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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】通信装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/27 20150101AFI20240403BHJP
   H04B 17/309 20150101ALI20240403BHJP
【FI】
H04B17/27
H04B17/309
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020023212
(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公開番号】P2021129229
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【弁理士】
【氏名又は名称】大山 夏子
(72)【発明者】
【氏名】大石 佳樹
(72)【発明者】
【氏名】森 惠
(72)【発明者】
【氏名】古賀 健一
(72)【発明者】
【氏名】古池 竜也
(72)【発明者】
【氏名】内木 一輝
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-096911(JP,A)
【文献】特開2004-242122(JP,A)
【文献】特開2018-141771(JP,A)
【文献】特開2018-124181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/60
H04B 3/46-3/493
H04B 17/00-17/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の通信装置との間で無線信号を送受信する無線通信部と、
前記無線通信部が受信した無線信号のうち所定の検出基準を満たす信号として検出された信号である第1到来波が処理対象として適切であるかを示す指標である信頼性パラメータを計算し、前記第1到来波に基づいて前記他の通信装置が存在する位置を示す位置パラメータを特定する位置パラメータ特定処理を前記信頼性パラメータに基づいて制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記無線通信部により第1の無線信号を送信すること、前記第1の無線信号に応答して前記他の通信装置から送信された第2の無線信号を受信すること、及び受信された前記第2の無線信号のうち前記所定の検出基準を満たす信号を前記第1到来波として検出することを含む位置推定用通信を複数回実行し、複数の前記位置推定用通信において得られた複数の前記第1到来波に基づいて前記位置パラメータを特定し、
前記信頼性パラメータは、前記第1到来波が直接波によるものであることの妥当性を示す指標である第2の信頼性パラメータを含み、
前記直接波は、送受信間の最短経路を経て受信される信号であり、
前記第2の信頼性パラメータは、前記無線通信部が有する複数のアンテナの各々における前記第1到来波の受信電力値の差に基づいて計算される、
通信装置。
【請求項2】
他の通信装置との間で無線信号を送受信する無線通信部と、
前記無線通信部が受信した無線信号のうち所定の検出基準を満たす信号として検出された信号である第1到来波が処理対象として適切であるかを示す指標である信頼性パラメータを計算し、前記第1到来波に基づいて前記他の通信装置が存在する位置を示す位置パラメータを特定する位置パラメータ特定処理を前記信頼性パラメータに基づいて制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記無線通信部により第1の無線信号を送信すること、前記第1の無線信号に応答して前記他の通信装置から送信された第2の無線信号を受信すること、及び受信された前記第2の無線信号のうち前記所定の検出基準を満たす信号を前記第1到来波として検出することを含む位置推定用通信を複数回実行し、複数の前記位置推定用通信において得られた複数の前記第1到来波に基づいて前記位置パラメータを特定し、
前記信頼性パラメータは、前記第1到来波が直接波によるものであることの妥当性を示す指標である第2の信頼性パラメータを含み、
前記直接波は、送受信間の最短経路を経て受信される信号であり、
前記第2の信頼性パラメータは、前記無線通信部が有する複数のアンテナのうち異なる2つのアンテナにより形成される複数のアンテナペアの各々により受信された前記第1到来波に基づき推定される前記他の通信装置が存在する位置を示す位置パラメータ間の整合性に基づいて計算される、
通信装置。
【請求項3】
他の通信装置との間で無線信号を送受信する無線通信部と、
前記無線通信部が受信した無線信号のうち所定の検出基準を満たす信号として検出された信号である第1到来波が処理対象として適切であるかを示す指標である信頼性パラメータを計算し、前記第1到来波に基づいて前記他の通信装置が存在する位置を示す位置パラメータを特定する位置パラメータ特定処理を前記信頼性パラメータに基づいて制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記無線通信部により第1の無線信号を送信すること、前記第1の無線信号に応答して前記他の通信装置から送信された第2の無線信号を受信すること、及び受信された前記第2の無線信号のうち前記所定の検出基準を満たす信号を前記第1到来波として検出することを含む位置推定用通信を複数回実行し、複数の前記位置推定用通信において得られた複数の前記第1到来波に基づいて前記位置パラメータを特定し、
前記信頼性パラメータは、前記第1到来波が合成波によるものではないことの妥当性を示す指標である第3の信頼性パラメータを含み、
前記合成波は、複数の異なる経路を経た複数の信号が合成された状態で受信される信号である、
通信装置。
【請求項4】
他の通信装置との間で無線信号を送受信する無線通信部と、
前記無線通信部が受信した無線信号のうち所定の検出基準を満たす信号として検出された信号である第1到来波が処理対象として適切であるかを示す指標である信頼性パラメータを計算し、前記第1到来波に基づいて前記他の通信装置が存在する位置を示す位置パラメータを特定する位置パラメータ特定処理を前記信頼性パラメータに基づいて制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記無線通信部により第1の無線信号を送信すること、前記第1の無線信号に応答して前記他の通信装置から送信された第2の無線信号を受信すること、及び受信された前記第2の無線信号のうち前記所定の検出基準を満たす信号を前記第1到来波として検出することを含む位置推定用通信を複数回実行し、複数の前記位置推定用通信において得られた複数の前記第1到来波に基づいて前記位置パラメータを特定し、
前記信頼性パラメータは、複数の前記第1到来波のばらつきを示す統計量に基づいて計算される第4の信頼性パラメータを含む、
通信装置。
【請求項5】
前記制御部は、複数の前記第1到来波の各々に基づいて推定された複数の前記位置パラメータに対し前記信頼性パラメータに基づく統計処理を適用することで、前記位置パラメータを特定する、請求項1~4のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記制御部は、所定の条件が満たされた場合、前記位置パラメータ特定処理において前記位置パラメータを特定しない、請求項1~5のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項7】
前記信頼性パラメータは、前記第1到来波そのものが検出される対象として適切であるかを示す指標である第1の信頼性パラメータを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項8】
前記第1の信頼性パラメータは、前記第1到来波の電力値及びSNR(signal-noise ratio)の少なくともいずれかに基づいて計算される、請求項7に記載の通信装置。
【請求項9】
前記第2の信頼性パラメータは、前記無線通信部が有する複数のアンテナの各々における前記第1到来波の受信時刻に基づいて計算される、請求項1又は2に記載の通信装置。
【請求項10】
前記第3の信頼性パラメータは、前記第1到来波の時間方向の幅及び前記第1到来波における位相の状態の、少なくともいずれかに基づいて計算される、請求項3に記載の通信装置。
【請求項11】
前記位置パラメータは、前記無線通信部が有する複数のアンテナのうち1のアンテナを基準とする前記他の通信装置までの距離、第1の所定の座標系における原点と前記他の通信装置とを結ぶ直線と座標軸とがなす角度、及び第2の所定の座標系における前記他の通信装置の座標の少なくともいずれかを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項12】
前記通信装置は、車両に搭載され、
前記他の通信装置は、前記車両のユーザに携帯され、
前記制御部は、前記位置パラメータ特定処理により特定された前記位置パラメータに基づいて、前記車両の車室内及び車室外を含む複数のエリアの中から前記他の通信装置が存在するエリアを特定する、請求項1~11のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項13】
他の通信装置との間で無線信号を送受信する通信装置を制御するコンピュータを、
前記通信装置が受信した無線信号のうち所定の検出基準を満たす信号として検出された信号である第1到来波が処理対象として適切であるかを示す指標である信頼性パラメータを計算し、前記第1到来波に基づいて前記他の通信装置が存在する位置を示す位置パラメータを特定する位置パラメータ特定処理を前記信頼性パラメータに基づいて制御する制御部、
として機能させ、
前記制御部は、前記通信装置により第1の無線信号を送信すること、前記第1の無線信号に応答して前記他の通信装置から送信された第2の無線信号を受信すること、及び受信された前記第2の無線信号のうち前記所定の検出基準を満たす信号を前記第1到来波として検出することを含む位置推定用通信を複数回実行し、複数の前記位置推定用通信において得られた複数の前記第1到来波に基づいて前記位置パラメータを特定し、
前記信頼性パラメータは、前記第1到来波が直接波によるものであることの妥当性を示す指標である第2の信頼性パラメータを含み、
