(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】自動搬送システム用貯蔵カート
(51)【国際特許分類】
A47B 31/00 20060101AFI20240403BHJP
G05G 1/30 20080401ALI20240403BHJP
B61B 10/04 20060101ALI20240403BHJP
B62B 3/00 20060101ALI20240403BHJP
B62B 3/02 20060101ALI20240403BHJP
B62B 5/04 20060101ALI20240403BHJP
A47B 31/02 20060101ALN20240403BHJP
【FI】
A47B31/00
G05G1/30 Z
B61B10/04 J
B62B3/00 D
B62B3/02 A
B62B3/02 F
B62B5/04 A
A47B31/02 B
A47B31/02 D
(21)【出願番号】P 2020024079
(22)【出願日】2020-02-17
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐基
(72)【発明者】
【氏名】熊切 義朗
(72)【発明者】
【氏名】永井 洋
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 文誉
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-172353(JP,A)
【文献】特開2000-127957(JP,A)
【文献】特開平09-267746(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0052680(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 31/00-31/02
G05G 1/00-25/04
B61B 10/04
A47B 31/02
B62B 1/00- 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵室を有するカート本体と、前記カート本体の下方に配されて前記カート本体を床面との間に空間を設けた状態で移動可能に支持する車輪と、自身の移動を禁止することが可能なロック装置と、を備え、
自動で移動することが可能な搬送装置を前記空間に入り込ませた状態で、該搬送装置と連結可能とされ、
前記ロック装置は、前記搬送装置が前記空間から抜け出る動作である退出動作に連動して、自身の移動を禁止した移動禁止状態を実現するとともに、前記搬送装置が前記空間に入り込む動作である進入動作に連動して、自身の移動を許容して前記搬送装置による搬送が可能な搬送可能状態を実現するように構成された自動搬送システム用貯蔵カート。
【請求項2】
前記搬送装置の前記進入動作と前記退出動作とは、当該自動搬送システム用貯蔵カートにおける同じ箇所である出入口から行われ、
前記ロック装置は、当該自動搬送システム用貯蔵カートの下面側に配され、回転軸に保持されて前記搬送装置の進退方向に揺動可能な入力レバーを有し、該入力レバーが第1位置に位置する場合に前記移動禁止状態を実現し、第2位置に位置する場合に前記搬送可能状態を実現する構成とされ、
前記搬送装置の前記進入動作および前記退出動作の際に、前記入力レバーが前記搬送装置に設けられた押圧部によって押圧されるように構成され、
前記搬送装置の前記進入動作の際に、前記入力レバーが前記第1位置から前記第2位置に回転させられて前記搬送可能状態が実現され、前記搬送装置の前記退出動作の際に、前記入力レバーが前記第2位置から前記第1位置に回転させられて前記移動禁止状態が実現される請求項1に記載の自動搬送システム用貯蔵カート。
【請求項3】
前記入力レバーは、互いに間隔をおいて下方に延び出した状態で前記回転軸に固定された一対のレバー本体部と、該一対のレバー本体部に渡される形で配されて前記搬送装置の前記押圧部によって押圧される被押圧部材と、を含んで構成され、
前記一対のレバー本体部の各々は、前記第1位置に位置する場合に下端が前記出入口側に傾斜した状態となり、かつ、前記第2位置に位置する場合に下端が前記出入口と反対側に傾斜した状態となるように構成されるとともに、自身に対する前記被押圧部材の移動を案内するガイド溝が形成されたものとされ、
前記ガイド溝は、前記第1位置に位置する場合に前記出入口側の端部が前記押圧部より上方まで延び出すとともに、前記第2位置に位置する場合に前記出入口と反対側の端部が前記押圧部より上方まで延び出した形状とされている請求項2に記載の自動搬送システム用貯蔵カート。
【請求項4】
前記ガイド溝は、両端部の各々が前記回転軸の近傍まで延ばされている請求項3に記載の自動搬送システム用貯蔵カート。
【請求項5】
前記入力レバーは、前記レバー本体部が揺動している状態における前記被押圧部材の上方に位置して、前記被押圧部材の前記レバー本体部に対する上方への移動を規制する規制部材を備えている請求項3または請求項4に記載の自動搬送システム用貯蔵カート。
【請求項6】
前記ロック装置は、使用者によって操作可能な操作部を有し、使用者によって操作された前記操作部の動作に連動して前記入力レバーが回転させられるように構成されており、使用者の前記操作部の操作によって前記移動禁止状態と前記搬送可能状態が切り替え可能とされた請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の自動搬送システム用貯蔵カート。
【請求項7】
前記ロック装置は、前記操作部の動作を停止させるストッパを有する請求項6に記載の自動搬送システム用貯蔵カート。
【請求項8】
前記入力レバーの前記回転軸は、軸線まわりに回転可能に保持されており、前記入力レバーは、該回転軸に固定されることで揺動可能とされており、
前記操作部は、
前記入力レバーの前記回転軸より前記出入口側において回転可能に保持され、回転中心から前記進退方向における両側に延び出し、前記出入口側の端部が前記カート本体の外側に延び出して使用者の操作が入力される操作レバーと、
前記入力レバーの前記回転軸に固定されて該回転軸から前記進退方向における両側に延び出し、前記出入口側の端部が前記操作レバーの前記出入口と反対側の端部の回転動作に連動して回転させられる連動部材と、を含んで構成される請求項6または請求項7に記載の自動搬送システム用貯蔵カート。
【請求項9】
前記操作レバーにおける前記出入口と反対側の端部は、前記カート本体の下面に接触して自身の回転を禁止することで前記操作部の動作を停止させるストッパである操作レバー側ストッパとして機能し、
前記連動部材における前記出入口と反対側の端部は、前記カート本体の下面に接触して自身の回転を禁止することで前記操作部の動作を停止させるストッパである連動部材側ストッパとして機能する請求項8に記載の自動搬送システム用貯蔵カート。
【請求項10】
前記操作レバー側ストッパと前記カート本体の下面における該操作レバー側ストッパが接触する部分との少なくとも一方、および、前記連動部材側ストッパと前記カート本体の下面における該連動部材側ストッパが接触する部分との少なくとも一方には、緩衝材が設けられている請求項9に記載の自動搬送システム用貯蔵カート。
【請求項11】
下面側に前記進退方向に対して交差する方向に延びる状態で取り付けられ、両端部の各々において前記車輪を保持する車輪用ベース部材を備え、
前記操作レバー側ストッパおよび前記連動部材側ストッパは、前記車輪用ベース部材の下面に接触するように構成された請求項9または請求項10に記載の自動搬送システム用貯蔵カート。
【請求項12】
前記搬送装置によって搬送される方向である搬送方向に対して左右に対をなす形で前記カート本体に配された一対の前記車輪と、それら一対の前記車輪の各々に対応して設けられて前記車輪を転動可能に保持する一対の車輪保持体と、を備え、
前記一対の車輪保持体の各々は、第1回転位置と第2回転位置との間で軸線まわりに回転可能な入力軸を有し、該入力軸が前記第1回転位置に位置する場合に前記車輪の転動を禁止した状態を実現し、前記入力軸が前記第2回転位置に位置する場合に前記車輪の転動を許容した状態を実現する構成とされ、前記ロック装置の一構成要素として機能するものとされ、
前記入力レバーの前記回転軸は、軸線まわりに回転可能に保持され、両端部の各々が前記一対の車輪保持体の各々が有する前記入力軸と同軸的に連結されており、
前記入力レバーは、該回転軸に固定されることで揺動可能とされ、
前記入力レバーが前記第1位置に位置する場合に、前記入力軸が前記第1回転位置に位置して前記車輪の転動を禁止することで前記移動禁止状態が実現され、前記入力レバーが前記第2位置に位置する場合に、前記入力軸が前記第2回転位置に位置して前記車輪の転動を許容することで前記搬送可能状態が実現されるように構成された請求項2から請求項11のいずれか1項に記載の自動搬送システム用貯蔵カート。
【請求項13】
前記車輪は、車輪保持体によって転動可能に保持されており、
前記車輪保持体は、第1回転位置と第2回転位置との間で軸線周りに回転可能な入力軸を有し、該入力軸が前記第1回転位置に位置する場合に前記車輪の転動を禁止して前記移動禁止状態を実現し、前記入力軸が前記第2回転位置に位置する場合に前記車輪の転動を許容して前記搬送可能状態を実現する構成とされ、前記ロック装置の一構成要素として機能するものとされ、
前記ロック装置は、前記搬送装置の前記進入動作および前記退出動作による入力を前記入力軸の回転動作に変換する動作変換機構を有し、該動作変換機構によって、前記搬送装置の前記進入動作に連動して前記入力軸が前記第1回転位置から前記第2回転位置に回転させられ、前記搬送可能状態が実現され、前記搬送装置の前記退出動作に連動して前記入力軸が前記第2回転位置から前記第1回転位置に回転させられ、前記移動禁止状態が実現されるように構成された請求項1に記載の自動搬送システム用貯蔵カート。
【請求項14】
前記車輪は、車輪保持体によって転動可能かつ上下方向に延びる軸線まわりに旋廻可能に保持されており、
前記車輪保持体は、第1回転位置から第2回転位置を介して第3回転位置までの間で軸線まわりに回転可能な入力軸を有し、該入力軸が前記第1回転位置に位置する場合に前記車輪の転動および旋廻を禁止したロック状態を実現し、前記入力軸が前記第2回転位置に位置する場合に前記車輪の転動および旋廻を許容した自在輪状態を実現し、前記入力軸が前記第3回転位置に位置する場合に前記車輪の旋廻を禁止した状態で転動を許容した固定輪状態を実現するように構成され、
前記ロック装置は、前記搬送装置の前記進入動作および前記退出動作による入力を前記入力軸の回転動作に変換する動作変換機構を有し、該動作変換機構によって、前記入力軸が前記第1回転位置あるいは前記第3回転位置にある場合に前記搬送装置の前記進入動作に連動して前記入力軸が前記第2回転位置に回転させられ、前記自在輪状態が実現され、前記搬送装置の前記退出動作に連動して前記入力軸が前記第2回転位置から前記第1回転位置に回転させられ、前記ロック状態が実現されるように構成された請求項1に記載の自動搬送システム用貯蔵カート。
【請求項15】
前記搬送装置によって搬送される方向である搬送方向に対して左右に対をなす形で前記カート本体に配された一対の前記車輪と、それら一対の前記車輪の各々に対応して設けられた一対の前記車輪保持体と、を備え、
前記搬送装置が
、一対の
前記車輪の間から前記空間への進入および退出が行われるように構成されており、
前記動作変換機構は、
左右方向に延びて一対の前記車輪保持体の各々が有する前記入力軸を連結する連結シャフトと、前記連結シャフトにおける中間に固定されて下方に延び出した第1入力レバーおよび第2入力レバーと、を含み、
前記第1入力レバーが、前記搬送装置の前記進入動作および前記退出動作の際に前記搬送装置に設けられた押圧部によって押圧され、前記搬送装置の進入方向および退出方向に揺動させられることで、前記入力軸を前記第1回転位置と前記第2回転位置との間で回転させる構成とされ、
前記第2入力レバーが、前記入力軸が前記第3回転位置に位置する状態における前記搬送装置の前記進入動作の際に前記押圧部によって押圧され、前記搬送装置の進入方向に揺動させられることで、前記入力軸を前記第3回転位置から前記第2回転位置に回転させる構成とされた請求項14に記載の自動搬送システム用貯蔵カート。
【請求項16】
前記車輪は、旋廻不能かつ転動可能に保持された固定輪とされ、
前記ロック装置は、
前記車輪の外周面と対向配置されてその外周面に対して接近・離間する方向に移動可能な当接部を有し、該当接部を前記外周面に当接させることで前記車輪の転動を禁止して前記移動禁止状態を実現し、前記当接部を前記外周面から離間させることで前記車輪の転動を許容して前記搬送可能状態を実現する構成とされ、
前記搬送装置の前記進入動作および前記退出動作による入力を前記当接部の接近離間動作に変換する動作変換機構をさらに有し、該動作変換機構によって、前記搬送装置の前記退出動作に連動して前記当接部が前記外周面に当接し、前記移動禁止状態が実現され、前記搬送装置の前記進入動作に連動して前記当接部が前記外周面から離間して、前記搬送可能状態が実現されるように構成された請求項1に記載の自動搬送システム用貯蔵カート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置によって自動搬送される貯蔵カートである自動搬送システム用貯蔵カートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、貯蔵カートとして貯蔵室と、車輪と、を備えるものが知られている(下記特許文献1)。このような貯蔵カートを所定の目的地まで自動で搬送したいという要望がある。貯蔵カートを搬送する構成として、貯蔵カートに対して搬送装置を連結させる構成が考えられる。搬送装置が貯蔵カートに連結された状態で、搬送装置が走行することで、貯蔵カートを搬送することができる。また、特許文献2及び特許文献3には、搬送装置が他部材の下方に入り込んだ状態で、搬送装置が備える連結ピンが他部材に設けられた孔に挿入されることで、搬送装置と他部材が連結される構成のものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-134886号公報
【文献】特許第5557511号公報
