用する水性ポリウレタン樹脂への転換が検討されている。
【0003】
このような水性ポリウレタン樹脂として、例えば、4、4´-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)を含むポリイソシアネートと、ポリカーボネートポリオールからなる疎水性高分子量ポリオールと、エチレングリコールを含む低分子量ポリオールと、ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールとの反応生成物である水性ポリウレタン樹脂が提案されている(例えば、特許文献1の実施例1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、このような水性ポリウレタン樹脂を用いて得られる被膜には、目的および用途に応じて、触感(低静摩擦係数および低硬度)が要求される場合がある。
【0006】
本発明は、触感に優れる被膜を得ることができるポリウレタン樹脂、および、そのポリウレタン樹脂を含むコーティング材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明[1]は、脂肪族ポリイソシアネートおよび/またはその誘導体を含むポリイソシアネートと、活性水素基を分子末端に2つ以上有し、ポリオキシエチレン基を側鎖に有するポリオキシエチレン側鎖含有活性水素化合物と、水酸基を分子末端に2つ以上有する低分子量ポリオールと、水酸基を分子末端に2つ以上有する高分子量ポリオールと、鎖伸長剤と含む原料成分の反応生成物であり、前記低分子量ポリオールが、炭素環を有する炭素環含有低分子量ポリオールを含む、ポリウレタン樹脂である。
【0008】
本発明[2]は、前期高分子量ポリオールが、ポリカーボネートポリオールまたはポリエステルポリオールを含む、上記[1]に記載のポリウレタン樹脂を含んでいる。
【0009】
本発明[3]は、前記炭素環含有低分子量ポリオールが、芳香環含有低分子量ポリオールを含む、上記[1]または[2]に記載のポリウレタン樹脂を含んでいる。
【0010】
本発明[4]は、前記炭素環含有低分子量ポリオールが、芳香環含有低分子量ポリオールおよび脂環含有低分子量ポリオールを含む、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載のポリウレタン樹脂を含んでいる。
【0011】
本発明[5]は、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載のポリウレタン樹脂を含む、コーティング材を含んでいる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリウレタン樹脂は、脂肪族ポリイソシアネートおよび/またはその誘導体を含むポリイソシアネートと、ポリオキシエチレン側鎖含有活性水素化合物と、炭素環を有する炭素環含有低分子量ポリオールを含む低分子量ポリオールと、高分子量ポリオールと、鎖伸長剤と含む原料成分の反応生成物である。
【0013】
そのため、このポリウレタン樹脂を用いて得られる被膜は、触感に優れる。詳しくは、この被膜の静摩擦係数を低くでき、かつ、被膜の硬度を低くできる。
【0014】
本発明のコーティング材は、本発明のポリウレタン樹脂を含む。
【0015】
そのため、このコーティング材を用いて得られる被膜は、触感に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネートと、ポリオキシエチレン側鎖含有活性水素化合物と、低分子量ポリオールと、高分子量ポリオールと、鎖伸長剤とを含む原料成分の反応生成物を、水中に分散または溶解することにより、ポリウレタン樹脂の分散液(ポリウレタンディスパージョン)として得ることができる。
【0017】
以下、各成分について説明する。
1.ポリイソシアネート
ポリイソシアネートは、必須成分として、脂肪族ポリイソシアネートおよび/またはその誘導体を含む。
【0018】
ポリイソシアネートが、脂肪族ポリイソシアネートを含めば、このポリウレタン樹脂を用いて得られる被膜(後述)は、触感に優れる。詳しくは、この被膜(後述)の静摩擦係数を低くできる。
【0019】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(ヘキサンジイソシアネート)(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(ペンタンジイソシアネート)(PDI)、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、1,2-、2,3-または1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
【0020】
また、脂肪族ポリイソシアネートには、脂環族ポリイソシアネートが含まれる。
【0021】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、4,4′-、2,4′-または2,2′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)もしくはその混合物(H12MDI)、1,3-または1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物(H6XDI)、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
【0022】
