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  • 特許-レーザによる表面突出物剃去装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】レーザによる表面突出物剃去装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/38 20140101AFI20240403BHJP
【FI】
B23K26/38 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020041744
(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公開番号】P2021142534
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000208204
【氏名又は名称】大林道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501492535
【氏名又は名称】カンタム・ウシカタ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504194878
【氏名又は名称】国立研究開発法人海洋研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100197848
【弁理士】
【氏名又は名称】石塚 良一
(72)【発明者】
【氏名】福本 勝司
(72)【発明者】
【氏名】光谷 修平
(72)【発明者】
【氏名】藤井 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】吉留 正司
(72)【発明者】
【氏名】川人 洋介
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-215020(JP,A)
【文献】特開2003-285171(JP,A)
【文献】登録実用新案第3167389(JP,U)
【文献】特開2006-021265(JP,A)
【文献】特開2015-168034(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0034625(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪が取り付けられた台車と、前記台車に搭載されるとともに切除対象面の切除対象物を切除可能なレーザ装置と、を少なくとも備え、
前記台車は、前記切除対象面又はその近傍を走行しつつ、前記レーザ装置は、前記切除対象面から所定の高さ位置に配置される最終段ミラー装置を備えて該最終段ミラー装置から前記切除対象面にレーザを照射して前記切除対象物を切除する
ことを特徴とするレーザによる表面突出物剃去装置。
【請求項2】
前記台車は、前記切除対象面又はその近傍に設置されたガイドレールを挟持するガイドレール挟持装置を備えている
請求項1に記載のレーザによる表面突出物剃去装置。
【請求項3】
記最終段ミラー装置は、コイルばねの付勢力によって前記切除対象面に押圧される
請求項1又は請求項2に記載のレーザによる表面突出物剃去装置。
【請求項4】
前記レーザ装置は、前記切除対象面の切断有効照射距離を260mmとし、
前記切除対象物は、鋼繊維である
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のレーザによる表面突出物剃去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザを利用して切除対象物を切除することが可能なレーザによる表面突出物剃去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鋼繊維等を配合した軽量で高強度、且つ、高耐久のコンクリート材料である超高強度繊維補強コンクリート(以下単に「UFC」と称することがある。)が、様々な構造物で使用されている。例えば、特許文献1には、対向して設置されるプレキャストコンクリート床版の接続部の間詰め硬化材として、上記したUFCを使用した例が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-002251
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたUFCによる間詰め硬化材を含め、UFCの上面にシート防水などを施す場合、UFCの表面から突出した鋼繊維がシートに穴を開けてしまい、必要な防水性能を確保することができないという問題がある。
【0005】
UFCの表面から突出した鋼繊維を切除する方法として、ガスバーナによって鋼繊維を焼き切る方法が考えられるが、直接ガスバーナをあてると健全なコンクリートが高熱によって劣化してしまうため、このような方法は採用することが出来ない。また、手作業で一つ一つ鋼繊維を切除できなくはないが、手間やコストの面から現実的な方法とは言えない。
【0006】
そこで、本願発明は、レーザを利用して切除対象物を切除することが可能なレーザ除去走行装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車輪が取り付けられた台車と、前記台車に搭載されるとともに切除対象面の切除対象物を切除可能なレーザ装置と、を少なくとも備え、前記台車は、前記切除対象面又はその近傍を走行しつつ、前記レーザ装置は、前記切除対象面から所定の高さ位置に配置される最終段ミラー装置を備えて該最終段ミラー装置から前記切除対象面にレーザを照射して前記切除対象物を切除することを特徴とするレーザによる表面突出物剃去装置である。
【0008】