【文献】特許第6009011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成のように搬送装置を用いて貯蔵カートを搬送する構成においては、搬送装置と貯蔵カートとが連結されていない状態では、貯蔵カートが備える車輪の回転を固定し、貯蔵カートが動かないようにすることが求められる。一方、搬送装置と貯蔵カートとが連結されている状態では、貯蔵カートの車輪は、搬送装置の走行と連動して回転する必要がある。従来、貯蔵カートにおいては、作業者がロック装置を操作することで、車輪の固定および固定の解除を行う構成のものが知られている。しかしながら、このような構成では、搬送装置が連結される(又は連結が解除される)毎に作業者がロック装置の操作を行う必要があり、作業性が低下してしまうという問題点がある。
【0005】
本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、作業者がロック装置の操作を行うことなく、搬送装置が自動搬送を行うことが可能な自動搬送システム用貯蔵カートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の自動搬送システム用貯蔵カートは、
貯蔵室を有するカート本体と、前記カート本体の下方に配されて前記カート本体を床面との間に空間を設けた状態で移動可能に支持する車輪と、自身の移動を禁止することが可能なロック装置と、を備え、
自動で移動することが可能な搬送装置を前記空間に入り込ませた状態で、該搬送装置と連結可能とされ、
前記ロック装置は、前記搬送装置が前記空間から抜け出る動作である退出動作に連動して、自身の移動を禁止した移動禁止状態を実現するとともに、前記搬送装置が前記空間に入り込む動作である進入動作に連動して、自身の移動を許容して前記搬送装置による搬送が可能な搬送可能状態を実現するように構成されたことを特徴とする。
【0007】
この構成の貯蔵カート自動搬送システム(以下、単に「システム」と呼ぶ場合がある)は、搬送装置の貯蔵カートに対して進退に伴って、貯蔵カートにおいて移動禁止状態と搬送可能状態とが切り替えられるように構成されている。つまり、この構成のシステムによれば、貯蔵カートの搬送だけでなく、貯蔵カートのロック・アンロックの切り替えも自動で行うことができるため、貯蔵カートの搬送元や搬送先において、使用者が貯蔵カートのロック装置の操作を行う必要がなく、貯蔵カートがロックされずに勝手に動いてしまうような事態を回避することができる。なお、この構成のシステムにおいて、ロック装置の主体となるロック機構は、その構成が特に限定されるものではなく、例えば、車輪の転動を禁止することで貯蔵カートの移動を禁止する構成のものや、パッドを地面に押し付けて車輪に加わる荷重を減らすことで貯蔵カートの移動を禁止する構成のもの、いわゆるハンマーロック(フットロック)等を採用することができる。また、車輪の転動を禁止する構成としては、例えば、車輪に制動力を付与したり、車輪の転動軸の回転を禁止したりする構成のものを採用することができる。
【0008】
上記構成において、前記搬送装置の前記進入動作と前記退出動作とは、当該自動搬送システム用貯蔵カートにおける同じ箇所である出入口から行われ、前記ロック装置は、当該自動搬送システム用貯蔵カートの下面側に配され、回転軸に保持されて前記搬送装置の進退方向に揺動可能な入力レバーを有し、該入力レバーが第1位置に位置する場合に前記移動禁止状態を実現し、第2位置に位置する場合に前記搬送可能状態を実現する構成とされ、前記搬送装置の前記進入動作および前記退出動作の際に、前記入力レバーが前記搬送装置に設けられた押圧部によって押圧されるように構成され、前記搬送装置の前記進入動作の際に、前記入力レバーが前記第1位置から前記第2位置に回転させられて前記搬送可能状態が実現され、前記搬送装置の前記退出動作の際に、前記入力レバーが前記第2位置から前記第1位置に回転させられて前記移動禁止状態が実現される構成とすることができる。
【0009】
この構成の貯蔵カートは、搬送装置の進退動作と、その進退動作をロック装置に主体となるロック機構部の動作に変換する機構(動作変換機構)とが限定されている。この構成にシステムにおいては、搬送装置の進退動作(直進移動)が入力レバーの回転動作に変換され、その回転動作によって、ロック装置による移動禁止状態と搬送可能状態との切り替えが行われるようになっている。この構成にシステムには、回転動作によってロック・アンロックを切り替え可能なロック機構を広く適用することができる。
【0010】
上記構成において、前記入力レバーは、互いに間隔をおいて下方に延び出した状態で前記回転軸に固定された一対のレバー本体部と、該一対のレバー本体部に渡される形で配されて前記搬送装置の前記押圧部によって押圧される被押圧部材と、を含んで構成され、前記一対のレバー本体部の各々は、前記第1位置に位置する場合に下端が前記出入口側に傾斜した状態となり、かつ、前記第2位置に位置する場合に下端が前記出入口と反対側に傾斜した状態となるように構成されるとともに、自身に対する前記被押圧部材の移動を案内するガイド溝が形成されたものとされ、前記ガイド溝は、前記第1位置に位置する場合に前記出入口側の端部が前記押圧部より上方まで延び出すとともに、前記第2位置に位置する場合に前記出入口と反対側の端部が前記押圧部より上方まで延び出した形状とされている構成とすることができる。
【0011】
この構成の貯蔵カートは、搬送装置によって押圧される被押圧部材が、レバー本体部に形成されたガイド溝に沿って上方に退避することが可能とされており、搬送装置は被押圧部材に止められることがなく、搬送装置の押圧部が貯蔵カートの入力レバーを通過することが可能となっている。そのような構成から、搬送装置は、貯蔵カートの下に十分に潜り込んで貯蔵カートを連結することができ、搬送時における全長を短くすることができる。また、搬送装置の押圧部が貯蔵カートの入力レバーを通過することができることで、搬送装置の進入動作に伴って、レバー本体部を出入口とは反対側に(外側から内側に)揺動させて搬送可能状態とし、搬送装置の退出動作に伴って、レバー本体部を出入口側に(内側から外側に)揺動させて移動禁止状態とすることができるようになっている。
【0012】
上記構成において、前記ガイド溝は、両端部の各々が前記回転軸の近傍まで延ばされている構成とすることができる。
【0013】
この構成の貯蔵カートは、ガイド溝が回転軸の近傍まで延ばされていることで、被押圧部材の上方への移動可能な高さが比較的大きくされている。それによって、例えば床面にうねり等が存在した場合に、貯蔵カートに対して搬送装置が高くなること、詳しく言えば、搬送装置の押圧部の高さ位置が高くなることがあるが、ガイド溝によって被押圧部材が上方に大きく退避することができるため、その貯蔵カートと搬送装置との相対高さの変化を吸収して、搬送装置の押圧部を確実に通過させることができる。
【0014】
また、上記構成において、前記入力レバーは、前記レバー本体部が揺動している状態における前記被押圧部材の上方に位置して、前記被押圧部材の前記レバー本体部に対する上方への移動を規制する規制部材を備えている構成とすることができる。
【0015】
この構成の貯蔵カートは、規制部材によって、被押圧部材が搬送装置によって押圧されている状態において、ガイド溝に沿って上方に逃げてしまうような事態を回避して、レバー本体部を確実に揺動させ、移動禁止状態と搬送可能状態との切り替えを確実に行うことができる。
【0016】
また、上記構成において、前記ロック装置は、使用者によって操作可能な操作部を有し、使用者によって操作された前記操作部の動作に連動して前記入力レバーが回転させられるように構成されており、使用者の前記操作部の操作によって前記移動禁止状態と前記搬送可能状態が切り替え可能とされた構成とすることができる。
【0017】
この構成の貯蔵カートは、搬送装置の進退動作に伴うロック・アンロックの自動切り替えだけでなく、使用者の操作によってロック・アンロックを切り替えることも可能とされている。この構成の貯蔵カートによれば、貯蔵カートの移動を手動でも行うようにすることができる。また、搬送装置による自動搬送中においても、緊急時等に、手動操作によるロックを行うことで貯蔵カートを停止させることができる。なお、搬送装置には、走行中に大きな負荷が掛かった場合に自身を停止させる機能が搭載される場合が多く、そのような機能を搭載している場合には、ロック装置によるブレーキ力が、搬送装置が自身を停止させる負荷より大きくされることが望ましい。
【0018】
上記構成において、前記ロック装置は、前記操作部の動作を停止させるストッパを有する構成とすることができる。
【0019】
この構成の貯蔵カートは、操作部の動作を停止することで、入力レバーの回転を停止させることができるため、入力レバーの回転に連動して作動するロック機構に対して、大きな荷重が加わることを防止することができる。
【0020】
また、上記構成において、前記入力レバーの前記回転軸は、軸線まわりに回転可能に保持されており、前記入力レバーは、該回転軸に固定されることで揺動可能とされており、前記操作部は、前記入力レバーの前記回転軸より前記出入口側において回転可能に保持され、回転中心から前記進退方向における両側に延び出し、前記出入口側の端部が前記カート本体の外側に延び出して使用者の操作が入力される操作レバーと、前記入力レバーの前記回転軸に固定されて該回転軸から前記進退方向における両側に延び出し、前記出入口側の端部が前記操作レバーの前記出入口と反対側の端部の回転動作に連動して回転させられる連動部材と、を含んで構成することができる。
【0021】
この構成の貯蔵カートにおいて、操作レバーはカート本体の下側に配されるため、使用者に足で操作される場合が多い。そして、この構成の貯蔵カートは、操作レバーの回転動作が、連動部材に対して反対まわりの回転動作として伝達されることになる。詳しく言えば、操作レバーが使用者によって踏み込まれると、操作レバーの出入口と反対側の端部が上昇する方向に回転させられるのに伴って、連動部材の出入口側の端部も上昇する方向に回転させられる。なお、その際には、レバー部材は、出入口側に向かって揺動させられるのであり、第2位置から第1位置に切り替えられ、搬送可能状態から移動禁止状態とされる。一方、操作レバーが使用者によって持ち上げられると、操作レバーの出入口と反対側の端部が下降する方向に回転させられるのに伴って、連動部材の出入口側の端部も下降する方向に回転させられる。レバー部材は、出入口と反対側に向かって揺動させられるのであり、第1位置から第2位置に切り替えられ、移動禁止状態から搬送可能状態とされる。なお、この構成のシステムにおいては、操作部が、入力レバーの回転軸を動作させる構成であるため、それら入力レバーと操作部との一方が動作させられた場合には、他方も動作させられることになる。以上のように、この構成の貯蔵カートによれば、搬送装置の進退動作に連動するロック装置の動作と、踏み込むことでロック状態とすることが可能な操作レバー(フットレバー)によるロック装置の動作とを、適切に連携させることができる。
【0022】
上記構成において、前記操作レバーにおける前記出入口と反対側の端部は、前記カート本体の下面に接触して自身の回転を禁止することで前記操作部の動作を停止させるストッパである操作レバー側ストッパとして機能し、前記連動部材における前記出入口と反対側の端部は、前記カート本体の下面に接触して自身の回転を禁止することで前記操作部の動作を停止させるストッパである連動部材側ストッパとして機能する構成とすることができる。
【0023】
この構成の貯蔵カートにおいて、操作レバー側ストッパは、操作レバーが使用者によって踏み込まれる際のストッパとして、換言すれば、搬送可能状態から移動禁止状態に切り替えられる際のストッパとして機能する。一方、連動部材側ストッパは、レバー部材が出入口と反対側に揺動させられる際のストッパ、つまり、移動禁止状態から搬送可能状態に切り替えられる際のストッパとして、換言すれば、操作レバーが使用者によって持ち上げられる際のストッパとして機能する。この構成の貯蔵カートによれば、操作レバーの回転が停止させられること、および、連動部材の回転が停止させられることで、入力レバーの回転を停止させることができるため、入力レバーの回転に連動して作動するロック機構に対して、大きな荷重が加わることを防止することができる。特に、使用者によって踏み込まれる操作は、大きな荷重が加わり易いが、その場合には、操作レバーの回転が停止させられるため、連動部材を介して連結された入力レバーの回転軸に加わる荷重を抑えるとともに、入力レバーの回転に連動して作動するロック機構に加わる荷重をより抑えることができる。
【0024】
上記構成において、前記操作レバー側ストッパと前記カート本体の下面における該操作レバー側ストッパが接触する部分との少なくとも一方、および、前記連動部材側ストッパと前記カート本体の下面における該連動部材側ストッパが接触する部分との少なくとも一方には、緩衝材が設けられている構成とすることができる。
【0025】
この構成の貯蔵カートによれば、ストッパが接触する際の接触音、つまり、移動禁止状態と搬送可能状態とを切り替える際の発生音を抑制することができる。なお、緩衝材が接触する面積を大きくすることで、操作レバーおよび連動部材と、貯蔵カート本体の下面とに発生する応力を分散させ、局所的に接触することで生じる傷,凹み,破損等を回避することができる。
【0026】
また、上記構成において、下面側に前記進退方向に対して交差する方向に延びる状態で取り付けられ、両端部の各々において前記車輪を保持する車輪用ベース部材を備え、前記操作レバー側ストッパおよび前記連動部材側ストッパは、前記車輪用ベース部材の下面に接触するように構成することができる。
【0027】
この構成の貯蔵カートに記載の車輪用ベース部材は、車輪を保持するものであるとともに、貯蔵カートの補強部材として機能するものであり、比較的強度の高い部材となっている。車輪用ベース部材は、ストッパを受け止めるのに十分な強度を有しているため、ストッパを受け止める部材として好適である。つまり、この構成の貯蔵カートは、ストッパを受け止める部材を別途用意する必要がない。
【0028】
また、上記構成において、前記搬送装置によって搬送される方向である搬送方向に対して左右に対をなす形で前記カート本体に配された一対の前記車輪と、それら一対の前記車輪の各々に対応して設けられて前記車輪を転動可能に保持する一対の車輪保持体と、を備え、
前記一対の車輪保持体の各々は、第1回転位置と第2回転位置との間で軸線まわりに回転可能な入力軸を有し、該入力軸が前記第1回転位置に位置する場合に前記車輪の転動を禁止した状態を実現し、前記入力軸が前記第2回転位置に位置する場合に前記車輪の転動を許容した状態を実現する構成とされ、前記ロック装置の一構成要素として機能するものとされ、