脂肪族ポリイソシアネートとして、好ましくは、脂環族ポリイソシアネート、より好ましくは、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1,3-または1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物、4,4′-、2,4′-または2,2′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)もしくはその混合物、さらに好ましくは、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4′-、2,4′-または2,2′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)もしくはその混合物、とりわけ好ましくは、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネートが挙げられる。
【0023】
脂肪族ポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0024】
また、脂肪族ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記した脂肪族ポリイソシアネートの多量体(例えば、2量体、3量体(例えば、イソシアヌレート誘導体、イミノオキサジアジンジオン誘導体)、5量体、7量体など)、アロファネート誘導体(例えば、上記した脂肪族ポリイソシアネートと、1価アルコールまたは2価アルコールとの反応より生成するアロファネート誘導体など)、ポリオール誘導体(例えば、上記した脂肪族ポリイソシアネートと3価アルコール(例えば、トリメチロールプロパンなど)との反応より生成するポリオール誘導体(アルコール付加体、好ましくは、トリメチロールプロパン付加体)など)、ビウレット誘導体(例えば、上記した脂肪族ポリイソシアネートと、水またはアミン類との反応により生成するビウレット誘導体など)、ウレア誘導体(例えば、上記した脂肪族ポリイソシアネートとジアミンとの反応により生成するウレア誘導体など)、オキサジアジントリオン誘導体(例えば、上記した脂肪族ポリイソシアネートと炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド誘導体(上記した脂肪族ポリイソシアネートの脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド誘導体など)、ウレトジオン誘導体、ウレトンイミン誘導体などが挙げられる。
【0025】
脂肪族ポリイソシアネートの誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0026】
ポリイソシアネートは、好ましくは、脂肪族ポリイソシアネートおよび脂肪族ポリイソシアネートの誘導体のうち、脂肪族ポリイソシアネートの誘導体を含まず、脂肪族ポリイソシアネートのみを含む。
【0027】
また、ポリイソシアネートは、任意成分として、他のポリイソシアネートを含むこともできる。
【0028】
他のポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートおよび/またはこれらの誘導体が挙げられる。
【0029】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、4,4′-、2,4′-または2,2′-ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(MDI)、2,4-または2,6-トリレンジイソシアネートもしくはその混合物(TDI)、o-トリジンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、m-またはp-フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4′-ジフェニルジイソシアネート、4,4′-ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0030】
芳香族ポリイソシアネートの誘導体としては、上記した脂肪族ポリイソシアネートの誘導体で挙げた誘導体などが挙げられる。
【0031】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-または1,4-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(別名:1,3-または1,4-キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物(XDI)、1,3-または1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(TMXDI)、ω,ω′-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼンなどの芳香脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
【0032】
芳香脂肪族ポリイソシアネートの誘導体としては、上記した脂肪族ポリイソシアネートの誘導体で挙げた誘導体などが挙げられる。
【0033】
他のポリイソシアネートの配合割合は、ポリイソシアネートに対して、例えば、30質量%以下、好ましくは、10質量%以下である。
【0034】
他のポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0035】
ポリイソシアネートは、好ましくは、他のポリイソシアネートを含まず、脂肪族ポリイソシアネートおよび/またはその誘導体のみからなる。
【0036】
ポリイソシアネートの配合割合は、原料成分100質量部に対して、例えば、20質量部以上であり、また、例えば、40質量部以下である。
2.ポリオキシエチレン側鎖含有活性水素化合物
ポリオキシエチレン側鎖含有活性水素化合物は、活性水素基(例えば、アミノ基、水酸基、以下同様。)を分子末端に2つ以上有し、ポリオキシエチレン基を側鎖に有する。
【0037】