前記直接波は、送受信間の最短経路を経て受信される信号であり、
前記第2の信頼性パラメータは、前記通信装置が有する複数のアンテナの各々における前記第1到来波の受信電力値の差に基づいて計算される、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、装置間で信号を送受信した結果に従って、一方の装置が他方の装置の位置を特定する技術が開発されている。位置特定技術の一例として、下記特許文献1には、UWB(Ultra-Wide Band)で無線通信を行うことで、UWB受信機がUWB送信機からの無線信号の入射角を特定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/176776号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の技術は、送受信間に遮蔽物が存在する等の環境下では無線信号の入射角の特定精度が低下するにも関わらず、何ら対処がなされていないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、位置を特定する処理を電波伝搬環境に応じて制御することが可能な仕組みを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、他の通信装置から無線信号を受信する無線通信部と、前記無線通信部が受信した前記無線信号のうち所定の検出基準を満たす信号として検出された信号である第1到来波が処理対象として適切であるかを示す指標である信頼性パラメータを計算し、前記無線信号の受信結果に基づいて前記他の通信装置が存在する位置を示す位置パラメータを特定する位置パラメータ特定処理を前記信頼性パラメータに基づいて制御する制御部と、を備える通信装置が提供される。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、他の通信装置から無線信号を受信する通信装置を制御するコンピュータを、前記通信装置が受信した前記無線信号のうち所定の検出基準を満たす信号として検出された信号である第1到来波が処理対象として適切であるかを示す指標である信頼性パラメータを計算し、前記無線信号の受信結果に基づいて前記他の通信装置が存在する位置を示す位置パラメータを特定する位置パラメータ特定処理を前記信頼性パラメータに基づいて制御する制御部、として機能させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように本発明によれば、位置を特定する処理を電波伝搬環境に応じて制御することが可能な仕組みが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るシステムの構成の一例を示す図である。
図2】本実施形態に係る無線通信部の処理ブロックの一例を示す図である。
図3図3は、本実施形態に係るCIRの一例を示すグラフである。
図4】本実施形態に係る車両に設けられる複数のアンテナの配置の一例を示す図である。
図5】本実施形態に係る携帯機の位置パラメータの一例を示す図である。
図6】本実施形態に係る携帯機の位置パラメータの一例を示す図である。
図7】本実施形態に係るシステムにおいて実行される測距処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
図8】本実施形態に係るシステムにおいて実行される角度推定処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
図9】本実施形態に係る信頼性パラメータの一例を説明するための図である。
図10】本実施形態に係る信頼性パラメータの一例を説明するための図である。
図11】CIRの一例を示すグラフである。
図12】CIRの一例を示すグラフである。
図13】複数の無線通信部におけるCIRの一例を示すグラフである。
図14】LOS状態の無線通信部におけるCIRの一例を示すグラフである。
図15】NLOS状態の無線通信部におけるCIRの一例を示すグラフである。
図16】本実施形態に係る車両の通信ユニットにより実行される位置特定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図17】本実施形態に係る車両の通信ユニットにより実行される位置特定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
<1.構成例>
図1は、本発明の一実施形態に係るシステム1の構成の一例を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係るシステム1は、携帯機100、及び通信ユニット200を含む。本実施形態における通信ユニット200は、車両202に搭載される。車両202は、ユーザの利用対象の一例である。
【0012】
本発明には、被認証者側の通信装置(以下、第1の通信装置とも称する)と、認証者側の通信装置(以下、第2の通信装置とも称する)と、が関与する。図1に示した例では、携帯機100が第1の通信装置の一例であり、通信ユニット200が第2の通信装置の一例である。
【0013】
システム1においては、ユーザ(例えば、車両202のドライバー)が携帯機100を携帯して車両202に近づくと、携帯機100と車両202に搭載された通信ユニット200との間で認証のための無線通信が行われる。そして、認証が成功すると、車両202のドア錠がアンロックされたりエンジンが始動されたりして、車両202がユーザにより利用可能な状態になる。システム1は、スマートエントリーシステムとも称される。以下、各構成要素について順に説明する。
【0014】
(1)携帯機100
携帯機100は、ユーザにより携帯される任意の装置として構成される。任意の装置には、電子キー、スマートフォン、及びウェアラブル端末等が含まれる。図1に示すように、携帯機100は、無線通信部110、記憶部120、及び制御部130を備える。
【0015】
無線通信部110は、車両202に搭載された通信ユニット200との間で、無線による通信を行う機能を有する。無線通信部110は、車両202に搭載された通信ユニット200から無線信号を受信し、無線信号を送信する。
【0016】
無線通信部110と通信ユニット200との間の無線による通信は、例えばUWB(Ultra-Wide Band)を用いた信号によって実現される。UWBを用いた信号の無線通信において、インパルス方式を利用すれば、ナノ秒以下の非常に短いパルス幅の電波を使用することで電波の空中伝搬時間を高精度に測定することができ、伝搬時間に基づく測位及び測距を高精度に行うことができる。無線通信部110は、例えば、UWBでの通信が可能な通信インタフェースとして構成される。
【0017】
なお、UWBを用いた信号は、測距用信号、及びデータ信号として送受信され得る。測距用信号とは、後述する測距処理において送受信される信号である。測距用信号は、データを格納するペイロード部分を有さないフレームフォーマットで構成されていてもよいし、ペイロード部分を有するフレームフォーマットで構成されていてもよい。一方で、データ信号は、データを格納するペイロード部分を有するフレームフォーマットで構成されることが好ましい。
【0018】
ここで、無線通信部110は、少なくとも1つのアンテナ111を有する。そして、無線通信部110は、少なくとも1つのアンテナ111を介して無線信号を送受信する。
【0019】
記憶部120は、携帯機100の動作のための各種情報を記憶する機能を有する。例えば、記憶部120は、携帯機100の動作のためのプログラム、並びに認証のためのID(identifier)、パスワード、及び認証アルゴリズム等を記憶する。記憶部120は、例えば、フラッシュメモリ等の記憶媒体、及び記憶媒体への記録再生を実行する処理装置により構成される。
【0020】
制御部130は、携帯機100における処理を実行する機能を有する。一例として、制御部130は、無線通信部110を制御して車両202の通信ユニット200との通信を行い、記憶部120からの情報の読み出し及び記憶部120への情報の書き込みを行う。制御部130は、車両202の通信ユニット200との間で行われる認証処理を制御する認証制御部としても機能する。制御部130は、例えばCPU(Central Processing Unit)及びマイクロプロセッサ等の電子回路によって構成される。
【0021】
(2)通信ユニット200
通信ユニット200は、車両202に対応付けて設けられる。ここでは、車両202の車室内に第2の通信装置が設置される、又は通信モジュールとして車両202に内蔵される等、通信ユニット200は車両202に搭載されるものとする。他にも、車両202の駐車場に通信ユニット200が設けられる等、車両202と通信ユニット200とが別体として構成されてもよい。その場合、通信ユニット200は、携帯機100との通信結果に基づいて、車両202に制御信号を無線送信し、車両202を遠隔で制御し得る。図1に示すように、通信ユニット200は、無線通信部210、記憶部220、及び制御部230を備える。
【0022】
無線通信部210は、携帯機100の無線通信部110との間で、無線による通信を行う機能を有する。無線通信部210は、携帯機100から無線信号を受信し、携帯機100へ無線信号を送信する。無線通信部210は、例えば、UWBでの通信が可能な通信インタフェースとして構成される。
【0023】
ここで、無線通信部210は、少なくとも1本のアンテナ211を有する。そして、無線通信部210は、少なくとも1本のアンテナ211を介して無線信号を送受信する。
【0024】
記憶部220は、通信ユニット200の動作のための各種情報を記憶する機能を有する。例えば、記憶部220は、通信ユニット200の動作のためのプログラム、及び認証アルゴリズム等を記憶する。記憶部220は、例えば、フラッシュメモリ等の記憶媒体、及び記憶媒体への記録再生を実行する処理装置により構成される。
【0025】
