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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20240403BHJP
   B60K 6/26 20071001ALI20240403BHJP
   B60K 6/40 20071001ALI20240403BHJP
   B60K 6/405 20071001ALI20240403BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20240403BHJP
   B60K 6/543 20071001ALI20240403BHJP
   H02K 7/108 20060101ALI20240403BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20240403BHJP
   H02K 7/18 20060101ALI20240403BHJP
   H02K 11/215 20160101ALI20240403BHJP
   H02K 29/08 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
G01D5/245 110W
B60K6/26 ZHV
B60K6/40
B60K6/405
B60K6/48
B60K6/543
G01D5/245 B
G01D5/245 110L
H02K7/108
H02K7/116
H02K7/18 B
H02K11/215
H02K29/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020021655
(22)【出願日】2020-02-12
(65)【公開番号】P2021128021
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森下 真臣
(72)【発明者】
【氏名】前田 篤志
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-062770(JP,A)
【文献】特開2018-093590(JP,A)
【文献】特開2013-007733(JP,A)
【文献】特開2001-188003(JP,A)
【文献】特開平10-030714(JP,A)
【文献】特表2015-513682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00 - 8/00
G01D 5/00 - 5/62
G01P 1/00 - 3/80
H02K 7/00 - 7/20
H02K 11/00 - 11/40
H02K 29/00 - 29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体と、
前記回転体と径方向にオーバーラップする回転センサと、
記回転センサを保持する環状部と、前記環状部から径方向に延びる支持部と、前記支持部の先端において前記回転体よりも径方向外側に設けられた変換部と、を有し、前記回転体と軸方向に隣接するホルダと、
を備え、
前記ホルダは、筒状部を有する固定部材に前記筒状部を前記環状部に挿入して取り付けられており、
前記回転体がオーバーラップしている前記環状部から前記変換部までの間は、前記回転センサと接続されたフィルム状の電線が前記支持部に固定されており
前記回転体は、クラッチ又は回転電機のロータである、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記回転センサの被検出部としてのマグネットを備え、
前記マグネットは、前記回転体に保持されている、
ことを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の装置であって、
前記固定部材は、前記支持部を収容する溝を有する、
ことを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項に記載の装置であって、
前記支持部は、前記溝の内壁と当接する突起部を有する、
ことを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転電機のロータと径方向にオーバーラップする回転センサを備えた車両用駆動装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-126460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の車両用駆動装置では、回転センサに接続される電線を配置するスペースが狭いので、電線に弛みが発生した場合はロータに巻き込まれるおそれがある。