ポリオキシエチレン側鎖含有活性水素化合物は、例えば、まず、ジイソシアネートと片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール(炭素数1以上20以下のアルキル基で末端封止したアルコキシエチレングリコール)とを、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールのヒドロキシル基に対してジイソシアネートのイソシアネート基が過剰となる割合で、例えば、60℃以上100℃以下、例えば、1時間以上12時間以下でウレタン化反応させた後、必要により未反応のジイソシアネートを除去することにより、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートを得て、次いで、得られたポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートと、ジアルカノールアミン(炭素数1以上20以下のジアルカノールアミン(例えば、ジエタノールアミン))とを、例えば、50℃以上80℃以下、例えば、1時間以上12時間以下でウレア化反応させることにより、得ることができる。
【0038】
ジイソシアネートとしては、例えば、上記した脂肪族ジイソシアネート、上記した脂環族ジイソシアネート、上記した芳香族ジイソシアネート、上記した芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられ、好ましくは、脂肪族ジイソシアネート、より好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0039】
ジイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0040】
片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールとしては、例えば、アルキル基(炭素数1~10)で片末端封止したモノアルコキシポリオキシエチレングリコールなどが挙げられる。このようなアルキル基によって片末端封止されたモノアルコキシポリオキシエチレング
リコールとして、具体的には、メトキシポリオキシエチレングリコール、エトキシポリオキシエチレングリコールが挙げられ、好ましくは、メトキシポリオキシエチレングリコールが挙げられる。
【0041】
片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0042】
ポリオキシエチレン側鎖含有活性水素化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0043】
ポリオキシエチレン側鎖含有活性水素化合物の配合割合は、ポリウレタン樹脂中のポリオキシエチレン基の含有量が後述する範囲となれば、特に限定されないが、具体的には、ポリオキシエチレン側鎖含有活性水素化合物の配合割合は、原料成分100質量部に対して、例えば、20質量部以上であり、また、例えば、40質量部以下である。
【0044】
また、ポリオキシエチレン側鎖含有活性水素化合物の配合割合は、ポリオキシエチレン側鎖含有活性水素化合物と低分子量ポリオールと高分子量ポリオールとの総量100モル%に対して、例えば、35モル%以上であり、また、例えば、45モル%以下である。
3.低分子量ポリオール
低分子量ポリオールは、水酸基を分子末端に2つ以上有する分子量60以上400未満、好ましくは、300未満の化合物である。
【0045】
低分子量ポリオールは、必須成分として、炭素環含有低分子量ポリオールを含む。
【0046】
炭素環含有低分子量ポリオールは、炭素環(例えば、芳香環、脂環など)を有する化合物である。
【0047】
炭素環含有低分子量ポリオールとしては、例えば、芳香環含有低分子量ポリオール、脂環含有低分子量ポリオールなどが挙げられる。
【0048】
芳香環含有低分子量ポリオールとしては、例えば、ビスフェノールA、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどが挙げられる。
【0049】
脂環含有低分子量ポリオールとしては、例えば、1,3-または1,4-シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、1,3-または1,4-シクロヘキサンジオールおよびそれらの混合物、水素化ビスフェノールAなどが挙げられ、好ましくは、1,4-シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。
【0050】
また、芳香環含有低分子量ポリオールおよび脂環含有低分子量ポリオールには、それらのアルキレンオキサイド付加体が含まれる。
【0051】
アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2-、1,3-、1,4-および2,3-ブチレンオキサイドなどが挙げられる。これらアルキレンオキサイドは、単独使用または2種類以上併用することができる。アル
キレンオキサイドとして、好ましくは、プロピレンオキサイドが挙げられる。なお、アルキレンオキサイドが2種類以上併用される場合には、ブロックまたはランダムのいずれの付加形式であってもよい。
【0052】
アルキレンオキサイド付加体として、例えば、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加体、好ましくは、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加体が挙げられる。
【0053】
炭素環含有低分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができ、好ましくは、芳香環含有低分子量ポリオールの単独使用(換言すれば、炭素環含有低分子量ポリオールが芳香環含有低分子量ポリオールを含む。)、芳香環含有低分子量ポリオールおよび脂環含有低分子量ポリオールの併用(換言すれば、炭素環含有低分子量ポリオールが芳香環含有低分子量ポリオールおよび脂環含有低分子量ポリオールを含む。)が挙げられる。