前記入力レバーの前記回転軸は、軸線まわりに回転可能に保持され、両端部の各々が前記一対の車輪保持体の各々が有する前記入力軸と同軸的に連結されており、
前記入力レバーは、該回転軸に固定されることで揺動可能とされ、
前記入力レバーが前記第1位置に位置する場合に、前記入力軸が前記第1回転位置に位置して前記車輪の転動を禁止することで前記移動禁止状態が実現され、前記入力レバーが前記第2位置に位置する場合に、前記入力軸が前記第2回転位置に位置して前記車輪の転動を許容することで前記搬送可能状態が実現されるように構成することができる。
【0029】
上記構成において、前記車輪は、車輪保持体によって転動可能に保持されており、前記車輪保持体は、第1回転位置と第2回転位置との間で軸線周りに回転可能な入力軸を有し、該入力軸が前記第1回転位置に位置する場合に前記車輪の転動を禁止して前記ロック状態を実現し、前記入力軸が前記第2回転位置に位置する場合に前記車輪の転動を許容して前記ロック状態を解除したアンロック状態を実現する構成とされ、前記ロック装置の一構成要素として機能するものとされ、前記ロック装置は、前記搬送装置の前記進入動作および前記退出動作による入力を前記入力軸の回転動作に変換する動作変換機構を有し、該動作変換機構によって、前記搬送装置の前記進入動作に連動して前記入力軸が前記第1回転位置から前記第2回転位置に回転させられ、前記アンロック状態が実現され、前記搬送装置の前記退出動作に連動して前記入力軸が前記第2回転位置から前記第1回転位置に回転させられ、前記ロック状態が実現されるように構成することができる。
【0030】
車輪とその車輪の転動を禁止することが可能な機構を収容した車輪保持体とがユニット化されたもの、いわゆるキャスタが存在する。これらの構成の自動搬送システム用貯蔵カートは、そのキャスタに搭載されている車輪のロック機構を、搬送装置の進退動作に連動させるように構成されており、貯蔵カートに他のロック機構を設ける必要がなく、貯蔵カートの構成を比較的簡素化することができる。なお、この構成の貯蔵カートにおける車輪は、転動のみならず、旋廻方向の回転(上下方向に延びる軸線周りの回転)も可能なものであってもよい。その転動および旋廻が可能な車輪である場合には、ロック装置によって、転動と旋廻との両者が禁止されるものであることが望ましい。
【0031】
上記構成において、前記車輪は、車輪保持体によって転動可能かつ上下方向に延びる軸線まわりに旋廻可能に保持されており、前記車輪保持体は、第1回転位置から第2回転位置を介して第3回転位置までの間で軸線まわりに回転可能な入力軸を有し、該入力軸が前記第1回転位置に位置する場合に前記車輪の転動および旋廻を禁止したロック状態を実現し、前記入力軸が前記第2回転位置に位置する場合に前記車輪の転動および旋廻を許容した自在輪状態を実現し、前記入力軸が前記第3回転位置に位置する場合に前記車輪の旋廻を禁止した状態で転動を許容した固定輪状態を実現するように構成され、前記ロック装置は、前記搬送装置の前記進入動作および前記退出動作による入力を前記入力軸の回転動作に変換する動作変換機構を有し、該動作変換機構によって、前記入力軸が前記第1回転位置あるいは前記第3回転位置にある場合に前記搬送装置の前記進入動作に連動して前記入力軸が前記第2回転位置に回転させられ、前記自在輪状態が実現され、前記搬送装置の前記退出動作に連動して前記入力軸が前記第2回転位置から前記第1回転位置に回転させられ、前記ロック状態が実現されるように構成することができる。
【0032】
この構成の貯蔵カートは、車輪と車輪保持体とがユニット化されたキャスタが、自在輪状態,固定輪状態,ロック状態の3段階に切り替え可能とされている。そのため、搬送装置が貯蔵カートと連結する前に、ロック状態(貯蔵カートが移動禁止状態)のみならず、旋廻のみがロックされた固定輪状態の場合もある。その場合であっても、搬送装置が搬送する際には、車輪の転動と旋廻との両者のロックが解除された自在輪状態(貯蔵カートが搬送可能状態)とされることが望ましい。この構成のシステムによれば、車輪がロック状態あるいは固定輪状態であっても、搬送装置が貯蔵カートの下側に進入する動作に連動して、自在輪状態に切り替えられるようになっており、搬送装置による自動搬送が適切に行われるようになっている。なお、搬送後においては、搬送装置に退出動作に連動してロック状態、つまり、貯蔵カートが移動禁止状態とされるため、搬送先において確実に貯蔵カートの移動を禁止することができる。
【0033】
上記構成において、前記搬送装置によって搬送される方向である搬送方向に対して左右に対をなす形で前記カート本体に配された一対の前記車輪と、それら一対の前記車輪の各々に対応して設けられた一対の前記車輪保持体と、を備え、前記搬送装置が、前記一対の車輪の間から前記空間への進入および退出が行われるように構成されており、前記動作変換機構は、左右方向に延びて一対の前記車輪保持体の各々が有する前記入力軸を連結する連結シャフトと、前記連結シャフトにおける中間に固定されて下方に延び出した第1入力レバーおよび第2入力レバーと、を含み、前記第1入力レバーが、前記搬送装置の前記進入動作および前記退出動作の際に前記搬送装置に設けられた押圧部によって押圧され、前記搬送装置の進入方向および退出方向に揺動させられることで、前記入力軸を前記第1回転位置と前記第2回転位置との間で回転させる構成とされ、前記第2入力レバーが、前記入力軸が前記第3回転位置に位置する状態における前記搬送装置の前記進入動作の際に前記押圧部によって押圧され、前記搬送装置の進入方向に揺動させられることで、前記入力軸を前記第3回転位置から前記第2回転位置に回転させる構成とすることができる。
【0034】
この構成の貯蔵カートは、連結シャフトの回転が、2つの入力レバーが搬送装置によって押圧されて揺動させられることで行われ、搬送装置の進入動作の際に第1位置あるいは第3位置のいずれの位置にあっても、確実に第2位置に回転させて車輪を自在輪状態とすること、つまり、貯蔵カートを搬送可能状態とすることができる。なお、この構成における第1入力レバーには、先に述べた入力レバーに係る構成を適用することや、その入力レバーと連動する操作部を備える構成を適用することが可能である。
【0035】
上記構成において、前記車輪は、旋廻不能かつ転動可能に保持された固定輪とされ、前記ロック装置は、前記車輪の外周面と対向配置されてその外周面に対して接近・離間する方向に移動可能な当接部を有し、該当接部を前記外周面に当接させることで前記車輪の転動を禁止して前記移動禁止状態を実現し、前記当接部を前記外周面から離間させることで前記車輪の転動を許容して前記搬送可能状態を実現する構成とされ、前記搬送装置の前記進入動作および前記退出動作による入力を前記当接部の接近離間動作に変換する動作変換機構をさらに有し、該動作変換機構によって、前記搬送装置の前記退出動作に連動して前記当接部が前記外周面に当接し、前記移動禁止状態が実現され、前記搬送装置の前記進入動作に連動して前記当接部が前記外周面から離間して、前記搬送可能状態が実現されるように構成することができる。
【0036】
この構成の貯蔵カートは、当接部が固定輪の外周面に当接することで固定輪の転動を禁止する構成であるため、上述した車輪保持体の内部にロック機構が収容されている場合と比較して、部品交換やメンテナンスを行い易い。なお、動作変換機構は、特に限定されないが、例えば、先に述べた入力レバーを採用することが可能であり、その入力レバーと、入力レバーの回転動作を当接部の接近離間動作に変換する機構と、を含んだ構成のものとすることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、作業者がロック装置の操作を行うことなく、搬送装置が自動搬送を行うことが可能な自動搬送システム用貯蔵カートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の第1実施例である貯蔵カート自動搬送システムの斜視図
【
図2】
図1に示す第1実施例の自動搬送システム用貯蔵カートの斜視図
【
図3】
図1に示す搬送装置を上方からの視点において示す斜視図
【
図4】搬送装置を下方からの視点において示す斜視図
【
図5】搬送装置が貯蔵カートから離間している状態を示す図
【
図6】搬送装置が貯蔵カートと連結した状態を示す側面図(一部断面図)
【
図8】キャスタの車輪保持部が有する入力軸付近を拡大して示す図
【
図9】ロック装置および一対のキャスタを上方からの視点において示す斜視図
【
図10】ロック装置および一方のキャスタを下方からの視点において示す斜視図
【
図12】搬送装置の進入動作に伴うロック装置の作動を説明するための図であり、内側ローラに押圧部が前方から当接した状態を示す図
【
図13】搬送装置の進入動作に伴うロック装置の作動を説明するための図であり、入力レバーを後方側に揺動させている状態を示す図
【
図14】搬送装置の進入動作に伴うロック装置の作動を説明するための図であり、内側ローラが押圧部に乗り上がった状態を示す図
【
図15】搬送装置の進入動作に伴うロック装置の作動を説明するための図であり、押圧部が入力レバーを通過した状態を示す図
【
図16】車輪がアンロック状態にある場合における操作部の側面図
【
図17】車輪がロック状態にある場合における操作部の側面図
【
図19】搬送装置が傾斜した状態におけるロック装置付近の側面図
【
図20】搬送装置の退出動作に伴うロック装置の作動を説明するための図であり、内側ローラに押圧部が後方から当接した状態を示す図
【
図21】搬送装置の退出動作に伴うロック装置の作動を説明するための図であり、入力レバーを前方側に揺動させた状態を示す図
【
図22】搬送装置の退出動作に伴うロック装置の作動を説明するための図であり、内側ローラが押圧部に乗り上がった状態を示す図
【
図23】搬送装置の進入動作に伴って搬送可能状態とされた時点における貯蔵カート自動搬送システムの下面図
【
図24】搬送装置の進入動作に伴って貯蔵カートが搬送可能状態とされた時点における貯蔵カート自動搬送システムの側面図
【
図26】
図25に示す搬送装置が貯蔵カートと連結した状態を示す側面図
【
図27】
図25に示す搬送装置の進入動作に伴って貯蔵カートが搬送可能状態とされた時点における貯蔵カート自動搬送システムの側面図
【
図28】第1実施例の貯蔵カート自動搬送システムによる使用例を示す平面図
【
図29】変形例の貯蔵カート自動搬送システムによる使用例を示す平面図
【
図30】第2実施例の自動搬送システム用貯蔵カートが備えるロック装置および一対のキャスタを示す斜視図
【
図31】ロック装置および一対のキャスタを示す平面図
【
図32】キャスタの車輪保持部が有する入力軸付近を拡大して示す図
【
図33】ロック状態にある場合において搬送装置の進入動作に伴うロック装置の作動を説明するための図であり、第2入力レバーに押圧部が前方から接近する状態を示す図
【
図34】ロック状態にある場合において搬送装置の進入動作に伴うロック装置の作動を説明するための図であり、押圧部が第2入力レバーを通過する状態を示す図
【
図35】ロック状態にある場合において搬送装置の進入動作に伴うロック装置の作動を説明するための図であり、押圧部が第1入力レバーに当接している状態を示す図
【
図36】ロック状態にある場合において搬送装置の進入動作に伴うロック装置の作動を説明するための図であり、押圧部が第1入力レバーを通過する状態を示す図
【
図37】ロック状態にある場合において搬送装置の進入動作に伴うロック装置の作動を説明するための図であり、押圧部が第1入力レバーを通過した状態を示す図
【
図38】固定輪状態にある場合において搬送装置の進入動作に伴うロック装置の作動を説明するための図であり、第2入力レバーに押圧部が前方から接近する状態を示す図
【
図39】固定輪状態にある場合において搬送装置の進入動作に伴うロック装置の作動を説明するための図であり、押圧部が第2入力レバーを通過する状態を示す図
【
図40】固定輪状態にある場合において搬送装置の進入動作に伴うロック装置の作動を説明するための図であり、押圧部が第1入力レバーに当接している状態を示す図
【
図41】固定輪状態にある場合において搬送装置の進入動作に伴うロック装置の作動を説明するための図であり、押圧部が第1入力レバーを通過する状態を示す図
【
図42】固定輪状態にある場合において搬送装置の進入動作に伴うロック装置の作動を説明するための図であり、押圧部が第1入力レバーを通過した状態を示す図
【
図43】搬送装置の退出動作に伴うロック装置の作動を説明するための図であり、押圧部が第1入力レバーに後方から当接した状態を示す図
【
図44】搬送装置の退出動作に伴うロック装置の作動を説明するための図であり、第1入力レバーを前方側に揺動させ、その第1入力レバーを通過する状態を示す図
【
図45】搬送装置の退出動作に伴うロック装置の作動を説明するための図であり、第2入力レバーを通過する状態を示す図
【
図46】搬送装置の退出動作に伴うロック装置の作動を説明するための図であり、第2入力レバーを通過した状態を示す図
【
図47】第3実施例の自動搬送システム用貯蔵カートを下方からの視点において示す斜視図
【
図48】搬送装置が貯蔵カートから離間している状態を示す側面図
【
図49】ロック装置および一対の固定輪を上方からの視点において示す斜視図
【
図50】ロック装置および一方の固定輪を下方からの視点において示す斜視図
【
図52】搬送装置の進入動作に伴うロック装置の作動を説明するための図であり、進入前のロック状態を示す図
【
図53】搬送装置の進入動作に伴うロック装置の作動を説明するための図であり、内側ローラに押圧部が前方から当接した状態を示す図
【
図54】搬送装置の進入動作に伴うロック装置の作動を説明するための図であり、内側ローラが押圧部に乗り上がった状態を示す図
【
図56】搬送装置の退出動作に伴うロック装置の作動を説明するための図であり、内側ローラに押圧部が後方から当接した状態を示す図
【
図57】搬送装置の退出動作に伴うロック装置の作動を説明するための図であり、内側ローラが押圧部に乗り上がった状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明のいくつかの実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【実施例1】
【0040】
<貯蔵カート自動搬送システムの概略構成>
本発明の第1実施例である自動搬送システム用貯蔵カートを含んで構成される貯蔵カート自動搬送システム10を、
図1から