【0005】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、回転センサと接続される電線を、回転体に巻き込まれないように配置することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、回転体と、前記回転体と径方向にオーバーラップする回転センサと、記回転センサを保持する環状部と、前記環状部から径方向に延びる支持部と、前記支持部の先端において前記回転体よりも径方向外側に設けられた変換部と、を有し、前記回転体と軸方向に隣接するホルダと、を備え、前記ホルダは、筒状部を有する固定部材に前記筒状部を前記環状部に挿入して取り付けられており、前記回転体がオーバーラップしている前記環状部から前記変換部までの間は、前記回転センサと接続されたフィルム状の電線が前記支持部に固定されており、前記回転体は、クラッチ又は回転電機のロータである、ことを特徴とする装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
これによれば、回転体と軸方向に隣接するホルダに電線が固定されるので、電線に弛みが発生することを防止できる。よって、回転センサと接続される電線を、回転体に巻き込まれないように配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る装置を備えたハイブリッド車両の概略構成図であ る。
図2】回転電機の断面図である。
図3】ホルダの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る装置としての動力伝達装置10を備えたハイブリッド車両(以下、単に「車両」という。)100について説明する。
【0010】
図1は、車両100の概略構成図である。図1に示すように、車両100は、エンジン1と、エンジン1と駆動輪5とを結ぶ動力伝達経路に設けられた動力伝達装置10と、を備える。
【0011】
本実施形態では、動力伝達装置10は変速機であって、バリエータ20と、前後進切換え機構30と、回転電機40と、を備える。
【0012】
回転電機40は、動力伝達経路におけるバリエータ20とエンジン1との間に設けられる。
【0013】
回転電機40は、ハウジング41と、ハウジング41のエンジン1側の開口部に設けられた固定部材としてのカバー42と、ハウジング41の内周に設けられたステータ43と、回転軸44と、回転軸44の外周に設けられたロータ80と、カバー42に設けられた回転センサ47と、ロータ80と入力軸11とを断接するクラッチ48と、を備える。ロータ80は、ロータフレーム81と、ロータフレーム81の外周に設けられたコア82と、を備える。
【0014】
回転電機40は、カバー42を動力伝達装置10のケース12にボルト(図示せず)で締結して動力伝達装置10に固定される。
【0015】
入力軸11は、ベアリング50を介してカバー42に回転自在に支持されており、エンジン1の出力回転が入力される。また、回転軸44は、ベアリング51を介してハウジング41に回転自在に支持される。
【0016】
クラッチ48は、ノーマルオープンの油圧式クラッチである。クラッチ48は、油圧コントロールバルブユニット(図示せず)によって調圧された油圧により、締結・解放が制御される。なお、本実施形態では、クラッチ48は湿式多板式クラッチであるが、他のクラッチを用いてもよい。
【0017】
クラッチ48が締結されると、入力軸11とロータ80とが直結する。すなわち、入力軸11と回転軸44とが直結して同速回転する。
【0018】
回転センサ47は、回転電機40の回転速度及び角度(位相)の少なくとも一方を検知するセンサである。本実施形態では、回転センサ47はホールセンサであって、ロータ80に固定された保持部材49には、回転センサ47の被検出部としてのマグネット52が取り付けられている。
【0019】
なお、回転センサ47は、回転速度を検出する他のセンサや角度を検出する他のセンサを用いてもよい。また、マグネット52は、永久磁石、電磁石等である。電磁石を用いる場合は、スリップリング等を用いて電磁石に電流を供給すればよい。
【0020】
回転電機40は、バッテリ(図示せず)からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することができる。また、回転電機40は、ロータ80が駆動輪5から回転エネルギを受ける場合には発電機として機能し、バッテリを充電することができる。