【0054】
炭素環含有低分子量ポリオールが、芳香環含有低分子量ポリオールを含めば、このポリウレタン樹脂を用いて得られる被膜(後述)は、触感に優れる。
【0055】
また、炭素環含有低分子量ポリオールが、芳香環含有低分子量ポリオールおよび脂環含有低分子量ポリオールを含めば、このポリウレタン樹脂を用いて得られる被膜(後述)は、触感に優れる。詳しくは、この被膜(後述)の静摩擦係数を低くできる。
【0056】
炭素環含有低分子量ポリオールが、芳香環含有低分子量ポリオールおよび脂環含有低分子量ポリオールを含む場合には、芳香環含有低分子量ポリオールおよび脂環含有低分子量ポリオールの総量100質量部に対して、芳香環含有低分子量ポリオールの配合割合は、例えば、60質量部以上であり、また、例えば、80質量部以下であり、また、脂環含有低分子量ポリオールの配合割合は、例えば、20質量部以上であり、また、例えば、40質量部以下である。
【0057】
より好ましくは、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加体の単独使用、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加体および1,4-シクロヘキサンジメタノールの併用、さらに好ましくは、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加体および1,4-シクロヘキサンジメタノールの併用が挙げられる。
【0058】
低分子量ポリオールは、任意成分として、炭素環不含低分子量ポリオールを含むこともできる。
【0059】
炭素環不含低分子量ポリオールは、水酸基を分子末端に2つ以上有し、炭素環を有しない分子量60以上400未満の化合物である。
【0060】
炭素環不含低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの炭素環不含2価アルコール、例えば、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミンなどの炭素環不含3価アルコール、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの炭素環不含4価アルコールなどが挙げられ、好ましくは、炭素環不含3価アルコール、より好ましくは、トリメチロールプロパンが挙げられる。
【0061】
炭素環不含低分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0062】
低分子量ポリオールは、好ましくは、炭素環含有低分子量ポリオールおよび炭素環不含低分子量ポリオールを含む。
【0063】
低分子量ポリオールが、炭素環含有低分子量ポリオールおよび炭素環不含低分子量ポリオールを含む場合には、炭素環含有低分子量ポリオールおよび炭素環不含低分子量ポリオールの総量100質量部に対して、炭素環含有低分子量ポリオールの配合割合は、例えば、75質量部以上であり、また、例えば、97質量部以下であり、また、炭素環不含低分子量ポリオールの配合割合は、例えば、3質量部以上であり、また、例えば、25質量部以下である。
【0064】
低分子量ポリオールの配合割合は、原料成分100質量部に対して、例えば、1質量部以上であり、また、例えば、20質量部以下である。
【0065】
また、低分子量ポリオールの配合割合は、ポリオキシエチレン側鎖含有活性水素化合物100質量部に対して、例えば、10質量部以上であり、また、例えば、35質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。
【0066】
また、低分子量ポリオールの配合割合は、ポリオキシエチレン側鎖含有活性水素化合物と低分子量ポリオールと高分子量ポリオールとの総量100モル%に対して、例えば、45モル%以上であり、また、例えば、60モル%以下である。
4.高分子量ポリオール
高分子量ポリオールは、水酸基を分子末端に2つ以上有し、数平均分子量400以上、好ましくは、500以上、また、10000以下、好ましくは、5000以下、より好ましくは、3000以下の化合物である。
【0067】
高分子量ポリオールの平均官能基数は、例えば、2以上であり、また、例えば、3以下であり、また、好ましくは、2である。
【0068】
高分子量ポリオールとして、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、フッ素ポリオール、および、ビニルモノマー変性ポリオールなどが挙げられ、好ましくは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールが挙げられる。
【0069】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレン(炭素数2~3)ポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオール(好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール)などが挙げられる。
【0070】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオール(好ましくは、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール)と、多塩基酸との重縮合物が挙げられる。
【0071】
多塩基酸としては、例えば、エチレン性不飽和結合含有多塩基酸、エチレン性不飽和結合不含多塩基酸などが挙げられる。
【0072】
エチレン性不飽和結合含有多塩基酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのエチレン性不飽和脂肪族二塩基酸などが挙げられる。
【0073】