上記請求項1の構成によれば、車輪が取り付けられて走行することが可能な台車11にレーザ装置(レーザコントローラ30及び光学ヘッド41を含むレーザ照射ユニット40)を搭載することにより、切除対象面(例えば、UFC)又はその近傍を走行しながらレーザを照射して切除対象物(例えば、鋼繊維)を切除することが可能となる。これにより、手作業で切除対象物を切除するような手間が、大幅に削減できるとともに、確実に切除対象物を切除することが可能となる。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記台車は、前記切除対象面又はその近傍に設置されたガイドレールを挟持するガイドレール挟持装置を備えている請求項1に記載のレーザによる表面突出物剃去装置である。
【0010】
上記請求項2の構成によれば、台車11に、切除対象面又はその近傍に設置されたガイドレール50を挟持するガイドレール挟持装置(側面すべりガイド部材12及びガイドローラ部材13)を備えることにより、切除対象面(例えば、UFC)の切除対象物(例えば、鋼繊維)を正確に切除することが可能となり、効率的な除去作業が可能となる。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記最終段ミラー装置は、コイルばねの付勢力によって切除対象面に押圧される、請求項1又は請求項2に記載のレーザによる表面突出物剃去装置である。
【0012】
上記請求項3の構成によれば、切除対象面(例えば、UFC)に略並行な光軸のレーザを照射可能な最終段ミラー装置46が、コイルばね451の付勢力によって切除対象面に押圧されるように構成されている。これにより、切除対象面のうねりや、台車11の走行面のうねりに影響を受けることなく、最終段ミラー装置46が常に切除対象面に対して適切な高さ位置となり、切除対象物を確実に切除することが可能となる。
【0013】
請求項4に係る発明は、前記レーザ装置は、前記切除対象面の切断有効照射距離を260mmとし、前記切除対象物は、鋼繊維である請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のレーザによる表面突出物剃去装置である。
【0014】
上記請求項4の構成によれば、切除対象面(例えば、UFC)の切断有効照射距離を260mmとし、切除対象物である鋼繊維を切除することが可能となるので、切除対象面の幅が広い場合でも、少ない走行回数で効率的に鋼繊維を切除することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例における、レーザ除去走行装置の全体前方斜視図である。
図2】本発明の実施例における、レーザ除去走行装置の全体後方斜視図である。
図3】本発明の実施例における、レーザ照射ユニットの拡大斜視図である。
図4】本発明の実施例における、最終段ミラー部の拡大斜視図である。
図5】本発明の実施例における、サイドガイドの斜視図である。
図6】本発明の実施例における、レーザの説明図である。
図7】本発明における確認試験態様を示す説明図である。
図8】本発明における確認試験の結果を示す結果表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明のレーザによる表面突出物剃去装置について、実施例に基づいて説明する。
【0017】
図1には、本発明の一例として、レーザ除去走行装置1が全体前方斜視図で示され、図2には、全体後方斜視図が示されている。本実施例のレーザ除去走行装置1は、前述した技術課題のもと、超高強度繊維補強コンクリート(以下単に「UFC」と称することがある。)の表面から突出した鋼繊維をUFCの表面でレーザによって切除するものである。
【0018】
図1及び図2に示されるように、レーザ除去走行装置1は、75mm径の車輪を進行方向の前部に二つ、後部に一つ設けた3点支持の台車11を有しており、切除対象表面又はその近傍を走行可能に構成されている。なお、本実施例の台車11にはフックが掛けられ、図示しないウィンチによって牽引されるように構成されている。そして台車11には、レーザ電源20、レーザコントローラ30及び光学ヘッド41を含むレーザ照射ユニット40が少なくとも搭載されている。
【0019】
続いて、図3にはレーザ照射ユニット40の拡大斜視図が示されている。台車11の上部側には、光学ヘッド41が図示されるように平板上に設置され、当該光学ヘッド41から出力したレーザの先には、後述する最終段ミラー461より下流側のレーザの光軸の仰角を調整可能な仰角調整機構43と、光軸の高さ方向の調整が可能な光軸高さ調整機構42とが、図示されるように設けられている。
【0020】
さらに、前述の仰角調整機構43を経たレーザは、上下方向に伸びる光路ガイドパイプ44を介して最終段ミラー装置46へ入射するように構成されている。当該最終段ミラー装置46は、図4に示されるように最終段ミラー461と、当該最終段ミラー461の高さ調整が可能な最終段ミラー高さ調整機構462が設けられている。
【0021】
加えて、最終段ミラー461を保護するため、四方をミラー保護部材464で囲うとともに、レーザの光路にあたる箇所を一部開口している。さらに、図3に示すようにミラー保護部材464の上面はカバー部材463によって塞がれている。
【0022】
また、レーザの出射時、当該レーザの光路上に粉塵等が存在すると各光学機器に悪影響を及ぼし、ミラー等の焼付や破損を発生させる要因となる。そこで、本実施形態では、レーザ光路に粉塵等が入り込まないように、レーザ光路を覆う光路カバーを設置し、さらに、図示しないエアパージを設けて光路カバーの内部に微圧の清浄なエアーを供給している。光路カバーは前述した光路ガイドパイプ44のほか、光学ヘッド41の出射部及び第1段ミラー、最終段ミラー461の周囲を覆い、その内部に清浄なエアーが供給されている。なお、上記した清浄なエアーは、レーザ除去走行装置1の外部から供給された圧縮空気が、台車11に装備されたエアーフィルター、レギュレータに供給され、清浄で適正圧力に調整されて光路カバーの内部に供給される。
【0023】
切除対象物を確実にレーザによって切除するため、図3及び図4に示されるように切除面押圧部材45が台車11と最終段ミラー装置46との間に設けられている。より詳細に説明すると、鋼繊維などの切除対象物が存在する切除対象面や、台車11の車輪が走行する走行面は必ずしも平坦ではない。これにより、最終段ミラー装置46が切除面から上方に離れてしまうと、切除対象物である鋼繊維を根元からレーザで切除することができなくなってしまう。