【0021】
バリエータ20は、V溝が整列するよう配設されたプライマリプーリ2及びセカンダリプーリ3と、プーリ2、3のV溝に掛け渡されたベルト4と、を有する。
【0022】
プライマリプーリ2と同軸にエンジン1が配置され、エンジン1とプライマリプーリ2との間に、エンジン1の側から順に、回転電機40、前後進切換え機構30が設けられている。
【0023】
前後進切換え機構30は、ダブルピニオン遊星歯車組30aを主たる構成要素とし、そのサンギヤは回転電機40の回転軸44に結合され、キャリアはバリエータ20のプライマリプーリ2に結合される。前後進切換え機構30は、さらに、ダブルピニオン遊星歯車組30aのサンギヤおよびキャリア間を直結する前進クラッチ30b、及びリングギヤを固定する後進ブレーキ30cを備える。そして、前進クラッチ30bの締結時には、回転軸44からの入力回転がそのままの回転方向でプライマリプーリ2に伝達され、後進ブレーキ30cの締結時には、回転軸44からの入力回転が逆転されてプライマリプーリ2へと伝達される。
【0024】
前進クラッチ30bは、車両100の走行モードとして前進走行モードが選択された場合に油圧コントロールバルブユニットからクラッチ圧が供給されることで締結される。後進ブレーキ30cは、車両100の走行モードとして後進走行モードが選択された場合に油圧コントロールバルブユニットからブレーキ圧が供給されることで締結される。
【0025】
プライマリプーリ2の回転は、ベルト4を介してセカンダリプーリ3に伝達され、セカンダリプーリ3の回転は、出力軸8、歯車組9及びディファレンシャルギヤ装置15を経て駆動輪5へと伝達される。
【0026】
上記の動力伝達中にプライマリプーリ2及びセカンダリプーリ3間の変速比を変更可能にするために、プライマリプーリ2及びセカンダリプーリ3のV溝を形成する円錐板のうち一方を固定円錐板2a、3aとし、他方を軸線方向へ変位可能な可動円錐板2b、3bとしている。
【0027】
これら可動円錐板2b、3bは、油圧コントロールバルブユニットからプライマリプーリ圧及びセカンダリプーリ圧を供給することにより固定円錐板2a、3aに向けて付勢され、これによりベルト4を円錐板に摩擦係合させてプライマリプーリ2及びセカンダリプーリ3間での動力伝達を行う。
【0028】
変速に際しては、目標変速比に対応させて発生させたプライマリプーリ圧及びセカンダリプーリ圧間の差圧により両プーリ2、3のV溝の幅を変化させ、プーリ2、3に対するベルト4の巻き掛け円弧径を連続的に変化させることで目標変速比を実現する。
【0029】
回転電機40と前後進切換え機構30との間には、回転電機40の周方向に沿って弧状に延伸するオイル供給部材としてのパイプ53と、前後進切換え機構30の回転電機40側を覆い、パイプ53を介して回転電機40と軸方向に対向する中間カバー31と、が設けられる。
【0030】
パイプ53は、中間カバー31の内部に設けられた油路と接続されており、中間カバー31を介して供給された油を回転電機40側に形成された複数の孔53aから回転電機40のステータ43に向けて噴出させるようになっている。これにより、回転電機40を効率よく冷却することができる。
【0031】
中間カバー31には、ブッシュ54を介してスプロケット55が回転自在に支持されている。スプロケット55は、接続部材56を介して回転電機40の回転軸44と接続されており、スプロケット55はさらに、オイルポンプ6の入力軸6aに設けられたスプロケット6bとチェーン57で連結されている。これにより、回転電機40が回転すると、オイルポンプ6が駆動されて油圧コントロールバルブユニットに油が供給される。
【0032】
ブッシュ54及びスプロケット55は、径方向においてパイプ53とオーバーラップする位置に設けられる。「径方向にオーバーラップする」とは、径方向から見たときに少なくとも一部が重なるように配置されることを意味する。また、チェーン57は、弧状のパイプ53の一端と他端との間、すなわち、パイプ53の切欠き部を通るように配置される。これにより、動力伝達装置10の軸方向のサイズを抑制することができる。
【0033】
車両100は以上のように構成され、運転モードとして、バッテリから供給される電力によって回転電機40を駆動して回転電機40のみの駆動力によって走行するEVモードと、エンジン1のみの駆動力によって走行するエンジン走行モードと、エンジン1の駆動力と回転電機40の駆動力とによって走行するHEVモードと、を有する。
【0034】
EVモードでは、車両100は、クラッチ48を解放し、前進クラッチ30b及び後進ブレーキ30cのいずれか一方を締結した状態で、バッテリからの電力によって回転電機40のみを駆動して走行する。