また、エチレン性不飽和結合含有多塩基酸には、上記のエチレン性不飽和脂肪族二塩基酸から誘導される酸無水物、例えば、無水マレイン酸などが含まれる。
【0074】
エチレン性不飽和結合不含多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸などの飽和脂肪族二塩基酸、例えば、ヘット酸、1,2-ヘキサヒドロフタル酸などの飽和脂環族二塩基酸、例えば、フタル酸(オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸)、トリメリット酸などの芳香族二塩基酸などが挙げられる。
【0075】
また、エチレン性不飽和結合不含多塩基酸には、上記の飽和脂肪族二塩基酸、上記の飽和脂環族二塩基酸、および、上記の芳香族二塩基酸から誘導される酸無水物も含まれる。
【0076】
多塩基酸としては、好ましくは、エチレン性不飽和結合不含多塩基酸、より好ましくは、飽和脂肪族二塩基酸、さらに好ましくは、アジピン酸が挙げられる。
【0077】
このようなポリエステルポリオールとしては、好ましくは、1,6-ヘキサンジオールと、ネオペンチルグリコールと、アジピン酸との重縮合物が挙げられる。
【0078】
また、ポリエステルポリオールとしては、市販品を用いることでき、具体的には、タケラックU-5620(アジピン酸と、1,6-ヘキサンジオールと、ネオペンチルグリコールとの重縮合物であるポリエステルポリオール、三井化学社製)などが挙げられる。
【0079】
また、ポリエステルポリオールとしては、ε-カプロラクトンなどの開環重合により得られるポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0080】
ポリカーボネートポリオールとしては、低分子量ポリオール(好ましくは、1,6-ヘキサンジオール)と、カーボネート化合物との反応生成物などが挙げられる。
【0081】
カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのジアルキルカーボネートなどが挙げられ、好ましくは、ジメチルカーボネートが挙げられる。
【0082】
このようなポリカーボネートポリオールとしては、好ましくは、1,6-ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとの反応生成物が挙げられる。
【0083】
また、ポリカーボネートポリオールとしては、市販品を用いることでき、具体的には、ETERNACOLL UH-200(1,6-ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとの反応生成物、宇部興産社製)などが挙げられる。
【0084】
高分子量ポリオールとして、より好ましくは、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオールが挙げられる。
【0085】
高分子量ポリオールが、ポリカーボネートポリオールまたはポリエステルポリオールを含めば、このポリウレタン樹脂を用いて得られる被膜(後述)は、触感に優れる。詳しくは、この被膜(後述)の静摩擦係数を低くでき、かつ、被膜の硬度を低くできる。
【0086】
さらに好ましくは、高分子量ポリオールとして、ポリカーボネートポリオールが挙げられる。
【0087】
高分子量ポリオールが、ポリカーボネートポリオールを含めば、このポリウレタン樹脂は貯蔵安定性に優れる。換言すれば、このポリウレタン樹脂を、一定期間保管した後、このポリウレタン樹脂を用いて被膜(後述)を得た場合であっても、この被膜(後述)の静摩擦係数を低くできる。
【0088】
高分子量ポリオールの配合割合は、原料成分100質量部に対して、例えば、5質量部以上であり、また、例えば、30質量部以下である。
【0089】
また、高分子量ポリオールの配合割合は、ポリオキシエチレン側鎖含有活性水素化合物100質量部に対して、例えば、20質量部以上であり、また、例えば、40質量部以下である。
【0090】
また、高分子量ポリオールの配合割合は、低分子量ポリオール100質量部に対して、例えば、80質量部以上であり、また、例えば、150質量部以下である。
【0091】
また、高分子量ポリオールの配合割合は、ポリオキシエチレン側鎖含有活性水素化合物と低分子量ポリオールと高分子量ポリオールとの総量100モル%に対して、例えば、5モル%以上であり、また、例えば、20モル%以下である。
5.鎖伸長剤
鎖伸長剤は、活性水素基を2つ有する化合物であって、例えば、芳香族ポリアミン、芳香脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、脂肪族ポリアミン、アミノアルコール、ポリオキシエチレン基含有ポリアミンなどのアミノ基含有化合物が挙げられる。
【0092】
芳香族ポリアミンとしては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジアミン、トリレンジアミンなどが挙げられる。
【0093】
芳香脂肪族ポリアミンとしては、例えば、1,3-または1,4-キシリレンジアミンもしくはその混合物などが挙げられる。
【0094】
脂環族ポリアミンとしては、例えば、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(別名:イソホロンジアミン)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5(2,6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ジアミノシクロヘキサン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3-および1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよびそれらの混合物などが挙げられ、好ましくは、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミンが挙げられる。
