(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-02
(45)【発行日】2024-04-10
(54)【発明の名称】ハーネス固定用テープおよびハーネス固定用テープを用いた固定方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20240403BHJP
C09J 7/28 20180101ALI20240403BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240403BHJP
H02G 3/30 20060101ALN20240403BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/28
C09J201/00
H02G3/30
(21)【出願番号】P 2020076041
(22)【出願日】2020-04-22
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金子 麻由
(72)【発明者】
【氏名】鳥越 翔斗
(72)【発明者】
【氏名】金子 智
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 健
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-105343(JP,A)
【文献】特開2017-178987(JP,A)
【文献】特開2007-280708(JP,A)
【文献】特開2008-151412(JP,A)
【文献】特開2015-090783(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106479386(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/38
C09J 7/28
C09J 201/00
H02G 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質金属箔からなる基材層と、
前記基材層の一方の面の側に設けられた粘着剤層と、を有
し、
被着体および当該被着体の面に配置されたワイヤーハーネスにまたがって貼付され、前記被着体に前記ワイヤーハーネスを固定するハーネス固定用テープであって、
前記ワイヤーハーネスの外周から前記被着体の面にかけて延在する裾部に、前記ハーネス固定用テープの厚み方向と交差する方向に延在する折れ目を有し、
前記折れ目を境に異なる傾きで傾斜した第1の傾斜部および第2の傾斜部のうち、前記裾部の端部へと延在する前記第2の傾斜部が、前記第1の傾斜部に比べて前記被着体の面に対して小さい角度で傾斜している、ハーネス固定用テープ。
【請求項2】
前記硬質金属箔は、硬質アルミニウム箔である、請求項
1に記載のハーネス固定用テープ。
【請求項3】
硬質金属箔からなる基材層および粘着剤層が積層されたハーネス固定用テープを、
被着体および当該被着体の面に配置されたワイヤーハーネスにまたがって貼付し、前記被着体に前記ワイヤーハーネスを固定する、ハーネス固定用テープを用いた固定方法
であって、
前記ワイヤーハーネスの外周から前記被着体の面にかけて延在する裾部に、前記ハーネス固定用テープの厚み方向と交差する方向に延在する折れ目を形成し、
前記折れ目を境に異なる傾きで傾斜する第1の傾斜部および第2の傾斜部のうち、前記裾部の端部へと延在する前記第2の傾斜部を、前記第1の傾斜部よりも前記被着体の面に対して小さい角度で傾斜させて、前記裾部の端部を前記被着体の面に貼付する固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハーネス固定用テープおよびハーネス固定用テープを用いた固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軟質金属箔と粘着剤層とを積層したワイヤーハーネス固定用粘着シートがあり(例えば特許文献1参照)、柔軟な軟質金属箔を有することによって、貼付対象物への追従性を高められる。
【0003】
その一方で、貼付対象物から剥がれないよう、例えばスキージー等によってしっかり形状付けて貼付しようとすると、軟質金属箔は強度が弱いことから、破れ易い。
【0004】
これに対し、例えば軟質金属箔とは別に樹脂の補強層を追加すれば、強度を高められ、破れ難くすることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のように補強層を追加すると、破れは抑制されるものの、補強層が軟質金属箔の変形を妨げ、形状付けし難くなる虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、破れ難く形状付けし易いハーネス固定用テープ、およびハーネス固定用テープを用いた固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明のハーネス固定用テープは、硬質金属箔からなる基材層と、前記基材層の一方の面の側に設けられた粘着剤層と、を有する。ハーネス固定用テープは、被着体および当該被着体の面に配置されたワイヤーハーネスにまたがって貼付され、前記被着体に前記ワイヤーハーネスを固定するハーネス固定用テープであって、前記ワイヤーハーネスの外周から前記被着体の面にかけて延在する裾部に、前記ハーネス固定用テープの厚み方向と交差する方向に延在する折れ目を有し、前記折れ目を境に異なる傾きで傾斜した第1の傾斜部および第2の傾斜部のうち、前記裾部の端部へと延在する前記第2の傾斜部が、前記第1の傾斜部に比べて前記被着体の面に対して小さい角度で傾斜している。
【0009】