【0035】
エンジン走行モードでは、車両100は、クラッチ48と、前進クラッチ30b及び後進ブレーキ30cのいずれか一方と、を締結した状態で、エンジン1のみを駆動して走行する。
【0036】
HEVモードでは、車両100は、クラッチ48と、前進クラッチ30b及び後進ブレーキ30cのいずれか一方と、を締結した状態で、エンジン1と回転電機40とを駆動して走行する。
【0037】
続いて、図2を参照しながら、回転電機40の構成について詳しく説明する。図2は、回転電機40の断面図である。
【0038】
図2に示すように、ハウジング41は、外周側に設けられた筒状部41aと、内周側に設けられてハウジング41の内側に向かって延びる筒状部41bと、を有する。筒状部41aの内周には、ステータ43が固定される。筒状部41bは、ベアリング51を介して回転軸44を回転自在に支持する。
【0039】
ハウジング41におけるパイプ53と対向する面には、周方向に沿って長穴状の開口部41cが形成されている。これにより、矢印で示すように、パイプ53の孔53aから噴出した油が、開口部41cを通ってステータコイル43aに直接吹き付けられる。なお、開口部41cの形状及び数は適宜設定可能である。
【0040】
カバー42は、外周側が動力伝達装置10のケース12に固定される。また、カバー42は、内周側に設けられてハウジング41側に向かって延びる筒状部42aを有する。
【0041】
筒状部42aの外周には、回転センサ47が収容されたホルダ58が固定される。また、筒状部42aは、ベアリング50を介して入力軸11を回転自在に支持する。回転センサ47及びホルダ58については後で詳しく説明する。
【0042】
筒状部42aと入力軸11との間には、外部への油の漏出を防止するためのシール部材59が設けられる。
【0043】
入力軸11と回転軸44との間には、軸方向の荷重を受けるニードルベアリング60と径方向の荷重を受けるニードルベアリング61と、が設けられる。
【0044】
入力軸11における前後進切換え機構30側の端部には、クラッチハブ62が溶接で固定される。クラッチハブ62は、外周側に設けられてエンジン1側に向かって延びる筒状部62aを有する。筒状部62aの外周には、スプライン結合によって軸方向に摺動自在にクラッチ48の複数のドライブプレート48aが取り付けられる。
【0045】
回転軸44の外周には、ロータフレーム81が溶接で固定される。ロータフレーム81は、外周側に設けられた筒状部81aを有する。筒状部81aの外周には、コア82が固定される。
【0046】
筒状部81aの内周には、スプライン結合によって軸方向に摺動自在にクラッチ48の複数のドリブンプレート48bが取り付けられる。リテーナプレート63は、ピストンアーム64とは反対側の端部に配置されたドリブンプレート48bと、筒状部81aの内周の溝に固定されたリング65との間に介装される。リテーナプレート63は、軸方向の厚みがドリブンプレート48bより厚く、ドライブプレート48a及びドリブンプレート48bの倒れを防止する。
【0047】
油圧コントロールバルブユニットからピストン油室66に締結圧が供給されると、ピストン67がリターンスプリング68を圧縮しながらエンジン1側に向けて移動する。クラッチ48は、ニードルベアリング69及びピストンアーム64を介してピストン67から伝達される押圧力によって締結状態となる。
【0048】
なお、ニードルベアリング69は、ピストン67がピストンアーム64の回転に伴って連れ回ることを抑制している。
【0049】
また、ロータフレーム81には、マグネット52を保持する保持部材49が取り付けられる。
【0050】
保持部材49は、外周側に設けられた圧入部49aによって筒状部81aの外周側に圧入で固定されている。なお、保持部材49は、例えば、リテーナプレート63に圧入や溶接で固定するように構成してもよい。
【0051】
また、保持部材49は、内周側に設けられて前後進切換え機構30側に向かって延びる筒状部49bを有する。筒状部49bは、径方向におけるクラッチハブ62とホルダ58に保持された回転センサ47との間に位置しており、内周にマグネット52が取り付けられる。
【0052】
つまり、本実施形態では、回転センサ47、マグネット52、及び保持部材49の筒状部49bは、クラッチハブ62の内側のスペースに配置される。そして、図2に示すように、回転センサ47、マグネット52、保持部材49の筒状部49b、クラッチ48、及びロータ80は、径方向にオーバーラップしている。これによれば、回転電機40のサイズを抑制できる。
【0053】