制御部230は、通信ユニット200、及び車両202に搭載された車載機器の動作全般を制御する機能を有する。一例として、制御部230は、無線通信部210を制御して携帯機100との通信を行い、記憶部220からの情報の読み出し及び記憶部220への情報の書き込みを行う。制御部230は、携帯機100との間で行われる認証処理を制御する認証制御部としても機能する。また、制御部230は、車両202のドア錠を制御するドアロック制御部としても機能し、ドア錠のロック及びアンロックを行う。また、制御部230は、車両202のエンジンを制御するエンジン制御部としても機能し、エンジンの始動/停止を行う。なお、車両202に備えられる動力源は、エンジンの他にモータ等であってもよい。制御部230は、例えばECU(Electronic Control Unit)等の電子回路として構成される。
【0026】
<2.技術的特徴>
スマートエントリーシステムにおいては、携帯機100と車両202の通信ユニット200との間での無線通信の結果に基づいて特定された携帯機100と通信ユニット200との相対的な位置関係に基づいて、携帯機100の認証が行われる場合がある。しかし、電波伝搬環境が適切でない状況では、位置関係の特定精度が悪化しやすい。
【0027】
そのような状況の一例として、ピラー影等のアンテナ211からの見通し外に携帯機100が存在する場合が挙げられる。この場合、受信電力が著しく低下するのに伴い、位置関係の特定精度が悪化する。
【0028】
そのような状況の他の一例として、マルチパス(Multi Path)が発生する状況が挙げられる。マルチパスとは、ひとつの送信源から送信された電波が受信側に複数到達する状態を指し、送受信間で複数の経路が存在する場合に発生する。マルチパスが発生している状況下では、複数の異なる経路を経由した信号が互いに干渉してしまい、位置関係の特定精度が悪化する場合がある。
【0029】
電波伝搬環境が適切でない状況においても、認証誤りの発生を防止して、セキュリティ性を担保することが求められる。そこで、本発明では、携帯機100が存在する位置を特定する処理を電波伝搬環境に応じて制御する。これにより、電波伝搬環境に対するロバスト性を向上させて、スマートエントリーシステムのセキュリティ性を担保することが可能となる。以下、本発明の技術的特徴について詳しく説明する。
【0030】
<2.1.CIR算出処理>
本実施形態に係る携帯機100及び通信ユニット200は、携帯機100と通信ユニット200との間の無線通信路の特性を示すCIR(Channel Impulse Response)を算出し得る。
【0031】
本明細書におけるCIRは、携帯機100及び通信ユニット200の一方(以下、送信側とも称する)がパルスを含む無線信号を送信し、他方(以下、受信側とも称する)が無線信号を受信することにより、算出される。より具体的には、本明細書におけるCIRとは、送信側が送信した無線信号(以下、送信信号とも称する)と受信側が受信した無線信号(以下、受信信号とも称する)との相関を、送信信号が送信されてからの経過時間である遅延時間ごとにとった結果である、相関演算結果である。
【0032】
受信側は、送信信号と受信信号とのスライディング相関をとることで、CIRを算出する。詳しくは、受信側は、受信信号とある遅延時間分遅延させた送信信号との相関をとった値を、当該遅延時間における特性(以下、CIR値とも称する)として算出する。そして、受信側は、遅延時間ごとのCIR値を算出することで、CIRを算出する。つまり、CIRは、CIR値の時系列推移である。ここで、CIR値は、I成分及びQ成分を有する複素数である。CIR値のI成分及びQ成分の二乗和は、CIRの電力値とも称される場合がある。なお、UWBを用いた測距技術においては、CIR値は遅延プロファイルとも称される。また、UWBを用いた測距技術においては、CIR値のI成分及びQ成分の二乗和は、電力遅延プロファイルとも称される。
【0033】
以下、送信側が携帯機100であり、受信側が通信ユニット200である場合のCIR算出処理を、図2図3を参照しながら詳しく説明する。
【0034】
図2は、本実施形態に係る無線通信部210の処理ブロックの一例を示す図である。図2に示すように、無線通信部210は、発振器212、乗算器213、90度移相器214、乗算器215、LPF(Low Pass Filter)216、LPF217、相関器218、及び積算器219を含む。
【0035】
発振器212は、送信信号を搬送する搬送波の周波数と同一の周波数の信号を生成して、生成した信号を乗算器213及び90度移相器214に出力する。
【0036】
乗算器213は、アンテナ211により受信された受信信号と発振器212から出力された信号とを乗算し、乗算した結果をLPF216に出力する。LPF216は、入力された信号のうち、送信信号を搬送する搬送波の周波数以下の周波数の信号を、相関器218に出力する。相関器218に入力される信号は、受信信号の包絡線に対応する成分のうちI成分(即ち、実部)である。
【0037】
90度移相器214は、入力された信号の位相を90度遅延させて、遅延させた信号を乗算器215に出力する。乗算器215は、アンテナ211により受信された受信信号と90度移相器214から出力された信号とを乗算し、乗算した結果をLPF217に出力する。LPF217は、入力された信号のうち、送信信号を搬送する搬送波の周波数以下の周波数の信号を、相関器218に出力する。相関器218に入力される信号は、受信信号の包絡線に対応する成分のうちQ成分(即ち、虚部)である。
【0038】
相関器218は、LPF216及びLPF217から出力された、I成分及びQ成分から成る受信信号と、参照信号と、のスライディング相関をとることで、CIRを算出する。なお、ここでの参照信号とは、搬送波が乗算される前の送信信号と同一の信号である。
【0039】
積算器219は、相関器218から出力されたCIRを積算して、出力する。
【0040】
なお、無線通信部210は、上記処理を、複数のアンテナ211により受信された受信信号の各々に対して行う。
【0041】
積算器219から出力されるCIRの一例を、図3に示す。図3は、本実施形態に係るCIRの一例を示すグラフである。グラフの横軸は遅延時間であり、縦軸は遅延プロファイルである。CIRにおける、ある遅延時間のCIR値のように、時系列に沿って変化する情報を構成するひとつの情報は、サンプリングポイントとも称される。CIRにおいて、典型的には、ゼロクロス点とゼロクロス点との間のサンプリングポイントの集合が、ひとつのパルスに対応する。ゼロクロス点とは、値がゼロになるサンプリングポイントである。ただし、ノイズがある環境ではその限りではない。例えば、ゼロ以外の基準となる水準とCIR値の推移との交点間のサンプリングポイントの集合が、ひとつのパルスに対応すると捉えられてもよい。図3に示したCIRには、あるパルスに対応するサンプリングポイントの集合21、及び他のパルスに対応するサンプリングポイントの集合22が、含まれている。
【0042】
集合21は、例えば、ファストパスのパルスに対応する。ファストパスとは、送受信間の最も短い経路を指し、遮蔽物がない環境では送受信間の直線距離を指す。ファストパスのパルスとは、ファストパスを通って受信側に到達したパルスである。集合22は、例えば、ファストパス以外の経路を通って受信側に到達したパルスに対応する。
【0043】
<2.2.位置パラメータ推定処理>
本実施形態に係る通信ユニット200(詳しくは、制御部230)は、携帯機100が存在する位置を示す位置パラメータを推定する、位置パラメータ推定処理を行う。以下、図4図6を参照しながら、位置パラメータに関する各種定義について説明する。
【0044】
図4は、本実施形態に係る車両202に設けられる複数のアンテナ211の配置の一例を示す図である。図4に示すように、車両202の天井部分には、4つのアンテナ211(211A-211D)が設けられている。アンテナ211Aは車両202の前方右側に設けられ、アンテナ211Bは車両202の前方左側に設けられ、アンテナ211Cは車両202の後方右側に設けられ、アンテナ211Dは車両202の後方左側に設けられる。なお、隣接するアンテナ211間の距離は、後述する角度推定用信号の波長λの2分の1以下になるように設定される。通信ユニット200のローカル座標系は、4つのアンテナ211の中心を原点とし、車両202の前後方向をX軸とし、車両202の左右方向をY軸とし、車両202の上下方向をZ軸とする座標系である。なお、X軸は、前後方向のアンテナペア(例えば、アンテナ211Aとアンテナ211C、及びアンテナ211Bとアンテナ211D)を結ぶ軸に平行する。また、Y軸は、左右方向のアンテナペア(例えば、アンテナ211Aとアンテナ211B、及びアンテナ211Cとアンテナ211D)を結ぶ軸に平行する。
【0045】
なお、4本のアンテナ211の配置形状は、正方形に限らず、平行四辺形、台形、矩形、及びその他の任意の形状を取り得る。もちろん、アンテナ211の数は4本に限定されない。
【0046】
図5は、本実施形態に係る携帯機100の位置パラメータの一例を示す図である。位置パラメータは、図5に示す、通信ユニット200のローカル座標系の原点から携帯機100までの距離Rを含み得る。距離Rは、携帯機100と通信ユニット200との間の距離に相当する。より詳しくは、距離Rは、無線通信部210が有する複数のアンテナ211のうち1のアンテナ211を基準とする携帯機100までの距離である。当該1つのアンテナ211と携帯機100との間で行われる、後述する測距用信号の送受信結果に基づいて、距離Rが推定される。
【0047】
また、位置パラメータは、図5に示す、X軸から携帯機100までの角度α、及びY軸から携帯機100までの角度βから成る、通信ユニット200を基準とする携帯機100の角度を含み得る。角度α及びβは、第1の所定の座標系における原点と携帯機100とを結ぶ直線と座標軸とがなす角度である。例えば、第1の所定の座標系は、ローカル座標系である。角度αは、原点と携帯機100とを結ぶ直線とX軸とがなす角度である。角度βは、原点と携帯機100とを結ぶ直線とY軸とがなす角度である
【0048】
図6は、本実施形態に係る携帯機100の位置パラメータの一例を示す図である。位置パラメータは、第2の所定の座標系における携帯機100の座標を含み得る。図6に示す、携帯機100のX軸上の座標x、Y軸上の座標y、及びZ軸上の座標zは、そのような座標の一例である。即ち、第2の所定の座標系は、ローカル座標系であってもよい。他にも、第2の所定の座標系は、グローバル座標系であってもよい。
【0049】
以下、本実施形態に係る位置パラメータ推定処理について説明する。
【0050】
(1)距離推定
