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特許7465103少なくとも2本の電気ケーブルのアークに対する保護用装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】少なくとも2本の電気ケーブルのアークに対する保護用装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 9/18 20060101AFI20240403BHJP
   H02K 11/00 20160101ALI20240403BHJP
【FI】
B60L9/18 L
H02K11/00
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020020811
(22)【出願日】2020-02-10
(65)【公開番号】P2020137409
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2023-01-10
(31)【優先権主張番号】1901381
(32)【優先日】2019-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】513315824
【氏名又は名称】アルストム・トランスポール・テクノロジーズ
(73)【特許権者】
【識別番号】520049651
【氏名又は名称】エスエヌセエフ ボワイヤジャール
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ クルーネ
(72)【発明者】
【氏名】フローリアーン ヒンジー
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-237354(JP,A)
【文献】特開2003-249317(JP,A)
【文献】特開2015-072925(JP,A)
【文献】実開平02-032676(JP,U)
【文献】特開平01-170326(JP,A)
【文献】米国特許第05004874(US,A)
【文献】特開2012-151090(JP,A)
【文献】特開2015-067839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
H02K 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタ(18)と、スイッチ(22)と、少なくとも2本の電気ケーブル(16)のアークに対する保護用装置(20)と、を含む電気結線(14)であって、前記コネクタ(18)、前記スイッチ(22)および前記保護用装置(20)は、前記電気ケーブル(16)によって直列接続され、各電気ケーブル(16)が少なくとも1つの電気端子(28、28A、28B)を有し、前記保護用装置は、
前記各電気ケーブル(16)の前記電気端子(28、28A、28B)を各々収容するよう意図されたオリフィス(47)が中に設けられる前方面(45)、ならびに前記前方面(45)の両側に配置された第1の面および第2の面(40、42)、を有する本体(30)と
少なくとも1つの磁気要素(32)であって、各磁気要素は、前記第1の面(40)または前記第2の面上に固定され、共に1つの磁場(B)を生成する前記少なくとも1つの磁気要素(32)と
前記第1の面(40)に固定された前記磁場(B)の第1の誘導要素(34a)および前記第2の面(42)に固定された前記磁場(B)の第2の誘導要素(34b)であって、互いの間に前記磁場(B)を通すように構成される第1の誘導要素および第2の誘導要素(34a、34b)と、を有することを特徴とする、電気結線(14)
【請求項2】
前記誘導要素(34a、34b)は、前記電気端子(28、28A、28B)が前記オリフィス(47)内に収容されたとき前記誘導要素(34a、34b)の間に挟置されるように、前記本体(30)を超えて延在する、請求項1に記載の電気結線(14)
【請求項3】
前記本体は、前記第1の面(40)上に固定された少なくとも1つの第1の磁気要素(32)と前記第2の面(42)上に固定された少なくとも1つの第2の磁気要素(32)とを有する複数の磁気要素を有し、
前記第1の磁気要素および前記第2の磁気要素(32)は、共に前記磁場(B)を生成する、請求項1または2に記載の電気結線(14)
【請求項4】