【0095】
脂肪族ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン(水和物を含む)、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,2-ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノペンタンなどが挙げられ、好ましくは、エチレンジアミンが挙げられる。
【0096】
アミノアルコールとしては、例えば、2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノール(別名:N-(2-アミノエチル)エタノールアミン)、2-((2-アミノエチル)アミノ)-1-メチルプロパノール(別名:N-(2-アミノエチル)イソプロパノールアミン)などが挙げられる。
【0097】
ポリオキシエチレン基含有ポリアミンとしては、例えば、ポリオキシエチレンエーテルジアミンなどのポリオキシアルキレンエーテルジアミンが挙げられる。より具体的には、例えば、日本油脂製のPEG#1000ジアミンや、ハンツマン社製のジェファーミンED?2003、EDR-148、XTJ-512などが挙げられる。
【0098】
また、鎖伸長剤としては、さらに、第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物なども挙げられる。
【0099】
第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物としては、例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどの第1級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン)、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン)などの第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物などが挙げられ、好ましくは、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0100】
鎖伸長剤として、好ましくは、脂肪族ポリアミンが挙げられる。
【0101】
これら鎖伸長剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0102】
また、鎖伸長剤の配合割合は、原料成分100質量部に対して、例えば、1質量部以上であり、また、例えば、15質量部以下である。
6.ポリウレタン樹脂の調製
ポリウレタン樹脂を調製するには、上記した原料成分を反応させる。
【0103】
詳しくは、ポリウレタン樹脂は、上記した原料成分を一度に混合して調製されるか(ワンショット法)、または、上記した原料成分を分割して混合して調製される(プレポリマー法)。好ましくは、ポリウレタン樹脂は、プレポリマー法によって調製される。
【0104】
プレポリマー法によって、ポリウレタン樹脂を調製する場合には、まず、ポリイソシアネートと、ポリオキシエチレン側鎖含有活性水素化合物と、低分子量ポリオールと、高分子量ポリオールとを反応させて、イソシアネート基を分子末端に有するイソシアネート基末端プレポリマーを調製する。
【0105】
具体的には、イソシアネート基末端プレポリマーを調製するには、ポリイソシアネートと、ポリオキシエチレン側鎖含有活性水素化合物と、低分子量ポリオールと、高分子量ポリオールとを、ヒドロキシル基に対するイソシアネート基の当量比(NCO/OH)において、1を越える割合、好ましくは、1.1以上10以下の割合において配合し、バルク重合や溶液重合などの公知の重合方法、好ましくは、溶液重合によって反応させる。
【0106】
溶液重合では、例えば、窒素雰囲気下において、有機溶媒に、ポリイソシアネートと、ポリオキシエチレン側鎖含有活性水素化合物と、低分子量ポリオールと、高分子量ポリオールとを加えて、例えば、20℃以上80℃以下で、例えば1時間以上20時間以下反応させる。
【0107】
有機溶媒としては、イソシアネート基に対して不活性で、かつ、親水性に富む、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトニトリルなどが挙げられる。
【0108】
また、このような反応では、必要に応じて、例えば、アミン系、スズ系、鉛系などの公知のウレタン化触媒を添加してもよく、また、得られるイソシアネート基末端プレポリマーから未反応ポリイソシアネートを、例えば、蒸留や抽出などの公知の手段により除去することもできる。
【0109】
次いで、得られたイソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを水中で反応させて、分散または溶解する。これによって、イソシアネート基末端プレポリマーが鎖伸長剤によって鎖伸長された反応生成物を、水中に分散または溶解した状態で得ることができる。
【0110】
イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを水中で反応させるには、例えば、まず、イソシアネート基末端プレポリマーを水中に添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させ、次いで、これに鎖伸長剤を添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長剤によって鎖伸長する。
【0111】
イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させるには、イソシアネート基末端プレポリマー100質量部に対して、水20質量部以上500質量部以下の割合において、水中に、攪拌下、イソシアネート基末端プレポリマーを添加する。