通信ユニット200は、測距処理を行う。測距処理とは、通信ユニット200と携帯機100との間の距離を推定する処理である。通信ユニット200と携帯機100との間の距離は、例えば図5に示した距離Rである。測距処理は、測距用信号を送受信すること、及び測距用信号の送受信にかかる時間に基づいて距離Rを計算することを含む。
【0051】
測距処理においては、通信ユニット200と携帯機100との間で複数の測距用信号が送受信され得る。複数の測距用信号のうち、一方の装置から他方の装置へ送信される測距用信号を第1の測距用信号とも称する。そして、第1の測距用信号を受信した装置から、第1の測距用信号を送信した装置へ、第1の測距用信号の応答として送信される測距用信号を、第2の測距用信号とも称する。
【0052】
以下、図7を参照しながら、測距処理の流れの一例を説明する。
【0053】
図7は、本実施形態に係るシステム1において実行される測距処理の流れの一例を示すシーケンス図である。本シーケンスには、携帯機100及び通信ユニット200が関与する。図7に示すように、まず、通信ユニット200は、第1の測距用信号を携帯機100に送信する(ステップS102)。携帯機100は、通信ユニット200から第1の測距用信号を受信すると、第1の測距用信号の応答として第2の測距用信号を通信ユニット200に送信する(ステップS104)。通信ユニット200は、携帯機100から第2の測距用信号を受信すると、携帯機100と通信ユニット200との間の距離Rを推定する(ステップS106)。距離Rの推定は、通信ユニット200における第1の測距用信号の送信時刻から第2の測距用信号の受信時刻までの時間ΔT1、及び携帯機100における第1の測距用信号の受信時刻から第2の測距用信号の送信時刻までの時間ΔT2に基づいて行われる。詳しくは、ΔT1-ΔT2の結果を2で割ることで片道の信号送受信にかかる時間が計算され、かかる時間に信号の速度を掛けることで、携帯機100と通信ユニット200との間の距離Rが計算される。
【0054】
なお、時間ΔT1は、通信ユニット200により計測される。時間ΔT2は、携帯機100により計測され通信ユニット200に報告されてもよいし、予め所定時間として通信ユニット200に共有されていてもよい。後者の場合、携帯機100は、第1の測距用信号を受信してから所定時間ΔT2経過後に第2の測距用信号を送信する。
【0055】
ここで、測距用信号の受信時刻は、測距用信号として送信されたパルスのうち、ファストパスのパルスとして検出されたパルスの受信時刻である。
【0056】
ファストパスのパルスとして検出されたパルスを、以下では第1到来波とも称する。第1到来波は、直接波、遅延波、又は合成波のいずれかであり得る。直接波とは、送受信間の最短経路を経て、直接的に(即ち、反射等されずに)受信側に受信される信号である。即ち、直接波とはファストパスのパルスである。遅延波とは、送受信間の最短でない経路を経て、即ち、反射等されて間接的に受信側に受信される信号である。遅延波は、直接波よりも遅延して受信側に受信される。合成波とは、複数の異なる経路を経た複数の信号が合成された状態で受信側に受信される信号である。
【0057】
受信側は、送信側から受信した無線信号のうち所定の検出基準を満たす信号を、第1到来波として検出する。所定の検出基準の一例は、CIRの電力値が最初に所定の閾値を超えることである。即ち、受信側は、CIRのうち電力値が最初に所定の閾値を超えた部分に対応するパルスを、第1到来波として検出してもよい。所定の検出基準の他の一例は、受信した無線信号の受信電力値(即ち、受信信号のI成分とQ成分の二乗和)が最初に所定の閾値を超えることである。即ち、受信側は、受信したパルスのうち受信電力値が最初に所定の閾値を超えたパルスを、第1到来波として検出してもよい。
【0058】
ここで注意すべきは、第1到来波として検出されたパルスが、必ずしも直接波であるとは限らない点である。直接波が遅延波と打ち消し合った状態で受信されると、CIRの電力値が所定の閾値を下回り、直接波が検出されない場合がある。その場合、直接波よりも遅延して到来する遅延波又は合成波が、第1到来波として検出されてしまう。従って、第1到来波として検出されるパルスの受信時刻が、直接波が検出される場合から変動する(即ち、遅延する)ので、遅延した分だけ測距精度が低下する。
【0059】
なお、受信側は、所定の検出基準が満たされた時刻を、第1到来波の受信時刻としてもよい。即ち、受信側は、CIRの電力値が最初に所定の閾値を超えた時刻、又は受信した無線信号の受信電力値が最初に所定の閾値を超えた時刻を、第1到来波の受信時刻としてもよい。他にも、受信側は、検出した第1到来波のピークの時刻(即ち、CIRのうち第1到来波に対応する部分において電力値が最も高い時刻、又は第1到来波のうち最も受信電力値が最も高い時刻)を、第1到来波の受信時刻としてもよい。
【0060】
(2)角度推定
通信ユニット200は、角度推定処理を行うことで、図5に示した角度α及びβを推定する。角度取得処理は、角度推定用信号を受信すること、及び角度推定用信号の受信結果に基づいて角度α及びβを計算することを含む。角度推定用信号とは、携帯機100と通信ユニット200との間で送受信される信号のうち、角度推定に用いられる信号である。以下、図8を参照しながら、角度推定処理の流れの一例を説明する。
【0061】
図8は、本実施形態に係るシステム1において実行される角度推定処理の流れの一例を示すシーケンス図である。図8に示すように、まず、携帯機100は、角度推定用信号を通信ユニット200に送信する(ステップS202)。次いで、通信ユニット200は、各アンテナ211におけるCIRを取得する(ステップS204)。次に、通信ユニット200は、各アンテナ211におけるCIRに基づいて、各アンテナ211における第1到来波を検出する(ステップS206)。そして、通信ユニット200は、各アンテナ211における第1到来波の位相に基づいて、角度α及びβを計算する(ステップS208)。
【0062】
ここで、第1到来波の位相とは、受信した無線信号のうち、第1到来波の受信時刻における位相であってもよい。他にも、第1到来波の位相とは、CIRのうち、第1到来波の受信時刻における位相であってもよい。
【0063】
なお、角度推定用信号は、角度推定処理の中で送受信されてもよいし、その他のタイミングで送受信されても良い。例えば、角度推定用信号は、測距処理において送受信されてもよい。具体的には、図8に示した角度推定用信号と、図7に示した第2の測距用信号とは、同一であってもよい。この場合、通信ユニット200は、角度推定用信号及び第2の測距用信号を兼ねるひとつの無線信号を受信することで、距離R並びに角度α及びβを計算することができる。
【0064】
以下、ステップS208における処理の詳細について説明する。アンテナ211Aが受信した第1到来波の位相をP、アンテナ211Bが受信した第1到来波の位相をP、アンテナ211Cが受信した第1到来波の位相をP、アンテナ211Dが受信した第1到来波の位相をPとする。この場合、X軸方向のアンテナアレー位相差Pd CA 及びPd DB 、並びにY軸方向のアンテナアレー位相差PdBA及びPdDCは、それぞれ次式で表される。
【0065】
【数1】
【0066】
角度α及びβは、次式により計算される。ここで、λは電波の波長であり、dはアンテナ211間の距離である。
【0067】
【数2】
【0068】
従って、それぞれのアンテナアレー位相差に基づいて計算される角度は、それぞれ次式により表される。
【0069】
【数3】
【0070】
通信ユニット200は、上記計算された角度α CA 、α DB 、βDC、及びβBAに基づいて、角度α及びβを計算する。例えば、通信ユニット200は、次式に示すように、X軸及びY軸方向で各2アレーについて計算された角度を平均することで、角度α及びβを計算する。
【0071】
【数4】
【0072】
以上説明したように、角度α及びβは、第1到来波の位相に基づいて計算される。第1到来波が遅延波又は合成波である場合、遅延波及び合成波の位相は直接波の位相と相違する場合があり、相違した分だけ角度推定精度は低下する。
【0073】
(3)座標推定
通信ユニット200は、座標推定処理を行うことで、図6に示した携帯機100の三次元座標(x,y,z)を推定する。
【0074】
-第1の計算方法
通信ユニット200は、測距処理及び角度推定処理の結果に基づいて、座標x、y、及びzを計算してもよい。その場合、まず、通信ユニット200は、次式により座標x及びyを計算する。
【0075】
【数5】
【0076】
ここで、距離R、並びに座標x、y及びzには、次式の関係が成り立つ。
【0077】
【数6】
【0078】
通信ユニット200は、上記関係を利用して、次式により座標zを計算する。
【0079】
【数7】
【0080】
-第2の計算方法
通信ユニット200は、角度推定処理を省略し、測距処理の結果に基づいて座標x、y、及びzを計算してもよい。まず、上記数式(3)(4)(5)(6)により、次式の関係が成り立つ。
【0081】
【数8】
【0082】
【数9】
【0083】
【数10】
【0084】
【数11】
【0085】
【数12】
【0086】
数式(11)を、cos(α)に関し整理して数式(8)に代入すると、次式により座標xが得られる。
【0087】
【数13】
【0088】
数式(12)を、cos(β)に関し整理して数式(9)に代入すると、次式により座標yが得られる。
【0089】
【数14】
【0090】
そして、数式(13)及び数式(14)を数式(10)に代入して整理すると、次式により座標zが得られる。
【0091】
【数15】
【0092】
以上、ローカル座標系における携帯機100の座標の推定処理について説明した。ローカル座標系における携帯機100の座標と、グローバル座標系におけるローカル座標系の原点の座標とを組み合わせることで、グローバル座標系における携帯機100の座標も推定可能である。
【0093】
<2.3.信頼性パラメータ>
本実施形態に係る通信ユニット200(詳しくは、制御部230)は、信頼性パラメータを計算する。信頼性パラメータは、無線通信部210が受信した無線信号のうち所定の検出基準を満たす信号として検出された第1到来波が処理対象として適切であるかを示す指標である。第1到来波は、上述した位置パラメータ推定処理において位置パラメータを推定するために使用される。従って、位置パラメータの推定精度を、信頼性パラメータに基づいて評価することができる。信頼性パラメータは、例えば、連続値又は離散値であり、値が高いほど第1到来波が処理対象として適切であることを示し、値が低いほど第1到来波が処理対象として不適切であることを示し得る。もちろん、その逆であってもよい。以下では、第1到来波が処理対象として適切である度合を信頼性とも称する。そして、第1到来波が処理対象として適切であることを信頼性が高いとも称し、第1到来波が処理対象として不適切であることを信頼性が低いとも称する。