各オリフィス(47)は、オリフィス軸(48)に沿って延在し、
前記本体(30)は、さらに、前記前方面(45)上に、アークを分裂させるように構成されたフィン(50)であって、各オリフィス軸(48)に対して平行な方向に沿って延在するフィン(50)を有する、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の電気結線(14)
【請求項5】
前記本体(30)は、少なくとも1つのオリフィス対(47)を有し、
前記本体(40)は、各オリフィス対のオリフィス(47)の間に配設された少なくとも2個のフィン(50)から成る群を有する、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の電気結線(14)
【請求項6】
各フィン(50)は、ステンレスを有するライニング(54)によって少なくとも部分的に被覆される、請求項4または5に記載の電気結線(14)
【請求項7】
前記少なくとも1つの磁気要素(32)は、前記第1の面および前記第2の面(40、42)に対して垂直な方向に沿って前記磁場(B)を生成するように配向される、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の電気結線(14)
【請求項8】
各オリフィス(47)は、オリフィス軸(48)に沿って延在し、
前記オリフィス軸(48)は、前記第1の面および前記第2の面(40、42)に対して平行に延在する、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の電気結線(14)
【請求項9】
前記本体(30)は、前記第1の面(40)上の第1のキャビティ(49)および前記第2の面(42)上の第2のキャビティを有し、
前記第1の磁気要素(32)は、前記第1のキャビティ(49)内に収容され、
前記第2の磁気要素(32)は、前記第2のキャビティ内に収容される、請求項3に記載の電気結線(14)
【請求項10】
少なくとも1つの電気トラクションモータ(12)と
前記電気トラクションモータ(12)に給電するように構成された電気結線(14)であって、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の電気結線(14)と、を有する、鉄道車両用給電システム(1)。
【請求項11】
前記電気トラクションモータ(12)は、永久磁石モータである、請求項10に記載の鉄道車両用給電システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2本の電気ケーブルのアークに対する保護用装置に関する。本発明は、同様に、給電システムにも関する。
【背景技術】
【0002】
より詳細には、本発明は、鉄道車両の給電、より厳密には、電気設備の保護の分野に関する。
【0003】
すでに、技術的現状において、給電ユニットと、電気モータ、例えばトラクションモータと、を接続する電気結線(Connextion e’lectrique)を含む鉄道車両給電システムは、周知である。例えば、給電ユニットは、鉄道車両のルーフ上に固定され、電気モータは、鉄道車両の台車内に配置される。
【0004】
電気結線は、電気端子およびスイッチを含む給電ケーブルを含む。
【0005】
給電ケーブル内の電圧の生成に際して、ケーブルの間にはアークが発生する可能性がある。複数のアーク発生源が周知である。
【0006】
例えば、電気モータは、永久磁石を含むモータであり得る。永久磁石は、一瞬毎に磁場を生成する。電気モータの固定子が回転中である場合、モータの電気端子内に電圧が誘導される。この電圧は、給電システム内、特にケーブルの間にアークを誘発させる可能性がある。
【0007】
このようなアークは、給電システム、特にこれらのシステムの給電ケーブルにとって極めて破壊的である。
【0008】
給電システム内のこのようなアークの伝播に対して給電システムを保護する目的で、保護用装置が公知である。典型的には、ケーブル間ならびにケーブルと環境との間に保護材料が間置される(interpose’s)。
【0009】
しかしながら、保護材料が長時間にわたりアークに曝露された(expose’s)場合、これらの材料は、劣化して、もはや給電システムを保護しない。その結果、アークの拡大を回避するために保護材料を頻繁に交換しなければならない。
【0010】