続いて、図2図3を参照しながら、回転センサ47及びホルダ58について説明する。図3は、ホルダ58の斜視図である。
【0054】
ホルダ58は、図3に示すように、内部に回転センサ47を保持する環状部58aと、環状部58aから径方向に延びる支持部58bと、支持部58bの先端に設けられた変換部58cと、を有する。
【0055】
回転センサ47と接続された電線70は、フィルム状部分70aと、ケーブル70bと、を有する。フィルム状部分70aとケーブル70bとは、変換部58c内で結線されている。
【0056】
フィルム状部分70aは、支持部58bに固定されたフレキシブルプリント基板70c上に設けられる。フレキシブルプリント基板70cは、例えば、接着剤を用いて支持部58bに固定してもよいし、かしめによって支持部58bに固定してもよい。
【0057】
ホルダ58は、図2に示すように、環状部58aにカバー42の筒状部42aを挿入してカバー42に取り付けられる。
【0058】
筒状部42aの外周におけるホルダ58よりも先端側には、溝に固定されたリング71が環状部58aと軸方向にオーバーラップして設けられる。「軸方向にオーバーラップする」とは、軸方向から見たときに少なくとも一部が重なるように配置されることを意味する。そのため、ホルダ58は、筒状部42aの先端側への移動がリング71によって規制される。これにより、筒状部42aからホルダ58が脱落することを防止できる。なお、リング71は、筒状部42aの外周に圧入で固定されるように構成してもよい。
【0059】
本実施形態では、図3に示すように、環状部58aは円環状とされる。しかしながら、環状部58aは、多角環状に形成してもよいし、切欠きを有する環状に形成してもよい。切欠きを有する環状とする場合は、切欠きの水平方向(軸方向と直交する方向)の幅を筒状部42aの直径よりも小さくすることで、環状部58aに筒状部42aが挿入された状態を実現できる。
【0060】
また、図2に示すように、カバー42には、筒状部42aの基端部から径方向に延びる収容部としての溝42bが形成されている。ホルダ58の支持部58bはカバー42の内壁に沿うように形成されており、ホルダ58をカバー42に取り付けると支持部58bが溝42bに嵌まった状態となる。このように、径方向に延びる溝42bに径方向に延びる支持部58bを収容することで、ホルダ58の周方向への回転を規制できる。また、これによれば、カバー42に溝42bを設けない場合と比較して、軸方向におけるカバー42とロータ80や保持部材49等の回転体との距離を近づけることができる。
【0061】
また、ホルダ58の支持部58bの側面には、図3に示すように、複数の突起部58dが設けられる。突起部58dは、支持部58bをカバー42の溝42bに収容した状態において、溝42bの内壁と当接するように設けられる。これによれば、突起部58dが抜け止めとして機能するので、支持部58bを溝42bに強固に固定できる。なお、突起部58dは1つであってもよい。
【0062】
図2に示すように、ホルダ58は、ロータ80や保持部材49等の回転体と軸方向に隣接して設けられる。「軸方向に隣接」とは、2つの部材が他の部材を介さず軸方向に隣り合って配置されていることを意味し、2つの部材が接触していてもよいし、隙間をあけて配置されていてもよい。
【0063】
ここで、ホルダ58の環状部58aと変換部58cとの間における電線70はフィルム状部分70aであり、支持部58bに固定されたフレキシブルプリント基板70c上に設けられている。
【0064】
これにより、本実施形態の電線70は、回転体と軸方向にオーバーラップする位置においては、図2に示すように、フィルム状部分70aとなる。つまり、電線70のフィルム状部分70aが、ロータ80や保持部材49と対向する。そして、回転体と軸方向にオーバーラップしない位置においては、電線70はケーブル70bとなる。
【0065】
電線70のフィルム状部分70aはフレキシブルプリント基板70cを介してホルダ58の支持部58bに固定されているので、回転体と軸方向にオーバーラップする位置において電線70に弛みが発生することを防止できる。よって、ホルダ58を回転体と隣接させて設けても、電線70を回転体に巻き込まれないように配置することができる。また、ホルダ58を回転体と隣接させて設けることで、電線70、回転体、及び回転センサ47のレイアウトをコンパクトにできる。
【0066】
なお、回転体は、回転物であれば限定されない。例えば、回転センサ47の被検出部であるマグネット52の保持部材49、クラッチ48、回転電機40のロータ80等は回転体である。また、マグネット52は、保持部材49を設けることなく、他の回転体に保持されるように構成してもよい。
【0067】