上記目的を達成するための本発明の固定方法は、硬質金属箔からなる基材層および粘着剤層が積層されたハーネス固定用テープを、被着体および当該被着体の面に配置されたワイヤーハーネスにまたがって貼付し、前記被着体に前記ワイヤーハーネスを固定する。また、固定方法は、前記ワイヤーハーネスの外周から前記被着体の面にかけて延在する裾部に、前記ハーネス固定用テープの厚み方向と交差する方向に延在する折れ目を形成し、前記折れ目を境に異なる傾きで傾斜する第1の傾斜部および第2の傾斜部のうち、前記裾部の端部へと延在する前記第2の傾斜部を、前記第1の傾斜部よりも前記被着体の面に対して小さい角度で傾斜させて、前記裾部の端部を前記被着体の面に貼付する。
【発明の効果】
【0010】
上記構成を有する発明によれば、ハーネス固定用テープに強度の良好な硬質金属箔が含まれているため、ハーネス固定用テープが破れ難く、また、硬質金属箔が塑性変形し易い性質を有しているため、形状付けし易い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態のハーネス固定用テープを示す側面図である。
【
図2】ハーネス固定用テープよるワイヤーハーネスの固定を示す図である。
【
図4】
図3に示されたハーネス固定用テープの裾部を拡大して示す図である。
【
図5】ワイヤーハーネスおよびハーネス固定用テープに作用する力の一例を示す図である。
【
図6】ワイヤーハーネスおよびハーネス固定用テープに作用する力の他の例を示す図である。
【
図7】実施形態とは異なる貼り方をされた一般的なハーネス固定用テープを示す図である。
【
図8】
図7に示したハーネス固定用テープの端部に作用する力を示す図である。
【
図9】実施形態のハーネス固定用テープの端部に作用する力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる。
【0013】
図1に示すように、実施形態のハーネス固定用テープ100は、硬質金属箔からなる基材層110と、基材層110の一方の面の側に設けられた粘着剤層120と、を有する。図示した例では、粘着剤層120が露出しているが、粘着剤層120に剥離ライナーが配置されていてもよく、剥離ライナーは、ハーネス固定用テープ100の使用時に粘着剤層120から剥がされる。
【0014】
基材層110を形成する硬質金属箔は、特に限定されないが、例えば硬質アルミニウム箔である。また、基材層110の厚みは、例えば、7μm以上100μm以下であるが、これに限定されない。
【0015】
硬質アルミニウム箔の例としては、例えば、加工(圧延)によって加工硬化したアルミニウム箔、加工硬化後に熱処理が施されたアルミニウム箔が挙げられる。硬質アルミニウム箔か否かは、例えば、JIS H 0001:1988に規定される基本記号によって特定でき、各種合金記号の後に付される基本記号「H」で表示される。同基本記号の例として、例えば、HX1、HX2、HX3、HX4、HX5、HX6、HX7、HX8、HX9(ここで、X:1~3)が挙げられる。
【0016】
また、硬質か否かは、上述のように材質によって特定する以外に、材質によらず機械的強度によって特定することも可能である。例えば、引張強さ、および引裂強さの少なくとも一方が所定の閾値以上であれば、硬質であると判定してもよい。
【0017】
ここで、引張強さは、JIS K 7161-1に準じ、下の数1の式(σm:引張強さ(MPa)、F:試験中に観察される最初の最大の力(N)、A:試験片の初めの断面積(mm2))によって表され、幅10mmの試験片を用いて、試験速度200mm/minで測定できる。例えば、同条件で測定される引張強さが、80MPa以上、好ましくは90MPa以上、より好ましくは100MPa以上であれば、硬質であると判定してもよい。
【0018】
【0019】
一方、引裂強さは、JIS K 7128-3に準じ、下の数2の式(T:引裂強さ(N/mm)、F:最大引裂荷重(N)、d:試験片の厚さ(mm))によって表され、試験速度200mm/minで測定できる。例えば、同条件で測定される引裂強さが、170N/mm以上、好ましくは185N/mm以上、より好ましくは200N/mm以上であれば硬質であると判定してもよい。
【0020】
【0021】
粘着剤層120を形成する粘着剤は、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤であるが、これらに限定されない。
【0022】
図2に示すように、ハーネス固定用テープ100は、ワイヤーハーネス10を被着体20に固定するのに用いられる。ハーネス固定用テープ100は、ワイヤーハーネス10および被着体20にまたがって貼付され、粘着剤層120を介してそれらと接着される。
【0023】
ワイヤーハーネス10は、例えばコルゲートチューブ内に複数の電線が通された構成を有するが、複数の電線が束ねられた構成を有していれば、特に限定されない。ワイヤーハーネス10は、例えば、複数の電線が塩化ビニルテープまたは不織布を巻回して束ねられた構成を有してもよい。
【0024】
ワイヤーハーネス10は、例えば、自動車に備えられた各種電子部品への給電に用いられる。ワイヤーハーネス10は、可撓性を有しており、図示した例では、ワイヤーハーネス10は、元々真っ直ぐであった状態から曲げられ、ハーネス固定用テープ100によって曲げられた状態で保持されている。
【0025】
被着体20は、例えば、ルーフライニング、インストルメントパネル、バンパー、ドアトリム等の自動車部品であるが、これらに限定されない。また、図示した例では、被着体20は、平坦な形状を有するが、どのような形状を有するかは特に限定されず、例えば、凹凸形状や曲面形状等を有してもよく、ワイヤーハーネス10は、被着体20に応じてその形状に沿うように設置される。また、被着体20の材質も特に限定されない。
【0026】