したがって、このような保護用装置は、完全に満足のいくものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、給電システムの充分な保護ならびに給電システムの単純な動作を保証しながら、アークに対するより優れた抵抗能力(capacite’ de re’sistance)を有する保護用装置および給電システムを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このため、本発明は、少なくとも2本の電気ケーブルのアークに対する保護用装置であって、各電気ケーブルが少なくとも1つの電気端子を有する保護用装置を目的とする。該保護用装置は、
-・ 各電気ケーブルの電気端子を各々収容するよう意図されたオリフィスが中に設けられる前方面、ならびに
・ 前方面の両側に配置された第1の面および第2の面、を有する本体と、
- 少なくとも1つの磁気要素であって、各磁気要素は、第1の面または第2の面上に固定され、共に1つの磁場を生成する少なくとも1つの磁気要素と、
- 第1の面に固定された磁場の第1の誘導要素および第2の面に固定された磁場の第2の誘導要素であって、互いの間に磁場を通す(canaliser)ように構成され、好ましくは、電気端子がオリフィス内に収容されたとき誘導要素の間に挟置される(intercale’es)ように、本体を超えて延在する第1の誘導要素および第2の誘導要素を有する。
【0013】
保護用装置は、アークを磁場に曝露し、こうしてアークの伝播方向を修正することによって、ケーブルのより優れたアークに対する保護を得ることを可能にする。詳細には、誘導要素は、アークを偏向させるように磁場を通すことを可能にする。その結果、ケーブルは、アークに曝露されることがより少なくなる。
【0014】
保護用装置の本体に向かってアークを偏向させた場合、フィンは、2本のケーブル間に延在するアークを複数の分裂アークへと分裂させる(fragmenter)ことができる。例えば、これらの分裂アークは、フィンの間で消滅する。こうしてフィンは、保護用装置の抵抗能力に貢献する。
【0015】
本発明に係る保護用装置は、個別に取上げるかまたは技術的に可能なあらゆる組合せに従って、以下の特徴のうちの1つまたは複数を有することができる。
- 本体は、第1の面上に固定された少なくとも1つの第1の磁気要素と第2の面上に固定された少なくとも1つの第2の磁気要素とを有する複数の磁気要素を有し、第1の磁気要素および第2の磁気要素は、共に磁場を生成する。
- 各オリフィスは、オリフィス軸に沿って延在し、本体は、さらにその前方面上に、アークを分裂させるように構成されたフィンであって、各オリフィス軸に対して平行な方向に沿って延在するフィンを有する。
- 本体は、少なくとも1つのオリフィス対を有し、本体は、各オリフィス対のオリフィスの間に配設された少なくとも2個のフィンから成る群を有する。
- 各フィンは、ステンレス(me’tal inoxydable)を有するライニング(reve^tement)によって少なくとも部分的に被覆される。
- 磁気要素は、第1の面および第2の面に対して垂直な方向に沿って磁場を生成するように配向される。
- 各オリフィスは、オリフィス軸に沿って延在し、オリフィス軸は、第1の面および第2の面に対して平行に延在する。
- 保護用装置は、第1の面および第2の面に対して平行な方向に整列した少なくとも3つのオリフィスを有する。
- 本体は、第1の面上の第1のキャビティおよび第2の面上の第2のキャビティを有し、第1の磁気要素は、第1のキャビティ内に収容され、第2の磁気要素は、第2のキャビティ内に収容される。
【0016】
本発明は、同様に、少なくとも1つの電気トラクションモータと、電気モータに給電するように構成された電気結線と、を有する、鉄道車両用給電システムをも目的とする。電気結線は、上述の通りの少なくとも1つの保護用装置を有する。
【0017】
任意には、電気モータは、永久磁石モータである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態の一例に係る給電システムの概略図である。
図2図1の給電システムの保護用装置の概略斜視図である。
図3】アークの偏向を示す図2の保護用装置の概略斜視図である。
図4】アークの偏向を示す図2の保護用装置の概略斜視図である。