【0112】
また、鎖伸長剤は、イソシアネート基末端プレポリマーが水分散された水中に、攪拌下、鎖伸長剤の活性水素基に対するイソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)が、例えば、0.8以上1.2以下の割合となるように、滴下する。鎖伸長剤は、好ましくは、30℃以下の温度で滴下し、滴下終了後は、さらに撹拌しつつ、例えば、5℃以上35℃以下にて反応を完結させる。
【0113】
なお、反応終了後には、イソシアネート基末端プレポリマーが溶液重合により得られている場合には、有機溶媒を、例えば、減圧下において、適宜の温度で加熱することにより除去する。
【0114】
また、ポリウレタン樹脂には、その目的および用途に応じて、種々の添加剤、例えば、界面活性剤、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、防カビ剤、防錆剤、艶消し剤、難燃剤、揺変剤、粘着付与剤、増粘剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、反応遅延剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、耐候安定剤、染料、無機顔料、有機顔料、体質顔料、硬化剤、タック防止剤などを適宜配合することができる。
【0115】
これら各種の添加剤の配合割合は、その目的および用途により適宜選択される。
【0116】
これにより、ポリウレタン樹脂の水分散液を調製する。
【0117】
ポリウレタン樹脂の水分散液の固形分濃度は、例えば、10質量%以上であり、また、例えば、40質量%以下である。
【0118】
そして、ポリウレタン樹脂中には、ポリオキシエチレン基が、例えば、15質量%以上、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは、25質量%以上、また、例えば、50質量%以下、好ましくは、45質量%以下、より好ましくは、40質量%以下の割合で含まれている。
【0119】
また、ポリウレタン樹脂中には、炭素環の総量が、例えば、12質量%以上、また、例えば、27質量%以下、好ましくは、20質量%以下、より好ましくは、17質量%以下の割合で含まれている。
【0120】
詳しくは、ポリウレタン樹脂中には、芳香環が、例えば、0.05ミリモル当量以上、また、例えば、0.4ミリモル当量以下の割合で含まれている。
【0121】
また、ポリウレタン樹脂中には、脂環が、例えば、10ミリモル当量以上、また、例えば、27ミリモル当量以下、好ましくは、20ミリモル当量以下、より好ましくは、15ミリモル当量以下の割合で含まれている。
【0122】
本発明のポリウレタン樹脂は、脂肪族ポリイソシアネートおよび/またはその誘導体を含むポリイソシアネートと、ポリオキシエチレン側鎖含有活性水素化合物と、炭素環を有する炭素環含有低分子量ポリオールを含む低分子量ポリオールと、高分子量ポリオールと、鎖伸長剤と含む原料成分の反応生成物である。
【0123】
そのため、このポリウレタン樹脂を用いて得られる被膜は、触感に優れる。詳しくは、この被膜の静摩擦係数を低くでき、かつ、被膜の硬度を低くできる。
【0124】
本発明のコーティング材は、上記のポリウレタン樹脂を含み、公知のキャスティング法またはコーティング法により、被膜を形成する。
【0125】
このような被膜は、上記のポリウレタン樹脂を含むコーティング材を用いて得られるため、触感に優れる。詳しくは、この被膜の静摩擦係数を低くでき、かつ、被膜の硬度を低くできる。
【0126】
被膜の静摩擦係数は、例えば、1.75以下、好ましくは、1.70以下、より好ましくは、1.60以下、さらに好ましくは、1.50以下、とりわけ好ましくは、1.40以下、最も好ましくは、1.30以下、さらには、1.20以下、さらには、1.10以下であり、また、通常、0.10以上である。
【0127】
また、被膜の硬度(具体的には、ユニバーサル硬度)は、例えば、50以下、好ましくは、40以下、より好ましくは、30以下であり、また、例えば、10以上である。
【0128】
被膜の静摩擦係数および硬度が、上記上限以下であれば、この被膜は、触感に優れる。
【実施例】
【0129】
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
1.成分の詳細
成分の詳細を下記する。
XDI:1,3-キシリレンジイソシアネート、m-XDI、商品名「タケネート500」、三井化学社製
IPDI:3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、EVONIC社製
H6XDI:1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン
H12MDI:4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、EVONIC社製
UH200:ポリカーボネートジオール(1,6-ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとの反応生成物)、平均官能基数:2、数平均分子量:2000、商品名「ETERNACOLL UH-200」、宇部興産社製
U5620:ポリエステルジオール(ポリエステルポリオール(アジピン酸と、1,6-ヘキサンジオールと、ネオペンチルグリコールとの重縮合物)、数平均分子量2000、商品名「タケラックU-5620」、三井化学社製
PTG2000SN:ポリエーテルポリオール(ポリテトラメチレンエーテルグリコール)、保土谷化学工業
EG:エチレングリコール
TMP:トリメチロールプロパン、Perstorp社製
CHDM:1,4-シクロヘキサンジメタノール、長瀬産業社製