図3に示すように、ハーネス固定用テープ100は、ワイヤーハーネス10の外周から被着体20の面21にかけて延在する裾部101に、折れ目102を有する。折れ目102は、ハーネス固定用テープ100の厚み方向(
図3に示す断面に平行な方向)と交差する方向(同断面と交差する方向)に延在している。
【0027】
ハーネス固定用テープ100を貼付する際、作業者は、ワイヤーハーネス10を被着体20の面21に配置した状態で、それらにまたがるようにハーネス固定用テープ100を被せ、ワイヤーハーネス10の外周に追従させつつハーネス固定用テープ100を接着する。また、作業者は、例えばスキージー等によって裾部101を押圧し、折れ目102を付けつつ端部103を面21に接着する。
【0028】
図4に示すように、裾部101では、折れ目102を境に異なる傾きで傾斜した第1の傾斜部104および第2の傾斜部105が形成される。第2の傾斜部105は、折れ目102から端部103へと延在しており、被着体20の面21に対し、第1の傾斜部104がなす角度θ1よりも、小さい角度θ2で傾斜している。
【0029】
第2の傾斜部105のなす角度θ2は、小さいことが好ましく、例えば0°より大きく30°以下、好ましくは0°より大きく10°以下であるが、これらに限定されない。
【0030】
次に、本実施形態の作用効果を述べる。
【0031】
本実施形態では、ハーネス固定用テープ100の基材層110が、強度の良好な硬質金属箔によって形成されている。このため、例えば折れ目102がつくようスキージー等によって強く押圧しても、ハーネス固定用テープ100が破れ難い。
【0032】
実際、本発明者らが、本実施形態に準じて基材層を硬質アルミニウム箔によって形成した実施例のハーネス固定用テープと、同実施例の基材層を軟質アルミニウム箔に変更した比較例のハーネス固定用テープとを用いて、試験を行ったところ、下の表1に示すように、基材層が硬質アルミニウム箔によって形成された実施例のハーネス固定用テープは、引張強さおよび引裂強さの両方が、硬質の基準として規定した閾値より大きく、比較例よりも良好であることが確認された。
【0033】
表1の引張強さは、JIS K 7161-1に準じ、幅10mmの試験片を用いて、試験速度200mm/minで測定された。表1の引裂強さは、JIS K 7128-3に準じ、試験速度200mm/minで測定された。
【0034】
【0035】
また、基材層110を形成する硬質金属箔は、塑性変形し易い性質を有することから、ハーネス固定用テープ100をワイヤーハーネス10や被着体20から剥がれないよう、形状付けし易い。
【0036】
図5、
図6に示すように、ワイヤーハーネス10には、被着体20の姿勢に応じて異なる方向の重力Gが作用する。さらに、本実施形態のように、ワイヤーハーネス10が、真っ直ぐな状態から曲げられた状態で保持されている場合、元の真っ直ぐな状態に戻ろうとする反力が生じる。
【0037】
それら重力Gやワイヤーハーネス10の反力に応じて、ハーネス固定用テープ100には、面方向の力Fが作用し、このような力Fが、ハーネス固定用テープ100を被着体20から剥がそうとする。しかしながら、本実施形態のように折れ目102を形成し、第2の傾斜部105の傾き(角度θ2)を小さくすれば、ハーネス固定用テープ100の剥がれを抑制できる。
【0038】
図7に示すように、本実施形態と異なる貼り方をされた一般的なハーネス固定用テープ100Aでは、裾部101Aは、折れ目102を有さず傾きが連続的に変化し、被着体20の面21に対する角度θ3が大きい。例えば、角度θ3は、30°より大きい。
【0039】
角度θ3が大きいと、
図8に示すように、被着体20と接着した端部103Aでは、面21に沿う方向の力Fbが弱まり、面21に垂直な端部103Aを引き剥がす力Faが増加する。
【0040】
これに対し、本実施形態では
図9に示すように、第2の傾斜部105の傾きが抑えられることによって、端部103では面21に沿う方向の力Fbが増加し、その一方で、面21に垂直な端部103を引き剥がす力Faが抑制される。
【0041】
このため、本実施形態のように、折れ目102を設けて第2の傾斜部105の傾きを小さくした方が、
図7に示した例のような一般的な貼り方に比べ、ハーネス固定用テープ100の剥がれをより効果的に防止できる。
【0042】
実際、本発明者らが、
図4に示す角度θ1、θ2がそれぞれ約70°、6°の場合と、
図7に示す角度θ3が約30°の場合とで、略同様の力がハーネス固定用テープ100、100Aに作用する条件下において両者を比較したところ、前者の方が、剥がれは効果的に防止されていた。
【0043】
また、基材層110を硬質アルミニウム箔によって形成すれば、強度を高めつつ軽量化を図ることができる。
【0044】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変できる。
【0045】
例えば、本発明のハーネス固定用テープの貼り方は、特に限定されず、上記実施形態のように折れ目102を形成する形態だけでなく、
図7に示したような折れ目のない形態も、本発明の範囲に含まれる。
【0046】
また、本発明のハーネス固定用テープの貼付対象は、上記実施形態のように自動車部品に限定されず、例えば建築材等の他の分野で用いられる部材であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 ワイヤーハーネス、
20 被着体、
21 被着体の面、
100 ハーネス固定用テープ、
110 基材層、
120 粘着剤層、
101 裾部、
102 折れ目、
103 裾部の端部、
104 第1の傾斜部、
105 第2の傾斜部、
θ1 被着体の面に対する第1の傾斜部の角度、
θ2 被着体の面に対する第2の傾斜部の角度。