図5図4の保護用装置の一部分の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、単なる一例として提供され添付図面を参照する以下の説明を読むことにより、さらに良く理解されるものである。
【0020】
図1には、鉄道車両用の給電システム1が表現されている。この給電システム1は、給電ユニット10、2つの電気モータ12および各々の給電ユニット10をそれぞれのモータ12に接続する2つの電気結線14を含む。
【0021】
図示されない一変形形態において、給電システムは、唯一の電気結線と唯一の電気モータとを含む。
【0022】
さらに、図示されない一変形形態では、給電システムは、少なくとも3つのモータと、各々の給電ユニットをそれぞれの電気モータに接続する3つの電気結線と、を含む。
【0023】
給電ユニット10は、例えば、鉄道車両(図示せず)のルーフ上に配置される。例えば、給電ユニット10は、一方ではカテナリ(図示せず)に、そして他方では電気結線14に、接続される。
【0024】
給電ユニット10は、カテナリから電気結線14に向かって電力を移送するように構成される。
【0025】
各電気モータ12は、対応する電気結線により給電されるよう意図される。各電気モータ12は、例えば、交流モータである。より詳細には、図示された実施例において、各電気モータ12は、三相モータである。このモータは、3本の電気ケーブル16内を流れる電流により給電されるように構成される。
【0026】
各々の電気モータ12は、例えば鉄道車両のトラクションモータである。
【0027】
各々の電気モータ12は、例えば永久磁石を含む。モータ12の給電が無い状態で列車が移動する場合、永久磁石は、電気結線14内で電圧を生成する。このような電圧は、アークを誘発する可能性がある。
【0028】
各々の電気結線14は、図1の実施例において、電気ケーブル16によって直列接続されたコネクタ18、スイッチ22および保護用装置20を含む。
【0029】
以下では、電気結線14の1つについて、より詳細に説明するが、他の電気結線14も同一である。
【0030】
図1の実施例では、電気結線14は、給電ユニット10と対応するモータ12とを接続する3本のケーブル16を含む。3本のケーブル16は、対応する電気モータ12に給電するように構成される。
【0031】
各ケーブル16は、導電性心線(ame conductrice)24とケーブル外装(gai^ne de cable)26とを含み、電気端子28(これらのうちの各ケーブルの1つの端子が、図3および4中で特に見える)を形成する端部を有する。
【0032】
コネクタ18は、例えば雄接点である。コネクタ18は、給電ユニット10を電気ケーブル16に接続するためのものである。
【0033】
スイッチ22は、給電ユニット10と対応するモータ12との間の電気的結合を中断できるようにするためのものである。このようなスイッチ22は、当業者にとって公知である。スイッチ22内または電気端子28間にアークが形成され得るという点を指摘しておかなければならない。
【0034】
保護用装置20は、特に、ケーブル16に沿ったアークの伝播を止めるためのものである。
【0035】
図2により詳細に表現される保護用装置20は、本体30、磁気要素32ならびに第1および第2の誘導要素34a、34bを含む。
【0036】
図示されない一実施例によると、保護用装置20は、唯一の磁気要素32を含む。
【0037】
本体30は、電気ケーブル16を互いに分離する絶縁材料を含む。
【0038】
本体30は、例えば上部面40と呼ばれる第1の面、および上部面40とは反対側の例えば下部面42と呼ばれる第2の面を含む平行六面体の全体的形状を有する。上部面40および下部面42は、前方面45の両側に配置される。
【0039】
上部面40と下部面42とは、特に、互いに平行である。本体30は、さらに側方面43、44および前方面(例えば図2中に見えるもの)45および後方面46を含む。側方面43、44および前方面45および後方面46は、上部面40および下部面42に対して垂直である。側方面43、44は、さらに、前方面45および後方面46に対して垂直である。
【0040】
「上部」、「下部」、「側方」、「前方」および「後方」なる呼称は、恣意的に図2に基づくものであり、給電システム内の何らかの配向を推定するものではない。
【0041】
図1の実施例において、前方面45は、給電ユニット10に向かって配向され、後方面は電気モータ12に向かって配向される。