図22を用いて説明する。貯蔵カート自動搬送システム10(以下、単に「システム10」と呼ぶ場合がある)は、第1実施例の自動搬送システム用貯蔵カート(温冷配膳車)20(以下、単に「貯蔵カート20」と呼ぶ場合がある)と、貯蔵カート20を自動搬送可能な搬送装置40と、を主体として構成される。なお、以下の説明においては、搬送装置40が貯蔵カート20を搬送する方向を前方とし、前方を向いた状態での左右を左右方向として説明を行うこととする。また、各図面の一部において、前方および後方をFおよびBの矢印でそれぞれ示し、上方および下方をUおよびDの矢印でそれぞれ示し、左方および右方をLおよびRの矢印でそれぞれ示している。
【0041】
本実施例の貯蔵カート20は、
図1および
図2に示すように、貯蔵物を貯蔵するための貯蔵室21(
図6参照)を有する貯蔵カート本体としてのカート本体22と、カート本体22の下面22Aにおける取り付けられた4つのキャスタ24と、カート本体22の上方に配される機械室25と、を備える。なお、貯蔵室21は、
図6に示すように、仕切壁26によって冷蔵室21Aと温蔵室21Bとに仕切られている。
【0042】
また、カート本体22には、
図1に示すように、観音開き式の扉27が貯蔵室21の冷蔵室21Aおよび温蔵室21Bの各々に対応する形でそれぞれ設けられている。機械室25には、冷蔵室21Aを冷却するための冷却装置(圧縮機、凝縮器、冷却器および冷却器で発生した冷気を冷蔵室21Aに送るためのファン等、図示せず)が設けられている。また、カート本体22は、温蔵室21Bを加熱することが可能な加熱装置(ヒータやヒータによって発生した暖気を温蔵室21Bに送るためのファン等、図示せず)を備える。なお、このような貯蔵カート20は、温冷配膳車と呼ばれることがある。カート本体22の底面に取り付けられた4つのキャスタ24は、カート本体22の下方に配され、カート本体22を床面FLとの間に空間S1(
図5参照)を設けた状態で移動可能に支持する構成となっている。
【0043】
搬送装置40は、空間S1に配され、カート本体22と連結ピン45によって脱着可能に連結されることで貯蔵カート20を搬送しつつ自動で移動することが可能な構成となっている。搬送装置40は、例えば、自動搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)とされる。搬送装置40は、
図3および
図4に示すように、搬送装置40の外面を構成する搬送装置本体41(車体)と、一対の固定輪42,42(駆動輪)と、4つの自在輪43と、を備える。搬送装置40は、床面FLに設けられたガイドラインL1(例えば磁気テープ等、
図3参照)を検知することが可能なラインセンサ(図示せず)や固定輪42を駆動させるための駆動装置(例えばモータ、図示せず)を備える。搬送装置40は、ラインセンサの検出結果に基づいて固定輪42の駆動を制御することで、ガイドラインL1に沿って床面FL上を自動で移動することが可能となっている。
【0044】
搬送装置本体41は、扁平かつ前後方向(搬送装置40の移動方向)に長い略長方形状をなしている。搬送装置40の高さおよび幅は、カート本体22と床面FLとの間の空間S1(カート本体22の下方)に入り込むことが可能な大きさで設定されている。また、搬送装置40は、貯蔵カート20と連結するための連結ピン45を備える。連結ピン45は、
図4に示すように、搬送装置本体41の内部に配されている。搬送装置本体41の上面には、
図3に示すように、連結ピン45が通過可能な貫通孔41Aが設けられている。搬送装置40は、連結ピン45を昇降させるための昇降装置(例えばモータやカム等、図示せず)を備える。なお、
図4においては、搬送装置本体41の内部に設けられた各機器(駆動装置や昇降装置等)を図示省略している。昇降装置は、
図6および
図7に示すように、搬送装置本体41の内部にある連結ピン45を上昇させることで、貫通孔41Aを通じて搬送装置本体41の上面から連結ピン45を突出させることができる。カート本体22の下面22A(搬送装置40と対向する面)には、
図2に示すように、連結ピン45が嵌合される孔部29が形成されている。
【0045】
これにより、連結ピン45が搬送装置本体41の内部に配されている状態で搬送装置40が空間S1に進入した後、
図6および
図7に示すように、搬送装置本体41の上面から連結ピン45を突出させて孔部29に嵌合させることで、搬送装置40とカート本体22(ひいては貯蔵カート20)とが連結される構成となっている。なお、搬送装置本体41の上面から突出した連結ピン45を上方に付勢する付勢手段(ばね等)を備えていてもよい。これにより、付勢手段によって上方に付勢された連結ピン45をカート本体22の下面22Aに摺動させつつ、孔部29に近づけることで、孔部29に連結ピン45を差し入れる構成とすることができる。また、搬送装置40とカート本体22(ひいては貯蔵カート20)とが連結されている状態で、連結ピン45を下降させることで、連結ピン45と孔部29の嵌合を解除することができ、搬送装置40と貯蔵カート20との連結を解除することが可能となっている。
【0046】
なお、本システム10において、互いに連結された搬送装置40および貯蔵カート20は、
図6における左側に進行する。このため、以下の説明では、貯蔵カート20においても、
図5および
図6における左側を貯蔵カート20の前側として説明する。また、搬送装置40は、貯蔵カート20に対して連結すべく、空間S1に入り込む際には、
図6に示すように、後退しつつ、貯蔵カート20の前側から入り込み、貯蔵カート20との連結解除後、空間S1から抜け出る際には、前進して、同じ箇所である貯蔵カート20の前側から抜け出る構成となっている。つまり、貯蔵カート20の前側に、搬送装置40の出入口Eが形成されている。
【0047】
<ロック装置の構成>
i)キャスタの構成
貯蔵カート20は、自身の移動を禁止することが可能なロック装置50を備えている。ロック装置50は、4つのキャスタ24のうち前側に位置する一対のキャスタ24が有する車輪30の転動を禁止することで、貯蔵カート20の移動が禁止される移動禁止状態を実現する構成となっている。各キャスタ24は、車輪30と、車輪30を転動可能かつ上下方向に延びる軸線周りに旋廻可能に保持する車輪保持体31とがユニット化されたものとなっており、その車輪保持体31が、車輪30の転動および旋廻を禁止することが可能なロック機構(図示省略)を収容するものとなっている。各車輪保持体31は、
図8に示すように、上端側に、左右方向に延びるロック機構の入力軸32を備えており、その入力軸32が、軸線まわりに回転可能とされている。その入力軸32は、第1回転位置と第2回転位置との間で回転可能とされており、車輪保持体31に収容されるロック機構は、入力軸32が第1回転位置(
図8におけるC
1の位置)にある場合に車輪30の転動および旋廻を禁止したロック状態を実現し、第2回転位置(
図8におけるC
2の位置)にある場合に車輪30の転動および旋廻を許容したアンロック状態を実現する。つまり、前側に位置する一対のキャスタ24が有する車輪保持体31(詳しく言えば、車輪保持体31に収容されるロック機構)が、ロック装置50の一構成要素として機能するものとなっている。
【0048】
そして、ロック装置50は、前側のキャスタ24に対応する車輪30の転動および旋廻を禁止することで、貯蔵カート20の移動が禁止される移動禁止状態を実現し、前側一対のキャスタ24に対応する車輪30の転動および旋廻を許容することで、貯蔵カート20の移動が許容される搬送可能状態を実現する構成となっている。そして、本貯蔵カート20においては、移動禁止状態と搬送可能状態との切り替えが、搬送装置40が貯蔵カート20の空間S1に入り込む動作である進入動作、および、空間S1から抜け出す動作である退出動作に連動して行われるように構成されている。
【0049】
ii)動作変換機構の構成
上記のような構成は、ロック装置50が、その搬送装置40の進入動作および退出動作による入力を、前側一対のキャスタ24の各々に対応する入力軸32の回転動作に変換する動作変換機構51を有することで実現される。その動作変換機構51は、
図9から
図11に示すように、前側一対のキャスタ24の各々に対応する入力軸32を連結する連結シャフト52と、その連結シャフト52における中間部に固定されて下方に延び出した入力レバー53と、を含んで構成される。
【0050】
連結シャフト52は、
図11に示すように、両端の各々が六角柱状に形成されており、それら両端の各々が入力軸32に形成された断面六角形状の嵌合孔32Aに嵌合することで、一対のキャスタ24の各々の入力軸32と同軸的に連結されている。そして、連結シャフト52は、カート本体22の下面22A側に固定された一対の軸受部材54によって、軸線まわりに回転可能に保持されている。なお、一対の軸受部材54は、カート本体22の下面22Aに、キャスタベース55を介して取り付けられている。キャスタベース55は、カート本体22の左右方向に延びる状態で固定され、両端の各々に前側一対のキャスタ24の各々が取り付けられるものであり、車輪用ベース部材として機能するものとなっている。以上のような構成から、連結シャフト52が軸線まわりに回転させられて、入力軸32が第1回転位置と第2回転位置との間で回転させられることで、前側一対のキャスタ24に対応する車輪30のロック状態とアンロック状態とが切り替えられるように、つまり、貯蔵カート20において移動禁止状態と搬送可能状態とが切り替えられるようになっている。
【0051】
入力レバー53は、連結シャフト52に対してそれの長手方向(左右方向)において間隔をおいて固定された一対のレバー部材(レバー本体部)60と、連結シャフト52と平行に延びて一対のレバー部材60に渡される形で配されて一対のレバー部材60に対して移動可能な可動体70と、を含んで構成される。一対のレバー部材60の各々は、概して長方形状の部材であり、上端において連結シャフト52に固定されて下方に延び出した状態で保持されている。それにより、一対のレバー部材60の各々は、連結シャフト52の回転に伴って、その連結シャフト52を中心として揺動させられるようになっており、連結シャフト52は、一対のレバー部材60の回転軸、ひいては、入力レバー53の回転軸として機能するものとなっている。
【0052】
また、一対のレバー部材60は、連結シャフト52側に開口されたコの字状をなすガイド溝61が形成されている。詳しく言えば、ガイド溝61は、長手方向(概して上下方向)に延びる一対の延設溝部62,63と、それら一対の延設溝部62,63の下端同士を連結する連結溝部64と、からなる。可動体70は、一対のレバー部材60の各々のガイド溝61を挿通する形で設けられた可動シャフト71と、一対のレバー部材60の内側に配されて可動シャフト71に取り付けられた内側ローラ72と、一対のレバー部材60の外側に配されて可動シャフト71の端部の各々に設けられた一対の外側ローラ73と、からなる。そのような構成により、可動体70は、可動シャフト71がガイド溝61内を移動することで一対のレバー部材60に対して相対移動することが可能となっている。
【0053】
なお、後に詳しく説明するが、一対のレバー部材60の外側には、可動体70のガイド溝61内において適切に移動させるための一対のガイドブラケット56が設けられている。それら一対のガイドブラケット56は、左右方向において外側ローラ73と同じ位置で、下面56Aが、その外側ローラ73の上側で、かつ、連結シャフト52の鉛直方向下側に位置している。
【0054】
上記のように構成された入力レバー53は、
図12に示すように、入力軸32が第1回転位置にある場合に、それに対応した第1位置に位置する。入力レバー53が第1位置に位置する場合、一対のレバー部材60は、下端が前方側(出入口E側)に傾斜した状態となっている。そして、その状態においては、レバー部材60に形成されたガイド溝61は、連結溝部64の後端が前端より下方に位置している。つまり、連結溝部64の後端が、ガイド溝61における最下端となっており、ガイド溝61内を移動可能な可動体70は、その連結溝部64の後端に位置することになる。ちなみに、この場合には、後方側の延設溝部である後側延設溝部63の上端が、つまり、ガイド溝61の後側(出入口Eと反対側)の端部が、ガイド溝61の最上端となっている。
【0055】
一方、入力軸32が第2回転位置にある場合には、
図15に示すように、入力レバー53が、第2位置に位置する。入力レバー53が第2位置に位置する場合、一対のレバー部材60は、下端が後方側(出入口Eと反対側)に傾斜した状態となっている。そして、その状態においては、レバー部材60に形成されたガイド溝61は、連結溝部64の前端が後端より下方に位置している。つまり、連結溝部64の前端が、ガイド溝61における最下端となっており、可動体70は、その連結溝部64の前端に位置することになる。また、この場合には、前方側の延設溝部である前側延設溝部62の上端が、つまり、ガイド溝61の前側(出入口E側)の端部が、ガイド溝61の最上端となっている。
【0056】
後に詳しく説明するが、以上のように構成された入力レバー53は、搬送装置40の進退動作の際に、搬送装置本体41の上面に設けられた押圧部46に押圧されることで、第1位置と第2位置との間で揺動させられるようになっており、それにより、キャスタ24のロック状態とアンロック状態とが切り替えられて、貯蔵カート20の移動禁止状態と搬送可能状態とが切り替えられるようになっている。
【0057】
iii)操作部の構成
また、本貯蔵カート20においては、ロック装置50が、使用者によって操作可能な操作部80を有しており、使用者による操作部80の操作によって、貯蔵カート20において移動禁止状態と搬送可能状態とを切り替えることも可能とされている。操作部80は、
図9から
図11,
図16,17に示すように、使用者が足で操作することが可能な操作レバーとしてのフットレバー81と、そのフットレバー81に連動して動作する一対の連動部材82と、を含んで構成される。
【0058】
フットレバー81は、一対の軸受部材54の間に渡されて軸線まわりに回転可能に保持された回転シャフト83に固定されており、その回転シャフト83を中心として回転可能となっている。その回転シャフト83は、一対の軸受部材54において、連結シャフト52と平行で、その連結シャフト52より前方に(出入口E側)に配されている。そして、フットレバー81は、一対のレバー本体部材81Aと、それら一対のレバー本体部材81Aの前端同士を左右方向に繋いで使用者の操作を受け付ける主体となるペダル部材81Bと、からなる。一対のレバー本体部材81Aは、回転シャフト83から前後方向における両側に延び出しており、前端が、カート本体22の外側に位置している。つまり、ペダル部材81Bが、