【0024】
そこで、本実施例では、切除面押圧部材45が備えるコイルばね451の付勢力によって、常にミラー保護部材464の底面が切除面に押し当てられるようにし、切除対象面のうねりや、台車11の走行面のうねりに影響を受けることなく、最終段ミラー装置46が常に適切な高さ位置となるようにしている。
【0025】
また、本実施例のレーザ除去走行装置1の側方には、図5に示されるように、台車11の側面に二つの側面すべりガイド部材12(フランジ外側に位置する。)と、二つのガイドローラ部材13が設けられており、レーザ除去走行装置1の進行方向に沿って配置されたガイドレール50(図示、H型鋼のフランジ部)を、上記側面すべりガイド部材12とガイドローラ部材13との間に挟み込みながらレーザ除去走行装置1が走行できるように構成している。
【0026】
このような構成により、切除対象面の切除対象物を正確に切除することが可能となり、効率的な除去作業が可能となる。なお、本実施例ではガイドレール50としてH型鋼のフランジ部を利用したが、必ずしもこのような実施例に限られるものではなく、他の部材を代用することも可能である。
【0027】
続いて、本実施例におけるレーザの詳細が図6に示されている。本実施例のレーザは、ファイバレーザを使用しており、Qスイッチを装備したレーザコントローラ30及び光学ヘッド41からは、出力100Wのレーザが出力されている。また、レンズの焦点距離fは1000mmとし、レンズ入光時ビーム径は7mmとしている。
【0028】
そして、最終段ミラー461へ入射するビーム径は2.8mmとしており、切除対象物を切除可能とするレーザ(ビーム径0.9mm)の切断有効照射距離は260mmとなっている。このような構成により、本実施例における切除対象面幅200mmにおける切除対象物を、レーザにより切除可能に構成している。
【0029】
上記したような本発明のレーザ除去走行装置1のレーザ構成によって、切除可能面幅を260mmという非常に広い範囲とすることが可能となり、鋼繊維などの切除対象物の除去作業を効率的に行うことが可能となっている。さらに、本実施例では、レーザの出力を100Wとすることにより、冷却装置等を設けることなく、比較的簡便且つ安全に取り扱うことが可能となっている。
【0030】
(確認試験の実施態様)
図7には、本発明のレーザ除去走行装置1を製作する上で、より広い切除対象面幅を確保し、切除対象物を確実に切除することを目的とした試験装置の概略図が示されている。当該試験装置は、Qスイッチを装備した出力100Wのファイバレーザ装置と、DC24V電源、簡易コントローラ、X-Yステージコントローラ等から構成されている。そして、X-Yステージ上にUFCによって作製された試験体を載置し、当該試験体を毎秒2mmの速度で移動させながら、当該UFCの側面(図示、「試験体側面」)から突出している鋼繊維をレーザによって切除するものである。
【0031】
本確認試験では、45度反射鏡から焦点位置までの距離Bを260mmに固定し、A+Bの距離を約950mmと約1450mmの2水準で試験している。さらに、レーザの傾きについては、図示、「傾1」及び「傾2」において距離D及び距離Eを可変させて試験を実施している。
【0032】
図8には上記した試験条件のもと、試験を行った結果が示されている。確認試験では、ビニル系のシートを鋼繊維が除去された試験体側面に押し当て、残存する鋼繊維によって生じたシートの穴を確認するためにピンホール試験を実施している。図8の結果から判るように、試験体ナンバ「No,6」、「No,7」、「No,8」は、いずれもピンホール試験においてシート上にピンホールが発生しておらず、試験体側面の外観も良好な状態であった。
【0033】
(変形例)
以上、本発明のレーザ除去走行装置も一実施例について説明したが、本発明は必ずしも上記したような構成に限定されるものではなく、以下のような種々の変更が可能となっている。
【0034】
例えば、前述の実施例では、レーザ除去走行装置1をウィンチで牽引するように構成したが、台車11に車輪を駆動する電動モータを搭載することも可能であり、所定速度でレーザ除去走行装置1を自走させるようにすることで、どのような場所でも簡単に運搬して切除対象物を切除することが可能となる。
【0035】
また、前述した実施例では、UFCの表面に突出する鋼繊維を切除するために本発明のレーザ除去走行装置1を使用したが、必ずしも本発明のレーザ除去走行装置1はこのような切除対象物に限られるものではなく、切除対象面における他の突出物や、付着物などを除去することが可能である。さらに、本発明のレーザ除去走行装置1は騒音や粉塵の発生もほとんどないため、特に屋内の床面においても好適に使用することが可能である。
【0036】
以上、本発明の実施例について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施例に限定されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。また、上記実施例に記載された具体的な材質、寸法形状等は本発明の課題を解決する範囲において、変更が可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 レーザ除去走行装置
11 台車
12 側面すべりガイド部材
13 ガイドローラ部材
20 レーザ電源
30 レーザコントローラ
40 レーザ照射ユニット
41 光学ヘッド
42 光軸高さ調整機構
43 仰角調整機構
44 光路ガイドパイプ
45 切除面押圧部材
451 コイルばね
46 最終段ミラー装置
461 最終段ミラー
462 最終段ミラー高さ調整機構
463 カバー部材
464 ミラー保護部材
50 ガイドレール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8