【0042】
図示された実施例において、本体30は、それぞれの電気ケーブル16を収容するように構成されたオリフィス47を有し、これらのオリフィス47は、前方面45内に設けられる。
【0043】
本体30は、少なくとも一対のオリフィス47を含む。図示される実施例において、本体30は、上部面40および下部面42に平行に整列した3つのオリフィス47を有する。
【0044】
各オリフィス47は、オリフィス軸48に沿って延在する。例えば、各オリフィス軸48は、本体30の上部面40および下部面42に対して平行に、かつ前方面45に対して垂直に延在する。オリフィス軸48全体は、例えば軸平面内に含まれる。軸平面は、例えば第1および第2の面40、42に平行である。
【0045】
本体30は、さらに、例えば上部面40上の第1のキャビティ49および下部面42上の第2のキャビティを有する。図の実施例上では、第1のキャビティ49のみが見える。
【0046】
第1および第2のキャビティ49は、特に1つまたは複数の磁気要素32を収容するように構成される。より厳密には、第1のキャビティ49は、第1の磁気要素32を収容するように構成され、第2のキャビティは、第2の磁気要素32を収容するように構成される。
【0047】
好ましくは、第1の磁気要素32は、第2の磁気要素32と同一である。
【0048】
磁気要素32は、例えば永久磁石である。磁気要素32は、図示された実施例において、オリフィス軸48に対して垂直でかつ上部面40および下部面42に対して垂直である方向に沿って磁場を生成するように配向される。
【0049】
好ましくは、第1の誘導要素34aは、第2の誘導要素34bと同一である。各々の第1および第2の誘導要素34a、34bは、さらに、図において全体的参照番号34で呼称される。
【0050】
誘導要素34は、図示される実施例において、薄板である。例えば、誘導要素34は金属薄板である。
【0051】
磁場の第1の誘導要素34aは、例えば上部面40上に固定され、磁場の第2の誘導要素34bは、下部面42上に固定される。各々の誘導要素34は、例えばそれが固定される上部面40または下部面42にそれぞれ平行な平面内で延在する。各々の誘導要素34は、好ましくは本体30を超えて、特に前方面45を超えて延在する。より詳細には、各々の誘導要素34は、電気端子28がオリフィス47内に収容されたとき誘導要素の間に電気端子を挟置するように、本体30を超えて延在する。
【0052】
誘導要素34は、磁気要素32によって生成される磁場を、磁場がほぼ第1の誘導要素34aと第2の誘導要素34bとの間に維持されるように誘導する。
【0053】
換言すると、第1および第2の誘導要素34a、34bは、互いの間に磁場Bを通すように構成される。
【0054】
本体30は、さらに、アークを分裂させるように構成されたフィン50を含む。フィン50は、前方面45から突出し、オリフィス軸48に平行でかつこの前方面45に対して垂直である方向に沿って延在する。
【0055】
フィン50は、互いに平行な側方面52を含む。フィン50の側方面52は、例えば、隣接するフィン50の側方面52に向かって配向される。
【0056】
フィン50は、例えば、約5mmに等しい距離だけ互いに間隔が空けられる。
【0057】
より詳細には、本体30は、各オリフィス対のオリフィス47間に配設された少なくとも2個のフィン50から成る群を含む。
【0058】
図に表される実施例において、3個のフィン50が、各オリフィス対のオリフィス47の間で前方面45上に固定される。別の実施例において、各オリフィス対のオリフィス47の間で前方面45上に4個のフィン50が固定される。
【0059】
フィン50には、例えば、アークの電流の通過に有利に作用するように構成された図5中に見える導電性Uリンク(cavalier conducteur)が備わる。導電性Uリンクは、フィン50のそれぞれの側方面52を少なくとも部分的に覆うことのできる互いに対面した2つの側壁と、これらの2つの側壁を連結する結合用要素と、を含む導電性要素である。
【0060】
図5に表された実施例によると、各々のフィン50は、導電性ライニング54によって被覆される。
【0061】
ライニング54は、例えばUリンクによって形成される。
【0062】
ライニング54は、例えば、アークに対する高い耐性を有する材料を含む。この材料は、例えばステンレスである。
【0063】