図1に示すように、カート本体22の外側に位置しているのである。
【0059】
また、一対の連動部材82は、連結シャフト52に固定されるものであり、先に述べた入力レバー53および一対のガイドブラケット56から左右方向に(詳しく言えば、右側に)ずれた位置に、互いに左右方向に間隔をおいて固定されている。そして、上述のフットレバー81が、一対の連動部材82の前方に配されている。より詳しく言えば、一対の連動部材82は、それぞれ、フットレバー81を構成する一対のレバー本体部材81Aの各々と連動するように構成されている。具体的には、連動部材82の前端側には、ピン84が固定され、レバー本体部材81Aには、自身の長手方向に延びる長孔81A1が形成され、ピン84が長孔81A1に挿入された状態とされることで、それら連動部材82とレバー本体部材81Aとが連動させられるようになっている、そして、そのような高背により、連動部材82の前端部が、レバー本体部材81Aにおける後端部の回転動作に連動して回転させられるのであり、フットレバー81の回転動作が、連動部材82の反対まわりの回転動作として伝達されるようになっている。
【0060】
具体的に説明すれば、
図16に示したように、フットレバー81において前端が後端より上方に位置している場合、連動部材82においては、前端が後端より下方に位置している。そして、フットレバー81が使用者によって踏み込まれると、
図17に示したように、フットレバー81において前端が後端より下方に位置し、連動部材82においては、前端が後端より上方に位置する状態となる。したがって、連結シャフト52は、
図16,17において時計計回りに回転させられ、車輪保持体31の入力軸32は、第2位置から第1位置に回転させられることになるのである(
図8参照)。以上のように、フットレバー81が使用者によって踏み込まれる動作は、車輪30をアンロック状態からロック状態に切り替えるものであり、フットレバー81が使用者によって上昇させられる動作は、車輪30をロック状態からアンロック状態に切り替えるものとなっている。
【0061】
また、ロック装置50は、操作部80の動作を停止させるストッパを有している。具体的には、上述したフットレバー81(詳しく言えば、一対のレバー本体部材81A)には、後端部に、上方を向く上壁部81Cが形成されている。一方、連動部材82にも、後端部に、上方を向く上壁部82Aが形成されている。また、それらフットレバー81の上壁部81C、および、連動部材82の上壁部82Aの各々には、上面に、緩衝材81D,82Bが貼着されている。そして、フットレバー81が使用者によって踏み込まれると、
図17に示したように、フットレバー81の後端が上昇し、カート本体22の下面に、詳しく言えば、キャスタベース55の下面に接触し、フットレバー81の回転が停止させられるようになっている。したがって、フットレバー81の後端部、つまり、上壁部81Cおよび緩衝材81Dは、車輪保持体31に収容されたロック機構においてアンロック状態からロック状態に切り替える際のストッパ(操作レバー側ストッパ)として機能する。一方、フットレバー81が使用者によって上昇させられると、
図16に示したように、連動部材82の後端が上昇し、カート本体22の下面に、詳しく言えば、キャスタベース55の下面に接触し、連動部材82の回転が停止させられるようになっている。したがって、連動部材82の後端部、つまり、上壁部82Aおよび緩衝材82Bは、車輪保持体31に収容されたロック機構においてロック状態からアンロック状態に切り替える際のストッパ(操作レバー側ストッパ)として機能する。
【0062】
上記のような構成により、本実施例の貯蔵カート20によれば、車輪保持体31に収容されたロック機構に対して、大きな荷重が加わることを抑えることができる。特に、フットレバー81を踏み込む場合には、大きな荷重が加わり易いが、その場合には、フットレバー81の回転が停止されるように構成されているため、連動部材82を介して接続されている連結シャフト52に加わる荷重を抑えることができ、車輪保持体31に収容されたロック機構に対して加わる荷重をより抑えることができる。また、それらのストッパは、緩衝材81D,82Bの存在により、ストッパが接触する際の接触音を抑えることができる。さらに、それらのストッパは、キャストベース55の下面に対して、緩衝材81D,82Bが面で接触するため、接触時に作用する力を分散させ、局所的に接することで生じる傷,凹み、破損等を回避することができる。さらにまた、それらストッパは、キャスタベース55の下面に当接するようになっており、そのキャスタベース55は、比較的強度の高い部材で、ストッパを受け止めるのに十分な強度を有している。つまり、本貯蔵カート20は、ストッパを受け止めるために、強度の高い部材を別途設ける必要がなく、本貯蔵カートの構成を単純化することができるとともに、コストを抑えることができる。
【0063】
<ロック装置の動作>
i)進入動作に伴うロック装置の動作
次に、搬送装置40が貯蔵カート20を搬送すべく空間S1に入り込む進入動作に伴うロック装置50の作動について説明する。なお、貯蔵カート20の配置箇所には、
図6に示すように、床面FLにガイドラインL1が設けられている。搬送装置40はガイドラインL1に沿って後退しつつ、前側(
図6の左側)から空間S1に入り込む。搬送装置40が空間S1に入り込んでいない状態(
図5に示す状態)では、貯蔵カート20は移動禁止状態とされていることが一般的である。つまり、
図12に示すように、入力レバー53が第1位置に位置し、入力軸32が第1回転位置に位置し、車輪30がロック状態となっている。
【0064】
貯蔵カート20が移動禁止状態にある場合、
図12に示すように、一対のレバー部材60は下端が前側に傾斜した状態となっており、連結溝部64の後端がガイド溝61の最下端となっている。そのため、可動体70は、自重により、ガイド溝61内において、連結溝部64の後端に位置することになる。そして、搬送装置40が後退しつつ空間S1に進入する場合、搬送装置40の押圧部46の後方には、ガイド溝61の最下端に位置した可動体70が有する内側ローラ72が位置している。なお、押圧部46は、後側に向かうにつれて下降傾斜する後側傾斜面46Aと、前側に向かうにつれて下降傾斜する前側傾斜面46Bと、を有する台形状とされている。つまり、搬送装置40が後退すると、押圧部46の後側傾斜面46Aが内側ローラ72に当接し、その内側ローラ72が後方に向かって押圧される。この場合には、一対の外側ローラ73が、ガイドブラケット56の下面56Aの下方に位置しており、上方への変位が規制されている。つまり、ガイドブラケット56は、規制部材として機能するものとなっている。このため、可動体70は、上方に変位することなく、押圧部46から後方向きの押圧力を確実に受けることができるようになっている。
【0065】
そして、
図13に示すように、可動体70を介して一対のレバー部材60が後方に向かって揺動させられて、入力レバー53が第2位置に位置させられる。その入力レバー53の揺動に伴って、連結シャフト52が軸線まわり(
図13において反時計回り)に回転させられ、入力軸32が第1回転位置から第2回転位置に回転させられる。つまり、車輪30がロック状態からアンロック状態に切り替えられ、貯蔵カート20が移動禁止状態から搬送可能状態に切り替えられる。
【0066】
入力レバー53が第1位置から第2位置に切り替えられた状態においては、押圧部46によって押圧されている可動体70は、連結溝部64の後端に位置している。ただし、その位置においては、外側ローラ73がガイドブラケット56の下面56Aからは後方に外れた位置となる。つまり、可動体70は、後側延設溝部63内を移動可能な状態となる。したがって、搬送装置40がさらに後退して、押圧部46によって内側ローラ72が押圧されると、
図14に示すように、可動体70は、連結溝部64から後側延設溝部63へと移動し、その後側延設溝部63に沿って上昇することになるのである。これにより、レバー部材60の揺動が終了した後、可動体70の内側ローラ72は押圧部46に乗り上げることができ、可動体70が押圧部46を係止してしまうことがなく、押圧部46を後方に通過させることができるようになっている。
【0067】
押圧部46が入力レバー53を通過して後方に移動すると、レバー部材60に形成されたガイド溝61においては、連結溝部64の前端が、ガイド溝61の最下端となる。そのため、可動体70は、
図15に示すように、自重により、ガイド溝61内において連結溝部64の前端に位置することになる。そして、搬送可能状態とされた後、搬送装置40は、連結ピン49を孔部29に嵌合させる位置まで移動し、
図6に示したように、連結ピン45が孔部29に嵌合されることで、搬送装置40と本貯蔵カート20とが連結される。
【0068】
ただし、本実施例のシステム10においては、
図3に示したように、押圧部46の前方に、押圧部46よりも高さが低く、前後方向に長手状の連結時当接ブロック47が設けられている。この連結時当接ブロック47は、搬送装置40と本貯蔵カート20とが連結した状態において、
図18に示すように、可動体70に上下方向において重畳するようになっている。つまり、押圧部46が入力レバー53を通過した後、搬送装置40のさらなる後方への移動の際に、内側ローラ72は、連結時当接ブロック47の後端に形成された傾斜面47Aに当接して、後方に向かって押圧される。そして、可動体70は、ガイド溝61内において連結溝部64の後端に向かって移動させられ、搬送装置40と本貯蔵カート20とが連結した状態においては、可動体70は、ガイド溝61内において連結溝部64の後端に位置させられる。また、その状態においては、連結時当接ブロック47は、上面において内側ローラ72に当接している。
【0069】
例えば、搬送装置40によって本貯蔵カートが搬送されている場合において、床面FLに凹凸等がある場合を考える。貯蔵カート20の車輪30が転動する箇所と、搬送装置40の車輪42,43が転動する箇所が異なることで、搬送装置40は、それの前方が上昇するように傾斜する場合(
図19に示す白抜き矢印の方向に動作する場合)がある。上記の連結時当接ブロック47を設けない場合には、
図15に示したように、可動体70は、ガイド溝61内において連結溝部64の前端に位置している。また、可動体70がこの位置にある場合には、外側ローラ73の上方にガイドブラケット56の下面56Aが位置している。そのため、搬送装置40が
図19に示したように傾斜すると、搬送装置40の上面が内側ローラ72に下側から当接することになる。そして、可動体70は、外側ローラ73がガイドブラケット56によって上方への変位が規制されるため、可動体70には、大きな力が作用してしまうことになる。それに対して、本実施例のシステム10においては、搬送装置40が連結時当接ブロック47を有していることで、可動体70がガイド溝61内において連結溝部64の後端に位置させられている。そのため、
図19に示すように、搬送装置40が傾斜したとしても、可動体70は、ガイド溝61の後側延設溝部63に沿って上昇することができ、可動体70に大きな力が加わるような事態を回避することができる。
【0070】
ii)退出動作に伴うロック装置の動作
次に、搬送装置40が貯蔵カート20と連結を解除した後、空間S1から抜け出す退出動作に伴うロック装置50の作動について説明する。搬送装置40と貯蔵カート20との連結が解除された場合には、貯蔵カート20は搬送可能状態にあり、
図20に示すように、一対のレバー部材60の下端が後側に傾斜した状態となっている。そして、ガイド溝61においては、連結溝部64の前端がガイド溝61の最下端となっており、搬送装置40が前進し始めると、連結時当接ブロック47が可動体70から前方に外れて、その可動体70は、
図20に示すように、自重により、連結溝部64の前端に位置することになる。搬送装置40が前進すると、押圧部46の前側傾斜面46Bが内側ローラ72に当接し、その内側ローラ72が前方に向かって押圧される。この場合には、一対の外側ローラ73が、ガイドブラケット56の下面56Aの下方に位置しており、上方への変位が規制されている。ことため、可動体70は、上方に変位することなく、押圧部46から前向きの押圧力を確実に受けることができるようになっている。
【0071】
そして、
図21に示すように、可動体70を介して一対のレバー部材60が前方に向かって揺動させられて、入力レバー53が第1位置に位置させられる。その入力レバー53の揺動に伴って、連結シャフト52が軸線まわり(
図21において時計回り)に回転させられ、入力軸32が第2回転位置から第1回転位置に回転させられる。つまり、車輪30がアンロック状態からロック状態に切り替えられ、貯蔵カート20が搬送可能状態から移動禁止状態に切り替えられる。
【0072】
入力レバー53が第2位置から第1位置に切り替えられた状態においては、押圧部46によって押圧されている可動体70は、連結溝部64の前端に位置している。ただし、その位置においては、外側ローラ73がガイドブラケット56の下面56Aからは前方に外れた位置となる。つまり、可動体70は、前側延設溝部62内を移動可能な状態となる。したがって、搬送装置40がさらに前進して、押圧部46によって内側ローラ72が押圧されると、
図22に示すように、可動体70は、連結溝部64から前側延設溝部62へと移動し、その前側延設溝部62に沿って上昇することになるのである。これにより、レバー部材60の揺動が終了した後、可動体70の内側ローラ72は押圧部46に乗り上げることができ、可動体70が押圧部46を係止してしまうことがなく、押圧部46を前方に通過させることができるようになっている。なお、押圧部46が入力レバー53を通過して前方に移動すると、レバー部材60に形成されたガイド溝61においては、連結溝部64の後端が、ガイド溝61の最下端となる。そのため、可動体70は、
図12に示したように、自重により、ガイド溝61内において連結溝部64の後端に位置することになる。
【0073】
なお、
図8に示すように、キャスタ24の車輪保持体31においては、入力軸32が第1回転位置と第2回転位置との間に位置する場合、その入力軸32には、それらのいずれかの位置に向かう方向に付勢されている。詳しく言えば、入力軸32の回転位置が、第2回転位置より第1回転位置に近い場合(第1回転位置C
1と第2回転位置C
2との中間位置C
Mより第1回転位置側にある場合)には、第1回転位置に向かう方向(白抜き矢印の方向)の付勢力が作用する。また、入力軸32が第1回転位置に位置する場合にも、同じ方向の付勢力が作用し、車輪30のロック状態を維持する力が作用することとなる。一方、第1回転位置より第2回転位置に近い場合(中間位置C