一方で、本実施形態では、電線70が回転体に巻き込まれる可能性が低い位置、すなわち、回転体と軸方向にオーバーラップしない位置においては、電線70をケーブル70bとしている。つまり、安価なケーブル(絶縁体に覆われた銅線)等を用いることで、コストを抑制できる。
【0068】
なお、フィルム状部分70aに代えてケーブルを用いることもできる。この場合は、フレキシブルプリント基板70cを設けることなく、ケーブルを支持部58bに接着剤、バンド、テープ等を用いて取り付けることが考えられる。また、例えば、支持部58bに爪を設けてフィルム状部分70a或いはケーブルを係止させてもよいし、フィルム状部分70a或いはケーブルを支持部58bに埋め込んでもよい。これらの態様も、電線70をホルダ58に固定することに含まれる。
【0069】
以上述べたように、本実施形態の動力伝達装置10は、回転体と、回転体と径方向にオーバーラップする回転センサ47と、回転体と軸方向に隣接するホルダ58と、回転センサ47と接続され、且つホルダ58に固定された電線70と、を備える。
【0070】
これによれば、回転体と軸方向に隣接するホルダ58に電線70が固定されるので、電線70に弛みが発生することを防止できる。よって、回転センサ47と接続される電線70を、回転体に巻き込まれないように配置することができる。さらに、ホルダ58を回転体と隣接させて設けることで、電線70、回転体、及び回転センサ47のレイアウトをコンパクトにできる(請求項1に対応する効果)。
【0071】
また、動力伝達装置10は、回転センサ47の被検出部としてのマグネット52を備え、マグネット52は、回転体に保持されている。
【0072】
これによれば、回転センサ47としてホールセンサを用いた構成を容易に実現できる(請求項2に対応する効果)。
【0073】
また、回転体は、例えば、クラッチ48又は回転電機40のロータ80である。
【0074】
この場合は、クラッチ48や回転電機40のロータ80等の回転を検知するために保持部材や接続部材等の別部材の回転体を設けることで、レイアウト設計の自由度を向上させることができる(請求項3に対応する効果)。
【0075】
また、動力伝達装置10は、ホルダ58を収容する溝42bを有するカバー42を備える。
【0076】
これによれば、溝42bにホルダ58が収容されるので、溝42bを設けない場合と比較して、軸方向におけるカバー42と回転体との距離を近づけることができる。よって、動力伝達装置10のサイズを抑制できる(請求項4に対応する効果)。
【0077】
また、ホルダ58は、溝42bの内壁と当接する突起部58dを有する。
【0078】
これによれば、突起部58dが抜け止めとして機能するので、ホルダ58を溝42bに強固に固定できる(請求項5に対応する効果)。
【0079】
また、電線70は、ホルダ58に設けられたフィルム状部分70aを有する。
【0080】
フレキシブルプリント基板70c上に設けられたフィルム状の電線70(フィルム状部分70a)を用いること等により、ケーブルを用いた場合と比較して、電線70を回転体に巻き込むリスクをより低減できる(請求項6に対応する効果)。
【0081】
また、電線70は、回転体と軸方向にオーバーラップしない位置において、ケーブル70bを有する。
【0082】
これによれば、電線70を回転体に巻き込むリスクが高い箇所に対して局所的にフィルム状部分70aを用いることになり、コストを抑えつつ電線70を回転体に巻き込むリスクを低減することが可能となる。言い換えると、電線70の巻込みリスクが低い箇所においては安価なケーブル70bを用いることでコストダウンが可能ということになる(請求項7に対応する効果)。
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0084】
例えば、上記実施形態では、装置を動力伝達装置10として説明した。しかしながら、装置は、回転電機搭載装置(回転電機を搭載した装置)等であってもよく、動力伝達装置10は、回転電機搭載装置として把握することもできる。
【0085】
また、上記実施形態では、動力伝達装置10を変速機として説明した。しかしながら、動力伝達装置10は、減速機、モータ付変速機(回転電機搭載装置でもある)、モータ付減速機(回転電機搭載装置でもある)等であってもよい。
【符号の説明】
【0086】
10 動力伝達装置(装置)
40 回転電機
42 カバー(固定部材)
42b 溝(収容部)
47 回転センサ
48 クラッチ(回転体)
49 保持部材(回転体)
52 マグネット
58 ホルダ
58d 突起部
70 電線
70a フィルム状部分
70b ケーブル
80 ロータ(回転体)
図1
図2
図3