ライニング54は、例えば、フィン50の一端部ならびに各々の側方面52の少なくとも半分を被覆する。図5の実施例では、各ライニング54は、側方面52の約3分の2を被覆する。
【0064】
フィン50は、例えば図5に示されるように、2つの電気端子28間に発生する可能性のあるアークを分裂させるように構成される。
【0065】
図3~5を参照しながら、ここで給電システム、特に保護用装置20の作動について説明する。
【0066】
アークが形成された場合、このアークは、給電システム1内を伝播する。例えば、アークがスイッチ22内で形成された場合、このアークは、スイッチ22とモータ12との間に配置された保護用装置20に向かって電気ケーブル16内を伝播する。
【0067】
磁気要素32は、上部面40および下部面42に対して垂直な方向に沿って磁場を生成する。
【0068】
第1のアーク発生例が図3に示される。電流が第1の方向に沿って導電性心線24内を流れる場合、電気端子28Aから電気端子28Bに向かってアークが発生する。アークは、電流I1の方向を呈する。
【0069】
アークは、アークの電流に直交する磁場Bによって、合力F1により偏向させられる。合力F1の方向は、磁場Bおよび電流I1によって形成される平面に垂直である。合力F1は、以下の通りに計算される:
F=B・I・L
なお、式中、
B:磁場の値、
I:アークの電流値、
L:磁場に付されるアークの長さ。
【0070】
合力F1のベクトルは、磁場と電流ベクトル値とのベクトル積に、磁場に付されるアークの長さを乗じたものである。
【0071】
合力F1によって偏向されたアークは、図3を見れば分かるように、曲線C1をたどる。アークは、本体30から離隔される。アークの偏向は、「吹出(soufflage)」とも呼ばれる。
【0072】
曲線C1は、電気端子28Aおよび28Bの間の最短距離よりも大きい長さを有する。アーク電圧は、未偏向アークに比べて増大する。アーク電流は、減少する。
【0073】
例えば、電流が交流である場合、導電性心線24内において電流がゼロで通過する際に(lors du passage par ze’ro du courant dans les a^mes conductrices 24)、アークは消滅する。
【0074】
「電流がゼロで通過する」とは、導電性心線24内の電流の方向が変化することを意味する。
【0075】
第2のアーク発生例が、図4に示される。
【0076】
電流が導電性心線24内を、第1の方向とは反対の第2の方向に沿って流れる場合、アークは、アークの電流I2の方向に沿って、電気端子28Aから電気端子28Bに向かって(図4参照)発生する。アークの発生に際して、アークは、磁場Bによって、そしてより厳密には曲線C2に沿った電気的合力F2によって偏向させられる。アークは、フィン50に向かって偏向させられる。
【0077】
合力F2は、例えば、オリフィス軸48に対して平行である。合力F2は、磁場Bおよびアーク電流I2によって形成される平面に対して垂直である。合力F2の計算は、合力F1の計算に対応する。
【0078】
フィン50に向かうアークの偏向は、「吸引(aspiration)」とも呼ばれる。
【0079】
アークがフィン50と接触した場合、アークは、強さが削減された複数のアークへと分裂する。アークが分裂される事実は、図5で、サイズが縮小されたフラッシュ(flashs)によって示される。
【0080】
その後、アークは、1つのフィン50から別のフィンへと伝達される。伝達の際に、アークは、フィン50およびライニング54上での放電によって減衰させられる。図5の実施例において、アークは、次に電気端子28Aに伝達される。
【0081】
例えば、電流が交流である場合、フィン50間で分裂したアークは、導電性心線24内において電流がゼロで通過する際に消滅する。
【0082】
給電システム1および保護用装置20は、複数の利点を有する。
【0083】
永久磁石モータを使用することにより、モータの質量およびモータの体積を削減することができる。モータが永久磁石モータである場合、モータは、鉄道車両の移動の際に電気ケーブル16内に電圧を誘導する可能性があり、これによりアークが形成され得る。
【0084】
保護用装置20は、特に、給電システム1内のアークに対して、保護用装置20の下流側に配置された要素すなわち、保護用装置20と電気モータ12との間に配置される給電システム1の要素を保護できるようにする。