Mより第2回転位置側にある場合)には、第2回転位置に向かう方向(白抜き矢印の方向)の付勢力が作用し、入力軸32が第2回転位置に位置する場合にも、同じ方向の付勢力が作用し、車輪30のアンロック状態を維持する力が作用することとなる。つまり、そのキャスタ24内の付勢力によって、入力レバー53も、第1位置あるいは第2位置に維持させる力が作用することになり、搬送装置40の進退動作に対して、入力レバー53を確実に第1位置あるいは第2位置まで揺動させることが可能となる。例えば、入力レバー53が第1位置と第2位置との中間で止まってしまうと、可動体70がガイド溝61とガイドブラケット56とで挟まってしまうような事態が生じる虞があるが、本貯蔵カート20よれば、入力レバー53が確実に第1位置あるいは第2位置に位置させられるため、可動体70がガイド溝61に沿って退避して、搬送装置40の進退動作を確実に行わせることができる。
【0074】
<貯蔵カートの特徴>
以上のように、本貯蔵カート20は、ロック装置50が、搬送装置40が空間S1から抜け出る動作である退出動作に連動して移動禁止状態を実現するとともに、搬送装置40が空間S1に入り込む動作である進入動作に連動して、自身の移動を許容して搬送可能状態を実現するように構成されている。本貯蔵カート20によれば、自動で搬送されるだけでなく、ロック・アンロックの切り替えも自動で行われるため、本貯蔵カート20の搬送元や搬送先において、使用者がロック装置の操作を行う必要がなく、本貯蔵カート20がロックされずに勝手に動いてしまうような事態を回避することができる。
【0075】
また、本貯蔵カート20は、入力レバー53を構成する一対のレバー部材60の各々が、被押圧部材としての可動体70の移動を案内するガイド溝61を有しており、そのガイド溝61が、第1位置に位置する場合に出入口E側(前側)の端部が搬送装置40の押圧部46より上方まで延び出すとともに、第2位置に位置する場合に出入口Eと反対側(後側)の端部が押圧部46より上方まで延び出した形状とされている。これにより、可動体70は、レバー部材60に形成されたガイド溝61に沿って上方に退避することが可能とされており、搬送装置40は可動体70に止められることがなく、搬送装置40の押圧部46が入力レバー53を通過することが可能となっている。本貯蔵カート20によれば、搬送装置40を貯蔵カート20の下に十分に潜り込ませた状態で連結することができ、
図6に示したように、搬送装置40が本貯蔵カート20の外側への突出量を小さくすること、換言すれば、搬送時における全長を短くすることができる。また、搬送装置40の押圧部46が入力レバー53を通過可能とされていることで、搬送装置40を同じ箇所(出入口E)から進入および退出させることができる。
【0076】
また、上記のガイド溝61は、両端部の各々が連結シャフト52の近傍まで延ばされており、可動体70の上方への移動可能な高さが比較的大きくされている。それによって、例えば床面にうねり等が存在した場合であっても、本貯蔵カート20に対して搬送装置40が高くなること、詳しく言えば、搬送装置40の押圧部46の高さ位置が高くなることがあるが、ガイド溝61によって可動体70が上方に大きく退避することができるため、本貯蔵カート20と搬送装置40との相対高さの変化を吸収して、搬送装置40の押圧部46が入力レバー53を確実に通過することができる。
【0077】
また、本貯蔵カート20は、ロック装置50が、使用者によって操作可能な操作部80を有し、使用者によって操作された操作部80の動作に連動して入力レバー53が回転させられるように構成されており、使用者の操作部80の操作によって移動禁止状態と搬送可能状態が切り替え可能とされている。本貯蔵カート20は、使用者によってロックを解除して、手動でも移動させることも可能となる。また、搬送装置40による自動搬送中においても、緊急時等に、操作部80を操作して手動でロックを行って、本貯蔵カート20を停止させることができる。ちなみに、搬送装置40には、走行中に大きな負荷が掛かった場合に自身を停止させる機能が搭載されており、ロック装置50によるブレーキ力が、搬送装置40が自身を停止させる負荷より大きくされている。
【0078】
<ロック・アンロック切替のタイミング>
本システム10においては、搬送装置40の進入動作に伴う移動禁止状態から搬送可能状態への切り替えるタイミングを変更することで、種々の効果が得られる。まず、上記第1実施例の貯蔵カート20は、
図23および
図24に示した位置まで、搬送装置40が入り込んだ状態で、搬送装置40押圧部46によって入力レバー53が第1位置から第2位置に切り替えられ、搬送可能状態に切り替えられる。
【0079】
なお、本貯蔵カート20は、カート本体22の下面に、それぞれが前後方向に延びて立ち下がった壁状をなし、互いに左右方向において搬送装置40の幅寸法より僅かに大きな間隔で配された一対のサイドガイド22Bが固定されている。一方、搬送装置40は、
図3,
図4,
図23等に示すように、左右方向における両側面の各々に、一対のガイドローラ48が配されている。それら一対のガイドローラ48は、上下方向に延びる軸線まわりに回転可能に保持され、搬送装置本体41の側面から外側に突出した状態となっている。搬送装置40は、貯蔵カート20下の空間S1に入り込む場合、これらガイドローラ48によって、一対のサイドガイド22Bの間において左右方向の位置が誘導されるようになっている。
【0080】
そして、本システム10において、搬送装置40は、押圧部46が一対のガイドローラ48より後方に設けられている。これにより、搬送装置40の進入動作の際に、ガイドローラ48がサイドガイド22Bに接する前に、押圧部46が入力レバー53を揺動させて搬送可能状態(車輪30がアンロック状態)に切り替えられる。本システム10によれば、搬送装置40の進入動作における比較的早い段階で、車輪30がアンロック状態とされるため、搬送装置40と本貯蔵カート20との両者が動いて、互いの位置合わせが行われるため、連結時の位置合わせが適切に行われ、連結不良の発生を抑えることができる。また、移動禁止状態にある貯蔵カート20に搬送装置40が接触することによって生じる負荷(特に搬送装置40への負荷)を抑えることができる。また、サイドガイド22Bの出入口側(前側)の端部が後方側とすること、あるいは、押圧部46の位置を後方側にずらすことで、搬送装置40の搬送装置本体41がサイドガイド22Bに接触することも抑えることができる。
【0081】
一方で、本貯蔵カート20は、多くの貯蔵物を収容すると重量が大きくなるため、その状態においては、搬送装置が連結する直前まで、移動禁止状態が維持されることが望まれる。換言すれば、搬送装置が貯蔵カートと連結する直前に、移動禁止状態(ロック状態)から搬送可能状態(アンロック状態)に切り替えるような構成が望まれるのである。例えば、
図25に示した搬送装置90は、押圧部91がガイドローラ48より前方に設けられている。また、搬送装置90が、本貯蔵カート20に連結した状態、つまり、連結ピン45が孔部29に嵌合された状態においては、
図26に示すように、押圧部91は、入力レバー53を通過して、比較的近接した状態となっている。つまり、この搬送装置90は、
図27に示すように、進入動作の際に、連結ピン45が孔部29に近づくまで、押圧部91が入力レバー53を揺動させないため、搬送装置が連結する直前まで、移動禁止状態が維持されるようになっている。つまり、貯蔵カート20が搬送可能状態とされた後、搬送装置90が連結するまでの時間が短くなり、貯蔵カート20が動き出すような事態を回避し、安全性を向上させることができる。なお、搬送装置の押圧部の位置を調整する以外にも、ロック装置の位置を、連結ピン45に近付けることで、搬送可能状態に切り替えられるタイミングを遅らせることができる。
【0082】
<搬送装置の出入口と操作部との位置関係>
本システム10は、貯蔵カート20に対する搬送装置40の出入口Eは、前方側に設けられており、同じ前方側に、使用者によってロック装置50によるロック・アンロックを切り替える操作部80も設けられている。例えば、
図28に示すような場所、具体的には、壁面W1に本貯蔵カート20の後側の面が近接して対向する位置に、本貯蔵カート20を搬送する場合を考える。この場合には、搬送装置40は、本貯蔵カート20と連結した状態で後退しつつ、壁面W1に接近する。そして、搬送装置40は、定められた位置に到達すると、本貯蔵カート20との連結を解除し、
図28に示すように、出入口Eである本貯蔵カート20の前側、換言すれば、壁面W1とは反対側から抜け出し、本貯蔵カート20から離脱する。また、本貯蔵カート20は、搬送装置40の退出動作に連動して移動禁止状態とされる。つまり、
図28に示した場所で移動禁止状態とされた本貯蔵カート20は、使用者が操作部80の操作によって、車輪30をアンロック状態(搬送可能状態)として、手動で搬送することができる。
【0083】
一方、上記実施例のシステム10が貯蔵カート20に対する搬送装置40の出入口Eと操作部80とが貯蔵カート20の同じ側面に設けられていたのに対して、変形例の貯蔵カート自動搬送システム95は、
図29に示すように、貯蔵カート96に対する搬送装置97の出入口Eは、操作部80と反対側に設けられている。この変形例のシステム95は、
図29に示すような、貯蔵カート96の搬送路A1と使用者等が作業する作業エリアA2とが、区画されているような場所において有効である。この変形例のシステム95は、
図29に示すように、搬送装置97が、搬送路A1を通って(
図29における下側から上側に進行)、その搬送路A1と作業エリアA2との境界付近まで、貯蔵カート96を搬送した場合、その搬送装置97は、搬送路A1を戻っていく(
図29における下側に向かって進行)。この場合、貯蔵カート96は、操作部80が貯蔵カート96の作業エリアA2側に位置している。そのため、作業エリアA2において、作業者は、使用者が操作部80の操作によって、車輪30をアンロック状態として、手動で搬送することができる。
【実施例2】
【0084】
第1実施例の貯蔵カート20は、キャスタ24の車輪保持体31が、第1回転位置と第2回転位置との間で回転可能な入力軸32を有し、入力軸32が第1回転位置にある場合に車輪30の転動および旋廻を禁止したロック状態を実現し、第2回転位置にある場合に車輪30の転動および旋廻を許容したアンロック状態を実現するように構成されていた。それに対して、第2実施例の貯蔵カートは、キャスタ100が、第1実施例に係るキャスタ24と相違するとともに、ロック装置110が、第1実施例に係るロック装置50と相違する。ただし、第1実施例の貯蔵カート20の構成要素と同一の構成要素も存在するため、第1実施例の貯蔵カート20の同一の構成要素については、同一の符号を付し、その説明は省略する、あるいは、簡略に行うものとする。
【0085】
<キャスタの構成>
まず、第2実施例の貯蔵カートが備えるキャスタ100について、
図30から
図32を参照して説明する。
図30および
図31に示すように、キャスタ100は、第1実施例に係るキャスタ24と同様に、車輪101とその車輪101を転舵可能かつ旋廻可能に保持する車輪保持体102とからなり、その車輪保持体102が、ロック機構(図示省略)を収容するものとなっている。また、その車輪保持体102は、
図32に示すように、上端側に、左右方向に延びるロック機構の入力軸103を備えており、その入力軸103が、軸線まわりに回転可能とされている。ただし、第1実施例に係るキャスタ24とは異なり、入力軸103は、第1回転位置から第2回転位置を介して第3回転位置までの間で回転可能とされている。そして、車輪保持体102に収容されるロック機構は、入力軸103が第1回転位置(
図32におけるC
1の位置)にある場合に車輪101の転動および旋廻を禁止したロック状態を実現し、第2回転位置(
図32におけるC
2の位置)にある場合に車輪30の転動および旋廻を許容した自在輪状態を実現し、第3回転位置(
図32におけるC
3の位置)にある場合に車輪30の旋廻を禁止した状態で転動を許容した固定輪状態を実現するようになっている。
【0086】
<ロック装置の構成>
そして、本実施例の貯蔵カートが備えるロック装置110は、前側一対のキャスタ100に対応する車輪101の転動および旋廻を禁止することで、貯蔵カートの移動が禁止される移動禁止状態を実現し、前側一対のキャスタ100に対応する車輪101の転動および旋廻を許容すること、つまり、自在輪状態とすることで、貯蔵カートの搬送が可能な搬送可能状態を実現する構成となっている。そして、第1実施例の貯蔵カート20と同様に、本実施例の貯蔵カートにおいても、移動禁止状態と搬送可能状態との切り替えが、搬送装置40が貯蔵カートの空間S1に入り込む動作である進入動作、および、空間S1から抜け出す動作である退出動作に連動して行われるように構成されている。
【0087】
ロック装置110は、搬送装置40の進入動作および退出動作による入力を、前側一対のキャスタ100の各々に対応する入力軸103の回転動作に変換する動作変換機構111を有することで実現される。その動作変換機構111は、第1実施例に係る動作変換機構51と類似するものであり、同一の構成要素を含んで構成される。動作変換機構111は、
図30および
図31に示すように、
図9から
図11に示すように、前側一対のキャスタ100の各々に対応する入力軸103を連結する連結シャフト52を含んで構成され、連結シャフト52が軸線まわりに回転させられて、入力軸103が第1回転位置,第2回転位置,第3回転位置との間で回転させられることで、ロック状態,自在輪状態,固定輪状態が切り替えらえる。
【0088】
また、動作変換機構111は、上記連結シャフト52における中間部に固定されて下方に延び出した第1実施例に係る入力レバー53と同様の構成の第1入力レバー112を有している。ただし、第1入力レバー112は、第1実施例のように、一対のレバー部材60ではなく、それら一対のレバー部材60に相当する部分である一対の第1レバー本体部113が後側の上端で連結されて単一の部材で構成されたものとなっている。また、それら第1レバー本体部113は、上端において前方に張り出した張出部113Aを有しており、その張出部113Aには、ピン114が固定されている。なお、第1入力レバー112の他の構成要素は、第1実施例に係る入力レバー53と同一であるため、第1実施例に係る入力レバーと同じ符号を用いて、説明を省略する。
【0089】