【0094】
以下、信頼性パラメータの一例を説明する。信頼性パラメータは、以下に説明する第1~第7の信頼性パラメータの少なくともいずれかひとつを含む。
【0095】
-第1の信頼性パラメータ
第1の信頼性パラメータは、第1到来波そのものが検出される対象として適切であるかを示す指標である。第1到来波が検出される対象として適切であるほど信頼性は高く、第1到来波が検出される対象として不適切であるほど信頼性は低い。
【0096】
具体的には、第1の信頼性パラメータは、ノイズの大きさを示す指標であってもよい。その場合、第1の信頼性パラメータは、第1到来波の電力値及びSNR(signal-noise ratio)の少なくともいずれかに基づいて計算される。電力値が高い場合ノイズの影響が小さいので、第1到来波は検出される対象として適切であることを示す第1の信頼性パラメータが計算さる。一方で、電力値が低い場合ノイズの影響が大きいので、第1到来波は検出される対象として不適切であることを示す第1の信頼性パラメータが計算される。SNRが高い場合ノイズの影響が小さいので、第1到来波は検出される対象として適切であることを示す第1の信頼性パラメータが計算される。一方で、SNRが低い場合ノイズの影響が大きいので、第1到来波は検出される対象として不適切であることを示す第1の信頼性パラメータが計算される。
【0097】
第1の信頼性パラメータにより、第1到来波そのものが検出される対象として適切であるかに基づいて信頼性を評価することが可能となる。
【0098】
-第2の信頼性パラメータ
第2の信頼性パラメータは、第1到来波が直接波によるものであることの妥当性を示す指標である。第1到来波が直接波によるものであることの妥当性が高いほど信頼性は高く、第1到来波が直接波によるものであることの妥当性が低いほど信頼性は低い。
【0099】
第2の信頼性パラメータは、無線通信部210が有する複数のアンテナ211の各々における第1到来波間の整合性に基づいて計算されてもよい。具体的には、第2の信頼性パラメータは、無線通信部210が有する複数のアンテナ211の各々における第1到来波の受信時刻及び電力値の少なくともいずれかに基づいて計算される。マルチパスの影響で、それぞれ異なる経路を経由して到来した複数の無線信号が合成され、互いに増幅又は相殺された状態でアンテナ211に受信され得る。そして、複数のアンテナ211の各々において、無線信号の増幅及び相殺のされ方が異なる場合、複数のアンテナ211間で第1到来波の受信時刻及び電力値が相違し得る。アンテナ211間の距離が角度推定用信号の波長λの2分の1以下という近距離であることを考慮すれば、複数のアンテナ211間で第1到来波の受信時刻及び電力値の差が大きいことは、第1到来波が直接波によるものであることの妥当性が低いことを意味する。
【0100】
そこで、複数のアンテナ211間での、第1到来波の受信時刻の差が大きいほど、第1到来波が直接波によるものであることの妥当性が低いことを示す第2の信頼性パラメータが計算される。一方で、複数のアンテナ211間での、第1到来波の受信時刻の差が小さいほど、第1到来波が直接波によるものであることの妥当性が高いことを示す第2の信頼性パラメータが計算される。また、複数のアンテナ211間での、第1到来波の電力値の差が大きいほど、第1到来波が直接波によるものであることの妥当性が低いことを示す第2の信頼性パラメータが計算される。一方で、複数のアンテナ211間での、第1到来波の電力値の差が小さいほど、第1到来波が直接波によるものであることの妥当性が高いことを示す第2の信頼性パラメータが計算される。
【0101】
第2の信頼性パラメータは、無線通信部210が有する複数のアンテナ211のうち異なる2つのアンテナ211により形成される複数のアンテナペアの各々により受信された第1到来波に基づき推定される、携帯機100が存在する位置を示す位置パラメータ間の整合性に基づいて計算されてもよい。ここでの位置パラメータとは、図5に示した角度α及びβ、並びに図6に示した座標(x,y,z)である。第1到来波が直接波によるものである場合、角度α及びβ並びに座標(x,y,z)を計算するために使用されるアンテナペアの組み合わせが異なっても、角度α及びβ並びに座標(x,y,z)の結果は同一又は略同一である。しかし、第1到来波が直接波によるものではない場合、異なるアンテナペア同士で角度α及びβ並びに座標(x,y,z)の結果に相違が生じ得る。
【0102】
そこで、異なるアンテナペアの組み合わせ間での位置パラメータの計算結果の相違が小さいほど、第1到来波が直接波によるものであることの妥当性が高いことを示す第2の信頼性パラメータが計算される。例えば、角度推定処理において説明した、α CA とα DB との間の誤差が小さいほど及びβDCとβBAとの間の誤差が小さいほど、第1到来波が直接波によるものであることの妥当性が高いことを示す第2の信頼性パラメータが計算される。一方で、異なるアンテナペアの組み合わせ間での位置パラメータの計算結果の相違が大きいほど、第1到来波が直接波によるものであることの妥当性が低いことを示す第2の信頼性パラメータが計算される。例えば、角度推定処理において説明した、α CA とα DB との間の誤差が大きいほど及びβDCとβBAとの間の誤差が大きいほど、第1到来波が直接波によるものであることの妥当性が低いことを示す第2の信頼性パラメータが計算される。
【0103】
第2の信頼性パラメータにより、第1到来波が直接波によるものであることの妥当性に基づいて信頼性を評価することが可能となる。
【0104】
-第3の信頼性パラメータ
第3の信頼性パラメータは、第1到来波が合成波によるものではないことの妥当性を示す指標である。第1到来波が合成波によるものではないことの妥当性が高いほど信頼性は高く、第1到来波が合成波によるものではないことの妥当性が低いほど信頼性は低い。
【0105】
具体的には、第3の信頼性パラメータは、第1到来波の時間方向の幅、及び第1到来波における位相の状態の、少なくともいずれかに基づいて計算される。
【0106】
まず、図9を参照しながら、第1到来波の時間方向の幅に基づいて第3の信頼性パラメータが計算される点について説明する。ここで、第1到来波の時間方向の幅とは、無線信号の受信電力値の時系列推移における、第1到来波に対応する部分の時間方向の幅であってもよい。他にも、第1到来波の時間方向の幅とは、CIRにおける、第1到来波に対応する部分の時間方向の幅であってもよい。
【0107】
図9は、本実施形態に係る信頼性パラメータの一例を説明するための図である。図9の上段に示すように、直接波が単独で受信される場合、CIRのうち直接波に対応する部分11の幅Wは、第1到来波として直接波のみが検出される場合の理想的な幅となる。ここでの幅Wとは、ひとつのパルスに対応するサンプリングポイントの集合の時間方向の幅である。一例として、幅Wは、ゼロクロス点とゼロクロス点との間の幅である。他の一例として、幅Wは、ゼロ以外の基準となる水準とCIR値の推移との交点間の幅である。第1到来波として直接波のみが検出される場合の理想的な幅は、送信信号の波形、及び受信信号処理方法等から理論計算により算出可能である。他方、マルチパスの影響で、それぞれ異なる経路を経由して到来した複数の無線信号が合成された状態でアンテナ211に受信されると、CIRのうち合成波に対応する部分の幅Wは、第1到来波として直接波のみが検出される場合の理想的な幅と異なり得る。例えば、図9の下段に示すように、直接波と同相の遅延波が直接波と合成された状態で受信されると、直接波に対応する部分11と遅延波に対応する部分12とが時間方向にずれた状態で加算されるので、CIRのうち合成波に対応する部分13の幅Wは広くなる。他方、直接波と逆相の遅延波が直接波と合成された状態で受信されると、直接波と遅延波とが互いに打ち消し合うので、CIRのうち合成波に対応する部分の幅Wは狭くなる。
【0108】
以上から、第1到来波の幅と第1到来波として直接波のみが検出される場合の理想的な幅との差分が小さいほど第1到来波が合成波によるものではないことの妥当性が高いことを示す第3の信頼性パラメータが計算される。一方で、第1到来波の幅と第1到来波として直接波のみが検出される場合の理想的な幅との差分が大きいほど第1到来波が合成波によるものではないことの妥当性が低いことを示す第3の信頼性パラメータが計算される。
【0109】
次いで、図10を参照しながら、第1到来波における位相の状態に基づいて第3の信頼性パラメータが計算される点について説明する。ここでの、第1到来波における位相の状態とは、受信した無線信号のうち、第1到来波に対応する複数のサンプリングポイント間で位相が相違する度合いであってもよい。他にも、第1到来波における位相の状態とは、CIRのうち、第1到来波に対応する複数のサンプリングポイント間で位相が相違する度合いであってもよい。
【0110】
図10は、本実施形態に係る信頼性パラメータの一例を説明するための図である。図10の上段に示すように、直接波が単独で受信される場合、CIRのうち直接波に対応する部分11に属する複数のサンプリングポイントの各々の位相θは同一又は略同一となる(即ち、θ1≒θ2≒θ3)。なお、位相とは、CIRにおけるIQ成分がIQ平面上でI軸となす角のことである。これは、各サンプリングポイントで、直接波が経由した経路の距離が同一なためである。他方、図10の下段に示すように、合成波が受信される場合、CIRのうち合成波に対応する部分13に属する複数のサンプリングポイントの各々の位相θは異なる(即ち、θ1≠θ2≠θ3)。これは、送受信間の距離が異なるパルス、即ち位相の異なるパルスが合成されるためである。以上から、第1到来波に対応する複数のサンプリングポイント間の位相の相違が小さいほど第1到来波が合成波によるものではないことの妥当性が高いことを示す第3の信頼性パラメータが計算される。一方で、第1到来波に対応する複数のサンプリングポイント間の位相の相違が大きいほど、第1到来波が合成波によるものではないことの妥当性が低いことを示す第3の信頼性パラメータが計算される。
【0111】