BPX-11:ポリエーテルポリオール、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加体、プロピレンオキサイドの平均付加モル数:2
DMPA:ジメチロールプロピオン酸
MeOPEG:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル
エチレンジアミン:東京化成工業社製
KBM-603:アルコキシシリル化合物、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業社製
IPDA:イソホロンジアミン、東京化成工業社製
2.ポリオキシエチレン側鎖含有活性水素化合物の調製
調製例1
攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、数平均分子
量1000のメトキシポリエチレングリコール1000質量部(東邦化学工業株式会社製
)と1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(商品名:タケネート-700、三井化学)1682質量部を仕込み、窒素雰囲気下90℃で9時間反応させた。得られた反応液を薄膜蒸留して、未反応の1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを取り除き、ポリオキシエチレン基含有モノイソシアネートを得た。
【0130】
次いで、攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、ジエタノールアミン82.5質量部を仕込み、窒素雰囲気下、空冷しながら上記ポリオキシエチレン基含有モノイソシアネート917.5質量部を、反応温度が70℃を越えないように徐々に滴下した。滴下終了後、約1時間、窒素雰囲気下において70℃で攪拌し、イソシアネート基が消失したことを確認し、ポリオキシエチレン側鎖含有ジオールを得た。
3.ポリウレタン樹脂の調製
実施例1
攪拌機、温度計、還流管、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、ポリカーボネートジオール25.3g、BPX-11 13.0g、CHDM5.5g、トリメチロールプロパン 1.4g、調製例1のポリオキシエチレン側鎖含有ジオール79.0g、メチルエチルケトン66.6gを入れ、混合した。
【0131】
次いで、IPDI 75.8g、オクチル酸第一錫(商品名「スタノクト」、エーピーアイコーポレーション社製)0.04gを添加し、75℃で4時間反応させ、NCO%が所定の含有量(5.4質量%)となったところで40℃まで冷却し、イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーを得た。
【0132】
次いで、10℃のイオン交換水602.7gに、上記イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーをホモディスパーにて分散および乳化し、5分間攪拌した。
【0133】
次いで、エチレンジアミン9.8gをイオン交換水77.9gに溶解したポリアミン水溶液を徐々に添加し、鎖伸張反応させ、さらに、メチルエチルケトン、過剰のイオン交換水を留去することにより、ポリウレタン樹脂の水分散液を得た。このポリウレタン樹脂の水分散液の固形分濃度は、30質量%であった。
【0134】
実施例3~実施例8、および、比較例1~比較例6
配合処方を、表1の記載に従って変更した以外は、実施例1と同様に処理して、ポリウレタン樹脂の水分散液を得た。
4.評価
<第1測定サンプルの調製>:
各実施例および各比較例のポリウレタン樹脂の水分散液を、プラスチックトレイに入れ、60℃の恒温槽で1日乾燥後、150℃で1時間乾燥することで厚さ約200μmのフィルムを得た。得られたフィルムを長さ20mm、幅5mmに加工したものを第1測定サンプルとした。
<第2測定サンプルの調製>
各実施例および各比較例のポリウレタン樹脂の水分散液を、40℃の恒温槽で3か月間保管した。その後、そのポリウレタン樹脂の水分散液を、プラスチックトレイに入れ、60℃の恒温槽で1日乾燥後、150℃で1時間乾燥することで厚さ約200μmのフィルムを得た。得られたフィルムを長さ20mm、幅5mmに加工したものを第2測定サンプルとした。
<摩擦係数測定(初期)>
各実施例および各比較例の第1測定サンプルについて、以下の条件に基づいて、摩擦係数を測定した。なお、測定は、3回実施し、得られた結果の平均値を採用した。その結果を表1に示す。
(測定条件)
装置:摩擦測定機TL201Ts(トリニティーラボ製)
荷重:50gf
速度:100mm/s
接触子:指紋パターン付きウレタン製
環境:温度23±2℃、湿度40±5%
<摩擦係数測定(40℃3カ月保管後)>
各実施例および各比較例の第2測定サンプルについて、上記した摩擦係数測定(初期)と同様の手順で、摩擦係数を測定した。その結果を表1に示す。
【0135】
摩擦係数について、以下の基準で評価した。
〇:摩擦係数測定(初期)と比べて、摩擦係数の上昇率が10%未満であった。
△:摩擦係数測定(初期)と比べて、摩擦係数の上昇率が10%以上であった。
<硬度測定>
各実施例および各比較例の第1測定サンプルについて、以下の条件に基づいて、ユニバーサル硬度を測定した。得られた押込み深さから、下記式(1)に基づき、硬さを算出した。なお、測定は、3回実施し、得られた結果の平均値を採用した。その結果を表1に示す。
硬度=37.838×P/D2 (1)
上記式(1)中、硬度は、稜間角115°の三角すい圧子によるユニバーサル硬さを示し、Pは、試験荷重(mN)を示し、Dは、押込み深さ(μm)を示す。
(測定条件)
装置:ダイナミック超微小硬度計DUH-W201S(島津製作所製)
仕様試験荷重範囲:0.1mN~1961mN
押込み深さ範囲:0.1μm~10μm
圧子:ダイヤモンド製三角錐圧子(稜間角115°)
環境:温度23±2℃。湿度50±5%
【0136】