この第1入力レバー112は、入力軸103が第1回転位置にある場合(ロック状態にある場合)、
図33に示すように、第1レバー本体部60の下端が前方側(出入口E側)に傾斜した状態となる。そして、その状態においては、第1レバー本体部60に形成されたガイド溝61は、連結溝部64の後端が前端より下方に位置しており、可動体70は、その連結溝部64の後端に位置する。また、第1入力レバー112は、入力軸103が第2回転位置にある場合(自在輪状態にある場合)、
図37に示すように、第1レバー本体部60の下端が後方側に傾斜した状態となる。そして、その状態においては、第1レバー本体部60に形成されたガイド溝61は、連結溝部64の前端が後端より下方に位置しており、可動体70は、その連結溝部64の前端に位置する。さらに、第1入力レバー112は、入力軸103が第3回転位置にある場合(自在輪状態にある場合)、
図38に示したように、
図37で示した位置より、さらに後方に後方側に傾斜した状態となる。
【0090】
動作変換機構111は、
図31に示すように、第1入力レバー112の前方に配されて、その第1入力レバー112と連動して動作する第2入力レバー120を有している。なお、本実施例においても、連結シャフト52の前方には、回転シャフト83が一対の軸受部材54に回転可能に保持されており、第2入力レバー120は、その回転シャフト83に固定されて前後方向に揺動可能とされている。また、その回転シャフト83には、フットレバー(操作レバー)81も、第2入力レバー120の隣に固定されている。第2入力レバー120は、第1入力レバー112と類似する構成のものであり、回転シャフト83に対してそれの長手方向において間隔をおいて固定される一対の第2レバー本体部121と、回転シャフト83と平行に延びて一対の第2レバー本体部121に渡される形で配されて一対の第2レバー本体部121に対して移動可能な可動体130と、を含んで構成される。一対の第2レバー本体部121の各々は、概してL字形状に形成されている。第2レバー本体部121の各々は、折れ曲がった部分が上側に位置し、その部分において回転シャフト83に固定されており、下方および後方に延び出した状態で保持されている。それにより、一対の第2レバー本体部121の各々は、回転シャフト83の回転に伴って、その回転シャフト83を中心として揺動させられるようになっている。
【0091】
また、一対の第2レバー本体部121は、上下方向に延びるガイド溝122が形成されている。可動体130は、一対の第2レバー本体部121の各々のガイド溝122を挿通する形で設けられた可動シャフト131と、一対の第2レバー本体部121の内側に配されて可動シャフト131に取り付けられた2つの内側ローラ132と、一対の第2レバー本体部121の外側に配されて可動シャフト131の端部の各々に設けられた一対の外側ローラ133と、からなる。そのような構成により、可動体130は、可動シャフト131がガイド溝122内を移動することで一対の第2レバー本体部121に対して相対移動することが可能となっている。
【0092】
また、第2レバー本体部121の後方に延び出した部分には、その延設方向に延びる長孔123が形成されており、上述した一対の第1レバー本体部113に固定されたピン114が挿通した状態となっている。つまり、第1レバー本体部113が例えば反時計回りに回転すると、ピン114が下方に向かって回転させられ、第2レバー本体部121の前端が下方に移動させられて、第2レバー本体部121は時計回りに回転させられる。したがって、第1入力レバー112と第2入力レバー120とは、互いに逆方向の回転動作を行うようになっている。
【0093】
なお、第1実施例のロック動作変換機構51と同様に、一対の第1レバー本体部113の外側には、可動体70の上方への変位を規制する一対の第1ガイドブラケット115が設けられている。また、本実施例においては、一対の第2レバー本体部121の外側にも、可動体130の上方への変位を規制する第2ガイドブラケット124が設けられている。
【0094】
<ロック装置の動作>
i)進入動作に伴うロック装置の動作(アンロック状態から自在輪状態への切替)
次に、搬送装置40が本実施例の貯蔵カートを搬送すべく空間S1に入り込む進入動作に伴うロック装置110の作動について説明する。搬送装置40が空間S1に入り込んでいない状態では、貯蔵カートは移動禁止状態とされていることが一般的である。つまり、
図33に示すように、入力軸103が第1回転位置に位置し、車輪101がロック状態となっている。
【0095】
貯蔵カートが移動禁止状態にある場合、
図33に示すように、第1レバー本体部113は下端が前側に傾斜した状態となっており、連結溝部64の後端がガイド溝61の最下端となっている。そのため、可動体70は、自重により、ガイド溝61内において、連結溝部64の後端に位置することになる。また、第2レバー本体部121は、第1レバー本体部113に最も接近した状態で、下端が後側に傾斜した状態となっている。なお、この状態においては、第2レバー本体部121の下端は、第2ガイドブラケット124から大きく後方に外れており、可動体130のガイド溝122に沿った上方への移動が許容されている。そのため、搬送装置40が後退しつつ空間S1に進入する場合、搬送装置40の押圧部46の後方には、まず、第2入力レバー120の可動体130が(詳しく言えば内側ローラ132が)位置している。つまり、搬送装置40が後退すると、押圧部46が内側ローラ132に当接するが、
図34に示すように、その内側ローラ132は押圧部46の上に乗り上がって、押圧部46を後方に通過させることができる。
【0096】
押圧部46が第2入力レバー120を通過すると、押圧部46の後方には、第1入力レバー112の可動体70(内側ローラ72)が位置している。さらに搬送装置40が後退すると、
図35に示すように、押圧部46が内側ローラ72に当接し、その内側ローラ72が後方に向かって押圧される。この場合には、一対の外側ローラ73が、第1ガイドブラケット115の下方に位置しており、上方への変位が規制される。このため、可動体70は、上方に変位することなく、押圧部46から後方向きの押圧力を確実に受けるようになっている。
【0097】
そして、
図36に示すように、可動体70を介して一対の第1レバー本体部113が後方に向かって揺動させられる。その第1入力レバー112の揺動に伴って、連結シャフト52が軸線まわり(
図36において反時計回り)に回転させられ、入力軸103が第1回転位置から第2回転位置に回転させられる。つまり、車輪30がロック状態から自在輪状態に切り替えられ、貯蔵カートが移動禁止状態から搬送可能状態に切り替えられる。
【0098】
第1入力レバー112が入力軸103の第2回転位置に対応する位置に切り替えられた状態においては、押圧部46によって押圧されている可動体70は、連結溝部64の後端に位置している。その位置においては、外側ローラ73が第1ガイドブラケット115からは後方に外れた位置となるため、可動体70は、ガイド溝61の後側延設溝部63に沿って上昇することができる。これにより、第1入力レバー112の揺動が終了した後、可動体70の内側ローラ72は押圧部46に乗り上がって、押圧部46を後方に通過させることができる。
【0099】
押圧部46が第1入力レバー112を通過して後方に移動すると、第1レバー本体部113に形成されたガイド溝61においては、連結溝部64の前端が、ガイド溝61の最下端となる。そのため、可動体70は、
図37に示すように、自重により、ガイド溝61内において連結溝部64の前端に位置することになる。そして、搬送可能状態とされた後、搬送装置40は、連結ピン49を孔部29に嵌合させる位置まで移動し、連結ピン45が孔部29に嵌合されることで、搬送装置40と本実施例の貯蔵カートとが連結される。
【0100】
ii)進入動作に伴うロック装置の動作(固定輪状態から自在輪状態への切替)
ところで、本実施例の貯蔵カートは、キャスタ100において旋廻のみがロックされた固定輪状態で載置された状態の場合も存在する。このような場合であっても、本実施例の貯蔵カートは、搬送装置40が空間S1に入り込んで連結可能とされている。
【0101】
車輪101が固定輪状態にある場合、つまり、入力軸103が第3回転位置にある場合には、
図38に示すように、第1レバー本体部113の下端と第2レバー本体部121の下端とが最も離間した状態となっている。この状態においては、第2レバー本体部121の下端は、第2ガイドブラケット124の下方に位置し、可動体130は上方への変位が規制される。そのため、搬送装置40が後退すると、押圧部46が可動体130の内側ローラ132に当接し、その内側ローラ132が後方に向かって押圧される。
【0102】
そして、
図39に示すように、可動体130を介して一対の第2レバー本体部121が後方に向かって揺動させられる。その第2入力レバー120の揺動(反時計回りの回転)に連動して、第1入力レバー112が前方に向かって揺動させられる(時計回りに回転させられる)。つまり、連結シャフト52が、軸線まわり(時計回り)に回転させられ、入力軸103が第3回転位置から第2回転位置に回転させられる。つまり、車輪101が、固定輪状態から自在輪状態に切り替えられ、貯蔵カートが搬送可能状態とされる。
【0103】
なお、この場合、搬送装置40がさらに後退すると、押圧部46は第1入力レバー112の可動体70に当接することになるが、
図40および
図41に示すように、可動体70は、ガイド溝61の連結溝部64および後側延設溝部63に沿って移動して退避することができる。これにより、
図42に示すように、第1入力レバー112は、押圧部46を後方に通過させることができる。そして、搬送可能状態とされた後、搬送装置40は、連結ピン49を孔部29に嵌合させる位置まで移動し、搬送装置40と本実施例の貯蔵カートとが連結される。
【0104】
iii)退出動作に伴うロック装置の動作(自在輪状態からロック状態への切替)
次に、搬送装置40が貯蔵カートと連結を解除した後、空間S1から抜け出す退出動作に伴うロック装置110の作動について説明する。搬送装置40と貯蔵カートとの連結が解除された場合には、貯蔵カートは搬送可能状態にあり、
図43に示すように、一対の第1レバー本体部113の下端が後側に傾斜した状態となっている。搬送装置40が前進すると、押圧部46が内側ローラ72に当接し、その内側ローラ72が前方に向かって押圧される。この場合には、一対の外側ローラ73が、第1ガイドブラケット115の下方に位置しており、上方への変位が規制されている。このため、可動体70は、上方に変位することなく、押圧部46から前向きの押圧力を確実に受けるようになっている。
【0105】
そして、
図44に示すように、可動体70を介して一対の第1レバー本体部113が、つまり、第1入力レバー112が前方に向かって揺動させられる。その第1入力レバー112の揺動に伴って、連結シャフト52が軸線まわり(
図44において時計回り)に回転させられ、入力軸32が第2回転位置から第1回転位置に回転させられる。つまり、車輪30が自在輪状態からロック状態に切り替えられ、貯蔵カート20が搬送可能状態から移動禁止状態に切り替えられる。
【0106】
第1入力レバー112が、入力軸103の第1回転位置対応する位置に切り替えられた状態においては、押圧部46によって押圧されている可動体70は、連結溝部64の前端に位置している。ただし、その位置においては、外側ローラ73が第1ガイドブラケット115からは前方に外れた位置となる。つまり、可動体70は、前側延設溝部62内を移動可能な状態となる。したがって、搬送装置40がさらに前進して、押圧部46によって内側ローラ72が押圧されると、
図44に示すように、可動体70は、連結溝部64から前側延設溝部62へと移動し、その前側延設溝部62に沿って上昇することになる。これにより、第1入力レバー112の揺動が終了した後、可動体70の内側ローラ72は押圧部46に乗り上げることができ、押圧部46を前方に通過させることができる。
【0107】
さらに、押圧部46の前方には、第2入力レバー120の可動体130が位置している。ただし、その位置においては、外側ローラ133が第2ガイドブラケット124から後方に外れた位置となる。つまり、可動体130は、ガイド溝122内を移動可能な状態となる。したがって、搬送装置40がさらに前進して、押圧部46によって内側ローラ132が押圧されると、
図45に示すように、可動体130は、ガイド溝122に沿って上昇することになる。これにより、可動体130の内側ローラ132は押圧部46に乗り上がることができ、
図46に示すように、第2入力レバー120は、押圧部46を前方に通過させることができる。
【0108】
ちなみに、フットレバー81は、先にも述べたように回転シャフト83に固定されており、フットレバー81が使用者によって操作されると、回転シャフト83の回転に伴って第2入力レバー120が回転する。そして、その第2入力レバー120の回転に連動して、第1入力レバー112が回転させられ、それに伴って連結シャフト52が軸線まわりに回転する。つまり、入力軸103が回転させられて、回転位置が切り替えられ、ロック状態,自在輪状態,固定輪状態が切り替えられる。具体的には、
図37に示した状態、つまり、フットレバー81が中間位置にある場合に、自在輪状態とされ、その位置からフットレバー81を上方に向かって持ち上げることで、
図38に示した状態とされ、固定輪状態に切り替えられる。そして、それら自在輪状態あるいは固定輪状態に対応する位置にあるフットレバー81を下方に向かって踏み込むことで、
図33に示した状態であるロック状態に切り替えることができる。フットレバー81は、上記の動作変換機構111と連動させてあっても、従来の操作と同じ操作であり、違和感なく操作を行うことができる。
【0109】
以上のように構成された第2実施例の貯蔵カートは、キャスタ100において車輪がロック状態と固定輪状態のいずれの状態にあっても、搬送装置40の進入動作に連動して、自在輪状態に切り替えて、搬送可能状態を実現することができる。また、第2実施例の貯蔵カートは、搬送装置40の退出動作の際には、ロック状態とされるため、搬送先において確実に移動が禁止される。
【実施例3】
【0110】
上記2つの実施例の貯蔵カートは、キャスタ24,100を構成する車輪保持体に収容されたロック機構を利用して、貯蔵カートを移動禁止状態とする構成とされていた。それに対して、第3実施例の貯蔵カート200は、
図47および