第3の信頼性パラメータにより、第1到来波が合成波によるものではないことの妥当性に基づいて信頼性を評価することが可能となる。
【0112】
-第4の信頼性パラメータ
第4の信頼性パラメータは、無線信号を受信した状況の妥当性を示す指標である。無線信号を受信した状況の妥当性が高いほど信頼性は高く、無線信号を受信した状況の妥当性が低いほど信頼性は低い。
【0113】
第4の信頼性パラメータは、複数の第1到来波のばらつきに基づいて計算される。具体的には、第4の信頼性パラメータは、第1到来波の電力値の分散、並びに推定された位置パラメータ(距離R、角度α及びβ、並びに座標(x,y,z))の分散及び変化量といった、複数の第1到来波のばらつきを示す統計量に基づいて計算される。なお、変化量とは、第1到来波ごとに推定される位置パラメータの、前回推定時と今回推定時との差を積算したもの、又は最大値と最小値との差分等である。分散が大きいほど及び変化量が大きいほど、複数回無線信号を受信する期間での環境変化が大きいことを意味する。そこで、分散が小さいほど及び変化量が小さいほど、無線信号を受信した状況の妥当性が高いことを示す第4の信頼性パラメータが計算される。一方で、分散が大きいほど及び変化量が大きいほど、無線信号を受信した状況の妥当性が低いことを示す第4の信頼性パラメータが計算される。他にも、複数の第1到来波のばらつきを示す統計量として、第1到来波の位相差Pd、第1到来波の時間方向の幅W、第1到来波における位相θの状態、及び第1到来波のSNRの分散及び変化量が挙げられる。
【0114】
第4の信頼性パラメータにより、無線信号を受信した状況の妥当性に基づいて信頼性を評価することが可能となる。詳しくは、複数回無線信号を受信する期間での環境変化が小さいほど信頼性が高く、環境変化が大きいほど信頼性が低い、と判定することが可能となる。また、ノイズが少ない状況では信頼性が高く、ノイズが大きい状況では信頼性が低い、と判定することが可能となる。
【0115】
-補足説明
以下、第5の信頼性パラメータ以降について説明するための補足説明を行う。
【0116】
CIRに含まれる複数のサンプリングポイントの各々を、以下では要素とも称する。即ち、CIRは、遅延時間ごとのCIR値を要素として含むものとする。また、CIRの形状、より詳しくはCIR値の時系列変化の形状は、CIR波形とも称される。
【0117】
CIRに含まれる複数の要素のうち、特定の要素を、以下では特定要素とも称する。特定要素は、第1到来波に対応する要素である。特定要素は、第1到来波に関し上述した所定の検出基準に従って検出される。一例として、特定要素は、CIRに含まれる複数の要素のうち、CIR値としての振幅又は電力が最初に所定の閾値を超える要素である。以下では、かかる所定の閾値を、ファストパス閾値とも称する。
【0118】
特定要素の遅延時間に対応する時刻は、第1到来波の受信時刻として、測距のために使用される。また、特定要素の位相は、第1到来波の位相として、角度推定のために使用される。
【0119】
複数の無線通信部210には、LOS(Line of Sight)状態の無線通信部210とNLOS(Non Line of Sight)状態の無線通信部210とが混在し得る。
【0120】
LOS状態であるとは、携帯機100のアンテナ111と無線通信部210のアンテナ211との間が見通せることを指す。LOS状態であれば、直接波の受信電力が最も高いので、受信側は、直接波を第1到来波として検出することに成功する可能性が高い。
【0121】
NLOS状態であるとは、携帯機100のアンテナ111と無線通信部210のアンテナ211との間が見通せないことを指す。NLOS状態であれば、直接波の受信電力が他と比較して低くなる可能性があるので、受信側は、直接波を第1到来波として検出することに失敗する可能性がある。
【0122】
無線通信部210がNLOS状態である場合、携帯機100から到来する信号のうち直接波の受信電力がノイズと比較して小さくなる。よって、直接波を第1到来波として検出することに成功したとしても、ノイズの影響で第1到来波の位相及び受信時刻が変動してしまい得る。その場合、測距精度及び角度推定精度は低下する。
【0123】
さらに、無線通信部210がNLOS状態である場合、無線通信部210がLOS状態である場合と比較して直接波の受信電力が低くなり、直接波を第1到来波として検出することに失敗し得る。その場合、測距精度及び角度推定精度は低下する。
【0124】
-第5の信頼性パラメータ
信頼性パラメータは、CIRにおいて特定要素よりも後に1番目にCIR値がピークをとる第1の要素の遅延時間と、特定要素よりも後に2番目にCIR値がピークをとる第2の要素の遅延時間と、の差である、第5の信頼性パラメータを含んでいてもよい。第5の信頼性パラメータについて、図11及び図12を参照しながら詳しく説明する。
【0125】
図11及び図12は、CIRの一例を示すグラフである。グラフの横軸は遅延時間である。縦軸はCIR値の絶対値(例えば、電力又は振幅)である。
【0126】
図11に示したCIRには、直接波に対応する要素の集合21、及び遅延波に対応する要素の集合22が、含まれている。集合21には、CIR値がファストパス閾値THFPを最初に超える要素である特定要素SPFPが含まれる。つまり、集合21は、第1到来波に対応する。特定要素SPFPよりも後に1番目にCIR値がピークをとる第1の要素SPP1は、集合21に含まれる。他方、特定要素SPFPよりも後に2番目にCIR値がピークをとる第2の要素SPP2は、集合22に含まれる。
【0127】
図12に示したCIRには、直接波と、直接波と位相が異なる遅延波とが合成された状態で受信された、合成波に対応する要素の集合23が、含まれている。位相が異なる2つの波が合成されているため、集合23のCIR波形には2つのピークが現れている。位相が異なる2つの波が合成されているため、集合23のCIR波形には2つのピークが現れている。集合23には、CIR値がファストパス閾値THFPを最初に超える要素である特定要素SPFPが含まれる。つまり、集合23は、第1到来波に対応する。特定要素SPFPよりも後に1番目にCIR値がピークをとる第1の要素SPP1は、集合23に含まれる。特定要素SPFPよりも後に2番目にCIR値がピークをとる第2の要素SPP2は、集合23に含まれる。
【0128】
直接波が第1到来波として検出される場合、図11に示すように第1到来波のCIR波形はひとつのピークを有する波形になる。他方、合成波が第1到来波として検出される場合、図12に示すように第1到来波のCIR波形は複数のピークを有する波形になり得る。そして、第1到来波のCIR波形がひとつのピークを有するか複数のピークを有するかは、第1の要素SPP1の遅延時間TP1と第2の要素SPP2の遅延時間TP2との差TP1-P2により判定することができる。第1到来波のCIR波形がひとつのピークを有する場合には差TP1-P2が大きくなり得るためである。また、第1到来波のCIR波形が複数のピークを有する場合には差TP1-P2が小さくなり得るためである。
【0129】
合成波が第1到来波として検出された場合、直接波が第1到来波として検出された場合と比較して、位置パラメータの推定精度は低下する。従って、差TP1-P2が大きいほど信頼性が高いと言える。このように、差TP1-P2により、信頼性を評価することができる。差TP1-P2は、第5の信頼性パラメータである。
【0130】
-第6の信頼性パラメータ
信頼性パラメータは、無線通信部210のペアにおけるCIR波形の相関に基づいて導出される、第6の信頼性パラメータを含み得る。第6の信頼性パラメータについて、図13を参照しながら詳しく説明する。
【0131】
図13は、複数の無線通信部210におけるCIRの一例を示すグラフである。図13に示すCIR20Aは、無線通信部210AにおけるCIRの一例を示すグラフである。図13に示すCIR20Bは、無線通信部210BにおけるCIRの一例を示すグラフである。各グラフの横軸は遅延時間である。CIR20Aの時間軸とCIR20Bの時間軸とは、同期しているものとする。縦軸はCIR値の絶対値(例えば、振幅又は電力)である。
【0132】
CIR20Aには、直接波と、直接波と位相が異なる遅延波とが合成された状態で受信された、合成波に対応する要素の集合23Aが、含まれている。位相が異なる2つの波が合成されているため、集合23AのCIR波形には2つのピークが現れている。集合23Aには、CIR値がファストパス閾値THFPを最初に超える要素である特定要素SPFPが含まれる。つまり、集合23Aは、第1到来波に対応する。
【0133】
一方で、CIR20Bには、直接波と、直接波と同位相である遅延波とが合成された状態で受信された、合成波に対応する要素の集合23Bが、含まれている。同位相である2つの波が合成されているため、集合23BのCIR波形には1つの大きなピークが現れている。集合23Bには、CIR値がファストパス閾値THFPを最初に超える要素である特定要素SPFPが含まれる。つまり、集合23Bは、第1到来波に対応する。
【0134】
複数の無線通信部210において、直接波と遅延波とが合成された状態で受信される場合、無線通信部210間の距離が近距離であっても、直接波と遅延波との位相の関係は無線通信部210間で異なり得る。その結果、CIR20AとCIR20Bに示したように、CIR波形は異なるものとなる。つまり、無線通信部210のペアにおいてCIR波形が異なることは、無線通信部210のペアのうち少なくとも一方の無線通信部210において、合成波が受信されていることを意味する。合成波が第1到来波として検出される場合、即ち、直接波に対応する特定要素を検出することに失敗した場合、位置パラメータの推定精度は低下する。
【0135】
そこで、第6の信頼性パラメータは、複数の無線通信部210のうち第1の無線通信部210により受信された受信信号に基づいて得られたCIRと、複数の無線通信部210のうち第1の無線通信部210と異なる第2の無線通信部210により受信された受信信号に基づいて得られたCIRと、の間の相関係数であってもよい。即ち、第6の信頼性パラメータは、第1の無線通信部210について計算されたCIR全体の波形と、第2の無線通信部210について計算されたCIR全体の波形と、の間の相関係数であってもよい。そして、制御部230は、相関係数が高いほど、信頼性が高いと判定する。他方、制御部230は、相関係数が低いほど、信頼性が低いと判定する。かかる構成により、CIR波形の相関の観点から、信頼性を評価することが可能となる。