【0085】
保護用装置20は、さらに、電気端子28間のアークを延長させることができ、これにより、アークの電流は削減される。延長には複数の利点がある。
【0086】
アーク電流を削減することで、アークの破壊能力は削減される。電気ケーブル16は、より良く保護される。保護用装置20は、アークの再発を回避することができる。
【0087】
さらに、フラッシュの離隔は、さらに、アークの熱効果に対して本体30の材料をより良く保護することに貢献する。
[構成1]
少なくとも2本の電気ケーブルのアークに対する保護用装置(20)において、各電気ケーブル(16)が少なくとも1つの電気端子(28、28A、28B)を有する保護用装置であって、
-+ 前記各電気ケーブル(16)の前記電気端子(28、28A、28B)を各々収容するよう意図されたオリフィス(47)が中に設けられる前方面(45)、ならびに
+ 前記前方面(45)の両側に配置された第1の面および第2の面(40、42)、を有する本体(30)と、
- 少なくとも1つの磁気要素(32)であって、各磁気要素は、前記第1の面(40)または前記第2の面上に固定され、共に1つの磁場(B)を生成する前記少なくとも1つの磁気要素(32)と、
- 前記第1の面(40)に固定された前記磁場(B)の第1の誘導要素(34a)および前記第2の面(42)に固定された前記磁場(B)の第2の誘導要素(34b)であって、互いの間に前記磁場(B)を通すように構成される第1の誘導要素および第2の誘導要素(34a、34b)と、を有することを特徴とする、保護用装置(20)。
[構成2]
前記誘導要素(34a、34b)は、前記電気端子(28、28A、28B)が前記オリフィス(47)内に収容されたとき前記誘導要素(34a、34b)の間に挟置されるように、前記本体(30)を超えて延在する、構成1に記載の保護用装置(20)。
[構成3]
前記本体は、前記第1の面(40)上に固定された少なくとも1つの第1の磁気要素(32)と前記第2の面(42)上に固定された少なくとも1つの第2の磁気要素(32)とを有する複数の磁気要素を有し、
前記第1の磁気要素および前記第2の磁気要素(32)は、共に前記磁場(B)を生成する、構成1または2に記載の保護用装置(20)。
[構成4]
各オリフィス(47)は、オリフィス軸(48)に沿って延在し、
前記本体(30)は、さらに、前記前方面(45)上に、アークを分裂させるように構成されたフィン(50)であって、各オリフィス軸(48)に対して平行な方向に沿って延在するフィン(50)を有する、構成1ないし3のいずれか一項に記載の保護用装置(20)。
[構成5]
前記本体(30)は、少なくとも1つのオリフィス対(47)を有し、
前記本体(40)は、各オリフィス対のオリフィス(47)の間に配設された少なくとも2個のフィン(50)から成る群を有する、構成1ないし4のいずれか一項に記載の保護用装置(20)。
[構成6]
各フィン(50)は、ステンレスを有するライニング(54)によって少なくとも部分的に被覆される、構成4または5に記載の保護用装置(20)。
[構成7]
前記少なくとも1つの磁気要素(32)は、前記第1の面および前記第2の面(40、42)に対して垂直な方向に沿って前記磁場(B)を生成するように配向される、構成1ないし6のいずれか一項に記載の保護用装置(20)。
[構成8]
各オリフィス(47)は、オリフィス軸(48)に沿って延在し、
前記オリフィス軸(48)は、前記第1の面および前記第2の面(40、42)に対して平行に延在する、構成1ないし7のいずれか一項に記載の保護用装置(20)。
[構成9]
前記本体(30)は、前記第1の面(40)上の第1のキャビティ(49)および前記第2の面(42)上の第2のキャビティを有し、
前記第1の磁気要素(32)は、前記第1のキャビティ(49)内に収容され、
前記第2の磁気要素(32)は、前記第2のキャビティ内に収容される、構成3に記載の保護用装置(20)。
[構成10]
- 少なくとも1つの電気トラクションモータ(12)と、
- 前記電気モータ(12)に給電するように構成された電気結線(14)であって、構成1ないし9のいずれか一項に記載の少なくとも1つの保護用装置(20)を有する電気結線(14)と、を有する、鉄道車両用給電システム(1)。
[構成11]
前記電気モータ(12)は、永久磁石モータである、構成10に記載の給電システム(1)。
図1
図2
図3
図4
図5