図48に示すように、カート本体201の下方に、4つのキャスタ24の他に、一対の固定輪202を備えたものとなっており、ロック装置210が、それら一対の固定輪202の転動を禁止することで移動禁止状態を実現する構成とされている。第3実施例の貯蔵カート200は、第1実施例の貯蔵カート20と同一の構成要素も存在するため、第1実施例の貯蔵カート20の同一の構成要素については、同一の符号を付し、その説明は省略する、あるいは、簡略に行うものとする。
【0111】
本実施例の貯蔵カート200は、
図48に示すように、一対の固定輪202は、前後左右に配された4つのキャスタ24に対して、前後方向における中間に、詳しく言えば、中央より前側のキャスタ24寄りに、配されている。また、
図48に示すように、カート本体201が水平状態にある場合に、固定輪202の下端202Dは、前側および後側のキャスタ24の各下端24Dよりも下方に位置している。なお、
図48においては、上下方向における自在輪24の下端24Dと固定輪202の下端202Dとの差をZ1で示している。つまり、
図48においては、前側および後側のキャスタ24の双方が床面FLから浮いているが、実際には、一対の固定輪202と、前側一対のキャスタ24と後側一対のキャスタ24とのうちいずれか一方とが、床面FLに当接し、カート本体201はわずかに傾いた状態となる。したがって、本実施例の貯蔵カート200は、一対の固定輪202を、常に床面FLに接した状態とすることができる。そのような構成により、本実施例の貯蔵カート200は、ロック装置210によって一対の固定輪202の転動を禁止することで、自身の移動が禁止された移動禁止状態を実現することができる。
【0112】
ロック装置210は、
図49から
図51に示すように、第1実施例に係るロック装置50とほぼ同一の構成の動作変換機構211を含んで構成される。ただし、第1実施例に係る動作変換機構51を構成する連結シャフト52は、一対のキャスタ24の入力軸32を連結するものとされていたが、第2実施例に係る動作変換機構211においては、連結シャフト257は、キャスタ24までは延びておらず、一対の固定輪202の前方までとされている。連結シャフト257は、長手方向における両端側の各々に固定された2つの第1リンク261を連結するものとなっている。なお、連結シャフト257には、第1実施例と同様の構成の入力レバー53が設けられている。また、連結シャフト257の前方には、第1実施例と同様に回転シャフト83が保持されるとともに、その回転シャフト83と連結シャフト21とには、操作部80が設けられている。
【0113】
第1リンク261は、連結シャフト257から固定輪202に向かって延びている。その第1リンク261には、第2リンク262が接続されており、その第2リンク262は、第1リンク261に対して一端部において回転軸261A(ヒンジピン)を介して回転可能とされ、第1リンク261から固定輪202に向かって延びている。連結シャフト257、第1リンク261および第2リンク262は、入力レバー53の回転運動を当接部263の直進運動に変換するスライダクランク機構(リンク機構)を構成している。なお、第1リンク261および第2リンク262は、
図49に示すように、一対の固定輪202の各々に対応する形でそれぞれ設けられている。
【0114】
当接部263は、
図52に示すように、固定輪202の外周面202Aと対向配置され、外周面202Aに当接することで固定輪202の回転を固定することが可能となっている。当接部263は、第2リンク262の他端部に設けられたブロック状をなす当接部本体264と、当接部本体264から外周面202Aに向かって突出する突起部265と、を備える。突起部265が外周面202Aに当接することで固定輪202の回転を固定する構成となっている。突起部265における外周面202Aとの当接面265A(当接部における外周面との当接面)は、例えば、R形状をなしている。
【0115】
また、当接部263にはガイドピン267が設けられている。貯蔵カート20は、
図11に示すように、固定輪202をカート本体201の下面201Aに取り付けるためのブラケット268を備える。固定輪202は、一対のブラケット268(
図50参照)を介してカート本体201の下面201Aに取り付けられている。一対のブラケット268は、
図50に示すように、固定輪202を挟む形で対向配置されており、固定輪202は、一対のブラケット268に対して回転可能に取り付けられている。一対のブラケット268の各々には、
図49および
図50に示すように、ガイドピン267が挿通されるガイド孔269がそれぞれ設けられている。ガイド孔269は、ブラケット268に貫通形成されており、外周面202Aと直交する方向(外周面202Aに当接する当接部263が外周面202Aから遠ざかる方向)に沿って長い長手状をなしている。
【0116】
固定輪202は、
図49に示すように、板状のカバー部材276によって、前方から覆われている。カバー部材276には、ばね(付勢部材)266が、それの取付板部277に取り付けられている。ばね266は、
図52に示すように、その一端部においてガイドピン267に取り付けられ、他端部において取付板部277に取り付けられている。ばね266は、当接部263を外周面202Aから遠ざかる方向(
図52の矢線A3)に付勢するものとされる。
【0117】
<ロック装置の動作>
i)進入動作に伴うロック装置の動作
次に、カート本体201との連結が解除された状態の搬送装置40が(空間S1の外部から)空間S1に入り込む過程におけるロック装置210の動作について説明する。搬送装置40が空間S1から離脱している状態では、
図52に示すように、当接部263の突起部265が固定輪202の外周面202Aに当接しており、固定輪202の転動が禁止されている。以下の説明では、固定輪202の転動が禁止されている状態(
図52の状態)をロック状態と呼ぶ。なお、固定輪202の外周面202Aは、例えば、弾性部材によって構成されており、外周面202Aにおいて突起部265が当接した部分は、突起部265によってわずかに押し潰された状態となっている。つまり、ロック状態では、当接部263が外周面202Aを押圧した状態となっている。
【0118】
なお、上述したばね266は、当接部263を外周面202Aから遠ざかる方向に付勢するものとされる。ロック状態では、第1リンク261と第2リンク262が所定の角度をなすように設定されており、ばね266の付勢力によって、第1リンク261は、
図52の時計回りに回転する方向に付勢されている。
【0119】
図52のロック状態では、一対の内側ローラ72は、搬送装置40の押圧部46の上部と同じ高さに配されている。搬送装置40が空間S1に前側から進入すると、押圧部46によって内側ローラ72が後方に向かって押圧される。なお、この状態では、外側ローラ73は、ガイドブラケット56の下面56Aによって上方への変位が規制されている。このため、可動体70は上方に変位することがなく、内側ローラ72は押圧部46の押圧力を確実に受けることができる。
【0120】
これにより、
図53に示すように、レバー部材60が、その下端が後側に向かう方向(
図53の反時計回り、
図52の矢線A1)に回転することで、連結シャフト257が反時計回りに回転し、第1リンク261は、連結シャフト257を回転中心として、反時計回りに回転する。すると、
図52の状態から第1リンク261および第2リンク262のなす角度D1が次第に小さくなっていき、
図54に示すように、第2リンク262を介して当接部263が外周面202Aから遠ざかる方向に変位する。これにより、
図55に示すように、突起部265が外周面202Aから離れることで、固定輪202のロックが解除される。
【0121】
なお、
図52のロック状態では、第1リンク261と第2リンク262のなす角度D1が180度以上となっている。レバー部材60が、
図52の反時計回りに回転する過程では、第1リンク261と第2リンク262のなす角度D1が180度以上の状態から180度(第1リンク261および第2リンク262が最も伸びた状態)になり、さらに、レバー部材60が回転することで、
図53に示すように、第1リンク261と第2リンク262のなす角度D1が180度以下になった後は、ばね266の付勢力によって第1リンク261と第2リンク262のなす角度D1が小さくなるように、第1リンク261および第2リンク262が揺動する。つまり、角度D1が180度以下になった後は、当接部263は、押圧部46によるレバー部材60の押圧力とばね266の付勢力の双方によって外周面202Aから遠ざかる方向に変位する。
【0122】
また、レバー部材60が、
図53の反時計回りに回転する過程では、外側ローラ73が、ガイドブラケット56に対して後方に移動することで、ガイドブラケット56の下面56Aから外れた箇所に変位する。これ以降、可動体70は上方への変位が許容される状態となり、押圧部46によって内側ローラ72が押圧されることで、可動シャフト71がガイド溝61内(より詳しくはガイド溝61における後側延設溝部63、
図54参照)を上昇する結果、可動体70は上昇する。これにより、
図54に示すように、レバー部材60の反時計回りの回転が終了した後、可動体70が押圧部46に乗り上げることができ、可動体70と押圧部46が干渉する事態を抑制できる。その後、固定輪202の転動が許容された状態(ロックが解除されたアンロック状態)で、連結ピン45が孔部29に嵌合する箇所まで搬送装置40が移動し、連結ピン45が孔部29に嵌合されることで、搬送装置40と貯蔵カート200が連結される。
【0123】
ii)退出動作に伴うロック装置の動作
次に、カート本体201との連結が解除された状態の搬送装置40が空間S1から抜け出る過程におけるロック装置210の動作について説明する。搬送装置40が空間S1から出る過程では、ロック装置210は、アンロック状態からロック状態に切り替えられる。まず、孔部29に嵌合されている連結ピン45が下降して、連結ピン45が孔部29から離脱することで、カート本体201と搬送装置40との連結が解除される。その後、カート本体201との連結が解除された状態の搬送装置40は、前側に進行することで、空間S1から出る。
【0124】
カート本体201との連結が解除された状態の搬送装置40が空間S1から出る過程では、
図56に示すように、押圧部46によって内側ローラ72が前方に向かって押圧される。なお、この状態では、外側ローラ73は、ガイドブラケット56の下面56Aによって上方への変位が規制されている。このため、可動体70は上方に変位することがなく、内側ローラ72は押圧部46の押圧力を確実に受けることができる。
【0125】
これにより、レバー部材60が、その下端が前側に向かう方向(
図56の時計回り、
図56の矢線A2)に回転することで、連結シャフト257が時計回りに回転し、第1リンク261は、連結シャフト257を回転中心として、時計回りに回転する。すると、第1リンク261および第2リンク262が揺動することで、
図57に示すように、角度D1が大きくなり、第2リンク262を介して当接部263が外周面202Aに近づく方向に変位して外周面202Aに当接する。これにより、突起部265が外周面202Aに当接することで、固定輪202がロックされる。この結果、搬送装置40が空間S1を出る過程において、ロック装置210は、アンロック状態からロック状態(
図57の状態)に移行することができる。
【0126】
なお、レバー部材60が、
図57の時計回りに回転する過程では、外側ローラ73が、ガイドブラケット56に対して前方に移動することで、ガイドブラケット56の下面56Aから外れた箇所に変位する。これ以降、可動体70は上方への変位が許容される状態となり、押圧部46によって内側ローラ72が押圧されることで、可動シャフト71がガイド溝61の前側延設溝部62内を上昇しつつ、可動体70は上昇する。これにより、
図57に示すように、可動体70が押圧部46に乗り上げることができ、可動体70と押圧部46が干渉する事態を抑制できる。
【0127】
以上のように、第3実施例の貯蔵カート200においては、ロック装置210が、固定輪202の外周面202Aと対向配置されてその外周面202Aに対して接近・離間する方向に移動可能な当接部263を有し、その当接部263を外周面202Aに当接させることで固定輪202の転動を禁止して移動禁止状態を実現し、当接部263を外周面202Aから離間させることで固定輪202の転動を許容して搬送可能状態を実現する構成とされている。さらに、第3実施例の貯蔵カート200においては、ロック装置210が、搬送装置40の進入動作および退出動作による入力を当接部263の接近離間動作に変換する動作変換機構211を有し、その動作変換機構211によって、搬送装置40の退出動作に連動して当接部263が外周面202Aに当接し、移動禁止状態が実現され、搬送装置40の進入動作に連動して当接部263が外周面から離間して、搬送可能状態が実現されるように構成される。したがって、第3実施例の貯蔵カート200は、第1実施例の貯蔵カート20および第2実施例の貯蔵カートのように、車輪保持体の内部にロック機構が収容されている場合と比較して、部品交換やメンテナンスを行い易いものとなっている。
【符号の説明】
【0128】
10…貯蔵カート自動搬送システム、20…自動搬送システム用貯蔵カート、21…貯蔵室、22…カート本体、22A…下面、24…キャスタ、FL…床面、S1…空間、E…出入口、30…車輪、31…車輪保持体、32…入力軸、40…搬送装置、46…押圧部、50…ロック装置、51…動作変換機構、52…連結シャフト、53…入力レバー、55…キャスタベース〔車輪用ベース部材〕、56…ガイドブラケット〔規制部材〕、60…一対のレバー部材〔レバー本体部〕、61…ガイド溝、62…前側延設溝部、63…後側延設溝部、64…連結溝部、70…可動体〔被押圧部材〕、80…操作部、81…フットレバー〔操作レバー〕、82…連動部材、83…回転シャフト、90…搬送装置〔変形例〕、91…押圧部、95…貯蔵カート自動搬送システム〔変形例〕、96…自動搬送システム用貯蔵カート、97…搬送装置
【0129】
100…キャスタ、101…車輪、102…車輪保持体、103…入力軸、110…ロック装置、111…動作変換機構、112…第1入力レバー、113…第1レバー本体部、114…ピン、115…第1ガイドブラケット、120…第2入力レバー、121…第2レバー本体部、122…ガイド溝、124…第2ガイドブラケット、130…可動体
【0130】
200…自動搬送システム用貯蔵カート、201…カート本体、202…固定輪、202A…外周面、210…ロック装置、211…動作変換機構、257…連結シャフト、261…第1リンク、262…第2リンク、263…当接部