【0136】
ここで、位置パラメータの推定処理には、特定要素の遅延時間及び位相が使用される。そのため、特定要素付近のCIR波形の相関に基づいて信頼性パラメータが導出されてもよい。
【0137】
即ち、第6の信頼性パラメータは、複数の無線通信部210のうち第1の無線通信部210により受信された受信信号に基づいて得られたCIRのうち特定要素を含む一部分におけるCIR値の時系列変化と、複数の無線通信部210のうち第1の無線通信部210と異なる第2の無線通信部210により受信された受信信号に基づいて得られたCIRのうち特定要素を含む一部分におけるCIR値の時系列変化と、の間の相関係数であってもよい。ここでの一部分とは、特定要素、及び時間軸方向で特定要素の前及び/又は後ろに存在する1以上の要素を含む集合である。即ち、第6の信頼性パラメータは、第1の無線通信部210について計算されたCIRのうち特定要素付近の波形と、第2の無線通信部210について計算されたCIRのうち特定要素付近の波形と、の間の相関係数であってもよい。そして、制御部230は、相関係数が高いほど、信頼性が高いと判定する。他方、制御部230は、相関係数が低いほど、信頼性が低いと判定する。かかる構成により、特定要素付近のCIR波形の相関の観点から、信頼性を評価することが可能となる。また、かかる構成により、CIR全体の波形の相関をとる場合と比較して、計算量を削減することが可能となる。
【0138】
なお、相関係数は、例えばピアソンの相関係数であってもよい。
【0139】
CIRは、CIR値としての振幅又は電力を、遅延時間ごとの要素として含み得る。その場合、制御部230は、2つのCIRの各々に含まれる対応する遅延時間ごとの振幅又は電力同士の相関をとることで、相関係数を計算する。なお、対応する遅延時間とは、2つのCIRの時間軸が同期している環境下では、同一の遅延時間を指す。
【0140】
CIRは、CIR値としての複素数を遅延時間ごとの要素として含み得る。その場合、制御部230は、2つのCIRの各々に含まれる対応する遅延時間ごとの複素数同士の相関をとることで、相関係数を計算する。複素数は、振幅成分の他に位相成分を含むので、振幅又は電力に基づいて相関係数を計算する場合と比較して、より正確に相関係数を計算することが可能となる。
【0141】
-第7の信頼性パラメータ
信頼性パラメータは、特定要素の遅延時間と、CIRにおいてCIR値が最大となる要素の遅延時間と、の差である、第7の信頼性パラメータを含み得る。第7の信頼性パラメータについて、図14及び図15を参照しながら詳しく説明する。
【0142】
図14は、LOS状態の無線通信部210におけるCIRの一例を示すグラフである。図15は、NLOS状態の無線通信部210におけるCIRの一例を示すグラフである。グラフの横軸は遅延時間である。縦軸はCIR値の絶対値(例えば、電力又は振幅)である。
【0143】
図14に示したCIRには、直接波に対応する要素の集合21、及び遅延波に対応する要素の集合22が、含まれている。集合21には、CIR値がファストパス閾値THFPを最初に超える要素である特定要素SPFPが含まれる。つまり、集合21は、第1到来波に対応する。また、集合21には、CIRにおいてCIR値が最大となる要素SPPPが含まれる。
【0144】
図15に示したCIRには、直接波に対応する要素の集合21、及び遅延波に対応する要素の集合22が、含まれている。集合21には、CIR値がファストパス閾値THFPを最初に超える要素である特定要素SPFPが含まれる。つまり、集合21は、第1到来波に対応する。他方、集合22には、CIRにおいてCIR値が最大となる要素SPPPが含まれる。
【0145】
LOS状態であれば、直接波のCIR値が一番大きくなる。そのため、図14に示したように、CIRにおいてCIR値が最大となる要素SPPPは、直接波に対応する集合21に含まれる。
【0146】
他方、NLOS状態である場合、遅延波のCIR値が直接波のCIR値よりも大きくなり得る。NLOS状態であれば、ファストパスの途中に遮蔽物が存在するためである。とりわけ、ファストパスの途中に人体がある場合、直接波は人体を透過する際に大きく減衰する。その場合、図15に示したように、CIRにおいてCIR値が最大となる要素SPPPは、直接波に対応する集合21に含まれない。
【0147】
無線通信部210がLOS状態であるかNLOS状態であるかは、特定要素SPFPの遅延時間TFPとCIRにおいてCIR値が最大となる要素SPPPの遅延時間TPPとの差TFP-PPにより判定することができる。図14に示すように、無線通信部210がLOS状態である場合には差TFP-PPが小さくなり得るためである。また、図15に示すように、無線通信部210がNLOS状態である場合には差TFP-PPが大きくなり得るためである。
【0148】
NLOS状態である場合、LOS状態である場合と比較して、位置パラメータの推定精度は低下する。従って、差TFP-PPが小さいほど信頼性が高いと言える。このように、差TFP-PPにより、信頼性を評価することができる。差TFP-PPは、第7の信頼性パラメータである。
【0149】
<2.4.測定処理及び位置パラメータ特定処理>
通信ユニット200(詳しくは、制御部230)は、無線通信部210により無線信号を受信すること、及び受信した無線信号のうち検出された第1到来波が処理対象として適切であるかを示す指標である信頼性パラメータを計算すること、を含む測定処理を実行する。次いで、通信ユニット200は、測定処理において得られた第1到来波に基づいて前記他の通信装置が存在する位置を示す位置パラメータを特定する位置パラメータ特定処理を、測定処理において得られた信頼性パラメータに基づいて制御する。詳しくは、通信ユニット200は、高い信頼性を示す信頼性パラメータに対応する第1到来波に基づいて、位置パラメータを特定する。かかる構成により、通信ユニット200は、より高い精度で携帯機100が存在する位置を特定することができる。
【0150】
-測定処理
測定処理において、通信ユニット200は、無線通信部210が有する複数のアンテナ211のうち1のアンテナ211により第1の測距用信号を送信する。携帯機100は、第1の測距用信号を受信すると、その応答として無線信号(第2の測距用信号及び角度推定用信号に相当する)を送信する。そして、通信ユニット200は、複数のアンテナ211によりかかる無線信号を受信する。これら一連の通信を、位置推定用通信とも称する。その後、位置推定用通信おいて検出された第1到来波に基づいて、信頼性パラメータが計算される。ここで、測定処理において、位置パラメータ推定処理が行われてもよい。第2の信頼性パラメータ及び第4の信頼性パラメータを計算するためには、位置パラメータが使用され得るためである。
【0151】
なお、アンテナ211A~211Dの各々と携帯機100との間の距離は、それぞれ異なり得る。そこで、位置パラメータ推定処理において距離Rを推定する際には、第1の測距用信号を送信した1つのアンテナ211により受信された第1到来波が用いられる。
【0152】
測定処理において、位置推定用通信が複数回行われる。換言すると、通信ユニット200は、1度の測定処理において無線通信部210により無線信号を受信することを複数回実行する。よって、測定処理により、第1到来波、及び信頼性パラメータの組み合わせを複数得ることができる。
【0153】
なお、位置推定用通信が複数回行われる場合には、毎回異なるアンテナ211を使用して信号が送受信されることが望ましい。アンテナ211ごとに、受信される第1到来波の信頼性が異なり得るためである。これにより、複数のアンテナ211により受信された複数の第1到来波のうち信頼性がより高い第1到来波を用いて、後述する位置パラメータ特定処理を行うことが可能となる。
【0154】
-位置パラメータ特定処理
通信ユニット200は、測定処理により得られた複数の第1到来波に基づいて、携帯機100の位置パラメータを特定する。詳しくは、通信ユニット200は、測定処理における複数回の位置推定用通信により得られた複数の第1到来波に基づいて、携帯機100の位置パラメータを特定する。これにより、一つ一つの第1到来波に過度に依存せずに、位置パラメータを特定することが可能となる。
【0155】
とりわけ、通信ユニット200は、複数の第1到来波の各々に基づいて位置パラメータ推定処理により推定された複数の位置パラメータに対し信頼性パラメータに基づく統計処理を適用することで、位置パラメータを特定する。詳しくは、通信ユニット200は、推定された複数の位置パラメータから、信頼性パラメータに基づいて導出した代表値を、位置パラメータとして特定する。一例として、通信ユニット200は、最も高い信頼性を示す信頼性パラメータに対応する第1到来波に基づいて推定された位置パラメータを採用することで、位置パラメータを特定してもよい。他の一例として、通信ユニット200は、推定された複数の位置パラメータに対し、信頼性パラメータに基づく重み付け平均を行うことで、位置パラメータを特定してもよい。その際、高い信頼性を示す信頼性パラメータに対応する第1到来波に基づいて推定された位置パラメータほど高い重み付けがなされ、その逆であるほど低い重み付けがなされる。他の一例として、通信ユニット200は、推定された複数の位置パラメータのうち、低い信頼性を示す信頼性パラメータに対応する第1到来波に基づいて推定されたもの取り除いた位置パラメータに対し、平均する、又は中央値をとることで、位置パラメータを特定してもよい。なお、これらの統計処理は、組み合わせて適用されてもよい。かかる構成により、精度の高い位置パラメータを特定することが可能となる。
【0156】
ここで、信頼性パラメータを計算するために、測定処理において位置パラメータ推定処理が実行済である場合がある。その場合、通信ユニット200は、位置パラメータ推定処理を再度実行せず、測定処理において実行された位置パラメータ推定処理により推定された位置パラメータを用いる。他方、測定処理において位置パラメータ推定処理が未実行である場合、通信ユニット200は、位置パラメータ特定処理において位置パラメータ推定処理を実行する。
【0157】
通信ユニット200は、所定の条件が満たされた場合、位置パラメータ特定処理において位置パラメータを特定しなくてもよい。かかる所定の条件を、以下では中断条件とも称する。中断条件の第1の例としては、ある程度高い信頼性(第1の閾値以上の信頼性)を示す信頼性パラメータに対応する第1到来波が、測定処理において所定個得られなかったことが挙げられる。中断条件の第2の例としては、著しく低い信頼性(第2の閾値以下の信頼性)を示す信頼性パラメータに対応する第1到来波が、測定処理において得られたことが挙げられる。かかる構成により、位置パラメータの特定精度が悪いことが予想される状況下では位置パラメータを特定しないことで、大幅に誤った位置パラメータが特定される事態を回避することが可能となる。
【0158】
<2.5.エリア特定処理>
通信ユニット200は、位置パラメータ特定処理により特定された位置パラメータに基づいて、携帯機100が存在するエリア(換言すると、空間)を特定する。一例として、エリアが通信ユニット200からの距離により定義される場合、通信ユニット200は、距離Rに基づいて携帯機100が属するエリアを特定する。他の一例として、エリアが通信ユニット200からの角度により定義される場合、通信ユニット200は角度α及びβに基づいて携帯機100が属するエリアを特定する。他の一例として、エリアが三次元座標により定義される場合、通信ユニット200は、座標(x,y,z)に基づいて携帯機100が属するエリアを特定する。他にも、車両202に特有のエリア特定処理として、通信ユニット200は、車両202の車室内及び車室外を含む複数のエリアの中から、携帯機100が存在するエリアを特定してもよい。これにより、ユーザが車室内にいる場合と車室外にいる場合とで異なるサービスを提供する等、細やかなサービスを提供することが可能となる。他にも、通信ユニット200は、車両202から所定距離以内のエリアである周辺エリア、及び車両202から所定距離以上のエリアである遠方エリアの中から、携帯機100が存在するエリアを特定してもよい。
【0159】
エリア特定処理により特定された携帯機100が存在するエリアは、例えば携帯機100の認証のために使用され得る。例えば、通信ユニット200は、運転席側であって通信ユニット200からの距離が近いエリアに携帯機100が存在する場合に、認証成功を判定し、ドアを解錠する。
【0160】
以上説明したように、本発明によれば、通信ユニット200は、電波伝搬環境に応じて位置を特定する処理を制御することで、携帯機100の位置(位置パラメータ及びエリア)を高い精度で特定することが可能となる。そして、通信ユニット200は、高い精度で特定したエリアに基づいて、認証を行う。これにより、誤認証を防ぐことができ、セキュリティ性を向上させることが可能となる。
【0161】
<2.6.処理の流れ>
(1)第1の例
図16は、本実施形態に係る車両202の通信ユニット200により実行される位置特定処理の流れの一例を示すフローチャートである。本フローにおいては、測定処理において位置推定用通信がX回行われるものとする。
【0162】
図16に示すように、まず、通信ユニット200は、X回の位置推定用通信を行う(ステップS302)。次いで、通信ユニット200は、X回の位置推定用通信により得られたX個の第1到来波に基づいて、信頼性パラメータを計算する(ステップS304)。続いて、通信ユニット200は、中断条件が満たされたか否かを判定する(ステップS306)。中断条件が満たされたと判定された場合(ステップS306/YES)、通信ユニット200は、位置パラメータ及びエリアを特定せずに、処理を終了する。他方、中断条件が満たされていないと判定された場合(ステップS306/NO)、通信ユニット200は、X個の第1到来波、及び信頼性パラメータに基づいて、携帯機100の位置パラメータを特定する(ステップS308)。次いで、通信ユニット200は、特定された位置パラメータに基づいて、携帯機100が存在するエリアを特定する(ステップS310)。
【0163】
(2)第2の例
図17は、本実施形態に係る車両202の通信ユニット200により実行される位置特定処理の流れの一例を示すフローチャートである。本フローにおいては、測定処理において位置推定用通信がX回行われるものとする。また、本フローにおける中断条件は、上述した中断条件の第2の例であるものとする。
【0164】
図17に示すように、まず、通信ユニット200は、位置推定用通信を行う(ステップS402)。次いで、通信ユニット200は、位置推定用通信により得られた第1到来波に基づいて、信頼性パラメータを計算する(ステップS404)。続いて、通信ユニット200は、中断条件が満たされたか否かを判定する(ステップS406)。中断条件が満たされたと判定された場合(ステップS406/YES)、通信ユニット200は、位置パラメータ及びエリアを特定せずに、処理を終了する。他方、中断条件が満たされていないと判定された場合(ステップS406/NO)、通信ユニット200は、位置推定用通信をX回行ったか否かを判定する(ステップS408)。まだ回行っていないと判定された場合(ステップS408/NO)、処理は再度S402に戻り、測定処理が繰り返される。他方、位置推定用通信をX回行ったと判定された場合(ステップS408/YES)、通信ユニット200は、X回の位置推定用通信により得られたX個の第1到来波、及び信頼性パラメータに基づいて、携帯機100の位置パラメータを特定する(ステップS410)。次いで、通信ユニット200は、特定された位置パラメータに基づいて、携帯機100が存在するエリアを特定する(ステップS412)。
【0165】
<3.補足>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0166】
例えば、上記実施形態では、携帯機100が存在するエリアと、距離R、角度α及びβ、並びに座標(x,y,z)等の位置パラメータとを別々に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。位置パラメータは、携帯機100が存在するエリアを示す情報を含んでいてもよい。その場合、位置パラメータ推定処理/位置パラメータ特定処理において、携帯機100が存在するエリアが推定/特定される。
【0167】
例えば、上記実施形態では、アンテナペアにおけるアンテナアレー位相差に基づいて角度α及びβが計算される例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。一例として、通信ユニット200は、複数のアンテナ211によりビームフォーミングを行うことで、角度α及びβを計算してもよい。その場合、通信ユニット200は、複数のアンテナ211のメインローブを全方向にわたって走査し、受信電力が最も大きい方向に携帯機100が存在すると判定し、かかる方向に基づいて角度α及びβを計算する。
【0168】
例えば、上記実施形態では、図5を参照しながら説明したように、ローカル座標系が、アンテナペアを結ぶ軸に平行する座標軸を有する座標系であるものとして説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、ローカル座標系は、アンテナペアを結ぶ軸に平行しない座標軸を有する座標系であってもよい。また、原点は、複数のアンテナ211の中心に限定されない。本実施形態に係るローカル座標系は、通信ユニット200が有する複数のアンテナ211の配置を基準に、任意に設定されてよい。
【0169】
例えば、上記実施形態では、被認証者が携帯機100であり、認証者が通信ユニット200である例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。携帯機100及び通信ユニット200の役割は逆であってもよい。例えば、携帯機100が、位置パラメータを特定したり、通信ユニット200が存在するエリアを特定したりしてもよい。また、携帯機100及び通信ユニット200の役割が動的に交換されてもよい。また、通信ユニット200同士で位置パラメータの特定、エリアの特定、及びに認証が行われてもよい。
【0170】
例えば、上記実施形態では、本発明がスマートエントリーシステムに適用される例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明は、信号を送受信することで測距及び認証を行う任意のシステムに適用可能である。例えば、携帯機、車両、スマートフォン、ドローン、家、及び家電製品等のうち任意の2つの装置を含むペアに、本発明は適用可能である。その場合、ペアのうち一方が認証者として動作し、他方が被認証者として動作する。なお、ペアは、2つの同じ種類の装置を含んでいてもよいし、2つの異なる種類の装置を含んでいてもよい。また、無線LAN(Local Area Network)ルータがスマートフォンの位置を特定するためにも、本発明は適用可能である。
【0171】
例えば、上記実施形態では、無線通信規格としてUWBを用いるものを挙げたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、無線通信規格として、赤外線を用いるものが使用されてもよい。
【0172】
なお、本明細書において説明した各装置による一連の処理は、ソフトウェア、ハードウェア、及びソフトウェアとハードウェアとの組合せのいずれを用いて実現されてもよい。ソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、各装置の内部又は外部に設けられる記録媒体(非一時的な媒体:non-transitory media)に予め格納される。そして、各プログラムは、例えば、コンピュータによる実行時にRAMに読み込まれ、CPUなどのプロセッサにより実行される。上記記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等である。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信されてもよい。
【0173】
また、本明細書においてフローチャートを用いて説明した処理は、必ずしも図示された順序で実行されなくてもよい。いくつかの処理ステップは、並列的に実行されてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。
【符号の説明】
【0174】
1:システム、100:携帯機、110:無線通信部、111:アンテナ、120:記憶部、130:制御部、200:通信ユニット、202:車両、210:無線通信部、211:アンテナ、220:記憶部、230:制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17